IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 美津濃株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-シューズ用アッパー及びシューズ 図1
  • 特許-シューズ用アッパー及びシューズ 図2
  • 特許-シューズ用アッパー及びシューズ 図3
  • 特許-シューズ用アッパー及びシューズ 図4
  • 特許-シューズ用アッパー及びシューズ 図5
  • 特許-シューズ用アッパー及びシューズ 図6
  • 特許-シューズ用アッパー及びシューズ 図7
  • 特許-シューズ用アッパー及びシューズ 図8
  • 特許-シューズ用アッパー及びシューズ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】シューズ用アッパー及びシューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 23/02 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
A43B23/02 104
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020041496
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021141999
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(72)【発明者】
【氏名】串田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲夫
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124057(JP,A)
【文献】特開2019-088540(JP,A)
【文献】特開2016-077444(JP,A)
【文献】特開2012-170594(JP,A)
【文献】特開平11-004704(JP,A)
【文献】特開2000-152804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0305566(US,A1)
【文献】特開平11-332601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0313445(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0242692(US,A1)
【文献】米国特許第4079527(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用時に着用者の足を覆うように構成されたシューズ用アッパーであって、
前記着用者の足首から甲まで開口した履き口を有し、かつ、外甲側又は内甲側の少なくとも一部に第一結合部材が設けられたアッパー本体と、
前記アッパー本体の前記第1結合部材が設けられた側とは反対側に固定された伸縮材よりなる基端部と、前記第1結合部材と結合可能な第2結合部材が設けられた先端部と、前記基端部と前記先端部とを接続し、かつ、着用時に前記履き口を内甲側から外甲側または外甲側から内甲側に亘って掛け渡す中間部と、を含むベルトと、を備え、
前記基端部は、前記中間部よりも伸縮性が大きく、
前記第1結合部材と前記第2結合部材との結合が解除された状態において、前記先端部が自重によって前記アッパー本体の前記基端部が固定された側の外側下方に垂れ下がり、
前記基端部は、ひずみ40%である場合の前記基端部に係る荷重が0.9N以上2.5N以下であり、
前記基端部が、前記アッパー本体と前記中間部とを接続する複数の伸縮部材を含むことを特徴とする、
シューズ用アッパー。
【請求項2】
前記基端部が伸縮材料よりなり、
前記基端部は、ひずみ5%である場合の前記基端部に掛かる荷重が0.8N以下であることを特徴とする、
請求項1に記載のシューズ用アッパー。
【請求項3】
前記第1結合部材と前記第2結合部材とが結合され、かつ、前記基端部に張力が掛かっていない状態において、前記中間部の足長方向に沿う中心線は、前記履き口の足長方向に沿う中心線よりも、外甲側及び内甲側のうち前記基端部が設けられた側にずれていることを特徴とする、
請求項1または2に記載のシューズ用アッパー。
【請求項4】
着用時において、前記中間部の少なくとも一部が前記着用者の甲と直接接することを特徴とする、
請求項1~のいずれか一項に記載のシューズ用アッパー。
【請求項5】
着用時に着用者の足を覆うように構成されたシューズ用アッパーであって、
前記着用者の足首から甲まで開口した履き口を有し、かつ、外甲側又は内甲側の少なくとも一部に第一結合部材が設けられたアッパー本体と、
前記アッパー本体の前記第1結合部材が設けられた側とは反対側に固定された基端部と、前記第1結合部材と結合可能な第2結合部材が設けられた先端部と、前記基端部と前記先端部とを接続し、かつ、着用時に前記履き口を内甲側から外甲側または外甲側から内甲側に亘って掛け渡す中間部と、を含むベルトと、を備え、
前記基端部は、前記中間部よりも伸縮性が大きく、
前記第1結合部材と前記第2結合部材との結合が解除された状態において、前記先端部が自重によって前記アッパー本体の前記基端部が固定された側の外側下方に垂れ下がり、
前記第1結合部材と前記第2結合部材とが結合され、かつ、前記基端部に張力が掛かっていない状態において、前記中間部の足長方向に沿う中心線は、前記履き口の足長方向に沿う中心線よりも、外甲側及び内甲側のうち前記基端部が設けられた側に足幅方向にずれていることを特徴とする、
シューズ用アッパー。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のシューズ用アッパーと、
前記シューズ用アッパーと結合し、かつ、着用時に前記着用者の足裏を支持するように形成されたソールと、を備える、
シューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、シューズ用アッパー及びシューズに関する。本開示は、詳細には、シューズ用アッパーと、このシューズ用アッパー及びソールを備えるシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シューズの脱ぎ履きを容易にするため、締結方法としてベルト留めを採用することがある。例えば特許文献1には、ベルト留めのシューズが開示され、このベルトを伸縮自在なゴムで形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録番号第3035815号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにベルトをゴムで形成する場合、シューズ着用時に十分なサポート性及びフィット感が得られないことがあった。
【0005】
本開示の目的は、脱ぎ履きが容易であり、かつ、着用時のサポート性及びフィット感に優れたシューズ用アッパー及びシューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るシューズ用アッパーは、着用時に着用者の足を覆うように構成される。前記シューズ用アッパーは、アッパー本体とベルトとを備える。前記アッパー本体は、前記着用者の足首部分から甲部分まで開口した履き口を有し、かつ、外甲側又は内甲側の少なくとも一部に第1結合部材が設けられている。前記ベルトは、前記アッパー本体の前記第1結合部材が設けられた側とは反対側に固定される基端部と、前記第1結合部材と結合可能な第2結合部材が設けられた先端部と、前記基端部と前記先端部とを接続し、かつ、着用時に前記履き口を内甲側から外甲側または外甲側から内甲側に亘って掛け渡す中間部とを含む。前記基端部は、前記中間部よりも伸縮性が大きい。前記第1結合部材と前記第2結合部材との結合が解除された状態において、前記先端部が自重によって前記アッパー本体の前記基端部が固定された側の外側下方に垂れ下がる。
【0007】
本開示の一態様に係るシューズは、上記シューズ用アッパーと、前記シューズ用アッパーと結合し、かつ、着用時に前記着用者の足裏を支持するように構成されたソールと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、脱ぎ履きが容易であり、かつ、着用時のサポート性及びフィット感に優れたシューズ用アッパー及びシューズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るシューズの一例を示す概略の側面図である。
図2図2は、同上のシューズの第1結合部材と第2結合部材との結合が解除された状態を示す概略の平面図である。
図3図3は、同上のシューズの第1結合部材と第2結合部材との結合が解除された状態を示す概略の側面図である。
図4図4は、同上のシューズの第1結合部材と第2結合部材とが結合し、かつ、基端部に張力が掛かっていない状態を示す概略の平面図である。
図5図5は、同上のシューズの第1結合部材と第2結合部材とが結合し、かつ、基端部に張力が掛かっている状態を示す概略の平面図である。
図6図6は、変形例1のシューズを示す概略の側面図である。
図7図7は、変形例2のシューズを示す概略の平面図である。
図8図8は、変形例3のシューズを示す概略の平面図である。
図9図9は、変形例4のシューズを示す概略の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態に係るシューズ1及びシューズ用アッパー2の構成を、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るシューズ1及びシューズ用アッパー2は、あくまで一例であり、シューズ1及びシューズ用アッパー2の構成は以下の構成に限定されない。
【0011】
本実施形態に係るシューズ1及びシューズ用アッパー2は左足用である。左足用のシューズ1及びシューズ用アッパー2は、右足用のシューズ1及びシューズ用アッパー2と左右対称であるため、以下の説明では、右足用のシューズ1及びシューズ用アッパー2の説明を省略する。
【0012】
1.概要
本実施形態に係るシューズ1は、図1及び図2示すように、シューズ用アッパー2(以下、アッパー2ともいう)と、ソール3とを備える。
【0013】
アッパー2は、着用時に着用者4の足40を覆うように構成されている。ソール3は、着用時に着用者4の足裏44を支持するように構成されている。
【0014】
アッパー2は、アッパー本体20とベルト21とを備える。
【0015】
アッパー本体20は、着用者4の足首部分41から甲部分42まで開口した履き口200を有する。またアッパー本体20の外甲側又は内甲側の少なくとも一部に第1結合部材25が設けられている。
【0016】
ベルト21は、基端部22と、先端部24と、中間部23とを含む。
【0017】
基端部22は、アッパー本体20の第1結合部材25が設けられた側とは反対側に固定される。
【0018】
先端部24は、第1結合部材25と結合可能な第2結合部材26が設けられる。
【0019】
中間部23は、図2に示すように、基端部22と先端部24とを接続する。また中間部23は、着用時に履き口200を内甲側から外甲側または外甲側から内甲側に亘って掛け渡す。
【0020】
本実施形態のアッパー2では、第1結合部材25と第2結合部材26との結合が解除された状態において、先端部24がその自重によってアッパー本体20の基端部22が固定された側の外側下方に垂れ下がる(図3参照)。そのため、履き口200がベルト21で塞がれることなく、履き口200が大きく開口した状態を維持することができる。この大きく開口した履き口200から足40を挿入できるため、シューズ1を容易に履くことができる。
【0021】
特に本実施形態のアッパー2では、基端部22が中間部23よりも伸縮性が大きい。換言すると、基端部22は中間部23よりも伸び縮みしやすい。それにより、基端部22が中間部23よりも柔軟となるため、先端部24が外側下方に垂れ下がった状態を維持しやすくなる。また図4に示すように、基端部22を引き伸ばしながら第1結合部材25と第2結合部材26とを結合させることができるため、アッパー2を足40に密着させやすくなり、シューズ1の着用時のサポート性及びフィット感を向上させることができる。
【0022】
2.詳細
以下、本実施形態のシューズ1及びアッパー2について、より詳細に説明する。
【0023】
2-1.シューズ
本実施形態に係るシューズ1は、子供用の靴である。シューズ1は、子供用の靴に限定されず、高齢者用の靴であってもよく、若年者用の靴であってもよい。シューズ1の用途は、特に限定されず、スニーカー、サンダル等の日常生活に用いられる靴であってもよく、スポーツ用の靴であってもよい。
【0024】
本実施形態のシューズ1は、上述の通り、ソール3とアッパー2とを含む。アッパー2はソール3に固定されている。アッパー2とソール3との固定方法の例には、接着、融着、縫製等が含まれる。
【0025】
2-1-1.ソール
ソール3は、図1に示すように、下面30、側面31、及び上面32を含む。
【0026】
下面30は、地面と接する側の面である。下面30は、平坦であってもよいが、溝、凹凸等が設けられていることが好ましい。側面31は、下面30の外縁から上方に立ち上がった部分である。上面32は、着用者4の足裏44と接する面であり、下面30とは反対側に位置している。
【0027】
足裏44と上面32とは、直接接してもよいが、上面32上に配置されたインソール等を介して、間接的に接してもよい。
【0028】
上面32と側面31の上端縁とは面一であってもよいが、上面32が側面31の上端縁よりも下方に位置していてもよい。すなわち、上面32が側面331の上端縁よりも凹んでいてもよい。この場合、ソール3とアッパー2とを固定しやすい。
【0029】
本実施形態のソール3は、アウトソール300と、アウトソール300上に積層されたミッドソール301とを含む(図1参照)。そのためソール3では、アウトソール300の上面とミッドソール301の下面とが重なっている。またアウトソール300の下面がソール3の下面30を構成し、ミッドソール301の上面がソール3の上面32を構成している。アウトソール300は、図1及び図2に示すように、その先端部(爪先部分)がアッパー2の爪先部分を覆っていることも好ましい。この場合、ソール3とアッパー2をより強固に固定することができ、アッパー2からソール3が剥がれにくくすることができる。
【0030】
2-1-2.アッパー
本実施形態のアッパー2は、アッパー本体20と、ベルト21とを含む。
【0031】
(1)アッパー本体
アッパー本体20は、シューズ1の着用時に足40を覆うように構成されており、詳細には、足裏44以外の部分を覆うように構成されている。アッパー本体20は、足40の一部を覆っていなくてもよい。例えばシューズ1がサンダルの場合には、アッパー本体20が足40の爪先43を覆っていなくてもよい。
【0032】
アッパー本体20を構成する材料は特に限定されない。アッパー本体20を構成する材料の例には、天然皮革、人工皮革、天然繊維、合成繊維、樹脂等が含まれる。
【0033】
アッパー本体20は、単一の部材で形成されていてもよく、複数の部材で形成されていてもよい。例えばアッパー本体20が、複数の部材を結合して形成されてもよく、複数の生地を重ね合わせて形成されてもよい。
【0034】
本実施形態のアッパー本体20は、図2に示すように、爪先部分201、前甲部分202、内甲部分203、外甲部分204、及び踵部分205を含む。
【0035】
爪先部分201は、アッパー本体20における爪先43を覆う部分である。爪先部分201は、強度及び耐久性に優れた材料で形成することが好ましい。前甲部分202は、アッパー本体20における前甲45を覆う部分である。前甲部分203は、通気性に優れた材料で形成することが好ましい。内甲部分203及び外甲部分204は、アッパー本体2における足40の内甲46及び外甲47を覆う部分である。踵部分205は、アッパー本体2における足40の踵48を覆う部分である。踵部分205は、クッション性に優れた材料で形成することが好ましい。
【0036】
本実施形態のアッパー本体20では、内甲部分203にベルト21の基端部22が固定されている。内甲部分203における基端部22が固定される位置は、基端部22の大きさ、伸縮性等に応じて適宜設定される。内甲部分203に基端部22を固定する方法の例には、縫製、接着等が含まれる。例えば、内甲部分203を複数枚の生地を重ね合わせて形成し、これらの生地の間に基端部22を挟みこむと共に縫製してもよい。もちろん基端部22が内甲部分203の表面に直接固定されていてもよい。
【0037】
本実施形態のアッパー本体20では、外甲部分204に第1結合部材25が設けられている。第1結合部材25は、外甲部分204の全体に設けられていてもよく、外甲部分204の一部に設けられていてもよく、外甲部分204の複数の部分に設けられていてもよい。本実施形態のアッパー2では、外甲部分204に第1結合部材25として面ファスナーが設けられている。
【0038】
本実施形態の履き口200は、踵部分205の内縁と、内甲部分203の外甲側端縁と、外甲部分204の内甲側端縁と、前甲部分202の踵側端縁とで構成されている。そのため、履き口200を大きく開口させることでき、シューズ1内に足40を挿入しやすくなる。
【0039】
(2)ベルト
ベルト21は帯状の部材である。ベルト21は、基端部22、中間部23、及び先端部24を含む。中間部23は基端部22と先端部24との間に設けられ、基端部22と先端部24とを接続している。そのためベルト21では、基端部22、中間部23、先端部24の順に並んで接続されている。
【0040】
(i)基端部
基端部22は、アッパー本体20の第1結合部材25が設けられた側とは反対側に固定される。本実施形態では、基端部22が内甲部分203に固定されている。そのため基端部22は、アッパー本体20と中間部23とを接続している。具体的には基端部22は、内甲部分203と中間部23とを接続している。
【0041】
基端部22が伸縮材料よりなることが好ましい。特に基端部22は、中間部23よりも伸縮性が大きい伸縮材料で構成されることが好ましい。それにより、基端部22が中間部22よりも柔軟になり、先端部24がその自重によって外側下方に垂れ下がった状態を維持しやすくなる。
【0042】
本実施形態の基端部22は、ひずみ5%である場合の基端部22に掛かる荷重が0.8N以下であることが好ましい。発明者の鋭意研究により、先端部24が外側下方に垂れ下がる際、基端部22が自然長に対して5%程度伸びることがわかっている。そのため、ひずみ5%の場合に基端部22に係る荷重が0.8N以下であることにより、基端部22に適度な柔軟性を付与することができ、先端部24が外側下方に垂れ下がった状態を維持しやすくできる。また基端部22は、ひずみ5%である場合の基端部22に掛かる荷重が0.6N以下であることがより好ましく、0.35N以下であることが特に好ましい。
【0043】
基端部22は、ひずみ40%である場合の基端部22に係る荷重が0.9N以上2.5N以下であることが好ましい。発明者の鋭意研究により、基端部22を引き延ばして第1結合部材25と第2結合部材26とを結合させる際、基端部22を自然長に対して40%程度伸ばすことが好ましいことがわかっている。そのため、ひずみ40%の場合に基端部22に係る荷重が0.9N以上であることにより、第1結合部材25と第2結合部材26とを結合した状態においてアッパー2と足40とを密着させやすくなり、シューズ1のフィット感及びサポート性を向上させられる。またひずみ40%の場合に基端部22に係る荷重が2.5N以下であることにより、基端部22を容易に引き延ばすことができる。すなわち、ひずみ40%である場合の基端部22に係る荷重が0.9N以上2.5N以下であることにより、シューズ1のフィット感及びサポート性の向上と、基端部22の引き延ばしやすさとを両立させることができる。また基端部22は、ひずみ40%である場合の基端部22に係る荷重が1.25N以上1.75N以下であることがより好ましい。
【0044】
なお、基端部22のひずみに対する基端部22に係る荷重の値は、以下の方法により、測定することができる。まず、シューズ1における基端部22のアッパー本体20側の端部を、引っ張り試験機(株式会社島津製作所製のAUTOGRAPH AGS-X)の一方のチャックに固定する。次に、シューズ1における基端部22の中間部23側の端部を、引っ張り試験機の他方のチャックに固定する。そして、基端部22のアッパー本体20側の端部が動かないように固定したまま、基端部22の中間部23側の端部を10mm/minの速度で引っ張る。そして、基端部22の中間部23側の端部を引っ張る際に要した荷重を測定することにより、基端部22のひずみ(伸び率)に対する基端部22に掛かった荷重を算出することができる。
【0045】
本実施形態の基端部22は、複数の伸縮部材220を含んでおり、具体的には、二つの伸縮部材220を含んでいる。基端部22に含まれる伸縮部材220の数は、二つに限られず、3つ以上であってもよい。これらの伸縮部材220は、いずれもアッパー本体20及び中間部23に接続している。基端部22が複数の伸縮部材220を含むことにより、基端部22を起点にベルト21の位置及び角度を前後方向(足長方向)に調整できる。甲42の高さに応じてベルト21の位置及び角度を調整することにより、シューズ1のフィット感及びサポート性を向上させることができる。
【0046】
基端部22は、上述の通り、伸縮材料よりなることが好ましいが、この伸縮材料の例には、平ゴム、スパンデックス等の伸縮性の生地、伸縮する構造を有する生地、天然ゴム、合成ゴム、ばね等が含まれる。
【0047】
(ii)中間部
中間部23は、基端部22と先端部24との間に設けられている。中間部23は、基端部22よりも伸縮性が小さいため、基端部22よりも伸びにくい材料製である。中間部23は、伸縮材料製であってもよく、伸縮材料製でなくてもよい。
【0048】
中間部23は、第1結合部材25と第2結合部材26とが結合した状態において、履き口200を内甲側から外甲側または外甲側から内甲側に亘って掛け渡す。また第1結合部材25と第2結合部材26とが結合した状態では、中間部23の表面が外側に露出する。そのため中間部23の表面には、種々の飾りが設けられていてもよい。本実施形態では、中間部23の表面に靴紐風の飾りが設けられている。
【0049】
第1結合部材25と第2結合部材26とが結合した状態では、中間部23の裏面と甲42とが対向する。本実施形態では、中間部23の裏面が甲42と直接接することが好ましい。すなわち中間部23の少なくとも一部が、甲42と直接接することが好ましい。それにより、シューズ1の着用時のフィット感及びサポート性を向上させることができる。中間部23の裏面が甲42と直接接する場合、中間部23の裏面がクッション性の材料で形成されていることが好ましい。この場合、シューズ1の着用感を向上させることができる。
【0050】
第1結合部材25と第2結合部材26とが結合され、かつ、基端部22に張力が掛かっていない状態において、中間部23の足長方向(足幅方向と直行する方向)に沿う中心線(図4に示すX-X線)が、履き口200の足長方向(足幅方向と直行する方向)に沿う中心線(図4に示すY-Y線)よりも、外甲側及び内甲側のうち基端部22が設けられた側にずれていることが好ましい。本実施形態では、図4に示すように、中間部23の中心線が履き口200の中心線よりも内甲側にずれている。それにより、シューズ1の着用時には、図5に示すように基端部22を引っ張りながら第1結合部材25と第2結合部材26とを結合させるため、中間部23と甲42とを密着させやすくなり、シューズ1のフィット感及びサポート性を向上させることができる。また歩行時の足裏44とソール3の上面32との密着性が向上できるため、足40の浮きを抑制することができる。中間部23の中心線と履き口200の中心線とのずれは、基端部22の自然長、伸びやすさ等に応じて適宜設定されるが、基端部22の自然長の10%以上50%以下であることが好ましく、基端部22の自然長の25%以上40%以下であることが好ましい。
【0051】
着用時において、中間部23の爪先側端縁230が、履き口200の爪先側端縁(前甲部分202の踵側端縁)と一致している、又は、履き口200の爪先側端部206(前甲部分202の踵側端縁)よりも爪先側にあることが好ましい(図1及び図3参照)。この場合、シューズ1を着用した状態で屈曲させる際に、中間部23の爪先側端縁230が甲42に当たることを抑制することができる。
【0052】
(iii)先端部
先端部24は、ベルト21の先端に設けられている。先端部24の形状は特に限定されないが、シューズ1を着用する際には先端部24を把持しやすい形状であることが好ましい。また上述の通り、第1結合部材25と第2結合部材26との結合が解除された状態では、先端部24がその自重によって外側下方に垂れ下がることから、先端部24の形状、大きさ、重量は、先端部24が垂れ下がりやすいように適宜設定される。
【0053】
第1結合部材25と第2結合部材26とが結合した状態では、先端部24の表面が外側に露出するため、先端部24の裏面に第2結合部材26が設けられる(図2参照)。第2結合部材26は、先端部24の裏面全体に設けられてもよく、先端部24の裏面の一部に設けられてもよく、先端部24の裏面の複数部分に設けられていてもよい。
【0054】
第2結合部材26は第1結合部材25と結合可能であるため、本実施形態の第2結合部材26は第1結合部材25と同様に面ファスナーである。
【0055】
2-1-3.シューズを脱ぎ履きする際の動作
以下、本実施形態のシューズ1を着用する際に動作について説明する。
【0056】
(1)シューズを履く場合
まず、履き口200からシューズ1内に足40を挿入する。シューズ1の着用前には、図2及び図3に示すように、先端部24がその自重によって外側下方に垂れ下がるため、履き口200が大きく開口した状態が維持される。そのため、シューズ1を履くにあたって、ベルト21によって履き口200が塞がれないため、履き口200に足40を挿入しやすく、着用者4がシューズ1を容易に着用することができる。例えば、着用者4が幼児や高齢者であっても、シューズ1内に足40を容易に挿入することができる。
【0057】
次に、第1結合部材25と第2結合部材26とを結合する。その際、基端部22を引き伸ばしながら第1結合部材25と第2結合部材26とを結合させる。それにより、中間部23と甲42とが密着しやすくなり、シューズ1のフィット感及びサポート性を向上させることができる。またソール3の上面32と足裏44とが密着しやすくなり、足40の浮きを抑制することができる。
【0058】
(2)シューズを脱ぐ場合
シューズ1を脱ぐ場合には、第1結合部材25と第2結合部材26との結合を解除するだけで、足40の拘束が解除することができ、また大きく開口した履き口200から足40を抜くことができるため、シューズ1を容易に脱ぐことができる。
【0059】
3.変形例
シューズ1及びアッパー2の構成は、上述の構成に限定されない。
【0060】
3-1.変形例1
上述の実施形態に係るシューズ1では、ベルト21の基端部22が、複数の伸縮部材220を含んでいるが、これに限定されない。
【0061】
例えば、図6に示す変形例1のシューズ1のように、基端部22が単一の伸縮部材220で構成されていてもよい。
【0062】
3-2.変形例2~4
上述の実施形態に係るシューズ1では、第1結合部材25及び第2結合部材26が面ファスナーであるが、これに限定されない。
【0063】
例えば図7に示す変形例2のシューズ1のように、第2結合部材26が、第1結合部材25に引っ掛けられるホックであってもよい。すなわち第1結合部材25が受け鐘であり、第2結合部材26が鉤であってもよい。
【0064】
例えば図8に示す変形例3のシューズ1のように、第1結合部材25が複数の微細な突起を含み、第2結合部材26が複数の微細な突起を含んでいてもよい。この場合、第1結合部材25を構成する微差な突起の隙間に、第2結合部材26を構成する微細な突起が嵌まることにより、第1結合部材25と第2結合部材26と結合することができる。
【0065】
例えば図9に示す変形例4のシューズ1のように、第1結合部材25及び第2結合部材26が、お互いに引っ付くことができる磁石であってもよい。変形例4のシューズ1では、第2結合部材26が複数の棒磁石を含んでいるため、第2結合部材26が板状の単一の磁石で構成されている場合と比べて、先端部24が曲げやすくなる。
【0066】
3-3.他の変形例
上述の実施形態に係るシューズ1では、ベルト21の基端部22がアッパー本体20の内甲側に固定されると共に、アッパー本体20の外甲側に第1結合部材25が設けられているが、これに限定されない。例えば、基端部22がアッパー本体20の外甲側に固定されると共に、アッパー本体20の内甲側に第1結合部材25が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 シューズ
2 シューズ用アッパー
20 アッパー本体
200 履き口
21 ベルト
22 基端部
220 伸縮部材
23 中間部
24 先端部
25 第1結合部材
26 第2結合部材
3 ソール
4 着用者
40 足
41 足首
42 甲
43 爪先
44 足裏
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9