(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】作業時間計測装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20221101BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20221101BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20221101BHJP
【FI】
G06Q10/06 332
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2020042310
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505194686
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ西日本
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 恵介
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120454(JP,A)
【文献】特開2019-188599(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149587(WO,A1)
【文献】特開2013-140418(JP,A)
【文献】特開2005-085190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の作業時間を収集する作業時間計測装置であって、
作業を管理する作業管理情報が印刷された紙媒体から前記作業管理情報を読み取る読取部と、
前記読取部により前記紙媒体上の前記作業管理情報を読み取ることのできた時間に基づいて作業時間を計測する作業時間計測部と、
前記作業時間計測部により計測された作業時間を含む所定データを出力するデータ出力部と、
を備え、
前記読取部は、所定の時間間隔で前記紙媒体から前記作業管理情報を読み取り、
前記作業時間計測部は、前記読取部が前記作業管理情報の読み取りに成功した時刻から前記作業管理情報の読取りに失敗した時刻までの時間を前記作業時間として計測し、
前記所定の時間間隔は、作業の種別に応じて設定可能であり、
作業時間の履歴から推定される作業の終了
予定時刻付近の第1期間は短い第1周期に、それ以外の第2期間は前記第1周期よりも長い第2周期に設定される、
作業時間計測装置。
【請求項2】
作業
者の周囲環境を撮影した画像情報とセンサ情報と
を含む付加情報として収集する付加情報収集部をさらに備え、
前記データ出力部は、前記所定データと前記付加情報とを対応付けて出力する、
請求項1に記載の作業時間計測装置。
【請求項3】
前記付加情報収集部は、前記作業に関する所定の言動が検出された場合に、作業者を含む作業環境の情報を収集して前記付加情報に加える、
請求項
2に記載の作業時間計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業時間計測装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業においては、ストップウォッチを用いて手動で作業者の作業時間を記録したり、センサによって作業者またはワークの動きを検出することにより作業時間を計測したりしている(特許文献1,2)。あるいは、RFID(Radio Frequency IDentifier)タグを作業指示書またはワークに取り付けることにより、作業の進捗を管理する技術も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-258118号公報
【文献】特開2018-181240号公報
【文献】特開2011-129000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサによって作業者の動作またはワークを検出することにより作業時間を計測する技術では、システム構成が複雑となり、導入コストおよび保守コストも増大する。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、より簡単に作業時間を計測することができ、ユーザにとっての使い勝手が向上できるようにした作業時間計測装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従う作業時間計測装置は、作業者の作業時間を計測する作業時間計測装置であって、作業を管理する作業管理情報が印刷された紙媒体から作業管理情報を読み取る読取部と、読取部により紙媒体上の作業管理情報を読み取ることのできた時間に基づいて作業時間を計測する作業時間計測部と、作業時間計測部により計測された作業時間を含む所定データを出力するデータ出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、紙媒体から作業管理情報を読み取ることのできた時間に基づいて作業時間を計測することができるため、比較的簡単に作業時間を計測することができ、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】作業時間計測装置を含む情報システムの全体概要図である。
【
図2】作業時間計測装置のハードウェアおよびソフトウェア構成図である。
【
図7】作業時間収集処理を示すフローチャートである。
【
図8】撮影間隔を調整する処理を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施例に係り、作業の終了予定時刻付近で撮影間隔を短くする例を示す説明図である。
【
図10】第3実施例に係り、作業者からの問合せを契機に付加情報を送信する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、作業者またはワークの動きをセンサで直接監視するのではなく、作業に伴って使用される作業管理情報の記載された紙媒体(例えば作業指示書など)から作業管理情報を読み取ることにより、作業者の作業時間を間接的に計測する。本実施形態では、従来から使用されている紙媒体(例えば作業指示書)を用いるため、作業者に特別なセンサを取り付けたり、RFIDタグを用いたりする必要がなく、簡単かつ低コストに作業時間を自動的に計測することができる。
【0010】
作業時間計測装置あるいは情報端末は、紙媒体から作業管理情報を読み取る機能と、作業管理情報を読み取ることのできた時間に基づいて作業時間を計測する機能と、計測された作業時間を含む所定データを出力する機能を備えればよい。作業管理情報を読み取る機能としては、携帯情報端末(携帯電話、いわゆるスマートホンを含む)、またはパーソナルコンピュータ(PC端末)などの備えるカメラを利用することができる。作業時間計測装置として携帯情報端末またはPC端末を利用することにより、本実施形態は、特別なセンサなどを用いることなく、簡単かつ低コストに作業時間を計測することができる。
【0011】
例えば、本実施形態に係る作業時間計測装置では、作業者が作業中に作業指示書を置く場所にスマートホンなどの作業時間計測装置を設置し、作業時間計測装置の読取部に作業指示書が写っている時間を作業時間として計測する。
【0012】
本実施形態では、作業指示書に「作業管理情報」としての作業番号を数値またはバーコードとして記載し、その作業番号を作業時間計測装置の読取部で読み取り、読み取った作業番号と計測された作業時間とを紐付ける。
【0013】
作業番号は、可読可能な数字で印刷してもよいし、可読困難なバーコードとして印刷されてもよい。例えば、作業指示書の全面にバーコードで作業番号を複数印刷しておくことにより、作業時間計測装置の読取部と作業指示書との位置関係が正確ではなくても、読取部によって作業番号を読み取ることができる。
【0014】
なお、作業指示書の全面に作業番号を複数印刷する場合、作業者が作業指示書に記載された作業手順などの内容を読むことができるように、作業番号を可読困難な形態で記載することもできる。
【実施例1】
【0015】
図1~
図8を用いて第1実施例を説明する。
図1は、作業時間計測装置を含む情報システムの全体概要図である。
【0016】
図1に示す情報システムは、例えば、「作業時間計測装置」または「端末」としての携帯情報端末1と、作業時間管理装置2と、作業指示書発行装置4および生産管理装置5を含む。作業指示書発行装置4は、生産管理装置5から受領した作業番号を作業指示書3にバーコード31として印刷することにより、作業指示書3を発行する。作業指示書3はワーク6と共に作業場所WSへ搬入される。
【0017】
作業場所WSにおいて、作業指示書3およびワーク6の置かれる作業台(不図示)の上方には、端末取付部8により携帯情報端末1が取り付けられている。例えば、図示せぬ作業用トレイには、ワーク6の置かれる場所と作業指示書3の置かれる所定の場所とがそれぞれ形成されている。携帯情報端末1のカメラ15(
図2で後述)は、所定の契機で、所定の場所の撮影を開始する。所定の契機は、例えば、前工程での作業終了が検出された時でもよいし、1秒間に一回などのように所定の時間が経過した時でもよい。
【0018】
図1では、説明の都合上、ワーク6の上側に作業指示書3を示しているが、実際にはワーク6と一緒に作業指示書3が作業場所WSへ送られて停止する。そして、カメラ15の視野内に作業指示書3が位置するように、カメラ15の向き、すなわち携帯情報端末1の取り付け位置および姿勢が決定されている。
【0019】
なお、本実施例では、携帯情報端末1の内蔵カメラ15で作業指示書3を撮影する場合を述べるが、読取部は内蔵カメラに限らない。例えば、携帯情報端末1とは別体のカメラを無線または有線により携帯情報端末1に接続してもよい。
【0020】
携帯情報端末1は、内蔵カメラにより作業指示書3を撮影し、作業指示書3の画像を取得する。作業指示書3の全面には、作業番号を表すバーコード31が印刷されている。作業を一元管理するための作業番号は、作業者には視認できないバーコード31として作業指示書3の一部の領域または全面に複数印刷される。作業者に視認できないバーコード(可読困難なバーコード)としては、例えば、紫外線に反応するインクで印刷されたバーコード、肉眼では見えにくい小さなドットから形成されるバーコードなどがある。
【0021】
上述の通り、バーコード31が印刷された作業指示書3は、ワーク6とともに作業場所WSを順番に移動する。
図1では、或る一つの作業場所WSを示すが、その作業場所WSの前と後ろにも他の作業場所WSが設けられている。
【0022】
したがって、作業指示書3とワーク6が作業場所WSに到着し、携帯情報端末1が作業指示書3に印刷されたバーコード31から作業番号を読み取ることに成功した時刻を、作業の開始時刻と見なすことができる。
【0023】
作業者7は、前工程から搬入されたワーク6に対して、作業指示書3で指定された所定の作業を実施する。所定の作業は、作業番号によって一意に特定される。
【0024】
作業者7が所定の作業を終了すると、ワーク6は作業指示書3と共に次工程へ向けて搬出される。作業台の所定の場所から作業指示書3が無くなると、携帯情報端末1は、作業指示書3からの作業番号の読み取りに失敗する。そこで、携帯情報端末1が作業指示書3からの作業番号の読み取りに失敗した時刻を作業の終了時刻とみなすことができる。
【0025】
このようにして携帯情報端末1は、作業時間を算出する。携帯情報端末1は、算出された作業時間に所定の付加情報を対応付けることにより、作業実績データ1160を生成して作業時間管理装置2へ送信する。生産管理装置5は、作業時間管理装置2から作業実績データ1160を受け取ることにより、生産実績を把握することができる。生産管理装置5は、例えば、作業実績データ1160に示された作業時間と作業標準時間との相違を算出したり、作業計画とのずれを算出したりすることにより、生産実績を分析することができる。
【0026】
図2は、「作業時間計測装置」または「端末」としての携帯情報端末1のハードウェアおよびソフトウェア構成を示す。
【0027】
携帯情報端末1は、例えば、演算部11と、メモリ12と、補助記憶部13と、ユーザインターフェース(図中UI)部14と、カメラ15と、センサ16と、通信部17と、電源部18を備える。
【0028】
演算部11は、画像読取部111と、バーコード抽出部112と、バーコード読取部113と、作業時間計測部114と、付加情報収集部115と、データ出力部116とを実現するためのコンピュータプログラムを実行する。それらの機能111~116を実現するコンピュータプログラムは、補助記憶部13からメモリ12に読み出されて演算部11により実行される。機能111~116については、
図3で後述する。
【0029】
上述の機能111~116を実現するコンピュータプログラムの一部または全部は、フラッシュメモリなどの記憶媒体MMに転送して記憶させることができる。あるいは、記憶媒体MMに記憶されたコンピュータプログラムを携帯情報端末1に転送して補助記憶部13に記憶させることができる。さらには、携帯情報端末1は、通信部17を介して、外部のコンピュータ(不図示)からコンピュータプログラムを受信したり、これとは逆に、外部のコンピュータへ携帯情報端末1内のコンピュータプログラムを送信したりすることもできる。
【0030】
ユーザインターフェース部14は、携帯情報端末1に情報を入力したり、携帯情報端末1から情報を出力したりする装置である。ユーザインターフェース部14としては、例えば、ディスプレイ兼用のタッチパネルなどがある。
【0031】
カメラ15は、携帯情報端末1の背面または正面の少なくともいずれか一方に設けられている。携帯情報端末1の背面と正面のそれぞれにカメラ15が設けられてもよい。さらに、一つの面に設けられるカメラ15は一つである必要はなく、複数のカメラが携帯情報端末1の背面または正面の少なくともいずれか一方に設けられてもよい。
【0032】
センサ部16は、例えば、加速度センサ、GPS(Global Positioning System)受信機、圧力センサ、温度センサ、マイクロフォンなどのセンサである。カメラ15も広義にはセンサであるが、ここでは区別している。
【0033】
通信部17は、移動体通信網または近距離無線通信網と通信する装置である。
【0034】
ウエアラブルデバイス10は、例えば近距離無線通信網などにより携帯情報端末1に接続される。ウエアラブルデバイス10は、例えば、作業者7の体温、心拍数などのバイタルサイン情報を収集する。
【0035】
電源部18は、携帯情報端末1の各部へ必要な電力を供給するものであり、例えばバッテリなどを含む。
【0036】
図3は、「作業時間計測装置」または「端末」としての携帯情報端末1の機能ブロック図である。
【0037】
携帯情報端末1は、例えば、画像読取部111と、バーコード抽出部112と、バーコード読取部113と、作業時間計測部114と、付加情報収集部115と、データ出力部116とを備える。画像読取部111とバーコード抽出部112とバーコード読取部113と作業時間計測部114とは、作業および作業時間検出部117を構成する。
【0038】
画像読取部111は、カメラ15により作業指示書3の少なくとも一部の画像を撮影して取得する。作業指示書3には作業番号を示すバーコードが複数(多数)印刷されているので、画像読取部111は、少なくとも一つの作業番号を示すバーコードを含む画像を撮影できればよい。したがって、携帯情報端末1のカメラ15は、作業指示書3の全体を正確に撮影できるように配置される必要はなく、少なくとも一部の画像を撮影できるように配置されていればよい。したがって、画像読取部111は、作業場所WS間をワーク6と共に順次移動して位置ずれしやすい作業指示書3であっても、作業番号を示すバーコードを含む画像を読み取ることができる。
【0039】
バーコード抽出部112は、読み取られた画像からバーコードを抽出する。バーコード読取部113は、抽出されたバーコードを解析することにより、作業番号を得る。バーコード読取部から作業時間計測部114へは、作業番号の有無と作業番号(作業番号があった場合)とが渡される。
【0040】
作業時間計測部114は、前回読取った作業番号と今回読取った作業番号とを比較することにより、作業時間を算出する。作業時間の算出方法は、
図7にて後述する。算出された作業時間と作業番号とは、データ出力部116へ渡される。
【0041】
付加情報収集部115は、センサ情報1152~1156と端末固有情報1151(いずれも
図5で後述)を収集して、付加情報1162を生成し、データ出力部116へ引き渡す。
【0042】
データ出力部116は、作業時間計測部114から受領した作業番号および作業時間と付加情報収集部115から受領した端末固有情報1151およびセンサ情報1152~1156などの付加情報1162とを対応付けて作業実績データ1160を生成し、作業時間管理装置2へ送信する。
【0043】
図4~
図6を用いて、作業時間の計測に関して携帯情報端末1内で扱われるデータ(情報)の例を説明する。
【0044】
図4は、作業時間計測部114で扱われるデータの例を示す。作業時間計測部114は、例えば、作業指示書3の画像30と、バーコードを示す画像の有無32およびバーコードを示す画像31(バーコードを示す画像が撮影できた場合)と、作業番号の有無91と作業番号92(作業番号を検出できた場合)および現在時刻93と、作業種別94および撮影間隔の設定値95と、作業種別96および作業時間97とを、扱う。
【0045】
作業指示書画像(一部)30は、画像読取部111により作業指示書等の一部が撮影された画像である。データ31およびデータ32からなるバーコード画像情報は、作業指示書画像(一部)30を元にバーコード抽出部112が当該画像内にバーコードが含まれるか否かを検出し、バーコード画像有無及びバーコードが見つかった場合、バーコード部分の画像を取り出したものである。
【0046】
作業番号の有無91と作業番号92および現在時刻93からなる作業番号・時間情報は、バーコード読取部113がバーコード画像情報のバーコード画像31から読取った作業番号及び読み取った時刻(現在時刻)である。但し、バーコード画像情報のバーコード画像31が「無し」である場合、作業番号有無91に「無し」が設定される。
【0047】
撮影間隔情報は、作業種別94ごとに指定された撮影間隔の設定値95を保持する。作業時間履歴は、作業種別96ごとに作業時間を記録した履歴97である。
【0048】
図5は、付加情報収集部115の扱うデータの例である。付加情報1150は、例えば、端末固有情報1151と、位置情報1152と、加速度情報1153と、温度情報1154と、圧力(気圧)情報1155と、バイタルサイン情報1156とを含む。
【0049】
端末固有情報1151は、例えば、作業者の氏名、作業場所、作業工程など携帯情報端末1ごとに設定される情報である。
【0050】
位置情報1152は、携帯情報端末1の位置を特定する情報である。加速度情報1153は、携帯情報端末1に発生している加速度の情報である。温度情報1154は、携帯情報端末1の温度を示す。圧力情報1155は、携帯情報端末1の内蔵する圧力センサの検出値である。
【0051】
バイタルサイン情報1156は、ウエアラブルデバイス10から取得される作業者の体温、血圧、脈拍などの情報である。
【0052】
付加情報1150は、上述した情報1151~1156の少なくとも一部を含んでいればよい。さらに、上述した情報以外の情報を付加情報1150は含むこともできる。
【0053】
図6は、データ出力部で扱うデータの例である。作業時間情報1161は、作業番号1163と、例えば、作業開始時刻1164と、計測された作業時間1165を含む。作業付加情報1162は、例えば、作業番号1166と、時刻1167と、付加情報1168を含む。付加情報1168の内容は、
図5で述べた付加情報1150と同様である。作業番号92,1163,1166も同様である。
【0054】
図7のフローチャートを用いて、作業時間収集処理を説明する。
図7中では、紙面の都合上、ステップの内容を簡略化して表示している。
【0055】
画像読取部111がカメラ15により、作業指示書3が置かれているはずの領域を撮影すると(S11)、バーコード抽出部112は、撮影された画像からバーコード31を抽出する(S12)。バーコード読取部113は、作業指示書31の画像から得られたバーコード31から作業番号を取得する(S13)。しかし、作業指示書3がワーク6と一緒に作業場所WSへ到着する前の時点では、作業指示書3を撮影することはできず、バーコード31も読み取ることはできない。
【0056】
そこで、作業時間計測部114は、バーコードが検出できたか判定する(S14)。バーコードが検出できなかった場合(S14:無)、前回の作業番号が読み取られているか判定する(S15)。
【0057】
前回の作業番号が存在しない場合(S15:無)、まだ作業指示書3がワーク6と共に作業場所WSへ到着しておらず、作業が始まっていない場合である。そこで、所定の撮影間隔だけ画像読取部111を待たせて(S19)、ステップS11へ戻る。
【0058】
一方、バーコード31を読み取ることはできなかったが(S14:無)、前回の作業番号が存在する場合(S15:有)、作業が終了して作業指示書3とワーク6とが次工程へ贈られた場合である。
【0059】
そこで、作業時間計測部114は、最初に作業番号を読み取ることのできた時刻から作業番号の読み取りに失敗した時刻までを、あるいは最後に作業番号を読み取ることのできた時刻までを、その作業番号で特定される作業に要した作業時間として算出し、その値を出力する(S16)。
【0060】
データ出力部116は、作業時間計測部114で算出された作業時間に付加情報収集部115から受領した付加情報を加えることにより、作業実績を示すデータを生成し、そのデータを出力する(S17)。
【0061】
そして、画像読取部111による撮影間隔を調整し(S18)、調整された撮影間隔だけ撮影を待機させる(S19)。撮影間隔の調整方法は、
図8,
図9で後述する。
【0062】
ステップS14においてバーコード31が検出された場合(S14:有)、作業時間計測部114は、前回の作業番号が存在するか判定する(S20)。作業時間計測部114は、前回の作業番号が存在しない場合(S20:無)、作業場所WSへ到着したばかりの作業指示書3を初めて撮影した場合である。そこで、作業時間計測部114は、読み取られた作業番号およびその時刻(作業開始時刻)を補助記憶部13へ保存し(S21)、作業開始時刻における付加情報も一緒に保存させる(S22)。
【0063】
一方、前回の作業番号が存在する場合(S20:有)、作業時間計測部114は、前回の作業番号と今回検出された作業番号とが一致するか判定する(S23)。
【0064】
前回の作業番号と今回の作業番号とが不一致の場合(S23:不一致)、前回の撮影時から今回の撮影時までのわずかな時間内に作業が終了し、新たな作業が開始された場合であると判定できる。そこで、作業時間計測部114は、作業開始時刻から今回の時刻(作業が終了したであろう時刻)までの時間を作業時間として出力する(S24)。データ出力部116は、作業時間に付加情報を加えて出力する(S25)。そして、撮影間隔が調整されて(S26)、ステップS19へ戻る。
【0065】
前回の作業番号と今回の作業番号とが一致する場合(S23:一致)、作業時間計測部114は、作業時間の計測中であると判定し、現在時刻の付加情報を保存した後(S27)、次の撮影まで待機する(S19)。
【0066】
図8は、撮影間隔を調整する処理のフローチャートである。本フローチャートは、
図7で示したステップS18,S26の詳細な一例を示す。
【0067】
通常、撮影間隔は短くした方が、作業時間を取得する際の精度は上がる。しかし、撮影間隔を短くすると、携帯情報端末1の消費電力が大きくなり、バッテリ18の蓄電量が低下する。例えば、作業時間が数分程度と短い場合、撮影間隔も数秒程度と短くする必要がある。これに対し、作業時間が数時間程度と長い場合は、撮影間隔も数分程度に長くした方がよい。
【0068】
撮影間隔の調整方法については、予め設定する方法と、過去の実績から算出する方法とが考えられる。また、同じ作業でも作業対象のワーク6によって作業時間が異なることも考えられる。したがって、ワーク6(製品または部品)の相違に応じて、撮影間隔を調整する必要が生じる場合がある。
【0069】
撮影間隔を予め設定する場合、作業対象のワーク6をいくつかの作業種別に分けておき、作業種別毎に撮影間隔を設定し、作業番号に作業種別を対応付けておく。これにより、読取った作業番号から作業種別を求め、撮影間隔を決めることができる。
【0070】
作業時間計測部114は、撮影間隔の設定があるか判定する(S31)。作業時間計測部114は、撮影間隔の設定がされていない場合(S31:無)、ステップS16またはステップS24で出力された作業時間を履歴97として記憶させる(S32)。
【0071】
作業時間計測部114は、作業時間の履歴97から、作業番号で特定される作業の作業時間の分布を求め、作業時間の分布から撮影間隔の最適値を算出する(S33)。作業時間計測部114は、算出された最適値を、当該作業番号で特定される作業の撮影間隔として出力する(S34)。以後、画像読取部111は、ステップS34で出力された撮影間隔にしたがって撮影する。
【0072】
なお、最適値を算出する場合、過去の作業時間に許容誤差を乗算する。例えば、作業時間が100秒であり、許容誤差が10%である場合、100×0.1=10秒間隔で撮影する。
【0073】
撮影間隔の設定がされている場合(S31:有)、作業時間計測部114は、作業番号から作業種別を決定する(S35)。作業時間計測部114は、決定された作業種別に対応付けられている撮影間隔の設定値95を読み出して、その設定値を撮影間隔として出力する。以後、画像読取部111は、ステップS36で出力された撮影間隔にしたがって撮影する。
【0074】
なお、撮影間隔を調整する方法としては、例えば、間隔の上限値および下限値を指定しておき、作業時間の中央値が上限値よりも長い場合は撮影間隔を上限値とし、作業時間の中央値が下限値よりも短い場合は撮影間隔を下限値にすればよい。
【0075】
このように構成される本実施例によれば、従来から使用されている作業指示書3を用いるため、作業者7に特別なセンサを取り付けたり、RFIDタグを用いたりする必要がなく、簡単かつ低コストに作業時間を自動的に計測でき、使い勝手向上する。
【0076】
本実施例では、作業指示書3の全面に作業番号を示すバーコード31を複数印刷するため、カメラ15が作業指示書3の一部しか撮影できない場合でも、その作業指示書に記載された作業番号を特定することができ、作業時間を計測することができる。
【0077】
本実施例では、作業時間だけでなく、その作業時間の計測時の作業環境を示す付加情報も一緒に出力するため、作業環境を考慮して作業時間の実績を解析することも可能であり、使い勝手が向上する。
【0078】
本実施例では、作業種別に応じて撮影間隔を調整することができるため、携帯情報端末1のバッテリの消費を抑えながら、適切な時間間隔でバーコードを撮影して作業時間を計測することができる。
【実施例2】
【0079】
図9を用いて、第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例では、第1実施例との相違を中心に述べる。
【0080】
図9は、撮影間隔を作業終了時とそれ以外とで変化させる例を示すタイミングチャートである。本実施例でも撮影間隔は、作業種別に応じて設定可能であり、作業の終了時から所定時間前の第1期間は短い第1周期T1に、それ以外の第2期間では第1周期T1よりも長い第2周期T2に設定される。作業終了時刻の推定値は、作業時間の履歴97から求めることができる。
【0081】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、作業が終了する頃の撮影間隔を短くし、それ以外の期間で撮影間隔を長くするため、バッテリの消費を抑えつつより正確に作業時間を計測することができる。
【実施例3】
【0082】
図10を用いて、第3実施例を説明する。
図10は、作業者の状況を付加情報に加えて送信する処理のフローチャートである。
【0083】
作業者7は、作業について何らかの疑問を持ったり、支障を感じたりした場合に、作業場所WSに設置された押釦またはマイクなどを用いて、問合せを発することができる。作業者7からの問合せは、例えば、生産管理装置5を介して携帯情報端末1へ通知することができる。
【0084】
携帯情報端末1は、作業者からの問合せがあったかを監視している(S41)。携帯情報端末1は、作業者からの問合せがあった場合(S41:有)、端末固有情報を取得すると共に(S42)、センサ情報を取得する(S43)。
【0085】
さらに、携帯情報端末1は、例えば、作業指示書3を撮影するカメラ、あるいは作業指示書3の撮影用とは異なるカメラ、マイクロフォンなどを用いて、作業者の周囲を撮影する(S44)。ステップS44では作業場所WSの音声を録音してもよい。撮影する画像は、静止画像または動画像のどちらでもよい。
【0086】
携帯情報端末1は、端末固有情報とセンサ情報と作業者の周囲環境を撮影した画像情報とを含む付加情報を、作業時間管理装置2へ送信する(S45)。
【0087】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、作業者からの問合せという所定アクションの発生を契機に、作業者の周囲環境の画像(作業者の姿が含まれてもよい)を撮影して作業時間管理装置2へ送信するため、作業場所WSで何らかの異常が発生した場合の状況を管理することができ、後の実績解析に役立てることができる。
【0088】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。上述の実施形態において、添付図面に図示した構成例に限定されない。本発明の目的を達成する範囲内で、実施形態の構成や処理方法は適宜変更することが可能である。
【0089】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれる。さらに特許請求の範囲に記載された構成は、特許請求の範囲で明示している組合せ以外にも組合せることができる。
【符号の説明】
【0090】
1:携帯情報端末(作業時間計測装置)、2:作業時間管理装置、3:作業指示書、4:作業指示書発行装置、5:生産管理装置、6:ワーク(作業対象の製品または部品)、7:作業者、8:携帯情報端末の取り付け具、31:バーコード、111:画像読取部、112:バーコード抽出部、113:バーコード読取部、114:作業時間計測部、付加情報収集部115、データ出力部116