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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20221101BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20221101BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B60C11/00 G
B60C11/03 B
B60C11/03 100B
B60C11/12 B
B60C11/12 D
B60C11/12 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020188668
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2021075274
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0143894
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514040088
【氏名又は名称】ハンコック タイヤ アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANKOOK TIRE & TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】286,Pangyo-ro,Bundang-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do,13494,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、イル シク
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ジョン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ス ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ガン イル
(72)【発明者】
【氏名】ホン、チャン ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】イム、ジェ ウク
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-269144(JP,A)
【文献】特表2011-509213(JP,A)
【文献】特開2014-166827(JP,A)
【文献】特開2009-001206(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117091(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの円周方向に沿って延長形成された複数のメイングルーブを有するメイングルーブユニットと、
1ペアの前記メイングルーブの間に形成される共鳴ユニットと、
前記共鳴ユニットと前記1ペアのメイングルーブの中の一側のメイングルーブを連通するように設けられたネックユニットと、
前記共鳴ユニットと前記1ペアのメイングルーブの中の他側のメイングルーブを連結するように設けられたカーフユニットと、を備え、
前記ネックユニットは、
前記共鳴ユニットと前記一側のメイングルーブとの間に延長形成された直線流路と、
前記直線流路の下部をむいて延長形成され、所定の曲率を有するように延長形成された曲線流路と、
前記曲線流路の下部に形成された円筒状のネックと、を含み、
前記カーフユニットは、
前記共鳴ユニットと前記他側のメイングルーブとの間に延長形成された直線流路及び前記直線流路の下部をむいて延長形成され、所定の曲率を有するように延長形成された曲線流路と、を含み、
前記ネックユニットは、地面と接触して荷重を受ける場合に、一側のメイングルーブと前記共鳴ユニットとの間が前記円筒状のネックに連通された状態を維持するように形成され、前記カーフユニットは前記円筒状のネックを含まないことにより、地面と接触して荷重を受ける場合に、閉鎖され他側のメイングルーブと前記共鳴ユニットとの間が連通されないように形成される
ことを特徴とする騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項2】
前記共鳴ユニットは、ヘルムホルツ共鳴器からなる
請求項1に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項3】
前記メイングルーブユニットは、
相互離隔して形成され、車両の外側から順次形成された第1のメイングルーブ、第2のメイングルーブ、第3のメイングルーブ及び第4のメイングルーブを含む
請求項1に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項4】
前記共鳴ユニットは、
前記第1のメイングルーブ、第2のメイングルーブ、第3のメイングルーブ及び第4のメイングルーブのいずれか1ペアのメイングルーブの間に形成される
請求項3に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項5】
前記共鳴ユニットは、
前記第1のメイングルーブと前記第2のメイングルーブとの間に設けられる第1の共鳴部と、
前記第3のメイングルーブと前記第4のメイングルーブとの間に設けられる第2の共鳴部と、を含む
請求項3に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項6】
前記第1の共鳴部及び前記第2の共鳴部の体積は、500~1500mm3である
請求項5に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項7】
前記ネックユニットは、
前記第1の共鳴部と前記第1のメイングルーブを連結するように設けられた第1のネック部と、
前記第2の共鳴部と前記第3のメイングルーブを連結するように設けられた第2のネック部と、を含む
請求項5に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項8】
前記第1のネック部は、
前記第1の共鳴部と前記第1のメイングルーブとの間に延長形成された直線流路と、
前記直線流路の下部を向いて延長形成され、所定の曲率を有するように延長形成された曲線流路と、
前記曲線流路の下部に形成された円筒状のネックと、を含む
請求項7に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項9】
前記直線流路及び前記曲線流路は、インターロッキング(interlocking)構造で形成されて荷重を受けるときに閉鎖されるように設けられ、
前記ネックは、荷重を受けるときにも、前記第1のメイングルーブと前記第1の共鳴部が連通された状態を維持するように形成され、
前記ネックは、前記第1のメイングルーブと前記第1の共鳴部内の空気を相互連通させて気柱共鳴音を低減するように設けられた
請求項8に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項10】
前記第1のネック部の長さは、5~20mmで形成された
請求項9に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項11】
前記ネックの直径は、前記第1のメイングルーブと前記第2のメイングルーブとの間の距離、及び前記第1の共鳴部の体積に基づいて決定される
請求項9に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項12】
前記ネックの直径は1~3mmであり、断面積は、1~12mm2で形成された
請求項11に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項13】
前記第2のネック部は、
前記第2の共鳴部と前記第3のメイングルーブとの間に延長形成された直線流路と、
前記直線流路の下部をむいて延長形成され、所定の曲率を有するように延長形成された曲線流路と、
前記曲線流路の下部に形成された円筒状のネックと、を含む
請求項7に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項14】
前記直線流路及び前記曲線流路は、インターロッキング(interlocking)構造で形成されて荷重を受けるときに閉鎖されるように設けられ、
前記ネックは、荷重を受けるときにも、前記第3のメイングルーブと前記第2の共鳴部が連通された状態を維持するように形成され、
前記ネックは、前記第3のメイングルーブと前記第2の共鳴部内の空気を相互連通させて、気柱共鳴音を低減するように設けられた
請求項13に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項15】
前記カーフユニットは、
前記第1の共鳴部と前記第2のメイングルーブを連結するように設けられた第1のカーフ部と、
前記第2の共鳴部と前記第4のメイングルーブを連結するように設けられた第2のカーフ部と、を含む
請求項5に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項16】
前記第1のカーフ部は、
前記第1の共鳴部と前記第2のメイングルーブとの間に延長形成された直線流路と、
前記直線流路の下部を向いて延長形成され、所定の曲率を有するように延長形成された曲線流路と、を含む
請求項15に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項17】
前記第2のカーフ部は、
前記第2の共鳴部と前記第4のメイングルーブとの間に延長形成された直線流路と、
前記直線流路の下部を向いて延長形成され、所定の曲率を有するように延長形成された曲線流路と、を含む
請求項15に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【請求項18】
前記共鳴ユニットは、
前記第2のメイングルーブと前記第3のメイングルーブとの間に設けられる第3の共鳴部と、をさらに含む
請求項5に記載の騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音低減のための共鳴器を有するタイヤに関し、より詳しくは、メイングルーブから発生する騒音エネルギーを減少させて騒音低減のための共鳴器を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
車輪を転がして動く車は、生まれつきの騒音を発生させるしかない。しかし、運転中に車両の内部及び外部から聞こえてくるエンジン音、風切音(風音)などの騒音は、運転者と搭乗者にはいつも耳に障る。それで防音材、吸音材などを使用して、騒音を遮断するのが一般的な作業である。
【0003】
しかし、最近、韓国の政府機関である環境省が、2019年から欧州連合(EU)において施行中の「タイヤ騒音性能表示制度」を導入すると発表した。この制度施行を控えて騒音を減らすための技術開発が行われている。特に、従来はエンジンなどの車両内部の騒音発生を減らすのに集中したが、タイヤのように、車両の外部から発生する騒音を最小限に抑えるため、タイヤ製品開発の初期段階から低騒音の新技術を適用する事例が増えている。
【0004】
特に最近、市場占有率が急激に上昇している電気自動車のためのタイヤは、内燃機関車(ICE:Internal Combustion Engine)とは異なる特性の騒音に対する防止技術が要求されている。
【0005】
一例として、ICE車両の場合には、エンジンからくる騒音が室内騒音の全領域代にわたって最大の騒音を占めているが、電気自動車には、エンジンがないため、全体的な騒音レベルが低く、タイヤから誘発される騒音が最も大きい。したがって、最近では、低騒音タイヤの重要性がますます高くなっている。
【0006】
タイヤ騒音の中で、1kHzの領域帯からパイプの共鳴音によるピークが発生し、これに起因した影響は、騒音全体において非常に大きな割合を占めている。具体的には、タイヤ走行方向のメイングルーブが地面に接触したときに、地面とメイングルーブとがパイプの形状をなす。このとき、このパイプの形態のメイングルーブの内部流動により、1kHz帯域の気柱共鳴音が発生するようになる。
【0007】
したがって、タイヤのメイングルーブ内から発生する気柱共鳴音を低減するための技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-1957640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、メイングルーブから発生する騒音のエネルギーを減少させて騒音低減のための共鳴器を有するタイヤを提供することにある。
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に限定されず、言及されていないもう1つの技術的課題は、以下の記載から、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとっては明確に理解される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的を達成するための本発明の構成は、タイヤの円周方向に沿って延長形成された複数のメイングルーブを有するメイングルーブユニットと、1ペアの前記メイングルーブの間に形成される共鳴ユニットと、前記共鳴ユニットと前記1ペアのメイングルーブの中の一側のメイングルーブを連通するように設けられたネックユニットと、前記共鳴ユニットと前記1ペアのメイングルーブの中の他側のメイングルーブを連結するように設けられたカーフユニットと、を備えることを特徴とする騒音低減のための共鳴器を有するタイヤを提供する。
【0012】
本発明の実施形態において、前記共鳴ユニットは、ヘルムホルツ共鳴器からなることを特徴とする。
【0013】
本発明の実施形態において、前記メイングルーブユニットは、相互離隔して形成され、車両の外側から順次形成された第1のメイングルーブ、第2のメイングルーブ、第3のメイングルーブ及び第4のメイングルーブを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の実施形態において、前記共鳴ユニットは、前記第1のメイングルーブ、第2のメイングルーブ、第3のメイングルーブ及び第4のメイングルーブのいずれか1ペアのメイングルーブの間に形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の実施形態において、前記共鳴ユニットは、前記第1のメイングルーブと前記第2のメイングルーブとの間に設けられる第1の共鳴部、及び前記第3のメイングルーブと前記第4のメイングルーブとの間に設けられる第2の共鳴部を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の実施形態において、前記第1の共鳴部及び前記第2の共鳴部の体積は、500~1500mm3であることを特徴とする。
【0017】
本発明の実施形態において、前記ネックユニットは、前記第1の共鳴部と前記第1のメイングルーブを連結するように設けられた第1のネック部、及び前記第2の共鳴部と前記第3のメイングルーブを連結するように設けられた第2のネック部を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の実施形態において、前記第1のネック部は、前記第1の共鳴部と前記第1のメイングルーブとの間に延長形成された直線流路、前記直線流路の下部を向いて延長形成され、所定の曲率を有するように延長形成された曲線流路、及び前記曲線流路の下部に形成された円筒状のネックを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の実施形態において、前記直線流路及び前記曲線流路は、インターロッキング(interlocking)構造で形成されて、荷重を受けるときに閉鎖されるよう設けられ、前記ネックは、荷重を受けるときにも、前記第1のメイングルーブと前記第1の共鳴部が連通された状態を維持するように形成され、前記ネックは、前記第1のメイングルーブと前記第1の共鳴部内の空気を相互連通させて、気柱共鳴音を低減するように設けられたことを特徴とする。
【0020】
本発明の実施形態において、前記第1のネック部の長さは、5~20mmで形成されることを特徴とする。
【0021】
本発明の実施形態において、前記ネックの直径は、前記第1のメイングルーブと前記第2のメイングルーブとの間の距離と、前記第1の共鳴部の体積にしたがって決定されることを特徴とする。
【0022】
本発明の実施形態において、前記ネックの直径は1~3mmであり、断面積は、1~12mm2で形成されることを特徴とする。
【0023】
本発明の実施形態において、前記第2のネック部は、前記第2の共鳴部と前記第3のメイングルーブとの間に延長形成された直線流路、前記直線流路の下部を向いて延長形成されるが、所定の曲率を有するように延長形成された曲線流路、及び前記曲線流路の下部に形成された円筒状のネックを含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の実施形態において、前記直線流路及び前記曲線流路は、インターロッキング(interlocking)構造で形成されて荷重を受けるとき、閉鎖されるよう設けられ、前記ネックは荷重を受けるときにも、前記第3のメイングルーブと前記第2の共鳴部が連通された状態を維持するように形成され、前記ネックは、前記第3のメイングルーブと前記第2の共鳴部内の空気を相互連通させて気柱共鳴音を低減するように設けられたことを特徴とする。
【0025】
本発明の実施形態において、前記カーフユニットは、前記第1の共鳴部と前記第2のメイングルーブを連結するように設けられた第1のカーフ部、及び前記第2の共鳴部と前記第4のメイングルーブを連結するように設けられた第2のカーフ部を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明の実施形態において、前記第1のカーフ部は、前記第1の共鳴部と前記第2のメイングルーブとの間に延長形成された直線流路、及び前記直線流路の下部を向いて延長形成されるが、所定の曲率を有するように延長形成された曲線流路を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明の実施形態において、前記第2のカーフ部は、前記第2の共鳴部と前記第4のメイングルーブとの間に延長形成された直線流路、及び前記直線流路の下部を向いて延長形成されるが、所定の曲率を有するように延長形成された曲線流路を含むことを特徴とする。
【0028】
本発明の実施形態において、前記共鳴ユニットは、前記第2のメイングルーブと前記第3のメイングルーブとの間に設けられる第3の共鳴部をさらに含むことを特徴とする。
【0029】
本発明の実施形態において、前記第1のカーフ部及び前記第2のカーフ部は、直線流路及び曲線流路に比べて深さが浅いイメージ(image)カーフを含むように設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
上記のような構成に従う、本発明の効果は、メイングルーブから発生する気柱共鳴音を低減することができる。
【0031】
具体的には、ヘルムホルツの共鳴器の役割を遂行できる共鳴ユニットが、メイングルーブの間に備えられ、ネック部を介してメイングルーブと連結される。メイングルーブから発生した気柱共鳴音は、ネック部を介して共鳴ユニットに伝達され、共鳴ユニットに伝達された気柱共鳴が起こるようになる。これにより、メイングルーブと共鳴ユニットを連結するネック部を介して流動が急速に生じるようになるが、このときの騒音減衰メカニズムであるビスコ-サーマル効果(Visco-thermal effects)により騒音エネルギーが減少することになる。
【0032】
また、共鳴ユニットのネック部が、タイヤ表面に出ている他社製品のパターンの場合には、それ自体が地面に接触したときに、新しい騒音をまた引き起こすことができる。しかし、本発明は、メイングルーブと共鳴ユニットを連結するネック部をタイヤ表面の内側に植込みして、ネック部がタイヤ表面にはっきり出るときに発生できる騒音を最小限に抑えた。
【0033】
なお、ネック部の表面の内側に植込みするとき、3D-カーフの形態を適用して、タイヤの回転時のブロック間の摩擦音及びエアポンピング騒音を低減することができる。
【0034】
本発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態による騒音低減のための共鳴器を有するタイヤの例示図である。
図2】本発明の一実施形態による第1の共鳴部、第1のメイングルーブ、第1のネック部、及び第1のカーフ部を示した例示図である。
図3】本発明の一実施形態による第1の共鳴部を示した設計図である。
図4】本発明の一実施形態による第1の共鳴部、第1のメイングルーブ及び第1のネック部を示した斜視図である。
図5】本発明の一実施形態による第1のネック部を示した斜視図である。
図6】本発明の一実施形態による第1のネック部の設計図である。
図7】本発明の一実施形態による第1のネック部の荷重付与の前後を示した例示図である。
図8】本発明の一実施形態による第2の共鳴部を示した設計図である。
図9】本発明の一実施形態による第2の共鳴部、第3のメイングルーブ及び第2のネック部を示した斜視図である。
図10】周波数帯域に応じた気柱共鳴音の大きさを示したグラフである。
図11】従来例と本発明の一実施形態の気柱共鳴音を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、添付した図面を参照して、本発明を説明することにする。しかし、本発明は、複数の異なる形態に実施されることができ、したがって、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。そして図面で本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体を通して類似した部分については類似の図面符号を付した。
【0037】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続、接触、結合)」されているとするとき、これは「直接的に連結」されている場合だけではなく、その中間に他の部材を間に置いて、「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに備えることができるというのを意味する。
【0038】
本明細書で使用された用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を示していると判定されない限り、複数の表現を含む。本明細書では、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするのであって、1つ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものの存在若しくは付加可能性を予め排除しない。
【0039】
以下では、添付された図面を参照して、本発明の実施形態を詳しく説明することにする。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態による騒音低減のための共鳴器を有するタイヤの例示図である。
【0041】
図1に示したように、騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ1000は、メイングルーブユニット1100と、共鳴ユニット1200と、ネックユニット1300と、カーフユニット1400と、を備える。
【0042】
前記メイングルーブユニット1100は、タイヤの円周方向に沿って延長形成された複数のメイングルーブからなり、前記メイングルーブユニット1100は、第1のメイングルーブ1110、第2のメイングルーブ1120、第3のメイングルーブ1130、及び第4のメイングルーブ1140を含む。
【0043】
前記第1のメイングルーブ1110、第2のメイングルーブ1120、第3のメイングルーブ1130、及び第4のメイングルーブ1140は、車両の外側から順次形成されたものであり得る。
【0044】
すなわち、前記第1のメイングルーブ1110は、タイヤを車両に装着した状態で最も外側に位置したメイングルーブであり得る。
【0045】
図2は、本発明の一実施形態による第1の共鳴部、第1のメイングルーブ、第1のネック部及び第1のカーフ部を示した例示図であり、図3は、本発明の一実施形態による第1の共鳴部を示した設計図であり、図4は、本発明の一実施形態による第1の共鳴部、第1のメイングルーブ及び第1のネック部を示した斜視図である。
【0046】
図2図4をさらに参照すると、前記共鳴ユニット1200は、1ペアの前記メイングルーブの間に形成されたミッドリブに形成され、ヘルムホルツ共鳴器からなる。
【0047】
前記共鳴ユニット1200は、前記第1のメイングルーブ1110、第2のメイングルーブ1120、第3のメイングルーブ1130及び第4のメイングルーブ1140のいずれか1ペアのメイングルーブの間に形成され得る。
【0048】
そして、前記共鳴ユニット1200は、第1の共鳴部1210及び第2の共鳴部1220を含む。
【0049】
前記第1の共鳴部1210は、前記第1のメイングルーブ1110と前記第2のメイングルーブ1120との間に設けられる。
【0050】
前記第2の共鳴部1220は、前記第3のメイングルーブ1130と前記第4のメイングルーブ1140との間に設けられる。
【0051】
そして、前記第1の共鳴部1210及び前記第2の共鳴部1220の体積は、500~1500mm3で備えられる。
【0052】
なお、前記共鳴ユニット1200は、タイヤの円周方向に沿って所定の間隔ごとに設けられるように備えられる。一例として、前記共鳴ユニット1200は、タイヤの円周方向に2ピッチ(pitch)ごとに形成されるよう設けられる。
【0053】
そして、前記共鳴ユニット1200の深さは、前記ネックユニット1300全体の高さを含むように設けられ、前記共鳴ユニット1200は、前記メイングルーブユニット1100を基準に30度~90度の角度内に位置するように設けられる。
【0054】
前記共鳴ユニット1200は、前記第2のメイングルーブ1120と前記第3のメイングルーブ1130との間に設けられる第3の共鳴部をさらに含むことも有り得る。
【0055】
前記ネックユニット1300は、前記共鳴ユニット1200と前記1ペアのメイングルーブの中の一側のメイングルーブを連通するよう設けられ、第1のネック部1310及び第2のネック部1320を含み得る。
【0056】
図5は、本発明の一実施形態による第1のネック部を示した斜視図であり、図6は、本発明の一実施形態による第1のネック部の設計図であり、図7は、本発明の一実施形態による第1のネック部の荷重付与の前後を示した例示図である。
【0057】
図8は、本発明の一実施形態による第2の共鳴部を示した設計図であり、図9は、本発明の一実施形態による第2の共鳴部、第3のメイングルーブ及び第2のネック部を示した斜視図である。
【0058】
図5図9を参照すると、前記第1のネック部1310は、前記第1の共鳴部1210と前記第1のメイングルーブ1110を連結するように設けられ、直線流路1311、曲線流路1312及びネック1313を含む。
【0059】
前記直線流路1311は、前記第1の共鳴部1210と前記第1のメイングルーブ1110との間に延長形成され得る。そして、前記直線流路1311は、下部を向いて所定の深さを有するように設けられるが、深さ方向に一直線の形態で延長形成され得る。
【0060】
前記曲線流路1312は、前記直線流路1311の下部を向いて延長形成されるが、所定の曲率を有するように延長形成され得る。一例として、前記曲線流路1312は、前記直線流路1311の下部を向いて延長されるが、ジグザグ状で形成されたり、所定の曲率を有する波状で形成されたりすることができる。
【0061】
前記ネック1313は、前記曲線流路1312の下部に形成され円筒状からなる。前記ネック1313は、前記第1の共鳴部1210と前記第1のメイングルーブ1110との間が連通されるように延長形成され得る。
【0062】
このように設けられた前記直線流路1311及び前記曲線流路1312は、インターロッキング(interlocking)構造で形成されて地面と接触して荷重を受ける場合に、閉鎖されるように設けられる。すなわち、前記直線流路1311及び前記曲線流路1312は、地面に接したとき、閉鎖されながら内部の水をタイヤ外側へ排出させる機能を遂行するように設けられる。
【0063】
一方、前記ネック1313は、荷重を受けるときにも、前記第1のメイングルーブ1110と前記第1の共鳴部1210が連通された状態を維持するように形成され得る。このように設けられた前記ネック1313は、前記第1のメイングルーブ1110と前記第1の共鳴部1210内の空気を相互連通させて気柱共鳴音を低減するように設けられる。
【0064】
具体的には、ヘルムホルツ共鳴器の役割を遂行できる第1の共鳴部1210が、第1のメイングルーブ1110との間に備えられ、ネック1313を介して第1のメイングルーブ1110と連結される。第1のメイングルーブ1110から発生した気柱共鳴音はネック1313を介して、第1の共鳴部1210に伝達され、第1の共鳴部1210に伝達された気柱共鳴は、第1の共鳴部1210内で生じるようになる。すなわち、第1のメイングルーブ1110と第1の共鳴部1210を連結するネック1313を介して流動が急速に起こるようになるが、このときの騒音減衰メカニズムであるビスコ-サーマル効果(Visco-thermal effects)により騒音エネルギーが減少することになる。
【0065】
なお、第1の共鳴部1210とネック1313が、タイヤ表面に出ている場合には、それ自体が地面に接触したときに、新しい騒音をまた引き起こすことができる。しかし、本発明は、第1のメイングルーブ1110と第1の共鳴部1210を連結するネック1313をタイヤ表面の内側に植込みしてネック1313が、タイヤ表面にはっきり出るときに発生できる騒音を最小限に抑えるように設けられる。
【0066】
そして、本発明によれば、ネック1313をタイヤ表面の内側に植込みするとき、直線流路1311及び曲線流路1312を介して3D-カーフ形態を適用することにより、タイヤの回転時のブロック間の摩擦音とエアポンピング騒音も、また低減することができる。
【0067】
このように設けられた前記第1のネック部1310の長さは、5~20mmで形成され得る。
【0068】
なお、前記ネック1313の直径は、前記第1のメイングルーブ1110と前記第2のメイングルーブ1120との間の距離、及び前記第1の共鳴部1210の体積に基づいて決定され得る。
【0069】
より具体的には、前記ネック1313の直径は1~3mmであり、断面積は、1~12mm2で形成され得る。
【0070】
前記第2のネック部1320は、前記第2の共鳴部1220と前記第3のメイングルーブ1130を連結するように設けられる。
【0071】
前記第2のネック部1320は、直線流路、曲線流路及びネックを含み、これの構成は、実質的に前記第1のネック部1310と同一であるため、具体的な説明は省略することにする。
【0072】
前記カーフユニット1400は、前記共鳴ユニット1200と前記1ペアのメイングルーブの中の他側のメイングルーブを連結するように設けられる。
【0073】
具体的には、前記カーフユニット1400は、第1のカーフ部1410及び第2のカーフ部1420を含む。
【0074】
前記第1のカーフ部1410は、前記第1の共鳴部1210と前記第2のメイングルーブ1120を連結するように設けられ、前記第2のカーフ部1420は、前記第2の共鳴部1220と前記第4のメイングルーブ1140を連結するように設けられる。
【0075】
前記第1のカーフ部1410は、直線流路及び曲線流路からなる。
【0076】
具体的には、前記第1のカーフ部1410の直線流路は、前記第1の共鳴部1210と前記第2のメイングルーブ1120との間に延長形成される。一例として、前記直線流路は、下部を向いて所定の深さを有するように設けられるが、深さ方向に一直線状で延長形成される。
【0077】
前記曲線流路は、前記直線流路の下部を向いて延長形成されるが、所定の曲率を有するように延長形成される。一例として、前記曲線流路は、前記直線流路の下部を向いて延長されるが、ジグザグ状に形成されたり、所定の曲率を有する波状で形成されたりすることができる。
【0078】
このように設けられた前記直線流路及び前記曲線流路は、インターロッキング(interlocking)構造で形成され、地面と接触して荷重を受ける場合、閉鎖されるよう設けられる。すなわち、前記直線流路及び前記曲線流路は地面に接したとき、閉鎖されながら内部の水をタイヤの外側へ排出させる機能を遂行するように設けられる。
【0079】
なお、前記カーフユニット1400は、深さが1mm未満になるように設けられる。
【0080】
なお、前記第1のカーフ部1410、第2のカーフ部1420は、直線流路及び曲線流路に比べて深さが浅いイメージ(image)のカーフを含むように設けられる。
【0081】
より具体的には、前記第1のカーフ部1410、第2のカーフ部1420は、直線流路及び曲線流路に加えて、追加で前記イメージカーフをさらに構成することもでき、前記直線流路及び前記曲線流路の代わりにイメージカーフを構成するように設けられることもある。
【0082】
図10は、周波数帯域に応じた気柱共鳴音の大きさを示したグラフである。
【0083】
図10を参照すると、タイヤは、メイングルーブが地面と接触するとき、管状になる。この管状に起因して気柱共鳴音による騒音が発生する。これはタイヤのサイズと地面での接地長と関連しており、図10に示すように、約800~1200Hzの帯域の騒音である。これは全体のタイヤ転がりの騒音において大きな影響を及ぼしている。
【0084】
図11は、従来例と本発明の一実施形態の気柱共鳴音を示したグラフである。
【0085】
図11を参照すると、本発明による気柱共鳴音の低減効果を検証するために、本発明によるモックアップ(mock-up)を用いて検証実験を行った。
【0086】
検証実験では、モックアップを活用し、エアボリュームの加振機であるキューソース(Q-source)と騒音測定用マイクロフォン(Microphone)を使用した。キューソース(Q-source)とモックアップの間の周波数応答関数を計測しており、一般的なタイヤのスムーズ(smooth)なメイングルーブの形状と、本発明のヘルムホルツ共鳴器が適用されたモックアップで製作して気柱共鳴の低減検証に活用した。図11は、その結果であり、従来例のグラフは、スムーズタイプ(グルーブのない形態)のメイングルーブであり、実施例のグラフは、本発明のヘルムホルツ共鳴器が適用されたメイングルーブユニット1100での信号である。実験検証結果のグラフのように気柱共鳴のピーク点が著しく減少したことが分かり、気柱共鳴音帯域の900~1250Hzの帯域のアールエムエス(RMS)値が106.85dBから100.95dBに約5.9dBが低減されたことが確認できる。
【0087】
このように、本発明によれば、メイングルーブユニット1100から発生する気柱共鳴音を低下させることができる。
【0088】
なお、前記ネック1313は、摩耗末期にタイヤ表面に現われることにより、ボイド(void)の増加による滑りの防止性能に寄与することもできる。
【0089】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や本質的特徴を変更せず、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解することができるだろう。したがって、以上で記述した実施形態は、すべての面で例としてのものであり、限定的ではないと理解しなければならない。例えば、単一型で説明されている各構成要素は、分散されて実施されることがあり、同様に分散されたものと説明されている構成要素も結合された形態で実施されることがある。
【0090】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導き出されるすべての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1000:騒音低減のための共鳴器を有するタイヤ
1100:メイングルーブユニット
1110:第1のメイングルーブ
1120:第2のメイングルーブ
1130:第3のメイングルーブ
1140:第4のメイングルーブ
1200:共鳴ユニット
1210:第1の共鳴部
1220:第2の共鳴部
1300:ネックユニット
1310:第1のネック部
1311:直線流路
1312:曲線流路
1313:ネック
1320:第2のネック部
1400:カーフユニット
1410:第1のカーフ部
1420:第2のカーフ部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11