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  • 特許-携行型時計の機能の使用を管理する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】携行型時計の機能の使用を管理する方法
(51)【国際特許分類】
   G04G 21/00 20100101AFI20221101BHJP
   G04G 21/02 20100101ALI20221101BHJP
【FI】
G04G21/00 Z
G04G21/02 Z
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020193068
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2021092556
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】19214105.9
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591260638
【氏名又は名称】チソット・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】エドアルド・フランツィ
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515178(JP,A)
【文献】特開平10-289210(JP,A)
【文献】特開2011-253340(JP,A)
【文献】特開2017-027594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 3/00-99/00
G06F 21/00,21/30-21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行型時計(100)の機能の使用を管理する方法であって、
機能に対するアクセスの権限を与えるように、携行型時計(100)の着用者を認証する認証ステップ(10)と、
機能へのアクセスを保持するように、携行型時計の着用者の少なくとも1つのバイオメトリック情報要素に基づいて決められるデジタル識別要素の有効性を検証することによって、所定の間隔にて、携行型時計の着用者のアイデンティティーを制御する制御ステップ(12)と、及び
有効でないことを示すデジタル識別要素が検証された後に、アクセスがロックされたときに、携行型時計(100)の前記機能に対するアクセスのロックを解除するロック解除ステップ(24)と
を含み、このロック解除ステップ(24)は、
携行型時計(100)の視覚的情報ブロードキャスト用インタフェース(3)上にグラフィック表現(41)を提示する提示サブステップ(25)と、
着用者を識別することを意図して、限定された時間間隔内にて、着用者の識別コードに対応する、前記グラフィック表現(41)に含まれる少なくとも2つの識別部分のシーケンスを選択する選択サブステップ(28)と、及び
選択されたシーケンスを検証する検証サブステップ(30)と
を含み、
前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素は、着用者の皮膚の部分に含まれ、
前記制御ステップ(12)は、前記携行型時計が備え、少なくとも1つの画像センサー(36)と、300~1100nmの波長の光放射を発することができるレーザータイプである少なくとも1つのマルチスペクトル照明源(37)と及び少なくとも1つの熱画像センサー(38)とを備える少なくとも1つのマルチスペクトルバイオメトリクス皮膚センサーによって、前記マルチスペクトルバイオメトリクス皮膚センサーに近接する着用者の皮膚の部分の複数の画像を取得する取得サブステップ(13)を含み、前記画像は、前記皮膚の部分に含まれる前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記選択サブステップ(28)は、前記グラフィック表現(41におけるシーケンスの前記識別部分の少なくとも1つを可視化する可視化段階(29)を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可視化段階(29)は、前記少なくとも1つの識別部分を含むことができるグラフィック表現(41)から少なくとも1つの関心領域をあらかじめ選択する選択サブ段階を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検証サブステップ(30)は、選択されたシーケンスと基準シーケンス(42)を比較する比較段階を含む
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記制御ステップ(12)は、前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素からデジタル識別要素を生成する生成サブステップ(17)を含む
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記制御ステップ(12)は、着用者のアイデンティティーの制御を予測して生成されるデジタル識別要素を検証する検証サブステップ(20)を含む
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記検証サブステップ(20)は、生成されたデジタル識別要素が基準デジタル識別要素と実質的に同じ又は同じ場合に、携行型時計の機能へのアクセス権限を保持するアクセス権限保持サブ段階(23)を行う比較段階(21)を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記取得サブステップ(13)は、異なる波長を用いて照らされた皮膚の部分を照らす照明段階(14)を含む
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記取得サブステップ(13)は、異なる波長を用いて照らされた皮膚の部分の画像を捕捉する捕捉段階(15)を含む
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記生成サブステップ(17)は、取得された画像に含まれる前記皮膚の部分に関連する前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素を特徴づける特徴づけ段階(18)を含む
ことを特徴とする請求項5又は請求項5を引用する場合の請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記生成サブステップ(17)は、前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素の特徴づけからデジタル識別要素を設計する設計段階(19)を含む
ことを特徴とする請求項5又は請求項5を引用する場合の請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記バイオメトリック情報要素は、この皮膚の血管網又はテクスチャに関連するものである
ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
携行型時計(100)の機能の使用を管理するシステム(1)であって、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成しており、
処理ユニット(2)、バイオメトリックセンサー(34)、入力インタフェース(35)、及び視覚的情報ブロードキャスト用インタフェース(3)を備え、これらは互いに接続され、前記バイオメトリックセンサー(34)は、少なくとも1つの画像センサー36と、300~1100nmの波長の光放射を発することができるレーザータイプである少なくとも1つのマルチスペクトル照明源37と及び少なくとも1つの熱画像センサー38とを備えるマルチスペクトルバイオメトリック皮膚センサーである
ことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステム(1)を備える
ことを特徴とする、携行型時計(100)
【請求項15】
請求項13に記載のシステム(1)を備える
ことを特徴とするコネクテッドタイプの機械式携行型時計(100)
【請求項16】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実行するプログラムコード命令を含み、
処理ユニット(2)によって実行される
ことを特徴とするコンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の機能の使用を管理する方法及びこのような方法を実装するシステムに関する。
【0002】
本発明は、さらに、このようなシステムを備える携行型時計、そして、コンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
携行型時計には、着用者が用いることができる一連の機能がある。時刻や日付をセッティングすることに加えて、このような機能には、着用者に固有の秘密データや個人的データを使用することを伴うことがあり、このような秘密データや個人的データは、パーソナライズされたサービスにアクセスするために有用である。これらのデータは、例えば、キー、証明(certificate)、認証コード、パスワード及びパーソナルコードであり、これらは、携行型時計をプライベートな企業ネットワークにセキュア(安全)に接続すること、銀行サーバーのようなセキュアなサーバーとの認証、署名及び/又は暗号化された電子メールを送受信するためのセキュアなメッセージングを可能にする。したがって、このような携行型時計の機能の使用に対するアクセスをセキュアにすることができることが重要であることを理解することができる。
【0004】
この目的のために、既存の技術において、使用の権限を与える/禁止する認証基準を強化することによって、例えば、追加の認証ステップを実装することによって、携行型時計の機能の使用を管理する方法が知られている。
【0005】
しかし、このような方法の主要な課題の1つは、携行型時計の着用者が認証された後に、特にその携行型時計が盗まれた場合に、任意の個人がその携行型時計の機能にアクセスできてしまうということに関わる。
【0006】
代替的手法、特に、従来技術にある問題がないもの、を見出す必要性があることを理解することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況で、本発明は、信頼性があり堅牢性が高いような、携行型時計の機能の使用を管理する方法を提供することを目的とする。
【0008】
このような方法には、自動的に、透過性が高く、着用者に対して非侵襲的に、携行型時計の着用者の識別を確実にするという利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、本発明は、携行型時計の機能の使用を管理する方法に関する。この方法は、機能に対するアクセスの権限を与えるように、携行型時計の着用者を認証する認証ステップと、機能へのアクセスを保持するように、携行型時計の着用者の少なくとも1つのバイオメトリック情報要素に基づいて決められるデジタル識別要素の有効性を検証することによって、所定の間隔にて、携行型時計の着用者のアイデンティティーを制御する制御ステップと、及び有効でないことを示すデジタル識別要素が検証された後に、アクセスがロックされたときに、携行型時計の前記機能に対するアクセスのロックを解除するロック解除ステップとを含み、このロック解除ステップは、携行型時計の視覚的情報ブロードキャスト用インタフェース上にグラフィック表現を提示する提示サブステップと、着用者を識別することを意図して、限定された時間間隔内にて、着用者の識別コードに対応する、前記グラフィック表現に含まれる少なくとも2つの識別部分のシーケンスを選択する選択サブステップと、及び選択されたシーケンスを検証する検証サブステップとを含む。
【0010】
他の実施形態においては、以下の特徴がある。
- 前記選択サブステップは、前記グラフィック表現におけるシーケンスの前記識別部分の少なくとも1つを可視化する可視化段階を含む。
- 前記可視化段階は、前記少なくとも1つの識別部分を含むことができるグラフィック表現から少なくとも1つの関心領域をあらかじめ選択する選択サブ段階を含む。
- 前記検証サブステップは、選択されたシーケンスと基準シーケンスを比較する比較段階を含む。
- 前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素は、着用者の皮膚の部分に含まれる。
- 前記制御ステップは、携行型時計が備える少なくとも1つのマルチスペクトルバイオメトリクス皮膚センサーによって、前記マルチスペクトルバイオメトリクス皮膚センサーに近接する着用者の皮膚の部分の複数の画像を取得するサブステップを備え、前記画像は、前記皮膚の部分に含まれる前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素を含む。
- 前記制御ステップは、前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素からデジタル識別要素を生成する生成サブステップを含む。
- 前記制御ステップは、着用者のアイデンティティーの制御を予測して生成されるデジタル識別要素を検証する検証サブステップを含む。
- 前記検証サブステップは、生成されたデジタル識別要素が基準デジタル識別要素と実質的に同じ又は同じ場合に、携行型時計の機能へのアクセス権限を保持するアクセス権限保持サブ段階を行う比較段階を含む。
- 前記取得サブステップは、異なる波長を用いて皮膚の部分を照らす照明段階を含む。
- 前記取得サブステップは、異なる波長を用いて照らされた皮膚の部分の画像を捕捉する捕捉段階を含む。
- 前記生成サブステップは、取得された画像に含まれる前記皮膚の部分に関連する前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素を特徴づける特徴づけ段階を含む。
- 前記生成サブステップは、前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素の特徴づけからデジタル識別要素を設計する設計段階を含む。
- 前記バイオメトリック情報要素は、この皮膚の血管網又はテクスチャに関連するものである。
【0011】
本発明は、さらに、携行型時計の機能の使用を管理するシステムに関し、このシステムは、前記方法を実行するように構成しており、処理ユニット、バイオメトリックセンサー、入力インタフェース、及び視覚的情報ブロードキャスト用インタフェースを備え、これらは互いに接続されている。
【0012】
好ましいことに、前記バイオメトリックセンサーは、マルチスペクトルバイオメトリック皮膚センサーである。
【0013】
本発明は、さらに、このようなシステムを備える、携行型時計、特に、コネクテッドタイプの機械式携行型時計、に関する。
【0014】
本発明は、さらに、前記方法におけるステップを実行するプログラムコード命令を含み、処理ユニットによって実行されるコンピュータープログラムに関する。
【0015】
添付の図面を参照しながら例示的な下の説明を読むことによって、他の特徴及び利点が明確になるであろう。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る、携行型時計の機能の使用を管理するシステムを備える携行型時計の概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る、携行型時計の機能の使用を管理する方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、携行型時計100を示しており、これは、この携行型時計100の機能の使用を管理するシステムを備える。このシステム1は、携行型時計100内に搭載され、これは、好ましくは、ハイブリッドディスプレーに接続される機械式携行型時計100である。これに関連して、この電子デバイス100は、携行型時計ケースのような本体と、この本体を着用者の手首などに固定することを可能にする腕輪のような取り付け要素とを備える。このシステム1は、特に、以下を備える。なお、これらに限定されず、他を排除するわけではない。
- ハードウェア及びソフトウェア資源を備える処理ユニット2、特に、メモリー要素6と連係する少なくとも1つのプロセッサー
- 第1のアナログ表示コンポーネント及び第2のデジタル及び/又は英数字表示コンポーネントを備えるハイブリッドディスプレー表盤のような視覚的情報ブロードキャスト用インタフェース3
- スピーカーのような音情報ブロードキャスト用インタフェース4
- 無線通信インタフェース5(例えば、セルラー、無線LAN、Bluetooth)
- 視覚的情報ブロードキャスト用インタフェース3などにおいて備えられるキーボードやタッチインタフェースのような入力インタフェース35、及び
- 少なくとも1つの画像センサー36と、300~1100nmの波長の光放射を発することができレーザータイプであることができる少なくとも1つのマルチスペクトル照明源37と、及び少なくとも1つの熱画像センサー38とを備える、バイオメトリックセンサー34、特に、この実施形態においてはマルチスペクトルバイオメトリック皮膚センサー34
【0018】
このシステム1では、処理ユニット2は、とりわけ、視覚的情報ブロードキャスト用インタフェース3及び音情報ブロードキャスト用インタフェース4、入力インタフェース35、そして、無線通信インタフェース5及びマルチスペクトルバイオメトリックセンサー34に接続される。また、マルチスペクトルバイオメトリックセンサー34は、電子デバイス100の本体内及び/又は取り付け要素内に配置されることにも留意すべきである。
【0019】
電子デバイス100にて実装されるこのシステム1は、離散的に、すなわち、着用者と携行型時計100との直接の介入/やりとりなしに、携行型時計の認証対象着用者の識別制御を確実にすることができ、これによって、着用者は、再度認証を受ける必要なく、着用している間のいつでも携行型時計100の機能を使用することができる。そして、着用者の識別は、この着用者の皮膚に含まれる少なくとも1つのバイオメトリック情報要素、例えば、皮膚の血管網又は皮膚のテクスチャ、に基づいて透過性があり離散的な形態で行われる。着用者の身体を覆う着用者のこの皮膚には、通常当業者には考慮に入れられない特殊性がある。なぜなら、人間の眼には自然には視認できず、異なる深さに位置する皮膚の構成要素において異なる波長(スペクトル)で吸収したり反射したりする特徴に関連するためである。簡略化されたモデルでは、皮膚には、「表皮」と呼ばれる層がある。この「表皮」は、半透明性であり、表面上に位置する。「表皮」の下には、「真皮」と呼ばれる層がある。この「真皮」にはとりわけ、血管(又は血管網)があり、血管においては、ヘモグロビンが赤色に近い高波長、例えば、760~930nm、において反射性が高く、このことによって、着用者の皮膚の血管網を出現させ又は示すことを可能にする。言い換えれば、皮膚を構成している表皮と真皮の成分の光吸収スペクトルは、電磁波長に応じて均一ではなく、皮膚の外観と色は、このような現象の複雑な組み合わせに起因する。このように、この着用者の皮膚のテクスチャは、本質的に亀裂や凹みによって形成され、このようなバイオメトリック情報要素を示したり出現させたりする場合、赤色の付近の波長に制限され、このことによって、亀裂の底部から影現象を消失させる傾向のある、照明源によって皮膚の照明を確実にすることができる。実際に、真皮における反射によって、そして、赤色の付近の波長が表皮を通ることによって逆投影効果が発生し、赤色から遠い色、通常、紫色(400nm)と黄橙色(600nm)の間の波長帯、の色スペクトルの光源による皮膚の照明が、逆に、これらの亀裂の底部における影の出現によって、皮膚におけるこれらの亀裂を強く対比させることを可能にする。なお、皮膚に含まれるバイオメトリック情報要素の識別は、好ましくは照明なしで、熱画像センサー38を用いることによって改善することができる。例えば、特に着用者の関心事の皮膚の部分に毛がある場合に、皮膚のテクスチャを示すために、好ましくは照明なしで、熱的画像センサー28を用いる。例えば、特に着用者の関心事の皮膚の部分に毛がある場合に、皮膚のテクスチャを示すために、熱的画像センサー38を用いることによって、周囲の皮膚、そして、それよりも冷たい髪、よりも一般的には温かい皮膚のテクスチャの亀裂を見えるようにすることが可能になる。したがって、この構成では、毛は皮膚のテクスチャにおける亀裂と熱的に区別することができる。それらの温度差のためである。
【0020】
なお、示されるべき又は明らかにされるべきバイオメトリック情報要素に応じた所定の波長の照射の下で、熱画像の捕捉を行うことができる。
【0021】
したがって、本発明の原理によると、定期的な着用者の識別は、着用者の皮膚の一部の画像に含まれる少なくとも1つのバイオメトリック情報要素に基づいて行われ、この皮膚の一部は、所望のバイオメトリック情報要素を含む画像を捕捉するために、必要に応じて、異なる波長にて照らすことができることを理解することができる。このように、異なる波長で実施される照明によって、又は熱画像を捕捉する場合などに照明なしで、これらの画像に含まれるこのバイオメトリック情報要素を示すことができる。
【0022】
このシステム1では、処理ユニット2のメモリー要素6は、あらかじめ定められた/生成された基準デジタル識別要素に関連するデータを含む。また、これらのメモリー要素6は、デジタル画像処理アルゴリズム39を含み、これは、着用者の皮膚に関連しその着用者の皮膚の部分に関連する画像に含まれる少なくとも1つのバイオメトリック情報要素を特徴づけることを可能にする。また、これらのメモリー要素6は、基準デジタル識別要素、さらに、着用者の識別制御の一部として定期的に生成されるデジタル識別要素、を生成する生成アルゴリズム40を含む。
【0023】
処理ユニット2のこれらのメモリー要素6は、さらに、少なくとも1つのグラフィック表現41を含み、これは、着用者が携行型時計100の機能のアクセス制限を解除することに寄与する。このグラフィック表現41は、例えば、少なくとも1つのオブジェクトを含む画像であることができる。例として、この画像は、家屋、車両、及び/又は月などの星のような複数のオブジェクトを含む風景を定めるものである。明らかに、この画像が少なくとも1つのオブジェクトを含む他のタイプの風景を定めるものであることができることを理解することができる。また、これらのメモリー要素6は、携行型時計100の機能に対するアクセスをアンロックするプロセスの構成の間に携行型時計の着用者によってあらかじめ選択されていた、このグラフィック表現41の基準識別部分を含む基準シーケンス42に関連するデータを含む。
【0024】
このような携行型時計100のシステム1は、図2に示している、携行型時計100の機能の使用に対するアクセスをセキュアにする方法を実装することができる。この方法は、認証対象着用者の識別について、離散的に、すなわち、非侵襲的に、そして、自動的に、着用者が、再度認証を受ける必要なく、着用している間のいつでも携行型時計100の機能を使用することができることを確実にすることを意図している。携行型時計100の機能は、時間、日付をセットすること、又はさらにはストップウォッチ、ナビゲーションシステム、歩数計、活動ロガー、メッセージングシステムを用いること、着用者に固有でありパーソナライズされたサービスにアクセスするために有用な秘密データや個人的なデータへのアクセスなどに関連することができる。
【0025】
この方法は、携行型時計100の機能に対するアクセスの権限を与えるように、携行型時計100の着用者を認証する認証ステップ10を含む。このステップ10によって、着用者が自身のアイデンティティーの証拠を提供することが可能になる。実際に、着用者は、オーセンティケーター又は秘密コードを用いる認証のために入力インタフェース35とやりとりをすることができる。
【0026】
そして、この方法は、所定の間隔にて、携行型時計の着用者のアイデンティティーを離散的に制御する制御ステップ12を含み、これは、機能へのアクセスの権限を保持/剥奪することを意図して、携行型時計の着用者の皮膚の部分に含まれる少なくとも1つのバイオメトリック情報要素に基づいて決められるデジタル識別要素の有効性を検証することによって行う。このステップ12の間に、前記所定の期間は、処理ユニット2によって自動的に構成されることができ、また、着用者によって定められることができる、規則的であってもよく不規則であってもよいような制御期間である。例として、この期間は数秒や数分であることができる。このような制御ステップ12によって、各期間の終わりにて、携行型時計の着用者の皮膚に含まれる少なくとも1つのバイオメトリック情報要素に応じて確立されるデジタル識別要素に基づいて、着用者の「バイオメトリック」アイデンティティーを制御することによって、携行型時計の着用者が依然として同じであることを検証することが可能になる。
【0027】
そして、この制御ステップ12は、前記センサー34に近接して配置された、着用者の皮膚の部分の複数の画像をセンサーによって取得する取得サブステップ13を備え、前記画像は、前記皮膚の部分に含まれる前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素を含む。このサブステップ13は、皮膚部分に対して異なる波長を用いて照射する段階14を備える。具体的には、この段階14の間に、処理ユニット2は、マルチスペクトルバイオメトリックセンサー34、そして特に、照明源37を駆動し、これによって、照明源37は、関心事の皮膚に固有な前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素を示したり明らかにしたりするように適合される正確な波長を用いて皮膚部分の方向に光放射を発する。このバイオメトリック情報要素は、ここで、着用者のこの皮膚の部分に含まれる、着用者のアイデンティティーの制御の一部として求められる。照明の構成が終わった後に、取得サブステップ13は、前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素を示したり明らかにしたりすることができる少なくとも1つの波長を用いて照射されたこの皮膚部分の画像を捕捉する段階15を備える。この段階15の間に、処理ユニット2は、マルチスペクトルバイオメトリクス皮膚センサー34、そして特に、写真センサー36を照射源37のアクティブ化/非アクティブ化と同期させて駆動し、これによって、少なくとも1つの波長にて照射された皮膚の部分に関連する少なくとも1つの画像を捕捉する。
【0028】
この取得サブステップ13は、さらに、皮膚部分の少なくとも1つの熱的画像を捕捉する段階16を備えることができる。このような段階16は、照明なしで実行することが好ましいが、この部分を照明する他の代替形態では、少なくとも1つの所定の波長を用いて行うことができ、これは、当然、示されるべき又は明らかにされるべきバイオメトリック情報要素に依存する。この段階16は、照明段階14及び画像捕捉段階15の前や後に行うことができる。
【0029】
そして、制御ステップ12は、取得された皮膚の部分の画像に含まれる前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素からデジタル識別要素を生成する生成サブステップ17を備える。このようなサブステップ17は、前記皮膚の部分に関連する画像に含まれる前記バイオメトリック情報要素を特徴づける特徴づけ段階18を備える。この段階134の間に、処理ユニット2は、取得された画像を処理するためのアルゴリズム39を実装する。これは、これらの画像それぞれにおける前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素を識別/検出することを目的とする。すでに述べたように、前記バイオメトリック情報要素は、着用者の皮膚のテクスチャ、着用者のこの皮膚の部分に含まれる血管網などに関連する情報要素であることができる。処理ユニット2によるこれらのアルゴリズム39、40の実装は、例えば、これらの画像をいくつかのセグメントに切断するプロセスを提供することができる。ここで、各取得画像は、着用者の皮膚の部分の全体像を与え、そして、前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素の識別の関連性が変動する領域を備える。このような切断プロセスは、処理されるセグメントを抽出し、これらの画像において処理しない部品を除去することに関与する。そして、これらのアルゴリズム39は、皮膚の部分の局所化領域によって、識別される前記少なくとも1つの特定のバイオメトリック情報要素に関連する特徴を含むこれらの画像セグメントのインデクシングを提供することができ、これによって、皮膚の部分のこの地理的領域の特徴の形態学的タイポロジーに関する適切な処理を各領域に割り当てることができるようにする。これに関連して、これらのアルゴリズム39は、処理、変換及び検出のタイプの画像解析操作を行うことによって、これらの画像それぞれの画素によって担持される情報を示すことによって、当該画像の各セグメントを処理する。その後に、これらのアルゴリズム39は、特徴フィルタリング及び抽出又はベクトル化操作を行い、これによって、識別され抽出された前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素に関連する画像データをパラメーター的データ、典型的には、インデックス、百分率などとして表される相対的数値、に変換する。
【0030】
ここで、同じ皮膚を表すいくつかの画像を取得することによって、この特徴づけ段階18の精度と有効性を向上させることに役立つ。
【0031】
その後に、生成サブステップ16は、前記少なくとも1つのバイオメトリック情報要素の特徴づけからデジタル識別要素を設計する段階19を備える。この段階19の間に、処理ユニット2は、特徴づけ段階18の間に得られたパラメーター的データの処理のために特に設けられるようなデジタル識別要素を生成するための生成アルゴリズム40を実装する。このパラメーター的データは、バイオメトリック情報要素に関連する。
【0032】
そして、制御ステップ12は、着用者のアイデンティティーの制御を予測して生成されるデジタル識別要素を検証する検証サブステップ20を備える。この検証サブステップ20は、処理ユニット2によって実装される、生成されたデジタル識別要素と基準デジタル識別要素の間で比較する比較段階21を備える。この方法では、この基準デジタル識別要素を定めるステップ11の間に、着用者が正当に認証された後で、そのアイデンティティーが確実であるならば、基準デジタル識別要素を作ることができ、このステップ11は、制御ステップ12の間に実行される取得サブステップ13及び生成サブステップ17と同様のサブステップを与える。この方法では、携行型時計100の着用者が認証されると、処理ユニット2は、この定義ステップ11を行い、そして、処理ユニット2のメモリー要素6において得られる基準デジタル識別要素のアーカイブを行う。したがって、この基準デジタル識別要素は、調整プロセス中に、処理ユニット2によって自動的に決めることができ、又は着用者によって構成することができ、これによって、この基準デジタル識別要素を定める際に着用者をガイドする。
【0033】
比較段階21は、さらに、生成されたデジタル識別要素が基準デジタル識別要素と実質的に同じ又は同じ場合に、携行型時計100の機能に対するアクセス権限を保持する保持サブ段階22を含む。この場合、制御ユニット2は、再度、決められた期間に応じて、制御ステップ12における取得サブステップ13と生成サブステップ17を行って、再度、比較段階21を行う。
【0034】
逆に、この比較段階21は、生成されたデジタル識別要素が基準デジタル識別要素と大きく異なる又は異なる場合に、携行型時計100の機能に対するアクセス権限を剥奪する剥奪サブ段階23を含む。この場合、携行型時計100の着用者及び所有者が所有しなくなった可能性があるので、携行型時計100の機能へアクセスがなくされる。したがって、これに関連して、この剥奪サブ段階23は、この携行型時計100の機能に対するアクセスをロックする。このように、携行型時計100の機能を再び用いるためには、このアクセスのロックを解除する必要がある。
【0035】
このために、本方法は、有効性を示さないデジタル識別要素を検証した後にアクセスがロックされたときに、携行型時計100の機能に対するアクセスのロックを解除するロック解除ステップ24を含む。
【0036】
このステップ24は、前記携行型時計100の視覚的情報ブロードキャスト用インタフェース3上にグラフィック表現41を提示する提示サブステップ25を含む。このサブステップ25は、携行型時計100の機能へのアクセスのロック解除を実装するために設けられるグラフィック表現41の表示を視覚的情報ブロードキャスト用インタフェース3上/内に生成する表示生成段階26を含む。この段階26は、視覚的情報ブロードキャスト用インタフェース上に表示される少なくとも2つのグラフィック表現のサンプルから、ロックの解除の実装のために設けられるグラフィック表現41を着用者が選択する選択サブ段階を含むことができる。なお、携行型時計100の機能に対するアクセスのロックの解除をするプロセスを構成するときに着用者が選択したグラフィック表現41を着用者のみが知っていることに留意すべきである。
【0037】
そして、前記提示サブステップ25は、生成段階26が実行された後にすぐカウントダウンがトリガーされるカウントダウントリガー段階27を含む。言い換えれば、ブロードキャスト用インタフェース3上にグラフィック表現41が提示された後に、あらかじめ構成可能なカウントダウンがトリガーされる。このような段階27は、このカウントダウンによって定められる限定された時間間隔から、ブロードキャスト用インタフェース3上に/内に表示されるグラフィック表現41の識別部分のシーケンスの入力に必要な推定時間をカウントすることに寄与する。
【0038】
その後に、ロック解除ステップ24は、着用者を識別することを意図して、限定された時間間隔内にて、着用者の識別コードに対応する、前記グラフィック表現41の少なくとも2つの識別部分のシーケンスを選択する選択サブステップ28を含む。このような識別部分は、ブロードキャスト用インタフェース3上に/内に提示されるグラフィック表現41において直接見ることができない。これらの状況で、選択サブステップ28は、前記グラフィック表現41におけるシーケンスの前記識別部分の少なくとも1つを可視化する可視化段階29を含む。この可視化段階29は、前記少なくとも1つの識別部分を含むことができる、グラフィック表現41の少なくとも1つの関心領域を選択する選択サブ段階を含む。この選択サブ段階の間に、着用者は、例えば、第1の関心領域又は第2の関心領域を選択する。これは、入力インタフェース35からのこの第1の領域又はこの第2の領域を拡大することによって行う。この第1又は第2の関心領域が選択された後に、識別部分が見えるようになる。この構成では、シーケンスを実行/構成するために有用な各識別部分を入力インタフェース35から選択することができる。
【0039】
なお、シーケンスが順序づけられたいくつかの数の識別部分を含み、選択された関心選択領域が、例えば、シーケンスにおいて2つの識別部分のみが順に順序づけられた3つの識別部分を含むことができる。これに関連して、残りの識別部分が、シーケンスの一部であるために、グラフィック表現41の別の関心領域に含まれる識別部分を選択することを必要とする。
【0040】
そして、ロック解除ステップ24は、選択されたシーケンスを検証する検証サブステップ30を含む。この検証サブステップ30は、カウントダウンによって定められる限定された時間間隔内にて識別部分のシーケンスの選択が行われることを制御する制御段階31を含む。この選択がこの限定された時間間隔内にて行われるかぎり、検証サブステップ30は、処理ユニット2によって実装される、前記選択されたシーケンスと基準シーケンス42とを比較する比較段階32を含む。この比較段階32は、前記シーケンスが基準シーケンス42と実質的に異なる又は異なる場合に、携行型時計100の機能へのアクセスを禁止するサブ段階を含む。逆に、この比較段階32は、前記シーケンスが基準シーケンス42と実質的に同じ又は同じ場合に、携行型時計100の機能へのアクセスの権限を与えるサブ段階を含む。
【0041】
この選択がこの限定された時間間隔内に行われなければ、検証サブステップ30は、提示サブステップ25及び選択サブステップ28を更新する更新段階33を実行する。その後に、シーケンスの選択が、限定された時間間隔内に再び行われない場合、所定の時間の間に又は確定的に、検証サブステップ30は、携行型時計100の機能をブロックするブロックサブステップを含む。
【0042】
本発明は、さらに、本方法のステップ10~33を実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータープログラムに関し、このプログラムは、携行型時計100の処理ユニット2によって実行される。
【符号の説明】
【0043】
1 システム
2 処理ユニット
3 視覚的情報ブロードキャスト用インタフェース
4 音情報ブロードキャスト用インタフェース
5 無線通信インタフェース
6 メモリー要素
34 バイオメトリックセンサー
35 入力インタフェース
41 グラフィック表現
42 基準シーケンス
100 携行型時計
図1
図2