(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】天吊り空調機の施工方法
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0047 20190101AFI20221101BHJP
F24F 13/32 20060101ALI20221101BHJP
F24F 13/20 20060101ALI20221101BHJP
F24F 1/0007 20190101ALI20221101BHJP
【FI】
F24F1/0047
F24F13/32
F24F1/0007 401A
F24F1/0007 401D
F24F1/0007
(21)【出願番号】P 2020202267
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2020118252
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】込山 治良
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】中 悟史
(72)【発明者】
【氏名】古川 潤
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 寛之
(72)【発明者】
【氏名】福永 裕也
(72)【発明者】
【氏名】堀場 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】亀山 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】田島 広樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】金子 知弘
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-249401(JP,A)
【文献】特開2009-180489(JP,A)
【文献】特開2011-231494(JP,A)
【文献】実開平06-004533(JP,U)
【文献】特開2020-186855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0047
F24F 13/32
F24F 13/20
F24F 1/0007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場の建物に取付け可能な天吊り空調機の施工方法であって、
天吊り空調機本体と、前記空調機本体に連結される付帯部品と、前記空調機本体と前記付帯部品とを一体的に保持する天吊り用のフレームと、を備え、前記空調機本体が有する天吊り用の取付部分は、前記フレームに取り付けられていると共に、前記フレームが前記空調機本体と共に前記空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた場合に、前記フレームに対する前記空調機本体の相対移動を規制するための規制手段を有する天吊り空調ユニットを前記工事現場外で組み立てて一体化する組立作業工程と、
前記天吊り空調ユニットを前記工事現場に運搬する運搬工程と、
前記工事現場に運搬された前記天吊り空調ユニットを前記建物の所定の場所に取り付ける取付け工程と、を有
し、
前記運搬工程では、前記フレームが前記空調機本体と共に前記空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた姿勢で車両に搭載された状態で、前記天吊り空調ユニットを前記工事現場に運搬し、
前記運搬工程では、前記フレームが前記空調機本体と共に前記空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた姿勢で台車に搭載された状態で、前記天吊り空調ユニットを前記工事現場に運搬し、前記工事現場において、前記台車の底部に対して回動可能な側部と共に前記天吊り空調ユニットを横倒し方向へ回動した状態で、前記天吊り空調ユニットを前記台車から降ろす、
天吊り空調機の施工方法。
【請求項2】
前記フレームには、前記建物の天井から垂下する吊り下げ金具に対応する位置に挿通孔を設けた吊り下げ部が設けられており、
前記取付け工程では、前記天吊り空調ユニットを、前記挿通孔に前記天井から垂下する吊り下げ金具を挿通した状態で取り付ける、
請求項
1に記載の天吊り空調機の施工方法。
【請求項3】
前記フレームに、前記天吊り空調ユニットが置かれる床面から前記空調機本体と前記付帯部品を浮かせることが可能な仮設部材を取り付けた状態の前記天吊り空調ユニットを複数積み重ねる積み重ね工程を更に有する、
請求項
1又は2に記載の天吊り空調機の施工方法。
【請求項4】
前記付帯部品は、ダクトが接続されるチャンバーであり、前記ダクトを工具不要で接続可能な連結部を有する、
請求項1から3の何れか一項に記載の天吊り空調機の施工方法。
【請求項5】
前記連結部は、前記フレームの内側に収まる、
請求項4に記載の天吊り空調機の施工方法。
【請求項6】
前記連結部は、開口部に差し込まれる前記ダクトの端部と嵌合する柔軟な嵌合部を有する、
請求項5又は6に記載の天吊り空調機の施工方法。
【請求項7】
前記フレームには、配管が接続される接続部を支持する補助フレームが設けられており、
前記補助フレームには、前記天吊り空調ユニットの周囲に障害物が設置されるのを防ぐ障害物防止手段が設けられる、
請求項1から6の何れか一項に記載の天吊り空調機の施工方法。
【請求項8】
前記空調機本体は、配管を工具不要で接続可能なカプラを有する、
請求項1から7の何れか一項に記載の天吊り空調機の施工方法。
【請求項9】
工事現場の建物に取付け可能な天吊り空調機の施工方法であって、
天吊り空調機本体と、前記空調機本体に連結される付帯部品と、前記空調機本体と前記付帯部品とを一体的に保持する天吊り用のフレームと、を備え、前記空調機本体が有する天吊り用の取付部分は、前記フレームに取り付けられている天吊り空調ユニットに対し、前記フレームが前記空調機本体と共に前記空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた場合に、前記フレームに対する前記空調機本体の相対移動を規制するための規制手段を取り付ける取付工程と、
前記フレームが前記空調機本体と共に前記空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた姿勢で台車に搭載された状態で、前記天吊り空調ユニットを前記工事現場に運搬し、前記工事現場において、前記台車の底部に対して回動可能な側部と共に前記天吊り空調ユニットを横倒し方向へ回動した状態で、前記天吊り空調ユニットを前記台車から降ろす運搬工程と、
前記フレームが前記空調機本体と共に前記空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた姿勢で車両に搭載された状態で前記工事現場に運搬された前記天吊り空調ユニットから、前記規制手段を取り外す取外し工程と、を有する、
天吊り空調機の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天吊り空調機、及び天吊り空調機の施工方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天井裏に据え付ける隠蔽式の空調機の据え付けを容易にする各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1-2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5208841号公報
【文献】特開2019-207092号公報
【文献】特開2019-207095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天井裏に据え付ける隠蔽式の空調機は、通常、建物の構造材に固定された棒ネジ(「全ネジ」と呼ばれる場合もある)に取り付けられ、当該棒ネジによって吊り下げられたような形態で据え付けられる。よって、市販されている隠蔽式の空調機の取付部分は、このような吊り下げ状態で据え付けることを前提とした構造になっている。したがって、現場における空調機の据え付けを容易にするために、例えば、空調機本体と付帯部品を工場内においてフレームで一体化しておき、工場から遠隔の工事現場へ車両等で輸送する形態を採る場合、当該フレームに吊り下げ状態で取り付けられた空調機本体の取付部分が輸送中に不具合を起こすのを防ぐためには、当該空調機本体が当該フレームから吊り下げられた状態を維持するような姿勢で車両へ搭載することが好ましい。
【0005】
しかし、隠蔽式の空調機は、狭い天井裏の空間へ収める必要がある。よって、上記フレームは、通常、空調機本体と同様、基本的に鉛直方向の寸法よりも水平方向の寸法の方が長い横長の外観形状となるように設計される。したがって、このように空調機本体と付帯部品をフレームで一体化したものを車両に搭載する場合、荷台の床面積を占有する割に、荷台の上部空間が空く状態となる。
【0006】
そこで、例えば、車両による輸送を効率的に行うために、空調機本体と付帯部品を一体化したフレームを横倒しの状態、すなわち、建物へ据え付けられた空調機の吊り下げ方向に対して傾けた状態で車両へ搭載することで、荷台の上部空間を有効活用する場合がある。また、運搬時に狭い空間等を通過するために一時的に傾ける場合がある。しかし、空調機本体や付帯部品を一体化したフレームを傾けると、上述したように、フレームに吊り下げ状態で取り付けられた空調機本体の取付部分が輸送中に不具合を起こす可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、空調機本体を吊り下げ状態でフレームに取り付けたものであっても、当該フレームを傾けた状態で運搬することが可能な天吊り空調ユニット及び施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた場合に、フレームに対する空調機本体の相対移動を規制するための規制手段を設けることにした。
【0009】
詳細には、本発明は、天吊り空調ユニットであって、天吊り空調機本体と、空調機本体に連結される付帯部品と、空調機本体と付帯部品とを一体的に保持する天吊り用のフレームと、を備え、空調機本体が有する天吊り用の取付部分は、フレームに取り付けられていると共に、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた場合に、フレームに対する空調機本体の相対移動を規制するための規制手段を有し、空調機本体は、配管を工具不要で接続可能なカプラを有する。
【0010】
ここで、規制手段とは、フレームに対する空調機本体の相対移動を規制するための手段であり、例えば、空調機本体に自ら接触することによって当該空調機本体の移動を制限する形態や、空調機本体をフレームに取り付けるための部材自身が当該空調機本体の移動を制限する形態を含む概念である。
【0011】
上記の天吊り空調ユニットであれば、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた場合であっても、フレームに対する空調機本体の相対移動が規制手段によって規制されるため、空調機本体が有する天吊り用の取付部分付近に空調機本体の自重が加わることによる破損を防ぐことができる。このため、空調機本体を吊り下げ状態で取り付けたフレームを天吊り時の姿勢から傾けた状態で輸送することが可能である。そして、天吊り空調ユニットの設置箇所において配管を容易に接続することが可能である。
【0012】
なお、付帯部品は、ダクトが接続されるチャンバーであり、ダクトを工具不要で接続可能な連結部を有するものであってもよい。この場合、連結部は、フレームの内側に収まるものであってもよい。また、連結部は、開口部に差し込まれるダクトの端部と嵌合する柔軟な嵌合部を有していてもよい。これによれば、天吊り空調ユニットの設置箇所においてダクトを容易に接続することが可能である。また、連結部がフレームから突き出ないため、天吊り空調ユニットの運搬中に当該連結部を破損させる可能性が極めて低く、運搬が容易である。
【0013】
また、フレームには、配管が接続される接続部を支持する補助フレームが設けられており、補助フレームには、天吊り空調ユニットの周囲に障害物が設置されるのを防ぐ障害物防止手段が設けられていてもよい。これによれば、例えば、天吊り空調ユニットのメンテナンスに必要な作業空間に障害物が設置されるのを防ぐことができる。
【0014】
また、本発明は、施工方法の側面から捉えることもできる。例えば、本発明は、工事現場の建物に取付け可能な天吊り空調機の施工方法であって、上記何れかの天吊り空調ユニットを工事現場外で組み立てて一体化する組立作業工程と、天吊り空調ユニットを工事現場に運搬する運搬工程と、工事現場に運搬された天吊り空調ユニットを建物の所定の場所に取り付ける取付け工程と、を有するものであってもよい。上記の天吊り空調ユニットであれば、横倒しにして輸送することが可能であるため、例えば、天吊り空調ユニットを車両に複数まとめて搬送することにより、効率的な施工を行うことが可能である。
【0015】
また、運搬工程では、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた姿勢で車両に搭載された状態で、天吊り空調ユニットを工事現場に運搬するものであってもよい。上記の天吊り空調ユニットであれば、横倒しにして輸送することが可能であるため、例えば、天吊り空調ユニットを車両に複数まとめて搬送することにより、搬送効率を上げることが可能である。
【0016】
また、運搬工程では、フレームが空調機本体と共に空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けられた姿勢で台車に搭載された状態で、天吊り空調ユニットを工事現場に運搬し、工事
現場において、台車の底部に対して回動可能な側部と共に天吊り空調ユニットを横倒し方向へ回動した状態で、天吊り空調ユニットを台車から降ろしてもよい。これによれば、天吊り空調ユニットを台車から容易に降ろすことができる。
【0017】
また、フレームには、建物の天井から垂下する吊り下げ金具に対応する位置に挿通孔を設けた吊り下げ部が設けられており、取付け工程では、天吊り空調ユニットを、挿通孔に天井から垂下する吊り下げ金具を挿通した状態で取り付けるものであってもよい。これによれば、吊り下げ金具を吊り下げ部の挿通孔に通すことで、天吊り空調ユニットの取り付けが可能となる。
【0018】
また、上記の施工方法は、フレームに、天吊り空調ユニットが置かれる床面から空調機本体と付帯部品を浮かせることが可能な仮設部材を取り付けた状態の天吊り空調ユニットを複数積み重ねる積み重ね工程を更に有していてもよい。これによれば、例えば、天吊り空調ユニットの下側部分のフレームが省略されている場合であっても、天吊り空調ユニットを積み重ね可能である。
【0019】
また、本発明は、例えば、天吊り空調機本体に用いられる障害物防止装置であって、空調機本体に設定されている作業空間を少なくとも上側から覆う覆いと、空調機本体と付帯部品とを一体的に保持する天吊り用のフレームに覆いを固定する固定手段と、を備えるものであってもよい。これによれば、例えば、天吊り空調ユニットのメンテナンスに必要な作業空間に障害物が設置されるのを防ぐことができる。
【0020】
また、本発明は、天吊り空調機本体と、天吊り空調機本体に連結される付帯部品とを天吊り用のフレームで一体的に保持した天吊り空調ユニットの運搬用台車であって、天吊り空調ユニットを、空調機本体の天吊り時の姿勢から傾けた姿勢で搭載可能な底部と、底部に搭載された天吊り空調ユニットを側方から囲む側部と、を備え、側部は、天吊り空調ユニットと共に横倒し方向へ回動可能なように底部へ連結されているものであってもよい。これによれば、天吊り空調ユニットを台車から容易に降ろすことができる。
【0021】
また、本発明は、天吊り空調機本体と、空調機本体に連結される付帯部品とを天吊り用のフレームで一体的に保持した天吊り空調ユニットに取り付け可能な仮設部材であって、フレームに取り付けられてフレームを支持する支持部と、支持部から下方に延在する脚部と、脚部の下端に設けられる底部と、を備え、脚部は、天吊り空調ユニットが床面に置かれた状態において空調機本体を床面から浮かせることが可能な長さを有するものであってもよい。これによれば、下部のフレームが省略されている天吊り空調ユニットであっても、天吊り空調ユニット同士を積み重ねることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
上記の天吊り空調ユニット及び施工方法であれば、空調機本体を吊り下げ状態でフレームに取り付けたものであっても、当該フレームを傾けた状態で運搬することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、天吊り空調ユニットを斜め上から見た状態を示した図である。
【
図2】
図2は、天吊り空調ユニットを真横から見た状態を示した図である。
【
図3】
図3は、天吊り空調ユニットを車両に搭載する方法を示した図である。
【
図4】
図4は、横倒しの状態で車両の荷台に積まれた天吊り空調ユニットの一例を示した図である。
【
図5】
図5は、台車に載せた天吊り空調ユニットを示した図である。
【
図6】
図6は、天吊り空調ユニット内に発生する荷重の一例を示した図である。
【
図7】
図7は、天吊り空調ユニットに設けられている部材を示した図である。
【
図9】
図9は、仮止めの取り付け状態を示した図である。
【
図10】
図10は、吊り下げ部の部分を斜め上から示した図である。
【
図11】
図11は、吊り下げ部の部分を斜め下から示した図である。
【
図12】
図12は、吊りボルトの下端を位置決めするゲージの第1例を示した図である。
【
図13】
図13は、吊りボルトの下端を位置決めするゲージの第2例を示した図である。
【
図14】
図14は、ゲージを使った天吊り空調ユニットの取り付け方法を解説した図である。
【
図16】
図16は、フレームを解体する様子を示した図である。
【
図19】
図19は、ダクトの接続作業の様子を示した図である。
【
図20】
図20は、実施形態と変形例の天吊り空調ユニットの外寸を比較した図である。
【
図21】
図21は、補助フレームに設けた障害物防止手段の一例を示した図である。
【
図23】
図23は、天吊り空調ユニットを重ね置きした様子を示した第1の図である。
【
図24】
図24は、天吊り空調ユニットを重ね置きした様子を示した第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0025】
図1は、天吊り空調ユニット1を斜め上から見た状態を示した図である。また、
図2は、天吊り空調ユニット1を真横から見た状態を示した図である。
図1では、天吊り空調ユニット1が天井から吊りボルトKによって吊り下げられた状態を示している。説明の便宜上、本実施形態では、
図1及び
図2においてZ軸方向を天吊り空調ユニット1の上方向と定義し、X軸とY軸によって確定されるXY平面に沿った方向を天吊り空調ユニット1の横方向と定義する。また、天吊り空調ユニット1を建物の天井から吊り下げる吊りボルトKには、通常、
図1に示されるような振れ止めFが設けられているが、吊りボルトKに設けられる振れ止めはこのような形態に限定されるものではない。振れ止めFに設けられる振れ止めは、例えば、上面視において対角線状に交差するクロス式の形態であってもよい。また、振れ止めは、例えば、天吊り空調ユニット1が天井に直付けされている場合や、天吊り空調ユニット1を吊り下げる吊りボルトKが極めて短い場合、吊りボルトKよりも強固な金具で天吊り空調ユニット1が天井に剛接続される場合には、省略される。また、振れ止めは、吊りボルトKの上部と下部とに取り付ける形態に限定されるものでなく、例えば、上端が天井へ埋め込まれ、下端が天吊り空調ユニット1に連結されるものであってもよい。
【0026】
天吊り空調ユニット1は、
図1及び
図2に示されるように、フレーム2に空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5を組み付けて一体化した空調ユニットである。給
気チャンバー4と還気チャンバー5は、本願でいう「付帯部品」の一例である。本願でいう「付帯部品」とは、空調機本体3と共に用いられる空調関連の部品全般であり、このような給気チャンバー4と還気チャンバー5の他、例えば、各種チャンバー、冷媒配管、水配管、ドレン配管、ドレンポンプ、ダンパー、吸排気グリル、フィルター、その他各種の空調関連部品が挙げられる。天吊り空調ユニット1は、建物の上部階あるいは屋上の床面を構成する床と、天吊り空調ユニット1が設置される階の天井面を構成する化粧用の天井パネルとの間にある狭小の天井裏空間に設置される。よって、天吊り空調ユニット1は、
図1に示されるように、基本的に鉛直方向の寸法よりも水平方向の寸法の方が長い横長の外観形状となっている。
【0027】
また、天吊り空調ユニット1が天井パネルの裏側に設置される場合、天吊り空調ユニット1は隠蔽状態となる。しかし、天吊り空調ユニット1は、このように隠蔽状態で設置される形態に限定されるものではない。例えば、天井に化粧用の天井パネルが設置されない場合、天吊り空調ユニット1は、居室の人から視認できる状態となる。
【0028】
また、吊りボルトKは、床を構成する床コンクリートに埋め込まれた吊りボルト支持用のナットに螺合されていてもよいが、代わりに、梁を構成するH鋼等の構造材に取り付けられたハンガー等の各種部材に螺合されていてもよい。
【0029】
天吊り空調ユニット1は、
図1及び
図2に示されるように、空調機本体3の排気口側に給気チャンバー4を連結し、空調機本体3の吸気口側に還気チャンバー5を連結している。よって、天吊り空調ユニット1は、空調機本体3をフレーム2の中心部に配置し、給気チャンバー4と還気チャンバー5で空調機本体3を挟み込むような形態となっている。空調機本体3と給気チャンバー4との連結部分、及び、還気チャンバー5と給気チャンバー4との連結部分は、柔接続されており、多少の相対移動が可能なようになっている。すなわち、一方の開口部に嵌め込まれる他方の開口部がやや小さく製作されており、開口部同士の隙間を気密用の柔軟なスポンジパッキン等のシール材で埋める形態を採ることにより、多少の相対移動が可能な柔接続構造となっている。
【0030】
まず、空調機本体3について説明する。空調機本体3は、矩形の筐体31の内部に温度調整用の熱媒が流れるコイルと、送風用の電動ファンとを内蔵したパッケージユニットであり、筐体31の外部に補機32や付帯配管33も備わっている。補機32としては、例えば、コイルに流す熱媒が通る熱媒配管の流路を切り替える弁、コイルに凝縮した水を受けるドレンパンを排水するための排水ポンプ等が挙げられる。
【0031】
空調機本体3は、筐体31の外面に設けられた天吊り用取付部分34が、フレーム2に設けられた吊り下げ金具26に取り付けられることにより、支持される。空調機本体3は、建物に設けられた吊りボルトK等の吊り下げ金具によって吊り下げ状態で使用されることを想定した既製品の装置であるため、天吊り用取付部分34も吊りボルトKのような吊り下げ金具に取り付けられることを想定した設計となっている。よって、本実施形態の天吊り空調ユニット1では、フレーム2に設けている吊り下げ金具26を、このような吊り下げ金具に見立てた形態にすることで、空調機本体3がフレーム2内で吊り下げ状態となるように設計されている。また、空調機本体3が電動ファンを内蔵しているため、天吊り用取付部分34には防振ゴム35(本願でいう「防振用の部材」の一例である)が設けられており、空調機本体3からフレーム2へ伝達される振動を防振ゴム35で遮断する。これにより、空調機本体3が発する振動でフレーム2が共振することによる異音等の発生が可及的に抑制される。このような防振ゴム35には、防振のために動きを許容する防振許容方向が設計上定められているため、荷重を受けている状態で運搬される場合には防振許容方向と荷重の方向(重力の方向)とが概ね一致していることが望まれる。なお、空調機本体3の振動を遮断する手段としては、このようにフレーム2と空調機本体3との間に防
振ゴム35を介する形態に限定されるものではない。例えば、フレーム2と吊りボルトKとの連結部分にバネあるいはゴムを設けてもよい。しかし、この場合、フレーム2は吊りボルトKに対して相対移動可能となるため、フレーム2自体は耐震性を有しないことになる。したがって、天吊り空調ユニット1全体の耐震性を確保する観点から、本実施形態では、フレーム2と吊りボルトKとの連結部分については剛接続することにより、フレーム2自体を耐震構造とし、その代わりにフレーム2と空調機本体3との間に防振ゴム35を介する形態にしている。
【0032】
次に、給気チャンバー4について説明する。給気チャンバー4は、空調機本体3から吹き出る空気調和された空気を、建物の各所に張り巡らせた複数の給気ダクトへ分流させるためのチャンバーである。よって、チャンバーの内部空間を形成する矩形の筐体41には、給気ダクトを連結するための連結用開口部42が複数設けられている。
図1及び
図2では、筐体41に連結用開口部42が6つ設けられているが、連結用開口部42の個数は、筐体41の大きさや連結用開口部42の口径等に応じて適宜変更される。また、給気チャンバー4は、6つの連結用開口部42全てに給気ダクトが連結される形態に限定されるものではない。給気チャンバー4に実際に接続される給気ダクトの本数は、天吊り空調ユニット1を設置する箇所に設けられる給気ダクトの本数に応じる。よって、天吊り空調ユニット1を設置する箇所に設けられる給気ダクトが例えば2本であれば、給気チャンバー4に6つある連結用開口部42のうちの4つについては、開口部分が閉止された状態で用いられる。したがって、このように開口部分が閉止される連結用開口部42を予め省略し、必要数の連結用開口部42だけを設けた給気チャンバー4を製作して天吊り空調ユニット1に組み込むことも考えられるが、本実施形態では、施工効率の向上や部材の製作期間の短縮を図るべく、様々な設置箇所へ適用できる、共通化された天吊り空調ユニット1を多数用意することを提案する。しかし、本願で開示する天吊り空調ユニット1は、このように各所で共通に適用できる形態に限定されるものではない。天吊り空調ユニット1は、設置箇所に応じた数の連結用開口部42を有する給気チャンバー4を備えたものであってもよい。
【0033】
次に、還気チャンバー5について説明する。還気チャンバー5は、建物の各所に張り巡らせた複数の還気ダクトから流れる空気を合流させるためのチャンバーである。よって、還気チャンバー5についても給気チャンバー4と同様、還気ダクトを連結するための連結用開口部が複数設けられている。還気チャンバー5も給気チャンバー4と同様、様々な設置箇所へ適用できるように、連結用開口部を多数設けた形態を採るが、天吊り空調ユニット1は、上述したのと同様、設置箇所に応じた数の連結用開口部を有する還気チャンバー5を備えたものであってもよい。
【0034】
なお、給気チャンバー4と還気チャンバー5は、空調機本体3のように電動ファン等の駆動部を内蔵するものではないため、基本的に振動を発しない。よって、本実施形態において、給気チャンバー4と還気チャンバー5は、防振ゴムといった振動伝達を遮断する部品を介さずにフレーム2へ取り付けられている。しかし、天吊り空調ユニット1は、このような形態に限定されるものではない。天吊り空調ユニット1は、例えば、給気チャンバー4や還気チャンバー5を、防振ゴムを介してフレーム2に取り付けたものであってもよい。また、天吊り空調ユニット1は、例えば、給気チャンバー4や還気チャンバー5を空調機本体3と同様に吊り下げ構造の部材でフレーム2に取り付けた形態であってもよい。
【0035】
このように、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5を一体化した天吊り空調ユニット1は、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5のそれぞれの単体と比べると、当然に重量が大きい。よって、屋内用の高所作業車で持ち上げて建物の天井付近へ取り付け可能にするためには軽量化が求められる。そこで、本実施形態の天吊り空調ユニット1では、フレーム2をアルミニウム製の部材で構成している。このため、フ
レーム2を構成するアングル材21同士を締結する部分においても、リブプレート22,23とボルトで締結することにより、アングル材21同士を溶接する場合よりも十分な強度が発揮されるようにしている。また、フレーム2の端部付近の強度を強化するため、アングル材21の端部同士をフレーム2の角に相当する部位で互いに締結する棒ネジ25が設けられている。また、フレーム2に複数あるアングル材21同士の締結部分の中でも、リブプレートの板面に沿った方向(面方向)へ荷重が加わる部位(符号23の部位)については1箇所につき1枚のリブプレート23を設けているのに対し、リブプレートを曲げる方向の荷重が加わる部位(符号22の部位)については1箇所につき2枚のリブプレート22を設けている。2枚のリブプレート22でアングル材21を挟み込むような状態でアングル材21同士を締結することにより、荷重によるリブプレート22の変形や破損を防いでいる。例えば、
図1を見ると判るように、天吊り空調ユニット1を吊り下げる吊りボルトKへ取り付けるためにフレーム2に設けられている吊り下げ部24が、横方向に延在するアングル材21の途中に設けられているため、天吊り空調ユニット1が吊りボルトKによって吊り下げられると、当該アングル材21の端部には天吊り空調ユニット1全体の荷重が加わる。よって、このような箇所に2枚のリブプレート22を設けることは、フレーム2の強度を確保するうえで有効である。
【0036】
図3は、天吊り空調ユニット1を車両に搭載する方法を示した図である。上述したように、天吊り空調ユニット1は、床と天井パネルとの間にある狭小の天井裏空間に設置するために、鉛直方向の寸法よりも水平方向の寸法の方が長い横長の外観形状となっている。そして、空調機本体3は、フレーム2に設けられた吊り下げ金具26によってフレーム2内で吊り下げられた状態となっている。このため、例えば、工場で組み立てた天吊り空調ユニット1を工事現場へ運搬する場合、通常であれば、
図3(A)に示されるように、天吊り空調ユニット1を横倒しせずに車両Vの荷台へそのまま平積みすることになる。しかし、この場合、天吊り空調ユニット1の荷台の上部空間が有効活用されず、天吊り空調ユニット1を効率的に搬送できない。そこで、例えば、
図3(B)に示されるように、天吊り空調ユニット1を横倒しの状態で車両Vの荷台に積むことが考えられる。天吊り空調ユニット1を横倒しにして天吊り空調ユニット1の荷台に積めば、車両Vの荷台の上部空間を有効活用できる。
【0037】
図4は、横倒しの状態で車両Vの荷台に積まれた天吊り空調ユニット1の一例を示した図である。鉛直方向(Z軸方向)の寸法よりも水平方向(XY平面沿いの方向)の寸法の方が長い天吊り空調ユニット1を横倒しにして車両Vの荷台に積むと、車両Vの荷台の上部空間を有効活用できる。そして、天吊り空調ユニット1を横倒しにする際は、例えば、
図4に示すように、略矩形のフレーム2から突き出している補機32や付帯配管33が上に位置する状態で天吊り空調ユニット1を横倒しにすると、補機32や付帯配管33が荷台の床面や壁面に干渉しないため、天吊り空調ユニット1を荷台に積みやすい。また、天吊り空調ユニット1を以下のような台車に載せた状態で車両Vの荷台に搭載すれば、車両Vへの積み下ろしが更に容易である。
【0038】
図5は、台車Dに載せた天吊り空調ユニット1を示した図である。台車Dは、天吊り空調ユニット1を載せる平板状の台座D1の下面に車輪D2を4つ有する。また、台車Dは、台座D1の縁から上方へ向けて立設された補助棒D3を4本有する。よって、天吊り空調ユニット1を運搬する作業者は、天吊り空調ユニット1を台車Dの台座D1に載せた後、天吊り空調ユニット1や補助棒D3を手で押すことにより、車輪D2を転がして天吊り空調ユニット1をスムーズに移動することができる。また、補助棒D3が天吊り空調ユニット1を囲むように立設されているため、例えば、台車Dに載った状態で車両Vの荷台へ搭載された天吊り空調ユニット1が車両Vの走行中に揺れても、天吊り空調ユニット1が台座D1の上面で位置ずれを生じて台車Dから天吊り空調ユニット1が落ちることもない。
【0039】
しかしながら、天吊り空調ユニット1を上記のように横倒しで運搬すると、以下のような荷重が天吊り空調ユニット1内に発生する。
図6は、天吊り空調ユニット1内に発生する荷重の一例を示した図である。例えば、
図6に示すように、X軸方向が下を向くような姿勢となるように天吊り空調ユニット1を横倒しにすると、天吊り空調ユニット1に備わっているフレーム2や空調機本体3、給気チャンバー4には、X軸方向の重力が働く。そして、空調機本体3は、上述したように、吊り下げ金具26によってZ軸方向沿いに吊り下げた状態でフレーム2に取り付けられている。よって、天吊り空調ユニット1を横倒しにすると、吊り下げ金具26の吊り下げ方向に対して横向きの方向、すなわち、
図6の矢印が示す方向へ空調機本体3がフレーム2に対して相対移動する可能性がある。空調機本体3が吊り下げ金具26の吊り下げ方向に対して横向きの方向に相対移動すると、フレーム2と空調機本体3とを連結している吊り下げ金具26が変形したり、天吊り用取付部分34と吊り下げ金具26との間にある防振ゴム35が破損したりする可能性がある。
【0040】
そこで、本実施形態の天吊り空調ユニット1には、このような不具合を防止するための以下の処置が講じられている。
図7は、天吊り空調ユニット1に設けられている部材を示した図である。
図7に示すように、本実施形態の天吊り空調ユニット1には、天吊り用取付部分34に仮止め6が設けられている。また、フレーム2に対する空調機本体3の相対移動を所定範囲に制限する支持部材27がフレーム2に設けられている。支持部材27はフレーム2に対する空調機本体3の相対移動を所定範囲に制限するものであるため、天吊り空調ユニット1が通常の姿勢をとっている場合、支持部材27はフレーム2に接触しない。よって、X軸方向が下を向くような姿勢で天吊り空調ユニット1が横倒しにされて、空調機本体3がX軸方向へ自重で移動すると、フレーム2に設けられている支持部材27に空調機本体3が接触し、空調機本体3が支持部材27によって下側から支持されたような状態になる。また、本来はZ軸沿いの方向に荷重が加わることを前提に組付けられている防振ゴム35についても、フレーム2に対する空調機本体3のX軸方向への荷重が加わらないように、仮止め6が吊り下げ金具26と天吊り用取付部分34との相対移動を規制している。仮止め6は、天吊り空調ユニット1の運搬完了後は取り外される。
【0041】
図8は、仮止め6を示した図である。仮止め6は、断面視コの字型の金物であり、平坦で矩形の天板部61と、天板部61に2つある長辺沿いにそれぞれ設けられる側壁部62とを有する。天板部61には、吊り下げ金具26の外径よりもやや大きい切り欠き部63が設けられている。仮止め6は、天吊り空調ユニット1を搬送する際に装着される搬送用の仮止めである。このような仮止め6が、以下のような状態で天吊り用取付部分34に取り付けられる。
【0042】
図9は、仮止め6の取り付け状態を示した図である。仮止め6は、吊り下げ金具26に螺合されているナットによって天板部61の上面が押圧される。そして、天板部61の長辺沿いにある2つの側壁部62の下端が、天板部61の上面を押圧するナットの押圧力で天吊り用取付部分34を押圧することにより、吊り下げ金具26と天吊り用取付部分34が防振ゴム35の変形によって相対移動するのを防ぐ。また、仮止め6の側壁部62が天吊り用取付部分34へ加える押圧力は、防振ゴム35の設計上想定されている荷重の方向に一致している。よって、天板部61の上面を押圧するナットを過度に締め付けない限り、当該押圧力が防振ゴム35を破壊する可能性は極めて低い。
【0043】
以上に述べたように、天吊り空調ユニット1には仮止め6や支持部材27が設けられているため、天吊り空調ユニット1を車両Vの荷台へ載せるために横向きにしても、フレーム2に対する空調機本体3の相対移動が制限される。このため、フレーム2に吊り下げ状態で取り付けられている空調機本体3であっても、吊り下げ金具26や天吊り用取付部分34、防振ゴム35が空調機本体3の自重で破損しない。したがって、本実施形態の天吊
り空調ユニット1であれば、車両Vの荷台という限られたスペースに効率的に搭載することが可能となる。なお、
図3(A)では、天吊り空調ユニット1が積み重ならない形態で図示されていたが、本実施形態の天吊り空調ユニット1は、積み重ね不能なものに限定されるものではない。本実施形態の天吊り空調ユニット1は、平積みの状態で複数段に積み重ねられてもよい。天吊り空調ユニット1が複数段に積み重ね可能であっても、例えば、車両Vからの積み下ろし時や建物内における運搬時において、一時的に天吊り空調ユニット1を傾ける場合はあり得るため、上述したように天吊り空調ユニット1が横へ傾け可能なものであれば、施工作業が容易である。
【0044】
ところで、上記実施形態では、フレーム2に設けられた吊り下げ金具26によって空調機本体3が吊り下げられる形態を採っていたが、天吊り空調ユニット1は、このような形態に限定されるものではない。天吊り空調ユニット1は、例えば、吊り下げ金具26よりも太くて強固な部材で空調機本体3をフレーム2に非吊り下げ状態で固定したものであってもよい。このような場合、当該部材が、フレーム2に対する空調機本体3の相対移動を規制し得る。よって、当該部材が、上述した仮止め6や支持部材27の代替として、フレーム2に対する空調機本体3の相対移動を規制する規制手段と捉えることができる。
【0045】
また、上記実施形態では、略矩形のフレーム2から補機32や付帯配管33が突き出す形態となっていたため、フレーム2には支持部材27が1つしか設けられていなかったが、天吊り空調ユニット1をX軸方向が上向きと下向きの何れの姿勢においても横向き可能にする場合は、支持部材27をフレーム2に2つ以上設けてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、天吊り空調ユニット1を横倒しの状態で車両Vの荷台へ載せる形態を例示していたが、天吊り空調ユニット1は、このような姿勢で車両Vの荷台へ載せる形態への適用に限定されるものではない。車両Vの荷台にスペースの余裕があれば、天吊り空調ユニット1を平積みの状態で運搬することも当然に可能である。但し、このような平積みの状態であっても、運搬中は天吊り空調ユニット1が揺れたり傾いたりする場合があるため、上記実施形態のようにフレーム2に対する空調機本体3の相対移動を規制する規制手段を設けることは有効である。
【0047】
ところで、建物に設けられている吊りボルトKの位置精度は、工事現場に応じてばらつきがある。よって、上記実施形態の天吊り空調ユニット1では、吊りボルトKの位置精度が低くても天吊り空調ユニット1を工事現場でスムーズに取り付け可能にするために、フレーム2に設けられている吊り下げ部24の位置を微調整できるようにしている。
図10は、吊り下げ部24の部分を斜め上から示した図である。また、
図11は、吊り下げ部24の部分を斜め下から示した図である。
図10及び
図11に示すように、吊り下げ部24は、アングル材24aに挿通孔24bと調整孔24cを設けたものである。挿通孔24bには吊りボルトKが挿通される。また、調整孔24cには高力ボルト24dが挿通される。高力ボルト24dは、位置の微調整を可能にするためにアングル材21へ複数設けられた適宜の孔に挿通された状態でナット24eと螺合されることにより、アングル材24aをアングル材21の適宜の位置に固定する。また、吊り下げ部24の位置調整をより自在にするため、
図11に示されるように、調整孔24cは細長い孔となっている。このため、吊り下げ部24をアングル材21に固定するための高力ボルト24dとナット24eは、アングル材24aをアングル材21へ強固に固定する必要がある。そこで、本実施形態では、アングル材24aをアングル材21へ固定するためのボルトに、ボルト軸周りの回転方向も同時に拘束するいわゆるハイテンボルトと呼ばれる高力ボルト24dを用いている。
【0048】
天吊り空調ユニット1を建物の天井に取り付ける際は、高力ボルト24dとナット24eを緩めたままの状態で天吊り空調ユニット1を天井付近へ持ち上げ、吊り下げ部24の
挿通孔24bに吊りボルトKを挿通させる。そして、吊りボルトKの下端にナットを螺合させて吊り下げ部24を吊りボルトKに固定すると共に、高力ボルト24dとナット24eを締めて吊り下げ部24をアングル材21に固定する。天吊り空調ユニット1を天井付近へ持ち上げて挿通孔24bに吊りボルトKを挿通させる際、吊りボルトKの位置精度が低すぎるために挿通孔24bに吊りボルトKを挿通させることができない場合は、高力ボルト24dを挿通しているアングル材21の孔の位置を適宜変更する。
【0049】
天吊り空調ユニット1には、このように、吊りボルトKを挿通する挿通孔24bの位置を自在に変更可能にする吊り下げ部24が備わっているため、工事現場から遠隔の地にある工場で組み立てられた天吊り空調ユニット1であっても、工事現場でスムーズな取り付けが可能となる。しかし、天吊り空調ユニット1は、このような吊り下げ部24を備える形態に限定されるものではない。吊りボルトKの位置精度が高い工事現場に適用する場合であれば、吊り下げ部24を省略し、アングル材21に設けられた孔に吊りボルトKを挿通して天吊り空調ユニット1を取り付けてもよい。
【0050】
また、工場で組み立てた天吊り空調ユニット1を工事現場の吊りボルトKへスムーズに取り付けるための手段としては、上述した吊り下げ部24をフレーム2に設ける手段の他に、例えば、以下のような手段が挙げられる。
【0051】
図12は、吊りボルトKの下端を位置決めするゲージの第1例を示した図である。吊りボルトKの下端の位置は、吊りボルトKへの振れ止めFの取り付けによって確定する。よって、上記実施形態の天吊り空調ユニット1における吊り下げ部24のように、吊りボルトKを挿通させるための孔の位置がある程度確定している空調機器を取り付ける場合、吊りボルトKの下端同士の位置関係を規定するための位置決め孔72を、板材からなるゲージ本体71の四隅に設けたゲージ7を用意しておき、このゲージ7で吊りボルトKの下端同士を位置合わせした状態で振れ止めFを吊りボルトKに取り付けておけば、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへスムーズに組付け可能である。また、ゲージ7に人孔73を設けておけば、ゲージ7で吊りボルトKの下端同士を位置合わせした状態で振れ止めFを吊りボルトKに容易に取り付け可能である。なお、ゲージ7は板材で作ったものに限定されない。
図13は、吊りボルトKの下端を位置決めするゲージの第2例を示した図である。ゲージ7は、例えば、4本のアングル材を矩形に接合したゲージ本体71で形成したものであってもよい。以下、ゲージ7を使った天吊り空調ユニット1の取り付け方法について解説する。
【0052】
図14は、ゲージ7を使った天吊り空調ユニット1の取り付け方法を解説した図である。ゲージ7を使うと、以下のような順序で施工作業をすることができる。すなわち、
図14(A)に示されるように、振れ止めFが吊りボルトKに取り付けられていない状態において、作業者Mは、振れ止めFとゲージ7を用意する。そして、高所作業車Sを使って天井Tに近づく。次に、
図14(B)に示されるように、作業者Mは、ゲージ7に設けられている4つの位置決め孔72に各吊りボルトKの下端を挿通し、ナット等で仮止めする。そして、作業者Mは、ゲージ7の人孔73を通じてゲージ7の上に上半身を出し、吊りボルトKに振れ止めFを取り付ける。吊りボルトKに振れ止めFが取り付けられると、吊りボルトKの下端の位置が振れ止めFによって固定されるため、ゲージ7を取り外しても吊りボルトKの下端の位置は保たれる。振れ止めFの取り付けが完了した後は、
図14(C)に示されるように、吊りボルトKからゲージ7を取り外し、代わりに天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ近づける。そして、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKに取り付ける。これにより、
図14(D)に示されるように、天吊り空調ユニット1の取り付けが完了する。
【0053】
ゲージ7を使わずに天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付ける場合、天吊り空
調ユニット1を吊りボルトKへ実際に取り付けてみないと、吊りボルトKの下端を天吊り空調ユニット1の吊り下げ部24へ位置合わせすることができない。よって、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付ける前に振れ止めFを吊りボルトKへ取り付けることはできない。そして、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付けた後に振れ止めFを吊りボルトKへ取り付ける場合、
図14(B)において示したように、4つある吊りボルトKに囲まれる位置に上半身を置いて振れ止めFを吊りボルトKへ取り付けるということが不可能である。したがって、作業者Mは、吊りボルトKに取り付けられた天吊り空調ユニット1の周りを周回するように高所作業車Sを少しずつ移動させながら振れ止めFの取り付け作業を行う必要がある。このため、振れ止めFの取り付けに要する作業時間が大きい。また、ゲージ7によって下端が位置決めされていない吊りボルトKへ天吊り空調ユニット1を取り付ける必要があるため、吊りボルトKを天吊り空調ユニット1へ取り付ける作業の際にも、天吊り空調ユニット1を高所作業車Sで天井付近へ持ち上げてから吊り下げ部24の位置を変更する等の調整作業が必要となり、吊りボルトKへの天吊り空調ユニット1の取り付けも容易でない。
【0054】
この点、ゲージ7によって位置決めされ、振れ止めFによって位置が固定された吊りボルトKの下端に天吊り空調ユニット1を取り付ける
図14の取り付け方法であれば、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付ける作業も、吊りボルトKへ振れ止めFを取り付ける作業も極めて容易に行うことができる。よって、例えば、同じ天吊り空調ユニット1を複数台取り付ける必要がある工事現場においては、天吊り空調ユニット1が工事現場へ到着する前であっても、吊りボルトKに振れ止めFを取り付ける作業を先行して行うことができる。そして、天吊り空調ユニット1の製作が完了して工場から工事現場へ到着次第、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ次々に取り付けることができる。更に、上述したように、給気チャンバー4等が各所で共通に適用できる形態となっていれば、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ次々に取り付ける際に、天吊り空調ユニット1の取付け箇所を誤る恐れも無い。
【0055】
なお、ゲージ7を使ったこのような取り付け方法は、空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5をフレーム2で一体化した天吊り空調ユニット1の取り付けに限定されるものではない。ゲージ7を使ったこのような取り付け方法は、例えば、空調機本体3や給気チャンバー4等の各種空調機器を単体で吊りボルトKに取り付ける場合であっても同様に適用できる。また、ゲージ7は、伸縮機能を有していて様々な位置関係に対応できるものであってもよいし、或いは、様々な種類の天吊り空調ユニット1に対応するために位置決め孔72が複数機種分設けられていてもよい。また、吊りボルトKを天井に固定する際に行う固定作業において、天井にアンカーナットを埋め込むインサート施工時のゲージとして用いてもよい。
【0056】
ところで、上記実施形態のように、工場で製作された天吊り空調ユニット1を車両Vで工事現場へ運搬して取り付ける形態を採る場合、搬送時に天吊り空調ユニット1が風雨等に晒されるのを防ぐため、天吊り空調ユニット1を養生用のカバーで覆った状態で運搬することが考えられる。この場合、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付ける際に当該カバーを天吊り空調ユニット1から取り除いてもよいが、当該カバーを天吊り空調ユニット1に取り付けた状態のままで天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付けてもよい。天吊り空調ユニット1が取り付けられる工事現場では、天吊り空調ユニット1の取り付けといった空調設備の工事の他にも、例えば、防音や断熱を目的とした各種材料の吹き付け作業や、内装の仕上げや各種工作作業等に伴う粉塵の飛散等があり得る。よって、このような飛散物から天吊り空調ユニット1を保護するためにも、カバーで覆った天吊り空調ユニット1をそのままの状態で吊りボルトKに取り付けると合理的である。天吊り空調ユニット1を覆うカバーとしては、各種のものが考えられるが、例えば、ビニール製のカバーであれば、天吊り空調ユニット1を吊りボルトKへ取り付ける際に吊りボルトKの
下端で当該ビニール製のカバーを突き破ることができ、且つ、カバーの除去や廃棄も容易である。
【0057】
また、上記実施形態では、空調機本体3を側方から支持する部材として支持部材27を例示していたが、この他の支持部材を設けてもよい。
図15は、支持部材の追加例を示した図である。天吊り空調ユニット1には、例えば、
図15に示されるように、支持部材28を追加してもよい。支持部材28は、略L字型の金具であり、一端がフレーム2のアングル材21にボルトで固定され、他端が空調機本体3の側面に対向する位置関係となるように配置されている。このような支持部材28が追加されていれば、天吊り空調ユニット1を横倒しにした場合に、空調機本体3の側面が支持部材27,28の2点で支持されるため、吊り下げ部分の損傷を可及的に抑制することができる。
【0058】
また、上記実施形態において、天井Tに天吊り空調ユニット1を取り付けた後は、天吊り空調ユニット1のフレーム2を解体してもよい。
図16は、フレーム2を解体する様子を示した図である。上記実施形態の天吊り空調ユニット1は、吊りボルトKに固定した後、フレーム2を構成するアングル材21等の各部材のうち、空調機本体3や給気チャンバー4、還気チャンバー5の支持に関わらない下側の部位(下部フレーム)を
図16に示すように除去してもよい。これにより、除去した部分のアングル材21等を他に有効活用することができる。
【0059】
また、上記実施形態の天吊り空調ユニット1は、以下のように変形してもよい。
図17は、天吊り空調ユニット1の第1変形例である。本第1変形例の天吊り空調ユニット1では、給気チャンバー4に設けられている連結用開口部42の代わりにダクト連結部101が設けられている。また、フレーム2には、空調機本体3に取り付けられた冷温水配管接続部102を支持するための補助フレーム103が追加されている。
【0060】
ダクト連結部101は、給気チャンバー4の外面から殆ど突出しない。また、冷温水配管接続部102は、空調機本体3の内部に設けられているコイルに通す冷温水の配管を接続する部位であり、配管や電磁弁、工具を使わずにワンタッチで接続可能な配管接続用のカプラによって構成される。配管には保温材が適宜設けられる。冷温水配管接続部102は、空調機本体3の筐体から突出するような形態の部位であるため、冷温水配管接続部102に配管の荷重といった各種の外力が加わると、冷温水配管接続部102の付け根部分が損傷する可能性がある。そこで、このような冷温水配管接続部102を天吊り空調ユニット1に設ける場合、冷温水配管接続部102を支持する補助フレーム103をフレーム2に設けることが好ましい。補助フレーム103は、フレーム2のアングル材21と同様のアングル材104や、ボルト、ナット、その他各種の構造部材によって形成される。
【0061】
図18は、配管の接続作業の様子を示した図である。上述したように、冷温水配管接続部102には、配管接続用のカプラが備わっている。よって、冷温水配管接続部102に設けられたカプラ(雄側)に適合するカプラ(雌側)を端部に備えた配管105であれば、工具を使わずに手作業のみで配管105を冷温水配管接続部102へ繋ぐことができる。このため、建物の天井から吊りボルトKによって吊り下げられた状態の天吊り空調ユニット1に対し、配管105を極めて容易に繋ぐことが可能である。したがって、高所や狭小空間であっても極めてスムーズに作業を進めることが可能である。
【0062】
図19は、ダクトの接続作業の様子を示した図である。ダクト連結部101は、上記実施形態で例示した連結用開口部42のように給気チャンバー4の外面から突出する筒状体ではない。すなわち、ダクト連結部101は、給気チャンバー4の外面から殆ど突出しないため、ダクト連結部101には専用のダクトが連結される。ダクト連結部101は、通気用の経路を形成する開口101Aと、開口101Aの縁を形成する嵌合部101B及び
パッキン101Cを備える。嵌合部101Bは、ダクト106に係合しやすい柔軟な素材で形成されている。また、パッキン101Cは、柔軟性と気密性を発揮する柔軟な樹脂で形成されており、嵌合部101Bよりも開口部中心に向かって突き出るような状態になっている。
【0063】
ダクト106には、ダクトを保温する断熱材106Aと、ダクトの端部を形成する嵌合部106Bが備わっている。また、嵌合部106Bには、リブ106Cが備わっている。嵌合部106Bは、ダクト連結部101の開口101Aと略同等の外径を有する環状体であり、開口101Aに嵌めることが可能である。嵌合部106Bの外周面は、起毛しており、嵌合部101Bに係合するようになっている。また、嵌合部106Bの外周面から突出するリブ106Cは、柔軟な嵌合部101Bに食い込んでダクト106をダクト連結部101へ強固に固定する。また、気密性を確保するためのパッキン101Cが嵌合部101Bよりも開口部中心に向かって突き出ているため、パッキン101Cが嵌合部106Bの外周面に密着する力によっても、ダクト連結部101に繋がれたダクト106の固定状態が保たれる。
【0064】
給気チャンバー4には、このようなダクト連結部101が設けられているため、工具を使わずに手作業のみで嵌合部106Bを開口101Aへ押し込むだけで、ダクト106をダクト連結部101へ繋ぐことが可能である。このため、建物の天井から吊りボルトKによって吊り下げられた状態の天吊り空調ユニット1に対し、ダクト106を極めて容易に繋ぐことが可能である。したがって、高所や狭小空間であっても極めてスムーズに作業を進めることが可能である。
【0065】
また、給気チャンバー4には、このようなダクト連結部101が設けられているため、連結用開口部42が設けられている場合よりも天吊り空調ユニット1を小型化できる。
図20は、上記実施形態と本変形例の天吊り空調ユニット1の外寸を比較した図である。ダクト連結部101は、連結用開口部42に比べると、給気チャンバー4の外面から殆ど突出しないため、
図20を見ると判るように、変形例の天吊り空調ユニット1の方が、実施形態の天吊り空調ユニット1よりも距離L1だけ外寸を小さくすることが可能である。連結用開口部42の突出量は、一般的なダクトの連結部分の長さ(概ね5~15cm程度)であるため、距離L1は概ねこの長さに相当することになる。したがって、連結用開口部42の代わりにダクト連結部101を使った本変形例の天吊り空調ユニット1は、現場における搬送や据え付けをより容易にし、更に、連結用開口部42に物が接触することによる連結用開口部42の変形といった損傷リスクも可及的に抑制できる。このため、ダクト連結部101を使った本変形例は、施工性が極めて高い。
【0066】
ところで、補助フレーム103は、天吊り空調ユニット1が設置された天井部分において、天吊り空調ユニット1のメンテナンスの障害となるものが天吊り空調ユニット1の周囲に誤って設置されるのを防ぐ目的に使うこともできる。
図21は、補助フレーム103に設けた障害物防止手段の一例を示した図である。補助フレーム103には、例えば、障害物防止カバー107のような板状の部材や、或いは、箱等の障害物防止手段を設置することが可能である。障害物防止カバー107は、補助フレーム103にボルト等の固定手段で完全に固定されていてもよいし、ヒンジ等の可動部分を有する固定手段によって可動できる状態で固定されていてもよいし、或いは、着脱可能な状態で設けられていてもよい。この場合、障害物防止カバー107が本願でいう「覆い」に相当し、障害物防止カバー107を補助フレーム103に固定するための固定手段と障害物防止カバー107の一体品が本願でいう「障害物防止装置」に相当する。障害物防止カバー107が着脱可能、或いは、ヒンジ等により可動であれば、天吊り空調ユニット1の運搬時に障害物防止カバー107が運搬の邪魔になるのを防ぐことができる。
【0067】
通常、空調機本体3には、空気中の浮遊物によってコイル等が汚れるのを防ぐためのフィルターが内蔵される。フィルターは、交換等の定期的なメンテナンスが必要である。このため、空調機本体3には、例えば、
図21(A)に示されるように、フィルターを出し入れするためのフィルター交換口108が設けられる。天井埋め込みタイプの空調機において、
図21(A)に示す空調機本体3のように、空調機本体3の筐体側面にフィルター交換口108が設けられる場合、フィルター交換作業は、通常、室内の天井を形成する天井パネルに設けられた点検口を通じて行われる。そして、
図21(B)に示されるように、フィルター交換口108からフィルター109が引き出される。そして、
図21(C)に示されるように、フィルター109が空調機本体3から外される。そして、交換作業が終了すると、点検口は閉鎖され、フィルター交換口108の周辺は天井パネルで隠された状態になる。
【0068】
天井パネルによって形成され、室内の居者から覆い隠される天井裏空間には、天吊り空調ユニット1の他、例えば、照明器具や通信機器、その他各種の機器類が設置される。そして、天井裏空間に設置される機器類は、基本的に天井スラブから吊り下がる吊り下げボルト等によって吊り下げられる。よって、障害物防止カバー107のように、天井スラブから吊り下がる吊り下げボルトの取り付けを邪魔する障害物防止手段を、フィルター交換口108付近や、その他、天吊り空調ユニット1のメンテナンス作業時に作業空間の確保が必要となる箇所を少なくとも上側から覆うように設けておくことにより、このような各種の機器類が天吊り空調ユニット1のメンテナンス作業の邪魔になる箇所へ設置されるのを防ぐことができる。
【0069】
図22は、障害物の一例を示した図である。障害物防止カバー107が無い場合、例えば、障害物110のような工作物がフィルター交換口108付近に設置される可能性がある。天井裏に各種機器類を設置する業者は、天吊り空調ユニット1にメンテナンス用の作業空間が必要なことを把握していない場合があるため、当該業者が障害物110を設置してしまう場合があり得る。この点、フィルター交換口108付近に障害物110の設置を防ぐための障害物防止カバー107が設置されていれば、障害物110を設置するための吊り下げボルトが天井スラブから吊り下げられるのを障害物防止カバー107が邪魔するため、障害物110が誤って設置される可能性を可及的に抑制することができる。
【0070】
次に、天吊り空調ユニット1の運搬方法の変形例について解説する。
【0071】
図23は、天吊り空調ユニット1を重ね置きした様子を示した第1の図である。天吊り空調ユニット1は、
図16を使って解説したように、空調機本体3や給気チャンバー4、還気チャンバー5の支持に関わらない下側の部位(下部フレーム)を除去することが可能である。よって、運搬方法や据え付け方法、機器の大きさ等によっては、下部フレームを予め省略した天吊り空調ユニット1を用意することが考えられる。下部フレームが設けられている場合、
図23(A)に示すように、天吊り空調ユニット1を積み重ねても支障は無い。ところが、下部フレームが省略されている場合、
図23(B)に示すように、天吊り空調ユニット1を積み重ねると、フレーム2に吊り下げられている空調機本体3や給気チャンバー4、還気チャンバー5が、下側の天吊り空調ユニット1に直接載る状態になるため、天吊り空調ユニット1が傾いたり、空調機本体3等が損傷したりする可能性がある。
【0072】
そこで、天吊り空調ユニット1の下部フレームが省略されている場合には、例えば、次のような仮設の部材を設けることにより、天吊り空調ユニット1の積み重ねが可能となる。
図24は、天吊り空調ユニット1を重ね置きした様子を示した第2の図である。下部フレームが省略された天吊り空調ユニット1を積み重ねたい場合、フレーム2に固定可能な仮設ジョイント111(本願でいう「仮設部材」の一例である)を用意する。仮設ジョイ
ント111は、
図24(A)に示すように、フレーム2に取り付けてフレーム2を下側から支持する支持部111A、支持部111Aから下方に延在する脚部111B、脚部111Bの下端から横方向に向かって延在する底部111Cによって形成される、全体視略コの字型の部材である。支持部111Aは、ボルトやナットを使ってフレーム2に固定される。このような部材を、例えば、
図24(B)に示すように、天吊り空調ユニット1の左右両端部にそれぞれ取り付けることにより、天吊り空調ユニット1は、天吊り空調ユニット1が置かれる床面等から空調機本体3等を浮かせるための脚を有した状態となる。このため、仮設ジョイント111が設けられた天吊り空調ユニット1であれば、下部フレームが省略されているものであっても、
図24(C)に示すように積み重ね可能となる。
【0073】
図25は、台車Dの変形例である。天吊り空調ユニット1は、例えば、
図25に示すような台車112で運搬することも可能である。台車112は、台車112の底部を形成する底部112A、天吊り空調ユニット1を側方から囲む側部112B、側部112Bを底部112Aに対し横倒し方向へ回動可能に連結するヒンジ112C、底部112Aの下側に設けられる車輪112Dを備える。
図25では、台車112が板状の部材で製作されたように図示されているが、アングル材等の棒状の部材を用いて製作されたものであってもよい。台車112は、天吊り空調ユニット1を側方から支持する側部112Bが、底部112Aに対して横倒しになる方向へ回動可能であるため、例えば、以下のような運搬が可能である。
【0074】
図26は、台車112の使用方法を示した図である。台車112は、例えば、
図26(A)に示すように、天吊り空調ユニット1を複数搭載可能である。また、天吊り空調ユニット1を側方から支持する側部112Bが、底部112Aに対して横倒しになる方向へ回動可能である。よって、例えば、天吊り空調ユニット1が製造される工場で天吊り空調ユニット1を搭載した台車112を、運送用のトラックや、建設現場にある仮設或いは本設のエレベータ等を使って天吊り空調ユニット1の設置場所付近まで移送した後、次のようにして天吊り空調ユニット1を台車112から降ろすことができる。すなわち、天吊り空調ユニット1を載せた台車112を、天吊り空調ユニット1の設置場所付近まで移送した後、
図26(B)に示すように、側部112Bを天吊り空調ユニット1と共に横出し状態にする。天吊り空調ユニット1を台車112へ搭載する際、天吊り空調ユニット1を側部112Bと共に横倒し状態にすると天吊り空調ユニット1の姿勢が正しく上下方向となるように天吊り空調ユニット1を搭載しておけば、
図26(B)の状態で、天吊り空調ユニット1の上面が上を向いた状態になる。よって、作業者は、天吊り空調ユニット1をそのまま天井へ持ち上げて吊りボルトKに固定するか、或いは、側部112Bに載っている状態の天吊り空調ユニット1を、フォーク状の昇降部分を備えた昇降機等で天井まで直接持ち上げることにより、天吊り空調ユニット1を天井へ容易に設置することが可能となる。
【0075】
以上に述べた通り、天吊り空調ユニット1は様々な形態へ適宜変形可能である。そして、上述した実施形態や変形例を適宜組み合わせることができる。天吊り空調ユニット1は、建設現場に空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5を別々の状態で搬入して組み立て作業を行っていたような場合に比べると、極めて短時間で現場の作業を完了することができるため、建設現場の工期を大幅に短縮可能である。また、天吊り空調ユニット1は、工場で組み立てることができるため、天吊り空調ユニット1の組み立てに適した環境で効率的な組立が可能である。よって、建設現場に空調機本体3と給気チャンバー4と還気チャンバー5を別々の状態で搬入して組み立て作業を行う場合に比べて、全体の工数を短縮することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
K・・吊りボルト
T・・天井
F・・振れ止め
V・・車両
S・・高所作業車
M・・作業者
D・・台車
1・・天吊り空調ユニット
2・・フレーム
3・・空調機本体
4・・給気チャンバー
5・・還気チャンバー
6・・仮止め
7・・ゲージ
21・・アングル材
22・・リブプレート
23・・リブプレート
24・・吊り下げ部
24a・・アングル材
24b・・挿通孔
24c・・調整孔
24d・・高力ボルト
24e・・ナット
25・・棒ネジ
26・・吊り下げ金具
27,28・・支持部材
31・・筐体
32・・補機
33・・付帯配管
34・・天吊り用取付部分
35・・防振ゴム
41・・筐体
42・・連結用開口部
51・・筐体
61・・天板部
62・・側壁部
63・・切り欠き部
71・・ゲージ本体
72・・位置決め孔
73・・人孔
D1・・台座
D2・・車輪
D3・・補助棒
101・・ダクト連結部
102・・冷温水配管接続部
103・・補助フレーム
104・・アングル材
105・・配管
106・・ダクト
101A・・開口
101B・・嵌合部
101C・・パッキン
106A・・断熱材
106B・・嵌合部
106C・・リブ
107・・障害物防止カバー
108・・フィルター交換口
109・・フィルター
110・・障害物
111・・仮設ジョイント
111A・・支持部
111B・・脚部
111C・・底部
112・・台車
112A・・底部
112B・・側部
112C・・ヒンジ
112D・・車輪