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特許7168638試料の分析のためのシステムおよびデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】試料の分析のためのシステムおよびデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20221101BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20221101BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20221101BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20221101BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G01N35/08 D
G01N37/00 101
G01N35/02 C
G01N35/00 B
G01N21/05
【請求項の数】 28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020205136
(22)【出願日】2020-12-10
(62)【分割の表示】P 2018163371の分割
【原出願日】2011-04-15
(65)【公開番号】P2021089285
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】61/325,023
(32)【優先日】2010-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/325,044
(32)【優先日】2010-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/363,002
(32)【優先日】2010-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512265308
【氏名又は名称】オプコ・ダイアグノスティクス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】OPKO DIAGNOSTICS,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント・リンダー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・スタインミラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・テイラー
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-017354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0273918(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/08
G01N 37/00
G01N 35/02
G01N 35/00
G01N 21/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料で形成された第1のチャネルを備え、少なくとも1つの注入口および1つの排出口を含む第1のコンポーネントであって、前記第1のチャネルは、200ミクロンを超える横断面寸法を有する少なくとも1つの部分を含み、前記第1の材料は、約5.0g・mm/m2・d未満の水蒸気透過性を有する、第1のコンポーネントと、
第2の材料で形成された第2のチャネルを備え、少なくとも1つの注入口および1つの排出口を含む第2のコンポーネントであって、前記第2のチャネルは、200ミクロン未満の横断面寸法を有する少なくとも1つの部分を含み、前記第2の材料は、400nmから800nmまでの光の波長で90%を超える光学透過率を有する、第2のコンポーネントと、
前記第1および第2のチャネルに接続できる流体コネクタであって、前記流体コネクタは、流体経路入口と流体経路出口を含む流体経路を備え、接続と同時に、前記流体経路入口は、前記第1のチャネルの前記排出口に流体接続し、前記流体経路出口は、前記第2のチャネルの前記注入口に流体接続し、前記第1のチャネルと前記第2のチャネルとの間の流体連結を可能にする、流体コネクタとを備え、
前記第1および第2のチャネルは、最初に使用する前は互いに流体連結されず、最初の使用時に、前記第1および第2のチャネルは互いに流体連結され、
前記流体コネクタを介した接続がないとき、前記第1および第2のコンポーネントは、実質的に平面であり、前記第1および第2のチャネル間の流体連結を確立せずに互いの上に横たわる、
デバイス。
【請求項2】
前記第1のコンポーネントは、前記第2のコンポーネントの特徴に相補的な特徴を含み、前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントとの間に非流体接続を形成する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1および第2のコンポーネントは、互いに完全に接続される、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1および第2のコンポーネントは、互いに可逆的に取り付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1のコンポーネントの前記第1のチャネルの前記少なくとも1つの部分は、前記第2のコンポーネントによって実質的に密閉され、および/または、前記第2のコンポーネントの前記第2のチャネルの前記少なくとも1つの部分は、前記第1のコンポーネントによって実質的に密閉される、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1のコンポーネントの前記第1のチャネルの前記少なくとも1つの部分は、前記第2のコンポーネントではない第1のカバーによって実質的に密閉され、および/または、前記第2のコンポーネントの前記第2のチャネルの前記少なくとも1つの部分は、前記第1のコンポーネントではない第2のカバーによって実質的に密閉される、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1および/または第2のカバーはテープである、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の材料は前記第2の材料と異なる、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1の材料は、0.01g・mm/m2・d~0.4g・mm/m2・dの水蒸気透過性を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の材料は、前記第2の材料より高い融解温度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第2の材料は、100℃未満の融解温度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1の材料は、シクロオレフィン共重合体を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第2の材料は、ポリスチレン、PMMAまたはシクロオレフィン共重合体を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1のチャネルの前記少なくとも1つの部分は、5ミクロンを超える二乗平均平方根表面粗度を有し、前記第2のチャネルの前記少なくとも1つの部分は、5ミクロン未満の二乗平均平方根表面粗度を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第1のチャネル内で処置される第1の試薬を含み、前記第1のチャネルの前記少なくとも1つの注入口および1つの排出口は、最初に使用する前は密封して、前記第1のチャネル内に前記第1の試薬を格納する、請求項1~14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記第1のチャネル内で処置される第1の試薬を含み、前記第1のチャネルの前記少なくとも1つの注入口および1つの排出口は、最初に使用する前は密封して、少なくとも1日間、前記第1のチャネル内に前記第1の試薬を格納する、請求項1~15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1の試薬は液体である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第2のチャネル内で処置される第2の試薬を含み、前記第2のチャネルの前記少なくとも1つの注入口および1つの排出口は、最初に使用する前は密封して、前記第2のチャネル内に前記第2の試薬を格納する、請求項1~17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第2の試薬は、最初に使用する前は乾燥させ、前記第2のチャネルの前記少なくとも1つの部分の表面に吸着させる、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記第2のコンポーネントは、前記第2のチャネルと流体連結する反応エリアを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記反応エリアは、少なくとも1つの蛇行したチャネル領域を含む、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記反応エリアは、直列に接続された少なくとも2つの蛇行したチャネル領域を含む、請求項20または21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記第1または第2のコンポーネントに付随する整合要素を備え、前記整合要素は、前記第1または第2のコンポーネントの1つから延在し、前記流体コネクタを受入して係合するよう構築および構成された空洞を備え、それにより、前記第1または第2のコンポーネントに対して既定の設定された構成で前記コネクタを位置付ける、請求項1~22のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記第1または第2のコンポーネントに前記流体コネクタを接続する際、前記流体コネクタは、前記第1および/または第2のコンポーネントに実質的に垂直な平面上に位置する、請求項1~23のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
前記第1または第2のコンポーネントに前記流体コネクタを接続する際、前記流体コネクタは、前記他のコンポーネントの反対側のコンポーネントの側面上に配置される、請求項1~24のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項26】
前記流体コネクタの前記流体経路は、少なくとも2cmの長さを有する、請求項1~25のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項27】
前記第1および第2のコンポーネントそれぞれは、少なくとも2.5mmの厚さを有する少なくとも1つの部分を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項28】
前記第1および第2のコンポーネントそれぞれは、少なくとも2.5mmの厚さを有する少なくとも1つの部分を含み、前記第1および第2のコンポーネントの少なくとも1つは、2.5mm未満の厚さを有する少なくとも1つの部分を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して、試料の分析のためのシステム、デバイスおよび方法に関し、ある特定の実施形態では、中に試料を有するカセットを受入して試料を分析するよう構成されたマイクロ流体試料分析器に関する。また、試料分析のためのカセットも提供する。
【背景技術】
【0002】
流体の操作は、化学、微生物学および生化学などの分野で重要な役割を果たす。これらの流体は、液体または気体を含み得、試薬、溶媒、反応剤またはすすぎ液を化学的または生物学的プロセスに提供し得る。マイクロ流体アッセイなどのさまざまなマイクロ流体方法およびカセットが安価で高感度の正確な分析プラットホームを提供できる一方で、試料の導入、試薬の導入、試薬の格納、流量の制御、流体の分離、複数の流体の混合、廃棄物の収集、オフチップ分析のための流体の抽出およびあるチップから次のチップへの流体の移動などの流体操作は、コストレベルおよび洗練度を向上させることができる。マイクロ流体カセットは、一部のそのようなおよび他の流体操作を実行するために分析器などの外部のプラットホームを必要とする場合が多い。マイクロ流体試料を処理および分析するためにさまざまなタイプの分析器が存在するが、一部のそのような分析器は高価で、大型で、使用が難しく、および/または、流体を操作するために複雑なコンポーネントを必要とする。それに応じて、コストの削減、サイズの低減、使用の簡素化、流体操作に必要なコンポーネントの複雑さの低減および/またはマイクロ流体システム内での流体操作の改善が可能なこの分野での進展は有益であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
試料の分析のためのシステムおよび方法を説明する。本発明の対象物は、いくつかの事例では、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替の解決案、ならびに/または、1つもしくは複数のシステムおよび/もしくは物品の複数の異なる使用を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある一連の実施形態では、一連の方法を提供する。一実施形態では、マイクロ流体試料を分析する方法は、中に開口部を備えた筺体を備えたマイクロ流体試料分析器を設ける工程を含み、カセットは、筺体内の開口部内に含まれ、カセットまたはカセットのコンポーネントは、中に流体試料が入っている少なくとも1つのチャネルを含む。本方法は、筺体内に配置された識別読取器を用いてカセットについての情報を識別する工程と、試料分析器の筺体内に配置されたユーザインターフェースにユーザによって入力された情報を処理する工程とを含む。また、本方法は、筺体内に配置された圧力制御システムを用いてカセット内の少なくとも1つのチャネルを加圧して、少なくとも1つのチャネル中で試料を移動させる工程も伴う。本方法は、筺体内に配置された第1の光源からカセットの第1の測定ゾーンを通じて光を通過させる光学システムを作動する工程と、筺体内の第1の光源の反対側に配置された光学システムの第1の検出器を用いて、カセットの第1の測定ゾーンを通過する光の透過量を検出する工程とを含む。本方法は、識別読取器、ユーザインターフェース、圧力制御システム、光学システムおよび温度調整システムと通信する、筺体内に配置された制御システムを用いてカセット内の試料を分析する工程を含む。本方法は、場合により、試料分析器の筺体内に配置された温度調整システムを用いてカセットを加熱する工程を含み得る。
【0005】
別の一連の実施形態では、一連のマイクロ流体試料分析器を提供する。一実施形態では、マイクロ流体試料分析器は、筺体と、中に流体試料が入っている少なくとも1つのチャネルを有するカセットを受入するよう構成された筺体内の開口部であって、筺体は、カセット上の嵌合コンポーネントとインターフェースをとり、筺体内のカセットを検出するよう構成されたコンポーネントを含む、開口部と、筺体内に配置され、カセットに関連する情報を読み取るよう構成された識別読取器とを備える。また、マイクロ流体試料分析器は、筺体内に配置され、ユーザが試料分析器に情報を入力するよう構成されたユーザインターフェースと、筺体内に配置され、カセット内の少なくとも1つのチャネルを加圧して、少なくとも1つのチャネル中で試料を移動させるよう構成された圧力制御システムとを含む。マイクロ流体試料分析器は、筺体内に配置され、少なくとも第1の光源および第1の光源から離間された第1の検出器を含む光学システムをさらに含み、第1の光源は、カセットを試料分析器に挿入すると、カセットの第1の測定ゾーン中を光が通過するよう構成され、第1の検出器は、第1の光源の反対側に配置され、カセットの第1の測定ゾーンを通過する光の透過量を検出する。また、マイクロ流体試料分析器は、筺体内に配置され、カセットを加熱するよう構成された加熱器を含む温度調整システムと、筺体内に配置され、識別読取器、ユーザインターフェース、圧力制御システム、光学システムおよび温度調整システムと通信してカセット内の試料を分析するよう構成された制御システムとを含む。
【0006】
別の実施形態では、マイクロ流体試料分析器は、筺体と、中に流体試料が入っている少なくとも1つのチャネルおよび1mm未満の横断面寸法を有する少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを有するカセットを受入するよう構成された筺体内の開口部とを備え、筺体は、カセット上の嵌合コンポーネントとインターフェースをとり、筺体内のカセットを検出するよう構成されたコンポーネントを含む。マイクロ流体試料分析器は、筺体内に配置され、カセット内の少なくとも1つのチャネルを加圧して、少なくとも1つのチャネル中で試料を移動させるよう構成された圧力制御システムと、筺体内に配置され、複数の光源および複数の光源から離間された複数の検出器を含む光学システムとを含み、光源は、カセットを試料分析器に挿入すると、カセット中を光が通過するよう構成され、検出器は、光源の反対側に配置され、カセット中を通過する光の量を検出する。複数の光源は、少なくとも第1の光源および第1の光源に隣接する第2の光源を含み、第1の光源は、カセットの第1の測定ゾーン中を光が通過するよう構成され、第2の光源は、第1の測定ゾーンに隣接するカセットの第2の測定ゾーン中を光が通過するよう構成される。いくつかの実施形態では、光源は、第1の光源が解除されない限り、第2の光源が起動されないように構成される。
【0007】
ある一連の実施形態では、キットを提供する。キットは、第1の材料内に第1のチャネルを備える第1のコンポーネントを含み、第1のチャネルは、注入口、排出口および第1のチャネル注入口と排出口との間に200ミクロンを超える横断面寸法を有する少なくとも1つの部分を含む。また、キットは、第2の材料内に第2のチャネルを備える第2のコンポーネントも含み、第2のチャネルは、注入口、排出口および第2のチャネル注入口と排出口との間に200ミクロン未満の横断面寸法を有する少なくとも1つの部分を含む。いくつかの実施形態では、第1の材料は、第2の材料と異なる(ただし、他の実施形態では、第1の材料は第2の材料と同じでもよい)。いくつかの実施形態では、第1の材料は、約0.05g・mm/mm・d未満の水蒸気透過性を有する。ある特定の実施形態では、第2の材料は、400nmから800nmまでの光の波長で90%を超える光学透過率を有する。また、キットは、第1および第2のチャネルを流体接続するための流体コネクタを含み、流体コネクタは、流体経路入口と流体経路出口を含む流体経路を備える。流体経路入口は、第1のチャネルの排出口に流体接続することができ、流体経路出口は、第2のチャネルの注入口に流体接続することができる。キットは、流体コネクタが第1および第2のチャネルを流体接続しないように梱包される。
【0008】
別の一連の実施形態では、デバイスを提供する。デバイスは、第1の材料内に形成された第1のチャネルを備え、少なくとも1つの注入口および1つの排出口を含む第1のコンポーネントを含み、第1のチャネルは、200ミクロンを超える横断面寸法を有する少なくとも1つの部分を含む。また、デバイスは、第2の材料内に形成された第2のチャネルも備え、少なくとも1つの注入口および1つの排出口を含む第2のコンポーネントを含み、第2のチャネルは、200ミクロン未満の横断面寸法を有する少なくとも1つの部分を含む。いくつかの実施形態では、第1の材料は、第2の材料と異なる(ただし、他の実施形態では、第1の材料は第2の材料と同じでもよい)。いくつかの実施形態では、第1の材料は、約0.05g・mm/mm・d未満の水蒸気透過性を有する。ある特定の実施形態では、第2の材料は、400nmから800nmまでの光の波長で90%を超える光学透過率を有する。また、デバイスは、第1および第2のチャネルに接続できる流体コネクタを含み、流体コネクタは、流体経路入口と流体経路出口を含む流体経路を備え、接続と同時に、流体経路入口は、第1のチャネルの排出口に流体接続し、流体経路出口は、第2のチャネルの注入口に流体接続し、第1のチャネルと第2のチャネルとの間の流体連結を可能にする。第1および第2のチャネルは、最初に使用する前は互いに流体連結されず、最初の使用時に、第1および第2のチャネルは互いに流体連結される。
【0009】
本発明の他の利点および新規の特徴は、添付の図面と併せて考慮すると、本発明のさまざまな非限定的な実施形態の以下の詳細な説明より明らかになるであろう。
【0010】
添付の図面は、原寸に比例して描かれることは意図しない。図面では、さまざまな図面で示されるそれぞれの同一のまたはほぼ同一のコンポーネントは、通常、同様の記述子によって表される。明確にするため、すべての図面においてすべてのコンポーネントがラベル付けされるとは限らない。
【0011】
ここで、さまざまな実施形態を例示として添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】一実施形態によるマイクロ流体システムおよび試料分析器の一部であり得るさまざまなコンポーネントを示すブロック図である。
図1B】一実施形態による試料分析器およびカセットの斜視図である。
図2】筺体が取り外された一実施形態による試料分析器の内部のコンポーネントの斜視図である。
図3】一実施形態によるカセットおよび流体コネクタの斜視図である。
図4】一実施形態によるカセットへの流体コネクタの挿入を示す斜視図である。
図5】一実施形態による流体コネクタの分解組立図である。
図6】一実施形態によるカセットの斜視図である。
図7】一実施形態によるカセットの分解組立図である。
図8】一実施形態によるカセットおよび流体コネクタの概略図である。
図9A】一実施形態によるカセットの概略図である。
図9B】一連の実施形態による複数のコンポーネントから形成されたカセットの概略図である。
図9C】一連の実施形態による複数のコンポーネントから形成されたカセットの概略図である。
図9D】一連の実施形態による複数のコンポーネントから形成されたカセットの概略図である。
図9E】一連の実施形態による複数のコンポーネントから形成されたカセットの概略図である。
図9F】一連の実施形態による複数のコンポーネントから形成されたカセットの概略図である。
図10】一実施形態による試料分析器の部分的な組立図である。
図11】一実施形態による試料分析器の部分的な組立の上面図である。
図12】一実施形態による試料分析器の部分的な組立の別の上面図である。
図13】一実施形態による試料分析器の一部の概略図である。
図14】一実施形態による試料分析器の一部の概略側面図である。
図15】一実施形態による試料分析器の真空システムの斜視図である。
図16】一実施形態によるさまざまな異なるコンポーネントに連結する試料分析器の制御システムを示すブロック図である。
図17】一実施形態による試料分析器のユーザインターフェースの概略図である。
図18】一実施形態による試料分析器のユーザインターフェースの概略図である。
図19】一実施形態による試料分析器のユーザインターフェースの概略図である。
図20】一実施形態による試料分析器のユーザインターフェースの概略図である。
図21】一実施形態による試料分析器のユーザインターフェースの概略図である。
図22】一実施形態によるカセットのマイクロ流体システムを示す概略図である。
図23】一実施形態による時間の関数としての光学密度の測定を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
試料の分析のためのシステムおよび方法、ならびに、ある特定の実施形態では、中に試料を含むカセットを受入して試料の分析を実行するよう構成されたマイクロ流体試料分析器を説明する。
【0014】
出願人は、試料を処理して試料中の1つまたは複数の分析物(例えば、前立腺特異抗原(PSA))のレベルを測定するよう構成することができるユニークなマイクロ流体試料分析器の必要性を理解した。以下で記載されるように、血液試料中のPSAレベルまたは他の分析物のレベルを測定することは、前立腺癌または他の疾患および/もしくは病状を管理する際に役立てることができる。
【0015】
本明細書に記載されるマイクロ流体試料分析器は、本発明は特定の適用に限定されないため、他の理由で試料を処理するよう構成および使用することもできる。例えば、一実施形態では、本明細書で論じられるマイクロ流体試料分析器は、さまざまなタイプのタンパク質分析ならびにならびに/またはDNAおよび/もしくはRNA分析のために構成することができる。いくつかの事例では、本明細書に記載されるシステムおよび方法を使用して、特に、マイクロ流体ポイントオブケア診断プラットホーム、マイクロ流体実験室化学分析システム、細胞培養における流体制御システムまたはバイオリアクタなど、さまざまなマイクロ流体システム内の流体の流れおよび混合を制御することができる。一実施形態では、マイクロ流体試料分析器は、さまざまなタイプの血液学および/または泌尿器学での応用のために構成される。本明細書で論じられるマイクロ流体試料分析器は、多種多様な診断法ならびに一般的な化学的および/または生物学的分析のために構成することができる。試料分析器は、特定用途のために具体的に構成することができる、および/または、上記および本明細書で論じられるさまざまな適用例に従って試料を分析するよう構成することができる。
【0016】
以下でさらに詳細に記載されるように、マイクロ流体試料分析器は、その中に試料を含む少なくとも1つのチャネルを含むカセットを受入するよう構成することができる。試料カセットは、試料を分析した後に廃棄される、使い捨てのコンポーネントとなるよう構成することができる。
【0017】
一連の例示的なシステムおよび方法について、ここで説明する。
【0018】
図1Aは、ある一連の実施形態によるフィードバック制御を提供し得るマイクロ流体システムおよびさまざまなコンポーネントを示すブロック図10を示す。マイクロ流体システムは、例えば、ポンプなどの流体流源40などの1つまたは複数のコンポーネントと作動的に連結されるカセット20(例えば、1つもしくは複数の流体をカセットに導入するためおよび/または流体の流速を制御するため)、場合により正圧を印加するかまたは真空にするかの両方のいずれかを行うよう構成され得るポンプまたは真空器などの流体流源40(例えば、カセット内の/カセットから1つもしくは複数の流体を移動/除去するためおよび/または流体の流速を制御するため)、バルブシステム28(例えば、1つまたは複数のバルブを作動させるため)、検出システム34(例えば、1つまたは複数の流体および/またはプロセスを検出するため)、ならびに/あるいは、温度調整システム41(例えば、カセットの1つまたは複数の領域を加熱および/または冷却するため)を含み得る。コンポーネントは、マイクロ流体デバイスの外部にあっても内部にあってもよく、場合により、コンポーネントまたはコンポーネントのシステムを制御するための1つまたは複数のプロセッサを含んでもよい。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のそのようなコンポーネントおよび/またはプロセッサは、カセットに含まれた試料を処理および/または分析するよう構成された試料分析器47に連結する。
【0019】
一般に、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の他のコンポーネント「と作動的に連結される」コンポーネントは、そのようなコンポーネントが互いに直接接続されるか、互いに接続されることも取り付けられることもなく互いに物理的に直接接触するか、または、互いに直接接続されることも互いに接触することもないが、機械的、電気的(空間を通じて伝送される電磁信号を介してを含む)もしくは流体的に相互接続され(例えば、チュービングなどチャネルを介して)、そのように連結するコンポーネントにそれらの意図する機能性を実行させるかもしくはそのように連結するコンポーネントがそれらの意図する機能性を実行できるようにすることを示す。
【0020】
図1Aに例示的に示されるコンポーネントおよび本明細書に記載されるものなどの他の任意選択のコンポーネントは、制御システム50と作動的に連結することができる。いくつかの実施形態では、制御システムを使用して、マイクロ流体システム内で起こる1つまたは複数の事象からのフィードバックを使用することによって、流体を制御するおよび/または品質管理を実施することができる。例えば、制御システムは、1つもしくは複数のコンポーネントから入力信号を受信するよう、さまざまなパラメータを計算および/もしくは制御するよう、1つもしくは複数の信号もしくは信号のパターンを、制御システムにプログラムされた信号と比較するよう、ならびに/または、1つもしくは複数のコンポーネントに信号を送信し、流体の流れを調節するおよび/もしくはマイクロ流体システムの動作を制御するよう構成することができる。また、制御システムは、以下でさらに詳細に説明されるように、ユーザインターフェース54、識別システム56、外部の通信ユニット58(例えば、USB)および/または他のコンポーネントなどの他のコンポーネントと場合により連結させることもできる。
【0021】
カセット(例えば、マイクロ流体デバイス)20は、所望の分析を実行するためのチャネルおよび/またはコンポーネントの任意の適切な構成を有し得る。ある一連の実施形態では、カセット20は、本明細書でより具体的に説明される、化学および/または生物学反応(例えば、免疫アッセイ)を実行するために使用できる格納された試薬を含む。カセットは、例えば、任意選択の試薬格納エリア64と流体連結された任意選択の試薬注入口62を含み得る。格納エリアは、例えば、いくつかの実施形態では部分的にまたは完全に流体(例えば、以下でさらに詳細に説明されるように、場合により非混和性の流体によって分離される試薬溶液および洗浄溶液などの非混和性の試薬を含む液体および気体)が充填され得る1つまたは複数のチャネルおよび/または貯蔵部を含み得る。また、カセットは、試薬格納エリア64と任意選択の測定ゾーン68(例えば、反応エリア)との接続に使用できる流体コネクタなどの任意選択の試料または試薬投入エリア66も含み得る。試料中の成分を検出するための1つまたは複数のエリア(例えば、検出領域)を含み得る測定ゾーンは、任意選択の廃棄物エリア70と流体連結することができ、排出口72と結合することができる。いくつかの事例では、そのようなおよび他のデバイスの特徴は、本明細書でさらに詳細に説明されるように、カセットの異なるコンポーネントもしくは層上またはカセットの異なるコンポーネントもしくは層内に形成することができる。したがって、カセットが、単一のコンポーネント、または、本明細書に記載されるような物品と取り付けられた流体コネクタの組合せなどの使用中に取り付けられる複数のコンポーネントを含み得ることを理解されたい。ある一連の実施形態では、流体を、図面に示される矢印の方向に流すことができる。そのようなおよび他のコンポーネントのさらなる説明および例については、以下でさらに詳細に提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、カセットのセクション71および77は、カセットへ試料を導入する前は互いに流体連結されない。いくつかの事例では、セクション71および77は、カセットを最初に使用する前は互いに流体連結されず、最初の使用時に、これらのセクションは、互いに流体連結される。しかし、他の実施形態では、セクション71および77は、最初に使用する前および/またはカセットへ試料を導入する前に互いに流体連結される。また、カセットの他の構成も可能である。
【0023】
図1Aに示される例示的な実施形態で示されるように、ポンプおよび/もしくは真空器または他の圧力制御システムなどの1つまたは複数の流体流源40、バルブシステム28、検出システム34、温度調整システム41ならびに/または他のコンポーネントは、試薬注入口62、試薬格納エリア64、試料もしくは試薬投入エリア66、反応エリア68、廃棄物エリア70、排出口72および/またはカセット20の他の領域の1つまたは複数と作動的に連結することができる。カセットの1つまたは複数の領域におけるプロセスまたは事象の検出により、制御システム50に伝送することができる信号または信号のパターンを生成することができる。制御システムによって受信された信号に基づいて、このフィードバックを使用して、ポンプ、真空器、バルブシステム、検出システム、温度調整システムおよび/または他のコンポーネントの1つまたは複数を制御することによってなど、マイクロ流体デバイスのこれらのそれぞれの領域内および/または同領域間で流体を操作することができる。
【0024】
図1B~2を参照すると、マイクロ流体試料分析器100の一実施形態が示される。図1Bの例示的な実施形態に示されるように、分析器100は、以下でさらに詳細に論じられる分析器100のコンポーネントを覆うまたは保持するよう構成された筺体101を含む。筺体101内の開口部120は、カセット20を受入するよう構成される。以下でさらに詳細に記載されるように、分析器100は、筺体101内に配置され、ユーザが試料分析器に情報を入力するよう構成されたユーザインターフェース200も含み得る。この特定の実施形態では、ユーザインターフェース200はタッチスクリーンを含むが、以下で論じられるように、ユーザインターフェースを異なる方法で構成してもよい。
【0025】
図2は、筺体101内に配置され得る他のコンポーネントのいくつかを描写するために筺体101の一部およびユーザインターフェース200が取り外された以外は、図1Bに示される試料分析器100を示す。これらのコンポーネントについては以下でさらに詳細に説明され、これらに限定されないが、カセット20を加圧するよう構成された流体流源40(例えば、真空システム)と、カセットに関連する情報を読み取るよう構成された識別読取器60と、カセットとインターフェースをとり、筺体内のカセットを検出するよう構成されたコンポーネントを含む機械サブシステム79とを含む。上述の通り、筺体内の開口部120は、カセット20を受入するよう構成される。図2に示されるように、一実施形態では、開口部120は細長いスロットとして構成される。開口部120は、この様式で、実質的にカード形状のカセットを受入するよう構成してもよい。他の実施形態では、本発明はそのように限定されないため、開口部120は、異なる方法で成形しても構成してもよいことを理解されたい。
【0026】
上述の通り、マイクロ流体試料分析器100は、さまざまなタイプのカセット20(例えば、マイクロ流体デバイス)を受入するよう構成することができる。図3~9は、分析器100とともに使用するためのカセット20のさまざまな例示的な実施形態を示す。図3~4および6に示されるように、カセット20は、実質的に剛体の板状の構造を有する実質的にカード形状のもの(すなわち、カードキーと同様)であり得る。
【0027】
カセット20は、流体コネクタ220を含むよう構成することができ、図4に示される例示的な実施形態に示されるように、流体コネクタ220は、カセット20の一方の端に嵌め込むことができる。ある特定の実施形態では、流体コネクタを使用して、1つまたは複数の流体(例えば、試料もしくは試薬)をカセットに導入することができる。
【0028】
ある一連の実施形態では、流体コネクタを使用して、最初の使用時にカセットの2つ(またはそれ以上)のチャネルを流体接続する。最初に使用する前は、チャネルは接続されていない。例えば、カセットは、カセットを最初に使用する前は流体連結されていない2つのチャネルを含み得る。チャネルのそれぞれに異なる試薬を格納する場合などのある特定の事例では、非接続チャネルは有利であり得る。例えば、第1のチャネルを使用して乾燥試薬を格納し、第2のチャネルを使用して湿潤試薬を格納することができる。互いに物理的に分離されたチャネルを有することで、例えば、湿潤形態で格納された試薬によって発生し得る湿気から保護された乾燥形態で試薬を格納した状態を保つことによって、チャネルのそれぞれに格納された試薬の長期の安定性を高めることができる。最初の使用時は、流体コネクタを介してチャネルを接続し、カセットのチャネル間の流体連結を可能にすることができる。例えば、流体接続により、カセットの注入口および/または排出口を密封するシールに穴を開け、カセットへの流体コネクタの挿入を可能にすることができる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「カセットを最初に使用する前」は、市販購入後に対象ユーザがカセットを最初に使用する前の1つまたは複数の時期を意味する。最初の使用は、ユーザによるデバイスの操作を必要とする任意の工程を含み得る。例えば、最初の使用は、密封された注入口に穴を開けてカセットに試薬を導入する工程、2つ以上のチャネルを接続して、チャネル間で流体連結させ、試料の分析前のデバイスの準備(例えば、デバイスへの試薬の投入)を行う工程、デバイスに試料を投入して、デバイスの領域内で試料の準備を行う工程、試料との反応を実行し、試料を検出する工程などの1つまたは複数の工程を伴う場合がある。最初の使用は、この文脈内では、カセットの製造業者によって行われる製造もしくは他の予備の工程または品質管理工程を含まない。この文脈内での最初の使用の意味は当業者には周知であり、本発明のカセットが最初の使用を経たかまたは経ていないか容易に判断できよう。ある一連の実施形態では、本発明のカセットは最初の使用後(例えば、アッセイ完了後)は使い捨てが可能であり、そのようなデバイスの最初の使用時は特に明白であるが、その理由は、最初の使用後のそのデバイスの使用(例えば、第2のアッセイを実行するため)がとにかく一般的に非実用的であるためである。
【0030】
カセットは、さまざまなメカニズムを使用して流体コネクタと結合することができる。例えば、流体コネクタは、カセットの特徴に相補的な少なくとも1つの非流体の特徴を含み、取り付け時に流体コネクタとカセットとの間に非流体接続を形成することができる。非流体の相補的な特徴は、例えば、流体コネクタの突出特徴およびそれに対応するカセットの相補的な空洞であり得、それは、ユーザが流体コネクタをカセットと整合する際に役立てることができる。いくつかの事例では、特徴は、整合要素が流体コンポーネントを受入する際(例えば、流体コンポーネントを整合要素に挿入する際)および/またはデバイスの意図する使用の間、カセットおよび/または整合要素に対する流体コネクタの動きに対してかなりの抵抗を生み出す。流体コネクタおよび/またはカセットは、場合により、嵌め込み機能(例えば、凹部)、溝、クリップを挿入するための開口部、ジップタイメカニズム、圧力継手、摩擦継手、ねじ継手などのねじ込みコネクタ、嵌め込み継手、接着継手、磁気コネクタまたは他の適切な結合メカニズムなどの1つまたは複数の特徴を含み得る。カセットへの流体コネクタの接続は、コンポーネント間に液密および/または気密シールを形成する工程を伴う場合がある。カセットへの流体コネクタの取り付けは、可逆性であっても不可逆性であってもよい。
【0031】
示されるように、カセット20は、流体コネクタ220を含むよう構成することができる。特に、カセット20は、コネクタ220を受入して嵌合するよう構成される流体コネクタ整合要素202を含み得る。例えば、整合要素は、カセットの基部から伸び、流体コネクタを受けて係合するよう構築および構成される空洞を含み、それにより、カセットの基部に対して既定の設定された構成で流体コネクタを配置することができる。図4の例示的な実施形態に示されるように、カセットは、カセットに対してほぼ垂直に延在する整合要素を含み得る。他の実施形態では、整合要素は、カセットに対してほぼ平行に延在し得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、整合要素および流体コネクタの構成は、滑り運動によって流体コネクタを整合要素に挿入できるよう適合させることができる。例えば、流体コネクタを整合要素に挿入する際、流体コネクタは、整合要素の1つまたは複数の表面に対して摺動することができる。
【0033】
図5に示された実施形態から分かるように、流体コネクタ220は、カセットに接続する前に、流体および/または試薬(例えば、流体試料)を保持し得る実質的にU形状のチャネル222を含み得る。チャネル222は、コネクタ220を形成する2つのシェルコンポーネント間に収容することができる。例えば、ランセットまたは他の適切な機器を使用して、指先穿刺によって血液試料を採取することができ、この血液試料は、流体コネクタ220によって収集され、毛細管現象によってチャネル222に投入され得る。他の実施形態では、流体コネクタ220は、患者の指を穿刺してチャネル222に試料を採取するよう構成することができる。特定の実施形態では、流体コネクタ220は、カセットへの接続前には試料(または、試薬)を含まないが、接続と同時に単にカセットの2つ以上のチャネル間の流体連結を可能にする。一実施形態では、U形状のチャネルは、毛細管を用いて形成される。また、流体コネクタは、他のチャネル構成も含むことができ、いくつかの実施形態では、互いに流体接続されても流体接続されなくともよい2つ以上のチャネルを含み得る。
【0034】
図6~9は、カセット20のさまざまな例示的な実施形態をさらに詳細に示す。図7の分解組立図に例示的に示されるように、カセット20は、カセット本体204を含み得、カセット本体204は、試料または試薬を受入するよう構成され、その中で試料または試薬を流すことができる少なくとも1つのチャネル206を含む。カセット本体204は、試料または試薬を受入するよう構成された少なくとも1つのチャネル206を含む。また、カセット本体204は、嵌め込み装着式で流体コネクタ整合要素202と連結する、一方の端に配置されたラッチ208も含み得る。
【0035】
また、カセット20は、上部および下部カバー210および212も含み得、上部および下部カバーは、例えば、透明な物質からなり得る。いくつかの実施形態では、カバーは、生体適合性の接着剤の形態であり得、例えば、ポリマー(例えば、ポリエチレン(PE)、環状オレフィン共重合体(COC)、ポリ塩化ビニール(PVC))または無機物質からなり得る。いくつかの事例では、1つまたは複数のカバーは、粘着性の膜(例えば、テープ)の形態である。いくつかの適用例において、カバーの材料および寸法は、カバーが水蒸気に対して実質的に不浸透性であるように選択される。他の実施形態では、カバーは、非接着剤であり得るが、熱、レーザエネルギーまたは超音波エネルギーを直接加えることによってマイクロ流体基板に熱的に結合することができる。カセットのチャネルのいかなる注入口および/または排出口も、1つまたは複数のカバーを使用して密封することができる(例えば、注入口および/または排出口上に接着剤を置くことによって)。いくつかの事例では、カバーは、カセット内の1つまたは複数の格納された試薬を実質的に密封する。
【0036】
示されるように、カセット本体204は、カセット本体204内のチャネル206と結合された1つまたは複数のポート214を含み得る。これらのポート214は、流体コネクタ220をカセット20と結合して、カセット本体204内のチャネル206を流体コネクタ220内のチャネル222と流体接続する際、流体コネクタ220内の実質的にU形状のチャネル222と整合するよう構成することができる。ある特定の実施形態では、実質的にU形状のチャネル222は、チャネル207と流体接続することもでき、それにより、チャネル206および207を結合することができる。示されるように、カバー216をポート214上に設けることができ、カバー216は、継ぎ合わせるかまたは別の方法で開放して(例えば、コネクタ220によってまたは他の手段で)、2つのチャネル206および222を流体接続するよう構成することができる。それに加えて、カバー218を設けて、カセット本体204内のポート219(例えば、真空ポート)を覆うことができる。以下でさらに詳細に記載されるように、ポート219は、流体流源40をチャネル206と流体接続させ、カセット全体を通じて試料を移動させるよう構成することができる。ポート219上のカバー218は、貫通させるかまたは別の方法で開放してチャネル206を流体流源40と流体接続するよう構成することができる。
【0037】
カセット本体204は、場合により、吸収材料217(例えば、廃棄物パッド)を含む廃棄物エリアなどの液体閉じ込め領域を含み得る。いくつかの実施形態では、液体閉じ込め領域は、カセット内を流れる1つまたは複数の液体を捕捉する領域を含む一方で、カセット内の気体または他の流体がその領域中を通過できるようにする。いくつかの実施形態では、これは、液体を吸収するために液体閉じ込め領域内に1つまたは複数の吸収材料を配置することによって達成することができる。この構成は、流体流からの気泡の除去および/または親水性液体から疎水性液体の分離に有用であり得る。ある特定の実施形態では、液体閉じ込め領域は、液体がその領域中を通過するのを防ぐ。いくつかのそのような事例では、液体閉じ込め領域は、カセット内の実質的にすべての液体を捕捉することによって廃棄物エリアとして機能することができ、それにより、液体がカセットから抜け出るのを防ぐことができる(例えば、カセットの排出口から気体を排出できるようにする一方で)。例えば、廃棄物エリアを使用して、試料の分析中に試料および/または試薬がチャネル206中を通過した後で、カセット内に試料および/または試薬を格納することができる。これらのおよび他の構成は、カセットを診断ツールとして使用する際は有用であり得るが、その理由は、液体閉じ込め領域は、ユーザがカセット内の潜在的に有害な流体に曝露されるのを防ぐことができるためである。
【0038】
図8に示されるカセット20の概略図は、カセット20が第1のチャネル206と、第1のチャネル206から離間された第2のチャネル207とを含む一実施形態を示す。一実施形態では、チャネル206、207の最大横断面寸法は、およそ50マイクロメートルからおよそ500マイクロメートルまで及ぶが、以下でさらに詳細に説明されるように、他のチャネルサイズおよび構成も使用することができる。
【0039】
第1のチャネル206は、試料の分析に使用される1つまたは複数の測定ゾーン209を含み得る。例えば、例示的な一実施形態では、チャネル206は、試料分析中に利用される4つの測定ゾーン209を含む(例えば、直列または並列に接続される)。
【0040】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の測定ゾーンは、蛇行した領域(例えば、蛇行したチャネルを含む領域)の形態である。例えば、蛇行した領域は、少なくとも0.25mm、少なくとも0.5mm、少なくとも0.75mmまたは少なくとも1.0mmの面積によって画定され得、蛇行した領域の面積の少なくとも25%、50%または75%は、光検出経路を含む。蛇行した領域の2つ以上の隣接部分を通じて単一の信号の測定を可能にする検出器は、蛇行した領域に隣接して配置することができる。いくつかの事例では、チャネル206は、直列に接続された少なくとも2つの蛇行した領域と流体接続される。
【0041】
本明細書に記載されるように、第1のチャネル206および/または第2のチャネル207を使用して、カセットを最初に使用する前に試料の処理および分析に使用される1つまたは複数の試薬を格納することができる。いくつかの実施形態では、乾燥試薬がカセットの1つのチャネルまたはセクションに格納され、湿潤試薬がカセットの第2のチャネルまたはセクションに格納される。あるいは、カセットの2つの別々のセクションまたはチャネルは両方とも、乾燥試薬および/または湿潤試薬を含むことができる。試薬は、例えば、液体、気体、ゲル、複数の粒子または膜として格納および/または処置することができる。試薬は、これらに限定されないが、チャネル内、貯蔵部、表面上および膜中または膜上を含むカセットの任意の適切な部分に配置することができ、これは、場合により、試薬格納エリアの一部であり得る。試薬は、任意の適切な様式でカセット(または、カセットのコンポーネント)に含まれ得る。例えば、試薬は、架橋(例えば、共有結合的もしくはイオンで)されても、吸収されても、カセット内の表面上に吸着(物理吸着)されてもよい。特定の一実施形態では、チャネルのすべてまたは一部(流体コネクタの流体経路またはカセットのチャネルなど)は、抗凝固剤(例えば、へパリン)でコーティングされる。いくつかの事例では、液体は、最初に使用する前および/またはカセットへ試料を導入する前に、カセットのチャネルまたは貯蔵部内に含まれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、格納された試薬は、使用中、流体が反応部位に流れる際に既定のシーケンスで送達されるように、線形順序に配置された流体栓を含み得る。アッセイを実行するよう設計されたカセットは、例えば、すすぎ流体、標識抗体流体、すすぎ流体および増幅流体を順番に含み得、すべてがその中に格納される。流体を格納する間、実質的に非混和性の分離流体(例えば、空気などの気体)によって流体を別々に格納することができ、その結果、接触すると通常互いに反応し合うであろう流体試薬を共通のチャネル内で格納することができる。
【0043】
試薬は、さまざまな時間量の間、カセットに格納することができる。例えば、試薬は、1時間より長く、6時間より長く、12時間より長く、1日より長く、1週間より長く、1カ月より長く、3カ月より長く、6カ月より長く、1年より長くまたは2年より長く格納することができる。場合により、カセットは、格納を引き延ばすため、適切な様式で取り扱うことができる。例えば、格納された試薬をその中に含むカセットは、真空包装して、暗い環境で格納するおよび/または低温(例えば、0℃未満)で格納することができる。格納期間は、使用される特定の試薬、格納された試薬の形態(例えば、湿潤または乾燥)、基板およびカバー層の形成に使用されるものの寸法および材料、基板およびカバー層を接着する方法、ならびに、全体的にカセットを取り扱うまたは格納する方法などの1つまたは複数の要因に依存する。チャネル内での試薬(例えば、液体または乾燥試薬)の格納は、最初に使用する前またはデバイスの梱包時に、チャネルの注入口および排出口を密封する工程を伴う場合がある。
【0044】
図8および9A~9Fに示される例示的な実施形態で示されるように、チャネル206および207は、流体コネクタ220をカセット20と結合するまでは、互いに流体連結されなくともよい。言い換えれば、2つのチャネルは、いくつかの実施形態では、最初に使用する前および/またはカセットへ試料を導入する前は、互いに流体連結されない。特に、示されるように、コネクタ220の実質的にU形状のチャネル222は、第2のチャネル207内の試薬がU形状のチャネル22中を通過して選択的に第1のチャネル206内の測定ゾーン209に移動することができるように、第1および第2のチャネル206、207を流体接続することができる。他の実施形態では、2つのチャネル206および207は、最初に使用する前および/またはカセットへ試料を導入する前は、互いに流体連結されるが、最初の使用時に流体コネクタは2つのチャネルをさらに接続する(例えば、閉ループシステムを形成するため)。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるカセットは、もう1つのマイクロ流体チャネルを含み得るが、そのようなカセットは、マイクロ流体システムに限定されず、他のタイプの流体システムに関連する場合がある。本明細書で使用される場合、「マイクロ流体」は、最大横断面寸法が1mm未満で、長さと最大横断面寸法との比率が少なくとも3:1の、少なくとも1つの流体チャネルを含むカセット、デバイス、装置またはシステムを示す。本明細書で使用される場合、「マイクロ流体チャネル」は、これらの基準を満たすチャネルである。
【0046】
チャネルの「横断面寸法」(例えば、直径)は、流体の流れの方向に対して垂直に測定される。本明細書に記載されるカセットのコンポーネント内の流体チャネルの大部分は、2mm未満の最大横断面寸法を有し、いくつかの事例では、1mm未満の最大横断面寸法を有する。ある一連の実施形態では、カセットのすべての流体チャネルは、マイクロ流体であるか、または、2mm以下もしくは1mm以下の最大横断面寸法を有する。別の一連の実施形態では、チャネルの最大横断面寸法は、500ミクロン未満、200ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満または25ミクロン未満である。いくつかの事例では、チャネルの寸法は、流体を物品または基板中を自由に流すことができるように選択することができる。また、チャネルの寸法は、例えば、チャネル内での流体のある特定の容積流速または線形流速が可能となるように選択することもできる。当然ながら、チャネルの数およびチャネルの形状は、当業者に公知の任意の適切な方法ごとに異なり得る。いくつかの事例では、2つ以上のチャネルまたは毛細管を使用することができる。
【0047】
チャネルは、少なくとも部分的に流体の流れを方向付ける物品(例えば、カセット)上または物品内に特徴を含み得る。チャネルは、任意の適切な横断面形状(円形、楕円形、三角形、不規則な、正方形もしくは長方形または同様のもの)を有することができ、覆われていても覆われていなくともよい。チャネルが完全に覆われた実施形態では、チャネルの少なくとも1つの部分は、完全に密閉された横断面を有することができるか、または、その注入口と排出口を除いて、チャネル全体をその全長に沿って完全に密閉することができる。また、チャネルは、少なくとも2:1、より典型的には、少なくとも3:1、5:1もしくは10:1またはそれ以上のアスペクト比(長さ対平均横断面寸法)を有することもできる。
【0048】
本明細書に記載されるカセットは、カセットの片面または両面上に配置されたチャネルまたはチャネル部分を含み得る。いくつかの事例では、チャネルは、カセットの表面内に形成される。チャネル部分は、カセット中を通過する介在チャネルによって接続することができる。いくつかの実施形態では、チャネル部分を使用して、エンドユーザが最初に使用する前に、デバイス内に試薬を格納する。チャネル部分の特定の形状およびカセット内でのチャネル部分の位置により、カセットの出荷中などのカセットの通常の取り扱い中やカセットが物理的衝撃または振動を受ける時であっても、混合なしでの流体試薬の長時間格納を可能にすることができる。
【0049】
ある特定の実施形態では、カセットは、一連の流体チャネルの反対側のカセットの片面上に製作される光学素子を含む。「光学素子」を使用して、素子を欠く場合の物品またはカセットへの入射光線に対する入射電磁放射の方向(例えば、屈折または反射を通じた)、焦点、偏光および/または他の特性の変更を実現させるおよび変更に使用される物品もしくはカセット上または物品もしくはカセット内に形成または配置される特徴を示す。例えば、光学素子は、カセット内またはカセット上に形成または配置されるレンズ(例えば、凹または凸)、鏡、回折格子、溝または他の特徴を含み得る。しかし、ユニークな特徴のないカセット自体は、カセットとの相互作用で入射光線の1つまたは複数の特性を変更することはあっても、光学素子を構成することはない。光学素子は、光の大部分が、流体チャネル間の介在部分などのカセットの特定のエリアから離れて分散するように、カセット中を通過する入射光線を誘導することができる。これらの介在部分への入射光線の量を減少することによって、ある特定の光検出システムを使用する際に、検出信号における雑音の量を減少することができる。いくつかの実施形態では、光学素子は、カセットの表面上または表面内に形成された三角溝を備える。三角溝の勾配角は、カセットの表面に垂直な入射光線が外部媒体(例えば、空気)およびカセットの材料の屈折率に応じた角度で再度方向付けされるように選択することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の光学素子は、測定ゾーンの蛇行した領域の隣接部分間に配置される。
【0050】
カセットまたはその一部は、チャネルまたは他のコンポーネントの形成に適切な任意の材料から製作することができる。材料の非限定的な例は、ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリ(ジメチルシロキサン)、PVC、PTFE、PETおよびシクロオレフィン共重合体)、ガラス、クォーツおよびシリコンを含む。カセットおよび任意の付随するコンポーネント(例えば、カバー)を形成する材料は、硬性であっても可撓性であってもよい。当業者であれば、例えば、その剛性、その中を通過する流体に対するその不活性(例えば、その中を通過する流体による劣化が存在しない)、特定のデバイスが使用されるべき温度でのそのロバスト性、光に対するその透明度/不透明度(例えば、紫外線および可視領域における)および/または材料内での特徴の製作に使用される方法に基づいて、適切な材料を容易に選択することができる。例えば、射出成形または他の押出物品の場合、使用される材料は、熱可塑性物質(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ナイロン6)、エラストマー(例えば、ポリイソプレン、イソブテン-イソプレン、ニトリル、ネオプレン、エチレン-プロピレン、ハイパロン、シリコーン)、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ、不飽和ポリエステル、フェノール類)またはそれらの組合せを含み得る。以下でさらに詳細に説明されるように、2つ以上のコンポーネントまたは層を含むカセットは、例えば、上記および本明細書に記載されるそれらの要因に基づいて、異なる材料内に形成して、コンポーネントをコンポーネントのそれぞれの主要な機能に合わせて調整することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、カセットおよび/またはカバーの材料および寸法(例えば、厚さ)は、水蒸気に対して実質的に不浸透性であるように選択される。例えば、最初に使用する前にその中に1つまたは複数の流体を格納するよう設計されたカセットは、金属箔、ある特定のポリマー、ある特定のセラミックおよびそれらの組合せなどの高い蒸気バリア性を提供することが知られている材料を含むカバーを含み得る。低い水蒸気透過性を有する材料の例を以下に提供する。他の事例では、材料は、カセットの形状および/または構成に少なくとも部分的に基づいて選択される。例えば、ある特定の材料を使用して平面デバイスを形成することができるが、他の材料は、湾曲するまたは不規則に成形されるデバイスの形成により適している。
【0052】
いくつかの例では、カセットは、上記のものなどの2つ以上の材料の組合せからなる。例えば、カセットのチャネルは、ポリスチレンまたは他のポリマー(例えば、射出成形によって)内に形成することができ、生体適合性のテープを使用してチャネルを密封することができる。生体適合性のテープまたは可撓性材料は、蒸気バリア特性を改善することが知られている材料(例えば、高い蒸気バリア性を有することが知られている金属箔、ポリマーまたは他の材料)を含み得、場合により、テープに穴を開けるかまたははぎ取ることによって注入口および排出口へのアクセスを可能にすることができる。さまざまな方法を使用して、マイクロ流体チャネルもしくはチャネルの一部を密封することも、これらに限定されないが、接着剤の使用、粘着テープの使用、糊付け、粘結、材料の積層または機械的方法(例えば、締め付け、嵌め込みメカニズムなど)によるものを含めてデバイスの複数の層を接合することもできる。
【0053】
いくつかの例では、カセットは、互いに装着された2つ以上の別々のコンポーネント(例えば、層またはカセット)の組合せを備える。場合により最初に使用する前にその中に格納された試薬を含み得る独立したチャネルネットワーク(図1Aのセクション71および77などの)は、カセットの異なるコンポーネント上またはカセットの異なるコンポーネント内に含めることができる。本明細書に記載される方法によってなど、別々のコンポーネントを任意の適切な手段で互いに装着するかまたは別の方法で互いに連結し、例えば、単一の(複合)カセットを形成することができる。いくつかの実施形態では、2つ以上のチャネルネットワークは、カセットの異なるコンポーネントまたは層内に配置され、最初に使用する前は流体接続されないが、例えば、流体コネクタの使用によって、最初の使用時に流体接続される。他の実施形態では、2つ以上のチャネルネットワークは、最初に使用する前に流体接続される。
【0054】
有利には、複合カセットを形成する異なるコンポーネントまたは層のそれぞれは、そのコンポーネントまたは層の設計された機能に合わせて個別に調整することができる。例えば、ある一連の実施形態では、複合カセットの1つのコンポーネントは、湿潤試薬の格納に合わせて調整することができる。いくつかのそのような実施形態では、そのコンポーネントは、比較的低い蒸気透過性を有する材料内に形成することができる。それに加えてまたはその代替として、例えば、格納する流体の量に応じて、そのカセットの格納領域は、液体の格納に使用されない他のコンポーネントのチャネルまたは領域より大きい横断面寸法で作成することができる。カセットの形成に使用される材料は、より大きな横断面寸法での形成に適した製作技法と適合し得る。対照的に、分析物の検出に合わせて調整することができる第2のコンポーネントは、いくつかの実施形態では、より小さな横断面寸法を有するチャネル部分を含み得る。より小さな横断面寸法は、例えば、ある特定の実施形態では、流体の所定の容積に対して、チャネル内を流れる流体(例えば、試薬溶液または洗浄流体)とチャネルの表面に結合した分析物とのより多くの接触時間を可能にするのに有用であり得る。それに加えてまたはその代替として、第2のコンポーネントのチャネル部分は、別のコンポーネントのチャネル部分と比較すると、低い表面粗度(例えば、検出中に信号対雑音比を増加するため)を有し得る。第2のコンポーネントのチャネル部分のより小さな横断面寸法または低い表面粗度は、ある特定の実施形態では、カセットの異なるコンポーネントを形成するのに使用されるものとは異なるある特定の製作技法または製作型を必要とする場合がある。その上、いくつかの特定の実施形態では、第2のコンポーネントに使用される材料は、タンパク質付着および検出に対してよく特徴付けられたものであり得る。このように、カセットの異なるコンポーネントに対して異なる目的で使用される異なるチャネル部分を形成し、使用前に対象ユーザが互いに接合できることが有利であり得る。他の利点、コンポーネントの特徴および例を以下に提供する。
【0055】
図9B~9Eは、組み合わせて単一のカセットを形成する複数のコンポーネント20Bおよび20Cを含み得るデバイスを示す。これらの例示的な実施形態に示されるように、コンポーネント20Bは、第1の側面21Aおよび第2の側面21Bを含み得る。コンポーネント20Cは、第1の側面22Aおよび第2の側面22Bを含み得る。チャネルまたは他の実体などの本明細書に記載されるデバイスコンポーネントまたは部品は、コンポーネントの第1の側面およびコンポーネントの第2の側面側、コンポーネントの第1の側面およびコンポーネントの第2の側面上もしくはコンポーネントの第1の側面およびコンポーネントの第2の側面内に、ならびに/または、いくつかの実施形態では、コンポーネントを通じて形成することができる。例えば、図9Cに例示的に示されるように、コンポーネント20Cは、注入口および排出口を有するチャネル206を含み得、第1の材料内に形成され得る。チャネル206は、本明細書に記載されるような任意の適切な構成を有し得、例えば、1つまたは複数の試薬格納領域、測定ゾーン、液体閉じ込め領域、混合領域および同様のものを含み得る。いくつかの実施形態では、チャネル206は、コンポーネント20Bの厚さ全体を通じて形成されるものではない。すなわち、チャネルは、コンポーネントの片面側または片面内に形成され得る。チャネル206は、場合により、本明細書に記載されるように、テープ(図示せず)などのカバー、カセットの別のコンポーネントもしくは層または他の適切なコンポーネントで密閉され得る。他の実施形態では、チャネル206は、コンポーネント20Bの厚さ全体を通じて形成され、チャネルを密閉するためカセットの両側にカバーが必要とされる。
【0056】
コンポーネント20Bは、注入口および排出口を有するチャネル207を含み得、第2の材料内に形成され得、第2の材料は、第1の材料と同じであっても異なってもよい。また、チャネル207は、本明細書に記載されるように、任意の適切な構成を有し得、コンポーネント20Cの厚さ全体を通じて形成されても形成されなくともよい。チャネル207は、1つまたは複数のカバーで密閉され得る。いくつかの事例では、カバーは、コンポーネント20Cなどの1つまたは複数の流体チャネルを含むコンポーネントではない。例えば、カバーは、生体適合性のテープまたはコンポーネント20Bと20Cとの間に配置される他の表面であり得る。他の実施形態では、チャネル207は、コンポーネント20Cによって実質的に密閉され得る。すなわち、コンポーネント20Cの表面22Aは、コンポーネント20Bと20Cが互いに直接隣接して敷設する際に、チャネル207の一部を形成し得る。
【0057】
図9Dおよび9Eに例示的に示されるように、コンポーネント20Bおよび20Cは、実質的に平面であり得、互いに重ねて敷設され得る。しかし、一般に、カセットを形成する2つ以上のコンポーネントは、互いに対して任意の適切な構成で敷設することができる。いくつかの事例では、コンポーネントは、互いに隣接して敷設する(例えば、併置する、互いに重ねて配置する)。第1のコンポーネントは、互いに完全に重なり合っても、コンポーネントの一部のみが重なり合ってもよい。例えば、図9Dおよび9Eに例示的に示されるように、コンポーネント20Cは、コンポーネント20Bを超えてさらに延在してもよく、その結果、コンポーネント20Cの一部は、コンポーネント20Bと重なり合うことも、コンポーネント20Bで覆われることもない。いくつかの事例では、コンポーネント20Cが実質的に透明であり、コンポーネントの一部(例えば、反応エリア、測定ゾーンまたは検出領域)を光が通過する必要がある場合、および、コンポーネント20Bが不透明であるかまたはコンポーネント20Cよりも透明度が低い場合は、この構成は有利であり得る。
【0058】
その上、第1のコンポーネントおよび第2のコンポーネントは、任意の適切な形状および/または構成を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、第1のコンポーネントは、第2のコンポーネントの特徴に相補的な特徴を含み、第1のコンポーネントと第2のコンポーネントとの間に非流体接続を形成する。相補的な特徴は、例えば、組立中に第1のコンポーネントと第2のコンポーネントの整合を支援し得る。相補的な特徴の例を本明細書に記載する。いくつかの事例では、本明細書に記載されるものなどの結合または嵌合メカニズムを使用して、第1のコンポーネントと第2のコンポーネントを結合することができる。
【0059】
第1のコンポーネントおよび第2のコンポーネントは、いくつかの実施形態では、互いに完全に接続され得る。本明細書で使用される場合、「完全に接続された」という用語は、2つ以上の対象物について言及する場合は、例えば、手動では分離できない、分離には少なくとも道具の使用が必要である、および/または、少なくとも1つのコンポーネントを損傷する必要がある(例えば、接着剤もしくは道具によって互いに固定されたコンポーネントを破壊する、はぎ取るもしくは切り離す)など、通常の使用過程において互いに分離されない対象物を意味する。完全に接続されたコンポーネントは、通常の使用過程において互いに不可逆的に取り付けることができる。例えば、コンポーネント20Bとコンポーネント20Cは、接着剤または他の粘結方法の使用によって完全に接続され得る。他の実施形態では、カセットの2つ以上のコンポーネントは、互いに可逆的に取り付けることができる。
【0060】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、複合カセットを形成する少なくとも第1および第2のコンポーネントは、異なる材料内に形成することができる。システムは、第1のコンポーネントが第1のコンポーネントの1つまたは複数の機能性を支援または強化する第1の材料を含むよう設計することができる。例えば、第1のコンポーネントが、ユーザが最初に使用する前に液体試薬を格納する(例えば、コンポーネントのチャネル内に)よう設計されれば(例えば、少なくとも1日、1週間、1カ月または1年間)、第1の材料は、比較的低い蒸気透過性を有するよう選択して、格納された液体の経時的な蒸発量を低減することができる。しかし、いくつかの実施形態では、カセットの複数のコンポーネント(例えば、層)に同じ材料を使用できることを理解されたい。例えば、カセットの第1のコンポーネントと第2のコンポーネントの両方とも、低い水蒸気透過性を有する材料内に形成することができる。
【0061】
デバイスのセクションまたはコンポーネントのすべてまたは一部の形成に使用される材料は、例えば、約5.0g・mm/m・d未満、約4.0g・mm/m・d未満、約3.0g・mm/m・d未満、約2.0g・mm/m・d未満、約1.0g・mm/m・d未満、約0.5g・mm/m・d未満、約0.3g・mm/m・d未満、約0.1g・mm/m・d未満または約0.05g・mm/m・d未満の水蒸気透過性を有し得る。いくつかの事例では、水蒸気透過性は、例えば、約0.01g・mm/m・d~約2.0g・mm/m・d、約0.01g・mm/m・d~約1.0g・mm/m・d、約0.01g・mm/m・d~約0.4g・mm/m・d、約0.01g・mm/m・d~約0.04g・mm/m・dまたは約0.01g・mm/m・d~約0.1g・mm/m・dであり得る。水蒸気透過性は、例えば、40℃、90%の相対湿度(RH)で測定することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、第2のコンポーネントは、ユーザによる使用前の液体の格納には使用されず、第1のコンポーネントのものより高い水蒸気透過性を有する第2の材料内に形成することができる。例えば、第2の材料は、約0.05g・mm/m・d超、約0.1g・mm/m・d超、約0.3g・mm/m・d超、約0.5g・mm/m・d超、約1.0g・mm/m・d超、約2.0g・mm/m・d超、約3.0g・mm/m・d超、約4.0g・mm/m・d超または約5.0g・mm/m・d超の水蒸気透過性を有し得る。
【0063】
いくつかの事例では、カセットの第1のコンポーネントの形成に使用された第1の材料は、カセットの第2のコンポーネントの形成に使用された第2の材料のものの少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍または少なくとも100倍低い水蒸気透過性を有する。
【0064】
材料の水蒸気透過性は、既知であるか、または、当業者が決定することができる。例えば、ある特定のシクロオレフィン共重合体などの材料は、通常、約0.1g・mm/m・d未満(例えば、0.02~0.04g・mm/m・d)の水蒸気透過性を有するが、ある特定のポリプロピレンは、約0.5g・mm/m・d以上の水蒸気透過性を有する。ある特定のPETは、約1.0g・mm/m・dの水蒸気透過性を有し、ある特定のPVCは、約1.2g・mm/m・dの水蒸気透過性を有し、ある特定のポリカーボネートは、約4.0g・mm/m・dの水蒸気透過性を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、デバイスの1つまたは複数のコンポーネントまたは層は、ある特定の条件下で処理により適したものにする材料内に形成することができる。例えば、材料は、その融解温度に部分的に基づいて選択し、本明細書に記載されるものなどのある特定の製作型および/または方法と適合できるようにすることができる(例えば、ある特定の寸法のチャネルを形成するため)。いくつかの実施形態では、第1のコンポーネントは、約80℃超、約100℃超、約130℃超、約160℃超または約200℃超の融解温度を有する材料内に形成される。ある特定の実施形態では、第1のコンポーネントと組み合わせるよう設計された第2のコンポーネントは、約200℃以下、約160℃以下、約130℃以下、約100℃以下または約80℃以下の融解温度を有する材料内に形成される。また、他の融解温度も可能である。
【0066】
ある特定の一連の実施形態では、コンポーネント20Bは、コンポーネント20Cの形成に使用される材料よりも高い融解温度を有する材料で形成される。特定の一実施形態では、液体試薬の格納に使用されるコンポーネントは、カセットの別のコンポーネントの形成に使用される材料よりも高い融解温度を有する材料内に形成される。
【0067】
ある特定の実施形態では、第1および第2のコンポーネントを含むカセットは、それぞれの異なるコンポーネントにおいて異なる横断面寸法のチャネル部分を有する。本明細書に記載されるように、特定の横断面寸法は、チャネル部分がデバイスの他の部分またはコンポーネントに対して配置される場合はチャネル部分の機能、および、他の要因に部分的に基づいて選択することができる。
【0068】
カセットのチャネル部分は、任意の適切な横断面寸法を有し得る。例えば、第1のコンポーネントは、例えば、約50ミクロン超、約100ミクロン超、約200ミクロン超、約350ミクロン超、約500ミクロン超、約750ミクロン超または約1mm超の横断面寸法を有する少なくとも1つの部分を含む第1のチャネルを含み得る。いくつかの事例では、比較的大きい横断面寸法を有するチャネル部分を使用して、ユーザが最初に使用する前にその中に含まれる液体を格納することができる。
【0069】
いくつかの事例では、カセットの第2のコンポーネントは、カセットの第1のコンポーネントの第1のチャネル部分の横断面寸法の少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも7倍または少なくとも10倍異なる横断面寸法を有する少なくとも1つの部分を含む第2のチャネルを含み得る。横断面寸法のそのような違いは、第1のコンポーネントのものと比較して、第2のコンポーネントの第2のチャネル部分の異なる機能性に起因し得る。第2のコンポーネントの第2のチャネルは、例えば、約1mm未満、約750ミクロン未満、約500ミクロン未満、約350ミクロン未満、約200ミクロン未満、約100ミクロン未満または約50ミクロン未満の横断面寸法を有する少なくとも1つの部分を含み得る。例えば、いくつかの事例では、第1のコンポーネントの第1のチャネルものより比較的小さい横断面寸法を有するチャネルは、流体の流速を制御するためのデバイスの検出領域または他の目的に適する場合がある。
【0070】
いくつかの実施形態では、カセットのコンポーネントのチャネル部分が異なれば、異なる横断面寸法を有し、異なる融解温度を有する材料内に形成される。例えば、いくつかの例では、比較的小さい横断面寸法(例えば、約300ミクロン未満、約200ミクロン未満または約100ミクロン未満)を有するチャネル部分は、比較的低い融解温度(例えば、約100℃未満)を有する材料内に形成することができるが、比較的大きい横断面寸法(例えば、約100ミクロン超、約200ミクロン超または約300ミクロン超)を有するチャネル部分は、比較的高い融解温度(例えば、約100℃超)を有する材料内に形成することができる。
【0071】
ある特定の事例では、デバイスの異なるコンポーネントまたは層からのチャネルは、異なる表面粗度を有し得る。例えば、検出領域の一部となるよう設計されたチャネルは、検出プロセスで使用されないまたはより低い感度を必要とする検出プロセスで使用されるチャネルより低い表面粗度を有し得る。チャネル部分の表面粗度が高いと、望まない角度での光の不要な散乱または方向変更が生じる恐れがある。異なる表面粗度を有するデバイスの異なるコンポーネントまたは層からのチャネルは、比較的低い表面粗度を有するチャネルの製作が、より高い表面粗度を有するチャネルより複雑および/または高価なものであり得るため、有利であり得る。例えば、マイクロマシニングまたはリソグラフィ技法によって製造される成形用のある特定の製作型は、機械加工によって製造される型と比較して、より低い表面粗度を有する(したがって、より低い表面粗度を有するチャネルを形成する)が、その製作はより複雑および/または高価なものであり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、第1のコンポーネントの第1のチャネルの少なくとも一部は、約10ミクロン以下より低い二乗平均平方根表面(RMS)粗度を有し得る。ある特定の実施形態では、RMS表面粗度は、例えば、約5ミクロン以下、約3ミクロン以下、約1ミクロン以下、約0.8ミクロン以下、約0.5ミクロン以下、約0.3ミクロン以下または約0.1ミクロン以下であり得る。RMS表面粗度は、当業者に公知の用語であり、以下のように表すことができる。
【数1】
式中、Aは検査すべき表面であり、|z-z|は平均からの局部の高さ偏差である。
【0073】
第2のコンポーネントの第2のチャネルの少なくとも一部は、例えば、第1のコンポーネントのものとは異なる二乗平均平方根表面粗度を有し得る。第2のチャネル部分は、例えば、約0.1ミクロン超、約0.3ミクロン超、約0.5ミクロン超、約1ミクロン超、約3ミクロン超、約5ミクロン超または約10ミクロン超のRMS表面粗度を有し得る。
【0074】
ある特定の実施形態では、カセットの第1および第2のコンポーネントは、異なる度合いの光学的透明度を有する。例えば、第1のコンポーネントは実質的に不透明であり得、第2のコンポーネントは実質的に透明であり得る。実質的に透明なコンポーネントは、コンポーネント内に含まれる試料または分析物の光検出に適する場合がある。
【0075】
ある一連の実施形態では、カセットのコンポーネント(例えば、第1または第2のコンポーネント)の形成に使用される材料は、400nmから800nmまでの光の波長(例えば、可視範囲の光)で90%を超える光学透過率を有する。光学透過率は、例えば、約2mm(または、他の実施形態では、約1mmまたは約0.1mm)の厚さを有する材料を通じて測定することができる。いくつかの例では、光学透過率は、400nmから800nmまでの光の波長で80%超、85%超、88%超、92%超、94%超または96%超である。デバイスの別のコンポーネントは、400nmから800nmまでの光の波長で96%未満、94%未満、92%未満、90%未満、85%未満、80%未満、50%未満、30%未満または10%未満の光学透過率を有する材料内に形成することができる。
【0076】
本明細書に記載されるように、デバイスの異なるコンポーネントまたは層は、異なる(または同じ)製作型および/または方法によって製造されたチャネルを含み得る。例えば、射出成形を使用して1つのコンポーネントを形成することができ、異なる技法(例えば、機械加工)を使用して別のコンポーネントを形成することができる。別の例では、第1のコンポーネントの第1のチャネル部分は、フライス加工によってまたはリソグラフィプロセスによって製造された製作型の使用を伴う成形(例えば、射出成形)プロセスによって形成することができる。いくつかの事例では、フライス加工によって製造された製作型によって形成されたチャネル部分は、実質的に円形の横断面積を有し得るが、リソグラフィプロセスによって製造された製作型によって形成されたチャネル部分は、実質的に台形の横断面積を有し得る。また、実質的に円形の横断面積、実質的に台形の横断面積または横断面形状を有するチャネル部分を形成するための他の方法も可能である。第2のコンポーネントの第2のチャネル部分は、同じもしくは異なる方法によって製造された製作型を使用して形成することができ、および/または、第1のコンポーネントのチャネル部分と比較して、同じもしくは異なる横断面形状を有し得る。
【0077】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、カセットの第1のコンポーネントのチャネルは、ユーザが最初に使用する前は、カセットの第2のコンポーネントのチャネルと流体連結されない。例えば、図9Dに例示的に示されるように、2つのコンポーネントの嵌合後であっても、チャネル206と207は互いに流体連結されない。しかし、カセットは、流体コネクタ整合要素202(図9E)などの他の部品またはコンポーネントをさらに含み得、これは、カセットの第1および/もしくは第2のコンポーネント20Bおよび20Cまたは他の部分に取り付けることができる。本明細書に記載されるように、流体コネクタ整合要素は、流体コネクタ220を受入して嵌合するよう構成することができ、これにより、第1のコンポーネントのチャネル206と第2のコンポーネントのチャネル207との間の流体連結を可能にすることができる。例えば、流体コネクタは、流体経路入口と流体経路出口を含む流体経路を含み得、流体経路入口は、チャネル206の排出口に流体接続することができ、流体経路出口は、チャネル207の注入口に流体接続することができる(または、その逆も可能である)。流体コネクタの流体経路は、チャネルを接続するための任意の適切な長さ(例えば、少なくとも1cm、少なくとも2cm、少なくとも3cm、少なくとも5cm)を有し得る。流体コネクタは、カセットとともにキットの一部であり得、流体コネクタがチャネル206とチャネル207を流体接続しないように梱包される。
【0078】
流体コネクタは、カセットまたはカセットのコンポーネントに対して任意の適切な構成を有し得る。図9Eに例示的に示されるように、カセットへの流体コネクタの接続と同時に、流体コネクタは、別のコンポーネント(例えば、コンポーネント20C)の反対側のコンポーネント(例えば、コンポーネント20B)の側面上に配置することができる。他の実施形態では、流体コネクタは、カセットの2つのコンポーネント間に配置することができる。例えば、流体コネクタは、カセットの2つのコンポーネント間に配置された(例えば、間に挟まれた)コンポーネントまたは層であり得る。また、他の構成も可能である。
【0079】
それに加えて、流体コネクタは、例えば、図9Eに例示的に示されるように、カセットの1つまたは複数のコンポーネントまたは層に実質的に垂直に位置することができる。他の実施形態では、流体コネクタは、カセットの1つまたは複数のコンポーネントに実質的に平行に(例えば、上部にまたは着接して)位置することができる。また、他の構成も可能である。
【0080】
いくつかの事例では、整合要素および/または流体コネクタは、マルチコンポーネントのカセットの単一のコンポーネントにのみ物理的に接続されるが、他の事例では、整合要素および/または流体コネクタは、マルチコンポーネントのカセットの複数のコンポーネントに物理的に接続される。ある特定の実施形態では、整合要素および/または流体コネクタに物理的に接続されるカセットのコンポーネントの一部は、適切な接続を可能にするようある特定の厚さを有する。例えば、流体コネクタがカセットのチャネルの注入口および排出口に挿入されるよう設計されている場合は、その挿入領域のカセットは、ある特定の(例えば、最小限の)の厚さを有し得る。流体コネクタとの接続用に設計された領域のカセットまたはカセットの1つもしくは複数のコンポーネントは、例えば、少なくとも1cm、少なくとも1.5cm、少なくとも2cm、少なくとも2.5、少なくとも3cm、少なくとも4cmまたは少なくとも5cmの厚さを有し得る。整合要素および/または流体コネクタとの接続用に設計されなかったカセット(または、カセットのコンポーネント)の他の部分は、例えば、5cm未満、4cm未満、3cm未満、2.5cm未満、2cm未満、1.5cm未満、1cm未満、0.5cm未満または0.1cm未満の厚さを有し得る。
【0081】
本明細書の説明の多くが、チャネルネットワークを含む1つまたは複数のコンポーネントまたは層を有するカセットを対象とするが、他の実施形態では、カセットは、3つ以上、4つ以上または5つ以上のそのようなコンポーネントまたは層を含み得る。例えば、図9Fに例示的に示されるように、カセットは、コンポーネント20B、20C、20Dおよび20Eを含み得、それぞれが少なくとも1つのチャネルまたはチャネルのネットワークを含み得る。いくつかの例では、1つまたは複数のコンポーネント(例えば、2つ、3つまたはすべてのコンポーネント)のチャネルは、最初に使用する前は流体接続しないが、例えば、流体コネクタの使用によって最初の使用時に流体接続することができる。他の実施形態では、1つまたは複数のコンポーネント(例えば、2つ、3つまたはすべてのコンポーネント)のチャネルは、最初に使用する前に流体接続される。
【0082】
本明細書に記載されるように、カセットのそれぞれのコンポーネントまたは層は、カセットの別のコンポーネントの機能と異なる特定の機能を有するよう設計することができる。他の実施形態では、2つ以上のコンポーネントは同じ機能を有し得る。例えば、図9Fの例示的な実施形態に示されるように、それぞれのコンポーネント20C、20Dおよび20Eは、直列に接続された複数の測定ゾーン209を有し得る。複合カセットへの流体コネクタ222の接続と同時に、試料(または、複数の試料)の一部をそれぞれのコンポーネント20C、20Dおよび20Eのチャネルネットワークに導入して複数の分析を実行することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、カセットの少なくとも第1および第2のコンポーネントは、特定の化学的または生物学的条件の決定に使用されるデバイスまたはキットの一部であり得る。デバイスまたはキットは、例えば、第1の材料内に第1のチャネルを備える第1のコンポーネントを含み得、第1のチャネルは、注入口、排出口および第1の注入口と排出口との間に200ミクロンを超える横断面寸法を有する少なくとも1つの部分を含み得る。また、デバイスまたはキットは、第2の材料内に第2のチャネルを備える第2のコンポーネントも含み得、第2のチャネルは、注入口、排出口および第2の注入口と排出口との間に200ミクロン未満の横断面寸法を有する少なくとも1つの部分を含み得る。いくつかの事例では、デバイスまたはキットは、第1のコンポーネントと第2のコンポーネントが互いに接続するように梱包される。例えば、第1のコンポーネントと第2のコンポーネントは、互いに完全に接続され得る。他の実施形態では、第1のコンポーネントと第2のコンポーネントは、互いに可逆的に取り付けられる。デバイスまたはキットは、第1および第2のチャネルを流体接続するための流体コネクタをさらに含み得、流体コネクタは、流体経路入口と流体経路出口を含む流体経路を備え、流体経路入口は、第1のチャネルの排出口に流体接続することができ、流体経路出口は、第2のチャネルの注入口に流体接続することができる。いくつかの実施形態では、デバイスまたはキットは、パッケージ内で流体コネクタが第1および第2のチャネルを流体接続しないように梱包される。対象ユーザによるデバイスの最初の使用と同時に、流体コネクタを使用して、第1および第2のチャネルを互いに流体連結させることができる。
【0084】
本明細書に記載されるように、デバイスまたはキットは、互いに異なり得るカセットの異なるコンポーネント上のチャネル部分を含み得る。このように、ある特定の実施形態では、デバイスは、次の特徴、すなわち、第1のコンポーネントの第1のチャネル部分の形成に使用された第1の材料は、第2のコンポーネントの第2のチャネル部分の形成に使用された第2の材料と異なること、第1のチャネル部分は、第2のチャネル部分のものと異なる横断面形状を有すること、および/または、第1のチャネル部分は、第2のチャネル部分のものと異なるRMS表面粗度を有することの1つまたは複数を含む。また、チャネル部分は、本明細書に記載されるような他の違いも有し得る。
【0085】
本明細書に記載されるカセットは、化学および/もしくは生物学反応または他のプロセスなどの分析を行うための任意の適切な容積を有し得る。カセットの容積全体は、例えば、任意の試薬格納エリア、測定ゾーン、液体閉じ込め領域、廃棄物エリア、ならびに、任意の流体コネクタおよびそれに付随する流体チャネルを含む。いくつかの実施形態では、少量の試薬および試料が使用され、流体デバイスの容積全体は、例えば、10mL、5mL、1mL、500μL、250μL、100μL、50μL、25μL、10μL、5μLまたは1μL未満である。
【0086】
本明細書に記載されるカセットは、携帯用であり得、いくつかの実施形態では、ハンドヘルド用であり得る。カセットの長さおよび/または幅は、例えば、20cm、15cm、10cm、8cm、6cmまたは5cm以下であり得る。カセットの厚さは、例えば、5cm、3cm、2cm、1cm、8mm、5mm、3mm、2mmまたは1mm以下であり得る。有利には、携帯用デバイスは、ポイントオブケア設定での使用に適切なものであり得る。
【0087】
本明細書に記載されるカセットおよびそれらのそれぞれのコンポーネントは例示的なものであり、本明細書に記載されるシステムおよび方法を用いてカセットおよびコンポーネントの他の構成および/またはタイプを使用できることを理解されたい。
【0088】
本明細書に記載される方法およびシステムは、さまざまな異なるタイプの分析を伴う場合があり、さまざまな異なる試料の判断に使用することができる。いくつかの事例では、分析は、化学および/または生物学反応を伴う。いくつかの実施形態では、化学および/または生物学反応は、結合を伴う。異なるタイプの結合は、本明細書に記載されるカセット内で起こり得る。結合は、相互親和性または結合能力を示す分子の対応対間の相互作用を伴う場合があり、通常、生化学的、生理学的および/または薬学的相互作用を含む特異的または非特異的結合または相互作用である。生物学的結合は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンおよび同様のものを含む分子の対間で起こる相互作用のタイプを定義する。具体的な例は、抗体/抗原、抗体/ハプテン、酵素/基質、酵素/阻害剤、酵素/補助因子、結合タンパク質/基質、キャリアタンパク質/基質、レクチン/炭水化物、受容体/ホルモン、受容体/エフェクタ、核酸の相補鎖、タンパク質/核酸リプレッサ/誘導剤、リガンド/細胞表面受容体、ウイルス/リガンドなどを含む。また、結合は、タンパク質または他の成分と細胞との間でも起こり得る。それに加えて、本明細書に記載されるデバイスは、成分、濃度などの検出などの他の流体分析(結合および/または反応を伴っても伴わなくともよい)に使用することができる。
【0089】
いくつかの事例では、不均一反応(またはアッセイ)はカセット内で起こり得る。例えば、結合パートナーはチャネルの表面に結合し得、相補的な結合パートナーは流体相に存在し得る。また、タンパク質間もしくは他の生体分子間(例えば、DNA、RNA、炭水化物)または非天然に存在する分子間の親和性反応を伴う他の固相アッセイも実行することができる。カセット内で実行できる典型的な反応の非限定的な例は、化学反応、酵素反応、免疫ベースの反応(例えば、抗原-抗体)および細胞ベースの反応を含む。
【0090】
本明細書に記載されるカセットを使用して判断できる(例えば、検出できる)分析物の非限定的な例は、特異タンパク質、ウイルス、ホルモン、薬物、核酸および多糖類を含み、具体的には、例えば、HTLV-I、HIV、A型、B型および非A型/非B型肝炎、風疹、麻疹、ヒトパルボウイルスB19、ムンプス、マラリア、水疱瘡または白血病に対するIgD、IgG、IgMまたはIgA免疫グロブリンなどの抗体と、例えば、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、チロキシン(T4)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、テストステロン、プロゲステロン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、エストラジオールなどのヒトおよび動物ホルモンと、例えば、トロポニンI、C反応性タンパク質、ミオグロビン、脳内ナトリウム利尿タンパク質、前立腺特異抗原(PSA)、遊離型PSA、結合型PSA、プロPSA、EPCA-2、PCADM-1、ABCA5、hK2、β-MSP(PSP94)、AZGP1、Annexin A3、PSCA、PSMA、JM27、PAPなどの他のタンパク質またはペプチドと、例えば、パラセタモールまたはテオフィリンなどの薬物と、例えば、PCA3、TMPRS-ERGなどのマーカー核酸と、HLA組織型の細胞表面抗原および細菌細胞壁物質などの多糖類とを含む。検出できる化学物質は、TNTなどの爆薬と、神経ガスと、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ダイオキシン、炭化水素およびMTBEなどの環境的に危険な化合物とを含む。典型的な試料流体は、ヒトまたは動物の全血、血清、血漿、精液、涙液、尿、汗、唾液、脳脊髄液、膣分泌物などの生理液と、研究に使用されるインビトロ流体または分析物によって汚染されている疑いがある水性液体などの環境流体とを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、試料の分析物の判断に使用できる1つまたは複数の試薬(例えば、判断すべき分析物の結合パートナー)は、特定のテストまたはアッセイを実行するため、最初に使用する前にカセットのチャネルまたはチャンバに格納される。抗原が分析されている事例では、対応する抗体またはアプタマーは、マイクロ流体チャネルの表面に結合する結合パートナーであり得る。抗体が分析物である場合は、適切な抗原またはアプタマーは、表面に結合する結合パートナーであり得る。病状を判断している場合は、抗原を表面上に置き、対象内で生成された抗体についてテストすることが好ましい場合がある。そのような抗体は、例えば、HIVに対する抗体を含み得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、カセットは、マイクロ流体チャネルの領域上に不透明な物質を蓄積する工程と、その領域を光に曝露する工程と、不透明な物質を通過する光の透過率を決定する工程とを伴う分析を実行するよう適合および構成される。不透明な物質は、1つまたは複数の波長における光の透過率に干渉する物質を含み得る。不透明な物質は、単に光を屈折させるだけではなく、例えば、光を吸収または反射することによって、物質を通過する光の透過量も減少させる。異なる不透明な物質または異なる量の不透明な物質により、例えば、不透明な物質に照射する光の90、80、70、60、50、40、30、20、10または1パーセント未満の透過率を可能にすることができる。不透明な物質の例は、金属(例えば、元素金属)の分子層、セラミック層、高分子層および不透明な物質(例えば、染料)の層を含む。いくつかの事例では、不透明な物質は、無電解堆積させることができる金属であり得る。これらの金属は、例えば、銀、銅、ニッケル、コバルト、パラジウムおよび白金を含み得る。
【0093】
チャネル内に形成する不透明な物質は、一緒になって不透明層を形成する一連の不連続な独立した粒子を含み得るが、一実施形態では、概して平面形状を呈する連続物質である。不透明な物質は、例えば、1ミクロン以上、5ミクロン以上、10ミクロン超、25ミクロン以上または50ミクロン以上の寸法(例えば、長さの幅)を有し得る。いくつかの事例では、不透明な物質は、不透明な物質を含むチャネル(例えば、測定ゾーン)の幅方向に延在する。不透明層は、例えば、10ミクロン以下、5ミクロン以下、1ミクロン以下、100ナノメートル以下または10ナノメートル以下の厚さを有し得る。これらのわずかな厚さでさえ、透過率における検出可能な変化を得ることができる。不透明層を形成しない技法と比較すると、不透明層は、アッセイ感度を増加することができる。
【0094】
ある一連の実施形態では、本明細書に記載されるカセットは、免疫アッセイ(例えば、ヒトIgGまたはPSAに対する)を実行するために使用され、場合により、信号増幅のための銀強化を使用する。そのような免疫アッセイでは、ヒトIgGを含む試料を反応部位または分析領域に送達した後、ヒトIgGと抗ヒトIgGとの間の結合が起こり得る。次いで、場合により使用前にデバイスのチャネル内に格納することができる1つまたは複数の試薬を、この結合対複合体上で流すことができる。格納された試薬の1つは、検出される抗原(例えば、ヒトIgG)に特異的に結合する金属コロイドの溶液(例えば、金共役抗体)を含み得る。この金属コロイドは、分析領域の表面上に、金属(例えば、銀)の層などの不透明な物質の堆積のための触媒表面を提供することができる。金属の層は、場合により使用前に異なるチャネル内に格納することができる、金属前駆体(例えば、銀塩の溶液)と還元剤(例えば、ヒドロキノン、クロロヒドロキノン、ピロガロール、メトール、4-アミノフェノールおよびフェニドン)の2つの成分系を使用して形成することができる。
【0095】
正圧または負圧差をシステムに適用すると、銀塩および還元溶液はチャネル交差部でマージすることができ、それらはチャネル内で混合され(例えば、拡散のため)、次いで、分析領域上を流れる。したがって、分析領域内で抗体抗原結合が起これば、その領域中の金属前駆体溶液の流れは、抗体抗原複合体と結合する触媒金属コロイドの存在のため、銀層などの不透明層の形成をもたらし得る。不透明層は、1つまたは複数の波長における光の透過率に干渉する物質を含み得る。チャネル内に形成された不透明層は、光学的に、例えば、抗体も抗原も含まないエリアの一部と比較して、分析領域(例えば、蛇行チャネル領域)の一部を通過する光の透過率の低減を測定することによって検出することができる。あるいは、分析領域内で膜が形成される際に、時間の関数として光透過率の変化を測定することによって信号を入手することができる。不透明層を形成しない技法と比較すると、不透明層は、アッセイ感度を増加することができる。それに加えて、光学信号(例えば、吸光度、蛍光性、グローまたはフラッシュ(glow or flash)化学発光性、電気化学発光性)、電気信号(例えば、無電解プロセスによって作成された金属構造の抵抗もしくは導電性)または磁気信号(例えば、電磁ビーズ)を生成するさまざまな増幅化学を使用して、検出器による信号の検出を可能にする。
【0096】
本明細書に記載されるカセットとともにさまざまなタイプの流体を使用することができる。本明細書に記載されるように、流体は、最初の使用時にカセットに導入するおよび/または最初に使用する前にカセット内に格納することができる。流体は、溶媒、溶液および懸濁液などの液体を含む。また、流体は、気体または気体の混合物も含む。複数の流体をカセット内に含める場合、流体は、好ましくは最初の2つの流体のそれぞれに実質的に非混和性の別の流体によって分離することができる。例えば、チャネルが2つの異なる水溶液を含む場合、第3の流体の分離栓は、水溶液の両方に実質的に非混和性であり得る。水溶液を別々に格納する場合は、分離体として使用できる実質的に非混和性の流体は、空気もしくは窒素などの気体、または、水性流体と実質的に非混和性の疎水性流体を含み得る。また、流体は、隣接流体とのその流体の反応性に基づいて選択することができる。例えば、窒素などの不活性ガスは、いくつかの実施形態で使用することができ、いかなる隣接流体の保存および/または安定化にも役立てることができる。水溶液を分離するための実質的に非混和性の液体の例としては、ペルフルオロデカリンが挙げられる。分離体流体の選択は、分離体流体が隣接する流体栓の表面張力に対して有し得るあらゆる影響を含む他の要因に基づいても行うことができる。任意の流体栓内の表面張力を最大限にして、振動、衝撃および温度変動などの異なる環境条件の下で単一の連続したユニットとして流体栓の保持を促進することが好ましい場合がある。また、分離体流体は、流体が供給される反応部位(例えば、測定ゾーン)に対して不活性でもあり得る。例えば、反応部位が生物学的結合パートナーを含む場合、空気または窒素などの分離体流体は、結合パートナーにほとんどまたは全く影響を与えないこともある。また、分離体流体としての気体(例えば、空気)の使用により、温度(凍結を含む)または圧力変動などの変化に起因してデバイス内に含まれる液体が膨張または収縮すれば、流体デバイスのチャネル内での拡大の余地を与えることもできる。
【0097】
以下でさらに詳細に記載されるように、マイクロ流体試料分析器100は、流体流源40(例えば、圧力制御システム)を含み得、流体流源40は、チャネル206、207、222に流体接続し、チャネルを加圧して、試料および/または他の試薬をチャネル中で移動させることができる。特に、流体流源40は、初めに、試料および/または試薬を実質的にU形状のチャネル222から第1のチャネル206まで移動させるよう構成することができる。また、流体流源40を使用して、第2のチャネル207内の試薬を、実質的にU形状のチャネル222を通じて第1のチャネル206に移動させることもできる。試料および試薬が測定ゾーン209中を通過して分析された後、流体流源40は、カセット200の吸収材料217へ流体を移動させるよう構成することができる。一実施形態では、流体流源は真空システムである。しかし、バルブ、ポンプおよび/または他のコンポーネントなどの他の流体流源を使用できることを理解されたい。
【0098】
図9Aのカセット20の上面図は、この実施形態では、カセット筺体内のチャネル206、207が図8に示される概略図とは異なる方法で構成されること以外は、上記で論じられるコンポーネントの多くを示す。一実施形態では、カセット筺体は、カセットを分析器内に挿入して保持できるようにマイクロ流体試料分析器と相互作用するよう構成された少なくとも1つの表面を含む。一実施形態では、図9Aで示されるように、筺体は、カセット20の側面部分に沿ってカムを備えた表面を有する。この特定の実施形態では、カムを備えた表面は、カセット20の一方の端に形成されるノッチ230を含む。カセット20の他方の端は湾曲した隅部表面232を含む。以下でさらに詳細に記載されるように、カセットのこのカムを備えた表面は、分析器100が筺体10内でカセット20の存在を検出するおよび/または分析器100内でカセット20を位置付けることができるように、試料分析器100と相互作用するよう構成することができる。特に、湾曲した隅部表面は、アームなどの分析器の一部と接触するよう構成することができ、ノッチは、分析器のその部分を保持して分析器内でカセットを保持するよう構成することができる。
【0099】
ここで図10~12を参照すると、試料分析器100の内部のコンポーネントについてここで論じる。図10~12の部分組立図では、カセット20が筺体内の開口部120に挿入された状態で示される。一実施形態では、筺体101は、カセット上の嵌合コンポーネントとインターフェースをとり、係合するよう構成されたコンポーネントを含む。この示される特定の実施形態では、筺体101は、上記で論じられるカセット上のカムを備えた表面と係合するよう構成された、筺体内に配置されるアーム121を含む。第1の位置では、アーム121は、筺体内の開口部120内まで少なくとも部分的に延在しており、その結果、カセット20を開口部120に挿入すると、アームは開口部120から第2の位置に押しやられて、カセット20を開口部120に入れることができる。
【0100】
アーム121は、カセットを開口部120に挿入するとカセットの側面と接触するよう構成することができる。図9Aに示されるように、カセット20の端は、曲面232を含み得、アーム121がカセットの側面と接触する際の円滑な移行を実現することができる。一実施形態では、アーム121をバネ122と結合してアームをバネ仕掛けにし、その結果、アーム121は、カセットが分析器100内に位置する際に、カセットの側面を圧接する。特に、バネ仕掛けのアームは、第1の位置に戻るように促され、ある特定の実施形態では、本質的に第1の位置に戻る。一実施形態では、アーム121の端はローラー124を含み、ローラー124は、カセット20の側面と係合する。ローラー124は、カセットを位置に挿入する際に、2つのコンポーネント間の摩擦を最小限に抑えるよう構成することができる。図11および12に示されるように、一旦アーム121がノッチ230と係合すれば、アーム121は、バネ122のバイアスにより、その第1の位置に押し戻される。一旦アーム121がこのカムを備えた表面と内部で係合すれば、カセット20は位置付けされ、分析器100の筺体10内に保持され、バネ122のバイアスにより、カセット20が分析器から滑り出るのを防ぐ。
【0101】
分析器100内のバネ仕掛けのアーム121およびカセット20上のノッチ230は、分析器内でカセット20を検出して位置付けるよう構成することができることを理解されたい。以下に記載されるように、この構成は、カセット20が分析器内で適正に位置付けされ、分析および処理の準備が整っていることをユーザに示す際に役立てることができることも理解されたい。分析を実施した後は、ユーザは、カセット20を開口部120から抜き出すことによってカセット20を分析器100から取り出すことができる。ユーザは、バネ122のバイアスに打ち勝つであろう力を及ぼすことができる、および/または、分析器100は、ロック解除メカニズム(図示せず)を用いて、アーム121がもはやカセット20上のノッチ230と接触しないように、その第2の位置に移動するよう構成することができる。
【0102】
一実施形態では、電子位置スイッチは、アーム121上のローラー124がその第2の位置に押し出される際(例えば、カセット20が分析器に挿入される際)にそれを表示する。また、電子位置スイッチは、ローラーがその第1の位置に向かって戻る/第1の位置に戻る際(例えば、分析器内にカセットが存在しない際、または、カセットが分析器内に完全に挿入されて、ローラーがノッチ230内に係合される際)にもそれを表示する。別の位置スイッチは、カセットが分析器100内に完全に挿入されて、正確に位置付けされる際にそれを表示するよう構成することができる。したがって、スイッチを使用して、カセット20が分析器内で適正に位置付けされていることをユーザに示すことができる。これらのさまざまなカセットセンサ410を図16の概略図に示し、以下でさらに詳細に論じる。
【0103】
多くの機械および電気機械技法を使用して、カセットを確実に出し入れすることができる。例えば、CDプレーヤで見られるものなどのトレイは、カセットを保持し、分析器内外へ滑動することができる。この滑動は、手動でまたはモータで(例えば、トレイを直接駆動するかまたはプーリの使用によって)達成することができる。カセットの出し入れの別の例は、カセットと物理的に接触する電動ユニットの使用を含む。例えば、電動ユニットは、カセットの1つまたは複数の側面ならびに/または上部および/もしくは下部の摩擦を通じて、カセットと嵌合することができる。いくつかの事例では、ユニットは、カセットの側面上に製作されるギアの歯を用いてカセットと嵌合することができる。
【0104】
また、図10は、流体流源40の一部も示し、流体流源40は、カセット20内のチャネル206(および、チャネル206と流体接続されている場合は、チャネル207)を加圧して、試料をチャネル中で移動させるよう構成することができる。図15もまた、流体流源40を示す。例示的な一実施形態では、流体流源40は、真空システムであり、真空源またはポンプ42と、真空調整器46によって分離できる2つの真空貯蔵部44、45と、真空貯蔵部44とカセット20との間で流体接続を提供するためのマニホールド48とを含む。マニホールド48もまた、カセット上の1つまたは複数のポートに対する1つまたは複数の流体接続部を含み得る。例えば、マニホールドは、ポート213とバルブ(ソレノイドバルブなど)との間で流体接続を提供することができる。このバルブの開閉により、空気がカセットに入ることができる場所を制御することができ、したがって、ある特定の実施形態では、通気バルブとして機能する。
【0105】
上述の通り、一実施形態では、真空源42は、ソレノイド駆動式ダイアフラムポンプなどのポンプである。他の実施形態では、流体の流れは、他のタイプのポンプまたは流体流源の使用を介して駆動/制御することができる。例えば、一実施形態では、シリンジポンプを使用して、シリンジプランジャを外方方向へ向けて引っ張ることによって真空を生み出すことができる。他の実施形態では、カセットの1つまたは複数の注入口に正圧を印加して流体流源を提供することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、カセットの注入口と排出口との間で、実質的に一定のゼロ以外の圧力降下(すなわち、ΔP)を適用する間、流体の流れが起こる。ある一連の実施形態では、カセットの注入口と排出口との間で、実質的に一定のゼロ以外の圧力降下(すなわち、ΔP)を適用する間、分析全体が実行される。実質的に一定のゼロ以外の圧力降下は、例えば、注入口で正圧をまたは排出口で減圧(例えば、真空)を印加することによって達成することができる。いくつかの事例では、実質的に一定のゼロ以外の圧力降下は、毛細管力によっておよび/または作動バルブの使用なしでは(例えば、カセットの流体経路のチャネルの横断面積の変更なしでは)流体の流れが優勢的に起こらない間に達成される。いくつかの実施形態では、実質的に分析全体がカセット内で実施される間は、例えば、注入口から測定ゾーン(流体コネクタに接続され得る)までおよび測定ゾーン下流から排出口(例えば、液体閉じ込め領域下流から排出口)までのそれぞれで、実質的に一定のゼロ以外の圧力降下が存在し得る。
【0107】
一実施形態では、真空源は、およそ-60kPa(大気圧のおよそ2/3)までチャネルを加圧するよう構成される。別の実施形態では、真空源は、およそ-30kPaまでチャネルを加圧するよう構成される。ある特定の実施形態では、真空源は、例えば、-100kPa~-70kPa、-70kPa~-50kPa、-50kPa~-20kPaまたは-20kPa~-1kPaまでチャネルを加圧するよう構成される。
【0108】
上述の通り、一実施形態では、2つの真空貯蔵部44、45を設けることができる。ポンプをオンにして、第1の貯蔵部44をおよそ-60kPaまで加圧することができる。貯蔵部44、45間に配置された調整器46は、第2の貯蔵部45が異なる圧力のみに、例えば、およそ-30kPaまで加圧されることを保証することができる。貯蔵部44がある特定の圧力範囲、例えば、-60kPa~-30kPaで維持される限り、この調整器は、貯蔵部45の圧力を-30kPaで(または、別の適切な圧力で)維持することができる。圧力センサは、各貯蔵部44、45内の圧力をモニタすることができる。第1の貯蔵部44内の圧力がセットポイント(例えば、およそ-40kPa)に到達すれば、ポンプを作動して、第1の貯蔵部44内の圧力を減少することができる。第2の貯蔵部45は、全体的な真空システム40におけるいかなる漏洩も検出するよう構成することができる。図15に示されるように、真空システム40は貯蔵部44、45と結合されたフィルタ58を含み得る。ソレノイドバルブ59が示され、マニホールドを通じてポート213に接続される通気バルブとして機能する。
【0109】
一旦カセット20が分析器100内に配置されれば、流体流源40をカセット20と結合して、流体密の接続を確保することができる。上述の通り、カセット20は、チャネル206およびチャネル206と流体接続されている場合はチャネル207を、流体流源40と結合するよう構成されたポート219を含み得る。図14に示されるように、一実施形態では、シールまたはo-リング52をポート219の周りに配置し、線形ソレノイド50をo-リング52上に配置して、o-リングをカセット本体200に圧接および密接することができる。図14に示されるように、マニホールドアダプタ54は、線形ソレノイド50とマニホールド48との間に配置することができ、パッシブな伸縮バネ56をマニホールド48の周りに設けて、ソレノイドが帯電していない場合にマニホールドをカセット本体200から離れるように促すことができる。一実施形態では、カセット20上の複数のポートは、マニホールド48とインターフェースをとることができる。例えば、図9Aに示される例示的な実施形態に示されるように、ポート219に加えて、2つの通気ポート215および混合ポート213が存在し得る。各ポートとマニホールドとの間のインターフェースは独立したものであり得る(例えば、マニホールドの内部には流体接続が存在しない場合がある)。
【0110】
一実施形態では、流体流源40を作動すると、カセット20内のチャネル206、207を加圧する(例えば、およそ-30kPaまで)ことができ、それにより、チャネル内の流体(流体試料と試薬の両方)を排出口へ向けて駆動する。通気ポート215および混合ポート213を含む実施形態では、マニホールド48を通じてポート213に接続された通気バルブ59は、初めは開栓されており、混合ポート213の下流の試薬のすべてを排出口へ向けて移動させることを可能にできるが、混合ポート213の上流の試薬を移動させることはない。一旦通気バルブが閉栓すれば、混合ポート213の上流の試薬を混合ポートへ向けて移動させ、次いで排出口へ向けて移動させることができる。例えば、流体を混合ポートの上流のチャネルに順次格納することができ、チャネルに沿って配置された通気バルブを閉栓した後は、流体をチャネル排出口へ向けて連続的に流すことができる。いくつかの事例では、流体を別々の交差チャネルに格納することができ、通気バルブを閉栓した後は、流体は、交差地点へ向けて一緒になって流れる。この一連の実施形態を使用して、例えば、一緒になって流れる際に流体を制御可能に混合することができる。送達のタイミングおよび送達される流体の容積は、例えば、通気バルブ作動のタイミングによって制御することができる。
【0111】
有利には、先行技術におけるある特定のバルブで起こり得るように、通気バルブがその上で動作するマイクロ流体チャネルの横断面を絞ることなく、通気バルブを動作することができる。そのような動作モードは、バルブでの漏洩を防ぐ際に効果的である。その上、通気バルブを使用できるため、本明細書に記載される一部のシステムおよび方法は、例えば、それらの高い費用、製作上の複雑さ、壊れやすさ、混合された気体および液体のシステムとの限られた互換性、ならびに/または、マイクロ流体システムの信頼性の欠如が原因で問題となり得る、ある特定の内部のバルブの使用を必要としない。
【0112】
通気バルブについて説明されているが、他のタイプのバルブメカニズムを本明細書に記載されるシステムおよび方法とともに使用することができることを理解されたい。バルブと動作可能に連結することができるバルブメカニズムの非限定的な例は、ダイヤフラムバルブ、ボールバルブ、ゲートバルブ、バタフライバルブ、グローブバルブ、ニードルバルブ、ピンチバルブ、ポペットバルブまたはピンチバルブを含む。バルブメカニズムは、ソレノイド、モータ、手動、電子作動または水圧/空気圧を含む任意の適切な手段によって作動することができる。
【0113】
先述の通り、カセット20内の液体(試料および試薬)のすべてを、吸収材料217を含み得る液体閉じ込めエリアに移動させることができる。一実施形態では、吸収材料は液体のみを吸収し、その結果、排出口を通じて気体をカセットから流し出すことができる。
【0114】
さまざまな判断技法(例えば、測定、定量化、検出および適格化)を使用して、例えば、本明細書に記載されるマイクロ流体システムまたはカセットに関連する試料成分または他の成分または条件を分析することができる。判断技法は、光透過、光吸収、光散乱、光反射および視覚的技法などの光学ベースの技法を含み得る。また、判断技法は、フォトルミネセンス(例えば、蛍光発光)、化学発光、生物発光および/または電気化学発光などの発光技法も含み得る。他の実施形態では、判断技法は、導電性または抵抗を測定することができる。このように、分析器は、そのようなおよび他の適切な検出システムを含むよう構成することができる。
【0115】
異なる光検出技法は、反応(例えば、アッセイ)結果を決定するための多くのオプションを提供する。いくつかの実施形態では、透過率または吸光度の測定は、光源から放射されるものと同じ波長で光を検出できることを意味する。光源は、単一の波長で放射する狭帯域源であり得るが、多くの不透明な物質は効果的に広範囲の波長を遮断できるため、波長範囲全域にわたって放射する広域スペクトル源でもあり得る。いくつかの実施形態では、システムは、最低限の光学素子(例えば、簡素化された光検出器)を用いて動作することができる。例えば、判断デバイスは、光電子増培管がなくとも、回折格子、プリズムまたはフィルタなどの波長選択器がなくとも、光を方向付けるかまたはコラムネータなどのコラム化するデバイスがなくとも、拡大光学機器(例えば、レンズ)がなくともよい。これらの特徴の除去または減少により、より低価で、よりロバストなデバイスをもたらすことができる。
【0116】
図10~14は、分析器100の筺体10内に配置することができる例示的な光学システム80を示す。これらの実施形態で例示的に示されるように、光学システム80は、少なくとも第1の光源82と、第1の光源から離間された検出器84とを含む。第1の光源82は、カセットを分析器100に挿入すると、カセット20の第1の測定ゾーン中を光が通過するよう構成することができる。第1の検出器84は、第1の光源82の反対側に配置し、カセット20の第1の測定ゾーン中を通過する光の量を検出することができる。図11および12に例示的に示されるように、一実施形態では、光学システムは、10個の光源および10個の検出器を含む。他の実施形態では、本発明はそのように限定されないため、光源および検出器の数が異なってもよいことを理解されたい。上述の通り、カセット20は複数の測定ゾーン209を含むことができ、それぞれの測定ゾーン209が光源および対応する検出器と整合するようにカセット20を分析器内に配置することができる。いくつかの実施形態では、光源は、光源からの光をカセットの測定ゾーン内の特定の領域に方向付ける際に役立てることができる光学的開口部83(図11)を含む。
【0117】
一実施形態では、光源は、発光ダイオード(LED)またはレーザダイオードである。例えば、654nmで放射されるInGaAlPの赤色半導体レーザダイオードを使用することができる。また、他の光源も使用することができる。光源は、図14に例示的に示されるように、ネストまたは筺体90内に配置することができる。ネストまたは筺体90は、光をコリメートする際に役立てることができる狭い開口部または細長い管92を含み得る。示されるように、光源は、カセット20を分析器に挿入する位置の上方に配置することができ、その結果、光源は、下方のカセット20の上部表面を照らすことができる。また、カセットに対する光源の他の適切な構成も可能である。
【0118】
本発明はそのように限定されないため、光源の波長が異なってもよいことを理解されたい。例えば、一実施形態では、光源の波長はおよそ670nmであり、別の実施形態では、光源の波長はおよそ650nmである。一実施形態では、それぞれの光源の波長は、カセットのそれぞれの測定ゾーン209が異なる光の波長を受信できるように異なってもよいことを理解されたい。ヘモクリットまたはヘモグロビンを測定する際の特定の一実施形態では、およそ590nmからおよそ805nmまでの等吸収の波長範囲を少なくとも1つの測定ゾーンで使用することができる。
【0119】
上記の通り、検出器84は、光源82から離間して光源82の下方に配置し、カセット中を通過する光の量を検出することができる。一実施形態では、1つまたは複数の検出器は光検出器(例えば、光ダイオード)である。ある特定の実施形態では、光検出器は、光源によって放射される光の透過率を検出することが可能な任意の適切なデバイスであり得る。光検出器の1つのタイプは、700nmでのピーク感度を有する光ダイオード、増幅器および電圧調整器を含む光集積回路(IC)である。検出器は、例えば、図14に示されるように、ネストまたは筺体94内に配置することができ、ネストまたは筺体は、狭い開口部または細長い管96を含み得、それにより、測定ゾーン209の中心からの光のみを検出器84で測定することを保証する。以下でさらに詳細に説明されるように、光源がパルスにより変調される場合は、光検出器はフィルタを含み、選択された周波数でのものではない光の影響を除去することができる。複数の隣接する信号が同時に検出されると、それぞれの測定ゾーン(例えば、検出領域)で使用される光源は、その隣接する光源のものとは実質的に異なる周波数で変調することができる。この構成では、それぞれの検出器は、その属する光源を選択し、それにより、隣接する光学対の光形成の干渉を回避するよう構成することができる(例えば、ソフトウェアを使用して)。
【0120】
本明細書に記載されるように、カセットは、検出器と整合するよう構成および配置された蛇行したチャネルを含む測定ゾーンを含み得、その結果、整合の際、検出器は、蛇行したチャネルの2つ以上の隣接部分を通じて単一の信号を測定することができる。いくつかの実施形態では、検出器は、蛇行したチャネルのエリアの少なくとも一部分内で、蛇行したチャネルの2つ以上の部分を通じて、信号を検出することができ、その結果、蛇行したチャネルの第1の部分から測定された信号の第1の部分は、蛇行したチャネルの第2の部分から測定された信号の第2の部分と同様である。そのような実施形態では、信号は蛇行したチャネルの2つ以上の部分の一部として存在しているため、検出器と測定ゾーンとの間での正確な整合は不要である。
【0121】
精度の不要な測定ゾーン(例えば、蛇行した領域)上への検出器の配置は、顕微鏡、レンズおよび整合台などの外部(場合により、高価である)機器が不要なため(ある特定の実施形態では使用される場合があるが)有利である。代わりに、整合は、ユーザによるアクティブなまたは別々の整合工程が必ずしも必要であるというわけではない低コストの方法で実行することができる。例えば、一実施形態では、蛇行した領域を含むカセットは、本明細書に記載される分析器のスロット内(例えば、カセットと同じまたは同様の形状を有する空洞内)に配置することができ、測定ゾーンは、検出器の光線内に自動的に位置することができる。例えば、カセット間の違い、スロット内のカセットの正確な位置およびカセットの通常の使用法によって生じる不整合の考えられる原因は、測定ゾーンの広さと比較すると無視できるほどであり得る。その結果、蛇行した領域は光線内にとどまることができ、これらの違いのために検出が中断されることはない。
【0122】
検出器は、測定ゾーン(例えば、蛇行した領域を含む)のすべてまたは一部内の信号を検出することができる。言い換えれば、異なる量の蛇行した領域は、光検出経路として使用することができる。例えば、検出器は、測定ゾーンの少なくとも15%内、測定ゾーンの少なくとも20%、測定ゾーンの少なくとも25%、測定ゾーンの少なくとも50%内、または、測定ゾーンの少なくとも75%内(しかし、測定ゾーンの100%未満)の信号を検出することができる。測定ゾーンが光検出経路として使用されるエリアは、例えば、チャネルが製作される材料の不透明度(例えば、チャネルのすべてもしくは一部が透明かどうか)、チャネルの一部を覆う場合がある不透明な材料の量(例えば、保護カバーの使用を通じて)、ならびに/または、検出器および測定ゾーンのサイズにも依存し得る。
【0123】
一実施形態では、カセット内で行われた反応によって生成された信号は、測定ゾーン全体にわたって(例えば、蛇行したチャネル領域全体にわたって)均一である。すなわち、測定ゾーン(例えば、蛇行したチャネル領域)は、化学および/または生物学反応を行う際に(および、例えば、検出器によって検出する際に)、前記領域での単一の均一の信号の生成および/または検出を可能にすることができる。蛇行したチャネル領域での反応を行う前、蛇行したチャネルは、例えば、検出/特定される単一の種(および種の集団)を含み得る。種は、蛇行したチャネルの表面に吸着され得る。別の実施形態では、信号は、蛇行した領域の一部上でのみ均一であり得、1つまたは複数の検出器は、それぞれの部分内で異なる信号を検出することができる。ある特定の例では、2つ以上の測定ゾーンを直列に接続することができ、それぞれの測定ゾーンを使用して異なる種を検出/特定することができる。蛇行した領域について説明しているが、蛇行した領域を含まない測定ゾーンも使用できることを理解されたい。
【0124】
出願人は、カセットの測定ゾーンを通過する透過光の量を使用して、試料についての情報を判断するばかりでなく、カセットの流体システム内で生じる特定のプロセスについての情報(例えば、試薬の混合、流速など)も判断することができることを理解した。いくつかの事例では、領域を通過する光の測定をフィードバックとして使用して、システム内の流体の流れを制御することができる。ある特定の実施形態では、カセットの動作における品質管理または異常を判断することができる。例えば、測定ゾーンから制御システムまでのフィードバックを使用して、マイクロ流体システム内で生じた異常を判断することができ、制御システムは、1つまたは複数のコンポーネントへ信号を送信し、システムのすべてまたは一部をシャットダウンさせることができる。結果的に、マイクロ流体システム内で実行されているプロセスの品質は、本明細書に記載されるシステムおよび方法を使用して管理することができる。
【0125】
透明な液体(水など)は、多量の透過光が光源82から測定ゾーン209を通じて検出器84まで通過することを可能にできることを理解されたい。測定ゾーン209内の空気は、透明な液体が存在する場合と比較して、より多くの光がチャネル内で散乱し得るため、より少ない透過光が測定ゾーン209を通過するという結果をもたらし得る。血液試料が測定ゾーン209内に存在すると、血球からの光散乱のため、また、吸光度のため、かなり少ない量の光が検出器84まで通過し得る。一実施形態では、銀は、測定ゾーン内の表面に結合された試料成分と結合し、銀が測定ゾーン209内に蓄積するにつれて、測定ゾーン209を通過する透過光は次第に少なくなる。
【0126】
各検出器84側で検出される光の量を測定することにより、ユーザは、特定の時点において特定の測定ゾーン209内にどの試薬が存在するか判断できることが理解される。また、各検出器84を用いて検出される光の量を測定することにより、それぞれの測定ゾーン209に堆積する銀の量を測定できることも理解される。この量は、反応中に捕捉された分析物の量に相当し得、したがって、試料中の分析物の濃度を測定することができる。
【0127】
上述の通り、出願人は、光学システム80をさまざまな品質管理理由のために使用できることを理解した。まず、光学システムが測定ゾーン中を通過する光を検出する測定ゾーンに試料が到達するのに要する時間を使用して、システム内に漏洩または閉塞が存在するかどうかを判断することができる。また、試料がある特定の容積、例えば、およそ10マイクロリットルであると予測される場合、チャネルおよび測定ゾーン中の試料の通過と関連するであろう予測されるフロー時間が存在する。試料がその予測されたフロー時間外であれば、分析を実施するための試料が足りないこと、および/または、間違ったタイプの試料が分析器に投入されたことを示し得る。それに加えて、結果の予測範囲は、試料のタイプ(例えば、血清、血液、尿など)に基づいて決定することができ、試料が予測範囲外であれば、それは、エラーを示し得る。
【0128】
一実施形態では、光学システム80は、複数の光源82、86および複数の対応する検出器84、88を含む。図11~13に例示的に示されるように、一実施形態では、第1の光源82は第2の光源86に隣接し、第1の光源82は、カセット20の第1の測定ゾーン中を光が通過するよう構成され、第2の光源は、カセット20の第2の測定ゾーン中を光が通過するよう構成される。一実施形態では、光源は、第1の光源82が解除されない限り、第2の光源86が起動されないように構成される。出願人は、1つの光源からの一部の光が隣接する検出器上で拡散し、隣接する検出器側で検出される光の量に影響を及ぼし得ることを理解した。ある一連の実施形態では、隣接する光源が第1の光源と同時に起動されれば、検出器84、88は両方ともカセットの第1および第2の測定ゾーンを通過する光の量を同時に測定し、これは、不正確な測定を招く恐れがある。
【0129】
したがって、ある一連の実施形態では、複数の光源は、一度に光源を1つずつのみ起動させた状態で順番に起動するよう構成される。したがって、起動された光源に対応する検出器は、対応する測定ゾーン209を通過する光の量のみを検出する。特定の一実施形態では、光源は、短期間の間(例えば、少なくともおよそ500、250、100もしくは50マイクロ秒、または、いくつかの実施形態では、およそ500、250、100もしくは50マイクロ秒以下)、それぞれが起動するよう構成され、隣接する光源は、同様の時間枠で起動するよう構成される。100マイクロ秒間の起動は、10kHzのレートに相当する。一実施形態では、多重アナログデジタル変換器を使用して、光をパルス化し、500、250、100または50マイクロ秒ごとにそれぞれの対応する検出器側で検出される光の量を測定する。この様式での光のパルス化は、1つの測定ゾーン中を通過する迷光を防ぎ、隣接する測定ゾーン中を通過する検出される光の量を変更する際に役立てることができる。
【0130】
上記で説明される様式での光源のパルス化に関連する何らかの利益が存在し得るが、本発明はそのように限定されず、複数の光源を同時に起動できる場合などの他の構成が可能であり得ることを理解されたい。例えば、一実施形態では、互いに直接隣接していない光源は、実質的に同時に起動させることができる。
【0131】
図17を参照すると、一実施形態では、分析器100は、筺体101内に配置された温度調整システムを含み、温度調整システムは、分析器内の温度を調整するよう構成することができる。ある特定の試料分析の場合、試料は、ある特定の温度範囲内で保管する必要がある場合がある。例えば、一実施形態では、分析器100内の温度をおよそ37℃で維持することが望ましい。それに応じて、一実施形態では、温度調整システムは、カセット20を加熱するよう構成された加熱器140を含む。一実施形態では、加熱器140は、分析器100内でカセット20を配置する位置の下側に配置することができる抵抗加熱器である。一実施形態では、温度調整システムは、カセット20の温度を測定するためのサーミスタ142も含み、コントローラ回路を設けて温度を制御することができる。
【0132】
一実施形態では、分析器内の空気の受動的フローは、必要ならば、分析器内の空気を冷却するよう機能することができる。場合により、分析器100内にファン(図示せず)を設けて、分析器100内の温度を低下させることができる。いくつかの実施形態では、温度調整システムは、分析器内にペルチェ熱電加熱器および/または冷却器を含み得る。
【0133】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の識別子を含む識別システムは、カセットおよび/または分析器に付随する1つまたは複数のコンポーネントまたは材料とともに使用され、同コンポーネントまたは材料に連結される。「識別子」は、以下でさらに詳細に説明されるように、それら自体に、識別子を含むコンポーネントについての情報が「符号化」されていてもよく(すなわち、無線自動識別(RFID)タグまたはバーコードなどの情報を持つ、格納する、生成するまたは伝えるデバイスを使用することによって、情報を持つまたは含む)、それら自体に、コンポーネントについての情報は符号化されてはいないが、むしろ例えば、コンピュータ上またはコンピュータ可読媒体上のデータベースに含まれ得る情報(例えば、ユーザおよび/または分析されるべき試料に関する情報)に関連するだけであってもよい。後者の例では、そのような識別子の検出により、データベースからの関連情報の検索および使用を引き起こし得る。
【0134】
コンポーネントについての情報が「符号化」されている識別子は、必ずしもコンポーネントについての完全な一連の情報が符号化されている必要があるわけではない。例えば、ある特定の実施形態では、識別子は、ただカセットのユニークな識別を可能にするためだけに十分な情報(例えば、シリアル番号、部品番号などに関連する)が符号化されている一方で、カセットに関連する追加情報(例えば、タイプ、使用(例えば、アッセイのタイプ)、所有者、場所、位置、接続性、コンテンツなど)は、遠隔地に格納してもよく、識別子に付随するだけであってもよい。
【0135】
カセット、材料またはコンポーネントなど「についての情報」または「に関連する情報」は、カセット、材料もしくはコンポーネントのアイデンティティ、配置もしくは場所、または、カセット、材料もしくはコンポーネントのコンテンツのアイデンティティ、配置もしくは場所に関する情報であり、それに加えて、カセット、材料、コンポーネントまたはコンテンツの性質、状態または構成に関する情報を含み得る。カセット、材料もしくはコンポーネントまたはそのコンテンツ「についての情報」または「に関連する情報」は、カセット、材料もしくはコンポーネントまたはそのコンテンツを識別し、他のものとカセット、材料もしくはコンポーネントまたはそのコンテンツを区別する情報を含み得る。例えば、カセット、材料もしくはコンポーネントまたはそのコンテンツ「についての情報」または「に関連する情報」は、タイプを示す情報、または、カセット、材料もしくはコンポーネントまたはそのコンテンツは何か、それがどこに位置するかもしくは位置すべきか、それをどのように配置するかもしくは配置すべきか、カセット、材料もしくはコンポーネントまたはそのコンテンツの機能もしくは目的、カセット、材料もしくはコンポーネントまたはそのコンテンツをシステムの他のコンポーネントとどのように接続するか、カセット、材料もしくはコンポーネントまたはそのコンテンツのロット番号、出所、較正情報、有効期限、目的地、製造業者もしくは所有者、カセットで実行すべき分析/アッセイのタイプ、カセットが使用/分析されているかどうかについての情報を示し得る。
【0136】
ある一連の実施形態では、識別子は、本明細書に記載されるカセットおよび/または分析器に関連する。一般に、本明細書で使用される場合、「識別子」という用語は、識別子が関連するもしくはインストールされる、カセットおよび/もしくは分析器についての情報を提供することができるアイテム(例えば、カセットおよび/もしくは分析器またはそのコンポーネントのアイデンティティ、場所または位置/配置の1つまたは複数を含む情報)、または、識別もしくは検出することができるアイテムを示し、識別または検出事象は、識別子が関連するカセットおよび/または分析器についての情報に関連する。本発明の文脈で使用できる識別子の非限定的な例は、とりわけ、無線自動識別(RFID)タグ、バーコード、シリアル番号、着色タグ、蛍光または光学タグ(例えば、量子ドットを使用する)、化合物、無線タグ、磁気タグを含む。
【0137】
一実施形態では、図16に例示的に示されるように、分析器100は、カセット20についての情報を読み取るよう構成された筺体101内に配置された識別読取器60を含み得る。識別子から情報を読み取るために使用することができる任意の適切な識別読取器。識別読取器の非限定的な例は、とりわけ、RFID読取器、バーコードスキャナ、化学検出器、カメラ、放射線検出器、磁場または電場検出器を含む。検出/読み取り方法および適切なタイプの識別検出器は、利用される特定の識別子に依存し、例えば、光学画像、蛍光励起および検出、質量分析、核磁気共鳴、シークエンシング、ハイブリダイゼーション、電気泳動、分光、顕微鏡などを含み得る。いくつかの実施形態では、識別読取器は、特定の位置(例えば、カセットおよび/もしくは分析器上、または、カセットおよび/もしくは分析器内)に装着または事前埋め込みすることができる。
【0138】
一実施形態では、識別読取器60は、カセット20に付随するRFID識別子を読み取るよう構成されたRFID読取器である。例えば、図2に例示的に示されるように、一実施形態では、分析器100は、分析器100内に挿入されたカセット20から情報を読み取るよう構成されたRFIDモジュールおよびアンテナを含む。別の実施形態では、識別読取器60は、カセット20に付随するバーコードを読み取るよう構成されたバーコード読取器である。一旦、カセット20が分析器100内に挿入されれば、識別読取器60は、カセット20から情報を読み取ることができる。カセット上の識別子は、カセットタイプ、実行される分析/アッセイのタイプ、ロット番号、カセットが使用/分析されているかどうかについての情報、および、本明細書に記載される他の情報などの1つまたは複数のタイプの情報を含み得る。また、読取器60は、これらに限定されないが、較正情報、有効期限およびそのロットに特有の任意の追加情報など、カセットの箱内などのカセット群に提供される情報を読み取るよう構成することができる。識別された情報は、場合により、ユーザに表示して、例えば、適正なカセットおよび/またはアッセイタイプが実行されていることを確認することができる。
【0139】
いくつかの事例では、識別読取器は、通信経路を介して制御システムと統合することができる。識別読取器と制御システムとの間の通信は、有線ネットワークに沿って起こっても、無線で伝送されてもよい。一実施形態では、制御システムは、カセットが特定のタイプの分析器内に適切に接続または挿入されていることを示すため、特定の識別子(例えば、カセットタイプ、製造業者、実行されるアッセイなどに関連する情報に関連するカセットの)を認識するようにプログラムすることができる。
【0140】
一実施形態では、カセットの識別子には、特定の目的、ユーザもしくは製品に対する、または、特定の反応条件、試料タイプ、試薬、ユーザおよび同様のものでの、システムまたはカセットの使用に関するデータベース内に含まれる既定のまたはプログラムされた情報が付随し得る。不適正な適合が検出される場合または識別子が無効化された場合は、ユーザが通知を受けるまでまたはユーザによる受信確認まで、プロセスを停止しても、システムを動作不能の状態にしてもよい。
【0141】
識別子からの情報または識別子に付随する情報は、いくつかの実施形態では、今後の参照としておよび記録保存の目的で、例えば、コンピュータメモリ内またはコンピュータ可読媒体上に格納することができる。例えば、ある特定の制御システムは、識別子からの情報または識別子に付随する情報を使用して、どのコンポーネント(例えば、カセット)またはカセットのタイプが、特定の分析、日付、時間および使用時間、使用条件などで使用されたか特定することができる。そのような情報を使用して、例えば、分析器の1つまたは複数のコンポーネントを洗浄すべきかまたは交換すべきかを判断することができる。場合により、制御システムまたは他の任意の適切なシステムは、識別子によって符号化された情報または識別子に付随する情報を含む、収集した情報からレポートを作成し得、規制基準との準拠性の証拠または品質管理の検証を提供する際に使用することができる。
【0142】
また、識別子上で符号化された情報または識別子に付随する情報を使用して、例えば、識別子に関連するコンポーネント(例えば、カセット)が本物か偽物かを判断することもできる。いくつかの実施形態では、偽物のコンポーネントの存在を判断することにより、システムをロックアウトする。一例では、識別子は、ユニークなアイデンティティコードを含み得る。この例では、異質なまたは不適合のアイデンティティコード(または、アイデンティティコードがないこと)が検出されれば、プロセス制御ソフトウェアまたは分析器は、システムの始動を許可することはない(例えば、システムは使用不可能であり得る)。
【0143】
ある特定の実施形態では、識別子から入手された情報または識別子に付随する情報を使用して、カセットおよび/もしくは分析器が販売された顧客、または、生物学的、化学的もしくは薬学的プロセスが実行される顧客のアイデンティティを検証することができる。いくつかの事例では、識別子から入手された情報または識別子に付随する情報は、システムのトラブルシューティングのためにデータを収集するプロセスの一部として使用される。また、識別子は、とりわけ、バッチ履歴、組立プロセスおよび計装図(PとID)、トラブルシューティング履歴などの情報を含み得るまたは同情報に関連し得る。システムのトラブルシューティングは、いくつかの事例では、遠隔アクセスを介して達成することができ、これには、診断ソフトウェアの使用が含まれる。
【0144】
一実施形態では、分析器100は、ユーザインターフェース200を含み、ユーザインターフェース200は、筺体101内に配置し、ユーザが試料分析器100に情報を入力するよう構成することができる。一実施形態では、ユーザインターフェース200はタッチスクリーンであり、図1および図16~21に示す。
【0145】
図16~21に記載されるように、タッチスクリーンは、分析器100の動作を通じてユーザを誘導することができ、分析器100を使用するためのテキストのおよび/またはグラフィカルな取扱説明書を提供する。図17は、試料分析プロセスの開始時のタッチスクリーンユーザインターフェース200用のグラフィックスの一例を示す。図18は、ユーザが分析器100内にカセット20を挿入するように誘導するタッチスクリーンユーザインターフェース200用のグラフィックスの一例を示す。図19は、ユーザが分析器100に患者の名前または他の患者の識別源/番号を入力するように誘導するタッチスクリーンユーザインターフェース200用のグラフィックスの一例を示す。名前、生年月日および/または患者ID番号などの患者情報をタッチスクリーンユーザインターフェースに入力して、患者を識別することができることを理解されたい。図20は、試料を分析している間のタッチスクリーンユーザインターフェース200用のグラフィックスの一例を示す。示されるように、タッチスクリーンは、試料の分析の完了までに残された時間の量を示し得る。最終的に、図21は、試料分析の結果を患者の名前または他の識別情報とともに示すタッチスクリーンユーザインターフェース200用のグラフィックスの一例を示す。
【0146】
別の実施形態では、ユーザインターフェースは、LCDディスプレイおよびメニューの単一ボタンスクロールを用いてなどの異なる方法で構成することができる。別の実施形態では、ユーザインターフェースは、単に分析器を起動するためのスタートボタンを含み得る。他の実施形態では、別々の独立したデバイス(スマートフォンまたはモバイルコンピュータなど)からのユーザインターフェースを使用して、分析器とインターフェースをとることができる。
【0147】
さまざまな方法で上記の分析器100を使用して、分析器内に配置される試料を処理および分析することができる。特定の一実施形態では、一旦、カセットとインターフェースをとるよう構成された機械コンポーネント121が、カセット20が分析器100に適正に投入されていることを示せば、識別読取器60は、カセット20に関連する情報を読み取り、識別する。分析器100は、情報を、制御システムに格納されたデータと比較し、この特定の試料に対する較正情報を確実に有するよう構成することができる。分析器が適正な較正情報を含まない場合は、分析器は、必要とされる特定の情報をアップロードするようにユーザに要求を出力することができる。また、分析器は、カセットに関連する有効期限の情報を検討し、有効期限が過ぎていれば分析を中止するよう構成することもできる。
【0148】
一実施形態では、一旦、分析器100が、カセット20が分析された可能性があると判断すれば、真空マニホールド48などの流体流源は、カセット20に接触して、真空ポート219および通気ポート215の周りに流体密封を確保するよう構成することができる。一実施形態では、光学システム80は、初期測定を行い、基準読取値を入手することができる。そのような基準読取値は、光源82、86を起動した状態と解除した状態の両方で読み取ることができる。
【0149】
試料の移動を開始するため、流体流源40を起動することができ、これにより、チャネル206、207内の圧力が急速に変化され得る(例えば、およそ-30kPaまで減少)。チャネル内のこの圧力低減により、試料をチャネル206に駆動し、それぞれの測定ゾーン209A~209D(図8を参照)を通過させることができる。試料が最終の測定ゾーン209Dに到達すると、試料は引き続き液体閉じ込め領域217に流れ込むことができる。
【0150】
特定の一実施形態では、マイクロ流体試料分析器100を使用して、血液試料中の前立腺特異抗原(PSA)のレベルを測定する。この実施形態では、4つの測定ゾーン209A~209Dを利用して、試料を分析する。例えば、第1の測定ゾーンでは、血液試料中のタンパク質が測定ゾーン209の壁にほとんどまたは全く付着しないように(恐らくは洗い落とすことができる何らかの非特異的結合以外)、遮断タンパク質(ウシ血清アルブミンなど)でチャネルの壁を遮断することができる。この第1の測定ゾーンは、負の制御として機能し得る。
【0151】
第2の測定ゾーン209では、チャネル206の壁は、既定の大量の前立腺特異抗原(PSA)でコーティングして、高または正の制御として機能し得る。血液試料が第2の測定ゾーン209中を通過する際、血液中のPSAタンパク質は、チャネルの壁とほとんどまたは全く結合しなくともよい。試料中の金共役シグナル抗体は、流体コネクタ管222の内側から溶解しても、他の任意の適切な位置から流れ出てもよい。これらの抗体は、依然として試料中のPSAと結合されていない場合があり、したがって、それらは、チャネルの壁上のPSAと結合して、高または正の制御として機能し得る。
【0152】
第3の測定ゾーン209では、チャネル206の壁は、既定の少量のPSAでコーティングして、低制御として機能し得る。血液試料がこの測定ゾーン209中を流れる際、試料中のPSAタンパク質は、チャネルの壁とは結合しない。試料中の金共役シグナル抗体は、流体コネクタ管222(依然として試料中のPSAと結合されていない)の内側から溶解しても、他の任意の適切な位置から流れ出てもよく、チャネルの壁上のPSAと結合して、低制御として機能し得る。
【0153】
第4の測定ゾーン209では、チャネル206の壁は、抗PSA抗体である捕獲抗体でコーティングすることができ、この抗体は、金共役シグナル抗体よりもPSAタンパク質上の異なるエピトープと結合する。血液試料が第4の測定ゾーン中を流れる際、血液試料中のPSAタンパク質は、血液中のこれらのタンパク質の濃度に比例する方法で抗PSA抗体と結合し得る。したがって、一実施形態では、最初の3つの測定ゾーン209は制御として機能し、第4の測定ゾーン209が実際に試料のテストを行うことができる。他の実施形態では、異なる数の測定ゾーンを設けることができ、分析は、場合により、実際に試料をテストする2つ以上の測定ゾーンを含み得る。
【0154】
いくつかの例では、試料を分析する領域(例えば、上記で説明される第4の測定ゾーン)からの測定は、試料中の分析物の濃度の決定ばかりでなく、制御としても使用することができる。例えば、増幅の早期段階で閾値測定値を確定することができる。この値を上回る(または、この値を下回る)測定値は、分析物の濃度がアッセイの所望の範囲外であることを示し得る。この技法を使用して、例えば、分析中に高用量フック効果が起こっているかどうか(すなわち、分析物の高濃度により人工的に低読取値が得られる場合)を特定することができる。
【0155】
他の実施形態では、異なる数の測定ゾーンを設けることができ、分析は、場合により、実際に試料のテストを行う2つ以上の測定ゾーンを含むことができる。追加の測定ゾーンを使用して追加の分析物を測定することができ、その結果、システムは、単一の試料を用いて同時に多重アッセイを実行することができる。
【0156】
特定の一実施形態では、10マイクロリットルの血液試料が4つの測定ゾーン209中を流れるのにおよそ8分かかる。この分析の開始は、チャネル206内の圧力がおよそ-30kPaの際に計算することができる。この間、光学システム80は、それぞれの測定ゾーンの光透過率を測定し、一実施形態では、およそ0.1秒ごとにこのデータを制御システムに伝送することができる。基準値を使用することによって、これらの測定値は、以下の方程式を使用して変換することができる。
透過率=(l-ld)/(lr-ld) (1)
式中、
l=所定の時点において測定ゾーンを通過する透過光の強度
ld=光源がオフ状態で測定ゾーンを通過する透過光の強度
lr=基準強度(すなわち、光源が起動した状態でまたは空気のみがチャネル内に存在する場合の分析開始前に測定ゾーンを通過する透過光の強度
および
光学密度=-log(透過率) (2)
【0157】
したがって、これらの方程式を使用して、測定ゾーン209の光学密度を計算することができる。
【0158】
本明細書に記載されるように、さまざまな方法を使用して、カセット内の流体の流れを制御することができ、これらの方法は、分析器に付随するポンプ、真空器、バルブおよび他のコンポーネントの使用を含む。また、いくつかの事例では、流体制御は、カセット内に配置されたバルブを使用することによってまたは特定の流体およびカセットのチャネル構成を使用してなど、少なくとも部分的にカセット内の1つまたは複数のコンポーネントによって実行することもできる。ある一連の実施形態では、流体の流れの制御は、チャネル形状およびカセット内部(格納され得る)の1つまたは複数の流体の粘度の影響に少なくとも部分的に基づいて達成することができる。
【0159】
一方法は、流れ絞り領域および非絞り領域を含むチャネル内に低粘度の流体栓および高粘度の流体栓を流す工程を含む。一実施形態では、低粘度の流体は、チャネル内を第1の流速で流れ、流速は、流れ絞り領域内を流れる流体による影響を実質的に受けない。高粘度の流体が非絞り領域から流れ絞り領域まで流れると、流体の流速はかなり減少するが、その理由は、一部のシステムにおいて流速は、システムの最小横断面積(例えば、流れ絞り領域)を流れる最高粘度の流体の影響を受けるためである。この結果、低粘度の流体は、その元の流速よりも遅い第2の流速で(例えば、高粘度の流体が流れ絞り領域内を流れるのと同じ流速で)流れる。
【0160】
例えば、流体の流れを制御する一方法は、マイクロ流体システム内で第1のチャネル部分から第2のチャネル部分まで第1の流体を流す工程であって、第1のチャネル部分によって画定される流体経路は、第2のチャネル部分によって画定される流体経路の横断面積より大きい横断面積を有する、工程と、マイクロ流体システム内で第1および第2のチャネル部分と流体連結された第3のチャネル部分内で第2の流体を流す工程であって、第1の流体の粘度は第2の流体の粘度と異なり、第1および第2の流体は実質的に圧縮不可能である、工程とを伴う場合がある。第1の流体が第1のチャネル部分から第2のチャネル部分まで流れない場合と比較して、第1の流体が第1のチャネル部分から第2のチャネル部分まで流れる結果、第1または第2の流体を停止させることなく、マイクロ流体システム内で少なくとも3、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40または少なくとも50倍で第1および第2の流体の容積流速を減少させることができる。第1または第2の流体の成分に伴う化学的および/または生物学的な相互作用は、第1および第2の流体が減速されて流れる間、チャネル部分と流体連結された第1の測定ゾーンで起こり得る。
【0161】
それに応じて、流れ絞り領域が特定の位置に配置された状態でマイクロ流体システムを設計することによって、および、流体の適切な粘度を選択することによって、バルブの使用なしでおよび/または外部の制御なしで、システム内の異なる位置において流体を加速させることも減速させることもできる。それに加えて、チャネル部分の長さを選択して、ある特定の期間の間、流体がシステムの特定のエリアにとどまることを可能にすることができる。そのようなシステムは、特に、化学的および/または生物学的アッセイを実行する際ならびに試薬のタイミングが重要な他の適用において役立つ。
【0162】
図16は、一実施形態による、制御システム305(図13を参照)をどのようにさまざまな異なるコンポーネントに作動的に連結することができるか示すブロック図300である。本明細書に記載される制御システムは、専用ハードウェアもしくはファームウェアを用いて、マイクロコードもしくはソフトウェアを使用してプログラムされたプロセッサを使用して上記の機能を実行する、または、前述の任意の適切な組合せを用いるなど、多くの方法で実装することができる。制御システムは、単一の分析(例えば、生物学、生化学もしくは化学反応のための)または複数の(別々のもしくは相互接続された)分析の1つまたは複数の動作を制御することができる。図13に例示的に示されるように、制御システム305は、分析器の筺体101内に配置することができ、識別読取器60、ユーザインターフェース200、流体流源40、光学システム80および/または温度調整システムと通信し、カセット内の試料を分析するよう構成することができる。
【0163】
一実施形態では、制御システムは少なくとも2つのプロセッサを含み、それには、カセットと直接インターフェースをとるサブシステムのすべてを制御およびモニタするリアルタイムのプロセッサが含まれる。一実施形態では、特定の時間間隔(例えば、0.1秒ごと)において、このプロセッサは、第2のより高いレベルのプロセッサと通信し、第2のプロセッサは、ユーザインターフェースおよび/または通信サブシステム(以下で論じる)を介してユーザと通信し、分析器の動作を指示する(例えば、いつ試料の分析を開始するかを判断し、結果を解釈する)。一実施形態では、これらの2つのプロセッサ間の通信は、シリアル通信バスを介して起こる。別の実施形態では、本発明はそのように限定されないため、分析器は、プロセッサを1つのみ含んでも、3つ以上のプロセッサを含んでもよいことを理解されたい。
【0164】
一実施形態では、分析器は、外部のデバイスとインターフェースをとることが可能であり、例えば、1つまたは複数の外部通信ユニットとの接続のためのポートを含み得る。外部通信は、例えば、USB通信を介して達成することができる。例えば、図16に示されるように、分析器は、試料分析の結果をUSBプリンタ400またはコンピュータ402に出力することができる。それに加えて、リアルタイムのプロセッサによって生成されたデータストリームは、コンピュータまたはUSBメモリスティック404に出力することができる。いくつかの実施形態では、コンピュータは、USB通信を介して分析器を直接制御できる場合もある。さらに、この点で本発明は限定されないため、他のタイプの通信オプションが利用可能である。例えば、分析器とのイーサネット(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)および/またはWI-FI通信406は、プロセッサを通じて確立することができる。
【0165】
本明細書に記載される計算方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、以下で説明されるコンピュータ実装システムのさまざまな実施形態などのコンピュータ実装制御システムを使用して実装することができる。本明細書に記載される方法、工程、システムおよびシステム要素は、それらの実装が、本明細書に記載される任意の特定のコンピュータシステムに限定されず、多くの他の異なるマシンを使用することができる。
【0166】
コンピュータ実装制御システムは、試料分析器の一部であることも、試料分析器と作動的に連結することもでき、いくつかの実施形態では、上記で説明されるように、試料分析器の動作パラメータを制御および調整するようにも、値を分析および計算するようにも構成および/またはプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、コンピュータ実装制御システムは、基準信号を送信および受信して、試料分析器および場合により他のシステム装置の動作パラメータを設定および/または制御することができる。他の実施形態では、コンピュータ実装システムは、試料分析器から分離され得、および/または、試料分析器に対して遠隔地に位置し得、磁気ディスクなどの携帯電子データ記憶装置を介してなどの間接的および/もしくは携帯手段を介して、または、インターネットもしくはローカルのイントラネットなどのコンピュータネットワーク上の通信を介して、1つまたは複数のリモート試料分析器装置からデータを受信するよう構成することができる。
【0167】
コンピュータ実装制御システムは、数種の公知のコンポーネントおよび回路を含み得、それには、以下でさらに詳細に説明されるように、処理装置(すなわち、プロセッサ)、メモリシステム、入出力デバイスおよびインターフェース(例えば、相互接続メカニズム)、ならびに、搬送回路(例えば、1つまたは複数のバス)、音声および映像データ入出力(I/O)サブシステム、専用ハードウェアなどの他のコンポーネント、ならびに、他のコンポーネントおよび回路が含まれる。さらに、コンピュータシステムは、マルチプロセッサのコンピュータシステムであっても、コンピュータネットワーク上で接続される複数のコンピュータを含んでいてもよい。
【0168】
コンピュータ実装制御システムは、プロセッサ、例えば、Intelから入手可能なシリーズx86、CeleronおよびPentium(登録商標)プロセッサ、AMDおよびCyrixからの同様のデバイス、Motorolaから入手可能な680X0シリーズマイクロプロセッサ、ならびに、IBMからのPowerPCマイクロプロセッサのいずれか1つなどの市販のプロセッサを含み得る。他の多くのプロセッサも利用可能であり、コンピュータシステムは特定のプロセッサに限定されない。
【0169】
プロセッサは、通常、オペレーティングシステムと呼ばれるプログラムを実行し、Windows(登録商標)NT、Windows(登録商標)95または98、UNIX(登録商標)、Linux(登録商標)、DOS、VMS、MacOSおよびOS8がその例であり、オペレーティングシステムは、他のコンピュータプログラムの実行を制御し、スケジューリング、デバッギング、入出力制御、アカウンティング、コンパイル、ストレージ割当て、データ管理およびメモリ管理、通信制御ならびに関連するサービスを提供する。プロセッサとシステムはともに、高水準プログラミング言語のアプリケーションプログラムが書き込まれるコンピュータプラットホームを定義する。コンピュータ実装制御システムは、特定のコンピュータプラットホームに限定されない。
【0170】
コンピュータ実装制御システムは、メモリシステムを含み得、それには、通常、コンピュータ読み書き可能な不揮発性記録媒体が含まれ、磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリおよびテープがその例である。そのような記録媒体は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、読み取り/書き込みCDもしくはメモリスティックのように取り外し可能であっても、例えば、ハードドライブのように固定式であってもよい。
【0171】
そのような記録媒体は、通常、2進形式(すなわち、1と0のシーケンスとして解釈される形式)で信号を格納する。ディスク(例えば、磁気または光)は多くのトラックを有し、その上には、通常、2進形式、すなわち、1と0のシーケンスとして解釈される形式でそのような信号を格納することができる。そのような信号は、ソフトウェアプログラム、例えば、マイクロプロセッサによって実行されるアプリケーションプログラム、または、アプリケーションプログラムによって処理される情報を定義することができる。
【0172】
また、コンピュータ実装制御システムのメモリシステムは、集積回路メモリ素子も含み得、集積回路メモリ素子は、通常、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)またはスタティックメモリ(SRAM)などの揮発性のランダムアクセスメモリである。通常、動作時、プロセッサは、不揮発性記録媒体から集積回路メモリ素子にプログラムとデータを読み取らせ、それにより、通常、不揮発性記録媒体よりも速い、プロセッサによるプログラム命令およびデータへのアクセスが可能になる。
【0173】
プロセッサは、一般に、プログラム命令に従って集積回路メモリ素子内のデータを操作し、次いで、処理が完了した後で、操作したデータを不揮発性記録媒体にコピーする。不揮発性記録媒体と集積回路メモリ素子との間のデータの移動を管理するためのさまざまなメカニズムが知られており、図16と関連して上記で説明される方法、工程、システムおよびシステム要素を実装するコンピュータ実装制御システムは、それらに限定されない。コンピュータ実装制御システムは、特定のメモリシステムに限定されない。
【0174】
上記で説明されるそのようなメモリシステムの少なくとも一部を使用して、上記で説明される1つまたは複数のデータ構造(例えば、ルックアップテーブル)または方程式を格納することができる。例えば、不揮発性記録媒体の少なくとも一部は、1つまたは複数のそのようなデータ構造を含むデータベースの少なくとも一部を格納することができる。そのようなデータベースは、例えば、デリミタによって分離されるデータ単位にデータが組織化される1つまたは複数のフラットファイルデータ構造を含むファイルシステム、テーブルに格納されるデータ単位にデータが組織化される関係データベース、オブジェクトとして格納されるデータ単位にデータが組織化されるオブジェクト指向データベース、別のタイプのデータベースまたはそれらの任意の組合せなど、さまざまなタイプのデータベースのいずれかであり得る。
【0175】
コンピュータ実装制御システムは、映像および音声データI/Oサブシステムを含み得る。サブシステムの音声部分は、アナログデジタル(A/D)変換器を含み得、A/D変換器は、アナログの音声情報を受信して、それをデジタル情報に変換する。デジタル情報は、ハードディスク上に格納して別の時に使用するための公知の圧縮システムを使用して圧縮することができる。I/Oサブシステムの典型的な映像部分は、その多くが当技術分野で公知のビデオ画像圧縮器/伸張器を含み得る。そのような圧縮器/伸張器は、アナログ映像情報を圧縮されたデジタル情報に変換し、その逆も可能である。圧縮されたデジタル情報は、ハードディスク上に格納して後に使用することができる。
【0176】
コンピュータ実装制御システムは、1つまたは複数の出力デバイスを含み得る。例示的な出力デバイスは、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)および他の映像出力デバイスと、プリンタと、モデムまたはネットワークインターフェースなどの通信デバイスと、ディスクまたはテープなどの記憶装置と、スピーカなどの音声出力デバイスとを含む。
【0177】
また、コンピュータ実装制御システムは、1つまたは複数の入力デバイスも含み得る。例示的な入力デバイスは、キーボード、キーパッド、トラックボール、マウス、ペンおよびタブレットと、上記で説明されるものなどの通信デバイスと、音声および映像捕捉デバイスおよびセンサなどのデータ入力デバイスとを含む。コンピュータ実装制御システムは、本明細書に記載される特定の入力または出力デバイスに限定されない。
【0178】
コンピュータ実装制御システムのいずれかのタイプの1つまたは複数を使用して、本明細書に記載されるさまざまな実施形態を実装することができることを理解されたい。本発明の態様は、ソフトウェア、ハードウェアもしくはファームウェアまたはそれらの任意の組合せに実装することができる。コンピュータ実装制御システムは、特別にプログラムされた専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)を含み得る。そのような専用ハードウェアは、上記で説明されるコンピュータ実装制御システムの一部としてまたは独立したコンポーネントとして、上記で説明される方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素の1つまたは複数を実装するよう構成することができる。
【0179】
コンピュータ実装制御システムおよびそのコンポーネントは、さまざまな1つまたは複数の適切なコンピュータプログラミング言語のいずれかを使用することでプログラム可能であり得る。そのような言語は、例えば、C、Pascal、FortranおよびBASICなどの手続き型プログラミング言語と、例えば、C++、Java(登録商標)およびEiffelなどのオブジェクト指向言語と、スクリプト言語、さらにはアセンブリ言語などの他の言語とを含み得る。
【0180】
方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、手続き型プログラミング言語、オブジェクト指向言語、他の言語およびそれらの組合せを含むさまざまな適切なプログラミング言語のいずれかを使用して実装することができ、これらの言語は、そのようなコンピュータシステムによって実行することができる。そのような方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、コンピュータプログラムの別々のモジュールとして実装することも、別々のコンピュータプログラムとして個別に実装することもできる。そのようなモジュールおよびプログラムは、別々のコンピュータ上で実行することができる。
【0181】
そのような方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素は、個別にまたは組み合わせて、例えば、不揮発性記録媒体、集積回路メモリ素子またはそれらの組合せなどのコンピュータ可読媒体上のコンピュータ可読信号として明白に具体化されるコンピュータプログラム製品として実装することができる。それぞれのそのような方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素に対して、そのようなコンピュータプログラム製品は、例えば、コンピュータによって実行される結果として、方法、工程、シミュレーション、アルゴリズム、システムおよびシステム要素を実行するようコンピュータに命令する、1つまたは複数のプログラムの一部として命令を定義する、コンピュータ可読媒体上に明白に具体化されるコンピュータ可読信号を含み得る。
【0182】
1つまたは複数の上記で説明される特徴を用いてさまざまな実施形態を形成することができることを理解されたい。上記の態様および特徴は、本発明はこの点において限定されないため、任意の適切な組合せで使用してもよい。また、図面はさまざまなコンポーネントおよび特徴を示し、同コンポーネントおよび特徴はさまざまな実施形態に組み込むことができることも理解されたい。簡素化のため、一部の図面は、2つ以上の任意選択の特徴またはコンポーネントを示すことができる。しかし、本発明は、図面で開示される特定の実施形態に限定されない。本発明は、いずれか1つの図面に示されるコンポーネントの一部のみを含み得る実施形態を包含し、および/または、複数の異なる図面に示されるコンポーネントを組み合わせた実施形態も包含し得ることを理解されたい。
【実施例
【0183】
以下の例は、本発明のある特定の特徴を示すことを意図するが、本発明の全範囲を例示するものではない。
【0184】
実施例1
この例は、アッセイを実行して、試料と結合する金の粒子上に銀を無電解堆積することによって試料中のPSAを検出するためのカセットおよび分析器の使用について説明する。図22は、この例で使用されたカセットのマイクロ流体システム500の概略図を含む。カセットは、図3に示されるカセット20と同様の形状を有していた。この例で使用されたマイクロ流体システムは、一般に、2004年12月20日に出願され、「Assay Device and Method」と称する国際公開第2005/066613号パンフレット(PCT/US2004/043585号明細書)に記載される。
【0185】
マイクロ流体システムは、測定ゾーン510A~510Dと、廃棄物閉じ込め領域512と、排出口514とを含んでいた。測定ゾーンは、全長が175mmで、深さが50ミクロンで幅が120ミクロンのマイクロ流体チャネルを含んでいた。また、マイクロ流体システムは、マイクロ流体チャネル516と、チャネル分岐部518および520(それぞれの注入口519および521を備える)とを含んでいた。チャネル分岐部518および520は、深さが350ミクロンで幅が500ミクロンであった。チャネル516は、サブチャネル515から形成され、サブチャネル515は、深さが350ミクロンで幅が500ミクロンであり、カセットの交代側に位置し、およそ500ミクロンの直径を有する穴517を通して接続された。図22は、試薬がカセットの片側に格納されたことを示すが、他の実施形態では、試薬はカセットの両側に格納された。チャネル516は全長が390mmであり、分岐部518および520は長さがそれぞれ360mmであった。チャネルを密封する前に、抗PSA抗体は、測定ゾーン510の一部分においてマイクロ流体システムの表面に付着された。
【0186】
最初に使用する前、マイクロ流体システムにはカセットに格納された液体試薬が投入された。一連の7つの洗浄栓523~529(いずれも緩衝水、それぞれおよそ2マイクロリットル)は、スルーホールを使用してチャネル516のサブチャネル515にピペットを使用して投入された。それぞれの洗浄栓は、空気栓によって分離された。銀塩の溶液を含む流体528は、ピペットを使用してポート519を通じて分岐チャネルに投入された。還元溶液を含む流体530は、ポート521を通じて分岐チャネル520に投入された。図9に示されるそれぞれの液体は、空気栓によって他の液体から分離された。ポート514、519、521、536、539および540は、容易に取り外すかまたは貫通させることができる粘着テープで密封された。このように、液体は、最初に使用する前にマイクロ流体システムに格納された。
【0187】
最初の使用時、ポート514、519、521、536、539および540は、ユーザがポートの開口部を覆うテープをはぎ取ることによって開封された。コロイド金で標識された凍結乾燥された抗PSA抗体を含み、10マイクロリットルの試料血液(522)が追加された管544は、ポート539および540に接続された。管は、図3に示される形状および構成を有する流体コネクタの一部であった。これにより、測定ゾーン510とチャネル516との間の流体接続が生み出され、この流体接続は、最初の使用時以外は接続されておらず、最初に使用する前は互いに流体連結していない。
【0188】
マイクロ流体システム500を含むカセットは、分析器の開口部に挿入された(例えば、図10、12および17に示されるように)。分析器の筺体は、カセット上のカムを備えた表面と係合するよう構成された、筺体内に配置されるアームを含んでいた。アームは、筺体内の開口部内まで少なくとも部分的に延在しており、その結果、カセットを開口部に挿入すると、アームは開口部から第2の位置に押しやられて、カセットを開口部に入れることができた。一旦アームがカセットのカムを備えた表面と内部で係合すれば、カセットは位置付けされ、分析器の筺体内に保持され、バネのバイアスにより、カセットが分析器から滑り出るのを防いだ。分析器は、位置センサによってカセットの挿入を検知する。
【0189】
分析器の筺体内に配置された識別読取器(RFID読取器)を使用して、ロット識別情報を含むカセット上のRFIDタグを読み取った。分析器は、この識別子を使用して、分析器内に格納されたロット情報(例えば、較正情報、カセットの有効期限、カセットが新品であることの実証、および、カセットで実行される分析/アッセイのタイプ)を適合させた。タッチスクリーンを使用して患者(試料が採取された)についての情報を分析器に入力するようユーザに促した。ユーザによってカセットについての情報が検証されると、制御システムは分析を開始した。
【0190】
制御システムは、分析を実行するためにプログラムされた命令を含んでいた。分析を開始するため、信号は、真空システムを制御する電子機器に送信され、電子機器は、分析器の一部であり、流体の流れの供給に使用された。o-リングを備えたマニホールドは、ソレノイドによってカセットの表面に圧接された。マニホールド上の1つのポートは、カセットのマイクロ流体システムのポート536を密封した(o-リングで)。マニホールド上のこのポートは、管によって、大気にさらされている簡素なソレノイドバルブ(SMC V124A-6G-M5、図示せず)に接続された。マニホールド上の別の真空ポートは、カセットのマイクロ流体システムのポート514を密封した(o-リングで)。ポート514には、およそ-30kPaの真空を印加した。分析の間中、測定ゾーン510を含むチャネルは、およそ-30kPaの実質的に一定のゼロ以外の圧力降下を有するポート540と514の間に配置された。試料522は、矢印の方向538に、測定ゾーン510A~510Dのそれぞれに流れ込んだ。流体が測定ゾーン中を通過すると、試料522中のPSAタンパク質は、以下でさらに詳細に説明されるように、測定ゾーン壁上で固定化された抗PSA抗体によって捕捉された。試料が測定ゾーン中を通過するのに約7~8分要し、その後、試料は廃棄物閉じ込め領域512で捕捉された。
【0191】
また、分析の開始は、制御システムが光検出器に信号を送信する工程も伴い、光検出器は、検出を開始するため、それぞれの測定ゾーン510に隣接して配置された。測定ゾーンに連結されたそれぞれの検出器は、図10に示されるグラフ600に示されるように、測定ゾーンのチャネルを通過する光の透過率を記録した。試料がそれぞれの測定ゾーンを通り過ぎると、ピーク610A~610Dが生成された。検出器によって測定されたピーク(およびトラフ)は、制御システムに送信された信号であり(または、信号に変換され)、制御システムは、測定信号を制御システムに事前にプログラムされた基準信号または値と比較した。制御システムは、信号/値の比較に少なくとも部分的に基づいて、マイクロ流体システムにフィードバックを提供するための、事前にプログラムされた一連の命令を含んでいた。
【0192】
図22のデバイス500の第1の測定ゾーン510-Aでは、この測定ゾーンのチャネルの壁は、最初に使用する前に(例えば、デバイスを密封する前に)、遮断タンパク質(ウシ血清アルブミン)で遮断された。血液試料中のタンパク質は、測定ゾーン510-Aの壁にほとんどまたは全く付着しなかった(恐らくは洗い落とすことができる何らかの非特異的結合以外)。この第1の測定ゾーンは、負の制御として機能した。
【0193】
第2の測定ゾーン510-Bでは、この測定ゾーンのチャネルの壁は、最初に使用する前に(例えば、デバイスを密封する前に)、既定の大量の前立腺特異抗原(PSA)でコーティングして、高または正の制御として機能した。血液試料が第2の測定ゾーン510-B中を通過すると、血液中のPSAタンパク質は、チャネルの壁とほとんどまたは全く結合しなかった。試料中の金共役シグナル抗体は、依然として試料中のPSAと結合されていない場合があり、したがって、それらは、チャネルの壁上のPSAと結合して、高または正の制御として機能し得る。
【0194】
第3の測定ゾーン510-Cでは、この測定ゾーンのチャネルの壁は、最初に使用する前に(例えば、デバイスを密封する前に)、既定の少量のPSAでコーティングして、低制御として機能した。血液試料がこの測定ゾーン中を流れると、試料中のPSAタンパク質は、チャネルの壁とほとんどまたは全く結合しなかった。試料中の金共役シグナル抗体は、チャネルの壁上のPSAと結合して、低制御として機能し得る。
【0195】
第4の測定ゾーン510-Dでは、この測定ゾーンのチャネルの壁は、抗PSA抗体である捕獲抗体でコーティングされ、この抗体は、金共役シグナル抗体よりもPSAタンパク質上の異なるエピトープと結合する。壁は、最初に使用する前に(例えば、デバイスを密封する前に)コーティングされた。使用中に血液試料が第4の測定ゾーン中を流れると、血液試料中のPSAタンパク質は、血液中のこれらのタンパク質の濃度に比例する方法で抗PSA抗体と結合した。PSAを含む試料はPSAと結合する金で標識された抗PSA抗体も含むため、測定ゾーンの壁上に捕捉されたPSAは、サンドイッチ免疫複合体を形成した。
【0196】
洗浄流体523~529は、試料を追って、矢印の方向538に、測定ゾーン510を通過して廃棄物閉じ込め領域512に向かった。洗浄流体が測定ゾーン中を通過すると、洗浄流体は、残りの非結合の試料成分を洗い流した。各洗浄栓が測定ゾーンのチャネルを洗浄し、徐々により完全な洗浄を進めた。最後の洗浄流体529(水)は、銀塩と反応し得た塩(例えば、塩化物、リン酸塩、アジド)を洗い流した。
【0197】
図23で示されるグラフで示されるように、洗浄流体が測定ゾーン中を流れる間、測定ゾーンに連結されたそれぞれの検出器は、ピークとトラフのパターン620を測定する。トラフは、洗浄栓(透明な液体であり、したがって、最大光透過率を提供する)に相当した。各栓間のピークは、透明な液体の各栓間の空気を表す。アッセイには7つの洗浄栓が含まれため、グラフ600には7つのトラフと7つのピークが存在する。最初のトラフ622は一般に他のトラフ624ほど深くはないが、その理由は、最初の洗浄栓はチャネル内に残された血球を捕捉する場合が多く、したがって、完全に透明ではないためである。
【0198】
空気の最終のピーク628は、前のピークよりはるかに長時間にわたるが、その理由は、追いかけるべき洗浄栓がなかったためである。検出器がこの空気ピークの長さを検出すると、1つまたは複数の信号が制御システムに送信され、制御システムは、このピークの時間の長さを、事前に設定された基準信号または特定の長さを有する入力値と比較する。基準信号と比較して測定ピークの時間の長さが十分長い場合、制御システムは、通気バルブ536を制御する電子機器に信号を送信して、バルブを作動させ、流体528および530の混合を開始する。(空気のピーク628の信号は、1)ピークの強度、2)時間の関数としてこのピークが位置する場所、および/または、3)特定の強度の一連のピーク620が既に通過したことを示す1つまたは複数の信号のいずれかを示す信号と組み合わせることができることに留意されたい。このように、制御システムは、例えば、信号のパターンを使用して、空気のピーク628と、試料からのピーク610などの長い継続時間を有する他のピークと区別する。)
【0199】
混合を開始するため、マニホールドによって通気ポート536に接続されたソレノイドを閉栓する。真空状態を維持し、通気バルブ536を通じて空気を入れることができないため、空気は、ポート519および521(閉栓)を通じてデバイスに入る。これにより、通気バルブ536の上流の2つの格納チャネル内の2つの流体528および530を、実質的に同時に排出口514に向けて強制的に移動させる。これらの試薬はチャネル交差部で混合し、約1×10-3Pa・sの粘度を有する増幅試薬(反応性銀溶液)を形成する。流体528と530の容積の割合は約1:1であった。増幅試薬は、引き続き、格納チャネルの下流を通過し、管544を通過し、測定ゾーン510を通過し、廃棄物閉じ込め領域512に到達した。一定時間(12秒)後、分析器は、空気が通気バルブ536(通気ポートの代わりに)中を流れるように通気バルブ536を再度開栓した。これにより、ある程度の試薬がデバイス上の上流の格納チャネル518および520に残された。また、これにより、混合された増幅試薬の単一の栓も生じる。12秒間の通気バルブの閉栓により、およそ50μLの増幅栓が生じる。(単一のタイミングの代わりに、通気バルブの再度開栓を引き起こす別の方法は、増幅試薬が測定ゾーンに最初に入る際に増幅試薬を検出することであろう。)
【0200】
混合された増幅試薬は、ほんの数分間(通常10分未満)しか安定しないため、測定ゾーン510での使用まで1分を切った時点で混合が行われた。増幅試薬は透明な液体のため、増幅試薬が測定ゾーンに入ると、光学密度はその最小値を示す。増幅試薬が測定ゾーンの端から端まで通過すると、捕捉された金粒子上に銀が堆積し、コロイドのサイズを増加させ、信号を増幅した。(上記の通り、金粒子は、低および高の正の制御の測定ゾーン内に存在し、PSAが試料中に存在する範囲でテスト測定ゾーン内に存在した。)次いで、既に堆積した銀の上部に銀を堆積することができ、測定ゾーン内で銀がますます堆積する。最終的に、堆積した銀は、測定ゾーンを通過する光の透過率を低減する。光透過率の低減は、堆積した銀の量に比例し、チャネル壁上で捕捉された金コロイドの量に関連し得る。銀が堆積していない測定ゾーン(例えば、負の制御、または、試料がPSAなどの対象タンパク質のいずれも含まない場合のテストエリア)では、光学密度の増加はない(または最小限である)。かなりの銀が堆積した測定ゾーンでは、増加する光学密度のパターンの勾配および究極のレベルは高くなる。分析器は、テストエリアにおける増幅の間、この光学密度のパターンをモニタし、試料中の分析物の濃度を決定する。テストの1つのバージョンでは、パターンは、増幅後3分以内にモニタする。時間の関数としての測定ゾーンのそれぞれの光学密度が記録され、図10で曲線640、644、642および646として示される。これらの曲線は、測定ゾーン510-A、510-B、510-Cおよび510-Dのそれぞれで生成された信号に相当した。
【0201】
増幅後3分が経過すると、分析器はテストを停止する。それ以上の光学測定値は記録されず、マニホールドはデバイスから係脱される。テスト結果は、分析器のスクリーン上に表示され、プリンタ、コンピュータまたはユーザが選択したあらゆる出力に通信される。ユーザは、分析器からデバイスを取り外し、それを廃棄してもよい。アッセイに使用された試料およびすべての試薬は、デバイス内に保存する。分析器は、いつでも別のテストを行える状態にある。
【0202】
チャネル516および測定ゾーン510内の流体の流速の制御は、システム内に流体を流す際に重要であったことに留意されたい。測定ゾーンの比較的小さな横断面積のため、測定ゾーンはボトルネックとして機能し、システム内の全体的な流速を制御した。測定ゾーンが液体を含む場合は、チャネル516内の流体の線形流速は、約0.5mms-1であった。分岐チャネル518および520から主要なチャネル516に流れ込む流体は、この速度では再生可能に混合されなかった可能性があるが、その理由は、ある流体は他の流体よりも速く流れた可能性があり、流体528および530の不均等部分が混合されたためである。他方では、測定ゾーンが空気を含む場合は、チャネル516ならびに分岐チャネル518および520内の流体の線形流速は、約15mms-1であった。この高速流速では、分岐チャネル518および520内の流速は、等しく、再生可能であり(通気バルブ536が閉栓している場合)、再生可能な混合を生成した。この理由のため、ポート536に接続されたバルブは、流体542が測定ゾーン中を通過して廃棄物閉じ込め領域に到達するまで閉栓されなかった。上記の通り、流体542がいつ測定ゾーン510を出たかについての判断は、光検出器を使用して、フィードバックシステムと組み合わせて測定ゾーン510の一部を通過する光の透過率を測定することによって行われた。
【0203】
図22に示されるマイクロ流体システムは、通気バルブ536と測定ゾーン510との間のチャネルの容積が、混合され活性された銀溶液の予測容積より大きくなるように設計された(すなわち、通気バルブ536を閉栓している間にチャネル516に移動した流体528および530の組み合わされた部分)。これにより、実質的にすべての混合が、比較的高い線形流速で(この時点では測定ゾーン510内には液体は存在せず、空気のみが存在したため)、活性された溶液が測定ゾーンに到達する前に行われることを保証した。この構成は、再生可能で均等な混合を促進し易くした。この例で説明されたアッセイの場合、数分間(例えば、2~10分間)測定ゾーン内で活性された銀の混合物の流れを維持することが重要であった。
【0204】
この例は、カセットのマイクロ流体システム内での試料の分析が、カセット内の流体の流れを制御する分析器を使用することによって、および、1つまたは複数の測定信号からのフィードバックを使用して流体の流れを調節することによって実行できることを示す。
【0205】
本発明の数種の実施形態が本明細書で説明されて示されてきたが、当業者であれば、本明細書に記載される機能を実行するため、ならびに/あるいは、結果および/または1つもしくは複数の利点を得るためのさまざまな他の手段および/または構造が容易に想定され、そのような変形形態および/または変更形態のそれぞれは、本発明の範囲内にあると見なされる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23