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特許7168645交流部に電力を管理するためのモジュールを備える変換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】交流部に電力を管理するためのモジュールを備える変換器
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/18 20060101AFI20221101BHJP
   H02J 3/36 20060101ALI20221101BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20221101BHJP
   H02M 7/483 20070101ALI20221101BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221101BHJP
【FI】
H02J3/18 157
H02J3/36
H02J3/16
H02M7/483
H02M7/48 R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020500128
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 FR2018051664
(87)【国際公開番号】W WO2019008275
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】1756433
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517202755
【氏名又は名称】スーパーグリッド インスティテュート
【住所又は居所原語表記】23 RUE CYPRIAN, 69100 VILLEURBANNE, FRANCE
(73)【特許権者】
【識別番号】518039545
【氏名又は名称】サントラルスペレック
【氏名又は名称原語表記】CENTRALESUPELEC
【住所又は居所原語表記】3 RUE JOLIOT‐CURIE, 91190 GIF‐SUR‐YVETTE, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】篠田 康生
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ベンチャイブ,アブデルクリム
(72)【発明者】
【氏名】ギヨー,グザヴィエ
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-512133(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010388(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/178376(WO,A1)
【文献】特開2011-114920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0299195(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03142236(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
H02M 7/42 - 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源供給網(120)に接続されるように意図されるいわゆる直流部(10C)及び交流電源供給網(110)に接続されるように意図されるいわゆる交流部(10A)を含む、交流電圧を直流電圧に変換、及び、その逆に変換するためのモジュラーマルチレベル電圧変換器(10、10′)であって、
前記モジュラーマルチレベル電圧変換器は、複数のレッグを含み、
各レッグは、上側アーム及び下側アームを含み、
各アームは、複数のサブモジュールであって、各サブモジュールに固有の制御部によって個別に制御可能な複数のサブモジュールを含み、
各サブモジュールは、当該サブモジュールの前記制御部が被制御状態にあるときに前記アームにおいて直列接続可能なキャパシタを含み、
各アームは、当該アームにおいて直列に置かれるキャパシタの数によって決まるデューティサイクルに関係付けられるモデル化電圧源によってモデル化することができ、
各モデル化電圧源は、前記アームの合計キャパシタンスに対応するモデル化キャパシタに並列接続され、
前記モジュラーマルチレベル電圧変換器は、調節可能な入力パラメータを有する関数の適用による前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の内部コマンド設定値(P 、I )のためのコンピュータ(22、22′)を含む前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の制御モジュール(20、20′)を含
前記調節可能な入力パラメータは、調節可能な仮想慣性係数k VC であり、
前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の前記制御モジュールは、各モデル化キャパシタの端子間における電圧に応じて動作電力設定値(P )を与えるように構成されているエネルギー管理モジュール(24、24′)をさらに含み、
前記動作電力設定値は、前記交流電源供給網に伝達すべき電力設定値(P ac)を決定するために使用され、
前記制御モジュールは、前記内部コマンド設定値及び前記交流電源供給網に伝達すべき前記電力設定値に応じて、前記直流電源供給網への前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の接続点における電圧及び各モデル化キャパシタの前記端子間における前記電圧を調整するように構成されていることを特徴とするモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【請求項2】
前記コンピュータ(22)は、導関数及びフィルタリング関数の適用によって前記内部コマンド設定値(P 、I )を計算するように構成されている、請求項1に記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【請求項3】
前記内部コマンド設定値は、内部電力設定値P である、請求項1又は2に記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【請求項4】
前記コンピュータ(22)が、次の関数に従って前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の前記内部電力設定値P を計算するように構成されている、請求項に記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【数1】

eq=6Ctotであり、Ctotは前記モデル化キャパシタの一つのアームにおける合計キャパシタンスであり、vdcは、前記直流電源供給網への前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の前記接続点における前記電圧であり、τは時定数である。
【請求項5】
前記内部電力設定値P は、前記直流電源供給網(120)に伝達すべき電力設定値P dcを決定するために使用される、請求項又はに記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【請求項6】
前記内部コマンド設定値は、内部電流設定値I である、請求項1又は2に記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【請求項7】
前記コンピュータ(22′)は、次の関数に従って前記内部電流設定値I を計算するように構成されている、請求項に記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【数2】

eq=6Ctotであり、Ctotは前記モデル化キャパシタの一つのアームにおける合計キャパシタンスであり、vdcは、前記直流電源供給網への前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の前記接続点における前記電圧であり、τは時定数である。
【請求項8】
前記内部電流設定値I は、前記直流電源供給網(120)に伝達すべき電流設定値I dcを決定するために使用される、請求項又はに記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【請求項9】
前記エネルギー管理モジュール(24、24’)は、二乗した各モデル化キャパシタの前記端子間における電圧設定値と、前記モデル化キャパシタの前記端子間における前記電圧の二乗の平均との比較結果を入力として受け取る、請求項1からのいずれか一項に記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【請求項10】
前記制御モジュール(20、20′)は、電流idiff及びigd並びに電圧vdiff及びvgdにおける中間媒介変数を制御するように変数に変化を起こすように構成され、
diff及びvdiffは、前記直流電源供給網(120)に接続されており、
gd及びvgdは、前記交流電源供給網(110)に接続されている、請求項1からのいずれか一項に記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【請求項11】
前記制御モジュールは、前記電流igdに対応する設定値i gdを入力として有する前記電流igdの調整器(28、28′)を含む、請求項10に記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【請求項12】
前記制御モジュールは、前記電流idiffに対応する設定値i diffを入力として有する前記電流idiffの調整器(30、30′)を含む、請求項10又は11に記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【請求項13】
前記制御モジュールは、前記直流電源供給網への前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の前記接続点における電圧設定値、及び、前記直流電源供給網上で集められる前記直流電源供給網への前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の前記接続点における電圧値に応じて、前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の前記直流電圧の調整のための電力設定値(P )を決定するように構成されている前記直流電源供給網(120)への前記モジュラーマルチレベル電圧変換器(10、10′)の前記接続点における前記電圧の調整器(26、26′)を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器。
【請求項14】
モジュラーマルチレベル電圧変換器(10、10′)の制御プロセスであって、
前記モジュラーマルチレベル電圧変換器は、交流電圧を直流電圧に変換、及び、その逆に変換し、かつ、直流電源供給網(120)に接続されるように意図されるいわゆる直流部(10C)及び交流電源供給網(110)に接続されるように意図されるいわゆる交流部(10A)を含み、
前記モジュラーマルチレベル電圧変換器は、複数のレッグを含み、
各レッグは、上側アーム及び下側アームを含み、
各アームは、複数のサブモジュールであって、各サブモジュールの制御部によって個別に制御可能な複数のサブモジュールを含み、
当該サブモジュールの前記制御部が被制御状態であるときに前記アームにおいて直列接続されるキャパシタを含み、
各アームは、当該アームにおいて直列に置かれるキャパシタの数によって決まるデューティサイクルに関係付けられるモデル化電圧源によってモデル化することができ、
各モデル化電圧源は、前記アームの合計キャパシタンスに対応するモデル化キャパシタに並列接続され、
前記制御プロセスは、調節可能な入力パラメータを有する関数の適用による前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の内部コマンド設定値の計算をさらに含
前記調節可能な入力パラメータは、調節可能な仮想慣性係数k VC であり、
各モデル化キャパシタの端子間における電圧に応じて動作電力設定値を決定するステップ、
前記動作電力設定値から前記交流電源供給網に伝達すべき電力設定値を決定するステップ、及び、
前記内部コマンド設定値及び前記交流電源供給網に伝達すべき前記電力設定値に応じて、前記直流電源供給網への前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の接続点における電圧及び各モデル化キャパシタの前記端子間における前記電圧を調整するステップを含むことを特徴とする、モジュラーマルチレベル電圧変換器の制御プロセス。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載のモジュラーマルチレベル電圧変換器(10、10′)の制御モジュール(20、20′)であって、
調節可能な入力パラメータを有する関数の適用による前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の内部コマンド設定値のためのコンピュータ(22、22′)を含み、
前記調節可能な入力パラメータは、調節可能な仮想慣性係数k VC であり、
当該制御モジュールは、各モデル化キャパシタの前記端子間における前記電圧に応じて動作電力設定値を与えるように構成されているエネルギー管理モジュール(24、24′)をさらに含み、
前記動作電力設定値は、前記交流電源供給網(110)に伝達すべき電力設定値を決定するために使用され、
当該制御モジュールは、前記内部コマンド設定値及び前記交流電源供給網に伝達すべき前記電力設定値に応じて、前記直流電源供給網(120)への前記モジュラーマルチレベル電圧変換器の前記接続点における前記電圧及び各モデル化キャパシタの前記端子間における前記電圧を調整するように構成されているモジュラーマルチレベル電圧変換器の制御モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステーションがモジュラーマルチレベル変換器(MMC)を統合する多端子高電圧直流(HVDC)の送電設備の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術に係るモジュラーマルチレベル変換器10のサブモジュールの組12を概略的に示す。三相入力/出力電流(三相φ、φ及びφを含む)に関して、この変換器10は、図1の様々な構成要素上で指標a、b及びcで参照される三つの変換レッグを含む。
【0003】
各変換レッグは、上側アーム及び下側アーム(上側は指標「u」で、下側は指標「l」で示す)を含み、当該アームの各々は、直流電源供給網(DC)の端子DC+又はDC-を交流電源供給網(AC)の端子に接続する。特に、上記レッグの各々は、上記交流電源供給網の上記三相ラインφ、φ及びφのうちの一つに接続される。「bras」と「demi-bras」という用語は、それぞれ「leg」と「arm」という英語に翻訳されていることに留意してください。図1は、サブモジュールの組12を示し、各アームは電流ixiが通過する(xは上記アームが上側であるか下側であるかを示し、指標iは上記レッグを示す)。また、各アームは、好適なシーケンスに従って制御されることができる複数のサブモジュールSMxijを含む(xは上記アームが上側であるか下側であるかを示し、指標iは上記アームが接続される上記位相ラインを示し、jは上記アームにおいて直列の上記サブモジュール間の上記サブモジュールの番号である)。ここでは、サブモジュールが三つだけアームによって示されている。実際には、各下側又は上側アームは、数十個から数百個に及ぶN個のサブモジュールを含むことができる。
【0004】
各サブモジュールSMxijは、少なくとも一つのキャパシタなどのエネルギー貯蔵システム、及び選択的にこのキャパシタを上記サブモジュールの端子間で直列に接続するか、これらをバイパスするための制御部を含む。上記サブモジュールは、選択されたシーケンスに従って制御されて、いくつかのレベルの電圧を供給するために上記変換器10の一つのアームにおいて直列接続されるエネルギー貯蔵要素の数を漸進的に変化させる。また、図1では、vdcは、上記直流電源供給網への上記変換器の接続点における電圧を示し、idcは、上記直流電源供給網の電流を示し、電流iga、igb及びigcは、上記三相ラインφ、φ及びφを通過する。また、各アームは、インダクタンスLarmを有し、各位相ラインはインダクタンスL及び抵抗Rを含む。
【0005】
図2は、図1の上記変換器10に属するサブモジュールSMxijを示す。このサブモジュールSMxijはその端子に電圧vSMを有する。このサブモジュールにおいて、各制御部は、エネルギー貯蔵要素、ここではキャパシタCSMに直列接続される絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、などの第一の電子スイッチ要素T1を含む。この第一のスイッチ要素T1及びこのキャパシタCSMは、同様に絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である第二の電子スイッチ要素T2に並列に取り付けられる。この第二の電子スイッチ要素T2は、上記サブモジュールSMxijの入力端子と出力端子の間に結合されている。上記第一及び第二のスイッチ要素T1及びT2は、両方とも図2に示す逆並列ダイオードに接続される。
【0006】
動作時、上記サブモジュールは、二つの制御状態で制御されることができる。
【0007】
第一の状態、すなわち、いわゆる「オン」すなわち制御状態では、上記第一のスイッチ要素T1及び上記第二のスイッチ要素T2は、上記エネルギー貯蔵要素CSMをその他のサブモジュールと直列接続するように構成されている。第二の状態、すなわち、いわゆる「オフ」すなわち非制御状態では、上記第一のスイッチ要素T1及び上記第二のスイッチ要素T2は、上記エネルギー貯蔵要素CSMを短絡するように構成されている。
【0008】
その端子に電圧vを有する各アームは、その端子に電圧vを有し、そのデューティサイクルが被制御サブモジュールの数によって決まるモデル化電圧源によって、及び当該電圧源に接続されるモデル化キャパシタCtotによってモデル化することができることが知られている。このモデル化は図3に示されており、一つのアームを、当該アームを通過する電流i及びその結果として生じるモデル化とともに示している。Ctotは、一つのアームにおける等価のキャパシタンスであり、当該アームのこの等価のキャパシタンスCtotの逆数が、次式に従って、このアームにおいて制御される上記サブモジュールのキャパシタンスの逆数の合計に等しくなるようになっている。
【数1】
、C、…、C、…、Cは、上記アームにおけるj番目のキャパシタの容量である。
【0009】
したがって、上記モデル化キャパシタCtotの端子間における電圧vcΣは、上記アームにおける上記サブモジュールの上記キャパシタの端子間における電圧vcjの合計に等しい(jは1からNに及び、上記キャパシタの番号、したがって上記サブモジュールの番号を示す)。また、電流iは、各モデル化キャパシタCtotを通過する。本出願において、Ctotは、上記モデル化キャパシタとそのキャパシタンスの値の両方を大まかに示す。直列接続されるエネルギー貯蔵要素の数を漸進的に変化させるために、上記サブモジュールの上記制御シーケンスを制御することによって、上記モデル化キャパシタCtotのエネルギー、したがって各モデル化電圧源の上記端子における上記電圧は降下又は上昇させることができる。
【0010】
従来技術は、したがって、図4に示す上記変換器MMC10の上記サブモジュールの上記組の等価構成を開示している。この図では、上記変換器は、図1を参照して説明したものと類似の変換器であり、各アームは、そのモデル化によって置き換えられている。また、上記交流電源供給網の各位相ラインは、電流igi及び電圧vgiに接続される(指数iは上記レッグの番号を示す)。
【0011】
ここで、上記モデル化電圧源の各々は、その端子に電圧vmxiを含み、各モデル化キャパシタCtotは電流imxiが通過し、その端子に電圧vcΣxiを含む(xは上記アームが上側か下側かを示し、iは上記レッグの番号を示す)。上記変換器MMCを想像上の交流部及び想像上の直流部(上記変換器が交流エネルギーを直流エネルギーに変換するように構成されているか又はその逆かによって、入力又は出力にある)に分割することができることも分かり、上記サブモジュールの上記キャパシタに貯蔵されるトータルエネルギーの放出は、上記変換器に入ってくる電力と出ていく電力の間の差に等しい。
【0012】
「電圧源変換器」タイプの変換器(当業者には「VSC」の頭字語でよく知られている)が既知であり、上記直流電源供給網と並列に接続されるステーションキャパシタを有する。このような並列のキャパシタの欠点は、当該キャパシタにより、上記変換器が上記直流電源供給網の上記電圧から切断されることができないことである。また、このタイプの変換器は、適した変換信号を得るために多くのフィルタを使用する必要がある。
【0013】
また、上記直流電源供給網の慣性はそのキャパシタンスによって決まり、大きなキャパシタンスは、上記直流電源供給網の上記慣性を増大させるようになっている。したがって、上記網の大きなキャパシタンス、したがって大きな慣性により、それは、どのような中断にも最も良好に抵抗することが可能になる。逆に、低い網キャパシタンス、したがって低い慣性により、上記直流電源供給網への上記変換器の上記接続点における上記電圧がより容易にかつより精密に調整される。
【0014】
電圧源変換器タイプの変換器とは対照的に、MMC変換器は、並列接続されかつ上記直流電源供給網の安定性に影響を及ぼす可能性のあるステーションキャパシタを含まない。モジュラーマルチレベル変換器は、したがって、上記サブモジュールの上記キャパシタの上記合計電圧と上記直流電源供給網の上記電圧の間の切断を提供するという利点を有する。しかし、電力の単純な変化は、上記直流電源供給網の電圧の相当な変化を引き起こす可能性がある。
【0015】
MMC変換器は既知であり、その制御はエネルギーに基づかない(非エネルギーベースの制御)。これらの変換器では、上記アームの上記キャパシタの上記電圧と上記直流電源供給網の上記電圧の間で電圧の偏移が生じるとき、入ってくる直流電源供給網の電力が自動的に変化して、上記電圧の偏移を補正する。この制御は、上記アームの上記キャパシタとのエネルギー交換が、上記直流電源供給網上の電圧の変化に続いて生じるため、さらなる調整器を用いずに行われる。
【0016】
しかしながら、このタイプの変換器の全ての変数は制御されず、これは、上記変換器のロバスト性の欠如が原因で現れる。
【0017】
その制御がエネルギーに基づく変換器も知られている。特に、「Control of DC bus voltage with a Modular Multilevel Converter」(Samimi et al.、PowerTech conference、 2015)と題する文書が知られており、当該文書は、上記交流部の領域における電力伝送、上記直流部の領域における電力伝送、及び上記変換器の内部エネルギーの制御システムを含むモジュラーマルチレベル変換器を提示している。このタイプの変換器は、エネルギーに基づく制御(「エネルギーベースの制御」)を使用し、直流電源供給網及び交流電源供給網の電流における変数の制御によって、これら二つのそれぞれの網の電力を制御する。直流電源供給網及び交流電源供給網の上記電力間の差により、上記サブモジュールの上記キャパシタに貯蔵されるエネルギーの低減又は増大が生じる。しかしながら、このタイプの変換器は、上記サブモジュールの上記キャパシタの上記端子間における電圧と上記直流電源供給網の電圧の間の切断に支障をきたす。また、このタイプの変換器は、上記直流電源供給網上の電圧の変動に効果的かつリアルタイムで適応しない。
【0018】
これらの既知の変換器は、特に上記直流電源供給網の上記安定性に対する寄与に関しては、十分なロバスト性がない。これらの既存の課題解決法は、上記DC網の上記安定性の制御とともに上記変換器の上記内部エネルギーの制御に関して、MMC変換器の容量を十分に利用しない。
【0019】
仏国特許発明第1557501号明細書にて説明されるような変換器も知られている。このタイプのモジュラーマルチレベル変換器の挙動は、上記直流電源供給網と並列配置される仮想キャパシタの挙動と等価である。この変換器の内部エネルギーを調整することにより、上記仮想キャパシタの上記キャパシタンスを実質的に変化させることができるようになる。その利点は、上記直流電源供給網に作用することができ、かつ上記サブモジュールの上記キャパシタの上記合計電圧と上記網の上記電圧の間の切断を維持しながら上記直流電源供給網の安定性に寄与することができることである。
【0020】
仏国特許発明第1557501号明細書の上記課題解決法の欠点は、このタイプの変換器が、多数の中間媒介変数を使用する多くの計算ステップを伴うことである。また、上記内部エネルギーの調整は、実現するには長くかつ複雑であり、資源に関してコストがかかることが分かっている。また、上記直流電源供給網上で中断がある場合、従来技術に係るこのような変換器の上記内部エネルギーを制御することは特に困難になり、さらには不可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】仏国特許発明第1557501号明細書
【非特許文献】
【0022】
【文献】Control of DC bus voltage with a Modular Multilevel Converter(Samimi et al.、PowerTech conference、 2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、モジュラーマルチレベル変換器(MMC)であって、当該変換器の内部エネルギーの容易な調整を可能にする当該変換器の制御モジュールを備えるモジュラーマルチレベル変換器を提案することである。別の目的は、よりロバスト性のある変換器であって、上記直流電源供給網上に中断があっても当該変換器の内部エネルギーを効果的に調整するための変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
これを達成するため、本発明は、直流電源供給網に接続されるように意図されるいわゆる直流部及び交流電源供給網に接続されるように意図されるいわゆる交流部を含む、交流電圧を直流電圧に変換、及び、その逆に変換するためのモジュラーマルチレベル電圧変換器に関し、前記変換器は、複数のレッグを含み、各レッグは、上側アーム及び下側アームを含み、各アームは、複数のサブモジュールであって、各サブモジュールに固有の制御部によって個別に制御可能な複数のサブモジュールを含み、各サブモジュールは、当該サブモジュールの前記制御部が被制御状態にあるときに前記アームにおいて直列接続可能なキャパシタを含み、各アームは、当該アームにおいて直列に置かれるキャパシタの数によって決まるデューティサイクルに関係付けられるモデル化電圧源によってモデル化することができ、各モデル化電圧源は、前記アームの合計キャパシタンスに対応するモデル化キャパシタに並列接続される。
【0025】
前記変換器は、調節可能な入力パラメータを有する関数の適用による前記変換器の内部コマンド設定値のためのコンピュータを含む前記変換器の制御モジュールを含む。
【0026】
上記変換器の一般的な特徴によれば、前記変換器の前記制御モジュールは、各モデル化キャパシタの端子間における電圧に応じて動作電力設定値を与えるように構成されているエネルギー管理モジュールをさらに含み、前記動作電力設定値は、前記交流電源供給網に伝達すべき電力設定値を決定するために使用され、前記制御モジュールは、前記内部コマンド設定値及び前記交流電源供給網に伝達すべき前記電力設定値に応じて、前記直流電源供給網への前記変換器の接続点における電圧及び各モデル化キャパシタの前記端子間における前記電圧を調整するように構成されている。
【0027】
上記コンピュータの上記調節可能な入力パラメータは、上記内部エネルギーの調整動作中はいつでも設定することができ、ユーザによって容易に行われることができる。上記内部コマンド設定値は、様々な種類の大きさに関係付けることができる。非制限的に、上記内部コマンド設定値は、内部電力設定値であることができ、又は電流設定値であることもできる。上記コンピュータによって計算される上記内部コマンド設定値は、上記入力パラメータによって決まる。また、上記ユーザは、上記変換器の上記内部コマンド設定値に直接作用することができ、したがって、上記直流電源供給網への上記変換器の上記接続点における上記電圧及び各モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧を調整することができる。
【0028】
上記ユーザは、上記直流電源供給網上の中断に応じて上記入力パラメータをさらに調節して上記直流電源供給網を安定させることができる。
【0029】
非制限的に、上記モジュラーマルチレベル変換器は、その上記制御モジュールが上記のようなコンピュータを備え、上記直流電源供給網と並列配置される仮想キャパシタの挙動と同じように挙動する。上記コンピュータの上記調節可能な入力パラメータを調整することにより、上記仮想キャパシタの上記キャパシタンスを実質的に変化させる。その利点は、上記サブモジュールの上記キャパシタの合計電圧と上記直流電源供給網の電圧の間の切断を維持しながら上記直流電源供給網に作用することができることである。
【0030】
上記直流電源供給網と実際に並列に設置されるキャパシタとは対照的に、上記仮想キャパシタはコストがかからず、劣化することがない。特に、本発明に係る上記調節可能な仮想キャパシタは、実在のキャパシタに関しては物質的に不可能である非常に高いキャパシタンス値を持つことができる。
【0031】
上記サブモジュールは、好ましくは、上記サブモジュールが上記被制御「オン」状態で制御されるべきか上記非制御「オフ」状態で制御されるべきかによって直列に上記関連するアームの上記サブモジュールの上記キャパシタを置く又は置かないための二つの絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いて制御される。
【0032】
各アームは、キャパシタンスCtotのモデル化キャパシタに並列接続されるモデル化電圧源によってモデル化することができる。一つのアームの上記サブモジュールの上記キャパシタの上記電圧の合計はvcΣとして表され、上記モデル化電圧源と並列の上記関連するモデル化キャパシタの上記端子における上記電圧がvcΣであるようにする。
【0033】
上記モデル化電圧源に接続される上記デューティサイクルαは、好ましくは、次式によって計算される。
【数2】
nは、上記関連するアームにおいて上記「オン」状態に接続されるサブモジュールの数であり、Nは、上記アームにおけるサブモジュールの数である。
【0034】
また、本発明により、上記エネルギー管理モジュールは、上記交流電源供給網に伝達すべき電力設定値P acを提供し、したがって、この設定値から、各モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧をリンクする。また、このモジュールは、上記変換器の上記交流部に存在することによって上記変換器の上記内部エネルギーの調整に寄与する。上記エネルギー管理モジュールの一つの利点は、上記直流電源供給網上又は上記変換器の上記直流部内において中断がなくて済むことである。実際、上記エネルギー管理モジュールは、上記直流部における中断とは関係なく、上記変換器の上記交流部における電力の調整を可能にする。したがって上記変換器のロバスト性が向上する。
【0035】
上記直流電源供給網への上記変換器の上記接続点における上記電圧と各モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧の両方の調整は、上記直流電源供給網の安定性にさらに作用することができる。これは、上記直流電源供給網上に突然現れかつ当該網上で電圧の著しい変化を生じる可能性のある電力のどのような中断も抑制する。
【0036】
有利には、前記コンピュータは、導関数及びフィルタリング関数の適用によって前記内部コマンド設定値を計算するように構成されている。一つの利点は、このようなフィルタリング関数の適用が計算資源をほとんど消費しないことである。また、フィルタリングは、被制御時の上記変換器を損傷しかねない測定ノイズがなくて済む。
【0037】
上記フィルタリング関数は、好ましくは最上位のフィルタであり、測定ノイズが一層効果的に除去されることを可能にする。
【0038】
有利には、前記調節可能な入力パラメータは、調節可能な仮想慣性係数kVCである。また、このパラメータkVCを修正することは、上記仮想キャパシタの上記キャパシタンスを修正すること、したがって、上記直流電源供給網の上記安定性に寄与することに実質的に等しい。一つの利点は、上記変換器MMCの上記内部エネルギーの上記制御におけるさらなる自由度を提案することである。上記仮想キャパシタの上記キャパシタンスは、特に、さらなる材料規制がなく非常に高い値を持つことができる。
【0039】
第一の変形によれば、前記内部コマンド設定値は、内部電力設定値P である。この構成では、上記変換器は電力に関して制御される。一つの利点は、上記コンピュータが電力設定値を直接提供し、特に、従来技術の上記文書における場合のような上記変換器の内部エネルギーの設定値の中間計算ステップがなくて済むことである。したがって、この内部電力設定値を決定することは、上記内部エネルギーを調整することと同様に容易である。
【0040】
特に有利には、前記コンピュータが、次の関数に従って前記変換器の前記内部電力設定値P を計算するように構成されている。
【数3】
eq=6Ctotであり、Ctotは前記モデル化キャパシタの一つのアームにおける合計キャパシタンスであり、vdcは、前記直流電源供給網への前記変換器の前記接続点における前記電圧であり、τは時定数である。分子におけるsは導関数を表し、フィルタリング関数は
【数4】
から構成される。
【0041】
前記仮想キャパシタの上記CVCは、次のように表されることが分かる。
【数5】
【0042】
前記内部電力設定値P は、好ましくは、前記直流電源供給網に伝達すべき電力設定値P dcを決定するために使用される。P dcで表されるこの電力の決定を通して、上記コンピュータが、上記変換器の上記直流部上に存在することによって、上記内部電力の調整、したがって上記変換器の上記内部エネルギーの調整に寄与することが分かる。一つの利点は、上記交流電源供給網上又は上記変換器の上記交流部内における中断の場合に、上記コンピュータが、上記変換器の上記直流部において上記内部電力設定値を供給することによって、上記直流電源供給網への上記変換器の上記接続点における上記電圧及び各モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧を常に調整することである。その結果、上記直流供給網を安定させる上述の仮想キャパシタンスの効果が保持される。したがって上記変換器の上記ロバスト性が向上する。
【0043】
第二の変形によれば、前記内部コマンド設定値は、内部電流設定値I である。この構成では、上記変換器は電流に関して制御される。
【0044】
有利には、前記コンピュータは、次の関数に従って前記内部電流設定値I を計算するように構成されている。
【数6】
eq=6Ctotであり、Ctotは前記モデル化キャパシタの一つのアームにおける合計キャパシタンスであり、vdcは、前記直流電源供給網への前記変換器の前記接続点における前記電圧であり、τは時定数である。
【0045】
好ましくは、前記内部電流設定値I は、前記直流電源供給網に伝達すべき電流設定値I dcを決定するために使用される。この電流設定値I dcの決定を通して、上記コンピュータが、上記変換器の上記直流部上に存在することによって、上記電流の調整、したがって上記変換器の上記内部エネルギーの調整に寄与することが分かる。
【0046】
その結果、上記直流供給網を安定させるための上述の仮想キャパシタンスの効果は、上記交流電源供給網上又は上記変換器の上記交流部内にどのような中断があっても、保持される。したがって上記変換器の上記ロバスト性が向上する。
【0047】
特定の一実施形態において、前記エネルギー管理モジュールは、二乗した各モデル化キャパシタの前記端子間における電圧設定値と、前記モデル化キャパシタの前記端子間における前記電圧の二乗の平均との比較結果を入力として受け取る。上記エネルギー管理モジュールは、したがって、二乗した各モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧を、この電圧の設定値から、リンクする。特に、各モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧設定値v cΣは次のように表される。
【数7】
Σは、任意に選択される内部エネルギーの設定値である。
【0048】
前記制御モジュールは、好ましくは、電流idiff及びigd並びに電圧vdiff及びvgdにおける中間媒介変数を制御するように変数に変化を起こすように構成され、idiff及びvdiffは、前記直流電源供給網に接続されており、igd及びvgdは、前記交流電源供給網に接続されている。
【0049】
非制限的に、交流エネルギーへの直流エネルギーの変換器の場合、これらの変数は、次の形で上記変換器の内部エネルギーの変化を表す。
【数8】
【0050】
この式は、特に、上記直流網に接続されかつ上記直流部の電力に対応する
【数9】
という項に関連する入力における想像上の直流部、及び上記交流網に接続されかつ上記交流部の上記電力に対応する
【数10】
という項に関連する出力における想像上の交流部への上記変換器MMCの分解を反映している。
【0051】
有利には、前記制御モジュールは、前記電流igdに対応する設定値i gdを入力として有する前記電流igdの調整器を含む。当該調整器は、上記電流igdをその設定値i gdに向かわせることによって上記igdをリンクする。上記変数igdを調整することは、上記変換器の上記構成に従って入力又は出力において交流電力の伝送を調整することに等しい。
【0052】
有利には、前記制御モジュールは、前記電流idiffに対応する設定値i diffを入力として有する前記電流idiffの調整器を含む。当該調整器は、上記電流idiffをその設定値i diffに向かわせることによって上記idiffをリンクする。上記変数idiffを調整することは、上記変換器の上記構成に従って入力又は出力において直流電力の伝送を調整することに等しい。
【0053】
非制限的に、上記変数igd及びidiffは別々に制御されることができる。idiff及びigdを調整することにより、それぞれ入ってくる電力及び出ていく電力の伝送が調整され、したがって、上記サブモジュールの上記キャパシタに貯蔵される上記変換器の上記内部エネルギーが制御される。
【0054】
好ましくは、前記制御モジュールは、前記直流電源供給網への前記変換器の前記接続点における電圧設定値、及び、前記直流電源供給網上で集められる前記直流電源供給網への前記変換器の前記接続点における電圧値に応じて、前記変換器の前記直流電圧の調整のための電力設定値を決定するように構成されている前記直流電源供給網への前記変換器の前記接続点における前記電圧の調整器を含む。この調整器の一つの利点は、当該調整器が、上記直流電源供給網への上記変換器の上記接続点における上記電圧vdcを、その値を上記直流電源供給網への上記変換器の上記接続点における上記電圧設定値v dcに向かわせることによって、リンクすることができることである。
【0055】
本発明は、モジュラーマルチレベル電圧変換器の制御プロセスにも関し、前記変換器は、交流電圧を直流電圧に変換、及び、その逆に変換し、かつ、直流電源供給網に接続されるように意図されるいわゆる直流部及び交流電源供給網に接続されるように意図されるいわゆる交流部を含み、
前記変換器は、複数のレッグを含み、各レッグは、上側アーム及び下側アームを含み、各アームは、複数のサブモジュールであって、各サブモジュールの制御部によって個別に制御可能な複数のサブモジュールを含み、該サブモジュールの前記制御部が被制御状態であるときに前記アームにおいて直列接続されるキャパシタを含み、各アームは、当該アームにおいて直列に置かれるキャパシタの数によって決まるデューティサイクルに関係付けられるモデル化電圧源によってモデル化することができ、各モデル化電圧源は、前記アームの合計キャパシタンスに対応するモデル化キャパシタに並列接続され、前記プロセスは、調節可能な入力パラメータを有する関数の適用による前記変換器の内部コマンド設定値の計算をさらに含む、変換器の制御プロセスにおいて、
各モデル化キャパシタの端子間における電圧に応じて動作電力設定値を決定するステップ、
前記動作電力設定値から前記交流電源供給網に伝達すべき電力設定値を決定するステップ、及び、
前記内部コマンド設定値及び前記交流電源供給網に伝達すべき前記電力設定値に応じて、前記直流電源供給網への前記変換器の接続点における電圧及び各モデル化キャパシタの前記端子間における前記電圧を調整するステップ
を含む。
【0056】
有利には、前記調節可能な入力パラメータは、調節可能な仮想慣性係数kVCである。
【0057】
本発明は、上記に定義されたようなモジュラーマルチレベル変換器の制御モジュールにも関し、調節可能な入力パラメータを有する関数の適用による前記変換器の内部コマンド設定値のためのコンピュータを含み、当該制御モジュールは、各モデル化キャパシタの前記端子間における前記電圧に応じて動作電力設定値を与えるように構成されているエネルギー管理モジュールをさらに含み、前記動作電力設定値は、前記交流電源供給網に伝達すべき電力設定値を決定するために使用され、当該制御モジュールは、前記内部コマンド設定値及び前記交流電源供給網に伝達すべき前記電力設定値に応じて、前記直流電源供給網への前記変換器の前記接続点における前記電圧及び各モデル化キャパシタの前記端子間における前記電圧を調整するように構成されている。
【0058】
本発明は、添付の図面を参照して非制限的な例として与えられる本発明の実施形態の下記の説明からよりはっきりと理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、既に説明されているが、従来技術に係る三相モジュラーマルチレベル変換器を示す。
図2図2は、既に説明されているが、従来技術に係るモジュラーマルチレベル変換器のサブモジュールを示す。
図3図3は、既に説明されているが、従来技術に係るMMC変換器のアームと等価の回路を示す。
図4図4は、既に説明されているが、従来技術に係るモジュラーマルチレベル変換器の等価構成を示す。
図5図5は、本発明に係るモジュラーマルチレベル変換器の等価かつ概略的な図を示す。
図6図6は、本発明に係る制御モジュールを備えるモジュラーマルチレベル変換器の第一の実施形態を示す。
図7図7は、図6の上記変換器のためのコンピュータを示す。
図8図8は、従来技術の変換器に関する、中断に応じた直流電源供給網及び交流電源供給網の電力の放出を示す。
図9図9は、本発明の変換器に関する、中断に応じた直流電源供給網及び交流電源供給網の電力の放出を示す。
図10図10は、従来技術の変換器に関する、上記中断に応じた内部エネルギーの放出を示す。
図11図11は、本発明の変換器に係る、上記中断に応じた内部エネルギーの放出を示す。
図12図12は、本発明に係る制御モジュールを備えるモジュラーマルチレベル変換器の第二の実施形態を示す。
図13図13は、図12の上記変換器のためのコンピュータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は、制御モジュールを備えるモジュラーマルチレベル変換器に関し、その等価挙動の回路が図5に示されている。非制限的に、この図は、交流電力への直流電力のMMC変換器10を示す。この例では、この変換器10が、当該図面の左側部で交流電源供給網110に接続される交流部10Aを含むことがはっきりと分かる。当該図面の右側部は、上記変換器10が直流電源供給網120に接続される直流部10Cを含むことを示す。
【0061】
調節可能なキャパシタンスを有する仮想キャパシタCVI(大まかに言って、また分かり易さを理由として、同じ記号を使用して上記キャパシタ及びそのキャパシタンスを示す)は、上記直流電源供給網120に並列接続されることが分かる。仮想とは、このキャパシタが、上記変換器10に物理的に植込まれていないことを意味し、上記変換器10は、サブモジュールのキャパシタのみを含む。むしろ、本発明に係る上記制御モジュールは、この仮想キャパシタを備える変換器の変換器動作と類似の変換器動作を達成する、すなわち、図5には記載されず、かつ調節可能なパラメータである仮想慣性係数kVCを調整することにより、上記直流電源供給網120の安定性を向上させ、上記変換器の上記挙動は、調節可能なキャパシタンスの仮想キャパシタCVIが上記直流電源供給網120と並列に設置されている変換器の挙動と類似である。
【0062】
図5の上記図面は、上記変換器10と上記直流及び交流の電源供給網120及び110の間の電力の伝送も示す。このように、Pは、上記直流電源供給網の他のステーションから来る電力であり、上記直流網上での電力の突然の中断を記号化しており、Pdcは、上記直流電源供給網120から取り出される電力であり、Pacは、上記交流電源供給網110に伝達される電力であり、Pは、上記直流電源供給網120の上記キャパシタンスCdcによって吸収される電力であり、Pは、上記仮想キャパシタCVIによって吸収される上記電力とみなすことができる。また、vdcは、上記直流電源供給網への上記変換器の接続点における電圧である。iは、上記交流電源供給網の電流であり、idcは、上記直流電源供給網の電流である。
【0063】
本発明に係る上記変換器MMC10では、従来技術の変換器MMCとは対照的に、Pで表す上記直流電源供給網120の余剰電力は、上記仮想キャパシタCVIによって吸収され、上記変換器が上記サブモジュールの上記キャパシタに内部エネルギーWΣを貯蔵することを可能にする。
【0064】
図6の例は、本発明に係る制御モジュール20を備えるモジュラーマルチレベル変換器10の第一の実施形態を示す。この例では、当該変換器は電力に関して制御される。閉ループでリンクすることによって、上記変換器MMC10は、上記直流電源供給網120への上記変換器の上記接続点における上記電圧vdc、及び各モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧vcΣを調整するように構成されている。
【0065】
上記制御モジュール20は、上記アームの上記サブモジュールの上記キャパシタに関する内部電力設定値P を計算するように構成されているコンピュータ22を含む。この内部電力設定値P は、上記コンピュータ22の入力における調節可能な仮想慣性係数kVCから、及び二乗した上記直流電源供給網120への上記変換器の上記接続点における上記電圧vdcの公称値から計算される。
【0066】
電力設定値P のためのコンピュータ22の一例を図7に示す。この図は、上記内部電力設定値P が次式に従って決定されることを示す。
【数11】
eq=6Ctotであり、Ctotは、上記モデル化キャパシタの一つのアームにおける合計キャパシタンスであり、vdcは、上記直流電源供給網への上記変換器の上記接続点における上記電圧であり、τは時定数である。分子のsは導関数を表し、フィルタリング関数は
【数12】
から構成される。
【0067】
特に、本発明に係る上記制御モジュール20は、従来技術で実行される内部エネルギーの設定値を決定するための中間ステップがなくて済む。
【0068】
上記内部電力設定値P は、上記直流電源供給網に伝達すべき電力設定値P dcを決定するために使用される。上記コンピュータ22は、上記変換器の上記直流部10C上に存在することによって、上記内部電力の調整に寄与し、したがって上記変換器10の上記内部エネルギーの調整に寄与することが分かる。一つの利点は、上記交流電源供給網110上又は上記変換器の上記交流部10A内での中断の場合に、上記コンピュータ22が、上記変換器の上記直流部において上記直流電源供給網に伝達すべき上記電力設定値P dcを提供することによって、上記直流電源供給網への上記変換器の上記接続点における上記電圧vdc、及び各モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧vcΣを常に調整することである。
【0069】
また、上記変換器10の上記制御モジュール20は、動作電力設定値P を与えるように構成されているエネルギー管理モジュール24も含む。当該エネルギー管理モジュール24は、二乗した各モデル化キャパシタの上記端子間における電圧設定値v cΣと、同様に二乗した上記モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧の二乗の平均との間の比較を入力として受け取る。本発明の範囲から逸脱することなく、当該平均は様々な方法で計算されることができる。図6に示す上記非制限的な例では、当該平均は、6で割った(上記変換器が六つのアームを含んでいる)各アームにおける上記モデル化キャパシタの上記電圧の二乗の合計として計算される。
【0070】
各モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧設定値v cΣは、次のように表される。
【数13】
【0071】
各モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧設定値v cΣは、したがって、任意に定められた上記変換器の内部エネルギーの設定値W Σから得られる。
【0072】
上記動作電力設定値P は、上記交流電源供給網110に伝達すべき電力設定値P acを決定するために使用される。上記モジュール24は、上記変換器の上記交流部10Aに存在することによって上記変換器10の上記内部エネルギーの管理を可能にすることが分かる。一つの利点は、上記直流電源供給網120上又は上記変換器10の上記直流部10C内に中断が存在していても、上記エネルギー管理モジュール24が、上記変換器10の上記交流部において上記交流電源供給網に伝達すべき上記電力設定値P acを提供することによって、上記直流電源供給網120への上記変換器の上記接続点における上記電圧vdc、及び各モデル化キャパシタの上記端子における上記電圧vcΣを効果的に調整することである。
【0073】
図6は、上記制御モジュール20が、二乗した上記直流電源供給網120への上記変換器10の上記接続点における電圧設定値v acと、同様に二乗した上記直流電源供給網上で集められる値vdcとの間の比較結果を入力として有する、上記直流電源供給網120への上記変換器の上記接続点における電圧調整器26を含むことを示す。上記直流電源供給網120への上記変換器の上記接続点における上記電圧調整器26は、上記変換器10の直流電圧の調整のための電力設定値P を与える。上記変換器の上記直流電圧の調整のための上記電力設定値P は、次に、上記交流電源供給網110に伝達すべき上記電力設定値P acを決定するために上記動作電力設定値P と比較される。
【0074】
同様に、上記内部電力設定値P は、上記直流電源供給網に伝達すべき上記電力設定値P dcを決定するために上記変換器の上記直流電圧の調整のための上記電力設定値P と比較される。
【0075】
また、上記制御モジュール20は、入力にて設定値i gdを有する交流電流igdの調整器28、及び入力にて設定値i diffを有する電流idiffの調整器30を含む。
【0076】
図3によれば、モデル化電圧源がそれらの端子に電圧vmxi(xは上記アームが上側であるか下側であるかを示し、iは上記レッグを示す)を含むようにモデル化キャパシタに並列接続される当該モデル化電圧源によって一つのアームの上記サブモジュールをモデル化することができることが知られている。上記電流調整器28及び30は、上記モデル化電圧源の上記端子間における電圧vmxiを調整するために制御アルゴリズム(「BCA:Balancing Control Algorithm」)を使用して変調部材32及び二つの平衡部材34a及び34bによって変数の変化に続いて使用される電圧設定値v diff及びv を与える。これにより、上記アームのサブモジュールが制御される、又は制御されない。したがって、上記モデル化キャパシタの上記端子間における電圧vcΣxiは、上記直流電源供給網への上記変換器の上記接続点における上記電圧vdcとともに制御される。
【0077】
したがって、上記仮想慣性係数kVCを上記コンピュータの入力にて変化させることにより、上記直流電源供給網の上記電圧vdc及びこの直流電源供給網の上記慣性に直接影響を及ぼすことができる。
【0078】
図6の図面は、上記変換器の制御のための有効電力の制御を示す。非制限的に、無効電力の制御は、「仮想キャパシタ」の効果とは関係なく、有効電力の制御と平行して提供することができる。
【0079】
図8から図11は、本発明に係る制御モジュール20を備えるモジュラーマルチレベル変換器10の挙動のシミュレーション、特に電力の制御によるシミュレーションの結果を示す。このシミュレーションでは、テストシステムが作り出されており、上記変換器の上記直流部が、直流電源供給網120をシミュレーションする理想的な直流電力源に接続され、上記変換器の上記交流部が、交流電源供給網110をシミュレーションする交流電力源に接続される。上記シミュレーションした直流網に電力段階を強制し、上記直流電源供給網上での中断をシミュレーションする。
【0080】
図8は、従来技術の変換器に関して、上記強制中断に応じての上記交流電源供給網の上記電力Pacの放出を点線で示し、上記直流電源供給網の上記電力Pdcの放出を実線で示す。上記直流電源供給網の上記電力Pdcのこの放出は、「仮想キャパシタンス」の効果を反映し、上記変換器は、上記直流電源供給網と並列配置される仮想キャパシタの挙動と等価の挙動を有する。図9は、本発明に係る変換器に関して、同じ大きさを示す。
【0081】
図8及び図9は、上記直流電源供給網上に中断がある場合、上記直流電源供給網の上記電力Pdcの上記放出が、従来技術の上記変換器と本発明に係る上記変換器とで同一であることを開示している。本発明に係る上記変換器は、したがって、「仮想キャパシタンス」効果を生み、上記直流電源供給網と並列配置される仮想キャパシタと解される。
【0082】
図10は、強制中断に応じての、従来技術の変換器の上記サブモジュールの上記キャパシタに貯蔵される上記内部エネルギーの放出を示す。
【0083】
図11は、強制中断に応じての、本発明に係る変換器の上記サブモジュールの上記キャパシタに貯蔵される上記内部エネルギーの放出を示す。
【0084】
本発明に係る上記変換器により、上記エネルギーが最も良好に調整されること、及び上記エネルギーが、従来技術におけるように、突然かつ不意に増大することがないことが明らかである。特に、本発明により、上記変換器の上記内部エネルギーは、より急速にその公称値に向かう。上記変換器の上記内部エネルギーは、したがって、本発明に係る上記制御モジュールにより、特に上記エネルギー管理モジュールにより、最も良好に制御される。実際、後者は、上記変換器の上記交流部に存在し、上記直流電源供給網上に中断があっても上記変換器の上記内部エネルギーを効果的に制御する。
【0085】
図12は、本発明に係る制御モジュール20′を備える本発明に係る変換器10′の第二の実施形態を示す。この例では、当該変換器は電流に関して制御される。図6の上記例におけるように、上記制御モジュールは、動作電力設定値P を与えるように構成されているエネルギー管理モジュール24′を含む。上記制御モジュールは、上記交流電流igdの調整器28′、変調部材32′、及び二つの平衡部材34a′及び34b′も含む。
【0086】
この実施形態では、上記制御モジュール20′は、上記アームの上記サブモジュールの上記キャパシタに関する内部電流設定値I を計算するように構成されているコンピュータ22′を含む。
【0087】
このようなコンピュータが図13に示されている。この図から明らかなように、上記内部電流設定値I は、上記コンピュータ22′の入力における調節可能な仮想慣性係数kVC、及び上記直流電源供給網120への上記変換器の上記接続点における上記電圧vdcの公称値から計算される。このためのコンピュータ22′は、導関数及び最上位のフィルタも実行する。
【0088】
上記制御モジュール20′は、上記直流電源供給網120への上記変換器10の上記接続点における電圧設定値v dcと、上記直流電源供給網上で集められる値vdcとの間の比較結果を入力として受け取る上記直流電源供給網120への上記変換器の上記接続点における上記電圧の調整器26′をさらに含む。上記調整器26′は、上記変換器10の上記直流電圧を調整するための電力設定値P を与える。
【0089】
上記制御モジュール20′は、電流動作設定値I を決定するために、上記直流電源供給網120への上記変換器の上記接続点における上記電圧vdcの公称値で上記電力P を割るためのディバイダモジュール36をさらに含む。上記電流動作設定値I は、次に、上記直流電源供給網に伝達すべき電流設定値I dcを決定するために上記内部電流設定値I と比較される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13