(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】医療容器内に含まれた組成物を注射するための支援型注射デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20221101BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20221101BHJP
A61M 5/315 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
A61M5/20 510
A61M5/24
A61M5/315 500
(21)【出願番号】P 2020502638
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2018069700
(87)【国際公開番号】W WO2019016345
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-09
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランク カレル
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ガリアーノ
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-531260(JP,A)
【文献】特表2016-533219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0165426(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0035634(US,A1)
【文献】米国特許第02585815(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/315
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療容器(30)内に含まれた組成物を注射するための支援型注射デバイス(1)であって、
本体(10)であって、前記医療容器(30)を、前記本体(10)に対して固定された位置に受け入れるように構成される、本体(10)と
、
ばね懸架式ピストンロッド(40)であって、前記本体(10)内側でばね軸(A)に沿って、近位静止位置と、前記ピストンロッド(40)が前記医療容器(30)のストッパ(34)と係合し、前記ストッパ(34)を前記医療容器(30)に押し込む遠位動作位置との間で並進的に移動可能である、ばね懸架式ピストンロッド(40)と、
前記ばね軸(A)から第1の距離のところに、前記ばね軸(A)と直交する第1の枢動軸(B)を中心に前記本体(10)上に枢動可能に装着されたレバー(50)であって、ユーザによって押さえられるように構成された作動ゾーン(51)を備え、前記作動ゾーンは、前記ばね軸(A)から第2の距離のところに、前記ばね軸(A)に対して前記第1の枢動軸(B)の反対側にある、レバー(50)と、
前記ばね軸(A)と直交する第2の枢動軸(C)によって前記レバーに結合された選択的ブロッキングシステム(60)と
を備え、
前記レバー(50)は、前記選択的ブロッキングシステム(60)が前記ピストンロッド(40)と係合して前記ピストンロッド(40)のいかなる並進移動も防止する静止位置と、前記選択的ブロッキングシステム(60)が前記ピストンロッド(40)を解放して前記ピストンロッド(40)がばね力下で前記遠位動作位置に向かって移動することを可能にする第2の位置との間で
繰り返し枢動
することが可能である支援型注射デバイス(1)。
【請求項2】
前記第2の距離は、前記第1の距離より大
きい請求項1に記載の支援型注射デバイス。
【請求項3】
前記第2の枢動軸(C)は、前記ばね軸(A)と交差する請求項1または2に記載の支援型注射デバイス。
【請求項4】
前記ピストンロッド(40)には、その外壁に沿って延びる歯付きラック(43)が設けられ、前記選択的ブロッキングシステム(60)は、
回転可能に移動可能な歯車(75)であって、
回転可能に移動可能なはめば歯車である第1の部分(76)であって、前記ピストンロッド(40)の前記歯付きラック(43)と噛み合うように適合された歯(77)を含む、第1の部分(76)と、
前記第1の部分(76)と同軸であり、前記第1の部分(76)と共に回転可能に移動可能な第2の部分(78)であって、湾曲した表面(79)を備える、第2の部分(78)と
を備える、歯車(75)と、
前記第2の枢動軸(C)によって前記レバー(50)に結合された第1の端部(71)と、前記歯車の前記第2の部分(78)を受け入れる穴(73)が設けられた第2の端部(72)とを含む連結ロッド(70)であって、前記連結ロッド(70)は、前記レバー(50)が前記静止位置にあり、前記穴(73)の内側表面(74)が前記歯車(75)の前記第2の部分(78)の前記湾曲した表面(79)と係合して前記歯車(75)を摩擦によってブロックし、それによって前記ピストンロッド(40)をブロックする、第1の位置と、前記レバー(50)が前記動作位置であり、前記穴(73)の前記内側表面(74)が前記歯車(75)の前記第2の部分(78)の前記湾曲した表面(79)から係合解除して前記歯車(75)の回転を可能にし、それによって前記ピストンロッド(40)が移動することを可能にする、第2の位置との間で前記レバー(50)によって移動可能である、連結ロッド(70)と
を備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の支援型注射デバイス(1)。
【請求項5】
前記歯車(75)の前記第2の部分(78)の直径に対する前記歯車(75)の前記第1の部分(76)の直径の比は、2から3の間に含まれる請求項4に記載の支援型注射デバイス(1)。
【請求項6】
前記歯車(75)の前記第2の部分(78)の前記湾曲した表面(79)は、エポキシ樹脂、プラスチック材料、鋼、アルミニウム、またはゴムから選択された材料で作製され、前記連結ロッド(70)の前記穴(73)の前記内側表面(74)は、エポキシ樹脂、プラスチック材料、鋼、またはゴムから選択された材料で作製される請求項4または5に記載の支援型注射デバイス(1)。
【請求項7】
前記ピストンロッド(40)には、その外壁に沿って延びる歯付きラック(43)が設けられ、前記選択的ブロッキングシステム(60)は、
少なくとも1つの歯(87)が設けられた表面を備える歯止め(86)と、
前記第2の枢動軸(C)によって前記レバー(50)に結合された第1の端部(81)と、前記歯止め(86)に結合された第2の端部(85)とを含む連結ロッド組立体(80、83)であって、前記連結ロッド組立体(80、83)は、前記レバー(50)が前記静止位置にあり、前記歯止め(86)が前記ピストンロッド(40)の前記歯付きラック(43)と噛み合って前記ピストンロッド(40)をブロックする第1の位置と、前記レバー(50)が前記動作位置にあり、前記歯止め(86)が前記ピストンロッド(40)の前記歯付きラック(43)から係合解除して前記ピストンロッド(40)が移動するのを可能にする第2の位置との間で前記レバー(50)によって移動可能である、連結ロッド組立体(80、83)と
を備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の支援型注射デバイス(1)。
【請求項8】
前記本体(10)は、前記医療容器(30)の少なくとも一部分を受け入れ、前記医療容器(30)を前記ピストンロッド(40)の移動方向と位置合わせして保つように構成された容器ホルダシステム(20)であって、それにより、前記近位静止位置から前記遠位動作位置に移動するとき、前記ピストンロッド(40)は、前記医療容器(30)の前記ストッパ(34)と係合し、前記ストッパ(34)を前記医療容器(30)に押し込んで前記組成物を注射する、容器ホルダシステム(20)を備える請求項1乃至7のいずれか一項に記載の支援型注射デバイス(1)。
【請求項9】
前記容器ホルダシステム(20)は、
前記医療容器(30)の少なくとも一部分を前記ピストンロッド(40)の前記移動方向と位置合わせした位置に受け入れるように適合されたハウジング(22)につながる前記本体の遠位壁内に提供された開口部(15)と、
前記ハウジング(22)につながる前記本体(10)の外壁内に提供されたスロット(21)と、
前記スロット(21)に挿入されて前記医療容器(30)と接触し、前記医療容器(30)を前記ハウジング(22)内の固定された位置に維持するように適合されたインサート(24)と
を備える請求項8に記載の支援型注射デバイス(1)。
【請求項10】
前記容器ホルダシステム(20)は、
ハウジング(26)につながる前記本体(10)の外壁内に提供されたスロット(25)であって、前記医療容器(30)の少なくとも一部分を受け入れ、前記医療容器(30)を、前記ピストンロッド(40)の前記移動方向と位置合わせした固定された位置に維持するように構成される、スロット(25)と、
前記本体(10)の遠位壁内に提供され、前記スロット(25)と連続しており、前記スロット(25)から前記遠位壁内に延びる貫通溝(27)であって、前記溝(27)は、前記スロット(25)を介して前記ハウジング(26)に挿入される前記医療容器(30)を案内するように構成される、貫通溝(27)と
を備える請求項8に記載の支援型注射デバイス(1)。
【請求項11】
前記デバイス(1)は、手持ち式である請求項1乃至10のいずれか一項に記載の支援型注射デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療容器(medical container)内に含まれた組成物(composition)を注射するための支援型注射デバイス(assisted injection device)に関する。注射デバイスは、ユーザが選択的に注射を可能にするか、または停止することによって注射を制御することを可能にし、組成物、特に高い粘性を有する組成物を注射するための労力を小さくする必要があるユーザにとって注射をより容易にすると共に、注射を実施する間、注射流量を制御する。
【背景技術】
【0002】
事前充填された注射デバイスは、薬物またはワクチンを患者に送達するための一般的な容器であり、シリンジ、カートリッジ、および自動注射器などを含む。これらは、通常、容器内に滑り係合(gliding engagement)するシーリングストッパを備え、容器は、医薬組成物によって充填されており、それによって患者にすぐに使用できる注射デバイスを施術者に提供する。
【0003】
容器は、実質的に円筒形状を有し、シーリングストッパによって停止させることができる近位端部と、医薬組成物が容器から排出される遠位端部と、容器の近位端部と遠位端部との間を延びる横壁とを備える。実際、シーリングストッパは、ピストンロッドによって圧力が及ぼされた際、容器の近位端部から容器の遠位端部に向かって移動することを目的としており、それによって容器内に含まれた薬物を排出する。
【0004】
患者の体に注射する直前にバイアル貯蔵された医薬組成物によって充填される空の注射デバイスに比べて、事前充填された注射デバイスの使用は、いくつかの利点につながる。特に、注射前の準備を限定することにより、事前充填された注射デバイスは、医療的投薬エラーを低減し、病原菌の汚染のリスクを最小限にし、施術者の使用利便性を高める。さらに、そのような事前充填された容器は、患者による自己投与を促し、簡易化することができ、この自己投与は、治療コストを低減し、患者の固守(adherence)を高めることを可能にする。最後に、事前充填された注射デバイスは、医薬組成物がバイアルから未充填の注射デバイスに移されるときに通常起こる、貴重な医薬組成物の損失を低減する。この結果、医薬組成物の所与の製造バッチあたりの可能な注射数をより多くし、したがって、購入および供給連鎖コストを低減する。
【0005】
特定の場合では、シリンジなどの手動注射デバイスによる容器内に含まれた医薬組成物の注射は、これを排出するためにピストンロッド上にかける必要がある力により、行うことが難しくなり得る。これは、たとえば、医薬組成物が高い粘性を有する場合、および/またはたとえば関節リュウマチまたはユーザの手もしくは指に影響するあらゆるタイプの疾患を患っている場合に、ピストンロッドを指で十分強く押すことができないユーザによって手動で注射が行われる場合に起こる。注射は、自己投与であってもよく、または健康管理専門家などのユーザによって別の人に対して実施されてもよい。健康管理専門家が粘性薬物の繰り返しの注射を患者に実施する場合、注射を行うためにプランジャロッド上にかけられる大きい力を求めて同じ姿勢を繰り返すと、反復運動過多損傷(repetitive strain injuries)を引き起こすことがある。
【0006】
自動注射器は、ユーザが医薬組成物の自動注射を実施することを支援することができる。これらは、通常、注射を開始するためにユーザが押さえる必要がある注射ボタンを備える。
【0007】
自動注射器によって行われる注射は、自動であり、これは、ユーザが注射ボタンを押さえてピストンを一旦移動させると、注射が開始し、医薬組成物の全体が注射されるまで続くことを意味する。
【0008】
その結果、ユーザがボタンを押すことによって一旦注射を始動させると、注射を停止し、再度再開することはできない。特に、2つの連続した手順間で注射を停止させながら、医薬組成物を少しずつ複数の注射手順で行うことも可能ではない。
【0009】
さらに、ユーザは、自動注射器で注射を実施する間、注射流量(injection rate)(または注射速度)を変更することはできない。言い換えると、注射を実施する間、注射流量を増大または低減することは可能ではない。
【0010】
注射の制御のこうした欠如は、ユーザに対して疼痛および不安を発生させる可能性があり、ユーザが注射を正しく実施できないことにつながり得る。
【0011】
さらに、手動注射デバイスと同様に、自動注射器は、主に注射機構によってピストンにかけられる力が不十分なことにより、高い粘性を有する医薬組成物を注射するにあたって困難に遭遇する可能性がある。故に、医薬組成物は、容器から排出されず、またはできても非常に低速で排出される。
【発明の概要】
【0012】
前述に鑑みて、医療容器内に含まれた医薬組成物を注射するための注射デバイスであって、ユーザが注射を制御すること、特に注射を停止し、次いで再度これを開始し、注射を実施する間、注射流量を調整することを可能にする、注射デバイスに対する強い必要性が存在する。また、特に医薬組成物が高い粘性を有する場合および/またはユーザの体力が低減している場合に、既存の注射デバイスと比べてより容易な医薬組成物の注射を可能にするような注射デバイスに対する必要性も存在する。
【0013】
本発明の目的は、したがって、知られているデバイスの欠点を克服する、医療容器内に含まれた医薬組成物を注射するための支援型注射デバイスを提供することである。
【0014】
そのような改良されたデバイスは、ユーザが容器内に含まれた医薬組成物の容易な注射を行うことを支援すると共に、注射を制御することも可能にする。
【0015】
本発明の1つの目的は、医療容器内に含まれた組成物を注射するための支援型注射デバイスであって、
- 本体であって、本体に対して固定された位置に医療容器を受け入れるように構成される、本体と、
- ばね懸架式ピストンロッド(spring-loaded piston rod)であって、本体内側でばね軸に沿って、近位の静止位置(rest position)と、ピストンロッドが医療容器のストッパと係合し、ストッパを医療容器に押し込む遠位動作位置(distal operative position)との間で並進的に(translationally)移動可能である、ばね懸架式ピストンロッドと、
- ばね軸から第1の距離のところに、ばね軸と直交する第1の枢動軸を中心に本体上に枢動可能に装着されたレバーであって、ユーザによって押さえられるように構成された作動ゾーン(actuation zone)を備え、前記作動ゾーンは、ばね軸から第2の距離のところに、ばね軸に対して第1の枢動軸の反対側にある、レバーと、
- ばね軸と直交する第2の枢動軸によって(by a second pivot axis)レバーに結合された選択的ブロッキングシステム(selective blocking system)と
を備え、
レバーは、選択的ブロッキングシステムがピストンロッドと係合してピストンロッドのいかなる並進移動も防止する静止位置と、選択的ブロッキングシステムがピストンロッドを解放してピストンロッドがばね力下で遠位動作位置に向かって移動することを可能にする第2の位置との間で枢動可能である、支援型注射デバイスである。
【0016】
本出願では、「遠位方向」は、本発明のデバイスが装着される医療容器に対する注射方向を意味するとして理解されるものとする。遠位方向は、注射中のプランジャロッドの進行方向に対応し、医療容器内に最初に含まれている医薬組成物は、前記医療容器から排出される。「近位方向」は、注射の前記方向の反対方向を意味すると理解されるものとする。
【0017】
本出願では、用語「直交する」は、直角で交差するそれぞれの軸に対して平行である、三次元空間を延びる2つの軸を示す。前記直交軸は、同じ平面に属し、したがって、交差することができ(この場合、これらは垂直である)、またはそうでなくてもよい。
【0018】
本発明のデバイスの他の任意選択の特徴によれば、
- 第2の距離は、第1の距離より大きく、好ましくは第1の距離より少なくとも2倍大きく、
- 第2の枢動軸は、ばね軸と直交し、
- ピストンロッドには、その外壁に沿って延びる歯付きラックが設けられ、選択的ブロッキングシステムは、
- 回転可能に移動可能な歯車であって、
・回転可能に移動可能なはめば歯車である第1の部分であって、ピストンロッドの歯付きラックと噛み合うように適合された歯を含む、第1の部分と、
・第1の部分(76)と同軸であり、第1の部分と共に回転可能に移動可能な第2の部分であって、湾曲した表面を備える、第2の部分と
を備える、回転可能に移動可能な歯車と、
- 第2の枢動軸によってレバーに結合された第1の端部と、歯車の第2の部分を受け入れる穴が設けられた第2の端部とを含む連結ロッドであって、レバーが静止位置にあり、穴の内側表面が歯車の第2の部分の湾曲した表面と係合して歯車を摩擦によってブロックし、それによってピストンロッドをブロックする、第1の位置と、レバーが動作位置であり、穴の内側表面が歯車の第2の部分の湾曲した表面から係合解除して歯車の回転を可能にし、それによってピストンロッドが移動することを可能にする、第2の位置との間でレバーによって移動可能である、連結ロッドと
を備え、
- 歯車の第2の部分の直径に対する歯車の第1の部分の直径の比は、好ましくは2から3の間に含まれ、
- 歯車の第2の部分の湾曲した表面は、エポキシ樹脂、プラスチック材料、鋼、アルミニウム、またはゴムから選択された材料で作製され、連結ロッドの穴の内側表面は、エポキシ樹脂、プラスチック材料、鋼、またはゴムから選択された材料で作製され、
- ピストンロッドには、その外壁に沿って延びる歯付きラックが設けられ、選択的ブロッキングシステムは、
- 少なくとも1つの歯が設けられた表面を備える歯止め(pawl)と、
- 第2の枢動軸によってレバーに結合された第1の端部と、歯止めに結合された第2の端部とを含む連結ロッド組立体であって、連結ロッド組立体は、レバーが静止位置にあり、歯止めがピストンロッドの歯付きラックと噛み合ってピストンロッドをブロックする第1の位置と、レバーが動作位置にあり、歯止めがピストンロッドの歯付きラックから係合解除してピストンロッドが移動することを可能にする第2の位置との間でレバーによって移動可能である、連結ロッド組立体と
を備え、
- 本体は、医療容器の少なくとも一部分を受け入れ、医療容器をピストンロッドの移動方向と位置合わせして(aligned with)保つように構成された容器ホルダシステムであって、それにより、近位静止位置から遠位動作位置に移動するとき、ピストンロッドは、医療容器のストッパと係合し、ストッパを医療容器に押し込んで組成物を注射する、容器ホルダシステムを備え、
- 容器ホルダシステムは、
- 医療容器の少なくとも一部分をピストンロッドの移動方向と位置合わせした位置に受け入れるように適合されたハウジングにつながる本体の遠位壁内に提供された開口部と、
- ハウジングにつながる本体の外壁内に提供されたスロットと、
- スロットに挿入されて医療容器と接触し、医療容器をハウジング内の固定された位置に維持するように適合されたインサートと
を備え、
- 容器ホルダシステムは、
- ハウジングにつながる本体の外壁内に提供されたスロットであって、医療容器の少なくとも一部分を受け入れ、医療容器を、ピストンロッドの移動方向と位置合わせして固定された位置に維持するように構成される、スロットと、
- 本体の遠位壁内に提供され、スロットと連続しており、スロットから遠位壁内に延びる貫通溝であって、溝は、スロットを介してハウジングに挿入される医療容器を案内するように構成される、貫通溝と
を備え、
- デバイスは、手持ち式であり、すなわち、使用中ユーザの片手で運ばれ、1つの場所から別の場所に移送するように構成される。デバイスの寸法および重量は、有利には、この目的に適合される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明のさらなる特徴および利点は、付属の図を参照して、後続の詳細な説明から明らかになるであろう。
【
図1】本発明の注射デバイスの実施形態の側面図である。
【
図2】第1の実施形態による選択的ブロッキングシステムを備える注射デバイスの構成要素の分解斜視図である。
【
図3A】第1の実施形態による選択的ブロッキングシステムがピストンロッドの移動をブロックしている、注射デバイスの第1の側部からの側部断面図である。
【
図3B】第1の実施形態による選択的ブロッキングシステムがピストンロッドの移動を可能にしている、注射デバイスの第1の側部からの側部断面図である。
【
図4A】第1の実施形態による選択的ブロッキングシステムがピストンロッドの移動をブロックしている、注射デバイスの第2の側部からの側部断面図である。
【
図4B】第1の実施形態による選択的ブロッキングシステムがピストンロッドの移動を可能にしている、注射デバイスの第2の側部からの側部断面図である。
【
図5】注射が終了し、医薬組成物の全体が医療容器から排出されている、
図3A、3B、4A、4Bに示す注射デバイスの第1の側からの側部断面図である。
【
図6】第1の実施形態による、注射デバイスの選択的ブロッキングシステムの斜視図である。
【
図7】第2の実施形態による、選択的ブロッキングシステムを備える注射デバイスの構成要素の分解斜視図である。
【
図8A】第2の実施形態による、選択的ブロッキングシステムがピストンロッドの移動をブロックしている、注射デバイスの第1の側部からの側部断面図である。
【
図8B】第1の実施形態による選択的ブロッキングシステムがピストンロッドの移動を可能にしている、注射デバイスの第1の側部からの側部断面図である。
【
図9A】第2の実施形態による選択的ブロッキングシステムがピストンロッドの移動をブロックしている、
図1に示すデバイスの第2の側部からの側部断面図である。
【
図9B】第2の実施形態による選択的ブロッキングシステムがピストンロッドの移動を可能にしている、
図1に示すデバイスの第2の側部からの側部断面図である。
【
図10】第2の実施形態による、注射デバイスの選択的ブロッキングシステムの斜視図である。
【
図11】第1の実施形態による、容器ホルダシステムを含むデバイスの側部断面図である。
【
図12】第2の実施形態による、デバイスの容器ホルダシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、医療容器内に含まれた組成物を注射するための支援型注射デバイスを提案する。
【0021】
注射前、医療容器は、注射されるように意図された組成物によって充填され、その中に挿入されたストッパによって停止されている。停止された医療容器は、次いで、デバイス上に装着されて注射組立体を構成し、組成物の注射を行うことができる。
【0022】
図1および2を参照して、支援型注射デバイス1は、ユーザの手で保持されるように適合された本体10を備える。この目的のために、本体の前側には、径方向に外方向に延びる本体の広がり部分12によって近位に限定された前部グリップ表面11が設けられる。同様に、本体の後側には、径方向に外方向に延びる本体の広がり部分14によって近位に限定された後部グリップ表面13が設けられる。故に、デバイス1を使用するとき、ユーザは、自らの指および手のひらを前部グリップ表面11および後部グリップ表面13それぞれに接触させ、その手の横側が広がり部分12、14と当接するように、本体10を容易に掴むことができ、こうしてデバイスの取り扱いを容易にする。
【0023】
医療容器は、近位端部31と、先端32および先端32上から延びる針33を有する遠位端部とを含む、本体35を備える。針33は、キャップ(表さず)によって覆われて、使用前に取り扱うときのいかなる負傷も防止することができる。
【0024】
本体10は、容器ホルダシステム20を備える。
【0025】
図2および3A~Bに示す第1の実施形態によれば、容器ホルダシステムは、医療容器30の近位端部31を受け入れるように適合されたハウジング22につながる本体10の遠位端部内に提供された開口部15を含む。容器ホルダシステムは、ハウジングと連通する、本体10の外壁内に提供されたスロット21と、医療容器30の近位端部31と接触してこれをハウジング22内に固定するまでスロット21に挿入されるように適合されたインサート24とをさらに含む。インサート24は、
図1Aではスロット21に挿入されて示され、
図2ではスロットから外されて示される。インサートは、有利には、2つのブランチを備えてその間に挿入された容器の本体35を掴むフォークの形態である。容器の近位端部は、次いで、インサート24と当接し、それによって容器がデバイスから落下することを回避する。
【0026】
実際の方法では、容器30の近位端部は、開口部15を通って挿入され、ハウジング22内に位置決めされるまで軸(A)に沿って近位方向に長手方向に移動され、インサート24が、次いで、スロット21に径方向に挿入されて、医療容器30を本体10に対して固定された位置に固定する。
【0027】
この実施形態は、容器30の近位端部がインサート24と当接するように適合されたフランジであることから、容器30がシリンジなどである場合に特に有用である。
【0028】
あるいは、容器30がシリンダなど(近位フランジを有さない)である場合、第1の実施形態の容器ホルダシステムの構成は、それに従って適合され得る。
図11に示す実施形態によれば、ハウジング22は、デバイスの本体10の一部分内を遠位に延び、医療容器30の本体全体35を受け入れるように構成される。有利には、この状況では、医療容器30の先端32および針33のみが、デバイスの本体10から遠位に突出する。当然ながら、この実施形態は、医療容器30がシリンジなどである場合にも適切であることができ、ハウジング22は、それに従って医療容器のフランジを収容するように適合される。
【0029】
実際の方法では、容器30の近位端部は、本体10の周囲表面内に提供された横開口部(表さず)を通ってハウジング22に挿入される。これを達成するために、横開口部の寸法は、医療容器30の本体35の寸法に実質的に対応する。インサート24は、次いで、本体35の遠位端部と医療容器30の先端32との間を延びるショルダ36と接触するまでスロット21に挿入される。故に、ショルダ36はインサート24と当接し、それによって容器30をハウジング22内の固定された位置に維持する。
【0030】
図12に示す第2の実施形態によれば、容器ホルダシステム20は、医療容器30の近位端部31を受け入れるように適合されたハウジング26につながる本体10の外壁内に提供されたスロット25を含む。
【0031】
容器ホルダシステム20は、本体10の遠位壁内に提供され、スロット25と連続し、スロット25から遠位壁内を延びる貫通溝27をさらに含む。実際の方法では、容器30の近位端部は、スロット25を通って挿入され、医療容器30が本体10に対して固定された位置に維持されるところでハウジング26内に位置決めされるまで、溝27に沿って径方向に移動される。溝27は、医療容器の近位端部が当接することができる2つの突出部28を分離し、それによって容器が溝から落下することを防止する。
【0032】
これを達成するために、溝27の内側表面は、容器30の本体35と接触する。特に、溝27は、容器がユーザによって移動されない限り、そこに挿入された容器30が径方向に移動することを防止するように構成することができる。溝は、その中への容器の挿入をより容易にすると共に、注射中、容器をハウジング26内の固定された位置に維持することに寄与するために、たとえば剛性プラスチックまたは金属(たとえばアルミニウム、ステンレス鋼)などの剛性および滑性材料で作製されることが好ましい。
【0033】
この実施形態は、容器30の近位端部が突出部と当接するように適合されたフランジであることから、容器30がシリンジなどである場合に特に有用である。
【0034】
あるいは、容器30がシリンジなど(近位フランジを有さない)である場合、第2の実施形態の容器ホルダシステムの構成は、それに従って適合され得る。
【0035】
スロットの寸法は、その中に挿入される医療容器30の本体全体35を受け入れるように適合され、容器30の先端32は、医療容器30が本体10に対して固定された位置に維持されるところでハウジング26内に位置決めされるまで、溝27に沿って径方向に移動される。容器30がハウジング26内に位置決めされたとき、ショルダ36は、突出部28と当接し、それによって医療容器がデバイスから落下することを回避する。
【0036】
注射デバイス1は、長手方向軸(A)に沿って本体10の内側を延びるピストンロッド40を備える。ばね41が、本体10の内側に、ピストンロッド40と同軸に接触して配置される。容器ホルダシステム20内に維持された容器30は、ばね軸と呼ばれる軸(A)と位置合わせされる。このようにして、ばね懸架されたピストンロッド40は、ばね41の力下で、軸(A)に沿って、近位静止位置と、ピストンロッド40が医療容器30のストッパ34と係合し、このストッパを医療容器に押し込む遠位動作位置との間で、並進的に移動可能である。
【0037】
ピストンロッド40は、有利には、機械的止め具としての役割を果たす径方向に拡大された近位端部42を備える。注射の終了時、拡大された近位端部42は、医療容器30の近位端部と当接し、こうしてピストンロッド40が本体10から落下することを回避する。
【0038】
ピストンロッド40には、その外壁に沿って延びる歯付きラック43が設けられる。歯付きラック43には、径方向に配向された複数の歯44が設けられ、2つの連続する歯は、切欠部45によって分離される。
【0039】
レバー50は、ばね軸(A)と直交する第1の枢動軸(B)を中心に、ばね軸(A)から第1の(非ゼロ)距離のところに、本体10の近位側に枢動可能に装着される。作動ゾーン51が、レバー50上に、ばね軸(A)に対して枢動軸(B)の反対側に提供される。作動ゾーン51は、ばね軸(A)から第2の(非ゼロ)距離のところに位置する。作動ゾーン51は、レバー50と一体的であり、ユーザによって、特に遠位方向に押さえられるように構成されたボタンを構成し、それによってレバー50を、「静止位置」と呼ばれる第1の位置から第2の位置に、枢動軸(B)を中心に傾斜動作で移動させる。ばね41の近位端部は、好ましくは、レバー50に固定されるが、代替的には、デバイスの本体10に直接的に固定可能である。
【0040】
注射デバイス1は、ピストンロッド40を選択的にブロックするか、または解放するための選択的ブロッキングシステム60をさらに備える。
【0041】
図2、3A~B、4A~B、5、および6に示す選択的ブロッキングシステム60の第1の実施形態によれば、選択的ブロッキングシステムは、近位端部71を含む連結ロッド70を備え、この近位端部は、レバー50の横表面内に提供され、そこから延びるスタッド52を介して、ばね軸(A)と直交する、好ましくは軸(A)と交差する第2の枢動軸(C)を中心にレバー50に枢動可能に結合される。
【0042】
連結ロッド70の遠位端部72には、実質的に長円形状の穴73が設けられる。
【0043】
選択的ブロッキングシステムは、2部分歯車75をさらに備える。
【0044】
歯車75の第1の部分76は、その回転軸周りで回転可能に移動可能なはめば歯車であり、ピストンロッド40の歯付きラック43と噛み合うように適合され、それによってギヤを形成する、歯77を含む。故に、ピストンロッド40の並進運動は、歯車75の対応する回転を誘発し、また逆の形で誘発する。
【0045】
歯車75の第2の部分78は、第1の部分76と共に、好ましくは、第1の部分と同軸で回転式に移動可能である。第2の部分78は、有利には、第1の部分76と一体的である。第2の部分78は、連結ロッド70の穴73内に位置決めされ、連結ロッド70の穴73内の内側表面74と接触するように適合された湾曲した表面79を備え、それによって歯車75をその表面の摩擦によってブロックする。歯車の第2の部分78の曲率半径は、(歯車75と連結ロッド70との間に十分な接触表面を確実にするために)連結ロッドの穴の内側表面74の曲率半径に応じて、(材料の摩擦係数を調整するために)歯車の第2の部分78および連結ロッド70の材料および/またはその表面状態に応じて、(摩擦力がばね力より大きくなるように)ばね41のばね力に応じて、調整され得る。歯車の第2の部分78のものに対する歯車の第1の部分76の直径比、およびその逆の比もまた、上記の特徴に従って調整され得る。たとえば、この比は、2から3の間に含まれてもよく、好ましくは約2に等しい。
【0046】
穴73の湾曲した表面79および内側表面74は、エポキシ樹脂、プラスチック材料、鋼、アルミニウム、またはゴムから選択された、同じ材料または異なる材料で作製され得る。
【0047】
レバー50の作動ゾーン51を選択的に押すか、または解放することにより、ユーザは、医療容器内に含まれた医薬組成物の注射を開始するか、または停止することができる。
【0048】
図3Aおよび4Aに示すように、作動ゾーン51が解放されたとき、レバー50は静止位置にある。歯車の第2の部分の湾曲した表面79は、連結ロッド70の穴の内側表面74と接触し、それによってばね力以上の摩擦力によって歯車75をブロックする。はめば歯車がブロックされるので、ピストンロッド40もブロックされる。この静止位置では、ばね41は、圧縮される。
【0049】
図3Bおよび4Bに示すように、ユーザが作動ゾーン51を遠位方向に押したとき、レバー50は、枢動軸(B)を中心に傾斜動作で移動し、連結ロッド70を遠位方向に押す。連結ロッドの移動により、歯車の第2の部分78の湾曲した表面79は、連結ロッド70の穴73の内側表面74から係合解除し、それによって歯車75の回転を可能にし、ピストンロッド40がばね41のばね力によって、遠位方向に、遠位動作位置まで並進的に移動することを可能にし、この位置でピストンロッド40は、ストッパ34と係合し、このストッパを医療容器30に押し込む。組成物は、こうして医療容器から排出される。この位置では、ばね41は、少なくとも部分的に解放される。
【0050】
ユーザが作動ゾーン51を押し続ける限り、連結ロッド70は、遠位位置に留まり、歯車75の第2の部分78の湾曲した表面79は、連結ロッド70の穴73の内側表面74から係合解除されたままであり、ピストンロッド40は、ばね41の解放によって移動し続け、注射は継続する。
【0051】
注射中、ユーザが作動ゾーン51を解放したとき、レバー50は、ばね41のばね力によって傾斜動作で移動してその静止位置に戻り、歯車75の第2の部分は、連結ロッド70の穴の内側表面74と再係合し、デバイス1は、前に説明した状況に戻り、ピストンロッド40は、前よりも遠位の位置にある。
【0052】
したがって、ユーザは、一定の時間の間作動ゾーン51を押さえるか、またはこれを解放するだけで、注射を開始または停止することができる。
【0053】
さらに、ユーザは、作動ゾーン51をより強くまたはより軽く押さえるだけで、注射を実施する間、歯車75と連結ロッド70との間の摩擦力の強度を適合させ、変えることができ、それによってピストンロッド40の速度および注射流量をそれに従って調整する。より詳細には、ユーザが作動ゾーン51を押すのが強いほど、摩擦力の強度は低下し、注射流量は多くなる。その反対に、ユーザが作動ゾーン51を押すのが弱いほど、摩擦力の強度は大きくなり、注射流量は低下する。
【0054】
たとえば、ユーザは、作動ゾーン51を押し、所与の時間の間同じ力を維持して組成物を注射することができる。ユーザは、次いで、(たとえば注射される組成物の量が重要である場合)作動ゾーン51を漸進的に強く押して、注射を徐々に加速させることができ、または代替的には、ユーザは、(たとえば注射が痛いものである場合、またはユーザが不安である場合)作動ゾーン51を部分的に漸進的に解放して、注射を徐々に遅くすることができる。
【0055】
図7、8A~B、9A~Bおよび10に示す選択的ブロッキングシステム60の第2の実施形態によれば、選択的ブロッキングシステムは、近位端部81を含む連結ロッド80を備え、この近位端部は、レバー50の横表面内に提供された、そこから延びるスタッド52を介して、ばね軸(A)と直交する、好ましくは軸(A)と交差する枢動軸(C)を中心にレバー50に枢動可能に結合される。
【0056】
選択的ブロッキングシステムは、二次連結ロッド83の一方の端部85に、好ましくはばね付勢されて結合された歯止め86をさらに備える。二次連結ロッド83の他方の端部84は、連結ロッド80の遠位端部82に枢動可能に装着される。
【0057】
歯止め86には、その横表面上に、歯付きラック43と噛み合ってラチェットを形成するように構成された、少なくとも1つの歯87、場合によっては歯の列が設けられる。
【0058】
図8Aおよび9Aに示すように、作動ゾーン51が解放されたとき、レバー50は、静止位置にある。
【0059】
歯付き歯止め86は、ピストンロッド40の歯付きラック43と噛み合い、それによってピストンロッド40をブロックし、ばね41を圧縮状態に保つ。
【0060】
図8Bおよび9Bに示すように、ユーザが作動ゾーン51を押したとき、レバー50は、枢動軸(B)を中心に傾斜動作で移動し、連結ロッド80を遠位方向に押す。連結ロッド80の移動により、二次連結ロッド83は、歯止め86とのその連結部85を中心に傾斜動作で移動する。歯止め86は、ピストンロッド40の歯付きラック43から係合解除し、こうしてピストンロッド40がばね41のばね力によって遠位方向に、遠位動作位置まで並進的に移動することを可能にし、この位置でピストンロッド40は、ストッパ34と係合し、このストッパを医療容器30に押し込む。組成物は、こうして医療容器から排出される。この位置では、ばね41は、少なくとも部分的に解放される。
【0061】
ユーザが作動ゾーン51を押し続ける限り、連結ロッド80は、遠位位置に留まり、歯止め86は、ピストンロッド40の歯付きラック43から係合解除されたままであり、ピストンロッド40は、ばね41の解放によって遠位方向に移動し続け、注射は継続する。
【0062】
注射中、ユーザが作動ゾーン51を解放したとき、レバー50は、ばね41のばね力によって傾斜動作で移動してその静止位置に戻り、歯止め86は、ピストンロッドの歯付きラック43と再係合し、デバイス1は、前に説明した静止状況に戻り、ピストンロッド40は、前よりも遠位の位置にある。
【0063】
したがって、ユーザは、一定の時間の間作動ゾーン51を押さえるか、またはこれを解放するだけで、組成物の注射を開始または停止することができる。
【0064】
有利には、歯止め86が歯付きラック43から係合解除したとき、歯止め86の歯87は、歯付きラック43の切欠部45に部分的に挿入されたままであり、歯止め86と二次連結ロッド83との間に連結して提供された戻りばね(図示せず)により、ピストンロッド40が移動しているときに歯付きラックの歯44と順次当接する。歯止め86の歯87が歯付きラック43の歯44と当接することにより、ピストンロッド40は、歯止め86の歯87とピストンロッド40の歯付きラックの歯44との間の当接が起こらない状況と比べて、僅かに遅くなり、注射流量はそれに従って減少する。ユーザが作動ゾーン51を押すのが強いほど、当接の強度は減少し、注射流量はそれに従って、最大まで増大し、ここでは歯止め86の歯87および歯付きラック43の歯44は完全に分離されている。ユーザは、作動ゾーン51をより強くまたはより軽く押すだけで、歯付きラックの歯44に対する歯止めの歯87の当接の強度をこうして適合させ、変えることができ、それによってピストンロッド40の速度および注射流量を調整する。
【0065】
さらに、各当接が、組成物の単位用量に関連付けることができる歯付きラック43のピッチに対応するため、当接は、ユーザが単位用量の数を調整することによって注射される組成物の量を制御することに役立つ。
【0066】
歯止め86が歯付きラック43の歯44と当接することにより、有利には、ユーザに当接を気づかせるための対応する音を引き起こす。
【0067】
選択的ブロッキングシステム60の実施形態にかかわらず、注射の終了時、デバイスは、別の注射を進めるために、ユーザによって手でリセットされ得る。そのようにするために、空の医療容器30が、適切な場合インサート24を最初に取り外すことによって容器ホルダシステム20から取り外され、作動ゾーン51を押した状態に保ちながら、ピストンロッド40は、ユーザによって近位方向に押されて近位静止位置に戻る。新しく充填された医療容器30が、次いで、容器ホルダシステム20内に位置決めされ、適切な場合インサート24によって固定され得る。
【0068】
スタッド52の枢動軸(C)およびばね軸(A)は、直交しており、好ましくは交差する。言い換えると、デバイスを
図3A~Bおよび4A~Bならびに
図8A~Bおよび9A~Bに示すように側部から観察すると、スタッド52は、ピストンロッド40と位置合わせされる。
【0069】
この構成では、第1の実施形態によれば、歯車75上に摩擦表面に沿って連結ロッド70によってかけられた力、すなわち制動力は、実質的にばね力に対応する。
【0070】
同様に、第2の実施形態によれば、連結ロッド80を介して歯付きラック43上に歯止め86によってかけられた力、すなわち制動力は、実質的にばね力に対応する。
【0071】
故に、ピストンロッド40は、ばね力の全体によって可能な限り堅固にブロックされ、レバー50が静止位置にあるときにピストンロッド40が移動するリスクはない。
【0072】
あるいは、スタッド52の枢動軸(C)およびばね軸(A)は、交差しなくてもよく、スタッドは、ピストンロッド40と位置合わせされなくてもよい。この構成では、制動力は、ばね力より僅かに劣るが、ピストンロッド40を堅固にブロックするのには十分である。
【0073】
レバー50が静止位置から第2の位置に進むとき、ピストンロッド40は、ばね力によって移動される。したがって、ばね41の力は、注射の開始および停止をそれぞれ行うためにピストンロッド40を移動ささせるため、およびブロックするための両方に使用される。
【0074】
前の段落を例示するために、作動ゾーン51の位置X
Act、枢動軸(B)の位置X
B、および枢動軸(C)の位置X
Cは、
図4Aでは、ばね軸(A)と直交し、枢動軸(B)および枢動軸(C)と直交し、交差する軸(X)上に表される。X
Actは、軸(X)上の作動ゾーン51の中央点の軸(A)に平行な方向の突出部である。X
BおよびX
Cは、それぞれの軸(B)および(C)と軸(X)との交差点である。
【0075】
XActとXCとの間の距離DXAct-XCは、軸(X)に沿った、XCとXBとの間の距離DXC-XBより大きい。これは、ユーザが制動力に比べて低減された力で作動ゾーン51を押すことを可能にするレバー効果を誘発する。
【0076】
レバー比LRは、以下の通り定義される。
【0077】
【0078】
この公式から、距離DXC-XBに対して距離DXAct-XCが大きくなるほど、レバー比は低下し、レバー効果は大きくなることになる。
【0079】
たとえば、23.50cm(センチメートル)の距離DXAct-XCおよび7.50cmの距離DXC-XBでは、レバー比LRは次のようになる:LR=1/(23.50/7.50)、これは約1/3に等しい。この場合、レバーが静止位置にあるとき、ばね41は、選択的ブロッキングシステムによって軸方向にブロックされ、制動力は、ばね力に等しい。組成物の注射を行うために、ユーザは、制動力の三分の一に等しい力だけをかけることによって作動ゾーン51を押す。
【0080】
20.50cmの距離DXAct-XCおよび10.5cmの距離DXC-XBでは、レバー比LRは、次のようになる:LR=1/(20.50/10.50)、これは約1/2に等しい。
【0081】
この場合、組成物の注射を行うために、ユーザは、制動力の二分の一に等しい力だけをかけることによって作動ゾーン51を押す。
【0082】
故に、注射を行うために、ユーザが作動ゾーン51上にかける必要がある力は、制動力と比べて大きく低減される。その結果、本発明のデバイス1は、それと同時に、
- 高いばね力を有するばね41を使用して、体力が低減しているユーザを助けながら粘性の組成物の注射を行えるようにすることと、
- このばね41およびピストンロッド40の完全なブロッキングを提供することと
を可能にする。