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特許7168653間葉系幹細胞を含む甲状腺眼症を治療するための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】間葉系幹細胞を含む甲状腺眼症を治療するための組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20221101BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20221101BHJP
   A61K 35/50 20150101ALI20221101BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C12N5/0775 ZNA
A61K35/28
A61K35/50
A61P5/14
A61P27/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020508318
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 KR2018009417
(87)【国際公開番号】W WO2019035668
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-02-13
(31)【優先権主張番号】10-2017-0103723
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518018056
【氏名又は名称】スンクワン メディカル ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ヘ レン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミ ラ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギ ジン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】J. Cell. Biochem.,2011年,Vol. 112,p. 49-58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00 - 5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胎盤由来間葉系幹細胞を有効成分として含む甲状腺眼症を治療するための薬学的組成物。
【請求項2】
前記間葉系幹細胞は、その培養物を含むことを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記間葉系幹細胞は、胎盤絨毛膜由来の間葉系幹細胞であることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記間葉系幹細胞は、CXCL-1、MCP-1またはTIMP-1のうち1以上を分泌または発現することを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記間葉系幹細胞は、FOXP3、HLA-GまたはTLR4のうち1以上を分泌または発現することを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記間葉系幹細胞は、CD90、CD146、CD105またはCD73のうち1以上を発現することを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記間葉系幹細胞は、眼窩線維芽細胞の脂肪細胞への分化、またはヒアルロン酸生成を阻害することを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記甲状腺眼症は、甲状腺機能亢進症によるものであることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記間葉系幹細胞は、眼球に投与するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甲状腺眼症を予防、改善または治療するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺眼症(TAO:thyroid-associated ophthalmopathy)は、甲状腺異常と伴って示される慢性的眼窩炎症疾患であり、甲状腺機能異常患者の約60%において観察される。甲状腺眼症患者には、一般的に、眼窩線維芽細胞の脂肪細胞への分化増加、及びヒアルロン酸の増加が観察され、それにより、眼球周辺脂肪細胞の肥大または炎症が発生する。治療時期を逃す場合、瞼後退、眼球突出、制限性斜眼、視力低下、複視または視野減少のような深刻な後遺症を誘発することになるために、必ず適切な治療を受けなければならない。現在まで、甲状腺眼症の治療のために、高濃度ステロイド、放射線治療、眼窩減圧術など利用しているが、その効果が制限的であり、治療による副作用や危険性がある。
従って、難治性眼窩炎症疾患である甲状腺眼症において、新たな治療剤開発が切実となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、間葉系幹細胞を有効成分として含む甲状腺眼症を予防、改善または治療するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一様相は、FOXP3(フォークヘッドボックスP3)、HLA-G(ヒト白血病抗原G)及びTLR4(toll様受容体4)からなる群のうちから選択される1以上を発現する間葉系幹細胞を提供する。
【0005】
前記間葉系幹細胞は、下記のa)またはb)の特性を有することができる:
a)CXCL-1(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1)、MCP-1(単球走化性タンパク質1)及びTIMP-1(メタロプロテイナーゼの組織阻害剤)からなる群のうちから選択される1以上を発現する特性、
b)CD90、CD146、CD105及びCD72からなる群のうちから選択される1以上の表面抗原特性。
【発明の効果】
【0006】
間葉系幹細胞を有効成分として含む甲状腺眼症を治療するための薬学的組成物は、眼窩線維芽細胞の非正常的な活性を回復させるので、甲状腺眼症治療に有用に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】細胞培養培地から測定したhPMSCの神経保護サイトカインのレベルを示すグラフである。
図1B】MSCであることを確認することができるマーカーをhPMSCの表面で確認したことを示す図面である。
図2】正常人とTAO患者との涙に含まれたHAS、HA及びHAdaseを免疫分析法を介して確認した結果の図面である。
図3A】眼窩線維芽細胞とhPMSCとを共培養し、このとき、HAS2発現の変化をウェスタンブロットで測定したところを示す図面である。
図3B】眼窩線維芽細胞とhPMSCとを共培養し、このとき、HAS2発現の変化を数値化させたところを示す図面である。
図4A】正常人と患者との眼窩線維芽細胞をhPMSCと共培養した後、共培養された線維芽細胞の表面マーカーの変化を観察した結果の図面である。
図4B】正常人と患者との眼窩線維芽細胞をhPMSCと共培養した後、共培養された線維芽細胞の表面マーカーの変化を観察した結果の図面である。
図5】正常人と患者との眼窩線維芽細胞をhPMSCと共培養した後、PPARγ、ADIPONECTIN及びC/EBPαのmRNA発現をリアルタイムPCRで分析した結果の図面である。
図6】正常人と患者との眼窩線維芽細胞をhPMSCと共培養した後、線維芽細胞の脂質蓄積の変化を観察した結果の図面である。
図7】一具体例による間葉系幹細胞が炎症誘導された細胞の免疫反応調節因子に及ぼす影響を示したグラフであり、AD:脂肪由来の間葉系幹細胞、BM:骨髄由来の間葉系幹細胞、PD:胎盤由来の間葉系幹細胞、WI-38:線維芽細胞であり、A:FOXP3、B:HLA-G、C:hTRL4であり、*:対照群対それ以外が減少、#:対照群対それ以外が増加、**:1ng対10ngが減少、##:1ng対10ngが増加である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一様相は、FOXP3(フォークヘッドボックスP3)、HLA-G(ヒト白血病抗原G)及びTLR4(toll様受容体4)からなる群のうちから選択される1以上を発現する間葉系幹細胞を提供する。
【0009】
前記間葉系幹細胞は、下記のa)またはb)の特性を有することができる:
a)CXCL-1(ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1)、MCP-1(単球走化性タンパク質1)及びTIMP-1(メタロプロテイナーゼの組織阻害剤)からなる群のうちから選択される1以上を発現する特性、
b)CD90、CD146、CD105及びCD72からなる群のうちから選択される1以上の表面抗原特性。
【0010】
本明細書において、用語「間葉系幹細胞(MSC:mesenchymal stem cell)」は、自己再生能(self-renewal)と幹細胞能(stemness maintenance)とを維持し、多様な間葉系組織に分化することができる細胞を意味し、哺乳類、例えば、ヒトを含んだ動物の間葉系幹細胞を含んでもよい。また、前記間葉系幹細胞は、臍帯由来、臍帯血由来、骨髄由来、胎盤(placenta)由来または脂肪由来の間葉系幹細胞でもある。前記胎盤由来の間葉系幹細胞は、胎盤を構成する多様な組織、例えば、羊膜上皮細胞、羊膜、栄養膜、絨毛膜のような組織にも由来する。望ましくは、前記胎盤由来の間葉系幹細胞は、胎盤の絨毛膜板(chorionic plate)に由来する間葉系幹細胞でもあり、さらに望ましくは、絨毛膜板膜(chorionic plate membrane)に由来する間葉系幹細胞でもある。間葉系幹細胞の分離は、通常の当業者に自明な方法によっても行われ、例えば、Pittengerら(Science 284: 143, 1997)とvanら(J. Clin. Invest., 58: 699, 1976)の文献に開示されている。
【0011】
前記間葉系幹細胞は、免疫サイトカインを発現または分泌するものでもある。前記間葉系幹細胞は、対照群対比、線維芽細胞対比、または他の細胞対比で、免疫サイトカインをさらに多く発現または分泌するものでもある。前記免疫サイトカインの例は、CXCL-1、MCP-1またはTIMP-1を含んでもよい。
【0012】
また、前記間葉系幹細胞は、FOXP3、HLA-GまたはTLR4を発現または分泌するものでもある。前記間葉系幹細胞は、対照群対比、線維芽細胞対比、または他の細胞対比で、FOXP3、HLA-GまたはTLR4をさらに多く発現または分泌するものでもある。前記間葉系幹細胞は、骨髄由来または脂肪由来の間葉系幹細胞対比で、FOXP3、HLA-GまたはTLR4をさらに多く発現または分泌するものでもある。前述の発現レベルの差は、例えば、mRNAレベルまたは蛋白質レベルでの遺伝子及び蛋白質の発現量を比較したものでもある。また、前記発現レベル差は、例えば、マイクロアレイ分析及びプロテオミクス分析によるものでもある。
【0013】
また、前記間葉系幹細胞は、前記因子のうちいずれか1以上の発現が増大するように遺伝的に操作されたものでもある。本明細書において、用語「遺伝子操作(genetic engineering)」、または「遺伝的に操作(genetically engineered)」は、細胞に対して、1以上の遺伝的変形(genetic modification)を導入する行為、またはそれによって作られた細胞を示す。例えば、前記間葉系幹細胞または宿主細胞は、CXCL-1、MCP-1またはTIMP-1、あるいはその活性断片の発現または活性が増大するように、遺伝的に操作されたもの、例えば、CXCL-1、MCP-1またはTIMP-1、あるいはその活性断片をコーディングする外因性遺伝子を含むものでもある。前記活性増大は、与えられた遺伝的に操作されていない母細胞(例:野生型)が有したり有さなかったりする内在的蛋白質または酵素の活性に比べ、同一タイプの蛋白質または酵素の活性がさらに高い活性を有することを意味する。前記外因性遺伝子は、前記間葉系幹細胞または宿主細胞において、その母細胞に比べ、言及された蛋白質の活性が増大するのに十分な量で発現されたものでもある。前記外因性遺伝子は、発現ベクターを介して、母細胞内に導入されたものでもある。また、前記外因性遺伝子は、線形ポリヌクレオチド形態で母細胞内に導入されたものでもある。また、前記外因性遺伝子は、細胞内において、発現ベクター(例:プラスミド)から発現されるものでもある。また、前記外因性遺伝子は、安定した発現のために、細胞内の遺伝物質(例:染色体)に挿入されて発現されるものでもある。
【0014】
また、前記間葉系幹細胞は、CD90、CD146、CD105またはCD72を発現するものでもある。詳細には、本明細書で提供される間葉系幹細胞は、細胞表面に発現される細胞標識子に対して、CD90、CD146、CD105またはCD72の陽性表面マーカーを、少なくとも約20%,25%,30%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,75%,80%,85%,90%,95%、98%または約99%発現するものでもある。また、本明細書で提供される間葉系幹細胞は、細胞表面に発現される細胞標識子に対して、CD45,CD31,CD34またはHLA-DR陰性マーカーを、およそ少なくとも70%以下、少なくとも60%以下、少なくとも50%以下、少なくとも40%以下、少なくとも30%以下、少なくとも20%以下、少なくとも10%以下、少なくとも5%以下、または少なくとも1%以下に発現するものでもある。本発明において用語「陽性」は、幹細胞標識と係わり、その標識が基準になる他の非幹細胞と比較したとき、さらに多くの量、またはさらに高い濃度で存在することを意味する。すなわち、細胞は、ある標識が、細胞の内部または表面に存在するために、その標識を利用し、その細胞を、1以上の他の細胞類型と区別することができれば、その標識に対して陽性になる。また、細胞が背景値よりさらに大きい値で、信号、例えば、細胞測定装置の信号を出すことができるほどの量でその標識を有しているということを意味する。例えば、細胞を、CD90に特異的な抗体で検出することができるように標識することが可能であり、該抗体からの信号が、対照群(例えば、背景値)よりも検出可能にさらに大きければ、その細胞は、「CD90+」である。本明細書において、用語、「陰性」は、特定細胞表面標識に特異的な抗体を使用しても、背景値に比べ、その標識を検出することができないということを意味する。例えば、CD45に特異的な抗体で、細胞を検出することができるように標識することができなければ、その細胞は、「CD45-」である。
【0015】
他の様相は、間葉系幹細胞を有効成分として含む甲状腺眼症を治療するための薬学的組成物を提供する。
さらに他の様相は、細胞治療剤、薬学的組成物または製剤の製造に使用するための前記間葉系幹細胞の用途を提供する。
【0016】
さらに他の様相は、疾病、例えば、甲状腺眼症の治療または予防に使用するための医薬の製造に使用するための前記間葉系幹細胞、その細胞集団またはその培養物、溶解物、あるいは抽出物の用途を提供する。
【0017】
さらに他の様相は、有効成分の前記間葉系幹細胞、その細胞集団またはその培養物、溶解物、あるいは抽出物を、それを必要とする個体に投与する段階を含む疾病、例えば、甲状腺眼症を治療または予防する方法を提供する。
【0018】
用語「治療」は、疾患、障害または病態、またはその1以上の症状の軽減、進行抑制または予防を指称したり、それを含んだりし、「有効成分」または「薬剤学的有効量」は、疾患、障害または病態、あるいはその1以上の症状の軽減、進行抑制または予防に十分な、本願で提供される発明を実施する過程で利用される組成物の任意の量を意味する。
【0019】
用語「甲状腺眼症(TAO:thyroid-associated ophthalmopathy)」は、甲状腺ホルモンの過多分泌による甲状腺機能亢進症によって発生する眼窩炎症疾患を意味する。瞼後退、眼球突出、制限性斜視、視力低下、複視、視野減少のような病症を示すことができる。
【0020】
前記間葉系幹細胞は、代案として、その培養物、その溶解物またはその抽出物が利用されもする。前述の培養物、溶解物または抽出物は、細胞そのままを利用し難い場合、有用な代案にもなり、蛋白質などを含んだ細胞の構成成分を含んでいるので、本来の細胞と類似していたり同等であったりする生物学的活性を示すことができる。前述の溶解物または抽出物は、商業的に利用可能な細胞溶解キットまたは抽出キットなどを利用して得ることができる。
【0021】
前記薬学的組成物は、眼球に投与するためのものでもある。用語である「投与する」、「導入する」及び「移植する」は、相互交換的に使用され、一具体例による組成物の所望部位への少なくとも部分的局所化をもたらす方法または経路による個体内への一具体例による組成物の配置を意味する。一具体例による組成物の細胞または細胞成分の少なくとも一部を、生存する個体内において、所望位置に伝達する任意の適切な経路によっても投与される。個体投与後、細胞の生存期間は、短ければ、数時間、例えば、24時間ないし数日、長ければ、数年以上でもある。
【0022】
一具体例による前記組成物は、組成物総重量に対し、約0.001重量%ないし約80重量%の間葉系幹細胞を含んでもよい。また、前記組成物の投与用量は、0.01mgないし10,000mg、0.1mgないし1,000mg、1mgないし100mg、0.01mgないし1,000mg、0.01mgないし100mg、0.01mgないし10mg、または0.01mgないし1mgでもある。また、間葉系幹細胞の投与用量は、1.0X10ないし1.0X10細胞/kg(体重)でもある。ただし、投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢・体重・性別・病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により、多様にも処方されし、当業者であるならば、そのような要因を考慮し、投与量を適切に調節することができるであろう。投与回数は、1回、または臨床的に容認可能な副作用の範囲内で、2回以上が可能であり、投与部位についても、1ヵ所または2ヵ所以上に投与することができる。ヒト以外の動物についても、kg当たりヒトと同一投与量にするか、あるいは、例えば、目的の動物とヒトとの器官(心臓など)の容積比(例えば、平均値)などで、前述の投与量を換算した量を投与することができる。可能な投与経路には、経口、舌下、非経口(例えば、皮下、筋肉内、動脈内、腹腔内、硬膜内、または静脈内)、直腸、局所(経皮含む)、吸入、注射、点眼、あるいは移植性装置または物質の挿入を含んでもよい。一具体例による治療の対象動物としては、ヒト、及びそれ以外の目的とする哺乳動物を例として挙げることができ、具体的には、ヒト、猿、マウス、ラット、兎、羊、牛、犬、馬、豚などが含まれる。
【0023】
一具体例による薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体及び/または添加物を含んでもよい。例えば、滅菌水、生理食塩水、慣用の緩衝剤(リン酸、クエン酸、それ以外の有機酸など)、安定剤、塩、酸化防止剤(アスコルビン酸など)、界面活性剤、懸濁液剤、等張化剤または保存剤などを含んでもよい。局所投与のために、生体高分子(biopolymer)などの有機物、ヒドロキシアパタイトなどの無機物、具体的には、コラーゲンマトリックス、ポリラクト酸の重合体または共重合体、ポリエチレングリコールの重合体または共重合体、及びその化学的誘導体などと組み合わせるものも含んでもよい。一具体例による薬学的組成物が注射に適切な剤形に調剤される場合には、間葉系幹細胞が薬学的に許容可能な担体内に溶解されているか、あるいは溶解されている溶液状態に凍結されたものでもある。
【0024】
一具体例による薬学的組成物は、その投与方法や剤形により、必要な場合、懸濁液剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性化剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、還元剤、酸化防止剤などを適切に含んでもよい。前述のところに例示されたものなどを始めとし、本発明に適する薬学的に許容される担体及び製剤は、文献[Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th ed., 1995]などに詳細に記載されている。一具体例による薬学的組成物は、当該発明が属する技術分野において当業者が容易に実施することができる方法によって、薬学的に許容される担体及び/または賦形制を利用して製剤化することにより、単位用量形態に製造されるか、あるいは多用量容器内に内入させても製造される。このとき、該剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、あるいは粉末、顆粒、錠剤またはカプセル型でもある。
さらに他の様相は、間葉系幹細胞、またはその培養物、溶解物または抽出物を含む甲状腺眼症を予防または改善するための健康機能食品用組成物を提供する。
【0025】
前記健康食品組成物は、前記間葉系幹細胞以外に、他の食品または食品成分と共に使用され、一般的な方法によっても適切に使用される。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)によって適切に決定される。一般的に、健康機能食品の製造時、本明細書の組成物は、原料に対して15重量部以下の量でも添加される。前記健康食品の種類には、特別な制限はない。
【0026】
本発明者らは、間葉系幹細胞が甲状腺眼症患者の線維芽細胞の非正常的な活性(過度なヒアルロン酸生成、脂肪細胞分化、及び脂質蓄積)を回復させることを確認したので、それを含む組成物は、甲状腺眼症の治療、予防または改善のための組成物にも有用に使用されるのである。
【実施例
【0027】
以下、本発明について、実施例を介して、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0028】
参考例
参考例1.胎盤由来間葉系幹細胞の分離
正常に分娩した健康な産婦から、前もって十分な説明に基づいた同意(informed consent)を受け、正常胎盤分娩時に収集された胎盤組織から臍帯を分離した。分離した組織(chorioamniotic membranes)を50ml チューブに入れ、DPBSを添加し、余分の血液を除去した後、20ml酵素溶液I(1mg/mlコラゲナーゼtype I、2mg/mlトリプシン、20mg/ml DNaseI、1.2U/mlディスパーゼ、x1 PS in HBSS)で滅菌されたスライドガラスで、絨毛羊膜(chorioamniotic membranes)の上側部分を掻いて回収される浮遊物を一方に集めた。酵素溶液I10mlを入れ、押しなべて混ぜた後、37℃酵素反応を15分ずつ2回反復しながら、組織から幹細胞を分離させた。分離された細胞懸濁液を遠心分離し、分離された細胞は、10%の牛胎児血清、1%のペニシリン・ストレプトマイシン、1μg/mlのヘパリン、及び25ng/mlの線維芽細胞成長因子(FGF-4:fibroblast growth factor-4)が添加されたDMEM/F12を利用して培養し、その後、4日ないし5日の間隔で培養培地を交換し、初継代でInvitrogen社のTrypLEを、37℃インキュベータで短期間(3分)処理して継代培養した。
【0029】
参考例2.眼窩線維芽細胞(orbital fibroblast)の培養及び処理
ヒトから眼窩線維芽細胞(正常4人、患者4人)を採取し、DMEMF12(Gibco)(10% FBS及び1%ペニシリン・ストレプトマイシン)に培養した。線維芽細胞が培地に分布されて育ち、2日後、DMEM(10% FBS)に、5μg/mlインシュリン、1mMデキタメタゾン及び0.5mM IBMXを添加し、脂肪細胞への分化が始まるようにした(day 0)。72時間後(day 3)、培地を、10% FBS及び5μg/mlインシュリンが補充されたDMEM培地に交換し、その後、隔日ごとに、10% FBSが補充されたDMEM培地を供給した。
【0030】
参考例3.眼窩線維芽細胞(orbital fibroblast)脂質蓄積分析
正常人と患者との眼窩線維芽細胞に、脂肪生成誘導分化培地を入れた後、hPMSC(placenta derived mesenchymal stem cell)との共培養有無を分け、10日間培養した(初期4日間:DMEM supplemented with 10% FBS、33μMビオチン、17μMパントテン酸、0.2nM T3、10μg/mLトランスフェリン、0.2μMプロスタグランジンI2、0.1mMイソブチルメチルキサンチン(IBMX)、1μMデキサメタゾン、5μg/mlインスリン/5-10日間:w/o IBMX、デキサメタゾン、インスリン)。10日後、Oil-Red-O染色を介して、線維芽細胞の脂質蓄積変化を観察した。
【0031】
参考例4.涙試料採取
正常人(n=13)、及び甲状腺眼症(TAO)患者(n=13)から、シルマーストリップ(Schirmer strip)を利用して涙を採取した。その後、シルマーストリップを、底にカニュラ(cannula)がある0.5mlチューブに移し、30μ LPBSを添加した。前記チューブの内容物をさらに大きいチューブ(1.5ml)に移し、5分間遠心分離を行った(13,000rpm)。そのように採取された涙は、-20℃で保管した。
【0032】
参考例5.リアルタイムPCR
培養8日目(day 8)に、hPMSC(2x10)を、眼窩線維芽細胞と共に、48時間共培養した。細胞溶解物は、TRIzol(Invitrogen、Carlbad、CA、米国)で均質化させ、RNAを抽出した。それぞれの試料からの1μgの総RNAを逆転写し、cDNAを合成した。cDNA合成条件は、次の通りである:RNA融解(65℃、1分)、プーリング(25℃、5分)、増幅(42℃、60分)及び酵素不活性(85℃、1分)。
【0033】
以下のPCR条件により、各遺伝子のmRNA発現を増幅し、標準化(normalization)させた:初期融解(95℃、2分)、増幅(95℃、10秒;55℃、20秒;及び72℃、20秒)40サイクル。PPARγ、ADIPONECTIN及びC/EBPα、プライマーセットは、以下の通りである:
【0034】
PPARγ FP:5’-TTGACCCAGAAAGCGATTCC(配列番号1)-3’、RP:5’-AAAGTTGGTGGGCCAGAATG(配列番号2)-3’;ADIPONECTINFP:5’-GGCCGTGATGATGGCAGAGAT(配列番号3)-3’、RP:5’-TTTCACCGATGTCTCCCTTAGG(配列番号4)-3’C/EBPαFP:5’-TGTATACCCCTGGTGGGAGA(配列番号5)-3’、RP:5’-TCATAACTCCGGTCCCTCTG(配列番号6)-3’。各遺伝子のmRNA発現は、18s rRNAで標準化させた。データは、正常集団と比べ、脂肪分化関連因子の倍数(fold)(平均±SEM)で表現した。
【0035】
参考例6.ウェスタンブロット
RIPA緩衝液を利用し、溶解物を準備した。同量の総蛋白質をSDS-PAGEで分離して膜に移した。前記膜は、抗HAS1及び抗HAS2(SantaCruz Biotechnology、SA、米国)で1:1,000希釈し、免疫ブロッティングし、該膜をGAPDH(SantaCruz)と共に培養した。洗浄後、ホースラディッシュ過酸化酵素接合抗塩素IgG(horseradish peroxidase-conjugated anti-goat IgG)二次抗体と共に、1:10,000希釈で、常温で3時間培養した。免疫反応バンドは、向上した化学発光ソリューション(enhanced chemiluminescence solution)(AnimalGenetics、Suwon、韓国)でイメージ化させ、ChemiDocTM XRS+ System Imager(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA、米国)で検出した。蛋白質発現量は、GAPDHで標準化させた。データは、正常集団と比べ、HAS2の倍数(fold)(平均±SEM)で表現した。
【0036】
参考例7.酵素結合免疫吸着検査(ELISA)
正常人及びTAO患者から採取した涙を準備し、そのヒアルロン酸(Ha:hyaluronic acid)及びヒアルロニダーゼ(Hyal:hyaluronidase)のレベルをELISAで決定した。本分析の遂行は、製造社のマニュアルによって行った。
【0037】
参考例8.FACS分析
ヒト線維芽細胞(3x10)を細胞解離バッファ(Life Technologies)で解離させ、PBS(2%(v/v)FBS)で洗浄した。それを、アイソタイプ対照群IgG(isotype control IgG)または抗原特異的抗体(BD Biosciences、CA、米国)と共に、20分間培養し、細胞を確認するのに利用した。FACS分類(sorting)は、FACS vantage Flow Cytometer(BD Biosciences、CA、米国)を利用して行った。
【0038】
実施例1.胎盤由来幹細胞の特性分析
前記参考例1で分離した胎盤由来間葉系幹細胞の特性を分析するために、サイトカイン分泌特性及び表面抗原特性を分析した。具体的には、ELISA分析を介し、胎盤由来間葉系幹細胞の培養培地で、神経保護サイトカインの濃度を測定し、FACS分析を介し、胎盤由来間葉系幹細胞の表面抗原(CD34、CD45、CD90、CD31、HLA-DR、CD146、CD106及びCD73)特性を分析し、その結果を図1に示した。
【0039】
図1Aは、細胞培養培地から測定したhPMSCの神経保護サイトカインのレベルを示す。図1Aに示されているように、ELISA分析結果、hPMSCを培養した培養液において、炎症反応及び傷治癒に係わるサイトカイン(CXCL-1、MCP-1、TIMP-1)の分泌が増加するということを確認した。
【0040】
図1Bは、hPMSCの表面パターンを示す。図1Bに示されているように、FACSで分析した結果、間葉系細胞マーカーであるCD90、CD146、CD105及びCD72が陽性と確認された。
【0041】
実施例2.TAO患者でのヒアルロン酸合成増加の確認
正常人及びTAO患者から採取した涙(総26個試料)を利用し、ウェスタンブロットを実施し、ヒアルロン酸合成酵素(HAS:hyaluronic acid synthase:HAS)の量を測定した。総10μg蛋白質をローディングした。抗HAS1及び抗HAS2を、4℃一晩培養した。TAO患者から採取した涙に対するELISA分析も実施した。
【0042】
その結果、図2Aのように、患者の涙において、正常人に比べ、ヒアルロン酸合成酵素であるHAS1とHAS2との蛋白質発現が増大するということを確認した。図2Bでのように、Haのレベルも上昇したということが観察されたが、図2Cのように、HAdaseのレベルは、有意すべき変化がないということを確認した。
【0043】
前述の通り、ELISA分析結果、TAO患者の涙内ヒアルロン酸のレベルは、上昇したが、ヒアルロン酸分解酵素のレベルは、正常人と患者との差を見い出すことができなかった。従って、TAO患者においては、ヒアルロン酸合成酵素が増加し、ヒアルロン酸生成が増大するということを確認した。
【0044】
実施例3.hPMSCのヒアルロン酸生成低減効果の確認
線維芽細胞の培養15日目(day 15)、眼窩線維芽細胞を、脂肪生成誘導過程中の刺激剤として、IL-1β(20ng/mL)と共に培養した。hPMSCとの共培養後、HAS2の蛋白質発現を決定した。
【0045】
図3Aのように、誘導過程の間、TAO患者の線維芽細胞において、ヒアルロン酸合成酵素であるHAS2の発現が増大するということを確認し、PMSCとの共培養を介し、増大された合成酵素の蛋白質発現が低減するということを検証した。
【0046】
また、図3Bのように、ヒアルロン酸合成酵素HAS2の蛋白質発現量を数値化させた結果、脂肪生成誘導分化メディアで培養されたTAO患者の線維芽細胞が、IL-1β刺激により、HAS2の蛋白質発現が約2.3倍ほど増大すると見られ、それは、PMSCとの共培養を介して低減少されることを確認した。
【0047】
実施例4.hPMSCの眼窩線維芽細胞表面抗原マーカーに及ぼす効果確認
正常人及びTAO患者から採取した眼窩線維芽細胞を、hPMSCと共培養して起きる変化を観察した。線維芽細胞は、FACSで分析した。
【0048】
線維芽細胞の培養15日目(day 15)、線維芽細胞にIL-1β(20ng/mL)を処理した。培養24時間後、hPMSCを共培養した。共培養された線維芽細胞に対し、CD90またはCD105をマーカーで分類した。また、線維芽細胞を顕微鏡で観察した。
【0049】
図4A及び図4Bのように、正常人と患者との線維芽細胞マーカーであるCD105とCD90との変化を分析した結果、hPMSCとの共培養により、TAO患者の線維芽細胞内CD90が変化するということを確認した。
【0050】
実施例5.hPMSCの脂肪細胞分化(adipogenesis)に対する効果確認
正常人及びTAO患者から採取した眼窩線維芽細胞を、4日間、脂肪分化誘導メディア1(33μMビオチン、17μMパントテン酸、0.2nM T3、10μg/mLトランスフェリン、0.2μMプロスタグランジンI2、0.1mMイソブチルメチルキサンチン(IBMX)、1μMデキサメタゾン、5μg/mlインスリン)と共に培養した後、5日目から10日目まで脂肪分化誘導メディア2(33μMビオチン、17μMパントテン酸、0.2nMT3、10μg/mLトランスフェリン、0.2μMプロスタグランジンI2、0.1mM)と共に培養した。培養8日目、hPMSC(2x10)と、脂肪分化メディアで培養中の眼窩線維芽細胞とを48時間共培養した。その後、代表的な脂肪細胞分化関連因子であるPPARγ、ADIPONECTIN及びC/EBPαのmRNA発現を、前記参考例5に記載されたように確認し、その結果を図5に示した。
【0051】
その結果、図5に示されているように、脂肪分化誘導培地で培養した患者の線維芽細胞内のPPARγ、ADIPONECTIN及びC/EBPαのmRNA発現が、それぞれ21.5倍、約80倍及び33倍増大するということを確認した。それに反し、PMSCとの共培養を介して増大されたmRNAのPPARγ発現が、約8倍、ADIPONECTINのmRNA発現が、約33倍、C/EBPαのmRNA発現が、約12.4倍に低減されることを確認した。以上の結果により、間葉系幹細胞が、眼窩線維芽細胞のPPARγ、ADIPONECTIN及びC/EBPαの発現を抑制するということが分かり、それは、間葉系幹細胞が、眼窩線維芽細胞の脂肪細胞分化性を抑制するということを意味する。
【0052】
実施例6.眼窩線維芽細胞の脂質蓄積確認
ヒト胎盤由来の間葉系幹細胞が、眼窩線維芽細胞の脂質蓄積に及ぼす影響を確認した。具体的には、正常人及びTAO患者から採取した眼窩線維芽細胞を、脂肪生成誘導培地培養と共に、PMSCとの共培養を進めた。10日後、Oil-RedO染色を利用し、眼窩線維芽細胞内脂質蓄積を、前記参考例3のように確認し、その結果を図6に示した。
その結果、図6のように、分化培地に誘導されたTAO患者の線維芽細胞の脂質蓄積が、PMSCとの共培養を介して低減されるということを確認した。
以上の結果から、ヒト胎盤由来幹細胞(hPMSC)がTAO患者の線維芽細胞の非正常的な活性を回復させるということを確認した。
【0053】
実施例7.間葉系幹細胞の免疫調節能確認
前記参考例1で分離した胎盤由来の間葉系幹細胞、脂肪由来の間葉系幹細胞、及び骨髄由来の間葉系幹細胞の眼窩線維芽細胞に係わる免疫調節能を確認するために、naive状態の間葉系幹細胞に炎症誘導因子を処理することにより、各間葉系幹細胞で発現される各因子の発現と、炎症反応による発現とを比較分析した。前述の脂肪由来の間葉系幹細胞と、骨髄由来の間葉系幹細胞は、ATCC(American Type Culture Collection)から提供されて使用した。
【0054】
具体的には、前記間葉系幹細胞に、炎症誘導因子であるLPS及びIL-1βをそれぞれ1または10ngで処理した。その後、免疫調節因子であるhFOXP3、hHLA-G及びhTRL4の発現量をqRT-PCRで確認した。具体的には、qRT-PCRは、炎症誘導因子を処理した細胞を回収し、TRIZOLを利用した細胞溶解(lysis)段階、逆転写酵素(reverse transcriptase)を利用したcDNA合成段階、遺伝子特異的塩基配列とTag.DNAポリメラーゼとを利用したPCR増幅段階、及び増幅されたPCR産物をアガロースゲル上で電気泳動して増幅された遺伝子の有無を確認する段階で遂行した。前記qRT-PCR分析の結果は、図7に示した。
【0055】
図7は、一具体例による間葉系幹細胞が炎症誘導された細胞の免疫反応調節因子に及ぼす影響を示したグラフであり、AD:脂肪由来の間葉系幹細胞、BM:骨髄由来の間葉系幹細胞、PD:胎盤由来の間葉系幹細胞、WI-38:線維芽細胞;A:FOXP3、B:HLA-G、C:hTRL4;*:対照群対それ以外は、減少、#:対照群対それ以外は、増加、**:1ng対10ngは、減少、##:1ng対10ngは、増加である。
【0056】
図7に示されているように、一具体例による間葉系幹細胞は、HLA-G、FOXP3、及びTLR4を、線維芽細胞対比でさらに多く発現するということが分かった。特に、胎盤由来間葉系幹細胞の場合には、免疫反応調節に関与し、T細胞攻撃から細胞を保護する効果が知られたHLA-Gだけではなく、FOXP3及びTLR4を、他の細胞に比べ、さらに多く発現するだけではなく、炎症誘導因子が処理された後にも、高い発現量を示した。naive状態において、免疫と係わる因子の発現パターンを、炎症誘導因子処理によって発現変化を分析することにより、HLA-Gのような免疫調節能因子の過発現を示す間葉系幹細胞(特に、胎盤由来の間葉系幹細胞)が甲状腺眼症治療剤として有用に使用されうるということが分かった。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
【配列表】
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