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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】広帯域出力を有する調整可能光源
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/39 20060101AFI20221101BHJP
【FI】
G02F1/39
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020515694
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 US2018051405
(87)【国際公開番号】W WO2019060256
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】62/561,413
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/809,624
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514238250
【氏名又は名称】キオプティック フォトニクス ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,フランク
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/042439(WO,A1)
【文献】特開2005-055652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0058248(US,A1)
【文献】国際公開第2006/006701(WO,A1)
【文献】特開2017-156597(JP,A)
【文献】特開2003-347676(JP,A)
【文献】特表2018-528491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00- 1/125
G02F 1/21- 7/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低出力光源と光学増幅器を含む、広帯域ポンプビームを生成するように構成された少なくとも1つのポンプ光源と、
前記少なくとも1つのポンプ光源の発光を受け取り、フィルタ処理するために配置された縦モードスクランブラを含むスペクトルフィルタと、
光パラメトリック発振器(OPO)モジュールであって、前記少なくとも1つのポンプ光源からの光を受け取り、OPOプロセスを介して第1出力光ビームと第2出力光ビームを生成するように構成された第1結晶と、前記広帯域ポンプビームと共振OPO光波のSFGプロセス用に構成された第2結晶を含む光学キャビティを含む光パラメトリック発振器(OPO)モジュールと、を備える光源において、
前記少なくとも1つのポンプ光源及びOPOモジュールは、前記少なくとも1つのポンプ光源の帯域幅を広く調整する、300GHzを超える帯域幅を有する巨視的パワーの調整可能SFG発光を生成するように構成され、前記スペクトルフィルタは波長及び/又は帯域幅を調整可能である、光源。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポンプ光源及びOPOモジュールは、前記少なくとも1つのポンプ光源より大きい帯域幅を有する、巨視的パワーの調整可能広帯域光を生成するように構成される、請求項1に記載の光源。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポンプ光源及びOPOモジュールは、前記第1結晶及び/又は第2結晶のポンプ受光帯域幅により限定される最大発光帯域幅を有する、巨視的パワーの調整可能広帯域光を生成するように構成される、請求項1に記載の光源。
【請求項4】
前記OPOモジュールは、前記少なくとも1つのポンプ光源の前記帯域幅を広く調整する、巨視的パワーの調整可能広帯域光を生成するために、SFG発光と共振OPO光波のSFGのために構成された第3結晶をさらに含む、請求項に記載の光源。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポンプ光源は第1ポンプ光源と第2ポンプ光源を含み、前記第2ポンプ光源だけが前記第2結晶の励起のために構成される、請求項1に記載の光源。
【請求項6】
前記第2ポンプ光源は前記第1ポンプ光源の第二高調波発生器である、請求項に記載の光源。
【請求項7】
記第2ポンプ光源の発光を受け取り、フィルタ処理するために配置された第2スペクトルフィルタをさらに含む、請求項に記載の光源。
【請求項8】
前記縦モードスクランブラを含む前記スペクトルフィルタは、前記光学増幅器の後に配置された、請求項1に記載の光源。
【請求項9】
記第2ポンプ光源のための縦モードスクランブラをさらに含む、請求項に記載の光源。
【請求項10】
前記低出力光源は少なくとも2つの光源の組合せを含み、前記2つの光源は、幅広化された合成出力光を提供するように配置され、前記スペクトルフィルタは前記2つの光源のうち少なくとも1つをフィルタ処理する、請求項1に記載の光源。
【請求項11】
高速波長変調機構をさらに含み、前記少なくとも1つの低出力ポンプ光源の出力光は高速波長変調により幅広化される、請求項10に記載の光源。
【請求項12】
高速波長変調機構と、
広帯域ポンプビームを生成するように構成された少なくとも1つのポンプ光源と、
光パラメトリック発振器(OPO)モジュールであって、前記少なくとも1つのポンプ光源からの光を受け取り、OPOプロセスを介して第1出力光ビームと第2出力光ビームを生成するように構成された第1結晶と、前記広帯域ポンプビームと共振OPO光波のSFGプロセス用に構成された第2結晶を含む光学キャビティを含む光パラメトリック発振器(OPO)モジュールと、を備える光源において、
前記少なくとも1つのポンプ光源及びOPOモジュールは、前記少なくとも1つのポンプ光源の帯域幅を広く調整する、巨視的パワーの調整可能広帯域光を生成するように構成され、少なくとも1つのポンプ光源は、少なくとも2つのポンプ光源の組合せを含み、前記2つの光源は、幅広化された合成出力光を提供するように配置され、前記少なくとも1つのポンプ光源の出力光は高速波長変調により幅広化され、前記少なくとも1つのポンプ光源は同期された2つのレーザダイオードを含み、
前記2つのレーザダイオードの出力光は逆相電流で掃引されて、実質的に一定のパワーと、個別の前記ダイオードの出力帯域幅より広い出力帯域幅を有する合成出力光を生成する、光源。
【請求項13】
少なくとも1つのポンプ光源は広帯域低出力ポンプ光源である、請求項10に記載の光源。
【請求項14】
少なくとも第1及び第2ポンプ光源により励起される光パラメトリック発振器(OPO)を使用することにより、1.1μm未満の波長で300GHzより広い広帯域放射を生成する方法であって、
前記第1ポンプ光源を介してポンプビームを生成することと、
前記第2ポンプ光源を介して300GHzを超える広帯域ポンプビームを生成することであって、前記広帯域ポンプビームは前記第1ポンプ光源の前記ポンプビームより短い波長を有する、生成することと、
前記広帯域ポンプビームを、第1結晶と第2結晶を含む光学キャビティを含むOPOモジュールに送達することであって、前記第2結晶は、前記第1結晶のそれと等しい共振波長と、300GHzより広い帯域幅の非共振波を有し、
前記第1結晶は前記第1ポンプ光源からの光を受け取り、OPOプロセスを介して第1出力光ビームと第2出力光ビームを生成し、前記第2結晶は、前記第2ポンプ光源の前記ポンプビームのOPOプロセスのために構成される、送達することと、
それによって、前記少なくとも1つのポンプ光源の前記帯域幅を広く調整する、巨視的パワーの調整可能広帯域光を生成することと、を含む方法。
【請求項15】
前記第2スペクトルフィルタは波長及び/又は帯域幅において調整可能である、請求項に記載の光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年9月21日に出願された、“TUNABLE LIGHT SOURCE WITH BROADBAND OUTPUT”と題する米国特許出願第62/561,413号及び2017年11月10日に出願された、“TUNABLE LIGHT SOURCE WITH BROADBAND OUTPUT”と題する米国特許出願第15/809,624号の利益を主張するものであり、両出願の全体を参照により本願に援用する。
【0002】
本発明は一般に、巨視的パワーの調整可能光を提供する光源に関し、より詳しくは、広帯域ポンプ光源、光パラメトリック発振器(OPO:optical parametric oscillator)、及び少なくとも1つの追加の非線形プロセスを利用して、特に1.1μm未満の波長で巨視的パワーの調整可能広帯域光を生成する光源に関する。
【背景技術】
【0003】
光パラメトリック発振器(OPO)は、レーザのそれに匹敵する特性を有する放射を発する光源である。OPOは、短い波長のポンプ光子を2つのより長い波長の光子、すなわちシグナル及びアイドラ光子に分割する非線形デバイスである。シグナル及びアイドラ光子の波長は相互に独立しておらず、波長において調整されてよい。
【0004】
図1に示されるように、OPOは、周波数ωの入力レーザ波(「ポンプ光」)を、二次非線形光学相互作用を介して、より低い周波数(ω、ω)の2つの出力波に変換する。出力波の周波数の和は、入力波の周波数と等しい:ω+ω=ω。歴史的経緯から、より高い周波数ωの出力波はシグナルと呼ばれ、より低い周波数ωの出力波はアイドラと呼ばれる。OPOはすべての入力エネルギーをシグナルとアイドラに変換するわけではないため、残りのポンプ波も出力される。
【0005】
OPOは光学共振器を必要とするが、レーザとは異なり、OPOは刺激された発光ではなく非線形結晶内の直接的な周波数変換に基づく。OPOは、入力光源(ポンプ光)に関するパワー閾値を示し、それ未満ではシグナル及びアイドラ帯域内の出力パワーは無視することができる。
【0006】
OPOは、光学共振器(キャビティ)と非線形光学結晶を含む。光学キャビティは、光波のための共振器を形成するミラー装置である。キャビティ内に拘束された光は何度も反射され、その結果、非線形結晶内にマルチパスができる。光学キャビティは、シグナル及びアイドラ波の少なくとも一方を共振させる役割を果たす。非線形光学結晶内で、ポンプ光、シグナル、及びアイドラビームは重なる。
【0007】
従来のレーザは、限定された固定波長を生成するが、OPOは、エネルギー及びモーメントの保存(位相整合による)によって特定されるシグナル及びアイドラの波長を広い範囲で変えることができるため、望ましいことがある。それゆえ、例えば中赤外、遠赤外、又はテラヘルツスペクトル域内の波長にアクセスすることができ、これらはレーザから得るのは難しい場合がある。それに加えて、OPOは、例えば位相整合条件を変えることにより、広い波長調整可能性を可能にする。これによってOPOは、例えばレーザ分光にとって有益なツールとなる。追加の非線形プロセスを利用することは、アクセス可能な波長の範囲をさらに広げることができる(例えば、近赤外、可視、及び/又は紫外スペクトル域)。
【0008】
それに加えて、スペクトルフィルタ処理されるプラズマ源やスーパコンティニウム白色光レーザ等のこれまでの光源も利用することができるが、これらの光源には、光子(エネルギー)効率が低い(典型的に、1nmあたり数mWの出力パワー)という欠点がある。他方で、OPO/非線形光学系(NLO)技術は、それよりはるかに高いエネルギー効率を提供することがあり、狭帯域出力パワーはより大きく、10mWを超える。それゆえ、スーパコンティニウム及びプラズマ源は広いスペクトルを生成し、そこから(より狭い帯域幅を必要とする多くの用途のために)一部がカットオフされるが、OPOは調整可能な、比較的狭帯域の出力を生成することができる(そのため、フィルタ処理によりパワーが無駄になることがない)。したがって、業界では上述の欠点の1つ又は複数に対応する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明の実施形態は、OPO技術の他、また別のNLOプロセスに基づく連続波(cw)光源を提供する。特に、典型的なcw OPOデバイスは、長いコヒーレンス長の高出力波長調整可能近乃至中赤外域(NIR乃至MIR)放射を生成するために使用されるが、本発明は短波長NIR、VIS(可視)、さらにはUV(紫外)域内で短いコヒーレンス長の高出力可変波長発光を提供することができる。特に、OPOモジュールは、広帯域ポンプ光源を利用し、2つの光波、すなわち長いコヒーレンス長を有し得る共振OPO光波と、ポンプ光源の帯域幅を広く調整する短いコヒーレンス長の非共振波を生成するように構成される。少なくとももう1つのキャビティ内非線形プロセス(例えば、和周波発生(SFG:sum frequency generation)又はOPO)は、ポンプ光源より短い波長を有し、且つ広帯域である少なくとももう1つの出力ビームを発生させる。希望に応じて、本発明の光源は任意選択により第2高出力広帯域ポンプ光源を利用してもよい。
【0010】
本願の光源システムは、波長アジリティと高出力を組み合わせた発光スペクトルを提供し、これは顕微鏡検査やバイオテック業界を含む様々な用途に利用することができるであろう。
【0011】
本発明のその他のシステム、方法、及び特徴は、当業者にとって、以下の図面と詳細な説明をよく見て、よく読めば明らかであり、又は明らかとなるであろう。このような追加的なシステム、方法、及び特徴はすべて、本説明の中に含められ、本発明の範囲内であり、付属の特許請求の範囲により保護されるものとする。
【0012】
添付の図面は、本発明をさらに理解することができるようにするために含められており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本発明の実施形態を示しており、説明文と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。図面中の構成要素は必ずしも正確な縮尺によるとはかぎらず、代わりに本発明の原理を明確に示すことに重点が置かれている。図中、同様の構成要素の各々は同様の番号で示されている。明瞭化を目的として、すべての図面においてすべての構成要素に符号が付されているわけではない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、先行技術によるOPOの一般的略図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態による高出力ポンプ光源により励起されるOPOモジュールの略図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態による低出力光源と光学増幅器から形成される高出力ポンプ光源により励起されるOPOモジュールの略図である。
図4図4は、本発明の第3実施形態による高出力ポンプ光源と第2光源により励起されるOPOモジュールの略図である。
図5図5は、本発明の第4実施形態による高出力ポンプ光源と第2光源により励起されるOPOモジュールの略図である。
図6図6は、OPOモジュールを励起するために使用されてよいポンプ光源の例の、より詳細な略図である。ポンプ光源はマルチモード(a)又は広帯域出力(b)を生成する。
図7図7は、例示的な広帯域ポンプ光源とそれに続く調整可能スペクトルフィルタの、より詳細な略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の定義は、本明細書中で開示される実施形態の特徴に適用される用語を理解するのに有益であり、本開示内の要素のみを定義するものである。特許請求の範囲内で使用される用語に対する限定は意図されず、又は定義により導かれるべきでもない。付属の特許請求の範囲の中で使用される用語は、該当する技術分野におけるそれらの慣例的な意味によってのみ限定されるべきである。
【0015】
通常、2つ以上の縦モードを有する光源は、「マルチ縦モード」と呼ばれる。しかしながら、本開示内で使用されるかぎり、「マルチ縦モード」とは、3つを超える縦モードの数を指す。これに関して、2又は3のモード数は、「数個の単一モード」と呼ばれ得る。
【0016】
本開示内で使用されるかぎり、「広帯域」とは300GHzを超える帯域幅を指し、それが複数の縦モード、単一の幅広線(線は複数の場合がある)、又は任意スペクトル分布により形成されるか否かを問わず、また縦モードスクランブルの前又は後の何れかを問わない。これに関して、広帯域、広い線幅、広い帯域幅、及び広いスペクトル幅は同じ現象を表す。
【0017】
本開示内で使用されるかぎり、「縦モードスクランブル」とは、連続的な、又はホッピングを介した高速モード周波数チューニングの方法を指す。これに関して、「高速」モード周波数チューニングとは、ある用途について適時に分解可能なものより速いことを意味する。高速モード周波数チューニングの一例は、100Hzを超える繰返し率である(しかしながら、これは単なる例にすぎず、本発明における高速モード周波数チューニングへの言及は100Hzより高い値のみに限定されないと理解されたい)。
【0018】
本開示内で使用されるかぎり、OPOは一般に、パルスOPOではなく連続波OPO(cw-OPO)を指す。一般に、「連続波」又は「CW」とは、パルス状の出力ビームを有するqスイッチ、利得スイッチ、又はモードロックレーザではなく、連続的な出力ビームを生成するレーザを指し、これは「フリーランニング」と呼ばれることがある。
【0019】
本開示内で使用されるかぎり、より短いNIRは1.1μm未満のNIR波長を指す。
【0020】
本開示内で使用されるかぎり、「ミラー」とは、少なくとも1つの反射面を有する光学素子を指す。反射面は、1方向から受け取った光を反射するが、その他の方向から受け取った光は透過させ得る。反射面は、ある波長を反射し、その他の波長を透過させ得る。さらに、反射面は幾つかの波長を部分的に透過させ、部分的に反射し得る。
【0021】
本開示内で使用されるかぎり、「巨視的パワー」とは、10mWを超えるパワーレベルを指す。もちろん、100mWより高い、又は1Wより高いパワーレベルもまた巨視的と考えられると理解されたい。
【0022】
本開示内で使用されるかぎり、少なくとも1つのポンプ光源及び、その少なくとも1つのポンプ光源の「帯域幅を広く調整する」OPOモジュールにより生成される発光とは、以下の何れかを指し、ポンプ光源に関する共振OPO光波に依存する:(1)共振OPO光波がポンプ光源よりはるかに狭く(これは最も典型的である)、NLO-結晶のポンプ受光帯域幅がポンプ帯域幅より広い場合、少なくとも1つの発光はポンプ光源とほぼ同じ帯域幅(GHz単位で測定)を有する。(2)共振OPO光波も広帯域であり、NLO-結晶のポンプ受光帯域幅がポンプ帯域幅より広い場合、少なくとも1つの発光は、ポンプ光源よりはるかに広い帯域幅(GHz単位で測定)を有する。(3)共振OPO光波がポンプ光源よりはるかに狭く、NLO-結晶のポンプ受光帯域幅がポンプ帯域幅より狭い場合、何れかの、又は両方のNLO-結晶の受光帯域幅は発光帯域幅に対する上限を設定する。
【0023】
ここで、本発明の実施形態を詳しく見るが、その例が添付の図面に示されている。可能なかぎり、図面及び説明文中で、同じ又は同様の部品を指すために同じ参照番号が用いられている。
【0024】
一般に、本発明の実施形態は、より短波長のNIR、VIS、及び又はUV内の短いコヒーレンス長(好ましくは、0.5mm未満)の巨視的パワーの調整可能光を生成するための装置と方法を含む。特に、実施形態は、広帯域ポンプ光源をOPO技術と共に、その他の非線形プロセスと組み合わせて使用することによって、このような光を生成する。これは、典型的なcw OPOデバイスを使って長いコヒーレンス長の巨視的パワーの波長調整可能近乃至中赤外(NIR乃至MIR)放射を生成する先行技術のOPOとは対照的である。幾つかの実施形態において、本発明は、広帯域ポンプ(例えば、全体で300GHzより広い幅を有する広帯域ポンプ)を使ってOPOモジュールを励起することにより所望の発光を実現してよい。本発明の光源は、任意選択により、第一のポンプ光源のそれとは異なる波長を有する第2OPOポンプ光源を利用してもよい。
【0025】
本発明の実施形態によれば、OPOモジュールは、OPO発振閾値より高く励起される。例えば、OPOモジュールは、OPO発振閾値の約2.5倍まで励起されてもよい。このようなポンプパワーは、単一縦モード共振OPO光波を発生させる可能性がある。他の実施形態によれば、OPOはOPO発振閾値の2.5倍超に、例えば、OPO発振閾値の約3倍超に、OPO発振閾値の約3.5倍超に、約4倍超に、約4.5倍超に、さらには約5倍超に励起されてもよい。OPO発振閾値の約2.5倍を超えるポンプパワーを送達する高出力ポンプ光源を利用する実施形態においては、共振OPO光波のマルチ縦モード動作が実現される可能性がある。非限定的な例として、例示的なOPO発振閾値が約2Wとすると、2~5ワットを送達する高出力ポンプ光源は、共振波を単一縦モードのままとし得、それに対して、5ワットより高い高出力ポンプレベルでは、共振波はマルチ縦モード及び/又は幅広化され始め得る。
【0026】
次に、図面の各種の図を参照するが、図中、同様の参照文字は同様の部品を指しており、図2に本発明による光源の一実施形態が示されている。図のように、高出力ポンプ光源110は、OPO発振閾値より高いパワーレベルでOPOモジュール150を励起し、それが今度は、発光スペクトルを生成する。各種の実施形態によれば、高出力ポンプ光源110は、一般的な高出力レーザ又はダイオードの形態であっても、増幅ダイオード又はレーザの形態であってもよい。例示的な実施形態によれば、高出力ポンプ光源110は広帯域光源である(例えば、全体で300GHzより広い)。
【0027】
図2に示されるように、OPOモジュール150は、NLO-結晶154(OPOプロセス用に構成されていてよい)、及び少なくとも1つのNLO-結晶156(SFG-又はOPO-プロセス用に構成されていてよい)の内部で生成された光波の少なくとも1つについて共振する光学共振器152を含む。NLO-結晶154、156のどちらにも、特に十分に短いNLO-結晶に加え、任意選択により、特殊な形状の利得曲線を利用することにより(例えば、ビーム経路に沿ったマルチグレーティング又はチャープ格子を備える強誘電体でポーリングされたOPO結晶を使用することにより)、十分なポンプ受光帯域幅が設けられる。これによって、発光スペクトルの詳細な形状の制御が可能となり得る。例えば、チャープポーリングを有する結晶では、ポーリング期間はビーム伝搬に沿ってわずかに変化することがあり、その結果、OPOのための利得曲線とポンプ受光帯域幅が広がる。ビーム経路に沿ったマルチグレーティングを有する結晶を使用すると、異なるポーリングセクションに関する利得曲線の重畳が生じる。例えば、1つの結晶は、より広い波長チューニングのために幾つかの平行チャープ又はマルチグレーティングエリアを含み得る。幾つかの実施形態において、チャープファンアウトグレーティングが使用されてもよく、これは、ビーム伝搬方向に沿って、及びそれに対して垂直に、ポーリング期間の長さが徐々に変化する。
【0028】
一実施形態によれば、本発明の光源は、OPOモジュール150の発光スペクトルは一部分において(例えば、共振波が単一縦モードである場合)スペクトル的に単一縦モードであり得、一方でOPOモジュール150の他の部分の発光スペクトルは高出力ポンプ光源110の帯域幅を広く調整するように、構成される。後者は、非共振OPO光波及び、ポンプ光波が関わる非線形プロセスを指す。それに加えて、共振OPO光波が関わるキャビティ内非線形プロセスは非常に効率的であり、それは共振OPO光波の高出力による。例えば、一部のOPOについて、共振OPO光波のパワーレベルは10W、100W、さらには1000Wを超える場合がある。広帯域ポンプ光源が関わる非線形プロセスにより、広帯域出力の生成が可能となる。特に、追加の非線形プロセスを取り入れることにより、アクセス可能な波長範囲(例えば、近赤外、可視、及び/又は紫外スペクトル域)を拡張することができる。したがって、ポンプのキャビティ内SFGと共振OPO光波は1つの好ましいプロセスである。このプロセスの出力は、共振OPO光波とのSFGのために再使用されてよい。
【0029】
他の実施形態によれば、光源は、OPOモジュール150の発光スペクトルがすべてマルチ縦モードとなるように構成される。例えば、共振波がマルチ縦モードである場合(例えば、ポンプパワーはOPO閾値の2.5倍よりはるかに高い)、OPOモジュール150はすべての出力波がマルチ縦モードである発光スペクトルを提供するように構成されてよい。
【0030】
さらに示されているように、任意選択による第1スペクトルフィルタ130が高出力ポンプ光源110とOPOモジュール150との間に配置されて、高出力ポンプ光源110からのスペクトルの一部をフィルタ処理し、及び/又は高出力ポンプ光源110の出力のスペクトル幅を変化させてもよい。
【0031】
OPOモジュール150は次に、OPOモジュール150の出力側に配置された任意選択による第2スペクトルフィルタ160に光を出力する。第2スペクトルフィルタ160は、OPO出力スペクトルの一部をフィルタ処理するか、又はOPO出力のスペクトル幅を変化させるために使用されてよい。光源はこのようにして、短いコヒーレンスの巨視的パワーの可変波長及び可変帯域幅発光を提供する。
【0032】
図3は、本発明による光源の他の実施形態を示す。この実施形態は図2に示されるものと似ているが、広帯域光学増幅器240が追加されており、これは光源210(又は任意選択による第1スペクトルフィルタ130)とOPOモジュール150との間に配置されて、光源210(例えば、100mW未満、又は10mW未満、さらにはそれよりはるかに低いパワーレベルを有する、例えばレーザ、ダイオード、ランプ、又はスーパコンティニウム光源であり得る)の低出力を、OPO閾値を超えるのに十分なパワーレベルに増幅する。増幅器の高出力はOPOモジュール150を励起し、それが今度は、巨視的パワーの可変波長広帯域光スペクトルを生成する。
【0033】
図2に関して説明した実施形態と同様に、図3のOPOモジュール150は、少なくともNLO-結晶154、156の中で生成された光波の1つについて共振する光学共振器152を含む。結晶154、156には十分に大きい位相整合帯域幅が設けられる。次に、OPOモジュール150は光を任意選択による第2スペクトルフィルタ160に出力し、これはOPO-/SFG-出力スペクトルの一部をフィルタ処理するか、又はOPO-/SFG-出力のスペクトル幅を変化させるために使用されてよい。
【0034】
図4は、本発明による光源の他の実施形態を示す。この実施形態は図2に示したものと同様であるが、追加の光源320を有する。図2に関して説明したように、高出力ポンプ光源310(例えば、一般的な高出力近赤外(NIR)レーザ又は増幅ダイオード若しくはレーザ)はOPOモジュール150を励起し、それが今度は、巨視的パワーの可変波長広帯域光スペクトルを生成する。
【0035】
図4に示されるように、OPOモジュール150は、NLO-結晶154(1つのOPO-プロセス用に構成されていてよい)と、少なくとも1つのNLO-結晶156(SFG-又は他のOPOプロセス用に構成されていてよい)との中で生成される光波の少なくとも1つについて共振する光学共振器152を含む。NLO-結晶154、156のどちらにも、特に十分に短いNLO-結晶を利用することにより、十分に広い位相整合帯域幅が設けられる。
【0036】
図4に示される実施形態では、高出力ポンプ光源310はOPOモジュール150に直接発光を提供し、中間スペクトルフィルタがない。しかしながら、希望により、高出力ポンプ光源310からのスペクトルの一部をフィルタ処理するか、又は高出力ポンプ光源310の出力のスペクトル幅を変化させるために、スペクトルフィルタ(図示せず)が高出力ポンプ光源310とOPOモジュール150との間に配置されてよいと理解されたい。図4に示されるように、追加の光源320からのスペクトルの一部をフィルタ処理するか、又は追加の光源320の出力のスペクトル幅を変化させるために、任意選択によるスペクトルフィルタ330が追加の光源320とOPOモジュール150との間に配置されてもよい。
【0037】
図4にさらに示されているように、追加の光源320の発光はNLO-結晶156だけを通過し得る。そのため、追加の光源320はSFG生成に使用されるものであってもよい。次に、OPOモジュール150は光を任意選択によるスペクトルフィルタ160に出力し、これはOPO-/SFG-出力スペクトルの一部をフィルタ処理するか、又はOPO-/SFG-出力のスペクトル幅を変化させるために使用されてもよい。
【0038】
各種の実施形態によれば、OPOモジュールは2つのOPOプロセスを含んでいてよい。このことは、本願と同時係属中の米国特許出願第15/646,434号(同出願の開示の全体を参照によって本願に援用する)に記載されている。OPOモジュール内に2つのOPOプロセスを提供することにより、広帯域ポンプ光源が使用された場合に、広帯域非共振OPO光波発光が提供され得る。
【0039】
図5は、2つのOPOプロセス(OPO-1及びOPO-2)を利用するOPOモジュールの非常に高度な実施形態を示す。両方のOPO結晶は、それぞれの高出力広帯域ポンプ光源P1及びP2により励起される。幾つかの実施形態によれば、ポンプ光源P2はポンプ光源P1のSHGであってよい。OPO-1及びOPO-2はどちらも一般的な共振器(ボウタイリング共振器等)を有する。OPO-1の共振波(=S1)とOPO-2の共振波(=I2)は実質的に等しい。第3NLO-プロセス(SFG-1)は、P1とS1の和周波発生を利用する。第4NLO-プロセス(SFG-2)は、SFG-1とS1の和周波発生を利用し得る。以下の出力光が広帯域であると予想される:I1、S2、SFG-1、及びSFG-2。
【0040】
コヒーレンス長を短縮するためのまた別の手段が、ポンプ光源若しくはスペクトルフィルタの特徴(恐らく、ポンプビームの縦モードスクランブルを可能にする)、又は共振OPO-光波モードに対するディザから得られてもよい。このような手段は、2017年9月21日に出願された“Light Source With Multi-Longitudinal Mode Continuous Wave Output Based On Multi-Mode Resonant OPO Technology”と題する米国仮特許出願第62/561,428号に記載されている(同出願の開示を参照により本願に援用する)。例えば、共振波をスクランブルするための追加のスクランブル手段がOPOモジュール内に提供されてもよい。このようなスクランブルは、幾つかの実施形態において、共振器の長さの高速変化又は波長選択素子の高速ディザリングにより実現されてよい。追加的な縦モードスクランブルも考慮されてよい(例えば、キャビティ長又は有効なエタロンの厚さ又は有効な強誘電体格子周期の長さの高速ディザリング。後の2つは、機械的又は電気光学的に行われてよい)。これにより、共振OPO-光波の縦モードスクランブルが可能となる。
【0041】
図6は、ポンプ光源のコヒーレンスが、1つの共通のポンプ光源(例えば、ポンプ光源110、210、320等)を形成する少なくとも2つの光源(例えば、レーザダイオード1及びレーザダイオード2)の出力を合成することによってどのように短縮され得るかの一例を示す。図6aは、わずかに波長分離された2つのモードがどのように足し合わせられ得るかを示す。追加的な高速波長変調により、出力の幅が広くなる。この方式では、例えば、おそらくは同じ2つのレーザダイオードが使用され、逆相電流で掃引されてよい。電流掃引により波長及びパワー掃引が行われる。この例において、2つのレーザダイオードの中心波長はわずかに異なってもよい。十分に同期させると、合成された出力のパワーをほぼ一定に保つことができ、その一方で、合成出力の帯域幅は縦モードスクランブルにより広げられる。図6bは、すでに広帯域の2つの光源が組み合わせられる単純なケースを表す。この構成では、2つのレーザダイオードの中心波長はわずかに異なる。その結果、合成された出力は幅広となる。
【0042】
図7は、超広帯域のポンプ光源(例えば、ポンプ光源110、210等であり、これらは例えば、LED、スーパルミネッセンスダイオード、スーパコンティニウム、又はその他の超広帯域光源を含んでいてよい)の出力スペクトルを操作するためにチューナブルフィルタ130がどのように使用され得るかの例を示す。図7aに示されるように、チューナブルフィルタ130を使用しない場合の超広帯域ポンプ光源(例えば、ポンプ光源110、210等)の発光出力スペクトルは、図7bに示されるように超広帯域ポンプ光源(例えば、ポンプ光源110、210等)からの出力がチューナブルフィルタ130を通った場合の発光出力スペクトルのそれよりはるかに広くてもよい。この例では、操作された出力スペクトルを提供するために、チューナブルバンドパス又はチューナブルロングパス及びショートパスの組合せが使用されてよい。
【0043】
このように、本発明は、短いコヒーレンス長の巨視的パワーの調整可能光を生成できる光源を提供する。特に、広帯域ポンプ光源を利用することにより、OPOモジュールを励起して、OPOモジュールが非共振OPO光波の波長でより短いコヒーレンス長(従来のOPOと比較して)の出力を生成するようにしてよい。特に、高出力レベルのポンプ光源を利用することにより、OPOを励起して、OPOが、背景技術の項で述べたように一般的にシグナル及びアイドラと呼ばれる2つの新たな光波を生成するようにしてよい。OPOキャビティは、これら2つの新たな光波のうちの少なくとも一方のための共振であり、光源の出力の少なくとも一部は高出力ポンプ光源の帯域幅を広く調整する(好ましくは、広帯域の出力を提供する)。OPOモジュールには、広いポンプ受光帯域幅と幅広化された利得曲線(例えば、チャープ強誘電体ポーリングによるか、又はマルチポーリング結晶チップを使用することにより複数の利得ピークを持つ)を有するNLO結晶が設けられてよい。追加的なキャビティ内NLOプロセス(例えば、共振波とのSFG又は第2OPOプロセス)によって、任意選択により、異なる波長と巨視的パワーレベル(典型的に、10mWより大きく、恐らく1Wを超える)を効率的に生成してよい。システムは任意選択により、高出力共振波と混合するために第2高出力広帯域光源を使用してもよい。希望により、ダイオードと増幅器との間に可変スペクトルフィルタを設置して、オンデマンド帯域幅を可能にしてもよい。
【0044】
本発明によれば、共振OPO光波に関わるあらゆる生成が、キャビティ内共振波のパワーが大きいことにより、非常に効率的となる。有利な点として、本発明の光源は、より短いNIR、VIS、さらにはUV波長範囲内の放射を効率的に生成できる。このような光源システムは、顕微鏡検査やバイオテックをはじめとする様々な用途に適した光を生成できる。
【0045】
上記を考慮し、本発明は、本発明の改良や変形型も、これらが後述の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に含まれるかぎり、カバーするものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7