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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】線維症の処置のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/662 20060101AFI20221101BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221101BHJP
   A61P 5/16 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
A61K31/662
A61P1/16
A61P17/00
A61P9/10 101
A61P11/06
A61P9/00
A61P21/00
A61P1/18
A61P13/12
A61P3/10
A61P1/02
A61P11/00
A61P37/06
A61P5/16
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020516794
(86)(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 US2018035909
(87)【国際公開番号】W WO2018226604
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】62/515,421
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519096068
【氏名又は名称】バイキング・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・リアン
(72)【発明者】
【氏名】ヒロコ・マサムネ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・イー・バーカー
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-542301(JP,A)
【文献】特表2008-545710(JP,A)
【文献】特表2008-545711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105956(US,A1)
【文献】CABLE, E. E. et al,Reduction of Hepatic Steatosis in Rats and Mice After Treatment with a Liver-Targeted Thyroid Hormone Receptor Agonist,Hepatology,2009年,pp.407-417
【文献】ALONSO-MERINO, E. et al,Thyroid hormones inhibit TGF-β signaling and attenuate fibrotic responses,PNAS,2016年,E3451-E3460
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における線維症又は線維症の状態を治療処置する方法における使用のための化合物を含む医薬組成物であって、前記使用が、前記対象の1つ又は複数の組織に存在する細胞外マトリックスタンパク質の量の低下をもたらし、前記化合物が、
【化1】
及びそれらの薬学的に許容される塩
からなる群から選択される構造を有する、医薬組成物
【請求項2】
前記対象が、糖原病III型(GSD III)、糖原病VI型(GSD VI)、糖原病IX型(GSD IX)、肝炎、強皮症、アテローム性動脈硬化症、喘息、心筋繊維化、臓器移植線維症、筋線維症、膵線維症、骨髄線維症、肝線維症、胆嚢の硬変症、脾臓の線維症、肺線維症、特発性肺線維症、びまん性実質性肺疾患、特発性間質性線維症、びまん性間質性線維症、間質性肺臓炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、急性間質性肺臓炎、過敏性肺臓炎、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎、リンパ球性間質性肺炎、塵肺症、珪肺症、肺気腫、間質性線維症、サルコイドーシス、縦隔線維症、心筋繊維化、心房線維症、心内膜心筋線維症、腎線維症、慢性腎疾患、II型糖尿病、黄斑変性症、ケロイド病変、肥厚性瘢痕、腎性全身性線維症、注射線維症、手術の合併症、線維性慢性同種移植血管症及び/又は移植器官における慢性拒絶反応、虚血再灌流傷害に関連する線維症、精管切断術後疼痛症候群、関節リウマチに関連する線維症、関節線維症、デュピュイトラン病、皮膚筋炎-多発性筋炎、混合性結合組織病、口腔の繊維増殖性病変、線維化性腸狭窄、クローン病、グリア瘢痕、軟膜線維症、髄膜炎、全身性エリテマトーデス、放射線曝露による線維症、乳腺嚢胞破裂による線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、又はそれらの症状若しくは後遺症、又はTRβ経路内におけるインターベンションによって影響されうるコラーゲン等の細胞外マトリックス成分の過剰な沈着を生じる他の疾患若しくは状態、又はそれらのいずれかの組合せから選択される1つ又は複数の状態を有する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
前記状態が、原発性線維症である、請求項2に記載の医薬組成物
【請求項4】
前記状態が、線維症を症状として有する、請求項2に記載の医薬組成物
【請求項5】
前記対象が、強皮症、アテローム性動脈硬化症、心筋繊維化、臓器移植線維症、筋線維症、膵線維症、骨髄線維症、肝線維症、脾臓の線維症、肺線維症、特発性肺線維症、特発性間質性線維症、びまん性間質性線維症、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、塵肺症、珪肺症、間質性線維症、サルコイドーシス、縦隔線維症、心筋繊維化、心房線維症、心内膜心筋線維症、腎線維症、黄斑変性症、ケロイド病変、肥厚性瘢痕、腎性全身性線維症、注射線維症、手術の線維性合併症、線維性慢性同種移植血管症、虚血再灌流傷害に関連する線維症、関節線維症、デュピュイトラン病、口腔の繊維増殖性病変、線維化性腸狭窄、グリア瘢痕、軟膜線維症、放射線曝露による線維症、乳腺嚢胞破裂による線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、又はそれらのいずれかの組合せの1つ又は複数を有する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項6】
前記対象が、糖原病III型(GSD III)、糖原病VI型(GSD VI)、糖原病IX型(GSD IX)、肝炎、強皮症、アテローム性動脈硬化症、喘息、胆嚢の硬変症、びまん性実質性肺疾患、間質性肺臓炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、急性間質性肺臓炎、過敏性肺臓炎、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎、リンパ球性間質性肺炎、肺気腫、慢性腎疾患、II型糖尿病、黄斑変性症、移植器官における慢性拒絶反応、精管切断術後疼痛症候群、関節リウマチ、皮膚筋炎-多発性筋炎、混合性結合組織病、クローン病、髄膜炎、全身性エリテマトーデス、又はそれらの症状若しくは後遺症、又はTRβ経路内におけるインターベンションによって影響されうるコラーゲン等の細胞外マトリックス成分の過剰な沈着を生じる他の疾患若しくは状態、又はそれらのいずれかの組合せの1つ又は複数を有する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項7】
前記線維症が、GSD III、GSD VI、GSD IX、膵臓の硬変症、デュピュイトラン病、強皮症、特発性肺線維症、若しくはアルコール性脂肪肝疾患、又はそれらのいずれかの組合せの症状又は後遺症である、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項8】
前記医薬組成物が、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤をさらにむ、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項9】
前記組成物が、経口、静脈内、動脈内、腸管内、直腸、腟内、経鼻、経肺、局所、皮内、経皮、経頬、経舌、舌下、若しくはオプタルミック投与、又はそれらのいずれかの組合せのために製剤化される、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項10】
前記対象が、コラーゲンの異常又は過剰な沈着を示す、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項11】
前記対象が、1型コラーゲンの異常又は過剰な沈着を示す、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項12】
前記対象が、1a型コラーゲンの異常又は過剰な沈着を示す、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項13】
前記対象が、III型コラーゲンの異常又は過剰な沈着を示す、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項14】
前記医薬組成物を投与することが、前記線維症の改善又は治癒をもたらす、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項15】
前記医薬組成物を投与することが、前記対象の1種又は複数の組織中に存在するコラーゲンの量の低下をもたらす、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項16】
前記医薬組成物を投与することが、前記対象の1種又は複数の組織中に存在するI型、Ia型、又はIII型コラーゲンの量の低下をもたらす、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の組成物及び方法は、一般に線維性疾患に対する処置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
線維症は、多種多様な組織に影響を与える膨大な数の状態、その中でも、肝臓(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎、糖原病IX型、肝硬変(cirrhosis))、肺(例えば、慢性間質性肺疾患、塵肺症、珪肺症、肺気腫、線維化性肺疾患、特発性肺線維症、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎)、脈管構造(例えば、びまん性間質性線維症;アテローム性動脈硬化症)、心臓(例えば、心筋繊維化(cardiac fibrosis);心房線維症;心内膜心筋線維症)、皮膚(例えば、ケロイド病変、腎性全身性線維症、強皮症)、関節及び間質組織(例えば、関節線維症、デュピュイトラン病)、膵臓(例えば、膵炎)、口(例えば、口腔の繊維増殖性病変)、腸(例えば、線維化性狭窄症(fibrosing strictures)、例えばクローン病に関連した線維化性狭窄症)、脳(グリア瘢痕、細菌性髄膜炎に関連する軟膜線維症)の病原性特徴である。線維症は、乳房における嚢胞破裂の結果として(乳房組織における触知可能な病変を引き起こす)、一般には傷害又は手術後等の創傷又は組織侵襲に続くコラーゲンの過剰沈着の結果として、例えば(がん処置時等)電離放射線への曝露等、環境からの侵襲又は様々な傷害にも起因しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO87/05297
【文献】米国特許第7,829,552号
【文献】米国特許第7,514,419号
【文献】米国特許出願公開第2009/002895号
【文献】米国特許出願公開第2010/0081634号
【文献】米国特許出願公開第2012/0046364号
【文献】国際公開第2011/038207号
【非特許文献】
【0004】
【文献】Alfonso-Merinoら、Proc. Nat. Acad, Sci.、113(24):E3451-60 (2016)
【文献】Remington's The Science and Practice of Pharmacy、21版、Lippincott Williams & Wilkins社(2005)
【文献】Merck Index、Merck & Company社、Rahway, NJ
【文献】Gilmanら(編)(1990)、Goodman and Oilman's: The Pharmacological Basis of Therapeutics、8版、Pergamon Press社
【文献】Modern Pharmaceutics、4版、9章及び10章(Banker & Rhodes、編集者、2002)
【文献】Liebermanら、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (1989)
【文献】Ansel、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、8版(2004)
【文献】Powellら、Compendium of Excipients for Parenteral Formulations、PDA J Pharm Sci and Tech、1998、52 238~311
【文献】Nemaら、Excipients and Their Role in Approved Injectable Products: Current Usage and Future Directions、PDA J, Pharm. Sci. Tech.、2011、65 287~332
【文献】Stish, L.ら、BMC Musculoskelet. Disord.、16: 138~148 (2015)
【文献】Wallengren, J.ら、Skin Pharm. Appl. Skin Physiol.、15(3): 154~165(2002)
【文献】Alonso-Merinoら、Proc. Nat. Acad. Sci.、113(24):E3451-60 (2016)
【文献】Liu, K.M.ら、Mol. Genet. Metabol.、111(4):467~76 (2014)
【文献】Varsanyi, M.ら、Biochem. Genet.、18(3-4): 247~61 (1980)
【文献】Hansen, H.ら、Drug Discovery Today、22(17): 1701~1718 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一部のタイプの線維症は、根底にある遺伝的素因(例えば、デュピュイトラン病)に関与するが、大部分のタイプは、患部組織の長期炎症(例えば、肝線維症及びじん肺線維症(pneumoconial fibroses))に関与する。症状は、掻痒症や美的懸念(例えば、皮膚のケロイド病変の場合)と同程度に軽微な場合もあれば、又は肺不全や死亡(例えば、肺線維症及び心筋線維症の末期症状)と同程度に重大な場合もある。線維症は、確定診断されると本質的に不可逆であるが、様々な線維性の状態の進行を遅くするための又は線維症若しくは線維性の状態を改善するための処置が存在する。現在の抗線維化処置としては、ピルフェニドン等の抗炎症性化合物及び線維芽細胞増殖因子受容体阻害薬ニンテダニブが挙げられる。皮膚及び皮下線維症の場合、現在の治療の例としては、手術、光線療法及びクロストリジウム・ヒストリチカム(Clostridium histolyticum)コラゲナーゼの注射が挙げられる。しかし、様々な線維症が不可逆性であり、現在の治療の有効性が限定されているために、このクラスの状態への更なる処置手法の必要性が存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示されるのは、それを必要とする対象における線維症、線維症の状態、又は線維症の症状を処置する方法であって、前記対象に、少なくとも1つの式I:
【0007】
【化1】
【0008】
[式中、
Gは、-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-Se-、-CH2-、-CF2-、-CHF-、-C(O)-、-CH(OH)-、-CH(C1~C4アルキル)-、-CH(C1~C4アルコキシ)-、-C(=CH2)-、-NH-、及び-N(C1~C4アルキル)-からなる群から選択され、
Tは、-(CRa 2)k-、-CRb=CRb-(CRa 2)n-、-(CRa 2)n-CRb=CRb-、-(CRa 2)-CRb=CRb-(CRa 2)-、-O(CRb 2)(CRa 2)n-、-S(CRb 2)(CRa 2)n-、N(Rc)(CRb 2)(CRa 2)n-、N(Rb)C(O)(CRa 2)n、-C(O)(CRa 2)m-、-(CRa 2)mC(O)-、-(CRa 2)C(O)(CRa 2)n、-(CRa 2)nC(O)(CRa 2)-、及び-C(O)NH(CRb 2)(CRa 2)p-からなる群から選択され、
kは、1~4の整数であり、
mは、0~3の整数であり、
nは、0~2の整数であり、
pは、0~1の整数であり、
各Raは、水素、置換されていてもよい-C1~C4アルキル、ハロゲン、-OH、置換されていてもよい-O-C1~C4アルキル、-OCF3、置換されていてもよい-S-C1~C4アルキル、-NRbRc、置換されていてもよい-C2~C4アルケニル、及び置換されていてもよい-C2~C4アルキニルからなる群から独立して選択され、ただし、一方のRaが、O、S、又はN原子を介してCに結合しているとき、同じCに結合している他方のRaは、水素であるか又は炭素原子を介して結合しており、
各Rbは、水素、及び置換されていてもよい-C1~C4アルキルからなる群から独立して選択され、
各Rcは、水素、並びに置換されていてもよい-C1~C4アルキル、置換されていてもよい-C(O)-C1~C4アルキル、及び-C(O)Hからなる群から独立して選択され、
R1及びR2は各々、ハロゲン、置換されていてもよい-C1~C4アルキル、置換されていてもよい-S-C1~C3アルキル、置換されていてもよい-C2~C4アルケニル、置換されていてもよい-C2~C4アルキニル、-CF3、-OCF3、置換されていてもよい-O-C1~C3アルキル、及びシアノからなる群から独立して選択され、
R6、R7、R8、及びR9は各々、水素、ハロゲン、置換されていてもよい-C C1~C4アルキル、置換されていてもよい-S-C1~C3アルキル、置換されていてもよい-C2~C4アルケニル、置換されていてもよい-C2~C4アルキニル、-CF3、-OCF3、置換されていてもよい-O-C1~C3アルキル、及びシアノからなる群から独立して選択されるか、又はR6及びTは、それらが結合している炭素と共に一緒になって、-NRi-、-O-、及び-S-から独立して選択される0~2個のヘテロ原子を含む5~6個の原子の環を形成し、ただし、環中に2個のヘテロ原子が存在し、両方のヘテロ原子が窒素と異なるとき、両方のヘテロ原子は、少なくとも1個の炭素原子によって分離されていなければならず、Xは、この環に、環炭素への直接結合によって、又は環炭素若しくは環窒素に結合している-(CRa 2)-若しくは-C(O)-によって結合しており、
Riは、水素、-C(O)C1~C4アルキル、-C1~C4アルキル、及び-C1~C4-アリールからなる群から選択され、
R3及びR4は、水素、ハロゲン、-CF3、-OCF3、シアノ、置換されていてもよい-C1~C12アルキル、置換されていてもよい-C2~C12アルケニル、置換されていてもよい-C2~C12アルキニル、-SRd、-S(=O)Re、-S(=O)2Re、-S(=O)2NRfRg、-C(O)ORh、-C(O)Re、-N(Rb)C(O)NRfRg、-N(Rb)S(=O)2Re、-N(Rb)S(=O)2NRfRg、及び-NRfRgからなる群から独立して選択され、
各Rdは、置換されていてもよい-C1~C12アルキル、置換されていてもよい-C2~C12アルケニル、置換されていてもよい-C2~C12アルキニル、置換されていてもよい-(CRb 2)nアリール、置換されていてもよい-(CRb 2)nシクロアルキル、置換されていてもよい-(CRb 2)ヘテロシクロアルキル、及び-C(O)NRfRgからなる群から選択され、
各Reは、置換されていてもよい-C1~C12アルキル、置換されていてもよい-C2~C12アルケニル、置換されていてもよい-C2~C12アルキニル、置換されていてもよい-(CRa 2)nアリール、置換されていてもよい-(CRa 2)nシクロアルキル、及び置換されていてもよい-(CRa 2)nヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、
Rf及びRgは各々、水素、置換されていてもよい-C1~C12アルキル、置換されていてもよい-C2~C12アルケニル、置換されていてもよい-C2~C12アルキニル、置換されていてもよい-(CRb 2)nアリール、置換されていてもよい-(CRb 2)nシクロアルキル、及び置換されていてもよい-(CRb 2)nヘテロシクロアルキルからなる群から独立して選択され、又はRf及びRgは一緒になって、O、NRc、及びSからなる群から選択される第2のヘテロ基を含有していてもよい置換されていてもよいヘテロ環式環を形成していてもよく、前記置換されていてもよいヘテロ環式環は、置換されていてもよい-C1~C4アルキル、-ORb、オキソ、シアノ、-CF3、置換されていてもよいフェニル、及び-C(O)ORhからなる群から選択される0~4個の置換基で置換されていてもよく、
各Rhは、置換されていてもよい-C1~C12アルキル、置換されていてもよい-C2~C12アルケニル、置換されていてもよい-C2~C12アルキニル、置換されていてもよい-(CRb 2)nアリール、置換されていてもよい-(CRb 2)nシクロアルキル、及び置換されていてもよい-(CRb 2)nヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、
R5は、-OH、置換されていてもよい-OC1~C6アルキル、OC(O)Re、-OC(O)ORh、-F、-NHC(O)Re、-NHS(=O)Re、-NHS(=O)2Re、-NHC(=S)NH(Rh)、及び-NHC(O)NH(Rh)からなる群から選択され、
Xは、P(O)YR11Y'R11であり、
Y及びY'は各々、-O-及び-NRv-からなる群から独立して選択され、Y及びY'が-O-であるとき、-O-に結合しているR11は、-H、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいCH2-ヘテロシクロアキル(heterocycloakyl)(ここで、環式部分は、カーボネート又はチオカーボネートを含有する)、置換されていてもよい-アルキルアリール、-C(Rz)2OC(O)NRz 2、-NR2-C(O)-Ry、-C(Rz)2-OC(O)Ry、-C(Rz)2-O-C(O)ORy、-C(Rz)2OC(O)SRy、-アルキル-S-C(O)Ry、-アルキル-S-S-アルキルヒドロキシ、及び-アルキル-S-S-S-アルキルヒドロキシからなる群から独立して選択され、
Y及びY'が-NRv-であるとき、-NRv-に結合しているR11は、-H、-[C(Rz)2]q-COORy、-C(Rx)2COORY、-[C(Rz)2]q-C(O)SRy、及び-シクロアルキレン-COORyからなる群から独立して選択され、
Yが-O-であり、Y'がNRvであるとき、-O-に結合しているR11は、-H、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいCH2-ヘテロシクロアキル(ここで、環式部分は、カーボネート又はチオカーボネートを含有する)、置換されていてもよい-アルキルアリール、-C(Rz)2OC(O)NRz 2、-NRz-C(O)-Ry、-C(Rz)2-OC(O)Ry、-C(Rz)2-O-C(O)ORy、-C(Rz)2OC(O)SRy、-アルキル-S-C(O)Ry、-アルキル-S-S-アルキルヒドロキシ、及び-アルキル-S-S-S-アルキルヒドロキシからなる群から独立して選択され、-NRv-に結合しているR11は、H、-[C(Rz)2]q-COORy、-C(Rx)2COORy、-[C(Rz)2]q-C(O)SRy、及び-シクロアルキレン-COORyからなる群から独立して選択され、
或いはY及びY'が、-O-及びNRvから独立して選択されるとき、一緒になってR11及びR11は、-アルキル-S-S-アルキル-であって、環式基を形成し、又はR11及びR11は一緒になって、下記の基であり、
【0009】
【化2】
【0010】
式中、
V、W、及びW'は、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアラルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、置換されていてもよい1-アルケニル、及び置換されていてもよい1-アルキニルからなる群から独立して選択され、
又はV及びZは一緒になって、更なる3~5個の原子を介して連結されて、リンに結合している両方のY基からの3個の原子である炭素原子に結合した、ヒドロキシ、アシルオキシ、アルキルチオカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、若しくはアリールオキシカルボニルオキシで置換された5~7個の原子を含有する環式基を形成し、ここで、0~1個の原子はヘテロ原子であり、残りの原子は炭素であり、
又はV及びZは一緒になって、更なる3~5個の原子を介して連結されて、リンに結合しているYに対してベータ及びガンマ位でアリール基に縮合した環式基を形成し、ここで、0~1個の原子はヘテロ原子であり、残りの原子は炭素であり、
又はV及びWは一緒になって、更なる3個の炭素原子を介して連結されて、6個の炭素原子を含有し、リンに結合しているYからの3個の原子である前記炭素原子の1個に結合した、ヒドロキシ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アルキルチオカルボニルオキシ、及びアリールオキシカルボニルオキシからなる群から選択される1個の置換基で置換された、置換されていてもよい環式基を形成し、
又はZ及びWは一緒になって、更なる3~5個の原子を介して連結されて、環式基を形成し、ここで、0~1個の原子はヘテロ原子であり、残りの原子は炭素であり、Vは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、若しくは置換ヘテロアリールでなければならず、
又はW及びW'は一緒になって、更なる2~5個の原子を介して連結されて、環式基を形成し、ここで、0~2個の原子は、ヘテロ原子であり、残りの原子は炭素であり、Vは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、若しくは置換ヘテロアリールでなければならず、
Zは、-CHRzOH、-CHRzOC(O)Ry、-CHRzOC(S)Ry、-CHRzOC(S)ORy、-CHRzOC(O)SRy、-CHRzOCO2Ry、-ORz、-SRz、-CHRzN3、-CH2-アリール、-CH(アリール)OH、-CH(CH=CRz 2)OH、-CH(C≡CRz)OH、-Rz、-NRz 2、-OCORy、-OCO2Ry、-SCORy、-SCO2Ry、-NHCORz、-NHCO2Ry、-CH2NH-アリール、-(CH2)q-ORz、及び-(CH2)q-SRzからなる群から選択され、
qは、2又は3の整数であり、
各Rzは、Ry及び-Hからなる群から選択され、
各Ryは、アルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、及びアラルキルからなる群から選択され、
各Rxは、-H及びアルキルからなる群から独立して選択され、又はRx及びRxは一緒になって、環式アルキル基を形成し、
各Rvは、-H、低級アルキル、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニルオキシアルキル、及び低級アシルからなる群から選択される]
の化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む、方法である。
【0011】
本明細書に記載される方法及び組成物によれば、投与される化合物は、
【0012】
【化3】
【0013】
からなる群から選択される構造を有する化合物又はそれらの薬学的に許容される塩の1つ又は複数を含むことができる。
【0014】
本明細書に開示される方法及び組成物によれば、上記の化合物は、糖原病III型(GSD III)、糖原病VI型(GSD VI)、糖原病IX型(GSD IX)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肝炎、強皮症、アルコール性脂肪肝疾患、アテローム性動脈硬化症、喘息、心筋繊維化、臓器移植線維症、筋線維症、膵線維症、骨髄線維症、肝線維症、肝臓及び胆嚢の硬変症、脾臓の線維症、肺線維症、特発性肺線維症、びまん性実質性肺疾患、特発性間質性線維症、びまん性間質性線維症、間質性肺臓炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、急性間質性肺臓炎、過敏性肺臓炎、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎、リンパ球性間質性肺炎、塵肺症、珪肺症、肺気腫、間質性線維症、サルコイドーシス、縦隔線維症、心筋繊維化、心房線維症、心内膜心筋線維症、腎線維症、慢性腎疾患、II型糖尿病、黄斑変性症、ケロイド病変、肥厚性瘢痕、腎性全身性線維症、注射線維症(injection fibrosis)、手術の合併症、線維性慢性同種移植血管症(fibrotic chronic allograft vasculopathy)及び/又は移植器官における慢性拒絶反応、虚血再灌流傷害に関連する線維症、精管切断術後疼痛症候群、関節リウマチに関連する線維症、関節線維症、デュピュイトラン病、皮膚筋炎-多発性筋炎、混合性結合組織病、口腔の繊維増殖性病変、線維化性腸狭窄、クローン病、グリア瘢痕、軟膜線維症、髄膜炎、全身性エリテマトーデス、放射線曝露による線維症、乳腺嚢胞破裂による線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、乾癬、又はそれらの症状若しくは後遺症、又はTRβ経路内におけるインターベンションによって影響されうるコラーゲン等の細胞外マトリックス成分の過剰な沈着を生じる他の疾患若しくは状態、又はそれらのいずれかの組合せから選択される1種又は複数の線維症の状態を処置、改善、予防、又は治癒するために投与されうる。本開示による方法及び組成物は、原発性線維症、又は前記線維症、線維症の状態若しくは線維症の症状が、別の状態に続発するものであるか、若しくはそれを示すものである状態を含むことができる。
【0015】
本明細書に開示される方法及び組成物による一部の実施形態において、前記線維症、線維症の状態又は線維症の症状は、強皮症、アテローム性動脈硬化症、心筋繊維化、臓器移植線維症、筋線維症、膵線維症、骨髄線維症、肝線維症、脾臓の線維症、肺線維症、特発性肺線維症、特発性間質性線維症、びまん性間質性線維症、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、塵肺症、珪肺症、間質性線維症、サルコイドーシス、縦隔線維症、心筋繊維化、心房線維症、心内膜心筋線維症、腎線維症、黄斑変性症、ケロイド病変、肥厚性瘢痕、腎性全身性線維症、注射線維症、手術の線維性合併症、線維性慢性同種移植血管症、虚血再灌流傷害に関連する線維症、関節線維症、デュピュイトラン病、口腔の繊維増殖性病変、線維化性腸狭窄、グリア瘢痕、軟膜線維症、放射線曝露による線維症、乳腺嚢胞破裂による線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、又はそれらのいずれかの組合せの1つ又は複数を含むことができる。
【0016】
一部の他の実施形態において、前記線維症、線維症の状態又は線維症の症状は、糖原病III型(GSD III)、糖原病VI型(GSD VI)、糖原病IX型(GSD IX)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肝炎、強皮症、アルコール性脂肪肝疾患、アテローム性動脈硬化症、喘息、胆嚢の硬変症、びまん性実質性肺疾患、間質性肺臓炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、急性間質性肺臓炎、過敏性肺臓炎、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎、リンパ球性間質性肺炎、肺気腫、慢性腎疾患、II型糖尿病、黄斑変性症、移植器官における慢性拒絶反応、精管切断術後疼痛症候群、関節リウマチ、皮膚筋炎-多発性筋炎、混合性結合組織病、クローン病、髄膜炎、全身性エリテマトーデス、又はそれらの症状若しくは後遺症、又はTRβ経路内におけるインターベンションによって影響されうるコラーゲン等の細胞外マトリックス成分の過剰な沈着を生じる他の疾患若しくは状態、又はそれらのいずれかの組合せの1つ又は複数に続発するものでありうる。
【0017】
一部の他の実施形態において、前記線維症、線維症の状態又は線維症の症状は、GSD III、GSD IX、非アルコール性脂肪性肝炎、肝臓若しくは膵臓の硬変症、デュピュイトラン病、強皮症、特発性肺線維症、又はアルコール性脂肪肝疾患の症状又は後遺症、又はそれらのいずれかの組合せを含むことができる。
【0018】
本開示の方法及び組成物は、対象における線維症、線維症の状態又は線維症の症状を処置する方法であって、それを必要とする対象に、
【0019】
【化4】
【0020】
の1つ又は複数を投与する工程を含む、方法を更に含むことができる。
【0021】
本開示による方法及び組成物は、以上に列挙した化合物の1つ又は複数の対象への投与であって、前記対象が、糖原病III型(GSD III)、糖原病VI型(GSD VI)、糖原病IX型(GSD IX)、肝炎、強皮症、アテローム性動脈硬化症、喘息、心筋繊維化、臓器移植線維症、筋線維症、膵線維症、骨髄線維症、肝線維症、胆嚢の硬変症、脾臓の線維症、肺線維症、特発性肺線維症、びまん性実質性肺疾患、特発性間質性線維症、びまん性間質性線維症、間質性肺臓炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、急性間質性肺臓炎、過敏性肺臓炎、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎、リンパ球性間質性肺炎、塵肺症、珪肺症、肺気腫、間質性線維症、サルコイドーシス、縦隔線維症、心筋繊維化、心房線維症、心内膜心筋線維症、腎線維症、慢性腎疾患、II型糖尿病、黄斑変性症、ケロイド病変、肥厚性瘢痕、腎性全身性線維症、注射線維症、手術の合併症、線維性慢性同種移植血管症及び/又は移植器官における慢性拒絶反応、虚血再灌流傷害に関連する線維症、精管切断術後疼痛症候群、関節リウマチに関連する線維症、関節線維症、デュピュイトラン病、皮膚筋炎-多発性筋炎、混合性結合組織病、口腔の繊維増殖性病変、線維化性腸狭窄、クローン病、グリア瘢痕、軟膜線維症、髄膜炎、全身性エリテマトーデス、放射線曝露による線維症、乳腺嚢胞破裂による線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、又はそれらの症状若しくは後遺症、又はTRβ経路内におけるインターベンションによって影響されうるコラーゲン等の細胞外マトリックス成分の過剰な沈着を生じる他の疾患若しくは状態、又はそれらのいずれかの組合せから選択される1つ又は複数の状態を有する、投与を更に提供する。本開示の方法及び組成物は、状態が、原発性線維症、続発性線維症、又は状態の線維症の症状である、前記投与を企図する。
【0022】
本開示の方法及び組成物によれば、原発性線維症は、強皮症、アテローム性動脈硬化症、心筋繊維化、臓器移植線維症、筋線維症、膵線維症、骨髄線維症、肝線維症、脾臓の線維症、肺線維症、特発性肺線維症、特発性間質性線維症、びまん性間質性線維症、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、塵肺症、珪肺症、間質性線維症、サルコイドーシス、縦隔線維症、心筋繊維化、心房線維症、心内膜心筋線維症、腎線維症、黄斑変性症、ケロイド病変、肥厚性瘢痕、腎性全身性線維症、注射線維症、手術の線維性合併症、線維性慢性同種移植血管症、虚血再灌流傷害に関連する線維症、関節線維症、デュピュイトラン病、口腔の繊維増殖性病変、線維化性腸狭窄、グリア瘢痕、軟膜線維症、放射線曝露による線維症、乳腺嚢胞破裂による線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、又はそれらのいずれかの組合せの1つ又は複数を含むことができる。
【0023】
本開示の方法及び組成物によれば、続発性線維症は、糖原病III型(GSD III)、糖原病VI型(GSD VI)、糖原病IX型(GSD IX)、肝炎、強皮症、アテローム性動脈硬化症、喘息、胆嚢の硬変症、びまん性実質性肺疾患、間質性肺臓炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、急性間質性肺臓炎、過敏性肺臓炎、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎、リンパ球性間質性肺炎、肺気腫、慢性腎疾患、II型糖尿病、黄斑変性症、移植器官における慢性拒絶反応、精管切断術後疼痛症候群、関節リウマチ、皮膚筋炎-多発性筋炎、混合性結合組織病、クローン病、髄膜炎、全身性エリテマトーデス、又はそれらの症状若しくは後遺症、又はTRβ経路内におけるインターベンションによって影響されうるコラーゲン等の細胞外マトリックス成分の過剰な沈着を生じる他の疾患若しくは状態、又はそれらのいずれかの組合せの1つ又は複数に関連する線維症を含むことができる。
【0024】
本開示の方法及び組成物によれば、原発性線維症は、GSD III、GSD IX、膵臓の硬変症、デュピュイトラン病、強皮症、特発性肺線維症、若しくはアルコール性脂肪肝疾患の症状若しくは後遺症、又はそれらのいずれかの組合せを含むことができる。
【0025】
本開示の方法及び組成物によれば、投与される組成物は、1種又は複数の薬学的に許容される添加物を更に含むことができ、経口、静脈内、動脈内、腸管内、直腸、腟内、経鼻、経肺、局所、皮内、経皮、経頬、経舌、舌下、若しくはオプタルミック投与、又はそれらのいずれかの組合せのために製剤化されうる。
【0026】
本開示の方法及び組成物によれば、以上に列挙した組成物が投与される対象は、1型、1a型、又はIII型コラーゲンの異常又は過剰な沈着を示しうる。本開示の方法及び組成物による一部の実施形態において、前記組成物の投与は、前記線維症、線維症の状態、又は線維症の症状を予防、改善、又は治癒し、更に、前記対象の1種又は複数の組織中に存在する細胞外マトリックスタンパク質の量を低減することができる。一部の実施形態において、前記対象の1種又は複数の組織中に存在する細胞外マトリックスタンパク質の量の前記低減は、前記対象の1種又は複数の組織中に存在するコラーゲンの量の低減を含むことができ、前記対象の1種又は複数の組織中に存在するI型、Ia型、又はIII型コラーゲンの量の低減を更に含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ビヒクル、低用量化合物2(実施例1を参照のこと)、高用量化合物2(実施例1を参照のこと)、化合物1、又はエラフィブラノール(対照)で8週間処置した後のマウスにおける全肝臓ヒドロキシプロリン含有量を示す図である。化合物2処置動物は、対照処置又は偽処置動物より低い全肝臓ヒドロキシプロリンレベルを示す。
図2】ビヒクル、低用量化合物2(実施例1を参照のこと)、高用量化合物2(実施例1を参照のこと)、化合物1、又はエラフィブラノール(対照)で8週間処置した後、処置期間の終わりにピクロシリウスレッドで染色(I型及びIII型コラーゲン沈着を可視化するため、赤色染色)された肝臓の代表的画像を示す図である(倍率10倍、スケールバー=200μm)。
図3】ビヒクル、低用量化合物2(実施例1を参照のこと)、高用量化合物2(実施例1を参照のこと)、化合物1、又はエラフィブラノール(対照)で8週間処置した後、処置期間の終わりに抗I型コラーゲン(col1a1)(Southern Biotech社、カタログ番号131001)で染色された肝臓の代表的画像を示す図である(倍率20倍、スケールバー=100μm)。
図4】ビヒクル、低用量化合物2(実施例1を参照のこと)、高用量化合物2(実施例1を参照のこと)、化合物1、又はエラフィブラノール(対照)で8週間処置した後、生検後における全肝臓ColA1含有量を示す図である。化合物2処置動物は、対照処置又は偽処置動物より低い全肝臓ColA1含有量を示す。
図5】ビヒクル、低用量化合物2(実施例1を参照のこと)、高用量化合物2(実施例1を参照のこと)、化合物1、又はエラフィブラノール(対照)で8週間処置した後、組織学的定量評価により決定して、生検後における肝臓ピクロシリウスレッド(PSR)染色を示す図である。全(mg/肝臓)肝臓1型及び3型コラーゲンは、ピクロシリウスレッド染色に続いて形態計測によって決定した。化合物1処置動物からの肝臓切片は、偽処置動物からの肝臓切片より低いPSR染色を示し、化合物2処置動物からの肝臓切片は、対照処置又は偽処置動物より低いPSR染色を示した。データは平均±SEMとして表した(n=11~12)。
図6】NASHの食事誘導マウスモデルにおいて化合物2を8週間投与した後の化合物2処置動物対ビヒクル処置対照の全肝臓トリグリセリド、コレステロール、及び脂質のパーセント低減、並びにNASのパーセント低減を示す図である(実施例6を参照のこと)。
図7】NASHの食事誘導マウスモデルにおいて化合物2を8週間投与した後の化合物2処置動物対ビヒクル処置対照の肝線維症のパーセント低減を示す図である(実施例6を参照のこと)。肝線維症は、処置後の肝臓試料における線維症スコア、存在するI型コラーゲンのレベル、及び存在するヒドロキシプロリンのレベルの観点から評価される。
図8】NASHの食事誘導マウスモデルにおいて化合物2を8週間投与した後の化合物2処置動物対ビヒクル処置対照の線維形成促進性遺伝子発現のパーセント低減を示す図である(実施例6を参照のこと)。線維形成促進性遺伝子発現は、処置後の肝臓試料におけるCola1、Col3a1、αSMA、及びガレクチン1の発現レベルの観点から評価される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、甲状腺ホルモン受容体-β(TRβ)作動薬を投与することによって線維症、線維症の状態、又は線維症の症状を処置するための化合物及び方法を提供する。一部の実施形態において、そのような線維症、線維症の状態、又は線維症の症状を生じる状態としては、糖原病III型(GSD III)、糖原病VI型(GSD VI)、糖原病IX型(GSD IX)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肝炎、強皮症、アルコール性脂肪肝疾患、アテローム性動脈硬化症、喘息、心筋繊維化、臓器移植線維症、筋線維症、膵線維症、骨髄線維症、肝線維症、肝臓及び胆嚢の硬変症、脾臓の線維症、強皮症、肺線維症、特発性肺線維症、びまん性実質性肺疾患、特発性間質性線維症、びまん性間質性線維症、間質性肺臓炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、急性間質性肺臓炎、過敏性肺臓炎、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎、リンパ球性間質性肺炎、塵肺症、珪肺症、肺気腫、間質性線維症、サルコイドーシス、縦隔線維症、心筋繊維化、心房線維症、心内膜心筋線維症、腎線維症、慢性腎疾患、II型糖尿病、黄斑変性症、ケロイド病変、肥厚性瘢痕、腎性全身性線維症、注射線維症、手術の合併症、線維性慢性同種移植血管症及び/又は移植器官における慢性拒絶反応、虚血再灌流傷害に関連する線維症、精管切断術後疼痛症候群、関節リウマチに関連する線維症、関節線維症、デュピュイトラン病、皮膚筋炎-多発性筋炎、混合性結合組織病、口腔の繊維増殖性病変、線維化性腸狭窄、クローン病、グリア瘢痕、軟膜線維症、髄膜炎、全身性エリテマトーデス、放射線曝露による線維症、乳腺嚢胞破裂による線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、又はそれらの症状若しくは後遺症、或いはTRβ経路内におけるインターベンションによって影響されうるコラーゲン等の細胞外マトリックス成分の過剰な沈着を生じる他の疾患又は状態を挙げることができる。そのような状態は、炎症及び/又は傷害に関連することがあり、甲状腺ホルモンによってモジュレートすることができるTGF-β依存性経路によって媒介される応答を更に含みうる(例えば、Alfonso-Merinoら、Proc. Nat. Acad, Sci.、113(24):E3451-60 (2016)を参照のこと。それは、甲状腺ホル
モンがマウスにおけるTGF-βシグナル伝達及び関連線維症をモジュレートする能力のその開示が本明細書に組み込まれる)。TGF-β依存性経路は、線維芽細胞分化及びコラーゲン産生の刺激に関係づけられ、T3及びT4等の甲状腺ホルモンは、TRβ受容体を介してこれらの経路に影響を与えることができるので、本開示は、TRβ作動薬化合物を投与することによって、対象の1種又は複数の組織におけるコラーゲン沈着を予防、改善、又は低減するための組成物及び方法を提供する。
【0029】
定義
用語「哺乳動物」は、その普通の生物学的意味で使用される。したがって、それは、具体的にヒト、並びにイヌ、ネコ、ウマ、ロバ、ラバ、雌ウシ、家畜用水牛、ラクダ、ラマ、アルパカ、バイソン、ヤク、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ヘラジカ、シカ、家畜用アンテロープ、及び非ヒト霊長類、並びに他の多くの種等の非ヒト哺乳動物を包含する。
【0030】
本明細書で使用される「対象」は、処置又は治療のために選択されるヒト、又はイヌ、ネコ、ウマ、ロバ、ラバ、雌ウシ、家畜用水牛、ラクダ、ラマ、アルパカ、バイソン、ヤク、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ヘラジカ、シカ、家畜用アンテロープ、若しくは非ヒト霊長類を含むがこれらに限定されない非ヒト哺乳動物を意味する。
【0031】
「有することが疑われる対象」は、疾患又は状態の1つ又は複数の臨床指標を示す対象を意味する。いくつかの実施形態において、疾患又は状態は、1つ又は複数の線維症、線維症の状態、又は線維症の症状である。いくつかの実施形態において、疾患又は状態は、強皮症である。いくつかの実施形態において、疾患又は状態は、非アルコール性脂肪性肝炎である。いくつかの実施形態において、疾患又は状態は、肝硬変である。いくつかの実施形態において、疾患又は状態は、非アルコール性脂肪肝疾患である。いくつかの実施形態において、疾患又は状態は、特発性肺線維症である。いくつかの実施形態において、疾患又は状態は、アテローム性動脈硬化症であり、いくつかの実施形態において、疾患又は状態は、肝炎、アルコール性脂肪肝疾患、喘息、心筋繊維化、臓器移植線維症、筋線維症、膵線維症、骨髄線維症、肝線維症、肝臓及び胆嚢の硬変症、脾臓の線維症、強皮症、肺線維症、びまん性実質性肺疾患、特発性間質性線維症、びまん性間質性線維症、間質性肺臓炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、急性間質性肺臓炎、過敏性肺臓炎、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎、リンパ球性間質性肺炎、塵肺症、珪肺症、肺気腫、間質性線維症、サルコイドーシス、縦隔線維症、心筋繊維化、心房線維症、心内膜心筋線維症、腎線維症、慢性腎疾患、II型糖尿病、黄斑変性症、ケロイド病変、肥厚性瘢痕、腎性全身性線維症、注射線維症、手術の合併症、線維性慢性同種移植血管症及び/又は移植器官における慢性拒絶反応、虚血再灌流傷害に関連する線維症、精管切断術後疼痛症候群、関節リウマチに関連する線維症、関節線維症、デュピュイトラン病、皮膚筋炎-多発性筋炎、混合性結合組織病、口腔の繊維増殖性病変、線維化性腸狭窄、クローン病、グリア瘢痕、軟膜線維症、髄膜炎、全身性エリテマトーデス、放射線曝露による線維症、乳腺嚢胞破裂による線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、又はそれらの症状若しくは後遺症、或いは細胞外マトリックス成分の過剰な沈着を生じる他の疾患又は状態である。
【0032】
本明細書で使用される「線維症」は、細胞外マトリックスタンパク質の異常な沈着を指す。そのようなタンパク質としては、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニン、ケラチン、ケラチン、ケラチン硫酸、フィブリン、パールカン、アグリン、又はアグレカン(agrecan)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「コラーゲン」は、I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、又はXVIII型を含むがこれらに限定されないコラーゲンのサブタイプのいずれか1つを指す。例示的なコラーゲンタイプ及びサブタイプは特に、I型、Ia型、II型、III型、IV型、及びV型を含む。本明細書で使用される線維症は、それ自体で又は別の状態の症状若しくは後遺症として発生しうる。本明細書で使用される線維症は、遺伝的状態、遺伝的素因、環境からの侵襲、傷害、傷害の治癒、自己免疫性の状態、若しくは慢性炎症、慢性炎症性の状態、又は細胞外マトリックス成分の異常若しくは過剰な沈着を導く別の状態に起因しうる。本明細書で言及される線維症は、1種又は複数のバイオマーカーの存在又はレベルをアッセイ又は決定することによって評価されうる。線維症の存在に対するバイオマーカーとしては、Cola1、Col3a1、αSMA、及び/若しくはガレクチン1遺伝子、又はそれらのいずれかの組合せ若しくは産物の発現が挙げられるが、これらに限定されない。線維症の診断又は評価は更に、I型コラーゲン及び/若しくはヒドロキシプロリン、又はそれらのいずれかの組合せ又は産物の存在又はレベルの決定によって更に行われうる。線維症の診断又は評価は、対象からの1つ又は複数の試料の組織学的、組織化学的、又は免疫組織化学的分析によっても行われうる。
【0033】
「糖原病」は、一般に必要な酵素活性の欠損が原因であるグリコーゲンの合成、輸送、又は利用における機能障害によって特徴付けられる障害の一群のいずれか1つ又は複数を意味する。糖原病は、一般にそれらの症状及び病因によるタイプによって分類される。公知のタイプとしては、0型GSD(アグリコゲネシス、グリコーゲン合成酵素欠損症);1型GSD(フォンギールケ病、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ/トランスポーター欠損症、GSD I);2型GSD(ポンペ病、アルファ-1-4-グルコシダーゼ欠損症、GSD II);3型GSD(コーリ病、フォーブス病、限界デキストリン症、脱分枝酵素疾患;グルコシダーゼ及び/又はトランスフェラーゼ活性の欠損が原因であるアミロ-1-6-グルコシダーゼ欠損症、GSD III);4型GSD(アンダーソン病、グリコーゲンホスホリラーゼ欠損症、分枝酵素欠損症、アミロペクチン症、グリコーゲン分枝酵素欠損症;アミロ-1,4→1,6トランスグルコシダーゼ欠損症、GSD IV);5型GSD(マッカードル病;グリコーゲンホスホリラーゼ(筋肉型)欠損症、GSD V);6型GSD(ハース病;グリコーゲンホスホリラーゼE(肝臓型)欠損症、GSD VI);7型GSD(垂井病;ホスホフルクトキナーゼ欠損症、GSD VII);8型、9型GSD(ホスホリラーゼ活性化系欠損を伴うGSD;ホスホリラーゼキナーゼ(肝臓又は筋肉アイソフォーム)欠損症、GSD VIII及びGSD IX);10型GSD(環状AMP依存性キナーゼ欠損症、GSD X);11型GSD(ファンコニ・ビッケル症候群;2型グルコーストランスポーター(GLUT2)欠損症、GSD XI);及び12型GSD(アルドラーゼA欠損症、GSD XII)が挙げられる。糖原病のサブタイプも公知であり、特にグルコース-6-ホスファターゼ(G6PC)遺伝子における突然変異に起因し、様々な症状の中でもとりわけ、肝組織におけるグリコーゲン及び脂質の過剰蓄積、肝腫大、肝腺腫、及び肝細胞癌を導くGSD 1aが公知である。糖原病の症状としては、血糖の上昇又は低減、インスリン非感受性、ミオパシー、並びに脂肪症、高脂質血症、高コレステロール血症、心肥大、肝腫大、線維症、肝硬変、肝細胞腺腫、及び肝細胞癌等の肝臓の症状を挙げることができる。症状として、インスリン非感受性、血中グルコースの上昇若しくは低減、腎機能障害、及び/又は線維症も挙げることができる。
【0034】
「それを必要とする対象」は、治療又は処置を必要とすると特定された対象を意味する。
【0035】
治療的効果は、ある程度、疾患又は障害の症状の1つ又は複数を軽減し、疾患又は障害の治癒が含まれる。「治癒」とは、活性の疾患の症状が除去されることを意味する。しかし、疾患のいくつかの長期的又は永続的影響(多大な組織損傷等)は、治癒が得られた後でさえ存在しうる。
【0036】
本明細書で使用される「処置する」、「処置」、又は「処置すること」は、医薬組成物を予防及び/又は治療目的で投与することを指す。用語「予防処置」は、関連のある疾患又は障害をまだ有していないが、特定の疾患若しくは障害に感染しやすく、又はその他の状況ではそのリスクがある患者を処置し、処置によって、患者が疾患又は障害を発症する可能性が低減されることを指す。用語「治療処置」は、疾患又は障害を既に有する患者に投与することを指す。
【0037】
「予防すること」又は「予防」は、状態又は疾患の発症、発達又は進行を、何週間、何か月、又は何年かを含む一定の期間遅延させる又は未然に防ぐことを指す。
【0038】
「改善」とは、状態又は疾患の少なくとも1つの指標の重症度を低下させることを意味する。いくつかの実施形態において、改善には、状態又は疾患の1つ又は複数の指標の進行を遅延又は緩徐化することが含まれる。指標の重症度は、当業者に公知の主観的又は客観的尺度によって決定されうる。
【0039】
「モジュレーション」とは、機能又は活性の摂動を意味する。いくつかの実施形態において、モジュレーションは遺伝子発現の増加を意味する。いくつかの実施形態において、モジュレーションは遺伝子発現の減少を意味する。いくつかの実施形態において、モジュレーションは、特定のタンパク質の全血清レベルの増加又は減少を意味する。いくつかの実施形態において、モジュレーションは、特定のタンパク質の遊離血清レベルの増加又は減少を意味する。いくつかの実施形態において、モジュレーションは、特定の非タンパク質因子の全血清レベルの増加又は減少を意味する。いくつかの実施形態において、モジュレーションは、特定の非タンパク質因子の遊離血清レベルの増加又は減少を意味する。いくつかの実施形態において、モジュレーションは、特定のタンパク質の全バイオアベイラビリティの増加又は減少を意味する。いくつかの実施形態において、モジュレーションは、特定の非タンパク質因子の全バイオアベイラビリティの増加又は減少を意味する。
【0040】
「投与すること」とは、薬剤又は組成物を対象に提供することを意味し、医療専門家による投与及び自己投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書に開示される化合物又はそれらの薬学的に許容される塩の投与は、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、局所、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、膣、直腸、又は眼内投与を含むがこれらに限定されない、同様の有用性を満たす作用剤の認められた投与様式のいずれかを介して行われうる。経口及び非経口投与は、好ましい実施形態の対象である適応症を処置する際に慣例である。
【0042】
「非経口投与」とは、注射又は注入による投与を意味する。非経口投与としては、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、及び頭蓋内投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「皮下投与」とは、皮膚直下の投与を意味する。
【0044】
「静脈内投与」とは、静脈への投与を意味する。
【0045】
「動脈内投与」とは、動脈への投与を意味する。
【0046】
用語「作用剤」としては、いずれかの物質、分子、元素、化合物、エンティティ、又はそれらの組合せが挙げられる。作用剤としては、例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド又は模倣物、有機低分子、多糖、ポリヌクレオチド等が挙げられるが、これらに限定されない。それは、天然物、合成化合物、若しくは化学化合物、又は2種以上の物質の組合せでありうる。
【0047】
「薬剤」とは、対象に投与されるとき治療的効果を提供する物質を意味する。
【0048】
「医薬組成物」とは、個体に投与するのに適している、薬剤を含む物質の混合物を意味する。例えば、医薬組成物は、修飾オリゴヌクレオチド及び無菌水性溶液を含むことができる。
【0049】
「医薬品有効成分」とは、所望の効果を提供する、医薬組成物中の物質を意味する。
【0050】
用語「薬学的に許容される塩」は、化合物が伴う生物学的効果及び特性を保持し、生物学的に又はそれ以外の状況で望ましくないものではない塩を指す。多くの場合、本明細書の化合物は、フェノール及び/又はホスホネート基又はそれらと同様の基の存在によって酸及び/又は塩基塩を形成することができる。当業者は、これらの化合物のいずれか又はすべてのプロトン化状態が周囲溶液のpH及びイオン性によって変化しうること、したがって本開示は、各化合物の複数の荷電状態を企図することを認識している。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸を用いて形成することができる。塩を誘導することができる無機酸としては、例えば塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。塩を誘導することができる有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等が挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機及び有機塩基を用いて形成することができ、塩を誘導することができる無機塩基としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等が挙げられ、特に好ましいのは、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム及びマグネシウム塩である。塩を誘導することができる有機塩基としては、例えば第一級、第二級、及び第三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環式アミン、塩基性イオン交換樹脂等、具体的にはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミン等が挙げられる。多くのそのような塩は、1987年9月11日公開されたWO87/05297、Johnstonら(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように当技術分野において公知である。
【0051】
「溶媒和物」は、溶媒とEPI、代謝産物、又はその塩との相互作用によって形成される化合物を指す。好適な溶媒和物は、水和物を含む薬学的に許容される溶媒和物である。
【0052】
用語「アテローム性動脈硬化症」は、大及び中動脈の内膜に不規則に分布した脂質沈着を特徴とする状態を指し、そのような沈着によって、線維症及び石灰化が引き起こされる。アテローム性動脈硬化症は、アンギナ、脳卒中、心臓発作、又は他の心臓若しくは心血管系の状態のリスクを高める。
【0053】
化合物
一部の実施形態において、本明細書に記載される使用のためのTRβ作動薬は、式I:
【0054】
【化5】
【0055】
[式中、
Gは、-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-Se-、-CH2-、-CF2-、-CHF-、-C(O)-、-CH(OH)-、-CH(C1~C4アルキル)-、-CH(C1~C4アルコキシ)-、-C(=CH2)-、-NH-、及び-N(C1~C4アルキル)-からなる群から選択され、
Tは、-(CRa 2)k-、-CRb=CRb-(CRa 2)n-、-(CRa 2)n-CRb=CRb-、-(CRa 2)-CRb=CRb-(CRa 2)-、-O(CRb 2)(CRa 2)n-、-S(CRb 2)(CRa 2)n-、N(RC)(CRb 2)(CRa 2)n-、N(Rb)C(O)(CRa 2)n、-C(O)(CRa 2)m-、-(CRa 2)mC(O)-、-(CRa 2)C(O)(CRa 2)n、-(CRa 2)nC(O)(CRa 2)-、及び-C(O)NH(CRb 2)(CRa 2)p-からなる群から選択され、
kは、1~4の整数であり、
mは、0~3の整数であり、
nは、0~2の整数であり、
pは、0~1の整数であり、
各Raは、水素、置換されていてもよい-C1~C4アルキル、ハロゲン、-OH、置換されていてもよい-O-C1~C4アルキル、-OCF3、置換されていてもよい-S-C1~C4アルキル、-NRbRc、置換されていてもよい-C2~C4アルケニル、及び置換されていてもよい-C2~C4アルキニルからなる群から独立して選択され、ただし、一方のRaが、O、S、又はN原子を介してCに結合しているとき、同じCに結合している他方のRaは、水素であるか又は炭素原子を介して結合しており、
各Rbは、水素、及び置換されていてもよい-C1~C4アルキルからなる群から独立して選択され、
各Rcは、水素、並びに置換されていてもよい-C1~C4アルキル、置換されていてもよい-C(O)-C1~C4アルキル、及び-C(O)Hからなる群から独立して選択され、
R1及びR2は各々、ハロゲン、置換されていてもよい-C1~C4アルキル、置換されていてもよい-S-C1~C3アルキル、置換されていてもよい-C2~C4アルケニル、置換されていてもよい-C2~C4アルキニル、-CF3、-OCF3、置換されていてもよい-O-C1~C3アルキル、及びシアノからなる群から独立して選択され、
R6、R7、R8、及びR9は各々、水素、ハロゲン、置換されていてもよい-C C1~C4アルキル、置換されていてもよい-S-C1~C3アルキル、置換されていてもよい-C2~C4アルケニル、置換されていてもよい-C2~C4アルキニル、-CF3、-OCF3、置換されていてもよい-O-C1~C3アルキル、及びシアノからなる群から独立して選択されるか、又はR6及びTは、それらが結合している炭素と共に一緒になって、-NRi-、-O-、及び-S-から独立して選択される0~2個のヘテロ原子を含む5~6個の原子の環を形成し、ただし、環中に2個のヘテロ原子が存在し、両方のヘテロ原子が窒素と異なるとき、両方のヘテロ原子は、少なくとも1個の炭素原子によって分離されていなければならず、Xは、この環に、環炭素への直接結合によって、又は環炭素又は環窒素に結合している-(CRa 2)-若しくは-C(O)-によって結合しており、
Riは、水素、-C(O)C1~C4アルキル、-C1~C4アルキル、及び-C1~C4-アリールからなる群から選択され、
R3及びR4は、水素、ハロゲン、-CF3、-OCF3、シアノ、置換されていてもよい-C1~C12アルキル、置換されていてもよい-C2~C12アルケニル、置換されていてもよい-C2~C12アルキニル、-SRd、-S(=O)Re、-S(=O)2Re、-S(=O)2NRfRg、-C(O)ORh、-C(O)Re、-N(Rb)C(O)NRfRg、-N(Rb)S(=O)2Re、-N(Rb)S(=O)2NRfRg、及び-NRfRgからなる群から独立して選択され、
各Rdは、置換されていてもよい-C1~C12アルキル、置換されていてもよい-C2~C12アルケニル、置換されていてもよい-C2~C12アルキニル、置換されていてもよい-(CRb 2)nアリール、置換されていてもよい-(CRb 2)nシクロアルキル、置換されていてもよい-(CRb 2)nヘテロシクロアルキル、及び-C(O)NRfRgからなる群から選択され、
各Reは、置換されていてもよい-C1~C12アルキル、置換されていてもよい-C2~C12アルケニル、置換されていてもよい-C2~C12アルキニル、置換されていてもよい-(CRa 2)nアリール、置換されていてもよい-(CRa 2)nシクロアルキル、及び置換されていてもよい-(CRa 2)nヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、
Rf及びRgは各々、水素、置換されていてもよい-C1~C12アルキル、置換されていてもよい-C2~C12アルケニル、置換されていてもよい-C1~C12アルキニル、置換されていてもよい-(CRb 2)nアリール、置換されていてもよい-(CRb 2)nシクロアルキル、及び置換されていてもよい-(CRb 2)nヘテロシクロアルキルからなる群から独立して選択され、又はRf及びRgは一緒になって、O、NRc、及びSからなる群から選択される第2のヘテロ基を含有していてもよい置換されていてもよいヘテロ環式環を形成していてもよく、前記置換されていてもよいヘテロ環式環は、置換されていてもよい-C1~C4アルキル、-ORb、オキソ、シアノ、-CF3、置換されていてもよいフェニル、及び-C(O)ORhからなる群から選択される0~4個の置換基で置換されていてもよく、
各Rhは、置換されていてもよい-C1~C12アルキル、置換されていてもよい-C2~C12アルケニル、置換されていてもよい-C2~C12アルキニル、置換されていてもよい-(CRb 2)nアリール、置換されていてもよい-(CRb 2)nシクロアルキル、及び置換されていてもよい(CRb 2)nヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、
R5は、-OH、置換されていてもよい-OC1~C6アルキル、OC(O)Re、-OC(O)ORh、-F、-NHC(O)Re、-NHS(=O)Re、-NHS(=O)2Re、-NHC(=S)NH(Rh)、及び-NHC(O)NH(Rh)からなる群から選択され、
Xは、P(O)YR11Y'R11であり、
Y及びY'は各々、-O-及び-NRv-からなる群から独立して選択され、Y及びY'が-O-であるとき、-O-に結合しているR11は、-H、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいCH2-ヘテロシクロアキル(ここで、環式部分は、カーボネート又はチオカーボネートを含有する)、置換されていてもよい-アルキルアリール、-C(Rz)2OC(O)NRz 2、-NRz-C(O)-Ry、-C(Rz)2-OC(O)Ry、-C(Rz)2-O-C(O)ORy、-C(Rz)2OC(O)SRy、-アルキル-S-C(O)Ry、-アルキル-S-S-アルキルヒドロキシ、及び-アルキル-S-S-S-アルキルヒドロキシからなる群から独立して選択され、
Y及びY'が-NRv-であるとき、-NRv-に結合しているR11は、-H、-[C(Rz)2]q-COORy、-C(Rx)2COORY、-[C(Rz)2]q-C(O)SRy、及び-シクロアルキレン-COORyからなる群から独立して選択され、
Yが-O-であり、Y'がNRvであるとき、-O-に結合しているR11は、-H、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいCH2-ヘテロシクロアキル(ここで、環式部分は、カーボネート又はチオカーボネートを含有する)、置換されていてもよい-アルキルアリール、-C(Rz)2OC(O)NRz 2、-NRz-C(O)-Ry、-C(Rz)2-OC(O)Ry、-C(Rz)2-O-C(O)ORy、-C(Rz)2OC(O)SRy、-アルキル-S-C(O)Ry、-アルキル-S-S-アルキルヒドロキシ、及び-アルキル-S-S-S-アルキルヒドロキシからなる群から独立して選択され、-NRv-に結合しているR11は、H、-[C(Rz)2]q-COORy、-C(Rx)2COORy、-[C(Rz)2]q-C(O)SRy、及び-シクロアルキレン-COORyからなる群から独立して選択され、
或いはY及びY'が、-O-及びNRvから独立して選択されるとき、一緒になってR11及びR11は、-アルキル-S-S-アルキル-であって、環式基を形成し、又は一緒になってR11及びR11は、下記の基であり、
【0056】
【化6】
【0057】
式中、
V、W、及びW'は、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアラルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、置換されていてもよい1-アルケニル、及び置換されていてもよい1-アルキニルからなる群から独立して選択され、
又は一緒になってV及びZは、更なる3~5個の原子を介して連結されて、リンに結合している両方のY基からの3個の原子である炭素原子に結合した、ヒドロキシ、アシルオキシ、アルキルチオカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、又はアリールオキシカルボニルオキシで置換された5~7個の原子を含有する環式基を形成し、ここで、0~1個の原子はヘテロ原子であり、残りの原子は炭素であり、
又は一緒になってV及びZは、更なる3~5個の原子を介して連結されて、リンに結合しているYに対してベータ及びガンマ位でアリール基に縮合した環式基を形成し、ここで、0~1個の原子はヘテロ原子であり、残りの原子は炭素であり、
又は一緒になってV及びWは、更なる3個の炭素原子を介して連結されて、6個の炭素原子を含有し、リンに結合しているYからの3個の原子である前記炭素原子の1個に結合した、ヒドロキシ、アシルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アルキルチオカルボニルオキシ、及びアリールオキシカルボニルオキシからなる群から選択される1個の置換基で置換された、置換されていてもよい環式基を形成し、
又は一緒になってZ及びWは、更なる3~5個の原子を介して連結されて、環式基を形成し、ここで、0~1個の原子はヘテロ原子であり、残りの原子は炭素であり、Vは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、又は置換ヘテロアリールでなければならず、
又は一緒になってW及びW'は、更なる2~5個の原子を介して連結されて、環式基を形成し、ここで、0~2個の原子は、ヘテロ原子であり、残りの原子は炭素であり、Vは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、若しくは置換ヘテロアリールでなければならず、
Zは、-CHRzOH、-CHRzOC(O)Ry、-CHRzOC(S)Ry、-CHRzOC(S)ORy、-CHRzOC(O)SRy、-CHRzOCO2Ry、-ORz、-SRz、-CHRzN3、-CH2-アリール、-CH(アリール)OH、-CH(CH=CRz 2)OH、-CH(C≡CRz)OH、-Rz、-NRz 2、-OCORy、-OCO2Ry、-SCORy、-SCO2Ry、-NHCORz、-NHCO2Ry、-CH2NH-アリール、-(CH2)q-ORz、及び-(CH2)q-SRzからなる群から選択され、
qは、2又は3の整数であり、
各Rzは、Ry及び-Hからなる群から選択され、
各Ryは、アルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、及びアラルキルからなる群から選択され、
各Rxは、-H及びアルキルからなる群から独立して選択され、又は一緒になってRx及びRxは、環式アルキル基を形成し、
各Rvは、-H、低級アルキル、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニルオキシアルキル、及び低級アシルからなる群から選択される]
による化合物及びその薬学的に許容される塩を含む。
【0058】
一部の実施形態において、式Iの化合物は、以下の条件を有する。
a)Gが-O-であり、Tが-CH2-であり、R1及びR2が各々、ブロモであり、R3が、イソプロピルであり、R4が水素であり、R5が-OHであるとき、Xは、P(O)(OH)2でもP(O)(OCH2CH3)2でもなく、
b)V、Z、W、W'は、すべて-Hとは限らず、
c)Zが-Rzであるとき、V、W、及びW'の少なくとも1つは、-Hでも、アルキルでも、アラルキルでも、ヘテロシクロアルキルでもなく、
d)Gが-O-であり、Tが-(CH2)1~4-であり、R1及びR2が独立してハロゲン、アルキル、及びシクロアルキルであり、R3がアルキルであり、R4が水素であり、R5が-OHであるとき、Xは、-P(O)(OH)2でも-P(O)(O-低級アルキル)2でもなく、
e)Gが-O-であり、R5が-NHC(O)Re、-NHS(=O)1~2Re、-NHC(S)NH(Rb)、又は-NHC(O)NH(Rh)であり、Tが-(CH2)m-、-CH=CH-、-O(CH2)1~2-、又は-NH(CH2)1~2-であるとき、Xは、-P(O)(OH)2でも-P(O)(OH)NH2でもない。
【0059】
一部の実施形態において、化合物は、以下:
【0060】
【化7】
【0061】
又はそれらの薬学的に許容される塩の1つ又は複数から選択される。
【0062】
他の実施形態において、化合物は、
【0063】
【表1A】
【0064】
【表1B】
【0065】
【表1C】
【0066】
【表1D】
【0067】
【表1E】
【0068】
【表1F】
【0069】
【表1G】
【0070】
【表1H】
【0071】
【表1I】
【0072】
【表1J】
【0073】
【表1K】
【0074】
【表1L】
【0075】
【表1M】
【0076】
【表1N】
【0077】
【表1O】
【0078】
【表1P】
【0079】
【表1Q】
【0080】
【表1R】
【0081】
【表1S】
【0082】
【表1T】
【0083】
【表1U】
【0084】
【表1V】
【0085】
又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される。
【0086】
上記の化合物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,829,552号に記載されている方法を含む、公知の方法に従って調製されうる。追加のTRβ作動薬については、米国特許第7,514,419号;米国特許出願公開第2009/002895号;米国特許出願公開第2010/0081634号;米国特許出願公開第2012/0046364号;及び国際公開第2011/038207号に記載されており、それらのすべてはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
医薬組成物
上記の有用な化合物は、本明細書に記載される状態の処置において使用するための医薬組成物に製剤化されうる。その全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington's The Science and Practice of Pharmacy、21版、Lippincott Williams & Wilkins社(2005)で開示された技法等、標準医薬品製剤化技法が使用される。それに応じて、一部の実施形態は、(a)安全で治療有効な量の本明細書に記載される化合物又はその薬学的に許容される塩と、(b)薬学的に許容される担体、希釈剤、添加物又はそれらの組合せとを含む医薬組成物を含む。
【0088】
用語「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される添加物」は、すべての溶媒、希釈剤、乳化剤、結合剤、緩衝剤、分散媒、コーティング剤、抗細菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等、又は医薬品製剤を調製する際に有用であることを当業者が知っているいずれか他の化合物を含む。そのような媒体及び作用剤を薬学的に活性な物質のために使用することは、当技術分野において周知である。いずれか従来の媒体又は作用剤が活性成分と非相溶である場合を除いて、それを治療組成物において使用することが熟考される。補助活性成分も組成物に組み込まれうる。更に、当技術分野においてよく使用されるような様々なアジュバントが含まれうる。これらの及びその他のそのような化合物については、文献、例えばMerck Index、Merck & Company社、Rahway, NJに記載されている。医薬組成物中における様々な成分の包含に向けての考察は、例えばGilmanら(編)(1990)、Goodman and Oilman's: The Pharmacological Basis of Therapeutics、8版、Pergamon Press社に記載されている。
【0089】
薬学的に許容される担体又はそれらの成分として役立つことができる物質の一部の例は、ラクトース、グルコース及びスクロース等の糖;トウモロコシデンプン及びバレイショデンプン等のデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及びメチルセルロース等のセルロース及びその誘導体;トラガント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;ステアリン酸及びステアリン酸マグネシウム等の固体滑沢剤;硫酸カルシウム;落花生油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びカカオ脂等の植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール等のポリオール;アルギン酸;TWEENS等の乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の湿潤剤;着色剤;矯味剤;錠剤形成剤、安定剤;抗酸化剤;保存剤;パイロジェンフリー水;等張性生理食塩水;並びにリン酸緩衝液である。
【0090】
本化合物と一緒に使用される薬学的に許容される担体の選択は、化合物が投与される方式によって決まる。
【0091】
本明細書に記載される組成物は、好ましくは単位剤形で提供される。本明細書で使用される「単位剤形」は、良質な医学原則に従って、単回用量で対象に投与するのに適している量の化合物を含有する組成物である。しかし、単回又は単位剤形の調製は、剤形が1日当たり1回又は治療1コース当たり1回投与されることを示すものではない。単位剤形は、単回1日量(single daily dose)、又は1日量を完了するためにいくつかの単位剤形が1日のコースにわたって投与される分割1回量(fractional sub-dose)を含むことができる。本開示によれば、単位剤形を、1日1回の頻度より多く又は少なく投与することができ、1コースの治療時に1回より多く投与することができる。そのような剤形を、経口、非経口投与を含む、それらの製剤を損なわないいずれかの様式で投与することができ、注入液として一定の期間(例えば、約30分から約2~6時間)にわたって投与することができる。単回投与が具体的に企図され、本明細書に記載される方法に従って投与される組成物は、持続注入液として又は植え込み型注入ポンプを介しても投与されうる。
【0092】
本明細書に記載される方法は、様々な投与経路、例えば経口、経鼻、直腸、局所(経皮を含む)、経眼、脳内、頭蓋内、髄腔内、動脈内、静脈内、筋肉内、又は他の親の(parental)投与経路に適した様々な形態のいずれかを利用することができる。経口及び経鼻組成物としては、吸入によって投与され、利用可能な方法を使用して作製される組成物が挙げられることを当業者であれば理解しているものと予想される。所望の特定の投与経路に応じて、当技術分野において周知である様々な薬学的に許容される担体が使用されうる。薬学的に許容される担体としては、例えば固体又は液体充填剤、希釈剤、ヒドロトロープ、界面活性剤、及び封入物質が挙げられる。化合物の活性に実質的には干渉しない任意選択の薬学的に活性な材料が含まれうる。化合物と一緒に用いられる担体の量は、化合物の単位用量当たりの実際の投与材料量を提供するのに十分な量である。本明細書に記載される方法において有用な剤形を作製するための技法及び組成物については、すべて、参照により本明細書に組み込まれる以下の参考文献に記載されている: Modern Pharmaceutics、4版、9章及び10章(Banker & Rhodes、編集者、2002);Liebermanら、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (1989);並びにAnsel、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、8版(2004)。
【0093】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤及び原薬粉末のような固体形態を含む、様々な経口剤形が使用されうる。好適な結合剤、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、矯味剤、流動誘導剤、及び溶融剤を含有する錠剤に、圧縮、錠剤擦り込み、腸溶コーティング、糖衣、フィルムコーティング、又は多重圧縮を施すことができる。好適な溶媒、保存剤、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味剤、溶融剤、着色剤及び矯味剤を含有する液体経口剤形としては、水溶液、乳濁液、懸濁液、溶液及び/又は非発泡性顆粒で再構成される懸濁液、並びに発泡性顆粒から再構成される発泡性調製物が挙げられる。
【0094】
経口投与のための単位剤形の調製に適している薬学的に許容される担体は、当技術分野において周知である。錠剤は典型的には、従来の薬学的に適合性のアジュバントを、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトース及びセルロース等の不活性希釈剤;デンプン、ゼラチン及びスクロース等の結合剤;デンプン、アルギン酸及びクロスカルメロース等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、及びタルク等の滑沢剤として含む。錠剤は、ポロキサマー、cremophor/Kolliphor(登録商標)/Lutrol(登録商標)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又は当技術分野において公知である他のもの等の可溶化剤又は乳化剤も含みうる。二酸化ケイ素等の流動化剤を使用して、粉末混合物の流動特性を改善することができる。FD&C色素等の着色剤を、外見のために添加することができる。アスパルテーム、サッカリン、メントール、ペパーミント、及び果実フレーバー等の甘味剤及び矯味剤は、チュアブル錠にとって有用なアジュバントである。カプセル剤は典型的には、以上に開示された1種又は複数の固体希釈剤を含む。担体成分の選択は、風味、コスト、及び貯蔵安定性のような二次的考慮事項に依存し、これは、当業者によって容易に選択されうる。
【0095】
経口(PO)組成物としては、液体溶液、乳濁液、懸濁液等も挙げられる。そのような組成物の調製に適している薬学的に許容される担体は、当技術分野において周知である。シロップ、エリキシル、乳濁液及び懸濁液の典型的な担体成分としては、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体スクロース、ソルビトール及び水が挙げられる。懸濁液の場合、典型的な懸濁化剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、AVICEL RC-591、トラガカント及びアルギン酸ナトリウムが挙げられ、典型的な湿潤剤としては、レシチン及びポリソルベート80が挙げられ、典型的な保存剤としては、メチルパラベン及び安息香酸ナトリウムが挙げられる。経口液体組成物は、以上に開示された甘味剤、矯味剤及び着色剤等の1種又は複数の成分も含有することができる。
【0096】
そのような組成物は、対象化合物を所望の局所適用の近くの消化管で又は様々な時に放出して、所望の作用を延ばすように、典型的にはpH又は時間依存性コーティング剤を用いて従来の方法によりコーティングされうる。そのような剤形は典型的には、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、Eudragitコーティング剤、ワックス及びシェラックの1種又は複数を含むが、これらに限定されない。
【0097】
本明細書に記載される組成物は、他の薬物活性剤を場合によって含むことができる。
【0098】
対象化合物の全身送達を達成するのに有用な他の組成物としては、舌下、バッカル及び経鼻剤形が挙げられる。そのような組成物は典型的には、スクロース、ソルビトール及びマンニトール等の可溶性充填剤物質;並びにアカシア、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤の1種又は複数を含む。以上に開示された流動化剤、滑沢剤、甘味剤、着色剤、抗酸化剤及び矯味剤も含まれうる。
【0099】
局所眼科使用のために製剤化される液体組成物薬は、眼に局所投与することができるように製剤化される。快適さをできる限り最大にすることができるが、時には製剤化の考慮すべき事柄(例えば、薬物安定性)によって、最適に満たない快適さを避けがたいことがある。快適さを最大にすることができない場合、液体は、局所眼科使用のために患者にとって忍容性がある液体となるように製剤化されうる。更に、眼科用として許容される液体は、頓用に包装してよく、又は多回使用にわたって汚染を防止するために保存剤を含有してもよい。
【0100】
眼科適用の場合、溶液又は医薬は、生理食塩水を主要なビヒクルとして使用して調製されることが多い。眼科用溶液は、好ましくは適切な緩衝系を用いて快適なpHで維持されうる。製剤は、従来の薬学的に許容される保存剤、安定剤及び界面活性剤も含有しうる。
【0101】
本明細書に開示される医薬組成物で使用されうる保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、PHMB、クロロブタノール、チメロサール、フェニル水銀、アセテート及び硝酸フェニル水銀が挙げられるが、これらに限定されない。有用な界面活性剤は、例えばTween 80である。同様に、様々な有用なビヒクルが、本明細書に開示される眼科用調製物において使用されうる。これらのビヒクルとしては、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及び精製水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
張性調整剤が、必要又は都合に応じて添加されうる。張性調整剤としては、塩、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール及びグリセリン、又はいずれか他の好適な眼科用として許容される張性調整剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
得られる調製物が眼科用として許容される限り、pHを調整するための様々な緩衝剤及び手段が使用されうる。多くの組成物については、pHは4~9である。したがって、緩衝剤としては、アセテート緩衝剤、シトレート緩衝剤、ホスフェート緩衝剤及びボレート緩衝剤が挙げられる。これらの製剤のpHを必要に応じて調整するために、酸又は塩基が使用されうる。
【0104】
眼科用として許容される抗酸化剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール及びブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
眼科用調製物に含まれうる他の添加物成分は、キレート剤である。有用なキレート剤はエデト酸二ナトリウムであるが、他のキレート剤も、それに代えて又はそれと一緒に使用されうる。
【0106】
経皮投与を含む局所使用の場合、本明細書に開示される化合物を含有するクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、溶液又は懸濁液等が用いられる。局所製剤は、一般に医薬用担体、共溶媒、乳化剤、浸透増強剤、保存剤システム、及び軟化剤で構成されうる。
【0107】
静脈内投与の場合、本明細書に記載される化合物及び組成物は、生理食塩水又はデキストロース溶液等の薬学的に許容される希釈剤に溶解又は分散されうる。所望のpHを達成するために、NaOH、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、HCl、及びクエン酸が挙げられるが、これらに限定されない、好適な添加物が含まれうる。様々な実施形態において、最終組成物のpHは、2~8、又は好ましくは4~7に及ぶ。抗酸化剤添加物としては、重亜硫酸ナトリウム、アセトン重亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒド、スルホキシレート、チオ尿素、及びEDTAを挙げることができる。最終静脈内組成物で見られる好適な添加物の他の非限定的例としては、リン酸ナトリウム又はカリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、並びにデキストロース、マンニトール、及びデキストラン等の炭水化物を挙げることができる。更なる許容される添加物については、Powellら、Compendium of Excipients for Parenteral Formulations、PDA J Pharm Sci and Tech、1998、52 238~311及びNemaら、Excipients and Their Role in Approved Injectable Products: Current Usage and Future Directions、PDA J, Pharm. Sci. Tech.、2011、65 287~332に記載されており、これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。静菌性又は静真菌性溶液を実現するために、硝酸フェニル水銀、チメロサール、ベンゼトニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、及びクロロブタノールが挙げられるが、これらに限定されない抗微生物剤も含まれうる。
【0108】
静脈内投与のための組成物は、投与直前に滅菌水、生理食塩水又は水中のデキストロース等の好適な希釈剤で再構成されるもう1つの固体の形態で介護者に提供されうる。他の実施形態において、組成物は、非経口投与する準備ができている溶液として提供される。更に他の実施形態において、組成物は、投与前に更に希釈される溶液として提供される。本明細書に記載される化合物と別の作用剤との組合せを投与する工程を含む実施形態において、組合せは、混合物として介護者に提供されえ、又は、介護者は、2つの作用剤を投与前に混合することができ、若しくは2つの作用剤は別々に投与されうる。
【0109】
本明細書に記載される活性化合物の実際の単位用量は、特定化合物及び処置される状態に依存する。一部の実施形態において、用量は、約0.01mg/体重1kg~約120mg以上/体重1kg、約0.05mg以下/kg~約70mg/kg、約0.1mg/体重1kg~約50mg/体重1kg、約1.0mg/体重1kg~約10mg/体重1kg、約5.0mg/体重1kg~約10mg/体重1kg、又は約10.0mg/体重1kg~約20.0mg/体重1kgでありうる。一部の実施形態において、用量は、100mg未満/kg、90mg/体重1kg、80mg/体重1kg、70mg/体重1kg、60mg/体重1kg、50mg/体重1kg、40mg/体重1kg、30mg/体重1kg、25mg/体重1kg、20mg/体重1kg、10mg/体重1kg、7.5mg/体重1kg、6mg/体重1kg、5mg/体重1kg、4mg/体重1kg、3mg/体重1kg、2.5mg/体重1kg、1mg/体重1kg、0.5mg/体重1kg、0.1mg/体重1kg、0.05mg/体重1kg又は0.005mg/体重1kgでありうる。一部の実施形態において、実際の単位用量は、0.05、0.07、0.1、0.3、1.0、3.0、5.0、10.0又は25.0mg/体重1kgである。したがって、70kgの人への投与の場合、用量範囲は、約0.1mg~70mg、約1mg~約50mg、約0.5mg~約10mg、約1mg~約10mg、約2.5mg~約30mg、約35mg以下~約700mg以上、約7mg~約600mg、約10mg~約500mg、又は約20mg~約300mg、又は約200mg~約2000mgである。一部の実施形態において、実際の単位用量は5mgである。一部の実施形態において、実際の単位用量は10mgである。一部の実施形態において、実際の単位用量は25mgである。一部の実施形態において、実際の単位用量は250mg以下である。一部の実施形態において、実際の単位用量は100mg以下である。一部の実施形態において、実際の単位用量は70mg以下である。
【0110】
前記化合物は、体循環の範囲を超える送達のための製剤にも組み込まれうる。そのような製剤としては、腸溶性カプセル剤、錠剤、軟質ゲル剤、噴霧乾燥粉末、ポリマーマトリックス、ヒドロゲル、腸溶性固体、結晶質固体、非結晶固体、ガラス状固体、被覆微粉化粒子、液体、噴霧化液体、エアロゾル、又はマイクロカプセルを挙げることができる。
【0111】
投与方法
上記の組成物は、いずれか好適な投与経路、例えば皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、若しくは動脈内等の注射;クリーム剤、ローション剤、若しくは貼付剤等による局所;丸剤、溶解した液体、経口懸濁液、バッカルフィルム、若しくは含嗽剤等による経口;経鼻エアロゾル、粉末、若しくは噴霧等による経鼻;又は、点眼剤等による経眼)を通して投与されうる。一部の実施形態において、組成物は、1日当たり1回、2回、3回、又は4回投与されうる。他の実施形態において、組成物は、1週間当たり1回、2回、又は3回投与されうる。他の実施形態において、組成物は、1日おき、3日おき、又は4日おきに投与される。他の実施形態において、組成物は、隔週、3週おき、又は4週おきに投与される。他の実施形態において、組成物は、1か月当たり1回又は1か月当たり2回投与される。
【0112】
一部の実施形態において、その後の用量(維持用量)より高い初回負荷用量が投与される。維持用量の剤形又は投与様式は、負荷用量に使用される剤形又は投与様式と異なりうる。本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、維持用量は、毎月又は1か月当たり複数回、2週間ごと又は2週間に複数回、毎週又は1週間当たり複数回、毎日又は1日当たり複数回を含むがこれらに限定されない、本明細書において企図されるいずれかの投与計画で単位剤形の投与を含むことができる。投与中断日(dosing holiday)が維持用量の投与期間中に組み込まれうることが、本開示内で企図される。そのような投与中断日は、負荷用量の投与直後又は維持用量の投与期間中のいずれかの時点で発生しうる。一部の実施形態において、負荷用量は、300mg以下、250mg以下、200mg以下、150mg以下、又は100mg以下である。一部の実施形態において、維持用量は、300mg以下、200mg以下、100mg以下、50mg以下、25mg以下、10mg以下、5mg以下、又は1mg以下である。
【0113】
処置方法
本開示の方法及び組成物による一部の実施形態は、細胞外マトリックスタンパク質の沈着を低減又は予防する方法であって、それを必要とする対象に有効量の本明細書に記載される化合物を投与する工程を含む、方法に関する。一部の実施形態において、細胞外マトリックスタンパク質の前記沈着は、前記タンパク質の異常又は過剰な沈着を含むことができる。一部の実施形態において、前記細胞外マトリックスタンパク質は、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、又はフィブリンの1種又は複数を含むことができる。一部の実施形態において、前記細胞外マトリックスタンパク質は、コラーゲンを含むことができる。一部の実施形態において、前記細胞外マトリックスタンパク質は、I型コラーゲンを含むことができる。一部の実施形態において、前記細胞外マトリックスタンパク質は、Ia型コラーゲンを含むことができる。一部の実施形態において、前記細胞外マトリックスタンパク質は、III型コラーゲンを含むことができる。本開示の組成物及び方法による一部の実施形態は、線維症又はその症状又は後遺症を処置する方法であって、それを必要とする対象に有効量の本明細書に記載される化合物を投与する工程を含む、方法に関する。
【0114】
一部の実施形態において、本明細書に記載される化合物及び化合物を含む組成物を使用して、線維症又は炎症から生じ、具体的には異常なコラーゲン沈着に関連する状態を含む様々な状態を処置することができる。状態の例としては、糖原病III型(GSD III)、糖原病VI型(GSD VI)、糖原病IX型(GSD IX)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肝炎、強皮症、アルコール性脂肪肝疾患、アテローム性動脈硬化症、喘息、心筋繊維化、臓器移植線維症、筋線維症、膵線維症、骨髄線維症、肝線維症、肝臓及び胆嚢の硬変症、脾臓の線維症、肺線維症、特発性肺線維症、びまん性実質性肺疾患、特発性間質性線維症、びまん性間質性線維症、間質性肺臓炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、急性間質性肺臓炎、過敏性肺臓炎、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎、リンパ球性間質性肺炎、塵肺症、珪肺症、肺気腫、間質性線維症、サルコイドーシス、縦隔線維症、心筋繊維化、心房線維症、心内膜心筋線維症、腎線維症、慢性腎疾患、II型糖尿病、黄斑変性症、ケロイド病変、肥厚性瘢痕、腎性全身性線維症、注射線維症、手術の合併症、線維性慢性同種移植血管症及び/又は移植器官における慢性拒絶反応、虚血再灌流傷害に関連する線維症、精管切断術後疼痛症候群、関節リウマチに関連する線維症、関節線維症、デュピュイトラン病、皮膚筋炎-多発性筋炎、混合性結合組織病、口腔の繊維増殖性病変、線維化性腸狭窄、クローン病、グリア瘢痕、軟膜線維症、髄膜炎、全身性エリテマトーデス、放射線曝露による線維症、乳腺嚢胞破裂による線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、又はそれらの症状若しくは後遺症、或いはコラーゲン等の細胞外マトリックス成分の過剰な沈着を生じる他の疾患又は状態が挙げられる。
【0115】
一部の実施形態において、本開示の方法は、線維症の状態を処置、改善、又は予防する方法を含む。一部の実施形態において、前記線維症の状態は、別の状態に続発するものでもよい。一部の実施形態において、前記線維症の状態又は原発性の状態は、対象の身体の器官、組織、空間領域、又は流体連結区域の慢性炎症を更に含むことができる。一部の実施形態において、前記炎症は、1つ又は複数のTGF-β依存性シグナル伝達経路の活性化を含むことができる。一部の実施形態において、前記TGF-β依存性シグナル伝達経路は、T3又はT4に応答する1つ又は複数の要素を含むことができる。一部の実施形態において、前記線維症の状態は、コラーゲン、ケラチン、又はエラスチンの1種又は複数の異常又は過剰な沈着を含むことができる。一部の実施形態において、前記線維症の状態は、コラーゲンの異常又は過剰な沈着を含むことができる。一部の実施形態において、前記線維症の状態は、I型コラーゲンの異常又は過剰な沈着を含むことができる。一部の実施形態において、前記線維症の状態は、Ia型コラーゲンの異常又は過剰な沈着を含むことができる。一部の実施形態において、前記線維症の状態は、III型コラーゲンの異常又は過剰な沈着を含むことができる。一部の実施形態において、前記線維症の状態は、糖原病III型(GSD III)、糖原病VI型(GSD VI)、糖原病IX型(GSD IX)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肝炎、強皮症、アルコール性脂肪肝疾患、アテローム性動脈硬化症、喘息、心筋繊維化、臓器移植線維症、筋線維症、膵線維症、骨髄線維症、肝線維症、肝臓及び胆嚢の硬変症、脾臓の線維症、強皮症、肺線維症、特発性肺線維症、びまん性実質性肺疾患、特発性間質性線維症、びまん性間質性線維症、間質性肺臓炎、剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎、間質性肺疾患、慢性間質性肺疾患、急性間質性肺臓炎、過敏性肺臓炎、非特異的間質性肺炎、特発性器質化肺炎、リンパ球性間質性肺炎、塵肺症、珪肺症、肺気腫、間質性線維症、サルコイドーシス、縦隔線維症、心筋繊維化、心房線維症、心内膜心筋線維症、腎線維症、慢性腎疾患、II型糖尿病、黄斑変性症、ケロイド病変、肥厚性瘢痕、腎性全身性線維症、注射線維症、手術の合併症、線維性慢性同種移植血管症及び/又は移植器官における慢性拒絶反応、虚血再
灌流傷害に関連する線維症、精管切断術後疼痛症候群、関節リウマチに関連する線維症、関節線維症、デュピュイトラン病、皮膚筋炎-多発性筋炎、混合性結合組織病、口腔の繊維増殖性病変、線維化性腸狭窄、クローン病、グリア瘢痕、軟膜線維症、髄膜炎、全身性エリテマトーデス、放射線曝露による線維症、乳腺嚢胞破裂による線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症の1つ又は複数を含むことができる。一部の実施形態において、前記線維症の状態は、GSD III、GSD IX、非アルコール性脂肪性肝炎、肝臓及び/若しくは膵臓の硬変症、強皮症、特発性肺線維症、乾癬、アルコール性脂肪肝疾患、デュピュイトラン病、並びに/又はそれらのいずれかの組合せの1つ又は複数を含むことができる。
【0116】
本開示の方法及び組成物によれば、特に化合物1~4を含む、本明細書に開示されるもの等の甲状腺受容体作動薬は、線維症の状態、又は線維症が症状又は後遺症である状態を処置、改善、予防、又は治癒するために対象に投与されうる。本明細書に開示される方法及び組成物によれば、前記線維症の状態又は線維症を後遺症として有する状態は、慢性炎症を更に含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物によれば、前記線維症の状態又は線維症を後遺症として有する状態は、1つ又は複数のTGF-β依存性シグナル伝達経路の活性化を更に含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物によれば、前記線維症の状態又は線維症を後遺症として有する状態は、1つ又は複数の甲状腺受容体ベータ(TRβ)依存性シグナル伝達経路の活性化及び/又は抑制を更に含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物によれば、前記線維症の状態又は線維症を後遺症として有する状態は、トリヨードチロニン(T3)、チロキシン(T4)、それらのいずれかの組合せ、又はそれらの模倣物に応答するシグナル伝達経路の関与を更に含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物によれば、前記線維症の状態又は線維症を後遺症として有する状態は、T3、T4、それらのいずれかの組合せ、又はそれらの模倣物に応答する受容体の関与を更に含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物による一部の実施形態において、前記線維症の状態又は線維症を後遺症として有する状態は、TRβの関与を含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物による一部の実施形態において、前記線維症の状態又は線維症を後遺症として有する状態は、1種又は複数のTRβ作動薬の投与により予防、改善、又は治癒される1つ又は複数の状態を含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物による一部の実施形態において、前記線維症の状態又は線維症を後遺症として有する状態は、化合物1~4の1つ又は複数の投与により予防、改善、又は治癒される1つ又は複数の状態を含むことができる。一部の実施形態において、前記1種若しくは複数のTRβ作動薬又は化合物1~4の前記1つ若しくは複数は、1種若しくは複数の活性薬物化合物及び/又は1種若しくは複数の添加物と共投与されうる。一部の実施形態において、前記1種若しくは複数のTRβ作動薬又は化合物1~4の前記1つ若しくは複数は、外科処置、光線療法、又は超音波療法の前、最中、又は後に投与されうる。一部の実施形態において、前記1種若しくは複数のTRβ作動薬又は化合物1~4の前記1つ若しくは複数は、ピルフェニドン、ニンテダニブ、及び/若しくは線維芽細胞増殖因子受容体阻害薬、並びに/又はクロストリジウム・ヒストリチカムコラゲナーゼ等のコラゲナーゼの1種又は複数と共投与されうる。
【0117】
一部の実施形態において、本明細書に記載される組成物及び方法は、コラーゲン沈着の処置、改善、予防又は治癒のための組成物及び方法を提供する。一部の実施形態において、前記コラーゲン沈着は、コラーゲンの異常又は過剰な沈着を含む。一部の実施形態において、前記コラーゲン沈着は、I型コラーゲンの異常又は過剰な沈着を含むことができる。一部の実施形態において、前記コラーゲン沈着は、Ia型コラーゲンの異常又は過剰な沈着を含むことができる。一部の実施形態において、前記コラーゲン沈着は、III型コラーゲンの異常又は過剰な沈着を含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物によれば、前記コラーゲン沈着は、T3、T4、それらのいずれかの組合せ、又はそれらの模倣物に応答する受容体の関与を更に含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物よる一部の実施形態において、前記コラーゲン沈着は、TRβの関与を含むことができる。本明細書に開示される方法及び組成物による一部の実施形態において、前記コラーゲン沈着は、1種又は複数のTRβ作動薬の投与により予防、改善、又は治癒されうる。本明細書に開示される方法及び組成物による一部の実施形態において、前記コラーゲン沈着は、化合物1~4の1つ又は複数の投与により予防、改善、又は治癒されうる。一部の実施形態において、前記1種若しくは複数のTRβ作動薬又は化合物1~4の前記1つ若しくは複数は、1種若しくは複数の活性薬物化合物及び/又は1種若しくは複数の添加物と共投与されうる。一部の実施形態において、前記1種若しくは複数のTRβ作動薬又は化合物1~4の前記1つ若しくは複数は、外科処置、光線療法、又は超音波療法の前、最中、又は後に投与されうる。一部の実施形態において、前記1種若しくは複数のTRβ作動薬又は化合物1~4の前記1つ若しくは複数は、ピルフェニドン、ニンテダニブ、及び/若しくは線維芽細胞増殖因子受容体阻害薬、並びに/又はクロストリジウム・ヒストリチカムコラゲナーゼ等のコラゲナーゼの1種又は複数と共投与されうる。
【0118】
一部の実施形態において、化合物1~4、化合物2、又は本明細書に開示される化合物若しくは組成物のいずれかの投与は、前記化合物又は組成物が投与される対象におけるCola1、Col3a1、αSMA、及び/若しくはガレクチン1遺伝子、又はそれらのいずれかの組合せ若しくは産物の発現を低減させる。一部の実施形態において、化合物1~4、化合物2、又は本明細書に開示される化合物若しくは組成物のいずれかの投与は、組織学、組織化学、免疫組織化学等によって観察可能な線維症の程度の低減、並びに/或いは前記化合物又は組成物が投与される対象における1型コラーゲン及び/若しくはヒドロキシプロリン又はそれらのいずれかの組合せの量、蓄積、又は分布の低減をもたらす。一部の実施形態において、化合物1~4、化合物2、又は本明細書に開示される化合物又は組成物のいずれかの投与は、全血清脂質、全血清コレステロール、全血清トリグリセリド、全肝臓脂質、全肝臓コレステロール、全肝臓トリグリセリド、又はそれらのいずれかの組合せを低減させる。
【0119】
以下の実施例によって、本明細書に記載される方法を更に説明する。
【0120】
実施例1
DIO-NASHマウスを3週間順化させた。順化に先立って、前処置肝生検試料を回収した。マウスを、1群当たりマウス12匹として、5つの投与群の1つに無作為に割り当てた。投与量の割り当ては、化合物2(低):3mg/kg;化合物2(高):10mg/kg;化合物1:10mg/kg;及びエラフィブラノール(30mg.kg)であった。1群は、対照としてビヒクルのみで処置した偽群であった。剤形を、1日当たり1回経口投与した。8週間後、動物を屠殺し、肝臓試料を採取した。肝臓試料を全肝臓ヒドロキシプロリンについてアッセイし、線維症ステージ及びColaI(Ia型コラーゲン)染色の範囲について免疫組織化学的観察にかけた。図1に示すように、化合物2処置動物は、対照処置又は偽処置動物より低い全肝臓ヒドロキシプロリンレベルを示す。ヒドロキシプロリンは、コラーゲンの重要成分であり、コラーゲンは、動物組織において最も重要なヒドロキシプロリン源であるので、ヒドロキシプロリンのレベルは、試料中におけるコラーゲンの存在の信頼できる代理を務める。
【0121】
最終の肝生検試料も、組織化学的染色及び免疫組織化学的染色にかけた。ビヒクル、低用量化合物2、高用量化合物2、化合物1、又はエラフィブラノールで8週間処置した後、処置期間の終わりにピクロシリウスレッドで染色(I型及びIII型コラーゲン沈着を可視化するため、赤色染色)された肝臓の代表的画像を図2に示す。図5に示すように、全肝臓1型及び3型コラーゲン(mg/肝臓)を、ピクロシリウスレッド染色に続いて形態計測によって決定した。化合物1処置動物からの肝臓切片は、偽処置動物からの肝臓切片より低いPSR染色を示し、化合物2処置動物からの肝臓切片は、対照処置又は偽処置動物より低いPSR染色を示した。ビヒクル、低用量化合物2、高用量化合物2、化合物1、又はエラフィブラノールで8週間処置した後、処置期間の終わりに抗I型コラーゲン(col1a1)(Southern Biotech社、カタログ番号131001)で染色された肝臓の代表的画像を図3に示す。ColA1含有量の程度を、最終の肝生検試料における全肝臓ColA1染色として算出した。図4に示すように、化合物2処置動物は、対照処置又は偽処置動物より低い全肝臓ColA1含有量を示す。
【0122】
線維症スコアも、最終の肝生検試料の観察に基づいて算出した。更に、処置後に線維症スコアの低減を示した割合は、化合物1又は化合物2で処理した動物の方が偽処置動物より高かった。化合物2処置動物は、処置後の線維症スコアの増加を示さなかった。
【0123】
実施例2
健常な雄性Dunkin-Hartleyモルモットにおいて、ブレオマイシンを気管内投与することによって、肺線維症を誘導する。対照対象は、生理食塩水の気管内投与によって生じる。ブレオマイシン処置動物においてプロムナリ線維症が確立した後、化合物1~4のいずれか1つ、又は本明細書に開示されるいずれか他の化合物を含む被験物品を、その製剤に適切な各対象に、毎日又は適宜6~10週間投与する。片側肺生検試料を、被験物品の最初の投与に先立って採取し、被験物品の最後の投与後に屠殺した後再び採取する。生検試料を、III型コラーゲンの免疫組織化学的染色を加えて、実施例Iに記載されているように分析する。本明細書に開示される化合物で処置した動物、特に化合物2で処置した動物からの肺が、被験物品の投与に先立って示されたレベルに比べてヒドロキシプロリンレベルの低減、III型コラーゲン染色の減少、及び線維症スコアの減少を示す。偽処置動物は、線維症、ヒドロキシプロリン含有量、又はIII型コラーゲン含有量の低減をほとんど又は全く示さない。
【0124】
実施例2
ヌードマウスにおいて、手掌筋膜線維症の研究のための動物モデル体系の確立の記述に関して参照により本明細書に組み込まれるStish, L.ら、BMC Musculoskelet. Disord.、16: 138~148 (2015)に記載されているようにデュピュイトラン病患者の線維束(fibrotic cord)からの線維芽細胞を導入することによって、手掌筋膜線維症を誘導する。線維芽細胞処置動物において手掌筋膜線維症が確立した後、化合物1~4のいずれか1つ、又は本明細書に開示されるいずれか他の化合物を含む被験物品を、その製剤に適切な各対象に、毎日又は適宜6~10週間投与する。片側前肢生検試料を、被験物品の最初の投与に先立って採取し、被験物品の最後の投与後に屠殺した後再び採取する。生検試料を、III型コラーゲンの免疫組織化学的染色を加えて、実施例Iに記載されているように分析する。本明細書に開示される化合物で処置した動物、特に化合物2で処置した動物からの手掌筋膜が、被験物品の投与に先立って示されたレベルに比べてヒドロキシプロリンレベルの低減、III型コラーゲン染色の減少、及び線維症スコアの減少を示す。偽処置動物は、線維症、ヒドロキシプロリン含有量、又はIII型コラーゲン含有量の低減をほとんど又は全く示さない。
【0125】
実施例3
Sprague-Dawleyラットにおいて、ラットにおける肥厚性皮膚病変の誘導の記述に関して参照により本明細書に組み込まれるWallengren, J.ら、Skin Pharm. Appl. Skin Physiol.、15(3): 154~165(2002)に記載されているようにカプサイシンの皮下注射によって、又はC57BL若しくは他の適切な系マウスにおいて、マウスにおける線維性皮膚病変の誘導の開示について本明細書に組み込まれるAlonso-Merinoら、Proc. Nat. Acad. Sci.、113(24):E3451-60 (2016)に記載されているようにCCl4及び/又はブレオマイシンの皮下投与によって、肥厚性皮膚病変を誘導する。カプサイシン、CCl4及び/又はブレオマイシン処置動物において肥厚性皮膚病変が確立した後、化合物1~4のいずれか1つ、又は本明細書に開示されるいずれか他の化合物を含む被験物品を、その製剤に適切な各対象動物に、毎日又は適宜6~10週間投与する。注射部位からの皮膚生検試料を、被験物品の最初の投与に先立って採取し、被験物品の最後の投与後に屠殺した後再び採取する。生検試料を、III型コラーゲンの免疫組織化学的染色を加えて、実施例Iに記載されているように分析する。本明細書に開示される化合物で処置した動物、特に化合物2で処置した動物からの注射部位皮膚試料が、被験物品の投与に先立って示されたレベルに比べてヒドロキシプロリンレベルの低減、III型コラーゲン染色の減少、及び線維症スコアの減少を示す。偽処置動物は、線維症、ヒドロキシプロリン含有量、又はIII型コラーゲン含有量の低減をほとんど又は全く示さない。
【0126】
実施例4
高コレステロール血症及び高脂質血症を含むGSD-3-様肝臓症状を示すグルコース-6-ホスファターゼ-α欠損マウス(Agl-/-、例えばLiu, K.M.ら、Mol. Genet. Metabol.、111(4):467~76 (2014)を参照のこと)を、化合物1~4のいずれか1つ、又は本明細書に開示されるいずれか他の化合物を含む被験物品で処置し、その製剤に適切な各対象に、毎日又は適宜6~10週間投与する。肝臓生検試料を、被験物品の最初の投与に先立って採取し、被験物品の最後の投与後に屠殺した後再び採取する。生検試料を、実施例Iに記載されているように分析する。本明細書に開示される化合物で処置した動物、特に化合物2で処置した動物からの肝臓試料が、被験物品の投与に先立って示されたレベルに比べてヒドロキシプロリンレベルの低減、I型コラーゲン染色の減少、及び線維症スコアの減少を示す。偽処置動物は、線維症、ヒドロキシプロリン含有量、又はIII型コラーゲン含有量の低減をほとんど又は全く示さない。
【0127】
実施例5
高コレステロール血症及び高脂質血症を含むGSD-8/9-様肝臓症状を示すホスホリラーゼキナーゼ欠損マウス(PhKc-/-、例えばVarsanyi, M.ら、Biochem. Genet.、18(3-4): 247~61 (1980)を参照のこと)を、化合物1~4のいずれか1つ、又は本明細書に開示されるいずれか他の化合物を含む被験物品で処置し、その製剤に適切な各対象に、毎日又は適宜6~10週間投与する。肝臓生検試料を、被験物品の最初の投与に先立って採取し、被験物品の最後の投与後に屠殺した後再び採取する。生検試料を、実施例Iに記載されているように分析する。本明細書に開示される化合物で処置した動物、特に化合物2で処置した動物からの肝臓試料が、被験物品の投与に先立って示されたレベルに比べてヒドロキシプロリンレベルの低減、I型コラーゲン染色の減少、及び線維症スコアの減少を示す。偽処置動物は、線維症、ヒドロキシプロリン含有量、又はI型コラーゲン含有量の低減をほとんど又は全く示さない。
【0128】
実施例6
食餌誘導性NASHマウスモデルにおいて、化合物2を評価した(例えば、食餌誘導性、遺伝性、化学性、及び他のNASHマウスモデルのその開示に関して参照により本明細書に組み込まれるHansen, H.ら、Drug Discovery Today、22(17): 1701~1718 (2017)を参照のこと)。このモデルにおける食餌によって引き起こされるNASHは、化学的/毒素効果に依拠して、脂肪性肝炎/線維症をもたらさない。動物を研究前に生検し、NASH及び線維症を有する動物のみを研究のために選択した。選択された動物を順化し、無作為化し、実験群は、以下のスケジュールに従って化合物2の経口投与を受ける1コホート当たり動物11~12匹とした。8週間、毎日投与;又は0~1週目は、毎日投与し、次に2~8週目は、毎週投与する。8週目に、動物を屠殺し、組織を分析した。血漿酵素(P-ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)及びP-AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ))、全血漿トリグリセリド、及び全血漿コレステロールを測定し、各肝臓の最終の屍検を実施し、全肝臓トリグリセリド及び全肝臓コレステロールを含めた総体的な肝臓の生化学的性質をアッセイし、NAFLD活性スコア(処置前及び処置後に行った)、線維症ステージ(やはり処置前及び処置後に行った)、脂肪症、Col1a1レベル、及びガラクチン-3レベルの組織学的評価を行った。RNAseqを使用する特徴付けのために、組織試料を保存した。RNAseqを使用して、化合物2処置動物対ビヒクル処置動物における差次的発現を示す遺伝子及び/又は線維症に関係づけられることが知られている遺伝子の発現レベルを決定した。無処置対照に比べて、処置群において肝臓トリグリセリド及びコレステロールの著しい低減が観察された。図6に示すように、肝臓における全脂質含有量が約80%低減し、血漿脂質も同様に低減し、NASスコアが著しく改善した。著しい毒性は観察されなかった。
【0129】
図7に示すように、処置前試料に比べて、線維症、1型コラーゲン沈着、及びヒドロキシプロリンでも著しい低減(それぞれ、50.2%、60.2%、及び46.3%)が見られた。処置後、線維化促進遺伝子Col1a1、Col3a1、αSMA、及びガレクチン1の発現は、それぞれ36.3%、27.1%、37%、及び64.7%低減し(図8)、組織学により観察された結果が確認された。したがって、化合物2の8週間投与により、食餌誘導性NASHモデルにおいて脂肪症、線維症、及び非アルコール性脂肪性肝炎に関連した組織学的、生化学的、及び遺伝的マーカーが顕著に改善した。
【0130】
実質的にいずれかの複数形及び/又は単数形の用語の本明細書における使用に関して、当業者は、文脈及び/又は適用に適切なように複数形から単数形に、及び/又は単数形から複数形に変えることができる。様々な単数形/複数形の変更を、はっきりさせるために本明細書では明示的に記載することができる。
【0131】
一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、一般に「オープンな」用語であると意図されていることは、当業者によって理解されると予想される(例えば、用語「~を含む(including)」は、「~を含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「~を有する(having)」は、「少なくとも~を有する」と解釈されるべきであり、用語「~を含む」は、「~を含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきである、等)。導入された請求項の記載の特定の数が意図されている場合、そのような意図は請求項中に明確に記載され、そのような記載がない場合は、そのような意図が存在しないことも当業者であれば更に理解しているものと予想される。例えば、理解の補助として、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の記載を導入するための「少なくとも1つの」及び「1つ又は複数の」という導入句の使用を含むことができる。しかし、そのような語句の使用は、同じ請求項が、導入句「1つ又は複数の」又は「少なくとも1つの」及び「1つの(a)」又は「1つの(an)」等の不定冠詞を含むときでさえ、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」による請求項の記載の導入が、そのような導入された請求項の記載を含むいずれかの特定の請求項を、そのような記載を1つしか含まない実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない(例えば、「1つの(a)」及び/又は「1つの(an)」は、「少なくとも1つの」又は「1つ又は複数の」を意味すると解釈されるべきである)。請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても、同じことが当てはまる。更に、導入された請求項の記載の特定の数が明確に記載されている場合でさえ、そのような記載が、少なくとも記載された数を意味するように解釈されるべきであることを当業者は認識すると予想される(例えば、他の修飾語のない、単に「2つの記載」という記載は、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B、及びC等の少なくとも1つ」と類似している表記が使用される場合、一般にそのような構造は、当業者なら表記を理解するという意味で意図される(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一緒
に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、及び/又はAとBとCを一緒に、等を有するシステムを含むが、これらに限定されない)。「A、B、又はC等の少なくとも1つ」と類似している表記が使用される場合、一般にそのような構造は、当業者なら表記を理解するという意味で意図される(例えば、「A、B、又はCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBを一緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、及び/又はAとBとCを一緒に、等を有するシステムを含むが、これらに限定されない)。明細書であれ、特許請求の範囲であれ、図面であれ、2つ以上の選択的用語を提示する事実上いずれの離接的単語及び/又は語句も、用語の1つ、用語のどちらか、又は両方の用語を含む可能性を企図するものと理解されるべきであることは、当業者であれば更に理解しているものと予想される。例えば、語句「A又はB」は、「A」若しくは「B」又は「A及びB」の可能性を含むものと理解される。
【0132】
更に、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群によって記載されている場合、それにより、本開示が、マーカッシュ群のいずれか個々のメンバー又はメンバーのサブグループで記載されていることを当業者であれば認識していると予想される。
【0133】
当業者によって理解されるように、文書による説明を行うという観点等、あらゆるすべての目的のために、本明細書に開示されるすべての範囲は、あらゆるすべての可能なそれらの下位の範囲及び下位の範囲の組合せも包含する。列挙された範囲はいずれも、十分に記述され、同じ範囲を少なくとも等分割、3分割、4分割、5分割、10分割等に分解することができると容易に認識することができる。非限定的例として、本明細書で論じられている範囲はそれぞれ、下部3分の1、中部3分の1、及び上部3分の1等に容易に分解することができる。やはり当業者によって理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」等すべての言語は、記載された数を含み、以上で論じた下位の範囲にその後分解されうる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、それぞれ個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3つの物品を有するグループは、1、2、又は3つの物品を有するグループを指す。同様に、1~5つの物品を有するグループは、1、2、3、4、又は5つの物品を有するグループを指す。
【0134】
様々な態様及び実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様及び実施形態は当業者に明らかである。本明細書に開示される様々な態様及び実施形態は、説明のためであって、限定することを意図したものではなく、真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8