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特許7168681粘着テープ、及び半導体パッケージの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】粘着テープ、及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20221101BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20221101BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221101BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
H01L21/56 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020556665
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037160
(87)【国際公開番号】W WO2020100434
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018215590
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155698
【氏名又は名称】株式会社有沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 憲明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信之
(72)【発明者】
【氏名】太刀川 透
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216597(JP,A)
【文献】特開2012-201846(JP,A)
【文献】国際公開第2012/008142(WO,A1)
【文献】特開2006-169480(JP,A)
【文献】特開2012-059846(JP,A)
【文献】特開2002-338910(JP,A)
【文献】特開2019-156940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に配置された粘着層と、を含み、
前記粘着層が、金属キレート架橋剤によって架橋されている非芳香族アクリル系重合体を含む、
半導体パッケージの製造方法において使用するための粘着テープ。
【請求項2】
前記金属キレート架橋剤が、200℃以下の沸点を有する配位子を含む、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記金属キレート架橋剤が、アルミニウムキレート架橋剤である、請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
リードフレームの裏面に、請求項1~のいずれかに記載の粘着テープを貼り付ける貼付工程;
前記粘着テープが貼り付けられたリードフレームの表面のダイパッドに半導体チップを固定する固定工程;
前記半導体チップと前記リードフレームの表面とをプラズマで処理するプラズマ処理工程;
プラズマで処理された、前記半導体チップと前記リードフレームの表面とをボンディングワイヤーで接続する接続工程;
前記ボンディングワイヤーと前記半導体チップと前記リードフレームの表面とを樹脂で封止する封止工程;及び
前記樹脂で表面が封止されたリードフレームの裏面から前記粘着テープを剥離する剥離工程;
を含む、半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージの製造方法において使用するための粘着テープ、及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
QFN(Quad Flat No Lead)、SON(Small Outline No Lead)等の半導体パッケージは、半導体チップが固定されたリードフレームの表面を樹脂で封止することによって製造されている。しかしながら、封止の際に、樹脂が、リードフレームの開口部を通って裏面に漏れ出て、半導体パッケージの端子を被覆するという問題(いわゆる、モールドフラッシュ)が生じることがある。この問題に対し、特許文献1は、「ポリイミド材料からなる基材層と、200℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であるアクリル系材料からなる厚さ1~20μmの粘着剤層とから少なくとも構成されていることを特徴とする耐熱性粘着テープ」をリードフレームの裏面に貼り付ける方法を記載している。
【0003】
しかしながら、粘着テープは、半導体パッケージの製造過程において実施されるプラズマ処理によって変性し、リードフレームから完全に剥離できず、その一部が残存してしまうという問題が生じることがある。この問題に対し、特許文献2は、「基材層と該基材層上に積層された粘着剤層とを備えた粘着テープであって、前記粘着剤層は、(メタ)アクリル酸と該(メタ)アクリル酸以外のモノマー成分とに由来する構造単位を含むポリマー及びエポキシ系架橋剤を含む粘着剤によって形成されており、前記(メタ)アクリル酸は、前記モノマー成分100重量部に対して5重量部以上含有され、前記エポキシ系架橋剤は、前記(メタ)アクリル酸に対して0.4当量以上に対応する重量部数で含有されていることを特徴とする樹脂封止型半導体装置の製造における樹脂封止用耐熱性粘着テープ」を使用することを記載している。
【0004】
なお、非特許文献1は、プラズマが与えるアクリル系樹脂への影響について記載している。具体的には、プラズマへの暴露によって、アクリル系樹脂に含まれるベンゼン環に隣接する部位で選択的に結合が開裂することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-014930号公報
【文献】特開2011-124495号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】表面科学,Vol.13,No.8,pp.478-482,1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2には、粘着剤層に含まれるポリマーの架橋度を高めることによって、粘着テープのプラズマ耐性が向上することが記載されている。しかしながら、ポリマーの架橋度を高めると、モールドフラッシュを防止するために必要な、高温条件下における粘着テープの粘着力を確保することが困難になるとの問題が生じる。
【0008】
本発明は、粘着層の一部を残すことなく、リードフレームからきれいに剥離することができ、かつ、モールドフラッシュを防止することができる粘着テープ、及びこれを用いた半導体パッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等が鋭意検討した結果、非芳香族アクリル系重合体及び金属キレート架橋剤を使用して、粘着テープの粘着層を形成することにより、優れたプラズマ耐性が得られること、及び高温条件下において高い粘着力が得られることを見出した。優れたプラズマ耐性を有することによって、プラズマ処理による粘着層の変性が抑制され、常温条件下において、粘着テープをリードフレームからきれいに剥離することができる。また、高温条件下において高い粘着力を有することによって、モールドフラッシュを防止することができる。
【0010】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
基材と、前記基材上に配置された粘着層と、を含み、
前記粘着層が、金属キレート架橋剤によって架橋されている非芳香族アクリル系重合体を含む、
半導体パッケージの製造方法において使用するための粘着テープ。
[2]
前記金属キレート架橋剤が、200℃以下の沸点を有する配位子を含む、[1]に記載の粘着テープ。
[3]
前記金属キレート架橋剤が、アルミニウムキレート架橋剤である、[1]又は[2]に記載の粘着テープ。
[4]
基材と、前記基材上に配置された粘着層と、を含む、半導体パッケージの製造方法において使用するための粘着テープであって、
下記式:
[(A-B)/A]×100
(式中、
Aは、プラズマ処理前の前記粘着層に対する水の接触角であり、
Bは、プラズマ処理後の前記粘着層に対する水の接触角である)
で表される、プラズマ処理の前後における前記粘着層に対する水の接触角の変化率(%)が10%以下であり、
銅箔からの前記粘着テープの剥離力が、150℃で100mN/25mm以上である、前記粘着テープ。
[5]
リードフレームの裏面に、[1]~[4]のいずれかに記載の粘着テープを貼り付ける貼付工程;
前記粘着テープが貼り付けられたリードフレームの表面のダイパッドに半導体チップを固定する固定工程;
前記半導体チップと前記リードフレームの表面とをプラズマで処理するプラズマ処理工程;
プラズマで処理された、前記半導体チップと前記リードフレームの表面とをボンディングワイヤーで接続する接続工程;
前記ボンディングワイヤーと前記半導体チップと前記リードフレームの表面とを樹脂で封止する封止工程;及び
前記樹脂で表面が封止されたリードフレームの裏面から前記粘着テープを剥離する剥離工程;
を含む、半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粘着層の一部を残すことなく、リードフレームからきれいに剥離することができ、かつ、モールドフラッシュを防止することができる粘着テープ、及びこれを用いた半導体パッケージの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<粘着テープ>
本発明の第1実施形態は、基材と、前記基材上に配置された粘着層と、を含み、前記粘着層が、金属キレート架橋剤によって架橋されている非芳香族アクリル系重合体を含む、半導体パッケージの製造方法において使用するための粘着テープに関する。具体的には、粘着テープは、モールドフラッシュを防止するために使用される。非芳香族アクリル系重合体及び金属キレート架橋剤を使用することによって、優れたプラズマ耐性、及び高温条件下における高い粘着力が得られる。これにより、粘着テープを、粘着層の一部を残すことなく、リードフレームからきれいに剥離することができると共に、モールドフラッシュを防止することができる。
【0013】
本実施形態における基材は、半導体パッケージの製造過程における温度条件に耐えられる耐熱性基材であれば特に限定されない。耐熱性基材は、例えば、150℃、170℃、200℃、250℃、又は300℃の温度に耐えられる基材であることが好ましい。具体的な基材としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、アラミド等が挙げられる。基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、5~50μm、10~40μm、20~30μm等としてもよい。
【0014】
本実施形態における粘着層は、金属キレート架橋剤によって架橋されている非芳香族アクリル系重合体を含む。粘着層は、非芳香族アクリル系重合体を含むことにより、プラズマ耐性が向上する。詳しいメカニズムは定かではないが、本発明者は以下のように推測する。粘着層が芳香族アクリル系重合体を含む場合、プラズマ処理によって、芳香環周辺の結合が集中的に切断される。その結果、粘着層表面の変性度合いが強くなり、プラズマ耐性が大幅に低下する。これに対し、本実施形態における粘着層は、非芳香族アクリル系重合体を含むため、プラズマ処理を行っても、上述した集中的な切断は発生しない。その結果、プラズマ処理による粘着層表面の変性度合いは弱くなり、良好なプラズマ耐性を確保することができる。
【0015】
金属キレート架橋剤によって架橋される非芳香族アクリル系重合体は、1種類のみであってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。2種類以上を組み合わせる場合、少なくとも1種類の非芳香族アクリル系重合体は、アクリル酸に由来する構成単位を、非芳香族アクリル系重合体の全体量に対して、1~20重量%含むことが好ましい。なお、重合体は通常、分子量分布を有するため、当該分子量分布を構成する複数の重合体分子の組み合わせを1つの種類と見なす。金属キレート架橋剤は、1種類のみであってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。粘着層は、本発明の効果を損なわない範囲で、更なる成分を含んでいてもよい。更なる成分としては、例えば、可塑剤、顔料、染料、帯電防止剤、充填剤等が挙げられる。
【0016】
粘着層の乾燥後の厚さは、好ましくは2~12μmであり、より好ましくは4~10μmであり、更に好ましくは6~8μmである。
【0017】
本実施形態における非芳香族アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体に由来する構成単位(以下「アクリル単位」という。)を有し、芳香環を有しない重合体を意味する。本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリル酸の誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。具体的な(メタ)アクリル酸の誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。これらの中でも、常温タックを適度に確保する観点から、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。また、非芳香族アクリル系重合体は、金属キレート架橋剤と結合するための官能基を有する必要がある。官能基としては、カルボキシル基が好ましい。また、官能基を有する構成単位は、非芳香族アクリル系重合体の全体量に対して1~20重量%含まれることが好ましい。
【0018】
非芳香族アクリル系重合体は、アクリル単位に加えて、更なる構成単位を有していてもよい。更なる構成単位としては、例えば、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、ブタジエン、イソプレン等に由来する構成単位が挙げられる。
【0019】
非芳香族アクリル系重合体を構成するアクリル単位の量は、非芳香族アクリル系重合体に対して、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、更に好ましくは90重量%以上である。アクリル単位の量の上限は、特に制限されないが、例えば、100重量%、95重量%等としてもよい。
【0020】
非芳香族アクリル系重合体の重量平均分子量は、作業性と糊残り性を両立させる観点から、好ましくは30万~150万であり、より好ましくは50万~100万である。
【0021】
非芳香族アクリル系重合体の量は、粘着層に対して、好ましくは85~99重量%であり、より好ましくは90~98重量%であり、更に好ましくは93~97重量%である。
【0022】
本実施形態における金属キレート架橋剤は、金属イオンと配位子を有する架橋剤を意味する。金属キレート架橋剤は、イオン結合性の架橋剤であることから、共有結合性の架橋剤に比べ、175℃における弾性率が低い。これにより、粘着層は高温条件下において高い粘着力を有し、モールドフラッシュを効果的に抑制することができる。また、金属キレート架橋剤は、沸点が200℃以下の配位子を有することが好ましい。これにより、粘着層を形成する工程で、乾燥により配位子が揮発し、金属キレート架橋剤は、不可逆的に非芳香族アクリル系重合体と架橋することができる。配位子の沸点の下限は特に限定されないが、例えば、60℃、70℃、80℃等であってもよい。
【0023】
沸点が200℃以下の配位子を有する金属キレート架橋剤としては、例えば、アルミニウムキレート架橋剤、チタンキレート架橋剤、ジルコニウムキレート架橋剤等が挙げられる。
【0024】
アルミニウムキレート架橋剤としては、例えば、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
チタンキレート架橋剤としては、例えば、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ-2-エチルヘキソキシビス(2-エチル-3-ヒドロキシヘキソキシド)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンアミノエチルアミノエタノレート等が挙げられる。
ジルコニウムキレート架橋剤としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等が挙げられる。
特に限定するものではないが、ポットライフ(シェルフライフ)の観点から、金属キレート架橋剤は、アルミニウムキレート架橋剤であることが好ましく、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)であることがより好ましい。
【0025】
金属キレート架橋剤の量は、粘着層に対して、好ましくは1~15重量%であり、より好ましくは2~10重量%であり、更に好ましくは3~7重量%である。
【0026】
本実施形態に係る粘着テープは、粘着層上に離型フィルムを含んでいてもよい。
【0027】
本実施形態に係る粘着テープは、公知の方法で製造することができる。例えば、非芳香族アクリル系重合体、金属キレート架橋剤、及び溶媒を混合する工程(混合工程)、混合物を基材に塗布する工程(塗布工程)、塗布された混合物を乾燥する工程(乾燥工程)、を含む方法によって、粘着テープを製造することができる。
【0028】
混合工程で使用する溶媒としては、例えば、ケトン溶媒(アセチルアセトン、メチルエチルケトン、アセトン等)、アルコール溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、エーテル溶媒(テトラヒドロフラン等)、ニトリル溶媒(アセトニトリル等)、アミド溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド等)等が挙げられる。
【0029】
塗布工程における塗布の方法としては、例えば、ダイコーター塗工、バーコーター塗工、エアナイフコーター塗工、グラビアコーター塗工、リバースロールコーター塗工、リップコーター塗工等が挙げられる。
【0030】
本実施形態に係る粘着テープは、以下の第2実施形態に係る粘着テープの特徴を更に有していてもよい。
【0031】
本発明の第2実施形態は、基材と、前記基材上に配置された粘着層と、を含む、半導体パッケージの製造方法において使用するための粘着テープであって、下記式:
[(A-B)/A]×100
(式中、
Aは、プラズマ処理前の前記粘着層に対する水の接触角であり、
Bは、プラズマ処理後の前記粘着層に対する水の接触角である)
で表される、プラズマ処理の前後における前記粘着層に対する水の接触角の変化率(%)が10%以下であり、
銅箔からの前記粘着テープの剥離力が、150℃で100mN/25mm以上である、前記粘着テープに関する。具体的には、粘着テープは、モールドフラッシュを防止するために使用される。
【0032】
プラズマ処理によって、粘着層に対する水の接触角が小さくなると、粘着層の粘着力が上昇し、粘着テープをリードフレームからきれいに剥離することができなくなる。一方、プラズマ処理の前後における水の接触角の変化率(%)を10%以下とすることによって、粘着力の上昇を抑制し、常温条件下において、粘着テープをきれいに剥離することができる。また、粘着テープの剥離力を、150℃で100mN/25mm以上とすることによって、モールドフラッシュを防止することができる。
【0033】
プラズマ処理の前後における粘着層に対する水の接触角の変化率(%)は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下であり、更に好ましくは3%以下である。前記変化率(%)の下限は、特に制限されないが、例えば、0%、1%等としてもよい。プラズマ処理の前後における接触角は、以下の実施例に記載の方法により測定することができ、測定した接触角に基づいて変化率を計算することができる。
【0034】
常温条件下における粘着テープの剥離力は、粘着テープをリードフレームからきれいに剥離するために、低いほど好ましい。具体的には、25℃条件下で1200mN/25mm未満が好ましく、500mN/25mm未満がより好ましい。25℃での粘着テープの剥離力は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。25℃での粘着テープの剥離力の下限は特に限定されないが、例えば、100mN/25mm、200mN/25mm等であってもよい。
【0035】
高温条件下における粘着テープの剥離力は、モールドフラッシュ耐性を確保する観点から、高いほど好ましい。具体的には、150℃条件下で100mN/25mm以上が好ましく、150mN/25mm以上がより好ましい。150℃での粘着テープの剥離力は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。150℃での粘着テープの剥離力の上限は特に限定されないが、例えば、500mN/25mm、1000mN/25mm等であってもよい。
【0036】
粘着テープの弾性率は、モールドフラッシュ耐性を確保し、且つ、半導体チップとリードフレームの表面とをボンディングワイヤーで十分に接続するために、175℃で、好ましくは5×10~20×10Paであり、より好ましくは5×10~10×10Paである。粘着テープの弾性率は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0037】
本実施形態に係る粘着テープは、第1実施形態に係る粘着テープの特徴を更に有していてもよい。
【0038】
<半導体パッケージの製造方法>
本発明の第3実施形態は、貼付工程、固定工程、プラズマ処理工程、接続工程、封止工程、及び剥離工程を含む、半導体パッケージの製造方法に関する。以下、各工程について説明する。
【0039】
本実施形態における貼付工程は、リードフレームの裏面に、第1実施形態又は第2実施形態に係る粘着テープを貼り付ける工程である。貼付工程は、公知の方法で行うことができる。
【0040】
本実施形態における固定工程は、粘着テープが貼り付けられたリードフレームの表面のダイパッドに半導体チップを固定する工程である。固定工程は、公知の方法で行うことができる。
【0041】
本実施形態におけるプラズマ処理工程は、半導体チップとリードフレームの表面とをプラズマで処理する工程である。プラズマ処理工程は、公知の方法で行うことができる。例えば、不活性ガス(アルゴン、窒素等)の雰囲気下で、50~300W(好ましくは100~150W)、5~60秒間(好ましくは10~30秒間)の条件で、プラズマ処理を行うことができる。
【0042】
本実施形態における接続工程は、プラズマで処理された、半導体チップとリードフレームの表面とをボンディングワイヤーで接続する工程である。接続工程は、公知の方法で行うことができる。
【0043】
本実施形態における封止工程は、ボンディングワイヤーと半導体チップとリードフレームの表面とを樹脂で封止する工程である。封止工程は、公知の方法で行うことができる。例えば、110~200℃、好ましくは130~180℃で、封止工程を行うことができる。
【0044】
本実施形態における剥離工程は、樹脂で表面が封止されたリードフレームの裏面から粘着テープを剥離する工程である。剥離工程は、公知の方法で行うことができる。
【0045】
リードフレームが表面に複数のダイパッドを有し、当該複数のダイパッドに複数の半導体チップを固定する場合には、本実施形態に係る製造方法は、粘着テープが剥離された、樹脂で表面が封止されたリードフレームを、個々の半導体パッケージに切断する切断工程を更に含んでいてもよい。
【実施例
【0046】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0047】
<重合体>
実施例及び比較例では、以下の重合体を使用した。
(1)アクリル系重合体A
反応容器に、アクリル酸ブチル(BA)(92重量部)、アクリル酸(AA)(8重量部)、酢酸エチル(100重量部)、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.3重量部)を加え、70℃で撹拌した。反応開始60分後から30分ごとに反応溶液の一部を取り出し、脱イオン水で反応を停止させ、メチルエチルケトンにより抽出し、抽出溶液をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析した。GPC分析から、反応物の重量平均分子量が70万以上となった段階で反応容器を冷却し、反応を停止させた。得られた混合物を脱イオン水により水洗し、乾燥することでアクリル系重合体Aを得た。アクリル系重合体Aの重量平均分子量は75万であり、水酸化カリウム水溶液での滴定による酸価は810mgKOH/gであった。
【0048】
(2)アクリル系重合体B
反応容器に、アクリル酸ブチル(BA)(82重量部)、アクリロニトリル(AN)(12重量部)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEA)(5重量部)、アクリル酸(AA)(1重量部)、酢酸エチル(100重量部)、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.3重量部)を加え、70℃で撹拌した。反応開始60分後から30分ごとに反応溶液の一部を取り出し、脱イオン水で反応を停止させ、メチルエチルケトンにより抽出し、抽出溶液をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析した。GPC分析から、反応物の重量平均分子量が50万以上となった段階で反応容器を冷却し、反応を停止させた。得られた混合物を脱イオン水により水洗し、乾燥することでアクリル系重合体Bを得た。アクリル系重合体Bの重量平均分子量は54万であった。
【0049】
(3)アクリル系重合体C
反応容器に、アクリル酸ブチル(BA)(72重量部)、スチレン(ST)(20重量部)、アクリル酸(AA)(8重量部)、酢酸エチル(100重量部)、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.3重量部)を加え、70℃で撹拌した。反応開始60分後から30分ごとに反応溶液の一部を取り出し、脱イオン水で反応を停止させ、メチルエチルケトンにより抽出し、抽出溶液をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析した。GPC分析から、反応物の重量平均分子量が10万以上となった段階で反応容器を冷却し、反応を停止させた。得られた混合物を脱イオン水により水洗し、乾燥することでアクリル系重合体Cを得た。アクリル系重合体Cの重量平均分子量は12万であり、水酸化カリウム水溶液での滴定による酸価は670mgKOH/gであった。
【0050】
<架橋剤>
実施例及び比較例では、以下の架橋剤を使用した。
(1)アルミニウムキレート架橋剤[アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、商品名:オルガチックスAL-3100(マツモトファインケミカル株式会社製)]
(2)チタンキレート架橋剤[チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、商品名:オルガチックスTC-100(マツモトファインケミカル株式会社製)]
(3)ジルコニウムキレート架橋剤[ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、商品名:オルガチックスZC-700(マツモトファインケミカル株式会社製)]
(4)フェノールノボラック型エポキシ樹脂架橋剤[商品名:EPICLON N730A(DIC株式会社製)]
(5)脂環式エポキシ樹脂架橋剤A[商品名:EHPE3150(株式会社ダイセル製)]
(6)脂環式エポキシ樹脂架橋剤B[商品名:Tetrad-C(三菱ガス化学株式会社製)]
(7)イミダゾール系触媒[商品名:キュアゾールC11Z(四国化成工業株式会社製)]
(8)イソシアネート型架橋剤[商品名:デュラネートSBN-70D(旭化成株式会社製)]
【0051】
[実施例1]
<粘着テープの製造>
アクリル系重合体A(100重量部)、アルミニウムキレート架橋剤(4重量部)、アセチルアセトン(10重量部)、及びメチルエチルケトン(60重量部)を室温で撹拌して、組成物1を得た。組成物1を、乾燥後の厚さが7μmになるように、ポリイミドフィルム(厚さ25μm)にダイコーターを用いて塗布し、150℃で5分乾燥し、粘着テープを得た。粘着テープの粘着層に、離型処理を施した離型フィルムの離型面を、ラミネートにより貼り合わせ、105℃で24時間加熱し、離型フィルム付き粘着テープを得た。
【0052】
<水の接触角の変化率>
離型フィルム付き粘着テープを、第1粘着テープ及び第2粘着テープの2つに分割し、離型フィルムを除去し、十分に除電した。アルゴン雰囲気下(流速50cc)、120W、20秒間の条件で、第2粘着テープにのみプラズマ処理を行った。第1粘着テープ及び第2粘着テープを、23℃雰囲気下、接触角計[製品名:CA-X(協和界面科学株式会社製)]の台座に、粘着層を上にして固定し、粘着層に純水を滴下したときの接触角を測定した。測定は10回行い、その平均値を算出した。接触角の平均値と下記式から、水の接触角の変化率を算出した。
水の接触角の変化率(%)=[(第1粘着テープに対する水の接触角-プラズマ処理後の第2粘着テープに対する水の接触角)/第1粘着テープに対する水の接触角]×100
【0053】
この水の接触角の変化率を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:水の接触角の変化率が5%以下
○:水の接触角の変化率が5%より大きく、10%以下
△:水の接触角の変化率が10%より大きく、15%以下
×:水の接触角の変化率が15%より大きい
【0054】
<剥離力の測定>
粘着テープを、圧延銅箔(厚さ35μm)の光沢面側に、ロールラミネート(30℃、0.4MPa、1m/min)した後、25mm幅の試験片を作成した。作製した試験片の圧延銅箔面とステンレス板とを両面テープで貼り合わせ、粘着テープを180°方向に200mm/minの速度で引き剥がした際の剥離力を、25℃及び150℃の雰囲気下で測定した。この剥離力を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0055】
[25℃雰囲気下の剥離力]
◎:剥離力が500mN/25mm未満
○:剥離力が500mN/25mm以上、1200mN/25mm未満
△:剥離力が1200mN/25mm以上、1300mN/25mm未満
×:剥離力が1300mN/25mm以上
【0056】
[150℃雰囲気下の剥離力]
◎:剥離力が150mN/25mm以上
○:剥離力が100mN/25mm以上、150mN/25mm未満
△:剥離力が50mN/25mm以上、100mN/25mm未満
×:剥離力が50mN/25mm未満
【0057】
<弾性率の測定>
粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが100μmになるように離型フィルム上に塗布し、乾燥した後に105℃で24時間加熱し、離型フィルムを除去することで、粘着剤の単膜を得た。得られた単膜について、動的粘弾性測定(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)装置にて昇温速度10℃/min、1Hzの条件で23℃~200℃の貯蔵弾性率(E’)を測定した。このうち、175℃における値を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0058】
◎:175℃における貯蔵弾性率が5×10Pa以上10×10Pa未満
○:175℃における貯蔵弾性率が10×10Pa以上20×10Pa未満
△:175℃における貯蔵弾性率が20×10Pa以上30×10Pa未満
×:175℃における貯蔵弾性率が30×10Pa以上
【0059】
[実施例2~4及び比較例1~7]
表1及び表2に示す重合体及び架橋剤を使用して、実施例1と同様に離型フィルム付き粘着テープを製造し、水の接触角の変化率を算出した。また、剥離力、及び弾性率を測定した。結果は表1及び表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1及び表2の結果のとおり、実施例1~4の粘着テープは、プラズマ耐性を有しているため、粘着層の一部を残すことなく、リードフレームからきれいに剥離することができる。また、実施例1~4の粘着テープは、高温条件下で優れた粘着力を有しているため、モールドフラッシュを抑制することができる。