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▶ イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ポリイミド系ポリマー厚膜組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20221101BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20221101BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221101BHJP
   H01G 4/20 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C08L79/08 Z
C08K3/00
C08J5/18 CFG
H01G4/20 600
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021011843
(22)【出願日】2021-01-28
(62)【分割の表示】P 2016248129の分割
【原出願日】2016-12-21
(65)【公開番号】P2021088711
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】62/270,910
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セイギ スー
(72)【発明者】
【氏名】ハイシン ヤン
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-194527(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0299186(US,A1)
【文献】特開2001-181577(JP,A)
【文献】特開2012-180471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
C08K 3/00
C08J 5/18
H01G 4/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)構造Iを有するポリイミドポリマー
【化1】
(式中、Xは、O-Ph-C(CH32-Ph-Oであり;
式中、Yは、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]プロパン(BAPP)、及び、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133)、からなる群から選択されるジアミン成分;ならびに
(b)構造IVから選択される1種または複数種の成分を含む有機溶剤
【化2】
(式中、R1=CH3、R2=OCH3、及びR3=H;R1=CH3、R2=OCH3、及びR3=CH3;または、R1=CH3、R2=C(O)OCH3、及びR3=H)を含むポリイミド系ポリマー厚膜組成物。
【請求項2】
c)電気伝導体金属粉末である機能性成分であって、前記金属が、Ag、Cu、Au、Pd、Pt、Sn、Al、NiおよびAg、Cu、Au、Pd、Pt、Sn、Al、Niの合金、および、これらの混合物からなる群から選択される機能性成分をさらに含み、ならびに、前記ポリイミド系ポリマー厚膜組成物がポリイミド系電気伝導体ポリマー厚膜組成物である、
請求項1に記載のポリイミド系ポリマー厚膜組成物。
【請求項3】
前記機能性成分が銀粉末である、請求項2に記載のポリイミド系ポリマー厚膜組成物。
【請求項4】
c)ヒュームドシリカ、アルミナ、二酸化チタンおよびこれらの混合物からなる粉末の群から選択される機能性成分をさらに含み、ならびに、前記ポリイミド系ポリマー厚膜組成物がポリイミド系封入剤ポリマー厚膜組成物である、
請求項1に記載のポリイミド系ポリマー厚膜組成物。
【請求項5】
c)金属酸化物、金属窒化物およびこれらの混合物からなる粉末の群から選択される機能性成分をさらに含み、ならびに、前記ポリイミド系ポリマー厚膜組成物がポリイミド系誘電体ポリマー厚膜組成物である、
請求項1に記載のポリイミド系ポリマー厚膜組成物。
【請求項6】
c)グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、金属酸化物およびこれらの混合物からなる粉末の群から選択される機能性成分をさらに含み、ならびに、前記ポリイミド系ポリマー厚膜組成物がポリイミド系抵抗体ポリマー厚膜組成物である、
請求項1に記載のポリイミド系ポリマー厚膜組成物。
【請求項7】
c)チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸マグネシウム、二酸化チタンおよびこれらの混合物からなる粉末の群から選択される機能性成分をさらに含み、ならびに、前記ポリイミド系ポリマー厚膜組成物がポリイミド系キャパシタポリマー厚膜組成物である、
請求項1に記載のポリイミド系ポリマー厚膜組成物。
【請求項8】
c)窒化バリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、グラファイト、グラフェン、酸化ベリリウム、銀、銅、ダイアモンドおよびこれらの混合物からなる粉末の群から選択される機能性成分をさらに含み、ならびに、前記ポリイミド系ポリマー厚膜組成物がポリイミド系熱伝導体ポリマー厚膜組成物である、
請求項1に記載のポリイミド系ポリマー厚膜組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路および同様の種類の用途において用いられるポリイミド系ポリマー厚膜組成物に関する。ポリイミド、および、特に非フッ素化ポリイミドが環境にやさしい溶剤に溶解される。
【背景技術】
【0002】
誘電体、抵抗体、キャパシタ、インダクタ、電気伝導体、熱伝導体、および、同様の種類の電子部品または素子は、多くの場合スクリーン印刷技術による厚膜素子の形成に用いられ、「ペースト」とも称される厚膜組成物から形成可能である。
【0003】
一般に、厚膜組成物は、組成物に適切な電気的機能特性を付与する機能相を含む。機能相は、ポリマーを含有する有機溶剤中において分散された電気的機能性粉末を含む。これらの組成物は、典型的には、例えばガラスフリットといったバインダを含有している。このような組成物は焼成されて、ポリマーおよび溶剤が焼失されることで電気的機能特性が付与される。しかしながら、ポリマー厚膜(PTF)組成物の場合には、ポリマーは、乾燥後にも組成物の一体化した部分として残留し溶剤のみが除去される。ポリマー厚膜技術の当業者に公知である硬化などの熱処理が処理要件に含まれる場合がある。
【0004】
このようなPTF組成物は、(望ましくない)水の収着が比較的少ない有用な溶剤に対する可溶性が高いポリマーから構成されることがますます要求されている。本明細書において用いられるところ、「収着」は、吸着および/または吸収を意味することが意図されている。組成物は、150~200℃などの比較的低い温度で処理、すなわち、硬化されることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの要求を満たすポリイミド系厚膜組成物、特に、このような非フッ素化ポリイミドを含有する組成物に対する要求が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は:
(a)構造Iを有するポリイミドポリマー
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、Xは、C(CH32、O、S(O)2、C(CF32、O-Ph-C(CH32-Ph-O、O-Ph-O-またはこれらの混合物であり;
式中、Yは:m-フェニレンジアミン(MPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(2-アミノフェノール)(6F-AP)、ビス-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(BAPS)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA);2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン(DAM)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]プロパン(BAPP)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビス-A-AF)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチル-エチリデン)]およびビスアニリン(ビスアニリン-M)からなる群から選択されるジアミン成分の混合物、または、ジアミン成分であるが、ただし:
i)XがOである場合、YはMPD、BAPS、3,4’-ODA、BAPP、APB-133またはビスアニリン-Mではなく;
ii)XがS(O)2である場合、Yは3,3’-DDSではなく;
iii)XがO-Ph-C(CH32-Ph-OまたはO-Ph-O-である場合、YはMPD、FDA、3,4’-ODA、DAM、BAPP、APB-133またはビスアニリン-Mではなく;
iv)XがC(CF32である場合、YはMPD、BAPS、FDAまたは3,3’-DDSではない);ならびに
(b)構造II、III、IV、VおよびVIの群から選択される1種または複数種の成分を含む有機溶剤
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R1=CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3またはCH(CH32;R2=CH3、CH2CH3、OCH3、OCH2CH3、OCF3、C(O)OCH3、CH2Cl、FまたはCl;R3=H、F、CH3、CH2CH3またはOCH3;R4=F、CH3またはCH2CH3およびR5=FまたはCH3
を含むポリイミド系ポリマー厚膜組成物を提供する。
【0011】
上記の組成物においては、フッ素化および非フッ素化ポリイミドポリマーの両方が含まれる。
【0012】
一実施形態において、ポリイミドポリマーは非フッ素化されており、これは;
(a)構造Iを有する非フッ素化ポリイミドポリマー
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、Xは、C(CH32、O、S(O)2、O-Ph-C(CH32-Ph-O、O-Ph-O-、または、これらの混合物であり;
式中、Yは:m-フェニレンジアミン(MPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、ビス-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(BAPS)、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン(DAM)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]プロパン(BAPP)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチル-エチリデン)]およびビスアニリン(ビスアニリン-M)からなる群から選択されるジアミン成分の混合物、または、ジアミン成分であるが、ただし:
i)XがOである場合、YはMPD、BAPS、3,4’-ODA、BAPP、APB-133またはビスアニリン-Mではなく;
ii)XがS(O)2である場合、Yは3,3’-DDSではなく;
iii)XがO-Ph-C(CH32-Ph-OまたはO-Ph-O-である場合、Yは、MPD、3,4’-ODA、DAM、BAPP、APB-133またはビスアニリン-Mではない);ならびに
b)構造II、III、IV、VおよびVIの群から選択される1種または複数種の成分を含む有機溶剤
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、R1=CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3またはCH(CH32;R2=CH3、CH2CH3、OCH3、OCH2CH3、C(O)OCH3またはCH2Cl;R3=H、CH3、CH2CH3またはOCH3;R4=CH3またはCH2CH3およびR5=CH3
を含むポリイミド系ポリマー厚膜組成物を提供する。
【0017】
本発明はまた、フッ素化または非フッ素化ポリイミドポリマーを含むポリイミド系ポリマー厚膜組成物を提供し、上記の組成物には機能性成分が添加されている。非フッ素化ポリイミドポリマーが用いられる場合、本発明は:
(a)機能性成分;
(b)構造Iを有する非フッ素化ポリイミドポリマー
【0018】
【化5】
【0019】
(式中、Xは、C(CH32、O、S(O)2、O-Ph-C(CH32-Ph-O、O-Ph-O-、または、これらの混合物であり;
式中、Yは:m-フェニレンジアミン(MPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、ビス-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(BAPS)、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン(DAM)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]プロパン(BAPP)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチル-エチリデン)]およびビスアニリン(ビスアニリン-M)からなる群から選択されるジアミン成分の混合物、または、ジアミン成分であるが、ただし:
i)XがOである場合、Yは、MPD、BAPS3,4’-ODA、BAPP、APB-133またはビスアニリン-Mではなく;
ii)XがS(O)2である場合、Yは3,3’-DDSではなく;
iii)XがO-Ph-C(CH32-Ph-OまたはO-Ph-O-である場合、Yは、MPD、3,4’-ODA、DAM、BAPP、APB-133またはビスアニリン-Mではない);ならびに
(c)構造II、III、IV、VおよびVIの群から選択される1種または複数種の成分を含む有機溶剤
【0020】
【化6】
【0021】
(式中、R1=CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3またはCH(CH32;R2=CH3、CH2CH3、OCH3、OCH2CH3、C(O)OCH3またはCH2Cl;R3=H、CH3、CH2CH3またはOCH3;R4=CH3またはCH2CH3およびR5=CH3
を含むポリイミド系ポリマー厚膜組成物を提供する。
【0022】
機能性成分は、電気伝導体PTF組成物、封入剤PTF組成物、誘電体PTF組成物、抵抗体PTF組成物、キャパシタPTF組成物または熱伝導体組成物が提供されるよう、ポリイミド系PTF組成物に添加され得る。本明細書において用いられるところ、「電気伝導体PTF組成物」は、PTF組成物から形成可能である素子の種類、すなわち、この場合においては「電気伝導体」を示すために用いられる。上記に列挙されている他のPTF組成物についても同様である。本発明はまた、これらのPTF組成物から形成された素子を含む電気回路を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のポリイミド系PTF組成物は、ポリイミドポリマーと、ポリイミドポリマーが可溶性である溶剤とを含む。これらの組成物において有用であるポリイミドポリマーおよび溶剤は、フッ素化および非フッ素化ポリイミドの両方について発明の概要に明記されている。非フッ素化ポリイミドポリマーは、PTF組成物において通例用いられる溶剤に対する溶解度が劣っているために、スクリーン印刷には用いられていなかった。本明細書において用いられる異なる種類の溶剤、アリールアルキルエーテルまたはアリールアルキルエーテルエステルは非フッ素化ポリイミドポリマーを溶解し、PTFペーストの形成を可能とするが、これは、HFガスが発生する可能性が排除されるため、より環境にやさしい。
【0024】
ポリイミド系PTF組成物に添加可能であるポリイミドポリマー、溶剤および種々の機能性成分、ならびに、これにより得られる素子を以下において考察する。
【0025】
ポリイミドポリマー
本発明の組成物において有用であるフッ素化および非フッ素化ポリイミドポリマーは、構造I
【0026】
【化7】
【0027】
(式中、Xは、C(CH32、O、S(O)2、C(CF32、O-Ph-C(CH32-Ph-O、O-Ph-O-またはこれらの混合物であり;
式中、Yは:m-フェニレンジアミン(MPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(2-アミノフェノール)(6F-AP)、ビス-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(BAPS)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA);2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン(DAM)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]プロパン(BAPP)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビス-A-AF)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチル-エチリデン)]およびビスアニリン(ビスアニリン-M)からなる群から選択されるジアミン成分の混合物、または、ジアミン成分であるが、ただし:
i)XがOである場合、YはMPD、BAPS、3,4’-ODA、BAPP、APB-133またはビスアニリン-Mではなく;
ii)XがS(O)2である場合、Yは3,3’-DDSではなく;
iii)XがO-Ph-C(CH32-Ph-OまたはO-Ph-O-である場合、YはMPD、FDA、3,4’-ODA、DAM、BAPP、APB-133またはビスアニリン-Mではなく;
iv)XがC(CF32である場合、Yは、MPD、BAPS、FDAまたは3,3’-DDSではない)
を有する。
【0028】
XおよびYのいくつかの組み合わせは本発明の組成物において有用であるポリイミドポリマーをもたらさず、これらは種々の但し書きによって排除される。
【0029】
本発明の組成物において有用である非フッ素化ポリイミドポリマーは、構造I
【0030】
【化8】
【0031】
(式中、Xは、C(CH32、O、S(O)2、O-Ph-C(CH32-Ph-O、O-Ph-O-、または、これらの混合物であり;
式中、Yは:m-フェニレンジアミン(MPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、ビス-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(BAPS)、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン(DAM)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]プロパン(BAPP)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチル-エチリデン)]およびビスアニリン(ビスアニリン-M)からなる群から選択されるジアミン成分の混合物、または、ジアミン成分であるが、ただし:
i)XがOである場合、Yは、MPD、BAPS3,4’-ODA、BAPP、APB-133またはビスアニリン-Mではなく;
ii)XがS(O)2である場合、Yは3,3’-DDSではなく;
iii)XがO-Ph-C(CH32-Ph-OまたはO-Ph-O-である場合、Yは、MPD、3,4’-ODA、DAM、BAPP、APB-133またはビスアニリン-Mではない)
を有する。
【0032】
XおよびYのいくつかの組み合わせは本発明の組成物において有用であるポリイミドポリマーをもたらさず、これらは種々の但し書きによって排除される。
【0033】
ポリイミドポリマーは、一般に、二無水物、または、対応する二酸-ジエステル、二酸ハロゲン化物エステル、または、二無水物のテトラ-カルボン酸誘導体、および、ジアミンから調製される。
【0034】
本発明の目的について、二無水物の特定の群が、耐水性ポリイミドペーストの調製において特に有用であることが発見された。これらの二無水物は、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物(DSDA)、2,2-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物(6-FDA)および4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス-(フタル酸無水物)(BPADA)である。非フッ素化ポリイミドペーストについて、これらの二無水物は、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物(DSDA)、および4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス-(フタル酸無水物)(BPADA)である。
【0035】
本発明の目的について、ジアミンの特定の群が、耐水性ポリイミド溶液およびペーストの調製において特に有用であることが発見された。これらのジアミンは、m-フェニレンジアミン(MPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(2-アミノフェノール)(6F-AP)、ビス-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(BAPS)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA);2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン(DAM)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]プロパン(BAPP)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビス-A-AF)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチル-エチリデン)]およびビスアニリン(ビスアニリン-M)である。
【0036】
非フッ素化ポリイミドポリマーペーストについて、これらのジアミンは、m-フェニレンジアミン(MPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、ビス-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(BAPS)、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン(DAM)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]プロパン(BAPP)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133)、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチル-エチリデン)]およびビスアニリン(ビスアニリン-M)である。
【0037】
既述のとおり、これらの二無水物およびジアミンのいくつかの組み合わせは有用なポリイミド溶液ペーストを形成しない。例えば、ODPAが二無水物として選択され、MPD、BAPS3,4’-ODA、BAPP、APB-133、またはビスアニリン-Mのいずれかがジアミンとして選択されると、有用性の低いポリイミドが形成される。加えて、DSDAが二無水物として選択された場合、3,3’-DDSは有用なジアミンではない。有用ではないこれらの組み合わせおよび他の組み合わせは種々の但し書きによって排除されている。しかしながら、本明細書に開示されているジアミンおよび二無水物のすべての他の組み合わせが、本発明の目的について有用なポリイミドポリマーを形成するであろう。
【0038】
溶剤
本発明のポリイミド系PTF組成物において用いられる溶剤は、アリールアルキルエーテルおよびアリールアルキルエーテルエステルである。本明細書において用いられる溶剤は、構造II、III、IV、VおよびVIを有する。
【0039】
【化9】
【0040】
(式中、R1=CH3、CH2CH3、CH2CH2CH3またはCH(CH32;R2=CH3、CH2CH3、OCH3、OCH2CH3、OCF3、C(O)OCH3、CH2Cl、FまたはCl;R3=H、F、CH3、CH2CH3またはOCH3;R4=F、CH3またはCH2CH3およびR5=FまたはCH3
【0041】
本明細書において用いられるポリイミドポリマーは一般に、上記の溶剤に可溶性であるが、すべてのポリイミドポリマーがすべての溶剤に可溶性であるわけではない。これらの用いられる溶剤は、150~280℃の範囲内の沸点を有する。沸点が150~200℃であることにより、これらの所望される低い温度での硬化が可能とされる。いくつかの事例において、ポリイミドポリマーを可溶性とするために溶剤を温める必要性がある。しかしながら、これらの場合において、周囲温度に冷却された場合にもポリイミドポリマーは溶液中に残留する。
【0042】
機能性成分
機能性成分がポリイミド系PTF組成物に添加され得る。一実施形態においては、機能性成分を添加することで、機能性成分によってもたらされる特性を有する電気回路中における素子の形成に使用可能である組成物が得られる。
【0043】
機能性成分は、電気伝導体PTF組成物、封入剤PTF組成物、誘電体PTF組成物、抵抗体PTF組成物、キャパシタPTF組成物または熱伝導体組成物が得られるよう、ポリイミド系PTF組成物に添加され得る。これらの各々を下記において考察する。
【0044】
本明細書において用いられるところ、「ポリイミド系電気伝導体PTF組成物」は、PTF組成物から形成可能である素子の種類、この場合においては「電気伝導体」を示すために用いられる。「ポリイミド系抵抗体PTF組成物」は、PTF組成物から形成可能である素子の種類、この場合においては「抵抗体」を示すために用いられる。上記に列挙されている他のPTF組成物についても同様である。本発明はまた、これらのPTF組成物から形成された素子を含む電気回路を提供するものであり、ここで、PTF組成物は乾燥されて、溶剤が除去されて、素子が形成されている。
【0045】
電気伝導体金属粉末
金属が、Ag、Cu、Au、Pd、Pt、Sn、Al、NiおよびAg、Cu、Au、Pd、Pt、Sn、Al、Niの合金、および、これらの混合物からなる群から選択される電気伝導体金属粉末が、ポリイミド系電気伝導体ポリマー厚膜組成物における機能性成分である。ポリイミド系電気伝導体ポリマー厚膜組成物の一実施形態において、機能性成分は銀粉末である。
【0046】
抵抗体粉末
グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、金属酸化物およびこれらの混合物からなる粉末の群から選択される粉末が、ポリイミド系抵抗体ポリマー厚膜組成物における機能性成分である。ポリイミド系抵抗体ポリマー厚膜組成物の一実施形態において、機能性成分は、グラファイトとカーボンブラックとの混合物である。
【0047】
キャパシタ粉末
チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸マグネシウム、二酸化チタンおよびこれらの混合物からなる粉末の群から選択される粉末が、ポリイミド系キャパシタポリマー厚膜組成物における機能性成分である。
【0048】
誘電体粉末
金属酸化物、金属窒化物およびこれらの混合物からなる粉末の群から選択される粉末が、ポリイミド系誘電体ポリマー厚膜組成物における機能性成分である。
【0049】
熱伝導体粉末
窒化バリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、グラファイト、グラフェン、酸化ベリリウム、銀、銅、ダイアモンドおよびこれらの混合物からなる粉末の群から選択される粉末が、ポリイミド系熱伝導体ポリマー厚膜組成物における機能性成分である。
【0050】
封入剤粉末
ヒュームドシリカ、アルミナ、二酸化チタンおよびこれらの混合物からなる粉末の群から選択される粉末が、ポリイミド系封入剤ポリマー厚膜組成物における機能性成分である。
【実施例
【0051】
実施例および比較実験
実施例において用いた基板はKapton(登録商標)500HPP-STおよびKapton(登録商標)200RS100フィルム(DuPont Co,Wilmington,DEから入手した)であり、2.5インチ×3.5インチ片に切断した後そのまま用い、アルミナ(AD-96)基板(CoorsTek,Golden,COから得た)はさらにクリーニングすることなく用いた。
【0052】
実施例1~7、9および10において用いた非フッ素化ポリイミドポリマー#1は、APB-133およびBPADAを1/1のモル比で反応させることにより調製した。
【0053】
実施例1~4および8において用いた非フッ素化ポリイミドポリマー#2は、BAPPおよびBPADAを1/1のモル比で反応させることにより調製した。
【0054】
実施例1~4において用いた非フッ素化ポリイミドポリマー#3は、BAPPおよびDSDAを1/1のモル比で反応させることにより調製した。
【0055】
実施例1~4において用いた非フッ素化ポリイミドポリマーポリイミド#4は、APB-133およびDSDAを1/1のモル比で反応させることにより調製した。
【0056】
Sn96.5%Ag3.0%Cu0.5%の組成を有するSAC合金を、はんだ濡れ性テストに用いた。Alpha 611またはKester 952フラックスのいずれかを用いた。はんだ濡れ性テストにおいては、硬化したサンプルを、おおよそ225~250℃で維持しておいたSAC合金ポット中に1~3秒間浸漬した。
【0057】
グラファイトはAshylen(HPN-10)から入手した。カーボンブラック#1(MONARCH 120)およびカーボンブラック#2(VULCAN XC72R)の両方をCabot Corp.から入手した。
【0058】
非フッ素化ポリイミドポリマー#1を比較実験A~Gおよび実施例1~7、9および10において用い、APB-133およびBPADAを1/1のモル比で反応させることにより調製した。
【0059】
非フッ素化ポリイミドポリマー#2を比較実験A~Gおよび実施例1~4および8において用い、BAPPおよびBPADAを1/1のモル比で反応させることにより調製した。
【0060】
非フッ素化ポリイミドポリマー#3を比較実験A~Gおよび実施例1~4において用い、BAPPおよびDSDAを1/1のモル比で反応させることにより調製した。
【0061】
非フッ素化ポリイミドポリマーポリイミド#4を比較実験A~Gおよび実施例1~4において用い、上記のとおり、APB-133およびDSDAを1/1のモル比で反応させることにより調製した。
【0062】
比較実験A~G
表Iは、ポリイミドポリマー#1、#2、#3および#4を種々の溶剤中において20%のレベルで用いる溶解度テストの結果を示す。ポリイミドポリマーは、スクリーン印刷技術において通例用いられる溶剤(比較実験A~G)中には不溶性であった。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1~4
表IIは、ポリイミドポリマー#1、#2、#3および#4を種々の溶剤中において20%のレベルで用いる溶解度テストの結果を示す。4回の実施例すべてで用いた溶剤は構造IVを有する。
【0065】
【化10】
【0066】
(式中、実施例1および2において、R1=CH3、R2=OCH3、R3=H;
実施例3において、R1=CH3、R2=OCH3、R3=CH3;および
実施例4において、R1=CH3、R2=C(O)OCH3、R3=H)
【0067】
ポリイミドポリマー#1および#2は、周囲温度で、4種の溶剤すべてに完全に可溶性であった。ポリイミドポリマー#3は、実施例1および2において用いた溶剤に不溶性であり、実施例3において用いた溶剤に部分的に可溶性であった。ポリイミドポリマー#3は、実施例4において用いた溶剤に完全に可溶性であった。ポリイミドポリマー#4は、温めた場合にすべての4種の溶剤に完全に可溶性であり、周囲温度に冷却した際に溶液中に残留した。
【0068】
【表2】
【0069】
実施例5
スクリーン印刷可能なポリイミド系電気伝導体PTF組成物を、3~4ミクロンの平均粒径を有する銀フレークを用いて調製した。銀電気伝導体PTF組成物の成分は以下のとおりであった。
80重量% 銀粉末
10.7重量% ポリイミド#1
9.3重量% 1,2-ジメトキシベンゼン
ここで、重量%は組成物の総重量基準である。
【0070】
これらの成分を組み合わせ、Thinky-タイプのミキサで30~60秒間混合し、次いで、ロールミルにかけた。組成物を用いて、矩形の蛇行パターンをKapton(登録商標)500HPP-STフィルム上にスクリーン印刷した。325メッシュステンレス鋼スクリーンを用いて、数パターンを印刷し、銀ペーストを、130℃で10分間、次いで、200℃で30分間乾燥させた。サンプルについて計測した線路抵抗は4.7Ωであった。矩形パターンの長さに対する平均伝導体厚はピロフィルメータを用いて11.9μmと測定された。抵抗率は、4.7mΩ/□/milであると算出された。サンプルのいくつかを300℃で1時間さらに硬化させたところ、抵抗率は2.7mΩ/□/milであった。
【0071】
はんだ濡れ性能を、300℃で硬化させたサンプルを用いて上記のようにテストした。これらのサンプルはほぼ100%のはんだ濡れ性を示した。
【0072】
同様に組成物を用いて、同様の矩形の蛇行パターンをKapton(登録商標)200RS100フィルム上にスクリーン印刷した。325メッシュステンレス鋼スクリーンを用いて、数パターンを印刷し、銀ペーストを、130℃で10分間、次いで、200℃で30分間乾燥させた。サンプルについて計測した線路抵抗は6.3Ωであった。蛇行パターンの長さに対する平均伝導体厚はピロフィルメータを用いて16.2μmと測定された。抵抗率は、4.2mΩ/□/milであると算出された。サンプルのいくつかを300℃で1時間さらに硬化させたところ、抵抗率は3.0mΩ/□/milであった。
【0073】
実施例6
スクリーン印刷可能なポリイミド系電気伝導体PTF組成物を、3~4ミクロンの平均粒径を有する銀フレークを用いて調製した。銀電気伝導体PTF組成物の成分は以下のとおりであった。
77.9重量% 銀粉末
13重量% ポリイミド#1
9.1重量% 1,2-ジメトキシベンゼン
ここで、重量%は組成物の総重量基準である。
【0074】
これらの成分を組み合わせ、Thinky-タイプのミキサで30~60秒間混合し、次いで、ロールミルにかけた。組成物を用いて、矩形の蛇行パターンをKapton(登録商標)500HPP-STフィルム上にスクリーン印刷した。325メッシュステンレス鋼スクリーンを用いて、数パターンを印刷し、銀ペーストを、130℃で10分間、次いで、200℃で30分間乾燥させた。サンプルについて計測した線路抵抗は6.8Ωであった。蛇行パターンの長さに対する平均伝導体厚はピロフィルメータを用いて12.2μmと測定された。抵抗率は、5.5mΩ/□/milであると算出された。サンプルのいくつかを300℃で1時間さらに硬化させたところ、平均抵抗率は3.2mΩ/□/milであった。
【0075】
はんだ濡れ性能を、300℃で硬化させたサンプルを用いて上記のようにテストした。これらのサンプルはほぼ100%のはんだ濡れ性を示した。
【0076】
同様に組成物を用いて、同様の矩形の蛇行パターンをKapton(登録商標)200RS100フィルム上にスクリーン印刷した。325メッシュステンレス鋼スクリーンを用いて、数パターンを印刷し、銀ペーストを、130℃で10分間、次いで、200℃で30分間乾燥させた。サンプルについて計測した線路抵抗は7.2Ωであった。蛇行パターンの長さに対する平均伝導体厚はピロフィルメータを用いて13.5μmと測定された。抵抗率は、3.9mΩ/□/milであると算出された。サンプルのいくつかを300℃で1時間さらに硬化させたところ、抵抗率は2.9mΩ/□/milであった。
【0077】
実施例7
スクリーン印刷可能なポリイミド系電気伝導体PTF組成物を、3~4ミクロンの平均粒径を有する銀フレークを用いて調製した。銀電気伝導体PTF組成物の成分は以下のとおりであった。
82.7重量% 銀粉末
12.3重量% ポリイミド#1
5重量% 1,3-ジメトキシベンゼン
ここで、重量%は組成物の総重量基準である。
【0078】
これらの成分を組み合わせ、Thinky-タイプのミキサで30~60秒間混合し、次いで、ロールミルにかけた。組成物を用いて、矩形の蛇行パターンをKapton(登録商標)500HPP-STフィルム上にスクリーン印刷した。325メッシュステンレス鋼スクリーンを用いて、数パターンを印刷し、銀ペーストを、130℃で10分間、次いで、200℃で30分間乾燥させた。サンプルについて計測した線路抵抗は5.1Ωであった。蛇行パターンの長さに対する平均伝導体厚はピロフィルメータを用いて12.7μmと測定された。抵抗率は、4.3mΩ/□/milであると算出された。サンプルのいくつかを300℃で1時間さらに硬化させて、2.6mΩ/□/milの平均抵抗率を得た。
【0079】
はんだ濡れ性能を、300℃で硬化させたサンプルを用いて上記のようにテストした。これらのサンプルはほぼ100%のはんだ濡れ性を示した。
【0080】
実施例8
スクリーン印刷可能なポリイミド系電気伝導体PTF組成物を、3~4ミクロンの平均粒径を有する銀フレークを用いて調製した。銀電気伝導体PTF組成物の成分は以下のとおりであった。
82.5重量% 銀粉末
12.2重量% ポリイミド#2中程度(medium)
5.3重量% 1,3-ジメトキシベンゼン
ここで、重量%は組成物の総重量基準である。
【0081】
これらの成分を組み合わせ、Thinky-タイプのミキサで30~60秒間混合し、次いで、ロールミルにかけた。組成物を用いて、矩形の蛇行パターンをKapton(登録商標)500HPP-STフィルム上にスクリーン印刷した。325メッシュステンレス鋼スクリーンを用いて、数パターンを印刷し、銀ペーストを、130℃で10分間、次いで、200℃で30分間乾燥させた。サンプルについて計測した線路抵抗は5.0Ωであった。蛇行パターンの長さに対する平均伝導体厚はピロフィルメータを用いて12.0μmと測定された。抵抗率は、4.0mΩ/□/milであると算出された。サンプルのいくつかを300℃で1時間さらに硬化させて、それぞれ、2.3mΩ/□/milの平均抵抗率を得た。
【0082】
はんだ濡れ性能を、300℃で硬化させたサンプルを用いて上記のようにテストした。これらのサンプルはほぼ100%のはんだ濡れ性を示した。
【0083】
同様に組成物を用いて、同様の矩形の蛇行パターンをKapton(登録商標)200RS100フィルム上にスクリーン印刷した。325メッシュステンレス鋼スクリーンを用いて、数パターンを印刷し、銀ペーストを、130℃で10分間、次いで、200℃で30分間乾燥させた。サンプルについて計測した線路抵抗は3.6Ωであった。蛇行パターンの長さに対する平均伝導体厚はピロフィルメータを用いて14.2μmと測定された。抵抗率は、3.4mΩ/□/milであると算出された。
【0084】
実施例9
スクリーン印刷可能なポリイミド系抵抗体PTF組成物を、グラファイトおよびカーボンブラックを用いて調製した。PTF抵抗体組成物の成分は以下のとおりであった。
8.9重量% グラファイト
11.8重量% カーボンブラック#1
21.9重量% ポリイミド#1
57.4重量% 1,2-ジメトキシベンゼン
ここで、重量%は組成物の総重量基準である。
【0085】
これらの成分を組み合わせ、Thinky-タイプのミキサで30~60秒間混合し、次いで、ロールミルにかけた。組成物を用いて、矩形の蛇行抵抗パターンを、PTF Ag伝導体終端を印刷したKapton(登録商標)500HPP-ST上にスクリーン印刷し、実施例7の銀伝導体ペーストを用いて200℃で30分間硬化させた。200メッシュステンレス鋼スクリーンを用いて、数パターンを印刷し、抵抗体ペーストを130℃で10分間、次いで、200℃で90分間硬化させて、23ミクロンの平均厚さで1KΩ/□の平均抵抗とした。
【0086】
実施例10
4つの正方形のボトム銀電極(各々17mm×17mm)および4つのトップ電極(各々16mm×16mmの寸法)を、Kapton(登録商標)500HPP-STフィルム上に実施例7の銀伝導体ペーストおよび325メッシュステンレス鋼スクリーンを用いて形成した。銀ペーストを130℃で10分間、次いで、200℃で30分間乾燥させて、4つの銀電極を形成した。
【0087】
スクリーン印刷可能なポリイミド系誘電体PTF組成物を、窒化ホウ素を用いて調製した。PTF誘電体組成物の成分は以下のとおりであった。
22重量% 窒化ホウ素粉末
66重量% ポリイミド#1
12重量% 1,2-ジメトキシベンゼン
ここで、重量%は組成物の総重量基準である。
【0088】
これらの成分を組み合わせ、Thinky-タイプのミキサで30~60秒間混合し、次いで、ロールミルにかけた。組成物を用いて、49mm×49mmの正方形をボトムPTF銀伝導体上に、200メッシュステンレス鋼スクリーンを用いてスクリーン印刷し、誘電体ペーストを130℃で10分間、次いで、200℃で60分間乾燥させた。窒化ホウ素誘電体層の厚さは、ピロフィルメータを用いた計測で約40μmであった。
【0089】
4つのトップ電極(各々16mm×16mm)を、4つのボトム電極の直上の誘電体層上に、実施例7における銀伝導体ペーストおよび325メッシュステンレス鋼スクリーンを用いてスクリーン印刷した。トップ電極銀ペーストを130℃で10分間、次いで、200℃で30分間で乾燥させて、4つのトップ電極を形成した。
【0090】
サンプルの平均破壊電圧は4.7キロボルトであり、キャパシタンスは1k Hzで199pFであった。