IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック・オブ・アメリカ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-人工筋肉アクチュエータの改良 図1
  • 特許-人工筋肉アクチュエータの改良 図2
  • 特許-人工筋肉アクチュエータの改良 図3
  • 特許-人工筋肉アクチュエータの改良 図4
  • 特許-人工筋肉アクチュエータの改良 図5
  • 特許-人工筋肉アクチュエータの改良 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】人工筋肉アクチュエータの改良
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20221101BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20221101BHJP
   D02G 3/28 20060101ALI20221101BHJP
   A61F 2/08 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
D02G3/04
D02G3/28
A61F2/08
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021110020
(22)【出願日】2021-07-01
(62)【分割の表示】P 2019524041の分割
【原出願日】2017-12-07
(65)【公開番号】P2021177696
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】62/462,544
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/431,717
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518380665
【氏名又は名称】リンテック・オブ・アメリカ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルシオ・ディアス・リマ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・プラタ
(72)【発明者】
【氏名】マリル・ゲレーロ
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン・レ
(72)【発明者】
【氏名】ランディー・アレン
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505790(JP,A)
【文献】特開昭64-76824(JP,A)
【文献】特開2016-199900(JP,A)
【文献】特開平8-122655(JP,A)
【文献】特開2011-152031(JP,A)
【文献】特開2016-42783(JP,A)
【文献】登録実用新案第3062296(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
D02G 3/04
D02G 3/28
A61F 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心の長手方向軸を有する少なくとも1つの人工筋肉繊維であって、前記中心の長手方向軸に対して撚られている少なくとも1つの人工筋肉繊維と、
中心の長手方向軸を有する少なくとも1つの高強度耐クリープ性繊維であって、撚られていない少なくとも1つの高強度耐クリープ性繊維とを含む、アクチュエータデバイスであって、
前記少なくとも1つの人工筋肉繊維の外周は、前記少なくとも1つの高強度耐クリープ性繊維の外周に接触しており、
前記少なくとも1つの人工筋肉繊維の中心の長手方向軸は、前記少なくとも1つの高強度耐クリープ性繊維の中心の長手方向軸から離間しており、且つ前記少なくとも1つの高強度耐クリープ性繊維の中心の長手方向軸と平行に延びている、アクチュエータデバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの人工筋肉繊維は、前記少なくとも1つの高強度耐クリープ性繊維が六角形の配列の中心にある前記六角形の配列に、一緒に束ねられた複数の人工筋肉繊維であり、
前記複数の人工筋肉繊維の各々は、対応する中心の長手方向軸を有しており、且つ前記対応する中心の長手方向軸に対して撚られており、
前記複数の人工筋肉繊維の各々の対応する外周面は、前記少なくとも1つの高強度耐クリープ性繊維の外周面と接触している、請求項1に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの高強度耐クリープ性繊維が、カーボンナノチューブ糸を含み、前記カーボンナノチューブ糸が、前記少なくとも1つの人工筋肉繊維にオーム加熱を提供する、請求項1に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの高強度耐クリープ性繊維が、撚られていないナイロン繊維を含む、請求項1に記載のアクチュエータデバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの人工筋肉繊維が、撚られたナイロン繊維を含む、請求項4に記載のアクチュエータデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に従って、2016年12月8日に出願された米国仮特許出願第62/431,717号及び2017年2月23日に出願された米国仮特許出願62/462,544号の優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
撚りポリマー及びカーボンナノチューブ(CNT)繊維及び糸に基づく、熱駆動式ねじりアクチュエータは、幅広い用途を有する。撚り及び/またはコイル状のポリマーを含む人工筋肉アクチュエータは、低コスト、高生産量、及び設計の単純性という利点を有する。人工筋肉アクチュエータは、非常に単純化されたエンジニアリング及びより低い製品コストにより、小型モータを上回る利点を有し得る。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本開示によるアクチュエータデバイスは、複数の人工筋肉繊維及び、作動中に複数の人工筋肉繊維を電気的に刺激する少なくとも1つの導電材料を含み得る。
【0004】
別の態様では、本開示によるアクチュエータデバイスは、少なくとも1つの人工筋肉繊維及び少なくとも1つの高強度耐クリープ性繊維を含み得る。
【0005】
特許請求される主題の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0006】
本開示の特定の実施形態は、添付の図面を参照して以下に説明され、同様の参照番号は同様の要素を示す。しかし、添付の図面は、本明細書に記載されている様々な実施態様を示しており、本明細書に記載されている様々な技術の範囲を限定することを意味するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態による、人工筋肉アクチュエータの束の概略図である。
図2】本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態による、第2の人工筋肉アクチュエータの束の概略図である。
図3】本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態による、第3の人工筋肉アクチュエータの束の概略図である。
図4】本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態による、耐クリープ性を有する人工筋肉アクチュエータの束の概略図である。
図5】本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態による、耐クリープ性を有する第2の人工筋肉アクチュエータの束の概略図である。
図6】本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態による、ばねと平行するコイル状の人工筋肉アクチュエータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明では、本発明のより完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他の例では、説明を不必要に複雑にすることを避けるために、周知の特徴は詳細には説明されていない。
【0009】
本開示の実施形態は、添付の図面を参照して詳細に説明される。様々な図の同様の要素は、一貫性のために同様の参照番号で示され得る。さらに、本明細書に開示される実施形態は、特許請求される主題のより完全な理解を可能にするために提供された特定の詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。さらに、当業者であれば、添付の図面での要素の縮尺が本開示の範囲から逸脱することなく異なり得ることを、容易に認識するであろう。
【0010】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、人工筋肉アクチュエータに関する。1つまたは複数の実施形態は、人工筋肉アクチュエータを形成するための人工筋肉繊維の束を含む。1つまたは複数の実施形態は、耐クリープ性を含む。本明細書に開示される実施形態が、他の実施形態と組み合わせて使用され得るか、または上記の参照によって組み込まれたものなどの、他の既存のアクチュエータ技術に組み込まれ得ることを、当業者なら認識するであろう。
【0011】
用語「または」は、他に明示的に述べられていない限り、「包含的なまたは」であると理解される。「包含的なまたは」の定義の下では、表現「AまたはB」は、「A単独、B単独、またはAとBの両方」を意味すると理解される。同様に、「A、B、またはC」は、「A単独、B単独、C単独、A及びBの両方、A及びCの両方、B及びCの両方、またはA及びB及びC」を意味すると理解される。
【0012】
本明細書に開示される実施形態によれば、カーボンナノチューブ層は、互いの上に積み重ねられた複数のカーボンナノチューブ(CNT)シートで構成される。1つまたは複数の実施形態では、複数のCNTシートは、それ自体の上に複数回巻き付けられた単一のシートを含み得る。そのようなCNTシートは、本明細書に開示される実施形態による、等方性と考えられ得る。1つまたは複数の実施形態では、これらのCNTシートは、互いの上に積み重ねられると、本質的に分離不可能になり、巻き付けを解くことができない。場合によっては、CNT層は、50枚のCNTシート、100枚のCNTシート、またはそれ以上を含み得る。
【0013】
人工筋肉デバイスは、シート筋肉デバイス、ハイブリッドナノファイバー人工筋肉、ハイブリッド筋肉デバイス、ハイブリッドアクチュエータ、人工筋肉アクチュエータなどとも呼ばれ得る。
【0014】
ハイブリッドという用語は、CNTシートにゲスト作動材料を浸透させて、1つまたは複数のCNT層を形成すること、さらに、CNT層が他の材料も含み得ることを示すのに使用される。例えば、材料は、エラストマー(例えば、シリコーン系ゴム、ポリウレタン、スチレン-ブタジエンコポリマー、天然ゴムなど)、フッ素化プラスチック(例えば、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)など)、アラミド(例えば、ケプラー、ノメックスなど)、エポキシ、ポリイミド、パラフィンワックスなどを含み得る。
【0015】
本明細書に開示される実施形態では、糸は連結した繊維の長い、連続した長さである。CNT糸では、繊維はCNTであり、コア繊維はCNT層が周りに巻き付けられている繊維である。
【0016】
用語「または」は、他に明示的に述べられていない限り、「包含的なまたは」であると理解される。「包含的なまたは」の定義の下では、表現「AまたはB」は、「A単独、B単独、またはAとBの両方」を意味すると理解される。同様に、「A、B、またはC」は、「A単独、B単独、C単独、A及びBの両方、A及びCの両方、B及びCの両方、またはA及びB及びC」を意味すると理解される。
【0017】
概して、本発明の実施形態は、筋肉繊維アクチュエータ技術の進歩に関する。例えば、本発明の実施形態は、人工筋肉繊維の束を含む人工筋肉アクチュエータを含む。本発明の実施形態は、耐クリープ性も含む。
【0018】
本発明の実施形態は、電気的、光学的、熱的、化学的、吸収により、または他の手段によって駆動されたとき、ねじり及び/または引張作動を生成する、撚紡績ナノ繊維糸及び撚りポリマー繊維を含む、アクチュエータ材料または人工筋肉を含む。本発明の実施形態は、コイル状糸またはポリマー繊維を利用するアクチュエータを含み、ニートであり得るかゲストを含み得る。
【0019】
1つまたは複数の実施形態では、人工筋肉アクチュエータは束ねられた人工筋肉繊維で構成される。本明細書に開示される実施形態によれば、一緒に束ねられた多くの小径繊維は、同程度の全体直径の単一繊維と比較して、総トルク出力を増加させ得る。例えば、糸の動力学の結果として、ポリマー筋肉繊維の出力は、巻き数/長さが直径に反比例するという関係に従い得る。したがって、撚りの量を増やすと、繊維は所与の期間にわたってより大きな出力を生成することが可能になり得る。したがって、筋肉繊維の束は、同じ寸法の単一の繊維よりも大きなトルクを生成し得る。
【0020】
上述のように、1つまたは複数の実施形態では、作動が電気的に刺激され得るように、アクチュエータは導電材料を含み得る。この導電材料は様々な方法で束に組み込まれ得る。例えば、導電材料は、図1図3に示されるように、繊維の束に組み込まれた1つまたは複数のワイヤの形態をとり得る。
【0021】
図1は、本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態による、人工筋肉アクチュエータの束100の概略図を示す。図1は、9つの人工筋肉繊維102及び4つの導電材料ワイヤ構造104を含む。導電材料ワイヤ構造104は、人工筋肉繊維102の間の間隙に形成され、人工筋肉繊維102は、長方形の配列に配置される。
【0022】
図2は、本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態による、人工筋肉アクチュエータの束200の概略図を示す。図2は、導電材料ワイヤ構造204及び人工筋肉繊維202が長方形の配列に配置されている構成を示す。
【0023】
本明細書に開示される実施形態は、長方形の配列に限定されない。図3は、本明細書に開示される1つまたは複数の実施形態による、人工筋肉アクチュエータの束300の概略図を示す。図3は、導電材料ワイヤ構造304及び人工筋肉繊維302が六角形の配列に配置されている構成を示す。
【0024】
本発明の実施形態が、図1図3の構成だけに限定されないことを当業者なら理解するであろう。人工筋肉繊維及び導電構造の数、ならびに人工筋肉繊維及び導電ワイヤ構造の寸法は、用途に応じて変わり得る。
【0025】
さらに、これらの実施形態は、上述のような導電材料用の単なるワイヤ状構造に限定されない。言い換えれば、導電材料は、束に組み込まれた任意の導電材料の形態をとり得る。例えば、導電材料は、繊維を一緒に保持するためのバインダーとしても機能し得る。
【0026】
1つまたは複数の実施形態では、人工筋肉アクチュエータの束内の導電材料に導電性コーティングを使用し得る。導電性コーティングは、人工筋肉繊維の束を構成する1つまたは複数の人工筋肉繊維の周りにコーティングされ得る。さらに、本明細書の実施形態に従って、コーティングは繊維束全体を包含し得る。
【0027】
1つまたは複数の実施形態では、導電材料は、束内に存在する他の導電材料との接触から絶縁され得る。これは、導電経路が人工筋肉アクチュエータを通ってループ状に延びる筋肉束に特に有用であり得る。また、2つの導電性筋肉繊維が、互いに接触している設計に特に有用であり得る。
【0028】
ワイヤはナノ繊維の束の中心に配置され得て、次いで、このワイヤにより、ワイヤにかかり得る負担の軽減が高められ得る。ワイヤを個々の繊維の周りに巻き付ける必要がないので、製造コストも削減される。ポリマー繊維の周りに細い金属ワイヤを巻き付ける製造工程は、多くの品質保証問題の原因となっている。金属ワイヤの断線による不完全な回路により、そのサンプルは機能しない状態になり、廃棄しなければならない。
【0029】
単一の金属ワイヤを使用することにより、サンプルを巻いてコイル状にする装置のみが可能となり、細いワイヤを巻いたり、導電層をコーティングしたりする必要はなくなる。束ねられた人工筋肉は、大規模に生産することがより簡単である。
【0030】
回転による撚りの繰り返しにより、束の中心にある金属ワイヤが疲労して磨耗する可能性がある。したがって、導電性のジュールヒーターには、より柔軟な材料を使用することが特に好ましい場合がある。カーボンナノチューブ(CNT)糸は、容易に疲労せず、人工筋肉の寿命を大幅に延ばすため、この用途に特に好ましい。
【0031】
より頻繁に破断する導電経路は、人工筋肉繊維と接地との間の経路であり、これは双安定人工筋肉及び角回転の異なる方向を必要とする筋肉に必要である。このワイヤは、例えば、角方向に回転するデバイスに取り付けられた場合には繰り返し屈曲を受ける。ワイヤの各セグメントにかかる応力の量を減少させる方法は、ワイヤの長さを長くすることによって行うことができるが、これは、好ましくないことに、最終製品の寸法を増大させる可能性がある。この場合も、より柔軟な代替物が望まれ、この場合も、CNT糸がこの導電経路を提供するための理想的な選択肢を表す。
【0032】
接地ワイヤを中央のデバイスに取り付ける必要性を回避するための別の選択肢は、筋肉繊維束自体の内部に導電性ループを設けることである。電源と反対側の人工筋肉束の端部を除いて、互いに接触しないように絶縁する2つの導体があり得る。このようにして、電流は、一方の導体を通って筋肉繊維の端部まで通過し、次いで、第1の導体と平行な他方の導体を通って電源に戻る。導体が金属で構成されている場合。それらは、単に2つの導体を電気的に接続するために、デバイスの端部にはんだ付けされ得る。これはさらに容易な製造を可能にし得る。さらに、金属化されたCNT糸は、はんだ付けされ得る。さらに、このプロセスは、導体がいくつかの人工筋肉の周りに巻き付けられた細いワイヤである場合、及び人工筋肉繊維が、それらの表面に適用される連続的な導電層を有する場合に使用され得る。電気的接続を形成するための他の技術は、導電性塗料を含み得て、これは、導体として機能する高吸収性CNT糸の実施形態に特に有用であり得る。
【0033】
導体間の非導電性ポリマー筋肉が、各導体を他から絶縁するように作用するように、導体は、電気的接触を防ぐために絶縁層でコーティングされるか、または人工筋肉繊維束内で、互いに反対側に配置され得る。
【0034】
摩擦は、筋肉の束がどのように動作するかに大きな役割を果たす。束中の各人工筋肉繊維間の摩擦力が高すぎると、各人工筋肉繊維は互いに独立して動作することができず、代わりに単一の筋肉繊維として動くことになる。筋肉繊維間に生じる摩擦が十分に小さければ、筋肉繊維は互いに独立して動作することができる。束ねることの利点は、束と単一の人工筋肉繊維の両方が同じ総直径を有する場合、単一の大きな高度に撚られた筋肉繊維よりも、一緒に束ねられた多くの小さな高度に撚られた筋肉繊維の方が、より多くのトルクを生み出すことができることである。この驚くべき現象は、おそらく繊維のらせん角と単位長さあたりに挿入できる撚りの数との関係によるものである。tan(α)=πTD、ここで、αは糸のらせん角、Tは1メートルあたりの撚り数、Dは繊維の直径である。人工筋肉繊維セグメントの撚りの数が多いほど、トルク出力は大きくなる。
【0035】
電流が、導体を通って短絡するのを防ぐために、導体を互いに接触しないように絶縁することが望ましい場合がある。これは、導電経路が筋肉を通ってループ状に延びる筋肉束に特に有用であり得る。また、2つの導電性筋肉繊維が、互いに接触するような設計に特に有用であり得る。細い銅線を適切に絶縁することは困難であるが、可能である。より容易に絶縁させ得る最適な導電材料としてカーボンナノチューブを利用することも有用であり得る。別の選択肢は、人工筋肉繊維自体に導電性ポリマーまたは材料を使用することである。これにより、さらに容易に適用される絶縁層を有し得る。
【0036】
人工筋肉繊維は、長期にわたって繰り返し使用するとクリープを起こす。クリープとは、筋肉繊維自体の変形による筋肉の張力の損失である。クリープは時間の経過とともに発生する自然なプロセスで、荷重、温度、及び重要なものでは繊維の特性など、様々な要因に左右される。
【0037】
一般的な人工筋肉材料であるナイロンは、低コスト及び製造可能性という利点を有する。残念なことに、ナイロンもクリープの影響を受けやすい。1つの手法は、ナイロンをクリープの影響を受けにくいポリマー、またはカーボンナノチューブ糸などの他の高強度材料に取り換えることである。
【0038】
1つまたは複数の実施形態では、筋肉繊維にかかる荷重の一部を取り除くことによって、及び高強度耐クリープ性繊維を適用することによって、クリープを低減させ得る。1つまたは複数の実施形態では、筋肉繊維の束は、少なくとも1つの高強度耐クリープ性繊維を含む。
【0039】
図4に見られるように、1つまたは複数の実施形態では、人工筋肉アクチュエータは、中央の高強度繊維424の周りに六角形の配列で配置された人工筋肉繊維402の束を含み得る。
【0040】
図5に見られるように、1つまたは複数の実施形態では、人工筋肉アクチュエータ500は、配列の対角に一対の高強度繊維524を有する正方形の配列に配置された人工筋肉繊維502の束を含み得る。
【0041】
回転する人工筋肉の場合、高強度繊維は全く作動させる必要がないので、高強度繊維を、撚るまたはコイル状にする必要はない。高強度繊維の例は、Kevlar(商標)及びVectran(商標)を含み得る。カーボンナノチューブ(CNT)糸は、クリープを防止できると同時に筋肉繊維の電気的作動に必要なオーム加熱を提供し得る。撚られていないナイロン繊維は、高度に撚られたナイロン繊維よりもわずかに大きいクリープへの耐性を有し、これは、作動(撚られた)ナイロン繊維と非作動(撚られていない)ナイロン繊維の組み合わせを、束内で一緒に使用し得ることを意味する。1つまたは複数の実施形態では、束全体を加熱及び冷却して作動を生じさせる必要があるので、熱容量を最小限にするために小径の繊維が使用され得る。作動を生じない繊維を加熱すると、束のエネルギー効率が低下し、冷却時間が増加する可能性があり、作動速度に悪影響を及ぼす。
【0042】
コイル状の直線作動筋肉はまた、筋肉と連携して作用する耐クリープ性材料を有することができる。図6に示すように、1つまたは複数の実施形態では、コイル状の人工筋肉602と平行するばね652を適用することができる。ばね652は、図3に示されるように人工筋肉繊維の周りに巻き得るか、または人工筋肉(図示せず)に、おそらく、繊維及びばねの配列で並置され得る。
【0043】
本開示を限定された数の実施形態に関してのみ説明したが、本開示の利益を有する当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく他の様々な実施形態が考案され得ることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【符号の説明】
【0044】
100 人工筋肉アクチュエータの束
102 人工筋肉繊維
104 導電材料ワイヤ構造
200 人工筋肉アクチュエータの束
202 人工筋肉繊維
204 導電材料ワイヤ構造
300 人工筋肉アクチュエータの束
302 人工筋肉繊維
304 導電材料ワイヤ構造
402 人工筋肉繊維
424 高強度繊維
500 人工筋肉アクチュエータ
502 人工筋肉繊維
524 高強度繊維
602 コイル状の人工筋肉
652 ばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6