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特許7168761可逆コイラ及び可逆コイラを操作するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】可逆コイラ及び可逆コイラを操作するための方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/24 20060101AFI20221101BHJP
   B21C 47/02 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B21C47/24
B21C47/02 B
B21C47/24 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021505660
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019070829
(87)【国際公開番号】W WO2020025773
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】102018212958.4
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ベッキング・ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】パッツェルト・ウルリヒ
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-229756(JP,A)
【文献】特開平03-193211(JP,A)
【文献】国際公開第2018/041673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 45/00-49/00
B65H 18/00-19/30
B65H 21/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリップ(200)巻き取るため、ロータに、少なくとも1つのコイラマンドレル(112)が、そのロータ側端によってロータの回転軸(D)に対して偏心して取り付けられている、ロータ(110)を備えた可逆コイラ(100)を操作するための方法であって、この方法が、
・最初は空のコイラマンドレル(112)を巻始め位置(A)に移送するためにロータ(110)を回転させるステップと、
作業場の床に支持された同行型のマンドレル支持軸受(120)をコイラマンドレルの自由端(113)に解離可能に連結するステップと、
を備えるものにおいて、
コイラマンドレル(112)の自由端(113)が、巻始め位置(A)で、連結された同行型のマンドレル支持軸受(120)によって重力(G)に抗してそのロータ側端の高さまで持ち上げられること、及び、この方法が、同行型のマンドレル支持軸受の運動の同期のための計算と、同行型のマンドレル支持軸受の具体的な支持位置及び支持力のための計算をするステップを備え、コイラマンドレルの自由端の現在の位置に対応する、同行型のマンドレル支持軸受が取るべき支持位置が、変化するパラメータである重量力、ストリップ張力、マンドレル及び旋回過程の現在の位置から連続的に計算されること、を特徴とする方法。
【請求項2】
ストリップ(200)が、巻始め位置(A)で、コイラマンドレル(112)に巻き取られること、及び、コイラマンドレルの自由端(113)が、巻始め位置(A)で、ストリップの巻始め前及び/又は巻始め中に、連結された同行型のマンドレル支持軸受(120)によって持ち上げられること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ロータ(110)が、ストリップ(200)の巻始め後に、巻始め位置(A)から、ストリップをコイルに巻き終えるための巻終え位置(F)にコイラマンドレル(112)を移送するために回転され、ストリップ(200)の巻取りが、ストリップ張力下移送中に継続されること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
コイラマンドレル(112)の自由端(113)が、巻始め位置(A)から巻終え位置(F)へのコイラマンドレルの移送中でも、その際に増加するコイル重量も考慮して、連結された同行型のマンドレル支持軸受(120)によって永続的にそのロータ側端の変化する高さに保持されること、を特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
コイラマンドレル(112)の自由端(113)が、巻始め位置(A)で及び巻始め位置から巻終え位置(F)へのコイラマンドレルの移送中に、その際に増加するかつその方向が変化するストリップ張力も考慮して、同行型のマンドレル支持軸受(120)によってまた永続的にそのロータ側端に対向して保持されること、を特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
・コイルを巻き付けられた巻終え位置(F)にあるコイラマンドレル(112)の自由端(113)を固定型のマンドレル支持軸受(130)によって支持し、
・同行型のマンドレル支持軸受(120)を切離し、
・同行型のマンドレル支持軸受を巻始め位置(A)に移動させ、
・コイルを巻き終え、
・コイルを搬出する
こと、を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ロータ(110)と、作業場の床に支持された同行型のマンドレル支持軸受(120)を備え、ロータに、ストリップ(200)巻き取るための少なくとも1つのコイラマンドレル(112)が、そのロータ側端によってロータの回転軸(D)に対して偏心して取り付けられ、同行型のマンドレル支持軸受が、コイラマンドレルの自由端に解離可能に連結するための軸受ヘッド(122)と、ロータ(110)の回転による巻始め位置(A)から巻終え位置(F)へのコイラマンドレル(112)の移送時にコイラマンドレルの自由端の変化する位置に応じて軸受ヘッド(122)を移動させるための少なくとも1つの駆動装置(126)を備えた調整装置(124)を備え、コイラマンドレルが巻始め位置(A)にある時に、コイラマンドレル(112)の自由端が、コイラマンドレルのロータ側端の高さになるまで、軸受ヘッド(122)をコイラマンドレルの連結された自由端と共に重力に抗して持ち上げるように、調整装置(124)が形成されている可逆コイラにおいて、
同行型のマンドレル支持軸受の運動の同期と具体的な支持位置及び支持力の計算をするための計算ユニットが設けられ、コイラマンドレルの自由端の現在の位置に対応する、同行型のマンドレル支持軸受が取るべき支持位置が、変化するパラメータである重量力、ストリップ張力、マンドレル及び旋回過程の現在の位置から連続的に計算されること、を特徴とする可逆コイラ(100)。
【請求項8】
コイラマンドレル(112)へのストリップ(200)の巻始めの前及び/又は巻始め中に、巻き始め位置(A)にあるコイラマンドレルの軸受ヘッドに連結された自由端と共に軸受ヘッド(122)を持ち上げるように、調整装置(124)が形成されていること、を特徴とする請求項7に記載の可逆コイラ(100)。
【請求項9】
軸受ヘッド(122)が、スリーブ状に形成され、コイラマンドレルの自由端(113)の突出端(113a)上にスライドスリーブを装着することによってコイラマンドレルの自由端に軸受ヘッドを連結するための連結要素として軸方向に摺動可能なスライドスリーブ(128)を備えること、を特徴とする請求項7又は8に記載の可逆コイラ(100)。
【請求項10】
コイラマンドレルの自由端(113)上にスライドスリーブ(128)を手動又は自動で装着するため及びコイラマンドレルの自由端からスライドスリーブを引き戻すための操作要素(129)が設けられていること、を特徴とする請求項9に記載の可逆コイラ(100)。
【請求項11】
調整装置(124)が、クランク機構の形態で、即ち二重平行クランクとして形成されていること、を特徴とする請求項7~10のいずれか1項に記載の可逆コイラ(100)。
【請求項12】
クランク機構の枢動点の少なくとも2つのために、それぞれ1つの駆動装置(126)が設けられていること、を特徴とする請求項11に記載の可逆コイラ(100)。
【請求項13】
巻終え位置(F)でコイラマンドレルの自由端(113)を支持するために、付加的に固定型のマンドレル支持軸受(130)が設けられていること、及び、同行型のマンドレル支持軸受(120)の軸受ヘッド(122)よりも更に内側でコイラマンドレル(112)の自由端を支持するために、固定型のマンドレル支持軸受(130)が位置決め及び形成されていること、を特徴とする請求項7~11のいずれか1項に記載の可逆コイラ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による可逆コイラを操作するための方法に関する。更に、本発明は、装置としての相応の可逆コイラに関する。
【背景技術】
【0002】
このような可逆コイラは、従来技術では、例えば特開昭64-005625号公報から基本的に知られている。そこに開示された可逆コイラは、ロータを備え、このロータに、少なくとも1つのコイラマンドレルが、そのロータ側端によってロータの回転軸に対して偏心して取り付けられている。可逆コイラは、ストリップ、特に金属ストリップをそのコイラマンドレルに巻き取るために使用される。巻取過程を開始するため、コイラマンドレルのロータは、まず、未だ空のコイラマンドレルが巻始め位置に位置決めされるように回転される。この位置で、次にまず、ストリップがコイラマンドレルに巻き始められる。行われた巻始めの後、即ちコイラマンドレルにストリップの約1~3巻を巻き付けた後、更なる巻き付けのために引張応力(ストリップ張力)がストリップに構成される。更なる巻取り中、コイラマンドレルは、前記巻始め位置から巻終え位置に回転される。そこでは、コイルへのストリップの巻終えが行なわれる。コイルは、完成後、次に、巻終え位置から取り出し、更に搬送することができる。可逆コイラが、典型的に2つのコイラマンドレルを備え、これらマンドレルの両方が、対向して、ロータの回転軸に対して偏心して可逆コイラのロータに固定されていることにより、両コイラマンドレルは、巻始め位置と巻終え位置の間を交互に旋回することができる。従って、極端に短いコイルシーケンスを実現することができる。前記日本の文献から、更に、コイラマンドレルの自由端に、巻始め位置でコイラマンドレルの自由端に連結されかつ巻始め位置から巻終え位置へのコイラマンドレルの移送中にこの自由端に連結されたままである同行型のマンドレル支持軸受を付設することが知られている。その点で、「同行型のマンドレル支持軸受」との用語は明白であり、マンドレル支持軸受は、移送中に同行する。
【0003】
コイラマンドレルは、典型的に既に非常に重い自重を有する。従って、その自由端は、金属ストリップを巻き付けられていない場合でも、そのロータ側端に対して典型的に1~2mmだけ撓んでもしくは垂れ下がっている。ストリップ張力による負荷及びコイル重量の増加下で、この片側の変形は増大する。
【0004】
自由端のこの撓みもしくは垂れ下がりは、これが、コイラマンドレルの許容負荷を低下させ、加えてコイラマンドレルに対するストリップの巻き精度を低下させる点で不利である。従って、コイルを巻く際、しばしばいわゆる「袋形成」が生じる。即ち、コイルの個々の巻きは、アコーディオン状に互いに位置ズレしている。結局、コイラマンドレルの自由端が垂れ下がると、巻取を安定させるためのストリップ張力も、比較的遅くしか、即ちストリップの数巻きを巻き始めた後でしか、ゆっくりとしか構成できず、加えて、これが、ストリップを巻き取る際の不正確さを生じさせる。前記巻きの不正確さに基づいて、伝統的に規則的に、コイルに巻き取られる金属ストリップの無視できない部分は、スクラップと呼ぶべきである。ストリップの経過とこれに関連した「袋形成」は、ストリップ始端部の平坦度測定及び平坦度調整に対して別の作用を有する。
【0005】
前記の日本の特許出願から公知の同行型のマンドレル支持軸受は、これら公知の欠点を排除するために適していないようである。何故なら、マンドレル支持軸受は、コイラマンドレルの自由端を、主に重力に抗して支持するのではなく、明らかに主にストリップ張力に抗して支持するからである。これは、当業者にとって、同行型のマンドレル支持軸受の2部材の軸受ヘッドが、包囲されるコイラマンドレルを、垂直方向にではなく水平方向に包囲して安定させることから、明らかである。
【0006】
国際公開第2018/041673号パンフレットは、独立請求項1及び7の上位概念のすべての特徴を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭64-005625号公報
【文献】国際公開第2018/041673号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底にある課題は、特に巻初め過程の開始時のコイラマンドレルの自由端の撓みもしくは垂れさがりが回避されるように、可逆コイラを操作するための公知の方法と公知の可逆コイラを発展させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、方法技術的には、請求項1で請求した方法によって解決される。この方法は、コイラマンドレルの自由端が、巻始め位置で、解離可能に連結された同行型のマンドレル支持軸受によって重力に抗してそのロータ側端の高さまで持ち上げられること、を特徴とする。
【0010】
コイラマンドレルの自由端の請求した持上げにより、その降下もしくは垂れ下がりが補償されるので、前記全ての欠点が回避される。これにより、具体的には、金属ストリップの巻取り時の袋形成を回避することができる。更に、これにより可能なストリップ張力の急速な構成によって、コイルのストリップの個々の巻きがぴたりと重なり合うことが保証される。マンドレルの自由端の支持により、巻き始め位置でのストリップ張力は、マンドレルの不支持単に比して高い値を取り得る。
【0011】
本発明による方法の第1の実施例によれば、コイラマンドレルの自由端が、巻始め位置で、ストリップの巻始め前及び/又は巻始め中に、持ち上げられる場合が、有利である。自由端が、ストリップの巻初め前に既に持ち上げられると、袋形成は、ストリップの巻初め時には既に防止することができる。基本的に、早く持上げられるほど、巻き結果が良好になる。巻き過程によって、スクラップの生産が少なくなる。
【0012】
有利には、コイラマンドレルの自由端は、巻始め位置から巻終え位置へのコイラマンドレルの移送中でも、その際に増加するコイル重量も考慮して、連結された同行型のマンドレル支持軸受によって永続的にそのロータ側端の変化する高さに保持される。これにより、コイラマンドレルの移送中に継続される巻きプロセス中でも、ぴたりと重なり合った巻きを備えたストリップの面一の巻取りが保証される。
【0013】
これまでに議論した請求項1~4は、重量力の補償だけを目標としており、従って、これらプロセスステップによりまず重量力に基づくコイラマンドレルの自由端の降下だけに対処がなされ、加えて、これは、コイラマンドレルの自由端がそのロータ側端の「高さまで」持ち上げられるとの文言によって表現される。
【0014】
しかしながらまた、重量力以外に、コイラマンドレル及び特にその自由端は、少なくとも、巻取り中にストリップが受ける前記ストリップ張力に基づいた水平方向の力成分を行ける。これにより、コイラマンドレルの自由端は、基本的に水平方向にも曲げられる。水平方向のこのような曲げも、望ましくない。何故なら、これも、コイラマンドレルにストリップを巻き取る際の前記瑕疵を生じさせるからである。
【0015】
従って、本発明は、有利には、コイラマンドレルの自由端が、既に巻初め位置でも、巻初め位置から巻終え位置へのコイラマンドレルの移送中-その際に増加するかつその方向その値が変化するストリップ張力を考慮して-でも、同行型のマンドレル支持軸受によって永続的にまたそのロータ側端に対向して保持されることを企図する。「そのロータ側端に対向して」とのこの表現は、コイラマンドレルの自由端が、ロータ側端の高さに位置するだけでなく、更に、コイラマンドレルが水平な平面内で曲げられていないことを意味する。これは、本発明によれば、同行型のマンドレル支持軸受が、重力に対処し、コイラマンドレルの自由端の高さを修正するだけでなく、ストリップ張力にも対処するように形成されていることによって、保証される。
【0016】
同行型のマンドレル支持軸受の運動の同期と具体的な支持位置及び支持力の計算のために、計算ユニットが設けられている。これは、変化するパラメータである重量力、ストリップ張力、マンドレルの現在の位置及び旋回過程から、コイラマンドレルの自由端の現在の位置に対応する、同行型のマンドレル支持軸受が取るべき支持位置を連続的に計算する。この場合、変化する負荷パラメータである重量力及びストリップ張力から、生じる力は、従ってコイラマンドレルの固定端に対するコイラマンドレルの自由端の位置ズレに関する変化する寸法が決定される。従って、調整装置によって実行される運動が、旋回過程時のマンドレルの位置と同期して実行されることと、変化する負荷パラメータが考慮され、従ってコイラマンドレルの自由端が常にそのロータ側端の高さまで持上げられることの両方が保証されている。同期は、電気式及び/又は機械式の構成要素/部品によって行なうことができる。
【0017】
有利には、典型的にその上にコイルを巻き取られた巻終え位置にあるコイラマンドレルは、付加的にまた固定型のマンドレル支持軸受によって支持される。固定型のマンドレル支持軸受がその支持作用を発揮した後でしか、同行型のマンドレル支持軸受は、切離し、再び巻始め位置に移動させることはできない。コイルは、巻終え位置で、固定型のマンドレル支持軸受によって支持されて、巻き終えることができる。次いで、巻き終えられたコイルの搬出が、典型的にコイル搬送車によって行なわれる。
【0018】
前記の課題は、装置技術的には、請求項7で請求した可逆コイラによって解決される。この可逆コイラは、同行型のマンドレル支持軸受の運動の同期と具体的な支持位置及び支持力の計算をするための計算ユニットが設けられ、コイラマンドレルの自由端の現在の位置に対応する、同行型のマンドレル支持軸受が取るべき支持位置が、変化するパラメータである重量力、ストリップ張力、マンドレル及び旋回過程の現在の位置から連続的に計算されること、を特徴とする。
【0019】
本発明による方法及び本発明による可逆コイラの別の有利な構成は、従属請求項の対象である。
【0020】
明細書には、6つの図が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】巻始め位置にある本発明による可逆コイラ
図2】巻終え位置にある本発明による可逆コイラ
図3】同行型のマンドレル支持軸受の自由端の軸受ヘッド
図4】コイラマンドレル及び付設された同行型のマンドレル支持軸受の巻きプロセスの種々の段階4.1~4.7の概略図
図5】作業位置から巻終え位置へのコイラマンドレルの移送時の種々の段階の同行型のマンドレル支持軸受に作用する力の変化
図6】二重平行クランク機構のジョイントに駆動装置を取り付けるための種々のバリエーション
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を、以下で、前記の図を参照して実施例の形態で詳細に説明する。全ての図で、同じ技術的要素が、同じ符号で指示されている。
【0023】
図1は、本発明による可逆コイラ100を示す。可逆コイラは、実質的にロータ110、即ちここでは模範的に回転ディスクから成り、このディスクに、ここでは2つのコイラマンドレル112が、そのロータ側端によってロータの回転軸Dに対して偏心して取り付けられている。両コイラマンドレル112は、基本的にロータの平面に対して垂直に延在する。両コイラマンドレルのそれぞれは、ストリップ200、特に金属ストリップをコイルに巻き取るために使用される。図1で左側に示したコイラマンドレル112は、いわゆる巻始め位置Aにあるが、同時に第2のコイラマンドレル112は、いわゆる巻終え位置Fにある。可逆コイラの機能と本発明による方法を更に以下で説明する。
【0024】
図1によれば、作業位置Aにあるコイラマンドレル112には、同行型のマンドレル支持軸受120が付設されている。このマンドレル支持軸受120は、軸受ヘッド122を備え、この軸受ヘッドは、コイラマンドレル112の自由端に解離可能に連結されている。コイラマンドレルの自由端は、コイラマンドレルをロータ110に取り付けるコイラマンドレルのロータ側端に対向するものである。
【0025】
同行型のマンドレル支持軸受120は、例えば作業場の床300又は基礎に設置及び支持されている。同行型のマンドレル支持軸受は、特に、例えば二重平行クランク機構の形態の調整装置124を、調整装置の構成によって決定される軌道、特に円軌道上で支持軸受の軸受ヘッド122を移動させるために備える。この円軌道は、図1では右向きの矢印で示されており、この円軌道上を、左側のコイラマンドレルは、ロータ110のその回転軸Dを中心とする回転と、調整装置124の適切な運動によるマンドレル支持軸受の同時の同行によって、巻始め位置Aから巻終え位置Fに移動させることができる。
【0026】
この状況が、図2に示されている。そこでは、更に、巻終え位置Fにあるコイラマンドレル112が、最初は同行型のマンドレル支持軸受120によって支持されるだけでなく、最初は付加的に固定型のマンドレル支持軸受130によっても支持されることが認められる。この巻終え位置Fで、固定型のマンドレル支持軸受は、コイラマンドレルだけでなく、付加的に巻き終えられたコイルも共に支持しなければならない。この場合、図2では、固定型のマンドレル支持軸受130は、同行型のマンドレル支持軸受の軸受ヘッド122よりも更に内側でコイラマンドレル112の自由端を支持するために、コイラマンドレルに取り付けられるように、位置決め及び形成されていることが認められる。「更に内側」は、この場合、「ロータ110に近い」が、依然としてコイラマンドレルの自由端のところを意味する。同行型のマンドレル支持軸受120に対する固定型のマンドレル支持軸受130の配置及び位置決めは、巻終え位置にあるコイラマンドレル112の自由端からの軸受ヘッド122の切離を可能にするために重要である。固定型のマンドレル支持軸受130が、更に内側でコイラマンドレル112の自由端に取り付けられることにより、軸受ヘッド122のまえの領域は、自由であるので、軸受ヘッドは、問題となるエッジ干渉なしで同行型のマンドレル支持軸受を切離するために容易に解離することができる。
【0027】
図3は、同行型のマンドレル支持軸受120の軸受ヘッド122のための実施例を示す。この軸受ヘッド122がそのコイラマンドレル112の側の端部をスリーブ状に形成されていことが認められる。このスリーブ状の端部内に又は端部において、スライドスリーブ128は、軸方向に二重矢印の方向に摺動可能に支承されている。コイラマンドレル112の自由端113に軸受ヘッド122を連結するため、スライドスリーブは、コイラマンドレルの自由端の突出端113a上に装着され、この位置で、操作要素129、例えばシリンダによってロックされる。操作要素129は、場合によっては、スライドスリーブを引き戻すために、従って軸受ヘッド122もしくは同行型のマンドレル支持軸受からコイラマンドレルの自由端を解放するために、使用される。図3に示した連結位置で、コイラマンドレル112の自由端113は、スライドスリーブ128内又は軸受ヘッド122のスリーブ状の端部内に回転可能に支承されている。しかしながら、同時に、スリーブ状の端部形成により、コイラマンドレルの自由端113が、図1を参照して前で述べた軌道曲線の各点で重力Gに対抗して同行型のマンドレル支持軸受によって支持され得ることが保証されている。
【0028】
今説明した本発明による可逆コイラ100を操作するための本発明による方法を、以下で図4~6を参照して詳細に説明する。
【0029】
方法は、まず、可逆コイラ100のロータ110が、最初は空のコイラマンドレル112を巻始め位置Aに移動させるために回転されることを企図する(図1参照)。巻始め位置Aでは、次に、同行型のマンドレル支持軸受120の軸受ヘッド122がコイラマンドレル112の自由端に解離可能に連結される。この状態は、図4.2にも示されている。
【0030】
しかしながら、本発明による方法の根底にある問題は、図4.1に図示されている。概略図で、巻始め位置Aにあるコイラマンドレル112の端面が認められる。この場合、一点鎖線の小さい円は、ロータ100に不動に取り付けられたコイラマンドレルのロータ側端を示し、実線で示した小さい円が、コイラマンドレルの自由端を示す。誇張された図で示した両方の小さい円の間の位置ズレは、コイラマンドレル112の自由端のそのロータ側端に対する垂れ下がりもしくは降下を意味し、例えば約1~3mmの撓みが、コイラマンドレル112の高い自重に基づいて起こり得る。コイラマンドレルの自由端のこの撓みは、導入で説明したような不正確に巻かれたコイルを生じさせる。
【0031】
従って、本発明による方法によれば、コイラマンドレル112の自由端113のこの撓みには、この自由端113が、連結された同行型のマンドレル支持軸受によって重力Gに抗してコイラマンドレル112のロータ側端の高さまで持ち上げられることによって、対処される。
【0032】
図4.2は、持上げられた位置にあるコイラマンドレル112の自由端113を示すが、これは、図4.2にコイラマンドレル112のロータ側端と自由端が一致して描かれていることからわかる。
【0033】
巻初め位置Aで、ストリップをコイラマンドレル112に巻き取ることが開始される。これは、まず、全くストリップ張力なしで行なわれるが、ストリップ張力は、ストリップ、特に金属ストリップが、数巻き(普通は1~5巻き)でコイラマンドレル112に巻き取られ、有効な引張応力もしくは有効なストリップ張力に耐えることができるようになった時に初めて構成される。
【0034】
好ましくは、巻初め位置Aにあるコイラマンドレル112の自由端113は、ストリップの巻始め前及び/又は巻始め中にロータ側端の高さまで持ち上げられる。可能であれば、コイラマンドレルの自由端は、巻始めの開始前にロータ側端の高さまで持ち上げるべきであるが、それは、巻きの開始前には既に、ストリップの巻取り時の導入で説明した問題が回避され得るからである。
【0035】
図4.3は、未だ巻初め位置Aでのストリップ張力の構成を示すが、ストリップ張力の構成は、そこでは、ストリップ200に対して平行な互いに向き合う2つの矢印によって示されている。図4.2及び4.3では、同行型のマンドレル支持軸受の二重平行クランク機構124が、その軸受ヘッドを、従ってまたコイラマンドレル112の自由端113を、巻初め位置でロータ側端の高さに保持する。
【0036】
図4.4は、巻初め位置Aから巻終え位置へのコイラマンドレルの移送時のストリップ張力下で部分的に巻き取られたストリップ200を備えたコイラマンドレル112を示す。ここでも、本発明による方法によれば、ここでは模範的に二重クランク機構の形態の調整装置124が、コイラマンドレル112の自由端113を常にコイラマンドレルのロータ側端の高さに保持する。同時に、調整装置124は、コイラマンドレルの自由端でストリップ張力に対処するので、コイラマンドレル112の両端の間に横方向の位置ズレも生じない。むしろ、特に調整装置124によって、コイラマンドレルの自由端が、常にコイラマンドレルのロータ側端に対向して保持されることが保証される。このようにして、ストリップ200が正確にコイルに巻き取られ、導入で説明した欠点が生じないことが保証される。
【0037】
図4.5は、その間にコイル直径が増加した巻終え位置Fにあるコイラマンドレル112を示す。調整装置124は、相応に適切に回転されている。
【0038】
図4.6は、巻終え位置Fにあるコイラマンドレル112を示すが、ここでは、コイラマンドレル112の自由端113が、静的なもしくは固定型のマンドレル支持軸受130によっても支持される。この巻終え位置で、固定型のマンドレル支持軸受130は、単独でコイラマンドレルの自由端の支持を担うので、同行型のマンドレル支持軸受は、例えばスライドスリーブ128を引き戻すことによって自由端から切離することができる。切離された同行型のマンドレル支持軸受は、次に、図4.7に示したように巻初め位置に移動させることができる。コイルは、巻き終えること、及び、同行型のマンドレル支持軸受とのエッジ干渉なしで後にコイラマンドレルから取り外すことができる。
【0039】
図5は、再び、巻初め位置Aから巻終え位置Fへのコイラマンドレルの移送時のコイラマンドレルの図4.1~4.7から既知の種々の段階を示す。図5では、図4.1~4.7に既に示した作用力が、特に明確に認められる。コイラマンドレル112にそれぞれ作用する合力もしくは生じる力FRESは、それぞれ、重力Fとストリップ張力に基づく引張力Fから成るベクトル和として得られる。常に垂直方向に作用する重力Fが、巻初め位置Aでは未だ比較的小さく、巻終え位置に向かって次第に大きくなることが認められる。これは、巻初め位置Aでは自由端にコイラマンドレル112の自重の一部しか同行型のマンドレル支持軸受によって支持及び持ち上げる必要がないことから説明できる。巻終え位置への移送中、同時にまたますます多くのストリップ200がコイラマンドレルに巻き付けられ、これにより、重力Fは、巻終え位置でコイルの重力とコイラマンドレルの自重の一部から構成されるまで、連続的に増加する。更に、図5には、引張力Fが巻初め位置Aから巻終え位置Fにまで部分的に値的に増加するが、特にその方向に関しても変化することが認められる。これから、前記重力Fとのベクトル和の形成時に、図5に示したそれぞれ異なる合力FRESが生じる。本発明による同行型のマンドレル支持軸受120は、特に、前記の生じる合力FRESに対処するように形成されていなければならない。この目的のため、同行型のマンドレル支持軸受120は、本発明によれば、力を床に導出するために床に支持されている。
【0040】
合力並びに現在の旋回位置の計算は、示してない計算ユニットによって行なわれ、この計算ユニットは、同行型のマンドレル支持軸受の取るべき支持位置を設定し、調整装置によって実行させる。
【0041】
図6は、再び、巻初め位置から巻終え位置へのコイラマンドレルの移送中のコイラマンドレルの既に図4.1~4.7を参照して部分的に説明した位置を示す。図6は、特に二重クランク機構124の枢動点に駆動装置126を配置するための種々の可能性を示す。駆動装置は、それぞれ枢動点のセクタ状の分割によってシンボル化されている。基本的に、図1の第2の欄に2つの枢動点のために模範的かつ選択的に図示したように、1つの枢動点に1つの駆動装置を設けるだけで十分である。より良いが、高価でもあるのは、図6の第3の欄に図示したように、二重クランク機構124の異なる枢動点に2つの駆動装置126を取り付けることである。図3に示した実施例と、そこに示したコイラマンドレル112の位置の場合、駆動装置126の同方向の回転方向がよい。ここでは、コイラマンドレル112は、未だ死点の前にある。2つの駆動装置126によって加えられるトルクは、加算される。
【0042】
図6の第4の欄に示した実施例の場合、コイラマンドレル112は、死点を越えており、2つの駆動装置126によって加えられるトルクは、それぞれ個々にかつ反対の回転方向に作用する。
【0043】
本発明による方法及び装置により、巻き過程の柔軟性は、有利には明らかに高められる。巻初め位置での可能な巻きの数及び、巻初め位置でのストリップ張力の許容値は、高めることができ、旋回過程時の速度は、変更することができる。従って、旋回過程は、プロセス技術的に明らかに柔軟に実行することができる。
【符号の説明】
【0044】
100 可逆コイラ
110 ロータ
112 コイラマンドレル
113 コイラマンドレルの自由端
113a コイラマンドレルの自由端の突出端
120 同行型のマンドレル支持軸受
122 軸受ヘッド
124 調整装置
126 駆動装置
128 スライドスリーブ
130 固定型のマンドレル支持軸受
140 コイル搬送車
200 ストリップ、特に金属ストリップ
300 床
A 巻始め位置
D ロータの回転軸
F 巻終え位置
G 重力
図1
図2
図3
図4.1】
図4.2】
図4.3】
図4.4】
図4.5】
図4.6】
図4.7】
図5
図6