(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】遠心分離機
(51)【国際特許分類】
B04B 1/08 20060101AFI20221101BHJP
B04B 7/14 20060101ALI20221101BHJP
B04B 11/02 20060101ALI20221101BHJP
C12M 1/10 20060101ALI20221101BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20221101BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B04B1/08
B04B7/14
B04B11/02
C12M1/10
C12M1/26
C12M3/00 Z
(21)【出願番号】P 2021532953
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019084142
(87)【国際公開番号】W WO2020120360
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-04
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509005513
【氏名又は名称】アルファ-ラヴァル・コーポレート・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カスパー・ホグルンド
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・トールヴィド
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02567754(EP,A1)
【文献】米国特許第04894050(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第00241128(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0319248(US,A1)
【文献】国際公開第2015/181177(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動フレーム(30)と、回転可能組立体(101)と、前記回転可能組立体(101)を回転軸(X)の周りで前記不動フレーム(30)に対して回転させるための駆動ユニット(34)とを備えた、細胞培養混合物の分離のための遠心分離機(100)であって、前記回転可能組立体(101)は、
分離円板の積み重ね(19)が回転の鉛直軸(X)の周りに回転するように配置される分離空間(17)を包囲する回転子ケーシング(2)であって、前記回転子ケーシング(2)は、前記分離空間(17)への前記細胞培養混合物の供給のための機械式密封で封止された入口(20)と、分離液体相の排出のための第1の機械式密封で封止された液体出口(21)と、分離細胞相の排出のための第2の機械式密封で封止された液体出口(22)とをさらに備え、細胞相が液体相より大きい密度を有する、回転子ケーシング(2)を備え、
前記
機械式密封で封止された入口(20)は、前記回転子ケーシング(2)の第1の軸方向端(5)に配置され、分離される前記細胞培養混合物が前記回転軸(X)において前記回転子ケーシング(2)に入るように配置され、
前記第2の機械式密封で封止された出口(22)は、前記第1の軸方向端(5)と反対の前記回転子ケーシング(2)の第2の軸方向端(6)に配置され、前記分離細胞相が前記回転軸(X)において排出されるように配置され、
前記回転可能組立体(101)が、交換可能な分離挿入体(1)と回転可能部材(31)とを備え、前記分離挿入体(1)は、前記回転子ケーシング(2)を備え、前記回転可能部材(31)によって支持されていることを特徴とする、遠心分離機(100)。
【請求項2】
前記機械式密封で封止された出口(21、22)には、前記分離液体相および前記分離細胞相を排出するために圧力を追加するためのいかなる手段もないことを特徴とする、請求項1に記載の遠心分離機(100)。
【請求項3】
前記回転子ケーシング(2)は、前記分離細胞相を前記分離空間(17)から前記第2の機械式密封で封止された液体出口(22)へと移送するための少なくとも1つの出口導管(23)をさらに備え、前記出口導管(23)が、前記分離空間(17)の径方向で外側の位置から前記第2の機械式密封で封止された液体出口(22)へと延在していることを特徴とする、請求項1または2に記載の遠心分離機(100)。
【請求項4】
前記出口導管(23)は、径方向で外側の位置に配置された導管入口(23a)と、径方向で内側の位置における導管出口(23b)とを備え、少なくとも1つの前記出口導管(23)が、前記導管入口(23a)から前記導管出口(23b)への上向きの傾斜で配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の遠心分離機(100)。
【請求項5】
当該遠心分離機(100)は、入口(20)を不動の入口導管(7)に封止して連結するための第1の回転可能シール(15)をさらに備え、前記不動の入口導管(7)の少なくとも一部が前記回転軸(X)の周りに配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の遠心分離機(100)。
【請求項6】
前記第2の機械式密封で封止された液体出口(22)を、前記回転軸(X)の周りに配置される不動の出口導管(8)に封止して連結するための第2の回転可能シール(16)をさらに備えていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の遠心分離機(100)。
【請求項7】
交換可能な挿入体(1)の外面が前記回転可能部材(31)の支持面の中で係合させられ、それによって交換可能な前記挿入体を前記回転可能部材(31)の中で支持していることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の遠心分離機(100)。
【請求項8】
分離円板の前記積み重ね(19)が円錐台状の分離円板を備えていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の遠心分離機(100)。
【請求項9】
細胞培養混合物を分離するためのシステムであって、
- 請求項1から8のいずれか一項に記載の遠心分離機と、
- 細胞培養混合物を宿主させるための発酵器と、
- 分離される細胞培養混合物が前記遠心分離機の軸方向で下方の端における入口へと供給されるように配置される前記遠心分離機への、前記発酵器の底からの連結部と
を備えていることを特徴とする、システム。
【請求項10】
前記発酵器が発酵タンクであることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の概念は遠心分離機の分野に関する。より詳細には、本発明の概念は、細胞培養混合物を分離するための遠心分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機は、概して、液体混合物または気体混合物からの液体および/または固体の分離のために使用される。動作の間、分離されることになる流体混合物は、回転ボウルへと導入され、遠心力によって、重い粒子または水などの密度の大きい液体は回転ボウルの周辺に集まる一方で、より密度の小さい液体は回転の中心軸のより近くに集まる。これは、例えば、周辺と回転軸の近くとに配置された別々の出口を用いて、分離された分級物の回収をそれぞれ可能にする。
【0003】
国際公開第2015/181177号(特許文献1)は、発酵ブロスなどの医薬製品の遠心処理のための分離機を開示している。分離機は、回転可能な外側ドラムと、外側ドラムに配置される交換可能な内側ドラムとを備える。内側ドラムは、流動製品を浄化するための手段を備える。外側ドラムは、外側ドラムの下方に配置されるモータによって、駆動スピンドルを介して駆動される。内側ドラムは、分離機の上方の端に配置される流体連結部を有する外側ドラムを通じて、鉛直方向上向きに延びる。
【0004】
しかしながら、発酵ブロスからの細胞培養混合物などの細胞培養混合物を処理することは、例えば、哺乳類の細胞およびCHO細胞が遠心の領域の中で経験させられるせん断力に対して敏感であり得るため、細胞の過剰な破壊をもたらす可能性がある。そのため、これは分離細胞相の再使用性の低下をもたらす。したがって、細胞培養混合物を分離するための遠心分離機の向上に対する技術的な要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術の1つまたは複数の制限を少なくとも一部で克服することが本発明の目的である。具体的には、分離機において処理されている細胞を破壊する危険性を低減する、細胞培養混合物を分離するための遠心分離機を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様として、細胞培養混合物の分離のための遠心分離機であって、
不動フレームと、回転可能組立体と、回転可能組立体を回転の軸(X)の周りでフレームに対して回転させるための駆動ユニットとを備え、回転可能組立体は、分離円板の積み重ねが回転の鉛直軸(X)の周りに回転するように配置される分離空間を包囲する回転子ケーシングを備え、前記回転子ケーシングは、前記分離空間への前記哺乳類の細胞培養混合物の供給のための機械式密封で封止された入口と、分離液体相の排出のための第1の機械式密封で封止された液体出口と、分離細胞相の排出のための第2の機械式密封で封止された液体出口とをさらに備え、前記細胞相は前記液体相より大きい密度を有し、前記密封で封止された入口は、前記回転子ケーシングの第1の軸方向端に配置され、分離される細胞培養混合物が回転軸(X)において前記回転ケーシングに入るように配置され、
前記第2の機械式密封で封止された出口は、前記第1の軸方向端と反対の前記回転子ケーシングの第2の軸方向端に配置され、前記分離細胞相が回転軸(X)において排出されるように配置され、
回転可能組立体は交換可能な分離挿入体と回転可能部材とを備え、前記挿入体は前記回転子ケーシングを備え、前記回転可能部材によって支持される、遠心分離機が提供される。
【0008】
遠心分離機の不動フレームは非回転部品であり、回転可能組立体は、例えば少なくとも1つの玉軸受を用いて、フレームによって支持される。
【0009】
遠心分離機は、回転可能組立体を回転させるために配置される駆動部材をさらに備え、電気モータを備え得る、または、ベルトもしくは歯車伝動装置などの適切な伝動装置によって回転可能組立体を回転させるように配置され得る。
【0010】
回転可能組立体は、分離が起こる回転子ケーシングを備える。回転子ケーシングは、細胞培養混合物など流体混合物の分離が起こる分離空間を包囲する。回転子ケーシングは、一続きのものである回転子ケーシングとすることができ、分離相のための任意のさらなる出口がなくてもよい。したがって、一続きのものである回転子ケーシングは、例えば、分離空間の周辺に堆積させられるスラッジ相などを排出するための周辺ポートがない一続きのものであり得る。しかしながら、実施形態では、回転子ケーシングは、分離空間の周辺からの分離相の間欠的または連続的な排出のための周辺ポートを備える。
【0011】
分離空間は、回転の軸(X)を中心として配置される分離円板の積み重ねを備える。積み重ねは円錐台状の分離円板を備え得る。
【0012】
したがって、分離円板は円錐台形を有することができ、円錐台形は円錐の錐台の形を有する形を言っており、円錐の錐台の形は、細長い端または先端が除去されている円錐の形である。したがって、円錐台形は、対応する円錐の形の先端または頂点が位置させられる仮想的な頂点を有する。円錐台形の軸は、一続きのものである回転子ケーシングの回転軸と軸方向で並べられる。円錐台部分の軸は、対応する円錐形の高さの方向、または、対応する円錐形の頂点を通る軸の方向である。
【0013】
分離円板は、代替で、回転の軸の周りに配置される軸方向の円板であってもよい。
【0014】
分離円板は、例えば、ステンレス鋼など、金属を備え得る、または金属材料のものであり得る。分離円板はさらに、プラスチック材料を備え得る、または、プラスチック材料のものであり得る。
【0015】
機械式密封で封止された入口は、分離される留置を受け入れ、流体を分離空間へと案内するためのものであり、第1の機械式密封で封止された液体出口は分離液体相の排出のためのものであり、第2の機械式密封で封止された液体出口は分離細胞相の排出のためのものである。
【0016】
入口は、回転子ケーシングの下方の軸方向端などの第1の軸方向端に配置され、第2の機械式密封で封止された液体出口は、回転子ケーシングの上方の軸方向端などの反対の軸方向端に配置される。分離液体相の排出のための第1の機械式密封で封止された液体出口は、回転子ケーシングの下方の軸方向端または上方の軸方向端に配置され得る。
【0017】
機械式密封のシールは、不動部分と回転子ケーシングとの間に気密の封止を生じさせ、回転子ケーシングの外部からの空気が送り込みを汚染するのを防止するようになっているシールを言っている。そのため、回転子ケーシングは、動作の間に細胞培養混合物などの液体で完全に満たされるように配置され得る。これは、空気または自由液面が、動作中に回転子ケーシングの中に存在するものではないことを意味する。
【0018】
したがって、本明細書で使用されているように、機械式密封のシールは、半密封のシールまたは液体密封シールと比較して、完全に密封のシールである。
【0019】
本発明の第1の態様は、細胞培養混合物などのせん断に敏感な液体の分離について、細胞が分離機の回転部に径方向中心において、つまり回転軸(X)において出入りできる場合に有利であるという洞察に基づかれている。これは、分離機を出て行く分離細胞により小さい回転エネルギーを与え、したがって細胞の破壊の危険性を低下させる。したがって、細胞は、回転子ケーシングから、および、回転可能組立体から、回転軸(X)において排出される。
【0020】
「回転軸において」排出または供給される相は、回転軸を含む特定の直径内で排出または供給される相を含む。
【0021】
本発明の第1の態様の実施形態では、機械式密封で封止された出口は、分離液体相および分離細胞相を排出するために圧力を追加するためのいかなる手段もない。
【0022】
圧力を追加または上昇させるための手段は、ポンプ車、または、遠心分離機の分野において一般的に使用されているペアリングディスクなどの任意の求心ポンプであり得る。圧力を追加または上昇させるためのいかなる手段もない出口を有することは、分離細胞相を遠心分離機から排出するとき、細胞破壊の危険性をさらに低下させる。
【0023】
本発明の第1の態様の実施形態では、回転子ケーシングは、分離細胞相を分離空間から第2の機械式密封で封止された液体出口へと移送するための少なくとも1つの出口導管をさらに備え、前記導管は、前記分離空間の径方向で外側の位置から前記第2の機械式密封で封止された液体出口へと延びる。
【0024】
したがって、分離細胞相を分離空間から第2の機械式密封で封止された液体出口へと移送するために配置される少なくとも1つの出口導管があり得る。少なくとも1つの導管は、分離空間における径方向で外側の位置から重量相出口へと延び、したがって重量相出口は径方向で内側の位置にある。
【0025】
例として、導管入口は径方向で外側の位置に配置され、導管出口は径方向で内側の位置に配置され得る。さらに、少なくとも1つの出口導管は、導管入口から導管出口へと上向きの傾斜で配置され得る。
【0026】
したがって、径方向平面に対して、導管は、分離空間における導管入口から重量相出口における導管出口へと軸方向で上向きに傾斜させられ得る。これは、導管における分離細胞相の移送を容易にすることができる。
【0027】
導管入口は、分離空間において軸方向で上方の位置に配置され得る。導管入口は、分離空間がその最大の内径を有する軸方向の位置に配置され得る。
【0028】
出口導管は管であり得る。例として、回転子ケーシングによって支持される挿入体は単一の出口導管を備え得る。他の例では、挿入体は、少なくとも3つ、少なくとも5つの出口導管など、少なくとも2つのこのような出口導管を備え得る。
【0029】
例として、少なくとも1つの出口導管は、径方向平面に対して少なくとも2度の上向きの傾斜で傾斜させられる。例として、少なくとも1つの出口導管は、径方向平面に対して、少なくとも10度など、少なくとも5度の上向きの傾斜で傾斜させられ得る。
【0030】
少なくとも1つの出口導管は、分離空間における分離重量相の重量相出口への移送を容易にすることができる。
【0031】
本発明の第1の態様の実施形態では、遠心分離機は、前記入口を不動の入口導管に封止して連結するための第1の回転可能シールをさらに備え、前記不動の入口導管の少なくとも一部は回転軸(X)の周りに配置される。したがって、不動の入口導管は回転軸と並ぶことができる。
【0032】
したがって、第1の回転可能シールは機械式密封のシールとすることができ、機械式密封のシールは、入口を不動の入口導管に連結して封止するための回転可能シールである。第1の回転可能シールは、回転子ケーシングとフレームの不動部分との境界に配置でき、したがって不動部と回転可能部とを備え得る。
【0033】
したがって、不動の入口導管は、不動フレームの一部ともでき、回転軸(X)に配置される。
【0034】
第1の回転可能シールは、分離液体相を排出するための第1の機械式密封で封止された液体出口も封止する二重のシールであり得る。
【0035】
本発明の第1の態様の実施形態では、遠心分離機は、前記第2の機械式密封で封止された液体出口を、回転軸(X)の周りに配置される不動の出口導管に封止して連結するための第2の回転可能シールをさらに備える。したがって、不動の出口導管は回転軸と並ぶことができる。
【0036】
同様に、第2の回転可能シールも機械式密封のシールとすることができ、機械式密封のシールは、出口を不動の出口導管に連結して封止するための回転可能シールである。第2の回転可能シールは、回転子ケーシングとフレームの不動部分との境界に配置でき、したがって不動部と回転可能部とを備え得る。
【0037】
したがって、不動の出口導管は、不動フレームの一部ともでき、回転軸(X)に配置される。
【0038】
本発明の第1の態様の実施形態によれば、回転可能組立体は交換可能な分離挿入体と回転可能部材とを備え、前記挿入体は前記回転子ケーシングを備え、前記回転可能部材によって支持される。
【0039】
したがって、交換可能な分離挿入体は、回転可能部材へと搭載されるあらかじめ組み立てられた挿入体とすることができ、回転可能部材は、挿入体のための回転可能な支持体として機能することができる。したがって、交換可能な挿入体は容易に挿入でき、単一のユニットとしての回転可能部材から係合解除できる。
【0040】
実施形態によれば、交換可能な分離挿入体は使い捨ての分離挿入体である。したがって、挿入体は、使い捨てのために適合され、廃棄可能な挿入体であり得る。したがって、交換可能な挿入体は、医薬産業における1回の製品バッチなど、1つの製品バッチの処理のためのものであり、その後に廃棄され得る。
【0041】
交換可能な分離挿入体は、ポリマ材料を備え得る、または、ポリマ材料から成り得る。例として、回転子ケーシングおよび分離円板の積み重ねは、ポリプロピレン、プラチナ硬化シリコーン、またはBPA無しのポリカーボネートなどのポリマ材料を備え得る、または、このようなポリマ材料のものであり得る。挿入体のポリマ部品は射出成形され得る。しかしながら、交換可能な分離挿入体は、ステンレス鋼などの金属部品も備え得る。例えば、分離円板の積み重ねはステンレス鋼の円板を備え得る。
【0042】
交換可能な挿入体は、封止された無菌ユニットであり得る。
【0043】
さらに、交換可能な分離挿入体を備える回転子ケーシングは、外部の軸受によって外部だけで支持されるように配置され得る。
【0044】
さらに、交換可能な分離挿入体および回転可能部材は、外部の軸受によって支持されるように配置される任意の回転可能なシャフトがなくてもよい。
【0045】
例として、交換可能な挿入体の外面は回転可能部材の支持面の中で係合させられ、それによって前記交換可能な挿入体を前記回転可能部材の中で支持する。
【0046】
結果として、遠心分離機は、モジュール式の遠心分離機であり得る、または、基礎ユニットと、交換可能な分離挿入体を備える回転可能組立体とを備え得る。基礎ユニットは、不動フレームと、回転可能組立体を回転の軸の周りで回転させるための駆動ユニットとを備え得る。回転可能組立体は、第1の軸方向端と第2の軸方向端とを有してもよく、少なくとも径方向において内側空間を画定でき、内側空間は、交換可能な分離挿入体の少なくとも一部を受け入れるように構成される。回転可能組立体は、第1の軸方向端において内側空間への第1の貫通開口が設けられ、第1の貫通開口を通じて延びるように交換可能な分離挿入体の第1の流体連結部のために構成され得る。回転可能組立体は、第2の軸方向端において内側空間への第2の貫通開口も備え、第2の貫通開口を通じて延びるように交換可能な分離挿入体の第2の流体連結部のために構成され得る。
【0047】
本発明の第2の態様として、細胞培養混合物を分離するためのシステムであって、
- 本発明の第1の態様による遠心分離機と、
- 細胞培養混合物を宿主させるための発酵器と、
- 分離される細胞培養混合物が遠心分離機の軸方向で下方の端における入口へと供給されるように配置される遠心分離機への、発酵器の底からの連結部と
を備えるシステムが提供される。
【0048】
発酵器は発酵タンクであり得る。
【0049】
連結部は、管またはチューブなどの任意の適切な連結部であり得る。連結部は、発酵器と遠心分離機との間の直接的な連結部であり得る。
【0050】
さらなる態様として、細胞培養混合物を分離するための方法であって、
a)先の第1の態様による遠心分離機を提供するステップと、
b)分離される前記細胞培養混合物を前記入口に供給するステップと、
c)分離細胞相を前記第2の機械式密封で封止された液体出口を介して排出し、液体相を前記第1の密封で封止された液体出口を介して排出するステップと
を含む方法が提供され得る。
【0051】
さらなる態様は、先の態様と同じまたは対応する利点を概して呈することができる。さらなる態様に関連して使用される用語および定義は、先の第1の態様に関連して検討されているものと同じである。
【0052】
例として、細胞培養混合物はせん断に敏感な細胞を含み得る。
【0053】
せん断に敏感な細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞および哺乳類の細胞から選択され得る。
【0054】
本発明の概念の上記および追加の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照しつつ、以下の例示の非限定的な詳細な記載を通じてより良く理解される。図面では、他に述べられていない場合、同様の符号が同様の要素のために使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】細胞培養混合物を分離するための遠心分離機のための交換可能な分離挿入体を形成する回転子ケーシングの概略的な外部の側面図である。
【
図2】
図1に示されるような交換可能な分離挿入体を備える遠心分離機の概略的な断面図である。
【
図3】
図1に示されるような交換可能な分離挿入体の概略的な断面図である。
【
図4】細胞培養混合物の分離のための遠心分離機の概略図である。
【
図5】細胞培養混合物を分離するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
上記では、本発明の概念が、限られた数の例を参照して主に記載されている。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上記に開示されているもの以外の例が、添付の特許請求の範囲によって定められているように、本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
【0057】
図1は、本開示の遠心分離機において使用され得る交換可能な分離挿入体1の形態で回転可能部材の外部の側面図を示している。
【0058】
挿入体1は、回転軸(X)によって定められる軸方向において見られるように、第1の下方の不動部分3と第2の上方の不動部分4との間に配置された回転子ケーシング2を備える。第1の不動部分3は挿入体1の下方の軸方向端5にあり、第2の不動部分4は挿入体1の上方の軸方向端6に配置されている。
【0059】
送り込み入口は、この例では軸方向の下方の端5に配置されており、送り込みが、第1の不動部分3に配置された不動の入口導管7を介して供給される。不動の入口導管7は回転軸(X)に配置されている。第1の不動部分3は、分離液体軽量相とも呼ばれるより小さい密度の分離液体相のための不動の出口導管9をさらに備える。
【0060】
液体重量相とも呼ばれるより大きい密度の分離相の排出のために、上方の不動部分4に配置されている不動の出口導管8がある。したがって、この実施形態では、送り込みは、下方の軸方向端5を介して供給され、分離軽量相は下方の軸方向端5を介して排出され、分離重量相は上方の軸方向端6を介して排出される。
【0061】
回転子ケーシング2の外面は第1の円錐台部分10と第2の円錐台部分11とを備える。第1の円錐台部分10は軸方向において第2の円錐台部分11の下方に配置されている。外面は、第1の円錐台部分10および第2の円錐台部分11の仮想的な頂点が両方とも、回転軸(X)に沿う同じ方向を指すように配置されており、この方向は、ここでは挿入体1の下方の軸方向端5に向かう軸方向下向きである。
【0062】
さらに、第1の円錐台部分10は、第2の円錐台部分11の開く角度より大きい開く角度を有する。第1の円錐台部分の開く角度は、回転子ケーシング2の分離空間17の中に含まれる分離円板の積み重ねの開く角度と実質的に同じであり得る。第2の円錐台部分11の開く角度は、回転子ケーシング2の分離空間の中に含まれる分離円板の積み重ねの開く角度より小さくなり得る。例として、第2の円錐台部分11の開く角度は、外面が回転軸と5度未満などの10°未満である角度αを形成するようにされ得る。下向きを指す仮想的な頂点を伴う2つの円錐台部分10および11を有する回転子ケーシング2は、挿入体1を回転可能部材30へと上方から挿入させることができる。したがって、外面の形は、外側の回転可能部材30との適合性を増加させ、回転可能部材31は、第1の円錐台部分10と第2の円錐台部分11との係合など、回転子ケーシング2の外面の全部または一部と係合することができる。
【0063】
回転子ケーシング2を第1の不動部分3から分離する下方封止筐体12の中に配置される下方回転可能シールと、回転子ケーシング2を第2の不動部分4から分離する上方封止筐体13の中に配置される上方回転可能シールとがある。下方封止筐体12の中の封止境界面の軸方向位置は符号15cで印されており、上方封止筐体13の中の封止境界面の軸方向位置は符号16cで印されている。したがって、第1の回転可能シール15および第2の回転可能シール16のこのような不動部15a、16aと回転可能部15b、16bとの間に形成される封止境界面は、回転子ケーシング2と挿入体1の第1の不動部分3および第2の不動部分4との間の境界面または境界も形成している。
【0064】
冷却液体などの封止流体を第1の回転可能シール15へと供給および引き込むための封止流体入口15dおよび封止流体出口15eと、同様に、冷却液体などの封止流体を第2の回転可能シール16へと供給および引き込むための封止流体入口16dおよび封止流体出口16eとがさらにある。
【0065】
図1には、回転子ケーシング2の中に包囲された分離空間17の軸方向位置も示されている。この実施形態では、分離空間は、回転子ケーシング2の第2の円錐台部分11の中に実質的に位置決めされている。分離空間17の重量相回収空間(17c)が第1の下方の軸方向位置17aから第2の上方の軸方向位置17bまで延びている。分離空間17の内周面は、角度αと実質的に同じである回転軸(X)との角度、つまり、第2の円錐台部分11の外面と回転軸(X)との間の角度を形成することができる。したがって、分離空間17の内径は第1の軸方向位置17aから第2の軸方向位置17bへと連続的に増加し得る。角度αは5度未満などの10度未満であり得る。
【0066】
交換可能な分離挿入体1は、操作者による挿入体1の操縦性および取り扱い性を高めるコンパクトな形態を有する。例として、挿入体の下方の軸方向端5における分離空間17と第1の不動部分3との間の軸方向の距離は、15cm未満などの20cm未満であり得る。この距離は
図1においてd1で印されており、この実施形態では、分離空間17の重量相回収空間(17c)の最も下の軸方向位置17aから第1の回転可能シール15の封止境界面15cまでの距離である。さらなる例として、分離空間17が円錐台状の分離円板の積み重ねを備える場合、積み重ねにおいて軸方向で最も下にあり、第1の不動部分3に最も近い円錐台状の分離円板は、5cm未満などの10cm未満である第1の不動部分3からの軸方向の距離d2に仮想的な頂点18が位置決めされた状態で配置され得る。距離d2は、この実施形態では、軸方向で最も下の分離円板の仮想的な頂点18から第1の回転可能シール15の封止境界面までの距離である。
【0067】
図2は、遠心分離機100の中に挿入されている交換可能な分離挿入体1の概略的な図面を示しており、遠心分離機100は、不動フレーム30と、上玉軸受33aおよび下玉軸受33bの形態での支持手段を用いてフレームによって支持されている回転可能部材31とを備えている。ここでは、駆動ベルト32を介して回転の軸31の周りに回転可能部材31を回転させるように配置されている駆動ユニット34もある。しかしながら、電気的な直接の駆動など、他の駆動手段が可能である。
【0068】
交換可能な分離挿入体1は、回転可能部材31の中に挿入および固定されている。したがって、回転可能部材31は、回転子ケーシング2の外面と係合するための内面を備える。上玉軸受33aおよび下玉軸受33bは両方とも、回転子ケーシング2の外面の円筒部分14が軸受平面において軸方向に位置決めされるように、回転子ケーシング2の中で分離空間17の軸方向で下方に位置決めされている。したがって、円筒部分14は、少なくとも1つの大きな玉軸受の中への挿入体の搭載を容易にする。上玉軸受33aおよび下玉軸受33bは、少なくとも120mmなど、少なくとも80mmの内径を有し得る。
【0069】
さらに、
図2において見られるように、挿入体1は、最も下の分離円板の仮想的な頂点18が、軸方向において、上玉軸受33aおよび下玉軸受33bの少なくとも1つの軸受平面に、またはその下方に位置決めされるように、回転可能部材31の中で位置決めされている。
【0070】
さらに、分離挿入体は、挿入体1の軸方向の下方部5が、軸方向において、支持手段、つまり、上玉軸受33aおよび下玉軸受33bの下方に位置決めされるように、分離機100の中に搭載されている。回転子ケーシング2は、この例では、回転可能部材31によって外部でだけ支持されるように配置されている。
【0071】
分離挿入体1は、挿入体1の上部および下部において入口および出口への容易なアクセスを可能とするように分離機100の中にさらに搭載される。
【0072】
図3は、本開示の交換可能な分離挿入体1の実施形態の断面の概略図を示している。挿入体1は、回転軸(X)の周りに回転するように配置され、第1の下方の不動部分3と第2の上方の不動部分4との間に配置される回転子ケーシングを備える。したがって、第1の不動部分3は挿入体の軸方向の下方の端5に配置されており、第2の不動部分4は挿入体1の軸方向の上方の端6に配置されている。
【0073】
送り込み入口20が、この例では軸方向の下方の端5に配置されており、送り込みが、第1の不動部分3に配置された不動の入口導管7を介して供給される。不動の入口導管7は、プラスチック管などの管を備え得る。
【0074】
不動の入口導管7は、分離される材料が回転中心において供給されるように回転軸(X)に配置されている。送り込み入口20は、分離される流体混合物を受け入れるためのものである。
【0075】
送り込み入口20は、この実施形態では、入口錐状部10aの頂部に配置されており、入口錐状部10aは、挿入体1の外側において、第1の円錐台状の外面10も形成している。入口24からの流体混合物を分離空間17へと分配するために送り込み入口に配置されたさらなる分配器24がある。
【0076】
分離空間17は、第1の下方の軸方向位置17aから第2の上方の軸方向位置17bまで軸方向で延びている外側の重量相回収空間17cを備える。分離空間は、積み重ね19の分離円板同士の間の隙間によって形成される径方向で内側の空間をさらに備える。
【0077】
分配器24は、この実施形態では、回転軸(X)において、挿入体1の下方の端5を向いて指す頂点を伴う円錐状の外面を有する。分配器24の外面は、入口錐状部10aと同じ円錐角を有する。分離される流体混合物を、入口における軸方向で下方の位置から、分離空間17における軸方向で上方の位置まで軸方向で上向きに連続的に案内するための、外面に沿って延びる複数の分配通路24aがさらにある。この軸方向で上方の位置は、分離空間17の重量相回収空間17cの第1の下方の軸方向位置17aと実質的に同じである。分配通路24aは、例えば、真っ直ぐな形または湾曲した形を有し、そのため、分配器24の外面と入口錐状部24aとの間で延び得る。分配通路24は、軸方向で下方の位置から軸方向で上方の位置まで分岐し得る。さらに、分配通路24は、軸方向で下方の位置から軸方向で上方の位置まで延びる管の形態であり得る。
【0078】
分離空間17において同軸に配置される円錐台状の分離円板の積み重ね19がさらにある。積み重ね19における分離円板は、仮想的な頂点が分離挿入体の軸方向で下方の端5を指す状態、つまり、入口20に向けて指す状態で配置されている。積み重ね19における最も下の分離円板の仮想的な頂点18は、挿入体1の軸方向の下方の端5における第1の不動部分3から10cm未満である距離に配置され得る。積み重ね19は、少なくとも40枚の分離円板など、少なくとも50枚の分離円板など、少なくとも100枚の分離円板など、少なくとも150枚の分離円板など、少なくとも20枚の分離円板を備え得る。明確性の理由のため、数枚だけの円板が
図1では示されている。この例では、分離円板の積み重ね19は分配器24の上に配置されており、したがって、分配器24の円錐状の外面は、円錐台状の分離円板の円錐部分と同じ角度を回転軸(X)に対して有し得る。分配器24の円錐形は、積み重ね19における分離円板の外径とおおよそ同じかまたはそれ以上の直径を有する。したがって、分配通路24aは、積み重ね19における円錐台状の分離円板の外周の径方向位置の外側である径方向位置P
1にある分離空間17における軸方向位置17aへと分離させるように流体混合物を案内するように配置され得る。
【0079】
分離空間17の重量相回収空間17cは、この実施形態では、第1の下方の軸方向位置17aから第2の上方の軸方向位置17bへと連続的に増加する内径を有する。分離空間17から分離重量相を移送するための出口導管23がさらにある。この導管23は、分離空間17の径方向で外側の位置から重量相出口22へと延びている。この例では、導管は、中心位置から径方向に外に分離空間17へと延びる単一の管の形態である。しかしながら、少なくとも3つ、少なくとも5つの出口導管23など、少なくとも2つのこのような出口導管23があり得る。したがって、出口導管23は、径方向で外側の位置に配置される導管入口23aと、径方向で内側の位置における導管出口23bとを有し、出口導管23は、導管入口23aから導管出口23bへの上向きの傾斜で配置されている。例として、出口導管は、径方向平面に対して、少なくとも5度など、少なくとも10度など、少なくとも2度の上向きの傾斜で傾斜させられ得る。
【0080】
出口導管23は、導管入口23aが分離空間17の軸方向で最も上の部分17bから分離重量相を移送するために配置されるように、分離空間17における軸方向で上方の位置に配置されている。出口導管23は、導管入口23aが、分離空間17の周辺から、つまり、分離空間17の内面において分離空間における径方向で最も外側の位置から、分離重量相を移送するために配置されるように、分離空間17へと径方向で外へさらに延びている。
【0081】
不動の出口導管23の導管出口23bは重量相出口22において途切れており、重量相出口22は、第2の上方の不動部分4に配置された不動の出口導管8に連結されている。したがって、分離重量相は、上部を介して、つまり、分離挿入体1の上方の軸方向端6において排出される。
【0082】
さらに、分離円板の積み重ね19を通じて分離空間17において径方向で内向きに通過した分離液体軽量相は、回転子ケーシング2の軸方向で下方の端に配置された液体軽量相出口21において回収される。液体軽量相出口21は、挿入体1の第1の下方の不動部分3に配置された不動の出口導管9に連結されている。したがって、分離液体軽量相は、交換可能な分離挿入体1の第1の下方の軸方向端5を介して排出される。
【0083】
第1の不動部分3に配置された不動の出口導管9と、第2の不動部分4に配置された不動の重量相導管8とは、プラスチック管などの管を備え得る。
【0084】
回転子ケーシング2を第1の不動部分3から分離する、下方封止筐体12の中に配置されている下方の回転可能シール15と、回転子ケーシングを第2の不動部分4から分離する、上方封止筐体13の中に配置されている上方の回転可能シールとがさらにある。第1の回転可能シール15および第2の回転可能シール16は密閉シールであり、したがって、機械式密封して封止された入口および出口を形成する。
【0085】
下方回転可能シール15は、いかなる追加の入口管なしで入口錐状部10aに直接的に取り付けることができ、つまり、入口は、下方の回転可能シール15の軸方向ですぐ上方の入口錐状部の頂点において形成され得る。このような配置は、大きい直径において下方の機械的シールのしっかりとした取り付けを可能にして軸方向の振れを最小限にする。
【0086】
下方の回転可能シール15は、入口20を不動の入口導管7に封止して連結し、液体軽量相出口21を不動の液体軽量相導管9に封止して連結する。したがって、下方の回転可能シール15は、同心で二重の機械的シールを形成しており、少ない部品での容易な組み立てを可能にする。下方の回転可能シール15は、挿入体1の第1の不動部分3に配置された不動部15aと、回転子ケーシング2の軸方向で下方の部分に配置された回転可能部15bとを備える。回転可能部15bは、この実施形態では、回転子ケーシング2に配置された回転可能な封止環体であり、不動部15aは、挿入体1の第1の不動部分3に配置された不動の封止環体である。回転可能な封止環体と不動の封止環体とを互いと係合させ、それによって少なくとも1つの封止境界面15cを環体同士の間に形成するために、少なくとも1つのバネなどのさらなる手段(図示されていない)がある。形成された封止境界面は、回転の軸(X)に対する径方向平面と実質的に平行に延びる。したがって、この封止境界面15cは、回転子ケーシング2と挿入体1の第1の不動部分3との間に境界または境界面を形成する。冷却液体、緩衝液体、またはバリア液体などの液体を、下方回転可能シール15に供給するために、第1の不動部分3に配置されるさらなる連結部15dおよび15eがある。この液体は、封止環体同士の間の境界面15cに供給され得る。
【0087】
同様に、上方回転可能シール16は、重量相出口22を不動の出口導管8に封止して連結する。上方の機械的なシールも同心で二重の機械的シールであり得る。上方回転可能シール16は、挿入体1の第2の不動部分4に配置された不動部16aと、回転子ケーシング2の軸方向で上方の部分に配置された回転可能部16bとを備える。回転可能部16bは、この実施形態では、回転子ケーシング2に配置された回転可能な封止環体であり、不動部16aは、挿入体1の第2の不動部分4に配置された2つの不動の封止環体である。回転可能な封止環体と不動の封止環体とを互いと係合させ、それによって少なくとも1つの封止境界面16cを環体同士の間に形成するために、少なくとも1つのバネなどのさらなる手段(図示されていない)がある。形成された封止境界面16cは、回転の軸(X)に対する径方向平面と実質的に平行に延びる。したがって、この封止境界面16cは、回転子ケーシング2と挿入体1の第2の不動部分4との間に境界または境界面を形成する。冷却液体、緩衝液体、またはバリア液体などの液体を、上方回転可能シール16に供給するために、第2の不動部分4に配置されるさらなる連結部16dおよび16eがある。この液体は、封止環体同士の間の境界面16cに供給され得る。
【0088】
さらに、
図3は、移送状態での交換可能な分離挿入体を示している。移送の間に第1の不動部分3を回転子ケーシング2に固定するために、下方の回転可能シール15を回転子ケーシング2の円筒部分14に軸方向で固定するスナップ留めの形態での下方固定手段25がある。交換可能挿入体1を回転組立体に搭載すると、スナップ留め25は、回転子ケーシング2が下方の回転可能シールにおいて軸(X)の周りに回転可能となるように解放され得る。
【0089】
さらに、移送の間、回転子ケーシング2に対する第2の不動部分4の位置を固定する上方固定手段27a、27bがある。上方固定手段は、第2の不動部分4における係合部材27bと係合し、それによって第2の不動部分4の軸方向の位置を固定する回転子ケーシング2に配置された係合部材27aの形態である。さらに、回転子ケーシング2および第2の不動部分4との封止する当接で移送または設定の位置に配置されるスリーブ部材26がある。スリーブ部材26は、さらには弾性であり、ゴムスリーブの形態であり得る。スリーブ部材は、回転子ケーシング2を第2の不動部分4に対して回転させることができるように、移送または設定の位置から取り外し可能である。したがって、スリーブ部材26は、回転子ケーシング2に接して径方向に封止し、設定または移送の位置において第2の不動部分4に接して径方向に封止する。交換可能な挿入体1を回転組立体において搭載すると、スリーブ部材は取り外しでき、係合部材27aと27bとの間の軸方向の空間が、第2の不動部分4に対する回転子ケーシング2の回転を許容するために作り出され得る。
【0090】
下方および上方の回転可能シール15、16は機械的シールであり、入口と2つの出口とを密封で封止する。
【0091】
動作の間、回転可能部材31へと挿入される交換可能な分離挿入体1は回転軸(X)の周りで回転させられる。分離される液体混合物が、不動の入口導管7を介して挿入体の入口20へと供給され、次に、分配器24の案内通路24によって分離空間17へと案内させられる。したがって、分離される液体混合物は、入口導管7から分離空間17への上向きの経路のみに沿って案内される。密度の差によって、液体混合物は液体軽量相と液体重量相とに分離される。この分離は、分離空間17に嵌め込まれた積み重ね19の分離円板同士の間の隙間によって容易にされる。分離液体重量相は、出口導管22によって分離空間17の周辺から回収され、回転軸(X)に配置された重量相出口22を介して不動の重量相出口導管8へと押し出される。分離液体軽量相は、分離円板の積み重ね19を通じて径方向で内向きに押され、液体軽量相出口21を介して不動の軽量相導管9へと導かれる。
【0092】
結果として、この実施形態では、送り込みは、下方の軸方向端5を介して供給され、分離軽量相は下方の軸方向端5を介して排出され、分離重量相は上方の軸方向端6を介して排出される。
【0093】
さらに、先に開示されているような入口20、分配器24、分離円板の積み重ね19、および出口導管23の構成のため、交換可能な分離挿入体1は自動的に脱気させられ、つまり、回転子ケーシングの中に存在するいかなる空気も重量相出口を介して上向きおよび外に妨げられずに進まされるように、空気溜りの存在が排除または低減させられる。したがって、静止しているとき、空気溜りはなく、挿入体1が送り込み入口を通じて上まで満たされる場合、すべての空気は重量相出口22を通じて放出され得る。これは、分離される液体混合物、または、液体混合物のための緩衝流体が挿入体1の中に存在するとき、回転子ケーシングの静止および回転子ケーシングの回転の開始のときに分離挿入体1を満たすことを容易にもする。
【0094】
同じく
図3において見られるように、交換可能な分離挿入体1はコンパクトな設計を有する。例として、積み重ね19における最も下の分離円板の仮想的な頂点18との間の軸方向の距離は、第1の不動部分3から、5cm未満などの10cm未満とすることができ、つまり、下方の回転可能シール15の封止境界面15cから、5cm未満などの10cm未満とすることができる。
【0095】
さらに、第1の回転可能シールの回転可能部は、回転子ケーシングの軸方向で下方の部分に直接的に配置され得る。
【0096】
図4は、細胞培養混合物を分離するための遠心分離機100を示している。分離機100は、フレーム30と、下軸受33bおよび上軸受33aにおいてフレーム30によって回転可能に支持される中空スピンドル40と、回転子ケーシング2を有する回転可能部材1とを備える。回転子ケーシング2は、回転の軸(X)の周りでスピンドル40と一体に回転するために、スピンドル40の軸方向で上方の端に隣接させられている。回転子ケーシング2は分離空間17を包囲しており、分離空間17では、分離円板の積み重ね19が、処理される細胞培養混合物の効果的な分離を達成するために配置されている。積み重ね19の分離円板は、仮想的な頂点が軸方向上向きを指す状態での円錐台形を有し、分離表面を大きくした挿入体の例である。積み重ね19は、中心において回転子ケーシング2と同軸に嵌め込まれている。
図4では、数枚だけの分離円板が示されている。積み重ね19は、例えば、200枚超の分離円板など、100枚超の分離円板を含み得る。
【0097】
回転子ケーシング2は、分離液体軽量相の排出のための機械式密封で封止された液体出口21と、分離液体軽量相より大きい密度の細胞相の排出のための重量相出口22とを有する。
【0098】
したがって、液体軽量相は、発酵の間に細胞によって発現させられた細胞外の生体分子を含み得る。
【0099】
開示されている実施形態では、分離空間17から分離重量相を移送するための管の形態での単一の出口導管23がある。この導管23は、分離空間17の径方向で外側の位置から重量相出口22へと延びている。導管23は、径方向で外側の位置に配置された導管入口23aと、径方向で内側の位置に配置された導管出口23bとを有する。さらに、出口導管23は、径方向平面に対して導管入口23aから導管出口23bへと上向きの傾斜で配置されている。他の例では、回転子ケーシングは、少なくとも3つ、少なくとも5つの出口導管23など、少なくとも2つのこのような出口導管23を備え得る。
【0100】
処理される細胞培養混合物の分配器24を介した前記分離空間17への供給のための、機械式密封して封止された入口20もある。入口20は、この実施形態では、スピンドル40を通って延びる中心ダクト41に連結されており、したがって、スピンドル40は中空の管状の部材の形態を取っている。細胞培養混合物を底から導入することは、細胞培養の緩やかな加速を与える。スピンドル40は、密閉シール15を介して分離機100の底の軸方向端において不動の入口管7にさらに連結されており、そのため、分離される細胞培養混合物は、例えばポンプを用いて、中心ダクト41へと移送され得る。分離液体軽量相は、この実施形態では、前記スピンドル40における環状の外側ダクト42を介して排出される。結果として、より小さい密度の分離液体相は、分離機100の底を介して排出される。
【0101】
第1の機械式密封のシール15が、不動の入口管7に中空スピンドル40を封止するために底端に配置されている。密封のシール50は、スピンドル40の底端と不動の管7とを取り囲む環状のシールである。第1の密封のシール15は、入口20を不動の入口管7に対して封止し、液体軽量相出口21を不動の出口管9に対して封止する同心の二重のシールである。分離機100の上部において重量相出口22を不動の出口管8に対して封止する第2の機械式密封のシール16もある。
【0102】
図4において見られるように、入口20、および細胞相出口22、ならびに、分離細胞相を排出するための不動の出口管8は、分離される細胞培養混合物が、矢印「A」によって指示されているように回転軸(X)において前記回転子ケーシング2に入り、分離細胞相が、矢印「B」によって指示されているように回転軸(X)において排出されるように、回転軸(X)の周りにすべて配置されている。排出された液体軽量相は、矢印「C」によって指示されているように、遠心分離機100の底端において排出される。
【0103】
遠心分離機100には駆動モータ34がさらに設けられている。このモータ34は、例えば、不動の要素と回転可能な要素とを備えることができ、回転可能な要素は、スピンドル40を包囲しており、動作中に駆動トルクをスピンドル40に伝え、延いては回転子ケーシング2に伝えるように、スピンドル40に連結されている。駆動モータ34は電気モータであり得る。さらに、駆動モータ34は変速手段によってスピンドル40に連結され得る。変速手段は、ピニオンと、駆動トルクを受けるためにスピンドル40に連結された要素とを備えるウォームギヤの形態であり得る。変速手段は、代替で、プロペラシャフト、駆動ベルトなどの形態を取ってもよく、駆動モータ34は、代替でスピンドル40に直接的に連結されてもよい。
【0104】
図4における分離機の動作の間、回転可能部材1と、したがって回転子ケーシング2とは、駆動モータ34からスピンドル40へと伝えられるトルクによって回転させられる。スピンドル40の中心ダクト41を介して、分離される細胞培養混合物は入口20を介して分離空間17へと持っていかれる。入口20と分離円板の積み重ね19とは、細胞培養混合物が分離円板の積み重ね19の外径にある径方向の位置、その外径に向かう径方向の位置、またはその外径の径方向で外側にある径方向の位置において、分離空間17に入る。
【0105】
しかしながら、分配器24は、例えば、分配器および/または分離円板の積み重ねにおける軸方向の分配開口によって、分離円板の積み重ねの中にある径方向位置において、分離される液体または流体を分離空間へと供給するように配置されてもよい。このような開口は、積み重ねの中に軸方向の分配通路を形成することができる。
【0106】
入口20の機械的な密封の種類において、液体材料の加速は、小さい半径において開始させられ、液体が入口を離れ、分離空間17へ入る間に徐々に増加させられる。分離空間17は、動作の間に液体で完全に満たされるように意図されている。原理的に、これは、好ましくは空気がない面または液体のない面が、回転子ケーシング2の中に存在するように意味されていることを意味する。しかしながら、細胞培養混合物は、回転子がその動作速度ですでに運転しているとき、または、静止しているとき、導入され得る。細胞培養混合物は回転子ケーシング2へと連続的に導入され得る。
【0107】
密度の差によって、細胞培養混合物は液体軽量相とより大きい密度の細胞相とに分離される。この分離は、分離空間17に嵌め込まれた積み重ね19の分離円板同士の間の隙間によって容易にされる。分離細胞相は、導管23によって分離空間17の周辺から回収され、回転軸(X)に配置された出口22を通じて押し出される一方で、分離液体軽量相は、積み重ね19を通じて径方向で内向きに押し出されてから、スピンドル40における環状の外側ダクト42を通じて導かれる。
【0108】
図5は、細胞培養混合物を分離するためのシステム300の概略図である。システムは、細胞培養混合物を含むように配置される発酵タンク200を備える。発酵タンク200は、軸方向で上方の部分と、軸方向で下方の部分200aとを有する。発酵は、例えば、哺乳類の細胞培養混合物からの抗体などの細胞外の生体分子の発現のためであり得る。発酵の後、細胞培養混合物は、第1の態様に従って、および/または、
図1~
図3との関連で検討されたような遠心分離機100において分離される。
図5において見られるように、発酵タンク200の底は、連結部201を介して分離機100の底へと連結されており、これは、システム300の据付面積および複雑性を低下させることができる。連結部201は、直接的な連結部、または、タンクなどの任意の他の処理機器を介しての連結部であり得る。したがって、連結部201は、矢印「A」によって指示されているように、発酵タンク200の軸方向で下方の部分200aから遠心分離機100の軸方向で下方の端における入口への細胞培養混合物の供給を可能にする。分離の後、より大きい密度の分離細胞相は、矢印「B」によって指示されているように、分離機の上部において排出され、発現した生体分子を含むより小さい密度の分離液体軽量相は、矢印「C」によって指示されているように、分離機100の底における液体軽量相出口を介して排出させられる。分離細胞相は、例えば発酵タンク200における後の発酵処理における再使用のためのタンク203に排出され得る。分離細胞相は、連結部202によって指示されているように、分離機100の送り込み入口へとさらに再循環されてもよい。分離液体軽量相は、発現した生体分子の後の精製のためのさらなる処理機器に排出されてもよい。
【0109】
上記では、本発明の概念が、限られた数の例を参照して主に記載されている。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上記に開示されているもの以外の例が、添付の特許請求の範囲によって定められているように、本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 交換可能な分離挿入体
2 回転子ケーシング
3 第1の不動部分
4 第2の不動部分
5 第1の軸方向端、下方の軸方向端、軸方向の下方の端
6 第2の軸方向端、上方の軸方向端、軸方向の上方の端
7 不動の入口導管、不動の管、不動の入口管
8 不動の出口導管、不動の重量相出口導管、不動の出口管
9 不動の出口導管、不動の軽量相導管、不動の出口管
10 第1の円錐台部分、第1の円錐台状の外面
10a 入口錐状部
11 第2の円錐台部分
12 下方封止筐体
13 上方封止筐体
14 円筒部分
15 第1の回転可能シール、下方回転可能シール、第1の機械式密封のシール
15a、16a 不動部
15b、16b 回転可能部
15c、16c 封止境界面の軸方向位置、封止境界面
15d、16d 封止流体入口、連結部
15e、16e 封止流体出口、連結部
16 第2の回転可能シール、第2の機械式密封のシール、上方回転可能シール
17 分離空間
17a 第1の下方の軸方向位置、最も下の軸方向位置
17b 第2の上方の軸方向位置、軸方向で最も上の部分
17c 重量相回収空間
18 仮想的な頂点
19 積み重ね
20 送り込み入口、機械式密封で封止された入口
21 液体軽量相出口、液体出口、第1の機械式密封で封止された液体出口
22 重量相出口、第2の機械式密封で封止された液体出口
23 不動の出口導管
23a 導管入口
23b 導管出口
24 分配器
24a 分配通路
25 下方固定手段、スナップ留め
26 スリーブ部材
27a、27b 上方固定手段、係合部材
30 不動フレーム
31 回転可能部材
32 駆動ベルト
33a 上玉軸受、上軸受
33b 下玉軸受、下軸受
34 駆動ユニット、駆動モータ
40 中空スピンドル
41 中心ダクト
42 環状の外側ダクト
100 遠心分離機
101 回転可能組立体
200 発酵タンク
200a 軸方向で下方の部分
201、202 連結部
203 タンク
300 システム
d1、d2 距離
P1 径方向位置
X 回転軸、回転の軸、回転の鉛直軸
α 角度