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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】印刷システム、及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20221101BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G06F3/12 336
G06F3/12 303
G06F3/12 387
B41J29/38 201
B41J29/38 203
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021542526
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2020051601
(87)【国際公開番号】W WO2020152257
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】1900987.7
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】599041075
【氏名又は名称】キヤノン オイローパ エヌ.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユステール, カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ティクラー, クリス
(72)【発明者】
【氏名】ウェストラ, レックス-ジャン
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-14954(JP,A)
【文献】特開2011-159023(JP,A)
【文献】特開2018-60256(JP,A)
【文献】特開2016-143164(JP,A)
【文献】特開2004-5176(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0199640(US,A1)
【文献】特開2016-110409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/09- 3/12
B41J 5/00- 5/52
B41J 21/00-21/18
B41J 29/00-29/70
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/36
G03G 21/00-21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の物理的位置および第2の物理的位置のそれぞれにおいて、クライアントコンピュータから印刷するための印刷システムであって、前記印刷システムは、
前記クライアントコンピュータと、
前記第1の物理的位置の内部ネットワーク内で提供されるプリントサーバと、
前記第1の物理的位置及び前記第2の物理的位置のそれぞれの位置でインターネットを介してアクセスされるように構成されるクラウドサービスと、
前記第1の物理的位置の前記内部ネットワーク上に設けられた第1のプリンタと、
前記第2の物理的位置の内部ネットワーク上に設けられた第2のプリンタと
を備え、
前記クライアントコンピュータは、
前記クライアントコンピュータが前記第1の物理的位置で前記内部ネットワークに接続されているか、又は前記第2の物理的位置で内部ネットワークに接続されているかを識別するように構成される識別手段と、
前記クラウドサービスから設定情報を要求するように構成される接続手段であって、前記要求は、前記識別手段によって識別された位置情報を含む、前記接続手段と、
前記クライアントコンピュータを設定する前記クラウドサービスから設定情報を受信するように構成される受信手段であって、
前記識別手段が、前記クライアントコンピュータが前記第1の物理的位置で前記内部ネットワークに接続されていることを識別する場合、印刷するための印刷データを前記プリントサーバに送信し、
前記識別手段が、前記クライアントコンピュータが前記第2の物理的位置にある前記内部ネットワーク上にあることを識別する場合、動作を実行し、前記動作は、
印刷するためのプリンタによる後続の検索のために前記印刷データを前記クライアントコンピュータにローカルに保存し、後続の印刷のために前記クライアントコンピュータから前記第2のプリンタに印刷ジョブを送信することと、
印刷するためのプリンタによる後続の検索のため、前記印刷ジョブを前記クライアントコンピュータから前記クラウドサービスに送信することとのうちの1つである、前記受信手段と
を備える、印刷システム。
【請求項2】
前記プリントサーバ及び前記クラウドサービスの各々がユーザ認証機能を含み、前記プリントサーバと前記クラウドサービスとの間に接続が構成され、少なくとも1人の登録ユーザが、前記第1の物理的位置で印刷する際には前記プリントサーバの機能にアクセスできるように、前記第2の物理的位置で印刷する際には前記クラウドサービスの機能にアクセスできるように、登録されたユーザに関する情報は前記プリントサーバの前記ユーザ認証機能と前記接続を介した前記クラウドサービスの前記ユーザ認証機能との間で同期される、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記識別手段が前記クライアントコンピュータが前記第2の物理的位置にある前記内部ネットワーク上にあることを識別した場合、前記受信した設定情報は、前記クラウドサービスに前記印刷ジョブに関するメタデータを送信して前記クラウドサービスに前記印刷ジョブを登録するように前記クライアントコンピュータを設定する、請求項1または2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記第2のプリンタは前記第2のプリンタにログインするユーザに関連する印刷ジョブのリストを前記クラウドサービスから検索し、前記検索されたリストからユーザが選択した印刷ジョブを、前記印刷ジョブが記憶された前記クライアントコンピュータから検索して印刷するように構成される、請求項3に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記第1のプリンタが、ユーザが前記第1のプリンタにログインすると、前記ログインしたユーザに関連する印刷ジョブのリストを前記プリントサーバから検索し、前記ログインしたユーザに関連する印刷ジョブのリストを前記クラウドサービスから検索するように動作可能である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記プリントサーバおよび前記クラウドサービスは、前記クラウドサービスに記憶された印刷ジョブおよび前記プリントサーバに記憶された印刷ジョブに関するメタデータを共有するように構成され、前記クラウドサービスは、前記第2のプリンタからの要求に応じて、前記クラウドサービスに記憶されたメタデータを有する前記第2のプリンタにログインしたユーザに関連する印刷ジョブと、前記プリントサーバに記憶された前記第2のプリンタにログインした前記ユーザに関連する印刷ジョブとを含む印刷ジョブのリストを提供するように構成される、請求項2に従属する請求項3に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記クラウドサービスは、ユーザが前記印刷ジョブのリストから前記プリントサーバに記憶された印刷ジョブを選択した場合に、前記選択した印刷ジョブを前記プリントサーバから検索し、前記選択した印刷ジョブを前記第2のプリンタに送信して印刷するように構成される、請求項6に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記識別手段は、前記クライアントコンピュータから送信された1つ以上のパケットを所定のネットワーク宛先に転送するルータを識別することによって、前記クライアントコンピュータが前記第1の物理的位置で前記内部ネットワークに接続されているか、または前記第2の物理的位置で前記内部ネットワークに接続されているかを識別するように構成される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項9】
印刷システムを使用して、第1の物理的位置および第2の物理的位置のそれぞれにおいて、クライアントコンピュータから印刷する方法であって、前記印刷システムは、
前記クライアントコンピュータと、
前記第1の物理的位置の内部ネットワーク内で提供されるプリントサーバと、
前記第1の物理的位置及び前記第2の物理的位置のそれぞれの位置でインターネットを介してアクセスされるように構成されるクラウドサービスと、
前記第1の物理的位置の前記内部ネットワーク上に設けられた第1のプリンタと、
前記第2の物理的位置の内部ネットワーク上に設けられた第2のプリンタと
を備え、
前記方法は、
前記クライアントコンピュータが、前記第1の物理的位置で前記内部ネットワークに接続されているか、又は前記第2の物理的位置で内部ネットワークに接続されているかを識別することと、
前記クライアントコンピュータが、前記クラウドサービスからの設定情報を要求することであって、前記要求は前記識別するステップによって識別される位置情報を含む、ことと、
前記クライアントコンピュータを設定する前記クラウドサービスからの設定情報を受信することであって、
前記識別するステップが、前記クライアントコンピュータが前記第1の物理的位置で前記内部ネットワークに接続されていることを識別する場合、印刷するための印刷データを前記プリントサーバに送信し、
前記識別するステップが、前記クライアントコンピュータが前記第2の物理的位置にある前記内部ネットワーク上にあることを識別する場合、動作を実行し、前記動作は、
印刷のためにプリンタによって後で検索するために、前記印刷データを前記クライアントコンピュータ上のローカルに保存することと、
後続の印刷のために前記クライアントコンピュータから前記第2のプリンタへ印刷ジョブを送信することと、
印刷のためにプリンタによって後で検索するために、前記印刷ジョブを前記クライアントコンピュータから前記クラウドサービスへ送信することと、の1つを含む、受信することと
を含む、方法。
【請求項10】
クライアントコンピュータによって実行されると、前記クライアントコンピュータに請求項9に記載の方法を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システム、及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの企業や組織では、オフィスでプリンタが提供されており、ドキュメントの印刷はネットワーク経由でラップトップコンピュータから利用できる。具体的には、ユーザが例えばラップトップコンピュータのワード処理アプリケーションによって作成されたデータ(「印刷データ」)の印刷を実行するように指示すると、印刷データはネットワークを介してプリンタに送信され、その後、プリンタで印刷が実行される。
【0003】
比較的大規模な企業および組織では、複数のプリンタが設置されうる。複数のプリンタが利用可能な場合、ユーザはユーザに近い位置にあるプリンタを使用することができ、これによりユーザの利便性が向上する。さらに、複数のプリンタの1つが別のユーザによって占有されている場合、ユーザは、代替的に他のプリンタを使用することによって、自分の時間を節約することができる。
【0004】
さらに、プリントサーバを用いて複数のプリンタを管理することも知られている。このような場合、プリントサーバは、企業または組織の内部ネットワーク内に設置されてもよい。ラップトップコンピュータを操作するユーザによって印刷が指示されると、印刷データはラップトップコンピュータからプリントサーバに送信され、そこでスプールされる。そして、ユーザが所望のプリンタを操作して印刷を指示すると、スプールされた印刷データがプリントサーバから所望のプリンタに送信され、その後印刷が行われる。
【0005】
より最近の傾向は、内部サーバによって提供されていたサービスをクラウドに移動させることである。また、複数のプリンタを備えているが、内部ネットワーク内に自社のプリントサーバを設置したくない中規模企業や組織ではインターネット上でアクセス可能なクラウドサービスを利用して印刷を行うことが知られている。このようなクラウドサービスは、サードパーティのプロバイダによって提供されうる。このような場合、ラップトップコンピュータを操作するユーザによって印刷が指示されると、印刷ジョブとしてスプールされた印刷データの属性情報のみがラップトップコンピュータからクラウドサービスに送信され、印刷データ自体はラップトップコンピュータ内にスプールされる。そして、ユーザが所望のプリンタを操作して印刷を指示すると、ラップトップコンピュータから所望のプリンタに印刷データが送信され、その後印刷が行われる。
【0006】
また、企業や組織がHQ(本社)オフィスと支社オフィス(BO)を有する場合には、本社内ネットワーク内に設置されたプリントサーバを用いて本社オフィスで印刷を行い、一方で支社オフィスではクラウドサービスを用いて印刷を行ってもよい。本社オフィスでは、印刷量が多い可能性が高いため、独自のプリントサーバを持つ価値がある。一方、支社オフィスでは、印刷量が本社ほど多くないため、独自のプリントサーバを持つ価値はない。ある位置でローカル(内部)プリントサーバと、印刷データのセキュリティ要件などの別の位置でのプリントニーズをサービスするクラウド(外部)サービスとを使用することが望ましいその他の理由は多数ある。
【0007】
しかし、クラウドサービスがある位置で使用され、ローカルプリントサーバが別の位置で使用される場合には、何らかの問題が発生する可能性がある。特に、2つの位置の間を移動するユーザが印刷のために、自身のラップトップ又は他のコンピュータの設定を手動で変更したり、異なる印刷ソフトウェアの間での切り替えを手動で変更したりする必要なしに、印刷を行うことは困難である場合がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は内部ネットワーク上のプリントサーバを用いて印刷を行う第1の位置と、クラウドサービスを用いて印刷を行う第2の位置との間で、情報処理装置が移動する場合に、印刷を容易にすることにある。
【0009】
本発明の態様は、独立請求項によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、一例として説明される。
図1】印刷システムの一例を示す図である。
図2】情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】プリントサーバのハードウェア構成の例を示す図である。
図4】プリンタのハードウェア構成例を示す図である。
図5】情報処理装置のソフトウェア構成を示す図である。
図6】プリントサーバとクラウドサービス間の通信を示す図である。
図7】プリンタのソフトウェア構成を示す図である。
図8】情報処理装置とクラウドサービス及びプリントサーバの1つとの間の通信シーケンスを示す図である。
図9】プリントサーバを利用する場合の印刷方法を示すシーケンス図である。
図10】クラウドサーバを利用する場合の印刷方法を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の種々の例示的な実施形態、特徴、および態様を、図面を参照して以下に詳細に説明する。なお、以下に説明する本発明の実施の形態に係る構成は一例に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0012】
図1は、2つの地理的位置を含む印刷システムを示す。第1の位置は、組織の本社(HQ)オフィスである。第2の位置は、組織の支社オフィス(BO)である。本実施形態では、HQオフィスと支社オフィスを例に挙げて説明する。しかしながら、本発明は、本社オフィスと支社オフィスとの組み合せに限定されるものではなく、異なる印刷方法(以下でより詳細に説明する)を使用する任意の2つの位置で十分である。これは個別の内部ネットワークを有する2つの支社オフィスであってもよく、或いは同じオフィスに位置するものの個別の内部ネットワークを使用する2つの部門又は課であってもよい。
【0013】
本社オフィスには、本社内部ネットワーク110を介して互いに接続されたプリントサーバ111とプリンタ112がある。クライアントコンピュータ100は本社(HQ)内部ネットワーク110にも接続することができ、本社内部ネットワーク110を介してプリントサーバ111およびプリンタ112と通信することができる。
【0014】
支社オフィスには、BO(Branch office:支社)内部ネットワーク120に接続されたプリンタ122がある。クライアントコンピュータ100は支社内部ネットワーク120に接続することもでき、支社内部ネットワーク120を介してプリンタ122と通信することができる。図1の本社オフィスと支社オフィスとの間の矢印はクライアントコンピュータ100をこれらのオフィス間で運ぶことができ、それによって本社内部ネットワーク110と支社内部ネットワーク120との間を移動できることを示している。換言すれば、それが本社オフィスで日常的に働く従業員によって所有されている場合、当該従業員は支社オフィスを訪問し、それを支社内部ネットワーク120に接続する場合に、自身と共にクライアントコンピュータ100を持って行くことができる。同様に、支社オフィスで日常的に働いている従業員が所有している場合、当該従業員は本社を訪れて本社内部ネットワーク110に接続する場合に、クライアントコンピュータ100を自身と共に持って行くことができる。
【0015】
クライアントコンピュータ100およびプリンタ122は、クラウドサービス121と通信することもできる。支社内部ネットワーク120は、ルータ(不図示)を介してインターネットに接続される。内部ネットワーク110および120は、有線または無線ネットワークとすることができる。単に「ネットワーク」と呼ぶことも、「LAN」(ローカルエリアネットワーク)と呼ぶこともできる。
【0016】
さらに、以下でより詳細に説明するように、プリントサーバ111とクラウドサービス121は互いに通信して情報を交換する。これは、インターネットを介して行うことができる。
【0017】
図2は、クライアントコンピュータ100内に存在する選択された標準コンポーネントを示す。クライアントコンピュータ100は情報処理装置の一例であり、本実施形態では、汎用のラップトップコンピュータである。クライアントコンピュータ100は、バスを介して互いに接続された、CPU(中央処理ユニット)201と、RAM(ランダムアクセスメモリ)202と、ROM(リードオンリーメモリ)203と、キーボード204と、マウス205と、表示部206と、外部記憶装置207と、ネットワークインタフェース208とを有する。
【0018】
CPU201は、Intel(登録商標)またはAMD(登録商標)から入手可能なもののような標準プロセッサである。RAM202は従来のRAMであり、CPU201によって処理される命令の一時記憶領域として使用される。ROM203は、BIOS等のクライアントコンピュータ100によって使用されるドキュメント作成アプリケーション等の特定のアプリケーションを格納するメモリである。キーボード204およびマウス205は、従来の方法でクライアントコンピュータ100の入力デバイスを形成する。表示部206は、ユーザに出力表示を提供するためのTFTディスプレイである。外部記憶装置207は、リムーバブルUSBハードディスクドライブである。ネットワークインタフェース208は、クライアントコンピュータ100が内部ネットワーク110または120を介して通信することを可能にする標準コンポーネントのセットである。このようなクライアントコンピュータは当技術分野で既知であり、追加のコンポーネント(ビデオカードなど)または他のコンポーネントを含むことができる。
【0019】
図3は、プリントサーバ111内に存在する選択された標準コンポーネントを示す。プリントサーバ111はCPU301、RAM302、ROM303、記憶304、およびネットワークインタフェース305を有し、これらは全てバスを介して互いに接続されている。プリントサーバ111のこれらの構成要素は、複数の物理的位置に分散されるか、または単一の筐体に統合されることが可能である。
【0020】
CPU301は、Intel(登録商標)またはAMD(登録商標)から入手可能なものなどの標準的なプロセッサである。RAM302は従来のRAMであり、CPU301によって処理される命令の一時記憶領域として使用される。ROM303は、BIOSのようなプリントサーバ111によって使用される特定のアプリケーションを格納するメモリである。記憶装置304は、ハードディスクドライブである。ネットワークインタフェース305は、プリントサーバ111が内部ネットワーク110またはインターネットを介して通信することを可能にする標準コンポーネントのセットである。
【0021】
図4は、プリンタ112、122に存在する選択された標準コンポーネントを示す。プリンタ112、122は、CPU401、RAM402、ROM403、プリントユニット404、ユーザインタフェース405、カードリーダ406、およびネットワークインタフェース407を有し、これらは全てバスを介して互いに接続されている。CPU401は、Intel(登録商標)またはAMD(登録商標)から入手可能なものなどの標準プロセッサである。RAM402は従来のRAMであり、CPU401によって処理される命令の一時記憶領域として使用される。ROM403は、BIOSなどのプリンタ112、122によって使用される特定のアプリケーションを格納するメモリである。プリントユニット(印刷部)404は電子写真方式のプリンタエンジンやインクジェット方式のプリンタエンジンで実現することができ、提供されたデータに基づいて用紙等の印刷媒体に画像を印刷することができる。
【0022】
カードリーダ406は、非接触カードからユーザID情報を読み出す。読み出したIDは、プリンタ112、122を操作しているユーザを識別または認証するために用いられる。ユーザIDは、カードリーダ406の代わりにキーボードを使用することによって、プリンタ112、122に入力することができる。ユーザの認証は、各内部ネットワーク内で提供される個別に設置された認証サーバと連携して行うことができる。ネットワークインタフェース407は、プリンタ112、122が内部ネットワーク110または120を介して通信することを可能にする標準コンポーネントのセットである。
【0023】
図5は、クライアントコンピュータ100にインストールされたソフトウェアを示す。クライアントコンピュータ100は不図示のオペレーティングシステム(例えば、Windows(登録商標)またはMac OS(登録商標))のような通常のコンピュータソフトウェアを含む。さらに、クライアントコンピュータ100は、Microsoft Word(登録商標)またはPDF編集プログラムのような編集プログラム501を有する。編集プログラムは単なる一例のプログラムであり、そこから印刷したいと思われる任意のプログラムを使用することができる。クライアントコンピュータ100はさらに、ユニバーサルプリンタドライバと呼ばれるプリンタドライバ502を含む。プリンタドライバ502は、オペレーティングシステムのスプーリング機能を介して編集プログラム501から出力されるような印刷用のデータを単一のプリンタ言語に変換するように構成されている。本例では、プリンタドライバ502が印刷ジョブの印刷データをPCLプリンタ言語(Printer Command Language)に変換するように構成されている。ただし、別のプリンタ言語を使用することもできる。プリンタドライバ502によって使用されるプリンタ言語は、異なるプリンタ言語を使用するプリンタのモデルが異なるにもかかわらず、印刷データの送信先のプリンタタイプによって変わることはない。ユニバーサルプリンタドライバは、印刷待ちのスプールジョブのキュー504を含む。
【0024】
クライアントコンピュータ100にはさらに、「スマートクライアント」と呼ばれるプログラム503がインストールされている。スマートクライアント503は、印刷ジョブスプーリング、印刷ジョブの属性情報の記憶、およびプリンタへの印刷ジョブリストの提供などの典型的なプリントサーバタスクを引き受ける。後に詳細に説明するように、スマートクライアント503は、クライアントコンピュータ100の印刷動作を制御するように構成される。
【0025】
図6は、クラウドサービス121とプリントサーバ111との間の通信を示す。前述したように、クラウドサービス121とプリントサーバ111との間には情報601の交換が存在する。特に、プリントサーバ111が本社オフィスに設置されている時点では、プリントサーバ111はクラウドサービス121への接続で構成されている。プリントサーバ111はユーザアカウント(例えば、XYZ社)によってクラウドサービス121に登録されている。その後、情報601は、プリントサーバ111とクラウドサービス121との間で定期的に同期される。
【0026】
図6は、プリントサーバ111とクラウドサービス121との間で同期される情報601を示す。情報601は図1に示す印刷システムの登録ユーザの識別情報(アイデンティティ)である。印刷システムにおける登録ユーザのアイデアは印刷分野において知られており、印刷システムの認証機能内に登録されているユーザから構成されている。登録ユーザには、印刷システム内での印刷、スキャン、又はその他の操作の許可など、異なる権限を有する場合がある。全てのユーザが同じ権限を有するわけではない。
【0027】
ユーザの識別情報と許可情報は、クラウドサービス121とプリントサーバ111との間でも共有/同期される。その結果、登録ユーザは、クラウドサービス121およびプリントサーバ111の各々にログインすることができる。さらに、この同期により、管理者によって許可または登録されたユーザの追加/除去に対して行われた変更は、クラウドサービス121およびプリントサーバ111において最新の状態に保たれる。同期は、決定されたスケジュールに従って、クラウドサービス121またはプリントサーバ111のいずれかで、または他の方法によって、データの変化を検出すると、実行されてもよい。
【0028】
登録ユーザの識別情報に加えて、ユーザの許可情報(例えば、片面/両面印刷、カラー/モノクロ印刷の能力などの印刷許可)、ユーザの印刷履歴に関する情報(例えば、ユーザによって印刷されたボリュームなど)、およびコストセンタ情報(特定の印刷またはスキャン動作に対してユーザによって割り当てられたコストセンタ情報)が、プリントサーバ111とクラウドサービス121との間で同期されうる。
【0029】
図6はクラウドサービス121上のセントラルサービスおよびユーザアクセス機能605と、プリントサーバ111上のセントラルサービスおよびユーザアクセス機能606とを示す(各々は例示の便宜上、単一のセントラルサービス/ユーザアクセスブロックで示されている)。図8に関連してより詳細に説明されるように、クラウドサービス121のセントラルサービスおよびプリントサーバ111のセントラルサービスは、クライアントコンピュータ100のスマートクライアント503に設定情報を提供するように構成される。ユーザアクセス機能には、上記の登録ユーザの識別情報と印刷許可情報を記憶したデータベースが含まれる。クラウドサービス121にアクセスする要求がクライアントコンピュータ100から受信されると、ユーザアクセス機能605は受信したユーザ名とパスワード、またはトークンなどの他の認証情報を登録ユーザのデータベースと照合し、ユーザ名と認証情報が登録ユーザと一致する場合にのみ、クラウドサービス121のさらなる機能へのアクセスを許可する。同様に、プリントサーバ111のユーザアクセス機能606は受信したユーザ名とパスワード、またはトークンなどの他の認証情報を登録ユーザのデータベースと照合し、ユーザ名と認証情報が登録ユーザと一致する場合にのみ、プリントサーバ111のさらなる機能へのアクセスを許可する。図6に示すように、スマートクライアント設定情報は、プリントサーバ111とクラウドサービス121との間で同期される。
【0030】
さらに、図6は、プリントサーバ111の2つの追加機能を示す。1つ目はUIサーバソフトウェア602であり、これは、プリントサーバ111上で提供され、以下により詳細に説明されるように、HQオフィス内のプリンタ112にUI表示画面を提供する。2つ目は、印刷用の印刷ジョブを記憶するためのプリントキュー603である。
【0031】
クラウドサービス121はまた、UIサーバ機能604を有し、支社のプリンタ122は、クラウドサービス121からUIページを供給されるように構成される。
【0032】
図7は、プリンタ112、122上のソフトウェアを示す。本例では、プリンタはキヤノン(登録商標)多機能プリンタである。しかしながら、他の例では、プリンタが別の製造業者からのものであってもよく、単一機能または他のタイプのプリンタであってもよい。多機能プリンタ112、122には、それぞれ、Java(登録商標)ベースのオペレーティングシステム701がインストールされている。オペレーティングシステム701上には、ソフトウェアアプリケーション702をインストールすることが可能である。本実施形態では、多機能プリンタが少なくとも単一のUIアプリケーション702をそれらにインストールする。このUIアプリケーションはブラウザ703を含み、多機能プリンタがプリントサーバ111のUIサーバ602またはクラウドサービス121のUIサーバ604に接続してUI表示ページを提供することを可能にする機能を含む。このようにして、本社オフィスの各プリンタのUIはプリントサーバ111によってページ/データが送信され、支社オフィスの各プリンタはクラウドサービス121によってページ/データが送信される。本社オフィス内のプリンタはプリントサーバ111のプリントキュー603に記憶された印刷ジョブを表示することができ、ユーザは、印刷のためにジョブをプリンタにリリースすることができる。
【0033】
図8は、クライアントコンピュータ100にインストールされたスマートクライアント503と、クラウドサービス121またはプリントサーバ111のいずれかとの間の動作を示す。以下の図9および図10は、スマートクライアント503とプリントサーバ111またはクラウドサービス121との間の当該通信に依存して、スマートクライアント503によって制御可能な2つの異なるプリントワークフローを説明する。
【0034】
前述したように、スマートクライアント503の目的は、プリントサーバのいくつかの機能を取ることである。特に、スマートクライアント503は、セントラルサービス、この場合はクラウドサービス121上のセントラルサービス605またはプリントサーバ111上のセントラルサービス606から設定情報を探すように構成される。クライアントコンピュータ100は、初期設定され、本社オフィス内のユーザに公表される。スマートクライアント503は、プリントサーバ111上のセントラルサービス606およびクラウドサービス121のセントラルサービス605の両方と通信するように初期設定される。すなわち、適切なアドレス情報がスマートクライアント503内に格納され、スマートクライアント503がプリントサーバ111のセントラルサービス606およびクラウドサービス121のセントラルサービス605に接続できるようにする。クラウドサービス121への接続が不可能な場合にプリントサーバ111のセントラルサービス606に接続しようとする前に、スマートクライアント503が最初にクラウドサーバのセントラルサービスに接続しようとするように、スマートクライアント503は、プリントサーバ111のセントラルサービス606よりも高い優先度としてクラウドサービス121のセントラルサービス605のアドレスで設定される。
【0035】
スマートクライアント503が開始すると(起動されると)、スマートクライアント503はS801でクライアントコンピュータ100の位置を検出する。クライアントコンピュータの位置を識別するには、いくつかの方法がある。例えば、クライアントコンピュータに割り当てられたIPアドレスによって、クライアントコンピュータの位置を識別することが可能である。別の方法は、DNS追跡を見ることである。もう1つのオプションはトレースルーティングである。
【0036】
IPアドレスが識別情報に使用される場合、クライアントコンピュータ100に割り当てられたIPアドレスが本社内部ネットワーク110のIPアドレス範囲内にあれば、クライアントコンピュータ100の位置は本社にあるものとして識別され、同様にクライアントコンピュータ100に割り当てられたIPアドレスが支社内部ネットワーク120のIPアドレス範囲内にあれば、クライアントコンピュータ100の位置は支社にあるものとして識別される。或いは、DNSが識別のために使用される場合、ドメインが’XYZ.de’であれば、クライアントコンピュータ100の位置はドイツにあるものとして識別され、同様にドメインが’XYZ.com’であれば、クライアントコンピュータ100の位置は米国にあるものとして識別される。
【0037】
トレースルーティングの場合、パケットが宛先への途中で通過するルータのリストを生成する経路探索または同様の診断ツールを使用して、企業のwebサーバやドメインコントローラなどの既知のアドレスにコマンドが送信される。このようにして、スマートクライアントの位置に関する最も近い(最短時間の)ルータ情報を見ることにより、情報を得ることができる。
【0038】
スマートクライアント503が必要とされると、スマートクライアント503は、S802でセントラルサービス605または606に設定情報の要求を送信する。スマートクライアント503はスプーラを監視し、プリンタドライバ502によってジョブが作成されている場合、スマートクライアント503はそれをインターセプトする。設定情報の要求には、クライアントコンピュータ100のネットワーク位置に関する情報が含まれる。上述したように、クラウドサービス121のセントラルサービス605には、スマートクライアント503によってより高い優先順位が与えられる。したがって、クラウドサービス121のセントラルサービス605に最初に要求が送信される。クライアントコンピュータ100が本社内部ネットワーク110上にある場合、セントラルサービス605は図9を参照して後に説明するように、設定情報に応答して、クライアントコンピュータ100にワークフローを実行させる。特に、設定情報は、クライアントコンピュータ100にプリントサーバ111上のキュー603に印刷データを送信させる。一方、ユーザが支社オフィスを訪問している場合、クラウドサービス121のセントラルサービス605への要求に応答して、クラウドサービス121のセントラルサービス605は図10を参照して後に説明するように、設定情報を送信して、クライアントコンピュータ100に印刷ワークフローを実行させる。特に、設定情報によって、クライアントコンピュータ100のプリンタドライバ502は、プリンタドライバ502のキュー504に印刷データを記憶させる。本社内部ネットワーク110上に存在する間にクライアントコンピュータ100によって送信された設定情報の要求が応答されない場合、クライアントコンピュータ100は、次に、プリントサーバ111上のセントラルサービス606に試みる。支社内部ネットワーク120上に存在する間にクライアントコンピュータ100によって送信された設定情報の要求が応答されない場合、プリントサーバ111のセントラルサービス606は支社内部ネットワーク120からアクセスできないため、印刷は失敗する。
【0039】
当業者であれば、図9および図10を参照してここで説明する印刷ワークフローは例示的なものであり、各位置における印刷ワークフローは必要に応じて変更することができることを理解するであろう。本実施形態は、ハイブリッドクラウド印刷システムを許容する仕組みを有しており、本社拠点のプリントサーバ111を用いてクライアントコンピュータが自動的に印刷を実行し、支社拠点のクラウドサービス121を用いて印刷を実行するように設定することができる。これは、クライアントコンピュータ100が2つの拠点間を移動するときに、スマートクライアント503を自動的に設定することによって達成される。
【0040】
図9は、プリントサーバ111が利用される本社オフィスにおける印刷方法を示すシーケンス図である。この場合、スマートクライアント503は、印刷データを含む印刷ジョブがプリンタドライバ502によって印刷用のプリントサーバ111上のキュー603に送られるべきであることを示す設定情報を受信している。S901において、クライアントコンピュータ100を操作するユーザは、クライアントコンピュータ100に記憶されているデータの印刷を指示する。当該命令は、クライアントコンピュータ100にインストールされた編集プログラム501によって発行されうる。上述したように、当該アプリケーションはワード処理アプリケーション、スプレッドシートソフトウェア、およびウェブブラウザを含むが、これらに限定されない。プリンタドライバ502はクライアントコンピュータ100のオペレーティングシステムを介してこれらのアプリケーションによって起動される。
【0041】
S902で、クライアントコンピュータ100は、プリントサーバ111にアクセス要求を送信する。アクセス要求は、プリントサーバ111のユーザアクセス機能606によって処理されるユーザ識別情報および認証情報を含む。ユーザアクセス機能606は、ユーザアクセス機能606の同期されたデータベースに記憶された情報に対して、受信した識別情報及び認証情報をチェックする。当該情報が登録ユーザの情報に該当する場合は、アクセス要求が成功する。
【0042】
ユーザアクセス要求が成功すると、印刷データと、印刷データの属性情報との両方がクライアントコンピュータ100からプリントサーバ111に送信される。印刷データと属性情報の送信は、一括または個別に行うことができる。そしてS903において、送信された印刷データは、印刷ジョブとしてスプールされ、プリントサーバ111上のキュー603に格納される。属性情報には、印刷を依頼したユーザの識別情報や、印刷部数、モノクロ、カラー、ステープルオプションなどの印刷設定に関する情報が含まれる。
【0043】
その後、S904において、クライアントコンピュータ100を操作したユーザはプリンタ112が置かれている位置に移動し、例えば非接触カードを用いてプリンタ112にログインする。これにはプリンタ112によるユーザアクセス機能606への要求が含まれ、当該要求には非接触カードからのユーザ名および認証情報が含まれる。
【0044】
ユーザがプリンタ112に正常にログインすると(すなわち、ユーザの認証が成功すると)、ユーザはプリンタ112の機能を使用することが許可される。「印刷」はこれらの機能の1つであり、ユーザが「印刷」を選択すると、S905においてプリンタ112は、プリントサーバ111に対して、キュー603に記憶され、ログインユーザに属する印刷ジョブのリストを要求する。当該リストは、プリントサーバ111がユーザから印刷ジョブを受信したことを示す属性情報を有する印刷ジョブの名称を含む。
【0045】
S906では、要求されたリストがプリントサーバ111からプリンタ112に送信される。S907では、ユーザインタフェース405に含まれる操作画面に、プリントサーバ111が提供するリストが表示される。印刷ジョブの名称はプリンタのユーザI/F405に表示され、ユーザはプリンタ112で印刷したい印刷ジョブを容易に選択することができる。
【0046】
上記S907でユーザが印刷ジョブを選択し、S908で、プリンタ112は、選択された印刷ジョブに対応する印刷データの要求をプリントサーバ111に送信する。S909で、要求された印刷データがプリントサーバ111からプリンタ112に送信される。また、ステップS909は、プリントサーバ111によって、印刷データを、ユニバーサルプリンタドライバ502によってキュー603に送信された汎用PCLファイルフォーマットから、プリンタ112によって受け入れられる印刷言語に変換することを含む。当該変換は、プリントサーバ111に記憶された装置情報ファイル(DIFファイル)によって行われる。S910で、プリントサーバ111から受信した印刷データに基づいて、プリンタ112で印刷が行われる。
【0047】
図10は、クラウドサービス121を利用する支社オフィスにおける印刷方法を示すシーケンス図である。この状況において、クライアントコンピュータ100上のスマートクライアント503がクラウドサービス121のセントラルサービス605へのコンタクトを試みて、そこから設定情報を受信する。クラウドサービス121のセントラルサービス605からの設定情報は、支社内部ネットワーク120上のクライアントコンピュータの位置に基づいて、印刷ワークフローがクライアントコンピュータ100のキュー504に印刷ジョブを格納するユニバーサルプリンタドライバ502のためのものであることを示す。また、設定情報は、以下でより詳細に説明されるように、スマートクライアント503が印刷ジョブ変換を実行するなどのプリントサーバ機能を実行することであることを示す。
【0048】
S1001において、クライアントコンピュータ100を操作するユーザは、クライアントコンピュータ100に記憶されているデータの印刷を指示する。当該命令は、クライアントコンピュータ100にインストールされたオペレーティングシステムと協働して、クライアントコンピュータ100にインストールされた編集プログラム501によって発行されうる。
【0049】
S1002で、印刷データがクライアントコンピュータ100にスプールされ、キュー504に格納される。さらに、S1003において、クライアントコンピュータ100は、クラウドサービス121にアクセス要求を送信する。アクセス要求は、クラウドサービス121のユーザアクセス機能605によって処理されるユーザ識別情報および認証情報を含む。ユーザアクセス機能605は、ユーザアクセス機能605の同期データベースに記憶された情報に対して、受信した識別情報及び認証情報をチェックする。当該情報が登録ユーザの情報に該当する場合は、アクセス要求が成功する。ユーザアクセス要求が成功した場合、クライアントコンピュータ100は、印刷ジョブの登録要求を送信する。当該要求には、属性情報(印刷ジョブに関するメタデータ)のみが含まれる。印刷する内容(印刷データ)に関する情報は、クラウドサービス121には送信されない。
【0050】
そして、クライアントコンピュータ100を操作したユーザはプリンタ122が置かれている位置に移動し、S1004で非接触カードを用いてプリンタ122にログインする。ログイン処理は、プリンタが、ユーザの非接触カードから検索されたログイン情報を含むクラウドサービス121のユーザアクセス機能605にユーザアクセス要求を送信することを含む。ログイン情報がクラウドサービス121のユーザアクセス機能のデータベースに登録されているユーザと一致する場合、ログインは成功する。
【0051】
ユーザがプリンタ122に正常にログインすると(すなわち、ユーザの認証が成功すると)、ユーザはプリンタ122の機能を使用することが許される。「印刷」はこれらの機能の1つであり、ユーザが「印刷」を選択すると、プリンタ122は、印刷ジョブのリストの要求をクラウドサービス121に送信する。クラウドサービス121のUIサーバ604は、その属性情報がクラウドサービス121に送信された印刷ジョブであって、プリンタ122にログインしたユーザの識別情報に一致する印刷ジョブのリストを含むUIページを提供する。
【0052】
S1006において、要求されたリストがクラウドサービス121からプリンタ122に送信される。S1007において、ユーザインタフェース405に含まれる操作画面に、クラウドサービス121が提供するリストが表示される。印刷ジョブの名称はプリンタ122のユーザI/F405に表示され、ユーザはプリンタ122で印刷したい印刷ジョブを容易に選択することができる。S1006において、クラウドサービス121はまた、ユーザの各ジョブに対応する印刷データを記憶しているクライアントコンピュータ100のネットワークアドレス情報をプリンタ122に提供する。
【0053】
1007で、ユーザがプリンタ122で印刷するための印刷ジョブを選択し、S1008で、クラウドサービス121から受信したアドレス情報を用いて、プリンタ122は印刷データの要求をクライアントコンピュータ100に送信する。S1009において、クライアントコンピュータ100のスマートクライアント503は要求を受信する。その後、スマートクライアント503は、印刷要求を受信したプリンタ122の識別情報(アイデンティティ)で、クラウドサービス121のセントラルサービス605にコンタクトする。返答において、クラウドサービス121のセントラルサービス605は、キュー504に記憶されたユニバーサルプリンタドライバ502からのPCL印刷データを、プリンタ122による印刷に適した装置固有の印刷ファイルに変換するための装置情報ファイル(DIFファイル)で返信する。スマートクライアント503がDIFファイルを受信すると、スマートクライアント503は、プリンタ122によって要求されたPCL印刷データを、プリンタ122用の装置固有の印刷言語ファイルに変換する。そして、ステップS1010において、要求された印刷データがクライアントコンピュータ100からプリンタ122に送信される。S1011において、クライアントコンピュータ100から受信した印刷データに基づいて、プリンタ122で印刷が行われる。
【0054】
<変形例>
上述した実施形態では、本社オフィスのプリンタ112がプリントサーバ111のUIサーバ602からUI情報を受信するシチュエーションについて説明した。印刷ジョブを選択する場合には、プリンタ112にログインしたユーザに関連付けられたプリントサーバ111上のキュー603に記憶されている印刷ジョブがプリンタ112上で選択のために表示される。一方、支社オフィスのプリンタ122は、プリンタ122にログインしたユーザに関連付けられたクラウドサービス121から印刷ジョブのリストを受信する。これらの印刷ジョブに対応する印刷データは、印刷のためにプリンタ122にリリースされるまで、ユーザのクライアントコンピュータ100に記憶される。
【0055】
変形例において、ユーザは複数のクライアントコンピュータを使用することができる。この場合、ユーザが本社オフィスにいる場合、本社オフィス内のユーザによって使用される各クライアントコンピュータからのジョブは、プリントサーバ111上のキュー603に送信される。ジョブのリストは前の段落で説明したように、プリンタ112によって取り出すことができる。支社オフィス内の複数のクライアントコンピュータから印刷する場合、ユーザが支社オフィスで印刷するために使用する各クライアントコンピュータは、属性情報をクラウドサービス121に送信する。プリンタは、プリンタ122でユーザによる選択のために、当該属性情報がクラウドサービス121に記憶されているジョブを表示することができる。しかしながら、複数の印刷ジョブが印刷用に選択されると、クラウドサービス121は、各印刷ジョブがそれらから印刷されるクライアントコンピュータ上のキューにローカルに保存されるため、それらから印刷されるクライアントコンピュータに応じて、異なる印刷ジョブごとに異なる保存位置を含むことになる。したがって、プリンタ122は、S1008において、印刷データを検索するために、各クライアントコンピュータに別々の要求を送信する必要がある。また、各クライアントコンピュータは変換された印刷データをプリンタ122に送信する前に、S1009において、プリンタ122のDIFファイルを要求し、印刷データを変換することによって、要求に個別に応答する必要がある。
【0056】
他のシチュエーションでは、ユーザが支社オフィス内のいくつかの印刷データを印刷し、本社オフィス内のいくつかの印刷データを印刷する場合、いくつかの印刷データがクライアントコンピュータ100に記憶され、いくつかの印刷データがプリントサーバ111のキュー603に記憶されてもよい。このシチュエーションを管理するいくつかの異なる方法がある。第1のケースでは、本社オフィスのプリンタ112上のアプリケーション702に、プリントサーバ111のUIサーバとクラウドサービス121とを切り替える機能が設けられてもよい。これにより、ユーザは、プリントサーバ111に記憶されている自身の印刷ジョブ、またはその属性情報がクラウドサービス121に記憶されている印刷ジョブのいずれかを別々に参照することができる。この第1のアプローチは、いくつかの制限を有する。本社オフィスにいるときのユーザは、プリントサーバ111に記憶されたデータと、本社内部ネットワーク110に配置されたクライアントコンピュータにローカルに記憶された任意のデータとを印刷することができる。支社内部ネットワーク120にまだ配置されているクライアントコンピュータ上にあるデータを印刷することは不可能である。さらに、ユーザが支社オフィスを訪問している場合、ユーザは支社内部ネットワーク120内のクライアントコンピュータ上に記憶されているデータのみを印刷することができる。これはプリントサーバ111上に記憶されている印刷データと、本社内部ネットワーク110上のクライアントコンピュータ上に記憶されている印刷データは支社内部ネットワーク120を介してアクセスすることができないためである。
【0057】
第2のより柔軟なアプローチを採用することもできる。第2のアプローチでは、図6に示されている同期がクラウドサービス121とプリントサーバ111との間の印刷ジョブ情報の同期を含むように変更される。この同期には印刷データの属性情報(印刷ジョブ名称、ページ数など)が含まれるが、印刷データ自体(PCL印刷ジョブデータや別の印刷言語での印刷データなど)は含まれない。同期には、印刷データの記憶位置に関する情報、すなわち、印刷データがプリントサーバ111上のキュー603に記憶されているか、又はクライアントコンピュータ100上に記憶されているかの情報、およびそのクライアントコンピュータ100の識別情報および/または位置に関する情報も含まれる。本社内部ネットワーク上のプリンタ112から印刷する場合、属性情報がクラウドサービス121とプリントサーバ111との間で同期されるため、ユーザは、どこで印刷される場合であっても自身の印刷ジョブの全てを参照することができる。ユーザはプリントサーバ111に記憶された任意の印刷データ、または本社内部ネットワーク110上にあるクライアントコンピュータに記憶された任意の印刷データ(ユーザが支社オフィスでプリントを指示し、その後本社内部ネットワーク110に戻したクライアントコンピュータなど)を印刷することができる。支社オフィスにいる場合、ユーザは、支社内部ネットワーク120上のクライアントコンピュータ100に記憶された任意の印刷データを印刷することができる。また、本社内部ネットワーク110に接続されたプリントサーバ111に記憶されたデータについては、ユーザが印刷用の印刷データを要求してもよい。この場合、クラウドサービス121はプリントサーバ111に印刷データを要求し、PCL印刷データを含む印刷データをクラウドサービス121を介してプリンタ122に転送してもよい。この処理は通常、支社内部ネットワーク120を介したファイル転送よりも遅く、これは印刷データがユーザからの要求に応じて転送され、印刷データ(PCLデータ等)はデフォルトではプリントサーバ111とクラウドサービス121との間で同期されないためである。
【0058】
<その他の実施形態>
上述したように、図8に関連して、設定情報は、図9および図10に関連して上述した関連ステップを実行するようにクライアントコンピュータの動作を設定するスマートクライアント503によって受信される。しかしながら、これらは、スマートクライアント503に設定可能な唯一のプリントワークフローではない。他の実施形態では、図10のステップが、ステップS1002でクライアントコンピュータのキュー504に記憶されるのではなく、記憶のために印刷ジョブがプリンタ122に送信されるようにスマートクライアントが設定されるように変更される。この場合、ユーザがプリンタにログインすると、プリンタは、ステップS1005およびS1006において、クラウドサービス121からジョブリストを検索する。しかし、プリンタに記憶された印刷ジョブについては、クライアントコンピュータ100から印刷データを要求する必要はない。プリンタはクラウドサービス121からDIFファイルを検索し、プリンタ122で印刷するためのプリンタ固有の印刷データに印刷データを変換するステップを実行する。
【0059】
図8のS802の設定情報の要求に応答してスマートクライアントに設定できるワークフローの他の例は、印刷ジョブが記憶のためにクラウドサービスに送信されることである。この例では、図10のワークフローが変更され、印刷データがクライアントコンピュータ100上のローカルに記憶される代わりに、ステップS1002で記憶のためにクライアントコンピュータによってクラウドサービスへ送信される。ステップ1008では、印刷データの要求がクライアントコンピュータ100の代わりに、印刷ジョブデータを含む印刷ジョブを記憶しているクラウドサービスにプリンタから送信される。さらに、DIFファイルを使用した印刷ジョブデータのプリンタ固有の印刷データへの変換はプリンタ固有の印刷データが印刷用にプリンタに送信される前に、クラウドサービスで直接実行される。
【0060】
また、本発明の実施形態は記憶媒体(例えば、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体)に記録されたコンピュータ実行可能命令を読み出して実行し、本発明の上記実施形態のうちの1つ以上の機能を実行するシステムまたは装置のコンピュータによって、および、システムまたは装置のコンピュータによって実行される方法によって、例えば、記憶媒体からコンピュータ実行可能命令を読み出して実行し、上述の実施形態のうちの1つ以上の機能を実行することによって、実現されてもよい。コンピュータは中央処理装置(CPU)、マイクロ処理装置(MPU)、または他の回路のうちの1つまたは複数を備えることができ、別個のコンピュータまたは別個のコンピュータプロセッサのネットワークを含むことができる。コンピュータ実行可能命令は例えば、ネットワークまたは記憶媒体からコンピュータに提供されてもよい。記憶媒体は例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、分散コンピューティングシステムの記憶装置、光ディスク(コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、またはブルーレイディスク(BD)(登録商標)など)、フラッシュメモリ装置、メモリカードなどの1つ以上を含みことができる。
図1
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図10