(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法及び推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20221102BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G06Q10/06 300
A61B5/16 110
(21)【出願番号】P 2018192289
(22)【出願日】2018-10-11
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505183680
【氏名又は名称】株式会社疲労科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小原 朋広
(72)【発明者】
【氏名】服部 元
(72)【発明者】
【氏名】馬田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】小泉 淳一
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特許第4272249(JP,B1)
【文献】特開2018-142259(JP,A)
【文献】特許第6501941(JP,B1)
【文献】介護現場の働き方改革に向けた研究で「知識創造支援システム」を活用,はいたっく,株式会社日立製作所,2018年03月01日,通巻610号 ,p.13-14
【文献】高見 愛,生体情報を活用した作業適性度に基づく作業員管理システム,電子情報通信学会2018年総合大会講演論文集 情報・システム1,2018年03月20日,p.112
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A61B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が所定の作業を行っている作業期間の開始時点を前記作業者が前記所定の作業を行っていない待機期間の終了時点とし、前記終了時点と、前記終了時点から所定の期間前の時点との間における期間である前記待機期間と、前記作業期間とを検出する検出部と、
前記
作業者の生体情報を取得する取得部と、
前記検出部が検出した前記待機期間に前記取得部が取得した待機時生体情報と、前記検出部が検出した
前記作業期間に前記取得部が取得した作業時生体情報
との関係に基づいて、前記作業者の作業品質を推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記作業者の作業品質に関する情報を出力する出力部と、
を有する推定装置。
【請求項2】
作業者の生体情報を取得する取得部と、
前記作業者が所定の作業を行っている作業期間に前記取得部が取得した作業時生体情報に基づいて、前記作業者のストレス状態を示す作業時ストレス指標と、前記作業者の活動状態を示す作業時活動指標とを特定する特定部と、
前記作業時ストレス指標に基づいて前記作業者の作業品質を推定し、前記作業時活動指標が示す数値が前記作業時活動指標に対応する閾値を超えない場合に、前記作業者の作業品質が低いと推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記作業者の作業品質に関する情報を出力する出力部と、
を有する推定装置。
【請求項3】
作業者の生体情報を取得する取得部と、
前記作業者が所定の作業を行っている作業期間に前記取得部が取得した作業時生体情報に基づいて、前記作業者のストレス状態を示す作業時ストレス指標と、前記作業者の活動状態を示す作業時活動指標とを特定する特定部と、
前記作業時ストレス指標が示す数値が前記作業時ストレス指標に対応する閾値を超えない場合に、前記作業時活動指標が示す数値が前記作業時活動指標に対応する閾値を超えていれば、前記作業者の作業品質が高いと推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記作業者の作業品質に関する情報を出力する出力部と、
を有する推定装置。
【請求項4】
作業者の生体情報を取得する取得部と、
前記作業者が所定の作業を行っている作業期間に前記取得部が取得した作業時生体情報に基づいて前記作業者の作業時のストレス状態を示す作業時ストレス指標を特定し、前記作業者が前記所定の作業を行っていない待機期間に前記取得部が取得した待機時生体情報に基づいて前記作業者の待機時のストレス状態を示す待機時ストレス指標を特定する特定部と、
前記作業時ストレス指標が示す数値から前記待機時ストレス指標が示す数値を差し引いたストレス差分値が、前記ストレス差分値に対応する閾値を超えない場合に、前記作業者の作業品質が低いと推定する推定部と、
前記推定部が推定した前記作業者の作業品質に関する情報を出力する出力部と、
を有する推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記特定部が、前記作業者が前記所定の作業を行っていない待機期間に前記取得部が取得した待機時生体情報に基づいて特定した待機時ストレス指標と、前記作業時ストレス指標との関係に基づいて、前記作業者の作業品質を推定する、
請求項
2又は3に記載の推定装置。
【請求項6】
前記取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記作業者の活動状態を示す活動指標を特定する特定部をさらに有し、
前記推定部は、前記特定部が前記作業時生体情報に基づいて特定した作業時活動指標に基づいて、前記作業者の作業品質を推定する、
請求項1
に記載の推定装置。
【請求項7】
前記特定部は、前記取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記作業者のストレス状態を示すストレス指標を特定し、
前記推定部は、前記特定部が前記作業時生体情報に基づいて特定した作業時ストレス指標が示す数値が、前記作業時ストレス指標に対応する閾値を超える場合に、前記作業者の作業品質が低いと推定する、
請求項
2から
5のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項8】
前記特定部は、前記取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記作業者の活動状態を示す活動指標を特定し、
前記推定部は、前記ストレス差分値が、前記ストレス差分値に対応する閾値を超える場合において、前記特定部が前記作業時生体情報に基づいて特定した作業時活動指標が示す数値が、前記作業時活動指標に対応する閾値を超える場合に、前記作業者の作業品質が高いと推定する、
請求項
4に記載の推定装置。
【請求項9】
前記閾値を設定する閾値設定部をさらに有する、
請求項
2から5、7及び8のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項10】
前記閾値設定部は、前記所定の作業における作業能力が既知であるモデル作業者が前記所定の作業を行っていない待機期間に前記取得部が取得した待機時生体情報に基づいて特定された待機時の指標と、前記モデル作業者の前記作業時生体情報に基づいて特定された作業時の指標との少なくともいずれかに基づいて、前記閾値を設定する、
請求項
9に記載の推定装置。
【請求項11】
前記閾値設定部は、複数の作業者を含む複数のグループのうち、前記所定の作業における作業品質が相対的に高い前記グループに含まれる前記複数の作業者それぞれの生体情報に基づいて特定された複数の指標に基づいて、前記閾値を設定する、
請求項
9に記載の推定装置。
【請求項12】
前記取得部は、前記生体情報として、前記作業者の心拍の時間変化を示す心拍データを取得する、
請求項1から
11のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項13】
コンピュータが実行する、
作業者が所定の作業を行っている作業期間の開始時点を作業者が前記所定の作業を行っていない待機期間の終了時点とし、前記終了時点と、前記終了時点から所定の期間前の時点との間における期間である前記待機期間と、前記作業期間とを検出するステップと、
前記
作業者の生体情報を取得するステップと、
検出された前記待機期間に取得された待機時生体情報と、検出された前記
作業期間に取得された作業時生体情報
との関係に基づいて、前記作業者の作業品質を推定するステップと、
推定された前記作業品質に関する情報を出力するステップと、
を有する推定方法。
【請求項14】
コンピュータを、
作業者が所定の作業を行っている作業期間の開始時点を作業者が前記所定の作業を行っていない待機期間の終了時点とし、前記終了時点と、前記終了時点から所定の期間前の時点との間における期間である前記待機期間と、前記作業期間とを検出する検出部、
作業者の生体情報を取得する取得部、
前記検出部が検出した前記待機期間に取得された待機時生体情報と、前記検出部が検出した前記
作業期間に取得された作業時生体情報
との関係に基づいて、前記作業者の作業品質を推定する推定部、及び
前記推定部が推定した前記作業者の作業品質に関する情報を出力する出力部、
として機能させる推定プログラム。
【請求項15】
コンピュータを、
作業者の生体情報を取得する取得部、
前記作業者が所定の作業を行っている作業期間に前記取得部が取得した作業時生体情報に基づいて、前記作業者のストレス状態を示す作業時ストレス指標と、前記作業者の活動状態を示す作業時活動指標とを特定する特定部、
前記作業時ストレス指標に基づいて前記作業者の作業品質を推定し、前記作業時活動指標が示す数値が前記作業時活動指標に対応する閾値を超えない場合に、前記作業者の作業品質が低いと推定する推定部、及び
前記推定部が推定した前記作業者の作業品質に関する情報を出力する出力部、
として機能させる推定プログラム。
【請求項16】
コンピュータを、
作業者の生体情報を取得する取得部、
前記作業者が所定の作業を行っている作業期間に前記取得部が取得した作業時生体情報に基づいて、前記作業者のストレス状態を示す作業時ストレス指標と、前記作業者の活動状態を示す作業時活動指標とを特定する特定部、
前記作業時ストレス指標が示す数値が前記作業時ストレス指標に対応する閾値を超えない場合に、前記作業時活動指標が示す数値が前記作業時活動指標に対応する閾値を超えていれば、前記作業者の作業品質が高いと推定する推定部、及び
前記推定部が推定した前記作業者の作業品質に関する情報を出力する出力部、
として機能させる推定プログラム。
【請求項17】
コンピュータを、
作業者の生体情報を取得する取得部、
前記作業者が所定の作業を行っている作業期間に前記取得部が取得した作業時生体情報に基づいて前記作業者の作業時のストレス状態を示す作業時ストレス指標を特定し、前記作業者が前記所定の作業を行っていない待機期間に前記取得部が取得した待機時生体情報に基づいて前記作業者の待機時のストレス状態を示す待機時ストレス指標を特定する特定部、
前記作業時ストレス指標が示す数値から前記待機時ストレス指標が示す数値を差し引いたストレス差分値が、前記ストレス差分値に対応する閾値を超えない場合に、前記作業者の作業品質が低いと推定する推定部、及び
前記推定部が推定した前記作業者の作業品質に関する情報を出力する出力部、
として機能させる推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が所定の作業を行った場合における作業品質を推定する推定装置、推定方法及び推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、働き方改革を進める上で作業の効率化が望まれている。特に人が作業を行う際に、その作業を行う適性があるか又は今日の体調で問題なく作業ができるか等を手軽に判断できることが望まれている。特許文献1には、被験者の心拍波形から解析したパワースペクトル密度と自律神経のトータルパワーとに基づいて、被験者の眠気を判定する技術が記載されている。特許文献1に記載の技術を作業実施前に作業者に実施することにより、作業者が作業を適切に行うことができるか否かを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、眠気は、作業効率の低下又は作業品質の劣化の原因の1つにすぎず、それ以外の原因(集中力減少及び疲労等)によっても、作業効率が低下したり、作業品質が劣化したりする場合がある。そのため、特許文献1に記載された技術では、作業品質を適切に推定することが難しかった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、作業者の作業品質を適切に推定することができる推定装置、推定方法及び推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る推定装置は、作業者の生体情報を取得する取得部と、前記作業者が所定の作業を行っている作業期間に前記取得部が取得した作業時生体情報に基づいて、前記作業者の作業品質を推定する推定部と、前記推定部が推定した前記作業者の作業品質に関する情報を出力する出力部と、を有する。
【0007】
前記推定部は、前記作業者が前記所定の作業を行っていない待機期間に前記取得部が取得した待機時生体情報と、前記作業時生体情報との関係に基づいて、前記作業者の作業品質を推定してもよい。
【0008】
前記推定装置は、前記作業期間の開始時点を前記待機期間の終了時点とし、前記終了時点と、前記終了時点から所定の期間前の時点との間における期間である前記待機期間と、前記作業期間とを検出する検出部をさらに有し、前記推定部は、前記検出部が検出した前記待機期間に前記取得部が取得した前記待機時生体情報と、前記検出部が検出した前記作業期間に前記取得部が取得した前記作業時生体情報との関係に基づいて、前記作業者の作業品質を推定してもよい。
【0009】
前記推定装置は、前記取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記作業者のストレス状態を示すストレス指標を特定する特定部をさらに有し、前記推定部は、前記特定部が前記作業時生体情報に基づいて特定した作業時ストレス指標に基づいて、前記作業者の作業品質を推定してもよい。
【0010】
前記推定部は、前記特定部が、前記作業者が前記所定の作業を行っていない待機期間に前記取得部が取得した待機時生体情報に基づいて特定した待機時ストレス指標と、前記作業時ストレス指標との関係に基づいて、前記作業者の作業品質を推定してもよい。
【0011】
前記推定装置は、前記取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記作業者の活動状態を示す活動指標を特定する特定部をさらに有し、前記推定部は、前記特定部が前記作業時生体情報に基づいて特定した作業時活動指標に基づいて、前記作業者の作業品質を推定してもよい。
【0012】
前記特定部は、前記取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記作業者のストレス状態を示すストレス指標を特定し、前記推定部は、前記特定部が前記作業時生体情報に基づいて特定した作業時ストレス指標が示す数値が、前記作業時ストレス指標に対応する閾値を超える場合に、前記作業者の作業品質が低いと推定してもよい。
【0013】
前記特定部は、前記取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記作業者の活動状態を示す活動指標を特定し、前記推定部は、前記特定部が前記作業時生体情報に基づいて特定した作業時活動指標が示す数値が、前記作業時活動指標に対応する閾値を超えない場合に、前記作業者の作業品質が低いと推定してもよい。
【0014】
前記特定部は、前記取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記作業者のストレス状態を示すストレス指標と、前記作業者の活動状態を示す活動指標とを特定し、前記推定部は、前記特定部が前記作業時生体情報に基づいて特定した作業時ストレス指標が示す数値が、前記作業時ストレス指標に対応する閾値を超えない場合において、前記特定部が前記作業時生体情報に基づいて特定した作業時活動指標が示す数値が、前記活動指標に対応する閾値を超える場合に、前記作業者の作業品質が高いと推定してもよい。
【0015】
前記特定部は、前記取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記作業者のストレス状態を示すストレス指標を特定し、前記推定部は、前記特定部が前記作業時生体情報に基づいて特定した作業時ストレス指標が示す数値から、前記特定部が、前記作業者が前記所定の作業を行っていない待機期間に前記取得部が取得した待機時生体情報に基づいて特定した待機時ストレス指標が示す数値を差し引いたストレス差分値が、前記ストレス差分値に対応する閾値を超えない場合に、前記作業者の作業品質が低いと推定してもよい。
【0016】
前記特定部は、前記取得部が取得した前記生体情報に基づいて、前記作業者の活動状態を示す活動指標を特定し、前記推定部は、前記ストレス差分値が、前記ストレス差分値に対応する閾値を超える場合において、前記特定部が前記作業時生体情報に基づいて特定した作業時活動指標が示す数値が、前記作業時活動指標に対応する閾値を超える場合に、前記作業者の作業品質が高いと推定してもよい。
【0017】
前記推定装置は、前記閾値を設定する閾値設定部をさらに有してもよい。
前記閾値設定部は、前記所定の作業における作業能力が既知であるモデル作業者が前記所定の作業を行っていない待機期間に前記取得部が取得した待機時生体情報に基づいて特定された待機時の指標と、前記モデル作業者の前記作業時生体情報に基づいて特定された作業時の指標との少なくともいずれかに基づいて、前記閾値を設定してもよい。
【0018】
前記閾値設定部は、複数の作業者を含む複数のグループのうち、前記所定の作業における作業品質が相対的に高い前記グループに含まれる前記複数の作業者それぞれの生体情報に基づいて特定された複数の指標に基づいて、前記閾値を設定してもよい。
前記取得部は、前記生体情報として、前記作業者の心拍の時間変化を示す心拍データを取得してもよい。
【0019】
本発明の第2の態様に係る推定方法は、コンピュータが実行する、作業者の生体情報を取得するステップと、前記作業者が所定の作業を行っている作業期間に取得された作業時生体情報に基づいて、前記作業者の作業品質を推定するステップと、推定された前記作業品質に関する情報を出力するステップと、を有する。
【0020】
本発明の第3の態様に係る推定プログラムは、コンピュータを、作業者の生体情報を取得する取得部、前記作業者が所定の作業を行っている作業期間に取得された作業時生体情報に基づいて、前記作業者の作業品質を推定する推定部、及び前記推定部が推定した前記作業者の作業品質に関する情報を出力する出力部、として機能させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、作業者の作業品質を適切に推定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】第1の実施形態に係る推定装置の構成を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る推定部が作業者の作業品質を推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】推定装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】就業期間の作業状況を模式的に表した図である。
【
図7】第2の実施形態に係る推定装置の構成を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る推定部が作業者の作業品質を推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態>
[推定装置1の概要]
本願の発明者は、作業者が所定の作業を行っているときに起こす問題行動と、所定の作業を行っているときの作業者の状態とに関連があることを見出した。所定の作業は、繰り返し行われる作業であり、例えば、コールセンターのオペレータが顧客を応対する作業、又は工場において製品を製造する作業等である。問題行動は、作業品質を低下させる行動、又は所定の作業において行うべきではない行動等である。作業者の状態は、作業者のストレス状態、又は作業者の活動状態(疲労状態)等である。そこで、第1の実施形態では、作業者の状態が表れる、所定の作業を行っている作業者の生体情報を用いて、作業者の作業品質を推定する。
【0024】
図1は、推定装置1の概要を説明するための図である。推定装置1は、作業者が所定の作業を行った場合における作業品質を推定する装置であり、例えば、コンピュータである。作業者には、生体情報を計測するための不図示の計測機器が取り付けられている。
【0025】
まず、推定装置1は、作業者の身体に取り付けられた計測機器から、作業者の生体情報を取得する(
図1の(1))。推定装置1は、例えば、作業者が実際に作業を行っている環境である本番環境又は本番環境に相当する模擬環境において、作業者が数回(例えば3回)の所定の作業を行った期間に計測機器が計測した生体情報を取得する。
【0026】
推定装置1は、取得した生体情報に基づいて、作業者の作業品質を推定し、推定した作業者の作業品質に関する情報を出力する(
図1の(2)、(3))。このように、推定装置1は、作業者の状態が表れる作業者の生体情報を用いることにより、作業者の作業品質を容易に推定することができる。
以下、推定装置1の構成について説明する。
【0027】
[第1の実施形態に係る推定装置1の構成]
図2は、第1の実施形態に係る推定装置1の構成を示す図である。推定装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを有する。
通信部11は、ネットワークに接続するためのインターフェイスであり、例えばLANコントローラを含んで構成されている。
【0028】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶している。
【0029】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部131、特定部132、閾値設定部133、推定部134及び出力部135として機能する。
【0030】
取得部131は、作業者の身体に取り付けられた計測機器から、作業者の生体情報を取得する。取得部131は、例えば、生体情報として、作業者の心拍の時間変化を示す心拍データを計測機器から取得する。
【0031】
心拍データは、例えば、心拍波形(心電波形)を示す時系列データに基づいて生成されるR波の間隔(以下、RR間隔という)の時系列データである。
図3は、心拍波形を模式的に表した図である。心拍波形には、R波を示す波形が含まれており、心拍波形に基づいて、1回の心拍に含まれるR波の間隔を特定することができる。
図3に示すように、RR間隔は、n回目の心拍に含まれるR波から、n+1回目の心拍に含まれるR波までの間隔である。取得部131は、計測機器において心拍波形に基づいて生成された心拍データを、計測機器から取得する。取得部131は、例えば、所定の間隔(例えば2秒)おきに、心拍データを取得する。なお、取得部131は、計測機器から心拍波形を示す時系列データを取得し、当該時系列データを解析することにより心拍データを取得してもよい。
【0032】
図2に戻り、特定部132は、取得部131が取得した生体情報に基づいて、作業者のストレス状態を示すストレス指標を特定する。ストレス指標は、例えば、心拍データが示すRR間隔の変動の低周波成分(以下、LF(Low Frequency)という)と、高周波成分(以下、HF(Hi Frequency)という)との割合を示す自律神経のバランス(以下、LF/HF比という)である。LFは、心拍データに含まれる複数の周波数成分のうちの0.04Hzから0.15Hzまでの周波数成分である。HFは、心拍データに含まれる複数の周波数成分のうちの0.15Hzから0.4Hzまでの周波数成分である。
【0033】
特定部132は、例えば、所定の間隔(例えば2秒)おきに、取得部131が取得した心拍データに基づいてLF及びHFを抽出する。特定部132は、抽出したLF及びHFに基づいてLF/HF比を算出する。そして、特定部132は、所定の間隔おきに算出したLF/HF比を集計(平均化)することにより、ストレス指標を特定する。
【0034】
また、特定部132は、取得部131が取得した生体情報に基づいて、作業者の活動状態を示す活動指標を特定する。活動指標は、例えば、心拍データに含まれる複数の周波数成分のうちの0Hzから0.4Hzまでの周波数成分を総和することにより算出されるトータルパワー(以下、TP(Total Power)という)である。特定部132は、例えば、所定の間隔おきに抽出したLF及びHFからTPを特定する。そして、特定部132は、所定の間隔おきに特定したTPを集計(平均化)することにより、活動指標を特定する。
【0035】
第1の実施形態に係る特定部132は、作業者が所定の作業を行っている作業期間に取得部131が取得した作業時生体情報に基づいて、作業時ストレス指標と作業時活動指標とを特定する。
【0036】
閾値設定部133は、閾値を設定する。具体的には、閾値設定部133は、特定部132が特定した指標の種類(作業時ストレス指標及び作業時活動指標)に対応する閾値を設定する。閾値設定部133は、予め決定された閾値を設定してもよい。
【0037】
また、閾値設定部133は、所定の作業における作業効率が既知であるモデル作業者の作業時生体情報に基づいて特定されたモデル指標に基づいて、閾値を設定してもよい。モデル指標は、モデル作業者に対応する作業時ストレス指標と作業時活動指標とを含む。閾値設定部133は、例えば、モデル作業者が所定の作業を行った場合において、作業効率が良いときに取得した生体情報に基づいて特定されたモデル指標と、作業効率が悪いときに取得した生体情報に基づいて特定されたモデル指標とに基づいて、閾値を設定してもよい。このようにすることで、閾値設定部133は、閾値を適切に設定することができる。
【0038】
また、閾値設定部133は、複数の作業者を含む複数のグループのうち、所定の作業における作業品質が相対的に高いグループに含まれる複数の作業者それぞれの生体情報に基づいて特定された複数の指標に基づいて、閾値を設定してもよい。この場合におけるグループは、例えば、K-means法に基づいてクラスタリングされたグループである。閾値設定部133は、例えば、複数の指標に基づいて算出した統計値(例えば平均値)に基づいて、閾値を設定してもよい。このようにすることで、閾値設定部133は、1人のモデル作業者に基づいて閾値を設定する場合に比べて、より適した閾値を設定することができる。
【0039】
また、閾値設定部133は、所定の作業の種類に基づいて、閾値を設定してもよい。また、閾値設定部133は、就業時に取得した作業者の生体情報が示す数値と、未就業時に取得した作業者の生体情報が示す数値との差分値を閾値として設定してもよい。
【0040】
推定部134は、作業時生体情報に基づいて、作業者の作業品質を推定する。作業時生体情報は、作業者が所定の作業を行っている作業期間に取得部131が取得した生体情報である。
【0041】
第1の実施形態に係る推定部134が作業者の作業品質を推定する処理の詳細について
図4を参照しながら説明する。
図4は、第1の実施形態に係る推定部134が作業者の作業品質を推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0042】
まず、推定部134は、特定部132が、作業者が所定の作業を行っている作業期間に取得部131が取得した作業時生体情報に基づいて特定した作業時ストレス指標に基づいて、作業者の作業品質を推定する。具体的には、推定部134は、作業時ストレス指標が示す数値が、閾値設定部133が設定した第1閾値を超えるか否かを判定する(S1)。第1の実施形態に係る第1閾値は、作業時ストレス指標に対応する閾値である。
【0043】
推定部134は、作業時ストレス指標が示す数値が、第1閾値を超えると判定した場合(S1においてYESの場合)、作業者の作業品質が低いと推定する(S2)。推定部134は、作業時ストレス指標が示す数値が、第1閾値を超えないと判定した場合(S1においてNOの場合)、処理をS3に進める。
【0044】
続いて、推定部134は、特定部132が、作業者が所定の作業を行っている作業期間に取得部131が取得した作業時生体情報に基づいて特定した作業時活動指標に基づいて、作業者の作業品質を推定する。具体的には、推定部134は、作業時活動指標が示す数値が、第2閾値を超えるか否かを判定する(S3)。第2閾値は、作業時活動指標に対応する閾値である。
【0045】
推定部134は、作業時活動指標が示す数値が、第2閾値を超えないと判定した場合(S3においてNOの場合)、作業者の作業品質が低いと推定する(S2)。一方、推定部134は、作業時ストレス指標が示す数値が、第1閾値を超えない場合(S1においてNOの場合)において、作業時活動指標が示す数値が、第2閾値を超える場合(S3においてYESの場合)、作業者の作業品質が高いと推定する(S4)。このように、推定部134は、所定の作業を行っているときの作業者の状態に基づいて作業者の作業品質を推定することにより、作業品質を適切に推定することができる。
【0046】
出力部135は、推定部134が推定した作業者の作業品質に関する情報を出力する。具体的には、出力部135は、推定部134が推定した推定結果に対応する情報を出力する。なお、出力部135は、例えば、推定部134が、作業品質が高いと推定した場合に、作業者が所定の作業に適性があることを、不図示の表示部に出力してもよい。
【0047】
[推定装置1の処理]
続いて、推定装置1が行う処理の流れを説明する。
図5は、推定装置1が行う処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートは、取得部131が、作業者の身体に取り付けられた計測機器から、作業者の生体情報を取得したことを契機として開始する(S11)。
【0048】
特定部132は、取得部131が生体情報を取得すると、取得された生体情報に基づいてストレス指標と活動指標とを特定する(S12)。閾値設定部133は、特定部132がストレス指標及び活動指標を特定すると、ストレス指標に対応する閾値(第1閾値)と、活動指標に対応する閾値(第2閾値)とを設定する(S13)。
【0049】
推定部134は、特定部132が特定したストレス指標及び活動指標と、閾値設定部133が設定した閾値とに基づいて、作業者の作業品質を推定する(S14)。具体的には、推定部134は、
図4に示す推定部134が作業者の作業品質を推定する処理を行うことにより、作業者の作業品質を推定する。出力部135は、推定部134が推定した作業者の作業品質に関する情報を出力する(S15)。
【0050】
[第1の実施形態における効果]
以上説明したとおり、推定装置1は、作業期間に取得した作業時生体情報に基づいて作業者の作業品質を推定し、推定した作業者の作業品質に関する情報を出力する。このようにすることで、推定装置1は、所定の作業を行っているときの作業者の状態に基づいて、作業者の作業品質を推定することができる。その結果、推定装置1は、作業者の作業品質を適切に推定することができる。
【0051】
また、推定装置1は、生体情報として、心拍データを用いることにより、作業者を侵襲したり、作業者に安静閉眼させたりすることなく、作業者が所定の作業を行っている状態で作業者の作業品質を推定することができる。また、推定装置1は、研修をはじめとする模擬環境で作業者の作業品質を推定する処理を行うことができるため、本番環境で作業者の作業品質を推定する処理を行う場合に比べて実施コストを低減させることができる。また、推定装置1は、生体情報に基づいて作業者の作業品質を推定することにより、所定の作業の経験者が、所定の作業を行っている作業者を観察して問題行動の有無を分析する手間を省かせることができる。また、人事担当者は、推定装置1が所定の作業の種類ごとに作業者の作業品質を推定した推定結果を用いることにより、作業者の適性を分析して配属の判断に役立てることができる。
【0052】
<第2の実施形態>
[待機中の生体情報と作業中の生体情報との関係に基づいて作業品質を推定する]
続いて、第2の実施形態に係る推定装置1について説明する。本願の発明者は、所定の作業を行っているときの作業者の状態と所定の作業を行っていないときの作業者の状態との関係と、問題行動とに関連があることを見出した。「所定の作業を行っていないとき」は、例えば、就業中であるコールセンターのオペレータが顧客の応対を行っていないとき、又は就業中である工場の作業者が休憩しているとき等である。
【0053】
そこで、第2の実施形態では、作業者が所定の作業を行っていない場合における生体情報と、作業者が所定の作業を行っている場合における生体情報とを用いて、作業者の作業品質を推定する。以下、第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0054】
図6は、就業期間の作業状況を模式的に表した図である。
図6に示すように、作業者が就業している期間は、作業者が所定の作業を行っていない待機期間(第1の待機期間、第2の待機期間等)と、待機期間に連続する、作業者が所定の作業を行っている作業期間(第1の作業期間、第2の作業期間等)とを含む。
【0055】
第2の実施形態に係る推定装置1は、待機期間に取得部131が取得した待機時生体情報と、作業期間に取得部131が取得した作業時生体情報との関係に基づいて、作業者の作業品質を推定する。
図6に示す例において、推定装置1は、第1の待機期間に取得部131が取得した待機時生体情報と、第1の待機期間に連続する第1の作業期間に取得部131が取得した作業時生体情報との関係に基づいて、作業者の作業品質を推定する。
【0056】
[第2の実施形態に係る推定装置1の構成]
図7は、第2の実施形態に係る推定装置1の構成を示す図である。第2の実施形態に係る制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、検出部136としてさらに機能する。
【0057】
検出部136は、待機期間と作業期間とを検出する。例えば、コールセンターにおいて待機期間と作業期間とを検出する場合において、検出部136は、まず、所定の間隔おきに、通信部11を介して、コールセンターが管理するCTI(Computer Telephony Integration)サーバから、作業品質の推定対象であるオペレータの通話状況を示す通話情報を取得する。通話情報は、通話の有無を示す情報であってもよいし、オペレータ及び顧客それぞれの音声であってもよい。検出部136は、通話情報がオペレータ及び顧客それぞれの音声である場合、顧客側の音声における着呼時及び切断時に生じる特有の音声パターンに基づいて通話状況を分析してもよいし、オペレータ側の音量又は顧客側の音量に基づいて通話状況を分析してもよい。
【0058】
検出部136は、取得した通話情報が通話中であることを示し、直前に取得した通話情報が通話中ではないことを示す場合に、通話中であることを示す通話情報を取得した時点を、待機期間の終了時点及び作業期間の開始時点として検出する。また、検出部136は、取得した通話情報が通話中ではないことを示し、直前に取得した通話情報が通話中であることを示す場合に、通話中ではないことを示す通話情報を取得した時点を、作業期間の終了時点及び待機期間の開始時点として検出する。
【0059】
また、例えば、工場において待機期間と作業期間とを検出する場合において、検出部136は、まず、所定の間隔おきに、通信部11を介して、工場内において作業品質の推定対象である作業者が作業を行う作業エリアを撮像するカメラから、作業状況を示す撮像画像を取得する。検出部136は、例えば、取得した撮像画像において、作業者が所定の位置にいるか否かに基づいて作業状況を分析してもよいし、製造ラインが稼働しているか否かに基づいて作業状況を分析してもよい。
【0060】
検出部136は、取得した撮像画像が作業中であることを示し、直前に取得した撮像画像が作業中ではないことを示す場合に、作業中であることを示す撮像画像を取得した時点を、待機期間の終了時点及び作業期間の開始時点として検出する。また、検出部136は、取得した撮像画像が作業中ではないことを示し、直前に取得した撮像画像が作業中であることを示す場合に、作業中ではないことを示す撮像画像を取得した時点を、作業期間の終了時点及び待機期間の開始時点として検出する。このように、検出部136は、作業期間及び待機期間それぞれの開始時点及び終了時点を検出することにより、待機期間と作業期間とを検出する。
【0061】
ここで、本願の発明者は、待機期間が長い場合より、待機期間が短い場合の方が、推定部134が作業者の作業品質を推定する精度が向上することを見出した。そこで、検出部136は、作業期間の開始時点を待機期間の終了時点とし、終了時点と、終了時点から所定の期間前(例えば1分前)の時点との間における期間である待機期間と、作業期間とを検出してもよい。このようにすることで、検出部136は、作業者の作業品質の推定精度を向上させることができる。
【0062】
第2の実施形態に係る特定部132は、作業者が所定の作業を行っていない待機期間に取得部131が取得した待機時生体情報に基づいて、待機時ストレス指標をさらに特定する。
【0063】
第2の実施形態に係る閾値設定部133は、所定の作業における作業能力が既知であるモデル作業者の待機時生体情報に基づいて特定された待機時の指標と、モデル作業者の作業時生体情報に基づいて特定された作業時の指標との少なくともいずれかに基づいて、閾値を設定してもよい。例えば、待機時生体情報は、作業者が所定の作業を行っていない待機期間に取得部131が取得した生体情報である。閾値設定部133は、待機時の指標が示す数値と作業時の指標が示す数値との差分値に基づいて、閾値を設定してもよい。
【0064】
推定部134は、待機期間に取得部131が取得した待機時生体情報と、作業期間に取得部131が取得した作業時生体情報との関係に基づいて、作業者の作業品質を推定する。具体的には、推定部134は、検出部136が検出した待機期間に取得部131が取得した待機時生体情報と、検出部136が検出した作業期間に取得部131が取得した作業時生体情報との関係に基づいて、作業者の作業品質を推定する。
【0065】
第2の実施形態に係る推定部134が作業者の作業品質を推定する処理の流れを、
図8を参照しながら説明する。
図8は、第2の実施形態に係る推定部134が作業者の作業品質を推定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
まず、推定部134は、特定部132が、作業者が所定の作業を行っていない待機期間に取得部131が取得した待機時生体情報に基づいて特定した待機時ストレス指標と、作業者が所定の作業を行っている作業期間に取得部131が取得した作業時時生体情報に基づいて特定した作業時ストレス指標との関係に基づいて、作業者の作業品質を推定する。具体的には、推定部134は、作業時ストレス指標が示す数値から、待機時ストレス指標が示す数値を差し引いたストレス差分値が、第1閾値を超えるか否かを判定する(S21)。第2の実施形態に係る第1閾値は、ストレス差分値に対応する閾値である。
【0067】
推定部134は、ストレス差分値が第1閾値を超えないと判定した場合(S21においてNOの場合)、作業者の作業品質が低いと推定する(S22)。推定部134は、ストレス差分値が第1閾値を超えると判定した場合(S21においてYESの場合)、処理をS23に進める。
【0068】
続いて、推定部134は、作業時活動指標に基づいて、作業者の作業品質を推定する。具体的には、推定部134は、作業時活動指標が示す数値が、第2閾値を超えるか否かを判定する(S23)。
【0069】
推定部134は、作業時活動指標が示す数値が、第2閾値を超えないと判定した場合(S23においてNOの場合)、作業者の作業品質が低いと推定する(S22)。一方、推定部134は、ストレス差分値が、ストレス差分値に対応する閾値を超える場合において、作業時活動指標が示す数値が、第2閾値を超える場合に、作業者の作業品質が高いと推定する(S24)。このように、推定部134は、作業時生体情報に基づいて、作業者の作業品質を推定する。
【0070】
[第2の実施形態における効果]
以上説明したとおり、推定装置1は、待機期間に取得した待機時生体情報と、作業期間に取得した作業時生体情報との関係に基づいて作業者の作業品質を推定し、推定した作業者の作業品質に関する情報を出力する。このようにすることで、推定装置1は、待機期間及び作業期間における作業者の状態の変化を考慮して、作業者の作業品質を推定することができる。その結果、推定装置1は、作業者の作業品質の推定精度を向上させることができる。
【0071】
[変形例]
上記において、推定装置1は、作業者の作業品質を推定する例を説明したが、これに限らない。例えば、推定装置1は、生体情報を入力することによって作業品質を示す品質情報を出力する学習モデルを用いて、作業品質を推定してもよい。学習モデルは、例えば、SVM(Support Vector Machine)又はDNN(Deep Neural Network)等によって生成される学習モデルである。
【0072】
例えば、推定装置1は、まず、過去の品質検査における作業品質を示す品質情報と、当該品質検査が行われたときの作業者の生体情報に基づく情報とを組み合わせた教師データに基づいて機械学習を行うことにより、学習モデルを生成する。生体情報に基づく情報は、例えば、待機時生体情報と作業時生体情報とに基づいて算出した指標(ストレス指標、活動指標)の統計値(例えば、平均値又は標準偏差等)である。
【0073】
そして、推定装置1は、品質検査工程において、作業者の生体情報を学習モデルに入力することによって出力された品質情報を用いて、作業品質を推定する。このようにすることで、推定装置1は、生体情報に基づく情報と作業品質との関係が機械学習によって適切に反映された学習モデルに基づいて、作業者の品質検査を精度良く、かつ容易に行うことができる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、
図8に示す作業者の作業品質を推定する処理において、推定部134は、S21の前に、作業時ストレス指標が示す数値が、作業時ストレス指標に対応する閾値を超えるか否かを判定する処理(
図4に示すS1の判定処理)を行ってもよい。この場合、推定部134は、作業時ストレス指標が示す数値が、作業時ストレス指標に対応する閾値を超えると判定した場合、作業者の作業品質が低いと推定し、作業時ストレス指標が示す数値が、作業時ストレス指標に対応する閾値を超えないと判定した場合、処理を
図8に示すS21に進めてもよい。
【0075】
また、例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0076】
1 推定装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 取得部
132 特定部
133 閾値設定部
134 推定部
135 出力部
136 検出部