(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20221102BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61M1/16 185
A61M1/36 121
A61M1/36 125
(21)【出願番号】P 2018225374
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】沢田 利春
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 辰悟
(72)【発明者】
【氏名】三島 崇
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐貴
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159994(JP,A)
【文献】特開2008-6220(JP,A)
【文献】特開2001-9029(JP,A)
【文献】特開2005-21245(JP,A)
【文献】特開平10-80476(JP,A)
【文献】米国特許第6800248(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮透析液を収容する供給室および使用済み透析液を収容する回収室を有する計量収容体と、上記供給室から血液浄化器に新鮮透析液を供給する透析液供給通路と、上記血液浄化器から上記回収室に使用済み透析液を回収する透析液回収通路と、上記供給室に浄水を供給する給水通路と、上記回収室から使用済み透析液を排出させる排液通路とを備え、
また、上記透析液回収通路と上記排液通路とを計量収容体を経由せずに接続する除水通路と、当該除水通路に設けた除水用計量ポンプとを備え、
上記各通路からなる透析液回路を洗浄する際に、上記透析液供給通路の下流側と上記透析液回収通路の上流側とを血液浄化器を介さずに接続する接続通路と、上記給水通路の上流側と上記排液通路の下流側とを接続する循環通路とによって閉回路を形成し、当該閉回路に洗浄液を流通させて上記洗浄液による上記各通路の洗浄を行う血液浄化装置において、
上記閉回路中の洗浄液の濃度が適正であることを判定する判定手段を備え、
上記閉回路を浄水で満たした状態で、上記閉回路に所定量の洗浄原液を引き込み、さらに上記除水用計量ポンプを停止させた状態で、上記浄水と洗浄原液とを上記閉回路に循環させて、洗浄原液を希釈して洗浄液とし、
上記判定手段が上記閉回路中の洗浄液の濃度が適正であると判定すると、上記除水用計量ポンプを作動させて上記除水通路および除水用計量ポンプに洗浄液を流通させることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
上記判定手段はタイマーを備え、当該タイマーによって上記浄水と洗浄原液との循環時間を計時して当該循環時間が所定時間に達したら、上記閉回路中の洗浄液の濃度が適正になったと判定することを特徴とする請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
上記判定手段は濃度センサを備え、上記閉回路を循環する洗浄原液の濃度が所定濃度まで希釈されたことを認識したら、上記閉回路中の洗浄液の濃度が適正であると判定することを特徴とする請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
上記給水通路に接続されて透析液の原液を供給する透析液原液通路と、当該透析液原液通路に設けられた原液用計量ポンプとを備え、
上記判定手段が上記閉回路中の洗浄液の濃度が適正であると判定すると、上記原液用計量ポンプを作動させて上記透析液原液通路および原液用計量ポンプに洗浄液を流通させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
上記除水用計量ポンプおよび原液用計量ポンプは筒状のシリンダと、当該シリンダの内部で進退するピストンとから構成され、
上記ピストンとシリンダの摺動箇所に浄水を供給するフラッシング通路を備えて、
上記判定手段が上記閉回路中の洗浄液の濃度が適正であると判定すると、上記フラッシング通路に洗浄液を流通させることを特徴とする請求項4に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液浄化装置に関し、詳しくは透析液回路の洗浄技術に関し、特に、除水通路および当該除水通路に設けた除水用計量ポンプを透析液回路に備えた血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液透析治療等を目的とした血液浄化装置が知られ、上記治療の際に患者から老廃物を除去するとともに余分な水分を排出させるために、上記血液浄化装置において透析液を流通させる透析液回路に除水通路および除水用計量ポンプを設けた血液浄化装置が知られている(特許文献1)。
また上記血液浄化装置では、治療の終了後に上記透析液回路の洗浄を行う必要があり、このため透析液回路を構成する各通路を用いて閉回路を構成し、当該閉回路に洗浄液を循環させるようになっている。
その際、洗浄液は最初濃度の高い原液の状態で各通路に供給されるが、当該洗浄原液を浄水と共に閉回路に循環させることで所定濃度まで希釈させるようになっている。
また血液浄化装置に用いられる計量ポンプとしては、いわゆるピストンポンプが知られ(特許文献2)、このピストンポンプを構成するシリンダとピストンとには、それぞれ耐摩耗性、耐久性に優れたセラミックが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6332605号公報
【文献】特許第4089530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミック製部材を備えた計量ポンプを洗浄する際に、洗浄液としてクエン酸を使用すると、当該洗浄液を高濃度のまま使用することで、上記計量ポンプのセラミック製部材を腐食させてしまう恐れがある。
このような問題に鑑み、本発明は高濃度の洗浄液による計量ポンプの損傷を防止することが可能な血液浄化装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明にかかる血液浄化装置は、新鮮透析液を収容する供給室および使用済み透析液を収容する回収室を有する計量収容体と、上記供給室から血液浄化器に新鮮透析液を供給する透析液供給通路と、上記血液浄化器から上記回収室に使用済み透析液を回収する透析液回収通路と、上記供給室に浄水を供給する給水通路と、上記回収室から使用済み透析液を排出させる排液通路とを備え、
また、上記透析液回収通路と上記排液通路とを計量収容体を経由せずに接続する除水通路と、当該除水通路に設けた除水用計量ポンプとを備え、
上記各通路からなる透析液回路を洗浄する際に、上記透析液供給通路の下流側と上記透析液回収通路の上流側とを血液浄化器を介さずに接続する接続通路と、上記給水通路の上流側と上記排液通路の下流側とを接続する循環通路とによって閉回路を形成し、当該閉回路に洗浄液を流通させて上記洗浄液による上記各通路の洗浄を行う血液浄化装置において、
上記閉回路中の洗浄液の濃度が適正であることを判定する判定手段を備え、
上記閉回路を浄水で満たした状態で、上記閉回路に所定量の洗浄原液を引き込み、さらに上記除水用計量ポンプを停止させた状態で、上記浄水と洗浄原液とを上記閉回路に循環させて、洗浄原液を希釈して洗浄液とし、
上記判定手段が上記閉回路中の洗浄液の濃度が適正であると判定すると、上記除水用計量ポンプを作動させて上記除水通路および除水用計量ポンプに洗浄液を流通させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、高濃度の洗浄原液が透析液回路に形成した閉回路を循環する間は、上記計量ポンプを停止させて高濃度の洗浄原液が接触しないようにし、計量ポンプを構成する部材の損傷を防止することができる。
そして、判定手段が上記閉回路中の洗浄液の濃度が適正であると判定すると、計量ポンプが作動して、適正な濃度の洗浄液により計量ポンプの洗浄を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】洗浄時の動作を説明する図であって、洗浄原液を透析液回路に引き込む作業を示した図。
【
図4】洗浄時の動作を説明する図であって、第1閉回路に洗浄液を循環させる作業を示した図。
【
図5】洗浄時の動作を説明する図であって、第1閉回路に洗浄液を循環させる作業を示した図。
【
図6】洗浄時の動作を説明する図であって、第1閉回路に洗浄液を循環させる作業を示した図。
【
図7】洗浄時の動作を説明する図であって、第2閉回路に洗浄液を循環させる作業を示した図。
【
図8】第2実施例にかかる洗浄原液を透析液回路に引き込む作業を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について本発明を説明すると、
図1は透析治療を行う血液浄化装置としての血液透析装置1の液回路を示し、上記血液透析装置1は制御手段Cによって制御されるようになっている。
上記血液透析装置1は、拡散と限外ろ過とにより血液と透析液との間で透析を行う血液浄化器としての透析器2と、該透析器2に接続されて血液を流通させる血液回路3と、透析器2に接続されて透析液を流通させる透析液回路4とを備えている。
そして本実施例の血液透析装置1は、透析治療後に上記透析液回路4を洗浄するようになっており、
図1は洗浄時の回路構成を示し、上記透析液回路4から上記透析器2を離脱させ、代わりに接続通路5を透析液回路4に接続した状態を示している。
【0009】
透析液回路4は、2つの同形の計量収容体としての第1計量チャンバ11と第2計量チャンバ12とを備え、第1、第2計量チャンバ11、12の内部はダイアフラムによって、新鮮透析液を収容する供給室11a、12aと、使用済み透析液を収容する回収室11b、12bとに区画されている。
上記2つの第1、第2計量チャンバ11、12の供給室11a、12aには、上記透析器2との間に新鮮透析液を流通させる透析液供給通路13が接続され、また回収室11b、12bには、上記透析器2との間に使用済み透析液を流通させる透析液回収通路14が接続されている。
また、上記第1、第2計量チャンバ11、12の供給室11a、12aには、浄水を供給する図示しない浄水供給手段に連通された給水通路15が接続され、さらに回収室11b、12bには、図示しない排液タンク等に使用済み透析液を排出させる排液通路16が接続されており、上記給水通路15には給水ポンプP1が設けられている。
【0010】
上記透析液供給通路13の上流部分は2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2計量チャンバ11、12の供給室11a、12aに接続され、各分岐部分にはそれぞれ制御手段Cの制御によって開閉される供給弁V1、V2が設けられている。
また透析液供給通路13の下流部分はコネクタ13aを介して上記透析器2に接続可能となっており、
図1に示す洗浄時には当該コネクタ13aを上記接続通路5の一端に接続するようになっている。
さらに透析液供給通路13には、電気伝導度を測定することで液体の濃度を計測する濃度センサ17と、上記コネクタ13aに隣接した位置に上記制御手段Cの制御によって開閉される開閉弁V3とが設けられている。
【0011】
上記透析液回収通路14の下流部分は2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2計量チャンバ11、12の回収室11b、12bに接続され、この分岐部分にはそれぞれ制御手段Cの制御によって開閉される回収弁V4、V5が設けられている。
また透析液回収通路14の上流部分はコネクタ14aを介して上記透析器2に接続可能となっており、
図1に示す洗浄時には当該コネクタ14aを上記接続通路5の他端に接続するようになっている。
さらに上記透析液回収通路14における上記コネクタ14aに隣接した位置には、上記制御手段Cの制御によって開閉される開閉弁V6が設けられ、その下流側には透析液を送液する透析液ポンプP2と除気槽18とが直列に設けられている。
上記除気槽18には、上記排液通路16に連通される分岐通路19が設けられており、当該分岐通路19には上記制御手段Cの制御によって開閉される開閉弁V7が設けられている。
【0012】
上記給水通路15における上記給水ポンプP1の上流側には制御手段Cの制御によって開閉される開閉弁V8が設けられ、下流側は2方向に分岐して上記供給室11a、12aに接続され、分岐した通路にはそれぞれ制御手段Cの制御によって開閉される給液弁V9、V10が設けられている。
【0013】
上記給水通路15における上記分岐部分の上流側には、透析液原液となるA液およびB液を流通させる透析液原液通路としてのA液通路21およびB液通路22が接続されており、これらA液通路21およびB液通路22にはそれぞれ透析液原液用計量ポンプとしてのA液計量ポンプP3およびB液計量ポンプP4が設けられている。
上記A液通路21の端部にはA液を収容したA液タンク23に挿入される吸い込み部材21aが設けられ、当該吸い込み部材21aとA液計量ポンプP3との間には制御手段Cの制御によって開閉される開閉弁V11が設けられている。
透析治療時には、上記吸い込み部材21aを上記A液タンク23に挿入し、上記A液計量ポンプP3によってA液を吸い上げ、当該A液を上記給水通路15を介して上記第1、第2計量チャンバ11、12の供給室11a、12aに供給するようになっている。
また洗浄時には、上記吸い込み部材21aをA液タンク23より取り出し、当該吸い込み部材21aを洗浄筒24に収容するようになっており、当該洗浄筒24の下端部には送液通路24Aが、上端部には排出通路24Bが接続されている。
上記送液通路24Aの上流端は上記給水通路15における給水ポンプP1の下流側に接続され、上記排出通路24Bの下流端は、上記分岐通路19における上記開閉弁V7よりも排液通路16寄りに接続されている。
そしてこれら送液通路24Aおよび排出通路24Bには、それぞれ制御手段Cによって制御される開閉弁V12、V13が設けられている。
【0014】
上記B液通路22は、上記開閉弁V12の上流側で上記送液通路24Aに接続され、当該B液通路22の途中には、B液の原料となる粉末を溶解させる溶解手段25と、当該溶解手段25の上流側に設けられて制御手段Cの制御によって開閉される開閉弁V14とが設けられている。
透析治療時には、上記溶解手段25にパウダー状の粉末が収容されたカートリッジ26を装着し、当該カートリッジ26内に上記送液通路24Aから上記給水通路15を流通する浄水を供給して、上記粉末を溶解させるようになっている。
溶解して得られたB液は、上記B液計量ポンプP4によってB液通路22を送液され、所定量が上記給水通路15を介して上記第1、第2計量チャンバ11、12の供給室11a、12aへと供給されるようになっている。
また洗浄時には、上記カートリッジ26を溶解手段25より取り外した状態で、溶解手段25の内部に形成した図示しない洗浄用通路によって洗浄液を流通させることができるようになっている。
【0015】
上記排液通路16は、その上流部分が2方向に分岐して第1、第2計量チャンバ11、12の回収室11b、12bに接続され、当該分岐部分にはそれぞれ制御手段Cの制御によって開閉される排液弁V15、V16が設けられるとともに、下流部分には制御手段Cの制御によって開閉される開閉弁V17が設けられている。
【0016】
また本実施例の血液透析装置1では、透析治療中に血液中の余分な水分を除去する除水を行うことが可能となっており、上記透析液回収通路14の回収弁V4、V5を設けた分岐部分の手前から、上記排液通路16の排液弁V15、V16を設けた分岐部分と開閉弁V17の間となる位置にかけて、使用済み透析液を流通させる除水通路27が設けられている。
上記除水通路27には除水用計量ポンプP5が設けられ、透析中にこの除水用計量ポンプP5を作動させることで、上記透析器2から所定量の除水をすることが可能となっている。
なお、本実施例の除水通路27は上記分岐通路19に接続されて、後述する循環通路28を介して排液通路16に接続される構成となっているが、除水通路27を直接排液通路16に接続するようにしてもよい。
【0017】
そして本実施例の血液透析装置1は、上記透析液回路4を洗浄するために、上記透析液供給通路13と透析液回収通路14とを上記接続通路5によって接続するとともに、上記排液通路16と給水通路15との間に循環通路28を、上記透析液回収通路14と給水通路15との間に洗浄液バッファ通路29を設けている。
上記接続通路5には、クエン酸を主原料とする洗浄原液が収容された洗浄液タンク30が通路30aを介して接続され、当該通路30aには制御手段Cによって制御される開閉弁V18が設けられている。
上記循環通路28の一端は排液通路16の開閉弁V17の上流側に接続され、他端は上記給水通路15の開閉弁V8と給水ポンプP1との間に接続されている。また循環通路28には制御手段Cによって制御される開閉弁V19が設けられている。
上記洗浄液バッファ通路29の一端は上記透析液回収通路14の透析液ポンプP2の上流側に接続され、他端は上記給水通路15における上記循環通路28の接続位置と給水ポンプP1との間に接続されている。また洗浄液バッファ通路29には制御手段Cによって制御される開閉弁V20が設けられている。
【0018】
次に、
図2を用いて上記A液、B液供給用および除水用に使用される各計量ポンプP3、P4、P5の構成について説明する。
これらにはいわゆるセラミックポンプと呼ばれるピストンポンプが使用され、円筒状のシリンダ32と、当該シリンダ32内を回転しながら往復動するピストン33と、上記シリンダ32およびピストン33を収容するケース34と、上記ピストン33を駆動させるモータ35と、ピストン33とモータ35とを連結する継手機構36とから構成されている。
上記シリンダ32およびピストン33には、耐食性、耐摩耗性に優れたセラミックが用いられており、上記シリンダ32は有底筒状を有した樹脂製のケース34に収容されている。
上記シリンダ32の両端部は上記ケース34の底部および開口部の位置に合わせて形成され、ケース34の開口部には樹脂製のリングシール37を介してキャップ34aが装着されている。
【0019】
上記ケース34の先端側には、対向する位置に吸入ポート34Aおよび排出ポート34Bが設けられ、上記シリンダ32には、当該吸入ポート34Aおよび排出ポート34Bの位置に合わせて貫通孔が穿設されており、内側には吸入ポート34Aおよび排出ポート34Bに連通する計量室32aが形成されている。
上記計量ポンプをA液計量ポンプP3、B液計量ポンプP4として用いる場合、上記吸入ポート34AにそれぞれA液、B液通路21、22の上流側の部分を接続し、上記排出ポート34Bにその下流側の部分を接続するようになっている。
また上記計量ポンプを除水用計量ポンプP5として用いる場合、上記吸入ポート34Aに除水通路27の上流側の部分を接続し、上記排出ポート34Bにその下流側の部分を接続するようになっている。
【0020】
上記ピストン33は上記モータ35および継手機構36によって回転しながらシリンダ32内を上下に往復動するようになっている。
上記継手機構36はモータ35の回転軸に固定された円筒部材36aと、円筒部材36aの内壁に設けた球面軸受36bとから構成され、上記ピストン33におけるシリンダ32より突出した部分が球面軸受36bの球体部材に貫通した状態で連結されている。
上記ピストン33の先端部分には切欠き33aが形成され、ピストン33の回転位置によって上記吸入ポート34Aもしくは排出ポート34Bのいずれか一方が閉鎖され、いずれか他方が上記計量室32aと連通するようになっている。
これにより、ピストン33が回転しながら上死点に達する直前までは、切欠き33aの位置によって吸入ポート34Aと計量室32aとが連通し、容積を増大させながら吸入ポート34Aから液体を吸引するようになっている。
その後、ピストン33が回転しながら下死点に達する直前までは、切欠き33aによって排出ポート34Bと計量室32aとが連通し、容積を減少させながら計量室32aの液体を排出ポート34Bから排出するようになっている。
【0021】
上記構成を有する計量ポンプをA液、B液計量ポンプP3、P4として使用した場合、上記計量室32aに流入した原液の一部が、シリンダ32の内面とピストン33の外面の摺動部分の隙間に微量ながら流入し、その後結晶化してシリンダ32とピストン33の摺動性を悪化させる原因となる。
一方、上記構成を有する計量ポンプを除水用計量ポンプP5として使用した場合、上記計量室32aに流入した透析液が上記隙間に流入し、その後析出した炭酸カルシウムによってシリンダ32とピストン33の摺動性を悪化させ、さらには両者を固着させてしまう原因となる。
このため、透析治療中に上記摺動部分の隙間に流入した液体を浄水によって除去するよう、上記給水通路15と上記除水通路27との間にフラッシング通路38を設けて、当該フラッシング通路38に上流側から順に、B液計量ポンプP4、A液計量ポンプP3、除水用計量ポンプP5をそれぞれ接続している。そしてこのフラッシング通路38における上記B液計量ポンプP4の上流側には制御手段Cによって制御される開閉弁V21が設けられている。
【0022】
そして上記計量ポンプにおける上記ケース34の基端側には、対向する位置に流入ポート34Cおよび流出ポート34Dが設けられ、上記シリンダ32には当該流入ポート34Cおよび流出ポート34Dの位置に貫通孔が穿設されるとともに、内周面にはこれら流入ポート34Cおよび流出ポート34Dと連通する溝32bが形成されている。
そして、上記流入ポート34Cにはフラッシング通路38の上流側の部分が、上記流出ポート34Dにはフラッシング通路38の下流側の部分が接続されるようになっている。
このような構成により、上記フラッシング通路38より流入ポート34Cに流入した液体は、上記溝32bを流通して上記流出ポート34Dより排出され、その間に上記溝32bを流通する液体の一部がシリンダ32の内面とピストン33の外面との隙間に侵入して、上述したシリンダ32とピストン33との摺動部分の隙間に入り込んだ原液や透析液を除去するようになっている。
【0023】
上記構成を有する透析液回路4によれば、透析治療時には上記第1、第2計量チャンバ11、12の供給室11a、12aで調製した新鮮透析液を、上記透析液供給通路13を介して交互に透析器2に送液し、透析器2を通過した使用済み透析液を上記透析液回収通路14を介して交互に回収室11b、12bに回収するようになっている。
例えば第1計量チャンバ11の供給室11aで新鮮透析液を調製する場合、給水通路15の給水ポンプP1が浄水を供給室11aに供給し、A液通路21のA液計量ポンプP3がA液タンク23のA液を所定量上記供給室11aに供給し、B液通路22のB液計量ポンプP4が上記溶解手段25で溶解したB液を所定量上記供給室11aに供給する。
これにより第1計量チャンバ11の供給室11aには浄水とA液、B液とが所定の割合で流入して混合され、その内部で新鮮透析液が調製されることとなる。これに伴い、第1計量チャンバ11のダイアフラムが変形し、既に回収室11bに回収されていた使用済み透析液が排液通路16へと押し出される。
他方、第2計量チャンバ12では、透析液回収通路14の透析液ポンプP2が透析器2の使用済み透析液を回収室12bに流入させ、これにより第2計量チャンバ12のダイアフラムが変形して、既に供給室12aで調製された新鮮透析液を透析液供給通路13を押し出すようになっている。
そして、透析治療中に除水を行う場合には、上記除水用計量ポンプP5を作動させて所定量の使用済み透析液を上記除水通路27を介して排液通路16より排出するようになっている。
また透析治療中の所要時に、上記フラッシング通路38に給水通路15からの浄水を流通させ、これにより上記各A液、B液、除水用計量ポンプP3、P4、P5では、流入ポート34Cより流入させた浄水により、シリンダ32とピストン32との摺動部分の洗浄を行うようになっている。
【0024】
そして、上述したように上記血液透析装置1によって血液透析治療を行った後には、透析液回路4から透析器2を取り外して、当該透析液回路4を構成する各通路およびポンプや開閉弁を洗浄液によって洗浄するようになっている。
ここで、上記透析液回路4を洗浄する洗浄液にはクエン酸が含まれており、この洗浄液を高濃度の洗浄原液のままA液、B液、除水用計量ポンプP3、P4、P5に流通させてしまうと、これらを構成するセラミック製のシリンダ32やピストン33が高濃度のクエン酸によって腐食してしまう恐れがある。
そこで本実施例の血液透析装置1では、洗浄原液を浄水とともに透析液回路4に形成した閉回路で循環させて、十分に希釈した所定濃度の洗浄液としてから、上記A液、B液、除水用計量ポンプP3、P4、P5の洗浄を行うようになっている。
【0025】
以下具体的に説明すると、まず血液透析治療が終了すると、
図1に示すように透析器2から透析液供給通路13と透析液回収通路14とを離脱させ、これらの端部に設けられたコネクタ13a、14aを上記接続通路5の両端に接続する。
また上記A液通路21では、上記吸い込み部材21aをA液タンク23より離脱させて、上記洗浄筒24に挿入し、またB液通路22では上記溶解手段25よりカートリッジ26を取り外す。
この状態で制御手段Cを介して洗浄動作を開始させると、制御手段Cは上記洗浄液タンク30の通路30aの開閉弁V18を閉鎖した状態で、給水ポンプP1、透析液ポンプP2を作動させて、給水通路15から浄水を供給し、排液通路16から排液することで、透析液回路4を構成する全ての通路に浄水を流通させ、これらの通路内の透析液等を浄水に置換する。
この時、透析治療中は除気槽18に接続されてエアを流通させる上記分岐通路19にも浄水を流通させて、当該分岐通路19内も浄水で満たすようになっている。
【0026】
そして、上記透析液回路4が浄水によって満たされた状態で、制御手段Cは洗浄原液を引き出す準備作業として、第1、第2計量チャンバ11、12の供給室11a、12aに接続される給液弁V9、V10を閉鎖するとともに供給弁V1、V2を開放し、回収室11b、12bに接続される回収弁V4、V5を開放するとともに排液弁V15、V16を閉鎖する。
すると、上記透析液ポンプP2の送液により、上記第1、第2計量チャンバ11、12の供給室11a、12aから透析液供給通路13へと浄水を排出させて最小容積とするとともに、回収室11b、12bに透析液回収通路14から浄水を流入させて最大容積とする。
【0027】
次に
図3は、上記洗浄液タンク30に収容された高濃度の洗浄原液を透析液回路4に引き出す作業を示している。なお、図において黒色に塗った開閉弁は閉鎖されている状態を、白色に塗った開閉弁は開放されている状態を示している。
制御手段Cは、給水通路15の開閉弁V8、循環通路28の開閉弁V19、A液通路21の開閉弁V11、送液通路24Aの開閉弁V12、排出通路24Bの開閉弁V13、B液通路22の開閉弁V14、フラッシング通路38の開閉弁V21を閉鎖する。
また制御手段Cは、第1、第2計量チャンバ11、12の供給室11a、12aに接続される給液弁V9、V10を開放するとともに供給弁V1、V2を閉鎖し、回収室11b、12bに接続される回収弁V4、V5を閉鎖するとともに排液弁V15、V16を開放し、さらに透析液供給通路13の開閉弁V3を閉鎖する。
この状態から、制御手段Cは上記洗浄液タンク30の通路30aの開閉弁V18、上記洗浄液バッファ通路29の開閉弁V20を開放させてから、上記給水ポンプP1を作動させる。
すると、給水通路15から浄水が第1、第2計量チャンバ11、12の供給室11a、12aに流入し、回収室11b、12bからは流入量に見合う浄水が上記排液通路16を介して外部に排出される。
【0028】
このとき、上記給水通路15の開閉弁V8および循環通路28の開閉弁V19が閉鎖されているため、上記洗浄液バッファ通路29および透析液回収通路14の浄水が給水通路15に引き込まれることとなる。
これに伴い、上記接続通路5を介して洗浄液タンク30から洗浄原液が引き出され、当該洗浄原液は透析液回収通路14および洗浄液バッファ通路29を流通して、上記給水通路15に流入することとなる(
図3の太線の部分)。
このように、上記第1、第2計量チャンバ11、12の供給室11a、12aに浄水を収容させることによって、洗浄原液の引き出し量を計量することができ、所定量の洗浄原液を透析液回路4に供給することができる。
【0029】
このようにして所定量の洗浄原液を透析液回路4に引き込んだら、制御手段Cは上記洗浄液バッファ通路29の開閉弁V20を閉鎖し、この状態で上記除水通路27の除水用計量ポンプP5を作動させる。
これにより上記透析液回収通路14から所定量の浄水が、上記除水通路27を介して排液通路16に排出され、これに伴なって所定量の洗浄原液が、上記接続通路5を介して洗浄液タンク30から透析液回収通路14に引き出される(
図3の太破線部分)。
このときの除水用計量ポンプP5による浄水の送液量は、引き出された洗浄原液が透析液回収通路14における除水通路27の接続位置の手前で停止するように設定されている(
図3の太破線のハッチング部分)。
【0030】
このような作業を行うことで、必要な量の洗浄原液を、第1、第2計量チャンバ11、12および除水用計量ポンプP5により計量して、洗浄液タンク30から透析液回路4に引き出すことができる。
しかしながら、洗浄液タンク30より引き出された洗浄原液は高濃度のままであって浄水により十分に希釈されておらず、このまま高濃度の洗浄原液を上記A液、B液、除水用計量ポンプP3、P4、P5に流通させてしまうと、これらを構成するセラミック製の部品を腐食させる恐れがある。
そこで本実施例では、洗浄原液を透析液回路4内に供給する際に、上記A液、B液、除水用計量ポンプP3、P4、P5に接触させないようにし、その状態から洗浄原液を浄水とともに循環させることで、洗浄原液を所定の濃度に希釈するようになっている。
【0031】
すなわち本実施例では
図4に示すように、所定量の洗浄原液を透析液回路4に引き出した状態から、制御手段Cが給水通路15の開閉弁V8、透析液供給通路13の開閉弁V3、A液通路21の開閉弁V11、B液通路22の開閉弁V14、フラッシング通路38の開閉弁V21を閉鎖したまま、さらに洗浄液バッファ通路29の開閉弁V20、上記透析液回収通路14の開閉弁V6、上記洗浄液タンク30の通路30aの開閉弁V18、上記排液通路16の開閉弁V17、給水通路15の給液弁V9、V10、排液通路16の排液弁V15、V16をそれぞれ閉鎖し、さらに上記循環通路28の開閉弁V19、上記送液通路24Aの開閉弁V12、上記排出通路24Bの開閉弁V13を開放するよう制御する。
これにより、給水通路15から洗浄筒24に接続された送液通路24Aおよび排出通路24Bを介して、給水通路15に戻る閉回路(
図4の太線部分)が形成される。
この状態で制御手段Cが給水ポンプP1を作動させることで、給水通路15に引き込まれた洗浄原液が上記閉回路を循環することとなり、その間に送液通路24Aおよび排出通路24Bの浄水と撹拌されて希釈されることとなる。
【0032】
続いて制御手段Cは、
図5に示すように、洗浄液バッファ通路29の開閉弁V20、分岐通路19の開閉弁V7、透析液回収通路14の開閉弁V6および透析液供給通路13の開閉弁V3を開放し、さらに透析液供給通路13の供給弁V1、V2および給水通路15の給液弁V9、透析液回収通路14の回収弁V5および排液通路16の排液弁V15、V16を開放する。
これにより、洗浄液バッファ通路29の洗浄原液が給水通路15に流入可能な状態となり、また給水通路15から第1計量チャンバ11の供給室11aを介して透析液供給通路13、接続通路5、透析液回収通路14を流通し、さらに第2計量チャンバ12の回収室12bを介して排液通路16、循環通路28を流通して給水通路15に戻る閉回路が形成される。またこのとき分岐通路19にも液体が流通するようになる(
図5の太線部分)。
この閉回路において、制御手段Cが給水ポンプP1に加えて透析液ポンプP2を作動させる。
すると給水ポンプP1の作用により、洗浄液バッファ通路29の洗浄原液が給水通路15から供給室11aを介して透析液供給通路13を流通し、さらに接続通路5を介して透析液回収通路14に至る。
一方透析液ポンプP2の作用により、透析液回収通路14の洗浄原液が回収室12bを介して排液通路16を流通し、一部は分岐通路19を流通して循環通路28より給水通路15に流入するようになる。
このようにして、洗浄液バッファ通路29および透析液回収通路14に引き込まれた洗浄原液は、第1計量チャンバ11の供給室11a、透析液供給通路13、透析液回収通路14、第2計量チャンバ12の回収室12b、排液通路16、分岐通路19、循環通路28を流通しながら、浄水と撹拌されて希釈されることとなる。
【0033】
その後、所定時間が経過すると、
図6に示すように、制御手段Cは上記給水通路15の給液弁V9を閉鎖するとともに給液弁V10を開放して、第2計量チャンバ12の供給室12aの通過を可能とし、さらに透析液回収通路14の回収弁V5を閉鎖するとともに回収弁V4を開放して、第1計量チャンバ11の回収室11bの通過を可能にする。
これにより、給水通路15を流通する洗浄原液および浄水は、給水ポンプP1の作用により第2計量チャンバ12の供給室12aを介して透析液供給通路13を流通するようになり、一方透析液回収通路14では、透析液ポンプP2の作用により、第1計量チャンバ11の回収室11bを介して排液通路16を流通するようになる。
以降は、制御手段Cが
図5の状態と
図6の状態とを交互に切り替えて、所定時間毎に第1計量チャンバ11の供給室11aと回収室11bとを、また第2計量チャンバ12の供給室12aと回収室12bとを、交互に通過可能とする。
このとき、第1計量チャンバ11の供給室11aまたは第2計量チャンバ12の供給室12aを通過可能とする場合には、排液弁V15または排液弁V16を開放して、反対側の回収室11bまたは回収室12bを流出可能な状態とする。
また第1計量チャンバ11の回収室11bまたは第2計量チャンバ12の回収室12bを通過可能とする場合には、供給弁V1または供給弁V2を開放して反対側の供給室11aまたは供給室12aを流出可能な状態とする。
【0034】
そして、以上のように形成される第1閉回路(
図5、
図6の太線部分)において浄水と洗浄原液とを循環させることにより、これらが攪拌されて上記洗浄原液が所定の濃度まで希釈される。また、これとともに当該第1閉回路が洗浄される。
ここで、上記制御手段Cは洗浄液の濃度が適正であることを判定する判定手段Dを備え、当該判定手段DはタイマーTを備えており、上記
図5または
図6に示す上記第1閉回路で透析液ポンプP2を作動させてから、洗浄原液が十分に希釈される所定時間が経過すると、当該洗浄原液が所定の濃度まで希釈されたものと判定するようになっている。
そして制御手段Cは、上記判定手段Dによって洗浄原液が所定の濃度まで希釈されたものと判定されると、上記除水用計量ポンプP5を作動させて、除水通路27に所定濃度に希釈された洗浄液を流通させる(
図6の太破線部分)。
制御手段Cは、除水用計量ポンプP5を上記除水通路27の洗浄に要する所定時間に亘って作動させることで、除水通路27および除水用計量ポンプP5のシリンダ32内の計量室32aを洗浄液によって洗浄することができる。
なお、上記判定手段Dは、上記透析液供給通路13に備えた濃度センサ17によって、上記第1閉回路を循環する浄水と洗浄原液との濃度(電気伝導度)を測定して、当該洗浄原液が所定の濃度まで希釈されたものと判定するようにしてもよい。
【0035】
このように上記除水用計量ポンプP5を所定時間作動させて、除水用計量ポンプP5および除水通路27を洗浄すると、
図7に示すように、制御手段Cは洗浄液バッファ通路29の開閉弁V20、分岐通路19の開閉弁V7、透析液回収通路14の開閉弁V6、透析液供給通路13の開閉弁V3、洗浄筒24の排出通路24Bの開閉弁V13を閉鎖するとともに、第1、第2計量チャンバ12の供給室11a、12aに接続される給液弁V9、V10、供給弁V1、V2および回収室11b、12bに接続される回収弁V4、V5、排液弁V15、V16を全て閉鎖し、さらに透析液ポンプP2、除水用計量ポンプP5の作動を停止するよう制御する。
また制御手段Cは、B液通路22の開閉弁V14、A液通路21の開閉弁V11を開放して第2閉回路(
図7の太線部分)を形成し、給水ポンプP1に加えてB液計量ポンプP4、A液計量ポンプP3を作動させる。
これにより、給水通路15からフラッシング通路38へと所定の濃度まで希釈された洗浄液が流入して、分岐通路19、循環通路28を介して給水通路15へと循環する。
一方、送液通路24Aの洗浄液の一部はB液通路22に流入して、溶解手段25の内部通路を通過し、さらにB液計量ポンプP4の作用で給水通路15に押し出されて送液通路24Aへと循環する。
また送液通路24Aの洗浄液の残りは、洗浄筒24に流入した後に吸い込み部材21aからA液通路21に流通して、A液計量ポンプP3の作用で給水通路15に押し出されて送液通路24Aへと循環する。
そして制御手段Cが上記第2閉回路で洗浄に要する所定時間にわたって洗浄液を循環させることにより、A液通路21、B液通路22および、A液計量ポンプP3、B液計量ポンプP4を構成する各シリンダ32の内部に形成された計量室32aを洗浄することができ、これと同時にフラッシング通路38およびB液計量ポンプP4、A液計量ポンプP3の各シリンダ32に形成した溝32bも洗浄することができる。
ここで、上記第2閉回路を流通する洗浄液は、既に所定の濃度に希釈されていることから、洗浄液が上記セラミック製の部材を備えた計量ポンプを流通しても、これらの部材の腐食が抑えられ、また適正な濃度の洗浄液によってこれらの洗浄も行うことができる。
【0036】
このようにして上記第1、第2閉回路で所定時間洗浄液を流通させたら、制御手段Cは洗浄液の循環を停止させ、透析液回路4を構成する通路に浄水を流通させて、洗浄液を浄水に置換する作業を行い、これにより透析液回路4の洗浄作業が終了する。
【0037】
上記実施例によれば、透析液回路4を洗浄液によって洗浄する際、
図3に示すように洗浄原液を透析液回路4内に引き込むが、その際高濃度の洗浄原液がA液、B液、除水用計量ポンプP3、P4、P5に接触しないようにしている。
さらに
図5、
図6に示すように、洗浄原液が浄水によって希釈されて所定濃度の洗浄液となるまで、当該洗浄液を上記第1閉回路に循環させることで、高濃度の洗浄原液がA液、B液、除水用計量ポンプP3、P4、P5を流通せず、セラミック製の部材が高濃度の洗浄原液によって損傷してしまうのを防止するようになっている。
そして、洗浄原液が所定の濃度まで希釈された後に、
図6、
図7に示すように洗浄液を上記第1、第2閉回路で循環させることで、A液、B液、除水用計量ポンプP3、P4、P5を所定の濃度の洗浄液によって洗浄することができる。
【0038】
なお、上記第1実施例では洗浄原液を収容した洗浄液タンク30、通路30aおよび開閉弁V18を上記接続通路5に設けているが、第2実施例として、これを上記洗浄液バッファ通路29に設けても構成することもできる。
具体的に説明すると、
図8は
図3で示した構成に対して、洗浄液バッファ通路29における透析液回収通路14との接続端部と開閉弁V20との間に、洗浄液タンク30の通路30aを接続するとともに、当該通路30aに開閉弁V18を設けたものとなっている。
このような構成においても、透析液回収通路14の開閉弁V6を閉鎖させた状態で給水ポンプP1を作動させることにより、上記第1実施例と同様洗浄液タンク30から洗浄液バッファ通路29に洗浄原液を引き出して給水通路15に送ることができる。
さらに洗浄液バッファ通路29の開閉弁V20を閉鎖させて除水用計量ポンプP5を作動させることにより、洗浄液バッファ通路29から透析液回収通路14の除水通路27の接続位置の手前まで洗浄原液を引き込むことができる。
この状態から、上記第1実施例と同様に上記第1閉回路により洗浄原液を浄水で所定濃度に希釈し、さらに第2閉回路を順次形成して透析液回路4の洗浄を行うことができる。
【0039】
また、本実施例では計量ポンプをセラミックポンプとし、洗浄原液をクエン酸を含むものとしているが、当該計量ポンプをその他の素材から構成した場合であっても、使用する洗浄原液に当該計量ポンプを構成する部材を損傷させる原料が含まれる場合には、上述した動作を行うことで計量ポンプの損傷を防止することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 血液透析装置(血液浄化装置) 2 透析器(血液浄化器)
4 透析液回路 5 接続通路
11 第1計量チャンバ(計量収容体)
12 第2計量チャンバ(計量収容体)
13 透析液供給通路 14 透析液回収通路
15 給水通路 16 排液通路
21 A液通路(透析液原液通路)
22 B液通路(透析液原液通路)
27 除水通路 28 循環通路
38 フラッシング通路
P3 A液計量ポンプ(原液用計量ポンプ)
P4 B液計量ポンプ(原液用計量ポンプ)
P5 除水用計量ポンプ