(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】精子採取器駆動装置
(51)【国際特許分類】
A61F 5/453 20060101AFI20221102BHJP
A61H 19/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61F5/453
A61H19/00
(21)【出願番号】P 2018229008
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】505167222
【氏名又は名称】株式会社典雅
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】中村 健吾
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 海
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-209502(JP,A)
【文献】特開2009-240759(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0053691(US,A1)
【文献】特表2014-533163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/453
A61F 6/04
A61H 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精子採取器を着脱自在に保持し、保持した精子採取器を回転させる精子採取器駆動装置であって、
一端が開口し、人手により把持可能なケーシングと、該ケーシングの開口内に回転自在に配置されて前記精子採取器の一部を着脱自在に保持する回転ホルダと、前記ケーシング内に配置されて前記回転ホルダを回転駆動するモータと、制御手段と、前記モータ,及び制御手段の電源となるバッテリーと、前記ケーシング外面に配置されて前記バッテリーから前記モータに対する電力の供給をオンオフする単一のスイッチと、前記ケーシングの回動角速度を検知する角速度センサと、を備え、
前記制御手段は、前記ケーシングの回動角度の変化に応じて前記モータの回転方向、及び回転速度を変化させることを特徴とする精子採取器駆動装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記スイッチがONされた時点で前記角速度センサが検出した前記ケーシングの回動角度を初期原点として取得し、
前記ケーシングが前記初期原点から一方向、又は他方向へ回動した場合に、回動後の前記初期原点との角度差にもとづいて前記モータの回動方向の切替え、及び回転速度を制御し、
前記ケーシングの回動角度が所定値を越えた場合には、前記初期原点から、当該所定値を越えた角度分だけ同方向へ原点を移動させることを特徴とする請求項1に記載の精子採取器駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学的な研究、治療のための要請や、性犯罪防止、売春防止、及び性病の蔓延防止等の社会的な要請に基づいて従来から使用されてきた精子採取器による精子採取効率を高めることができる精子採取器駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医学的な研究や治療上の必要から、男性の精子を採取するための精子採取器(射精促進装置)が種々提案されている。例えば、夫婦間の不妊の原因を究明するために採取した精子から夫の性機能を検査したり、性機能障害を治療したり、人工授精のために精子を確保、保管する等の医学的な必要性のために精子採取器が使用される。更に、個人的な性的欲求を解消させることによる性犯罪の予防、売春防止、性病感染者数の減少等の種々の社会的なニーズを満たすためにも、従来から低廉に入手することができ、しかも使い捨てタイプ、或いは洗浄可能なタイプであるために衛生上、健康上の問題も惹起しない簡易な精子採取器が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、ペニスが挿入可能な筒状の精子受けを挿着するための取付部、及びこの取付部と精子受けとの空隙を埋めるべくこの空隙に挿着される空気袋を有する精子受けの取付部と、さらにこの取付部を回転駆動する駆動装置を備えた精子受けの回転駆動装置が開示されている。
特許文献2には、ペニスを挿入する中空部を備えた弾性を有したスリーブと、スリーブを回転させる振動モータと、を備え、ペニスからの力を受けて作動する力センサーが生成する信号により振動モータの回転速度を増減させるようにした男性の性的刺激のための装置が開示されている。
特許文献1、2に係る装置は、何れもペニスを挿入する精子受け等を電動により回転、回動させてペニスを摺擦することにより、回転方向への刺激により射精を促進せんとするものである。
しかし、何れの射精促進装置にあっても、ペニスを精子受け等に挿入した使用中に精子受け等の回転速度、回転モード等を変化させるための多数のスイッチと、複雑なスイッチ操作が必要であり、実際の装置も大型化しているという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-209502公報
【文献】特開2014-533163公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、コア部材の内部にペニスを挿入した状態において、電動によりコア部材をペニスに対して回転させることによりペニスに対する刺激を促進する装置構成において、複数のスイッチによる複雑な操作を行うこと無く、装置の回動方向姿勢(角度)を操作、調整するだけで精子採取器の回転速度、回転方向を任意自在、且つ微細に調整することができる精子採取器駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る精子採取器駆動装置は、精子採取器を着脱自在に保持し、保持した精子採取器を回転させる手段であって、一端が開口し、人手により把持可能なケーシングと、該ケーシングの開口内に回転自在に配置されて前記精子採取器の一部を着脱自在に保持する回転ホルダと、前記ケーシング内に配置されて前記回転ホルダを回転駆動するモータと、制御手段と、前記モータ、及び制御手段の電源となるバッテリーと、前記ケーシング外面に配置されて前記バッテリーから前記モータに対する電力の供給をオンオフする単一のスイッチと、前記ケーシングの回動角速度を検知する角速度センサと、を備え、前記制御手段は、前記ケーシングの回動角度の変化に応じて前記モータの回転方向、及び回転速度を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のスイッチによる複雑なスイッチ操作を行うこと無く、単一のスイッチで装置の回動方向姿勢(角度)を操作、調整することにより精子採取器の回転速度、回転方向を任意自在、且つ微細に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)乃至(f)は本発明の一実施形態に係る精子採取器駆動装置の外観構成を示す正面図、左側面図、右側面図、上面図、底面図、背面図である。
【
図2】(a)及び(b)は同駆動装置の斜視図、及び
図1(d)のA-A断面図である。
【
図3】同駆動装置を構成する各パーツの分解斜視図である。
【
図4】駆動機構と回転体の各組立状態を示した斜視図である。
【
図5】(a)乃至(e)は駆動装置に適用可能な精子採取器の一例の構成を示す正面図、上面図、底面図、斜視図、及びB-B断面図である。
【
図6】(a)及び(b)は精子採取器駆動装置に精子採取器を装着した状態を示す正面図、及び斜視図であり、(c)及び(d)は精子採取器のキャップを外した状態を示す正面図、及び斜視図である。
【
図7】精子採取器駆動装置の操作角度範囲の説明図である。
【
図8】(a)(b)及び(c)は精子採取器を一方向へ回転させるための操作手順、及び回転動作を示す説明図である。
【
図9】(a)(b)及び(c)は初期最大回動角度を超えた操作手順、及び動作を示す説明図である。
【
図10】精子採取器駆動装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図11】精子採取器駆動装置の操作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
<精子採取器駆動装置の基本構成>
図1(a)乃至(f)は本発明の一実施形態に係る精子採取器駆動装置の外観構成を示す正面図、左側面図、右側面図、上面図、底面図、背面図であり、
図2(a)及び(b)は同駆動装置の斜視図、及びA-A断面図である。
図3は同駆動装置を構成する各パーツの分解斜視図であり、
図4は駆動機構と回転体の各組立状態を示した斜視図である。
【0010】
本発明に係る精子採取器駆動装置1は、精子採取器200を着脱自在に保持し、保持した精子採取器をその中心軸CLを中心として回転、回動させる手段である。
精子採取器駆動装置1(以下、駆動装置1と称する)は、人手により把持可能であり、且つ一端が開口したケーシング10と、ケーシングの開口内に回転自在に配置されて精子採取器の一部を着脱自在に保持する回転ホルダ(回転体)30と、ケーシング内に配置されて回転ホルダを回転駆動するモータ50と、制御手段(制御回路)60(
図10参照)と、モータ、及び制御回路等の電源となるバッテリー70と、ケーシング外面に配置されてバッテリーからモータに対する電力の供給をオンオフするスイッチ20と、ケーシング10の角速度を検知する角速度センサ(ジャイロセンサ)61(
図10参照)と、を概略備えている。
【0011】
制御手段60は、スイッチ20(67)がONされることによりバッテリー70からの電力が供給された状態において、角速度センサ61が検知したケーシング10の中心軸CLを中心とした回転方向角速度の変化に応じてモータの回転方向、及び回転速度を変化させる。
ケーシング10は、軸方向両端が開口した略筒状の中間ケース部12と、中間ケース部の下部開口に整合状態で取り付けられる上下方向に貫通した筒状の下部ケース部14と、中間ケース部の上部開口に整合状態で取り付けられて下端のみが開口した上部ケース部(蓋)16と、を備え、各ケース部12、14、16は比較的硬質のプラスチックから構成されている。中間ケース部12の下部開口と上部開口には夫々下部ケース部14と上部ケース部16の周縁部が整合した状態で組み付けられることにより
図1、
図2に示した如き完成体を形成する。中間ケース部12に対する下部ケース部14の固定は、例えば
図3中に示したように下部ケース部14の上部開口の周縁に沿って設けた係止凸片14aを中間ケースの下部開口側に設けた図示しない被係止凹所に嵌合させることにより実現する。中間ケースに対する上部ケースの固定構造も同様とする。
【0012】
ケーシング10内には、駆動機構Dと、駆動機構により回転駆動される回転ホルダ30と、が収納される。
駆動機構Dは、回路基板(メイン回路基板110、サブ回路基板120)100、モータワイヤ52によりメイン回路基板110と接続されるモータ50、バッテリーワイヤ72によりサブ回路基板120と接続されるバッテリー70、メイン回路基板110に搭載された角速度センサ(ジャイロセンサ)61等を備えている。本例において、モータ50はPWM(pulse width modulation)制御により回転速度が調整される。駆動機構Dは、ケーシング10内にネジ止め等により固定されるインナーケース80により支持されている。
回路基板100は、制御手段(主制御回路)60、角速度センサ61等を搭載したメイン回路基板110と、充電用のサブ回路基板(USBPCB)120と、を備える。
【0013】
回転ホルダ30は下方が開放した逆椀状の回転体であり、凹状の下面に精子採取器200の一端部を嵌合させて保持する採取器ホルダ32と、採取器ホルダの下部開口周縁に固定される底部筒状体34と、採取器ホルダの上面中央部にネジ止め固定されて中央の穴内にモータの出力軸を挿通固定するカップリング36と、を備える。採取器ホルダ32と底部筒状体34との協働により、駆動装置1の中心軸CLと精子採取器の中心軸CLとを同軸状に整合させた状態で精子採取器の底部(底面204a)を安定状態で嵌合保持することができる。また、回転ホルダ30はカップリング36を介してモータからの駆動力を受けて回転する際に、ケーシング10の内面によって偏心回転を規制されつつ安定して回転するため、保持した精子採取器の偏心回転をも効果的に防止することができる。
【0014】
インナーケース80は中間ケース部12内にネジ止め等により固定され、モータ収納部82、電池収納部84、回路基板取付部86等を備えている。
中間ケース部12の正面適所には丸穴12aが貫通形成され、丸穴内にはスイッチ片(スイッチ)20が嵌合されており、スイッチ片は常時においては丸穴内で外側に突出した状態にあるが、内部に向けて押し込まれるとメイン回路基板上のスイッチ部品(切替スイッチ、
図10参照)67をONする。スイッチ片への押圧を解除すると図示しないバネにより突出位置に復帰してスイッチ部品67をOFFにする。ケーシング内の丸穴12aと対向する位置にはメイン回路基板110が配置されており、丸穴12aとメイン回路基板110との間にはLEDレンズ22が配置されていてメイン回路基板上のLEDからの発光をスイッチ片側へ拡散する。スイッチ部品がON状態にある時にLEDが発光することによりスイッチ20が点灯し、操作者は駆動装置1の操作が可能状態にあることを知ることができる。
【0015】
図10のブロック図に示すように、メイン回路基板110は、主制御部としての制御手段(CPU、メモリ類)60、角速度センサ61、モータ駆動回路62、電流検知回路63、LED点灯回路64、LED65、スイッチ部品(切替えスイッチ)67等を搭載している。メイン回路基板110とモータ50との間はモータワイヤ52により電気的に接続されている。サブ回路基板120はバッテリーワイヤ72を介してバッテリー70と電気的に接続されている充電用の回路基板であり、ケーシング背面に設けた小穴24内に配置された充電用端子25に充電器のリード端子が接続されることによりサブ回路基板を介してバッテリーに充電がなされる。
【0016】
以上の構成を備えた精子採取器駆動装置1の一つの特徴は、精子採取器200を着脱自在に保持し、保持した精子採取器を回転させる手段であって、一端が開口し、人手により把持可能なケーシング10と、該ケーシングの開口内に回転自在に配置されて精子採取器の一部を着脱自在に保持する回転ホルダ30と、ケーシング内に配置されて回転ホルダを回転駆動するモータ50と、制御手段60と、モータ、及び制御手段の電源となるバッテリー70と、ケーシング外面に配置されてバッテリーからモータに対する電力の供給をオンオフする単一のスイッチ20、67と、ケーシングの回動角速度を検知する角速度センサ61と、を備え、制御手段は、ケーシングの回動角度の変化に応じてモータの回転方向、及び回転速度を変化させるようにした点にある。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、制御手段60が、スイッチ20、67がONされた時点で角速度センサ61が検出したケーシング10(駆動装置1)の回動角度を初期原点として取得し、ケーシングが初期原点から一方向、又は他方向へ回動した場合に、回動後の初期原点との角度差にもとづいてモータの回動方向、及び回転速度を制御し、ケーシングの回動角度が所定値(初期最大回動角度)を越えた場合には、初期原点から、当該所定値を越えた角度分だけ同方向へ原点を移動させるようにした点にある。
【0018】
<精子採取器の構成>
図5(a)乃至(e)は駆動装置に適用可能な精子採取器の一例の構成を示す正面図、上面図、底面図、斜視図、及びB-B断面図である。
精子採取器200は、比較的硬質のプラスチック製のケース202と、プラスチックケース内に収納されたコア部材210と、コア部材とケースとの間に配置されるクッション材220と、から概略構成されている。
ケース202は、長尺で一端(上端)が開口したケース本体204と、ケース本体の開口に着脱されるキャップ206と、を備えている。ケース本体の他端(下端)、即ち底面204aは、駆動装置1の下部開口内に露出して配置された回転ホルダ30の凹所内に対して弾性的に着脱可能となるように寸法、及び形状が設定されている。
【0019】
図6は駆動装置1の回転ホルダ30により精子採取器の底面204aを保持した状態を示しており、この保持状態においては駆動装置の中心軸CLと精子採取器200の中心軸CLとが一致して同一軸線上に位置するように構成されている。このため、回転ホルダ30を回転駆動した時における精子採取器の偏心回転を防止でき、コア部材210とペニスとの摺擦のバラツキ、偏りを防止して使用時の安定感を高めることができる。
コア部材210は、エラストマー等のゲル状樹脂から構成されており、ペニス挿入口212と、ペニス挿入口の内部に連設された挿入空所214と、を備えている。コア部材210は、ケース本体204内ではペニス挿入口212がケース本体開口部側を向くように収納されている。使用時にはキャップ206を外すことにより露出したペニス挿入口からペニスを挿入する。この状態で、
ケース本体を使用者が手に把持して軸方向移動させたり、駆動装置1を用いて回転させることにより、中空部内壁とペニスとの摺擦動作を繰り返して射精を促進する。
【0020】
<回転速度調整、及び回転方向切替えのための操作手順>
図6(a)及び(b)は精子採取器駆動装置に精子採取器を装着した状態を示す正面図、及び斜視図であり、(c)及び(d)は精子採取器のキャップを外した状態を示す正面図、及び斜視図である。
図7は精子採取器駆動装置の操作角度範囲の説明図であり、
図8(a)(b)及び(c)は精子採取器を一方向へ回転させるための操作手順、及び回転動作を示す説明図であり、
図9(a)(b)及び(c)は初期最大回動角度を超えた操作手順、及び動作を示す説明図である。また、
図10は精子採取器駆動装置の制御系の構成を示すブロック図であり、
図11は精子採取器駆動装置の操作手順を示すフローチャートである。
【0021】
図6に示すように精子採取器200の
底面204aを駆動装置1の回転ホルダ30の凹所内に嵌合させることにより駆動装置1と精子採取器の各中心軸CL同士を一致させた状態で脱落しないように保持させることができ、スイッチ20を長押しして電源をオンしてモータ50を駆動することにより回転ホルダ30を一方向(右回り)、又は他方向(左回り)へ回転させることができる。電源をOFFするにはスイッチ20を長押しする。
【0022】
本例では電源投入しただけではモータ50は回転を開始せず、駆動装置1をその中心軸CLを中心として初期原点(
図7)から右回り方向、或いは左回り方向へ所定角度(本例では5度)以上回転させる操作を行うことにより回転ホルダが右回り、或いは左回り方向へ回転を開始する。また、初期原点から所定角度、本例では左右5度の範囲(無回転範囲)未満で駆動装置1を回動させてもモータは駆動しない。モータ50は、左右5度の無回転範囲を超えて駆動装置1を回動させることにより始めて回転を開始する。回転ホルダ30の回転速度は駆動装置1を原点から右方向、又は左方向へMAX40度(初期最大回動角度)まで35度の範囲で回動させることにより連続的に増速させることができ、回動角度が初期原点から40度を越えるとそれ以上増速せずにMAX速度(例えば200rpm)を維持する。回転している回転ホルダを減速、或いは停止させるためには初期原点に向けて駆動装置1を逆回動させて回動角度を戻せば良い。
【0023】
一方向へ回転している回転ホルダ30の回転方向を逆方向へ切替えるためには、駆動装置1をその中心軸CLを中心としてそれまでの回動方向と逆方向へ回動させて初期原点から5度を越えて回動させることにより実現することができる。
駆動装置1の回動角度の変化は角速度センサ61が検知し、この検知信号に基づいて制御手段がモータ駆動回路62を制御することにより実現できる。本例では、回動角度が無回転範囲を超えた直後においてモータ駆動回路62からモータ50へ供給されるモータ制御信号のパルス幅は20%であり、回動角度が初期原点から40度以上になった時のモータ制御信号のパルス幅は100%である。
【0024】
図9、
図10により駆動装置1の操作手順について説明する。
まず、電源がONされていない状態にある回転ホルダ30の凹所内に精子採取器200をセットした状態で駆動装置1を使用者が手で把持し、コア部材210のペニス挿入口212にペニスを挿入する。このセット完了状態においてスイッチ20を長押し(例えば、0.8秒)して電源をONすることにより駆動装置1の操作が開始可能となる。
【0025】
まず、ステップS1においてスイッチ20を長押しすることによりバッテリー70からモータ50、回路基板100へ電流が供給され、制御手段60、角速度センサ61等を搭載したメイン回路基板110が動作可能な状態となる。
この段階で制御手段60はそのメモリ内に記憶してあった回動角度データをクリアする(ステップS2)。
ステップS3では、角速度センサ61が駆動装置1(ケーシング10、回転ホルダ30)の現在の回動角度に関するデータ(ジャイロデータ)を取得し、制御手段はこのジャイロデータに基づいて現在の回動角度を算出し、現在の回動角度を初期原点として設定する(ステップS4、S5)。
【0026】
その後、使用者が初期原点を越えて左右何れかの方向に駆動装置1を所定角度だけ回動させると、制御手段60は回動した後の角度に係るジャイロデータを角速度センサ61から取得して回動角度を算出し(ステップS6、7)、ステップS8において初期原点と現在の回動角度との角度差をチェックする。
ステップS8における角度差のチェックの結果にもとづいて制御手段はモータを次のように制御する。なお、本例では駆動装置1のプラス方向への回動により回転ホルダは右回りし、マイナス方向への回動により左回りするものとする。
【0027】
まず、初期原点と現在の回動角度との角度差が±0~5度未満の範囲内にある場合にはモータを停止させた状態を維持する(ステップS9、10)。
上述したように、回転速度(rpm)は、0~200rpmの範囲で、回動角度の変化に応じたPWM制御により調節が行われる。
回動角度が±5度の範囲内にあるときにはモータは停止しているが、±5度を超えた直後にモータ制御信号のパルス幅を20%に設定する。
初期原点と現在の回動角度との角度差が±5~40度の範囲内にある場合には回動角度に応じた回転速度にモータを制御する(ステップS11、12)。例えば、初期原点を規準として角度差が±5~40度の範囲内でモータ制御信号のパルス幅を20%~100%に連続して増減することにより、回転速度を制御する(
図8(b)(c))。
【0028】
初期原点と現在の回動角度との角度差が初期原点を規準として±40度を越えた場合には、回転ホルダの回転速度はMAX速度である200rpmが維持される(ステップS13、
図9(a)(b))が、駆動装置1の回動角度が±40度を超えた角度分、例えば10度越えている場合には、初期原点が同方向へ10度移動するように制御する(ステップS14)。
【0029】
例えば、当初の初期原点からプラス50度まで駆動装置1を右方向へ回動させた場合には、原点が当初の角度位置よりもプラス方向へ10度移動するため、回転ホルダを減速させるためにマイナス方向へ戻す操作に際しては新しい原点が規準とされる。この場合、無回転範囲が当初の無回転範囲よりもプラス方向へ10度ずれているため、プラス50度の回動角度から35度マイナス方向へ戻すことによりモータを停止させることができる。従って、プラス50度の回動角度から元の原点まで45度マイナス方向へ戻さずともモータを停止させることができ、操作性を高めることができる(
図8(c))。ケーシングを手で把持して回動させる角度範囲が左右40度を超えると手首が疲れるが、原点を移動させることにより操作者が操作し易いポジション、手首の姿勢から左右40度の範囲で回動させることにより無理のない角度範囲内での楽な操作が可能となる。
なお、どの段階においても、電流検知回路63が異常電流を検出した場合にはモータを緊急停止させるように構成する。
なお、回転ホルダの回転速度が所定に達した時にその回転速度をキープし続けたい場合にはスイッチ20を短押しすることにより回転速度を一定に維持することができる。一方、キープされていた回転速度を解除したい場合にはスイッチ20をもう一度短押しすることによりキープ状態を解除することができる。
【0030】
また、スイッチ20を短押ししたことにより回転速度がキープされている状態で回転方向を反転させる操作も可能である。即ち、右方向に回転速度が所定値に維持されている状態において、ケーシングを40度以上逆方向へ反転回動させることにより回転速度がキープされたまま回転ホルダの回転方向が反転する。
【0031】
<本発明の構成、作用、効果のまとめ>
第1の本発明に係る精子採取器駆動装置1は、保持した精子採取器を回転させる手段であって、ケーシング10と、該ケーシングの開口内に回転自在に配置されて精子採取器の一部を着脱自在に保持する回転ホルダ30と、回転ホルダを回転駆動するモータ50と、制御手段60と、バッテリー70と、単一のスイッチ20、67と、ケーシングの回動角速度を検知する角速度センサ61と、を備え、制御手段は、ケーシングの回動角度の変化に応じてモータの回転方向、及び回転速度を変化させることを特徴とする。
スイッチをオンして精子採取器駆動装置の電源をオンした後では、複雑なスイッチ操作を行うことなく、駆動装置自体の回動角度を変化させるだけの簡単な操作により、回転速度、回転方向を変化させてペニスに対するマッサージ効果を高めることが可能となる。特に、角速度センサが取得した回動角度、回動方向に関する情報に基づいて回転ホルダを回転させる構成であるため、装置の小型化、構成のシンプル化を図ることができた。スイッチ数が単一であり、このスイッチは主として電源のオンオフに使用されるので、従来品のように複数のスイッチを操作することによる煩雑さがなくなる。
【0032】
第2の本発明に係る精子採取器駆動装置1では、制御手段は、スイッチがONされた時点における角速度センサが検出したケーシングの回動角度を初期原点として取得し、ケーシングが初期原点から一方向、又は他方向へ回動した場合に、回動後の初期原点との角度差にもとづいてモータの回動方向の切替え、及び回転速度を制御し、ケーシングの回動角度が所定値(初期最大回動角度)を越えた場合には、初期原点から、当該所定値を越えた角度分だけ同方向へ原点を移動させることを特徴とする。
例えば、初期原点を規準として5度から40度までの回動範囲では、例えば回動角度に応じて回転ホルダの回転速度を連続的に増速させ、40度(所定値)に達した時点でマックスの回転速度とする。駆動装置を40度を越えて同方向へ回動させてもマックス速度に変化はない。一方、40度から戻し方向へ回動させると回動角度に応じた回転速度まで減速し、35度分だけ戻した時点で回転ホルダの回転を停止させることができる。初期原点から±5度の範囲は無回転範囲とし、この範囲では回転ホルダは回転しない。
また、駆動装置を初期原点から40度を超えて回動させた場合には、40度を超えた角度分だけ原点を移動させるようにしたため、戻し方向へ35度回動させればモータを停止させることができる。原点を固定してしまうと操作が難しくなり、操作者の手が疲れるが、本発明によればそのような不具合を無くすることができる。
【符号の説明】
【0033】
1…精子採取器駆動装置、10…ケーシング、12…中間ケース部、14…下部ケース部、14a…係止凸片、16…上部ケース部、20…スイッチ片(スイッチ)、22…LEDレンズ、24…小穴、25…充電用端子、30…回転ホルダ、32…採取器ホルダ、34…底部筒状体、36…カップリング、50…モータ、52…モータワイヤ、60…制御手段、61…角速度センサ、62…モータ駆動回路、63…電流検知回路、64…LED点灯回路、65…LED、67…スイッチ部品(スイッチ)、70…バッテリー、72…バッテリーワイヤ、80…インナーケース、82…モータ収納部、84…電池収納部、86…回路基板取付部、100…回路基板、110…メイン回路基板、120…サブ回路基板、200…精子採取器、202…ケース、204…ケース本体、204a…底面、206…キャップ、210…コア部材、212…ペニス挿入口、214…挿入空所、220…クッション材