(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】光書込装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20221102BHJP
G02B 26/12 20060101ALI20221102BHJP
B41J 2/47 20060101ALI20221102BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G02B26/10 F
G02B26/12
B41J2/47 101D
G03G15/04 111
(21)【出願番号】P 2018216300
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】谷山 彰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】田島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 崇
(72)【発明者】
【氏名】谷口 元
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-187986(JP,A)
【文献】特開2002-350768(JP,A)
【文献】特開平09-197320(JP,A)
【文献】特開平09-033844(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0046733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10 - 26/12
B41J 2/47
G03G 15/04
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を偏向走査する偏向器と、
光学素子と、前記偏向器及び前記光学素子を保持するハウジングとを備え、
前記ハウジングの支持板に、
ハウジングと一体成形されたリブ状部分である振動抑制部及び
、前記ハウジングを貫通する孔又は切欠き、あるいは前記ハウジングの肉厚を周囲に比べ薄くした領域である振動伝達遮断部により略包囲され前記偏向器を支持する包囲内領域を有し、
前記包囲内領域内に前記振動伝達遮断部に臨む半島状の平面部を有するとともに、前記包囲内領域外に
、前記ハウジングの振動方向
の振動が画像品質に影響する少なくとも1つ以上の前記光学素子用の素子保持部を配置したことを特徴とする光書込装置。
【請求項2】
前記振動抑制部は、前記ハウジングの表側及び裏側の一方又は双方に形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の光書込装置。
【請求項3】
前記偏向器の加振周波数における半島状の前記平面部の振動モードが、前記平面部の根元近傍を節とする面外方向振動であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の光書込装置。
【請求項4】
前記包囲内領域の外側において、前記振動伝達遮断部の近傍に前記振動抑制部が延びていることを特徴とする請求項1
~3のいずれか一項に記載の光書込装置。
【請求項5】
請求項1
~4のいずれか一項に記載の光書込装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル複写機、プリンターその他の画像形成装置に組み込まれる光書込装置及びその画像形成装置に関するものであり、特に偏向走査方式を用いた光書込装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偏向走査方式を用いた光書込装置では、半導体レーザー等の光源からの光線をポリゴンモーターなどの偏向器によって偏向走査し、帯電させた感光体である像担持体上に走査レンズ系等の光学素子によって光スポットとして結像させ像担持体上で移動させることによって、静電潜像の書込みを行う。
【0003】
偏向器を用いて感光体面上で光線を走査する光書込装置では、偏向器からの振動が光書込装置のハウジングを介して光学素子に伝わり光学素子が振動する。光学素子が振動すると、光学素子ごとの光学的感度により感光体上の結像位置も振動しズレが生じる。光学素子の振動が大きくなると、感光体上の結像位置のズレが大きくなり画像品質を低下させる懸念がある。特に走査方向と直交する副方向の結像位置のズレが周期的なピッチムラとして視認されやすく、1μm以下の位置ズレでも問題になることがある。
【0004】
光学素子の振動による画像品質の低下を抑制する手法として、画像品質に感度の高い光源部付近に局所的な剛性強化をして光源部の振動を抑制すること(特許文献1)、偏向器領域と光学素子領域との間に仕切壁を設けることでハウジングの剛性を強化し、振動を抑制すること(特許文献2)等が行われている。
【0005】
特許文献1の構成では、剛性強化のみに依存しており、偏向器からの振動が他の光学素子に伝わり画像品質が低下する可能性がある。また、特許文献2の構成でも、偏向器の振動のエネルギーを仕切壁内にとどめることができず、光学素子領域に振動が伝わってしまい、画像品質が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-115794号公報
【文献】特開2001-228425号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上記背景技術の課題に鑑みてなされたものであり、偏向器からの振動がハウジングを介して、光学素子に伝わることを抑制した光書込装置及びこれを組み込んだ画像形成装置を提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る光書込装置は、光を偏向走査する偏向器と、光学素子と、偏向器及び光学素子を保持するハウジングとを備え、ハウジングの支持板に、ハウジングと一体成形されたリブ状部分である振動抑制部及び、ハウジングを貫通する孔又は切欠き、あるいはハウジングの肉厚を周囲に比べ薄くした領域である振動伝達遮断部により略包囲され偏向器を支持する包囲内領域を有し、包囲内領域内に振動伝達遮断部に臨む半島状の平面部を有するとともに、包囲内領域外にハウジングの振動方向の振動が画像品質に影響する少なくとも1つ以上の光学素子用の素子保持部を配置している。
【0009】
上記光書込装置によれば、ハウジングの支持板に、振動抑制部及び振動伝達遮断部により略包囲され偏向器を支持する包囲内領域を有するとともに、包囲内領域内に振動伝達遮断部に臨む半島状の平面部を有するので、偏向器からの振動を平面部で遮断しつつ包囲内領域外に漏れ出すことができる。また、包囲内領域外にハウジングの振動方向の振動が画像品質に影響する少なくとも1つ以上の光学素子用の素子保持部を配置しているので、この種の振動感度が高い光学素子に伝わる振動によって画像品質が低下することを防止できる。
【0011】
本発明の別の側面では、振動抑制部は、ハウジングの表側及び裏側の一方又は双方に形成されている。この場合、振動抑制部の配置の自由度を生かして、光学素子や光路の配置の自由度を高め、ハウジング上の空間を有効活用することができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、偏向器の加振周波数における半島状の平面部の振動モードが、平面部の根元近傍を節とする面外方向振動である。このように、偏向器による加振周波数で平面部の先端が揺れるような振動モードにすることで、偏向器の振動を平面部に集中させる効果をより確実に得ることができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、包囲内領域の外側において、振動伝達遮断部の近傍に振動抑制部が延びている。振動伝達遮断部は、ハウジングの剛性を低くする可能性があるが、その外側にオーバーラップさせて剛性を強化する振動抑制部を延ばすことで、包囲した領域外での剛性低下による振動の増大を抑制することができる。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、上述した光書込装置を備えるものである。
【0018】
上記画像形成装置によれば、上述した特徴を有する光書込装置を備えるものであり、光学系の振動を抑えて画像品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の画像形成装置の概略構成を示す部分断面図である。
【
図2】(A)は、光書込装置である光プリントヘッドの平面図であり、(B)は、(A)に示す光プリントヘッドのAA側断面図である。
【
図3】
図2(A)等に示す光プリントヘッドの変形例を説明する側断面図である。
【
図4】
図2(A)等に示す光プリントヘッドの変形例を説明する平面図である。
【
図5】
図2(A)等に示す光プリントヘッドの変形例を説明する側断面図である。
【
図6】(A)は、実施例の光プリントヘッドのハウジングの振動状態を説明する図である。(B)~(D)は、比較例1~3の光プリントヘッドのハウジングの振動状態をそれぞれ説明する図である。
【
図7】第2実施形態の光プリントヘッドを説明する平面図である。
【
図8】第3実施形態の光プリントヘッドを説明する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態の画像形成装置100は、例えばデジタル複写機等として用いられ、原稿Dに形成された色画像を読み取る画像読取部10と、原稿Dに対応する画像を用紙Pに形成する画像形成部20と、画像形成部20に用紙Pを給紙する給紙部40と、用紙Pを搬送する搬送部51と、装置全体の動作を統括的に制御する制御部101とを含む。
【0021】
画像形成部20は、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの色毎に設けられた像形成ユニット70Y,70M,70C,70Kと、各色を合成したトナー像が形成される中間転写部52と、トナー像を定着させる定着部53とを備えている。
【0022】
画像形成部20のうち、画像形成ユニット70Yは、Y(イエロー)色の画像を形成する部分であり、感光ドラム71、帯電部72、光プリントヘッド(光書込装置)73、現像部74等を備えている。感光ドラム71は、Y色のトナー像を形成し、帯電部72は、感光ドラム71の周囲に配置されてコロナ放電により感光ドラム71の表面を感光体として帯電させ、光プリントヘッド73は、感光ドラム71に対してY色成分の画像に対応する光を照射し、現像部74は、感光ドラム71の表面にY色成分のトナーを付着させることにより静電潜像からトナー像を形成する。感光ドラム71は、円筒形状を有し、回転軸RXのまわりに回転する。感光ドラム71の円筒表面は、光プリントヘッド73による像を結像させる受光面71aとなっている。
【0023】
他の像形成ユニット70M,70C,70Kは、形成する画像の色が異なる以外はY色用の画像形成ユニット70Yと同様の構造及び機能を有するため、これらの構造等については説明を省略する。なお、像形成ユニット70は、4色の像形成ユニット70Y,70M,70C,70Kのうち任意のユニットを意味し、それぞれの色に適合させた要素として、感光ドラム71、帯電部72、光プリントヘッド73、及び現像部74を備える。
【0024】
図2(A)及び2(B)に示すように、光プリントヘッド(光書込装置)73は、所定波長の光線LBを射出する光源装置12と、光源装置12から出射された光線LBを偏向及び走査する偏向器13と、偏向器13を経た光束を円柱状の感光ドラム71の表面上に導く光学走査系14と、これらの光学要素を支持しつつ収納するハウジング18とを備える。ここで、光源装置12は、例えば半導体レーザー等の発光素子12aと、発光素子12aから射出された光を成形するレンズ、ミラー等の光学素子12bとを含み、発光素子12aは、画像情報に応じて偏向器13の回転動作と同期しながら発光制御される。偏向器13は、光源装置12からの光線LBを光学走査系14側に反射する回転多面鏡13aと、回転多面鏡13aを回転させるモータ部13bとを有する。光学走査系14は、fθレンズとも呼ばれる走査レンズ14aと、光路折曲げ用のミラー14b,14cとを有する。回転多面鏡13aにより、光線LBの向きをXYに平行な主方向に沿って変化させることができる。走査レンズ14aは、単一のレンズ素子で構成されるものに限らず、複数のレンズ素子で構成されたものであってもよい。ミラー14b,14cは、光線LBの射出方向を設定するためのものであり、画像形成部20の仕様等の条件に応じて個数や配置を適宜設定することができる。
【0025】
ハウジング18には、例えばアルミダイキャスト製の一体成形品であり、底面として水平方向に延びる支持板18iと、支持板18iを周囲から支持して鉛直方向に延びる壁体18jとを有する。支持板18iにおいて、光源装置12を固定する光源保持部18aと、偏向器13を固定する偏向器保持部18bと、光学走査系14を固定する素子保持部18c,18dとが設けられている。光源装置12は、支持板18iの表側18fにおいて、固定部81aを介して光源保持部18aに固定されている。偏向器13は、支持板18iの表側18fにおいて、固定部81bを介して偏向器保持部18bに固定されている。光学走査系14を構成する走査レンズ14aは、支持板18iの裏側18rにおいて、固定部81cを介して素子保持部18cに固定され、光学走査系14を構成するミラー14b,14cは、素子保持部18cとは別に設けた素子保持部18dに固定部81dを介して固定されている。
【0026】
ハウジング18の支持板18iには、偏向器13を囲むように振動防止枠91が形成されている。振動防止枠91は、走査レンズ14a等の光学素子や支持板18iの周辺を通過する光線と干渉しないように配置されている。振動防止枠91は、振動抑制部91aと振動伝達遮断部91bとを有する。振動防止枠91は、矩形であり、振動防止枠91の内側は、包囲内領域92となっている。包囲内領域92は、偏向器13を支持するとともに、振動抑制部91a及び振動伝達遮断部91bにより略包囲されている。支持板18iは、包囲内領域92内に、振動伝達遮断部91bに臨む半島状の可動平面部92aを有するとともに、振動抑制部91aと可動平面部92aとに囲まれた矩形板部92bを有する。振動抑制部91aは、ハウジング18又は支持板18iと一体成形され表側18fに突起するリブ状部分であり、矩形板部92bを3方向から囲む3辺の線状突起部分からなる。この場合、一体成形によって、複数部材に分かれている場合に比べ振動抑制部91aの部品コストや組立作業工数を圧縮でき、低コスト化に寄与することができる。振動伝達遮断部91bは、表側18fから裏側18rに貫通する孔又は切欠き95であり、可動平面部92aを3方向から囲む3辺の線状開口部分又はU字状開口部分からなる。この場合、振動伝達遮断部91bでの振動の遮断効率を高めることができる。
【0027】
可動平面部92aは、根元部92dにおいて矩形板部92bに固定されている。つまり、根元部92dは固定端であり、端部93は自由端として機能し走査の副方向に対応するZ方向に振動する。ここで、偏向器13の加振周波数における半島状の可動平面部92aの振動モードは、可動平面部92aの根元部92d近傍を節とする1次面外方向振動となっている。ここで、面外方向は副方向又はZ方向に相当する。このように、偏向器13による加振周波数で可動平面部92aの端部93が揺れるような振動モードにすることで、偏向器13の振動を可動平面部92aに集中させる効果をより確実に得ることができる。
【0028】
振動抑制部(リブ状部分)91aは、これにより囲んだ支持板18iの領域内の剛性を高めることにより、包囲内領域92内の矩形板部92bの振動を抑制する役割を有する。振動伝達遮断部91b又は孔95は、可動平面部92aの端部93の振動を許容することで、包囲内領域92内の振動が振動伝達遮断部91bを介して包囲内領域92外に漏れ出すことを防止する。包囲内領域92外において、光源保持部18aには、ハウジング18又は支持板18iの振動方向であるZ方向に光学的感度を持つ光源装置12が振動が抑制された状態で支持されており、結果的に、偏向器13に起因する光源装置12の振動、つまり光線LBの射出方向が±Z方向すなわち副方向に関して高速で偏向することによる結像位置のずれ延いては画像品質の低下が防止されている。仮に偏向器13の振動が光源装置12に直接的に十分な強度で伝わったとすると、
図2(B)に一点鎖線で概念的に示すように、光線LBdの射出方向がZ方向に振動するように偏向される。包囲内領域92外において、素子保持部18cには、ハウジング18又は支持板18iの振動方向であるZ方向に光学的感度を持つ光学素子としての走査レンズ14aが振動が抑制された状態で支持されており、結果的に、偏向器13に起因する走査レンズ14aの振動、つまり光線LBの射出方向が±Z方向に関して高速で偏向することによる結像位置のずれ延いては画像品質の低下が防止されている。包囲内領域92外において、素子保持部18dには、ハウジング18又は支持板18iの振動方向であるZ方向に光学的感度を持つ光学素子としてのミラー14b,14cが、振動が抑制された状態で支持されており、結果的に、偏向器13に起因するミラー14b,14cの振動による画像品質の低下が防止されている。
【0029】
光プリントヘッド73の動作について説明すると、光源装置12から出射された光線LBは、偏向器13において回転する回転多面鏡13aに入射し反射されつつ射出方向が変化する。回転多面鏡13aで反射された光線LBは、ミラー14b,14cで折り曲げられて走査レンズ14aに入射する。走査レンズ14aを経た光線LBは、感光ドラム71の表面に入射して電気的潜像を形成する。
【0030】
図3に変形例として示すように、振動抑制部(リブ状部分)91aは、ハウジング18又は支持板18iの表側18fではなくハウジング18又は支持板18iの裏側18rに突起するリブ状部分とすることができる。この場合も、振動抑制部91aは、ハウジング18又は支持板18iと一体成形され、包囲内領域92内の矩形板部92bの振動を抑制する。この場合、振動抑制部91aの配置の自由度を生かして、支持板18iにおける光学素子や光路の配置の自由度を高め、ハウジング18上の空間を有効活用することができる。
【0031】
図4に変形例として示すように、振動抑制部(リブ状部分)91aは、包囲内領域92の外側において、振動伝達遮断部91b又は孔95に沿って振動伝達遮断部91bの近傍領域に延びている。つまり、振動防止枠91の一部において、振動抑制部91aと振動伝達遮断部91bとが近接して重なって延びる領域が存在する。振動抑制部91aと振動伝達遮断部91bとをオーバーラップさせることで剛性を強化している。なお、図示を省略するが、振動抑制部91aと振動伝達遮断部91bとが若干離間していてもよい。つまり、振動防止枠91の一部が離間して開状態となっていてもよい。
【0032】
図示を省略するが、振動防止枠91や包囲内領域92の輪郭は、四角形に限らず、例えば楕円形、五角形以上の多角形、四角形の角を取ったもの等とできる。同様に、可動平面部92aも四角形に限らず曲線、面取り、切欠き等を含むものとできる。振動抑制部(リブ状部分)91aの長手方向を横断する断面形状も、矩形に限らず、半円弧状等の様々な形状とできる。
【0033】
図5に変形例として示すように、ミラー14b,14cを省略して、回転多面鏡13aで反射された光線LBを走査レンズ14aに直接入射させることもできる。この場合、走査レンズ14aは、偏向器13の支持板18iを挟んだ反対側に配置されないが、偏向器13は、矩形板部92bにおいて裏側18rに固定されることにより包囲内領域92内に支持されている。一方、走査レンズ14aは、包囲内領域92外に支持されている。
【0034】
以下、光プリントヘッド73の具体的な構造を前提とするシミュレーション結果について説明する。
【0035】
図6(A)は、実施例の光プリントヘッド73について、振動SIM(周波数応答解析)を行った結果を示し、破線の円で囲まれた振動が大きな領域外に、光源装置12用の光源保持部18aと、走査レンズ14a用の素子保持部18cとが配置されている。リブ状部分である振動抑制部91aは、包囲内領域92を略囲んでいるが、一部が欠けている。振動SIMの解析条件としては、偏向器13の設置個所、つまり偏向器保持部18bに、光プリントヘッド73の稼働時に偏向器13から発生する加振周波数(650Hz)で紙面垂直方向に加振力を加えた。
図6(A)中のコンター要素(濃淡分布)は、ハウジング18又は支持板18iの各箇所の紙面垂直方向の振動の大きさ又は振幅を表す。振動が比較的大きな振動領域VAは、包囲内領域92のうち可動平面部92aに限られたものとなっている。つまり、半島状の可動平面部92aに振動を集中させたことにより、包囲内領域92内に振動のエネルギーをとどめ、包囲内領域92外に振動が伝わることを抑制できることを表している。
【0036】
図6(B)は、比較例1の光プリントヘッドについて、振動SIM(周波数応答解析)を行った結果を示す。この場合、
図6(A)に示す実施例と異なり、振動防止枠91が形成されず包囲内領域92も存在しない。また、開口孔991bが形成されているが、半島状の可動平面部92aが存在しない。振動が比較的大きな振動領域VAは、ハウジング18の支持板18iの中央部や外縁部に大きく広がっており、光源保持部18aにも及んでいる。
【0037】
図6(C)は、比較例2の光プリントヘッドについて、振動SIM(周波数応答解析)を行った結果を示す。この場合、振動防止枠91が形成され包囲内領域92が存在する。ただし、開口孔991bが形成されているが、半島状の可動平面部92aが存在しない。振動が比較的大きな振動領域VAは、包囲内領域92外に大きく広がってハウジング18の支持板18iの中央部や外縁部に及んでおり、光源保持部18aにも及んでいる。
【0038】
図6(D)は、比較例3の光プリントヘッドについて、振動SIM(周波数応答解析)を行った結果を示す。この場合、振動伝達遮断部91bが形成され、半島状の可動平面部92aが存在する。ただし、振動抑制部91aが形成されず、振動防止枠91が存在しない。振動が比較的大きな振動領域VAは、ハウジング18の支持板18iの中央部や外縁部に大きく広がっており、光源保持部18aや素子保持部18cにも及んでいる。
【0039】
以上で説明した実施形態の光プリントヘッド(光書込装置)73又は画像形成装置100によれば、ハウジング18の支持板18iに、振動抑制部(リブ状部分)91aと振動伝達遮断部91b又は孔95とにより略包囲され偏向器13を支持する包囲内領域92を有するとともに、包囲内領域92内に振動伝達遮断部91bに臨む半島状の可動平面部92aを有するので、偏向器13からの振動を可動平面部92aで遮断しつつ包囲内領域92外に漏れ出すことを防止できる。また、包囲内領域92外にハウジング18の振動方向であるZ方向に光学的感度を持つ光学素子である走査レンズ14a及びミラー14b,14c用の素子保持部18c,18dを配置し、包囲内領域92外にハウジング18の振動方向に光学的感度を持つ光学素子である光源装置12用の素子保持部18aを配置しているので、この種の振動感度が高い光学素子である走査レンズ14a等に伝わる振動によって画像品質が低下することを防止できる。
【0040】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る画像形成装置及び光書込装置について説明する。なお、第2実施形態の画像形成装置及び光書込装置は第1実施形態の画像形成装置等を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
【0041】
図7に示すように、第2実施形態の光プリントヘッド(光書込装置)73では、走査レンズ14aの前段に、光学走査系14の一部をなすものとして入射側レンズ16が設けられている。入射側レンズ16は、振動防止枠91に囲まれた包囲内領域92に設けた半島状の可動平面部92aに配置されている。入射側レンズ16は、例えば柱状又は壁状のレンズであり、可動平面部92aの振動に平行なZ方向に垂直な断面がZ方向のどの位置でも同じ形状を有するものとなっている。入射側レンズ16は、素子保持部18eにおいて、固定部81eによって可動平面部92aに固定され、可動平面部92aとともにZ方向に高速で振動する。入射側レンズ16は、その形状的な特性から横のXY方向(主方向)にのみ感度を持ち、ハウジング18又は可動平面部92aの振動方向であるZ方向(副方向)に光学的感度を略持たない。この場合、包囲内領域92内にこの種の振動感度が低い入射側レンズ16を配置することで、画像品質への影響を抑えつつ、ハウジング18上の空間を有効に活用することができる。なお、入射側レンズ16は、可動平面部92aに限らず矩形板部92bに配置することができる。また、包囲内領域92に配置するZ方向に光学的感度を略持たない光学素子としては、レンズに限らずフィルターその他の様々な光学的な機能を有するものとできる。
【0042】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る画像形成装置及び光書込装置について説明する。なお、第3実施形態の画像形成装置及び光書込装置は第1実施形態の画像形成装置等を変形したものであり、特に説明しない事項は第1実施形態と同様である。
【0043】
図8に示すように、第3実施形態の光プリントヘッド(光書込装置)73では、振動防止枠91として、振動抑制部91aと振動伝達遮断部391bとを有する。振動伝達遮断部391bは、第1実施形態の場合のような孔ではなく、ハウジング18の肉厚を周囲に比べ薄くした肉薄領域395である。肉薄領域395は、弾性変形が大きく、可動平面部92aの端部93は、自由端に近い状態となっており、Z方向に比較的大きく振動する。
【0044】
第3実施形態の光プリントヘッド73では、振動防止枠91の一部として肉薄領域395を設けているので、振動防止枠91外への振動の漏れを抑制しつつハウジング18全体の剛性を維持することが容易になり、衝撃や荷重に強くなる。
【0045】
以上、実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ハウジング18の支持板18iに振動抑制部91aとして振動防止枠91に沿ってリブ状部分を設けているが、振動防止枠91の内外に追加のリブ状部分を設けてもよい。
【0046】
振動抑制部91aは、表側18f又は裏側18rの一方に限らず、表側18f及び裏側18rの双方に形成することができ、その場合、両者の形状が異なっていてもよい。
【0047】
上記実施形態の光プリントヘッド73内の部品配置、ハウジング18の形状又は厚み等も単なる例示であり、部品配置等は、光プリントヘッドの仕様に応じて適宜変更することができる。
【0048】
上記実施形態では、偏向器13をポリゴンミラー又は回転多面鏡13a等で構成されるとしたが、ガルバノミラーなど他の偏向器でも同様の効果を奏する。また、振動抑制部91aは、板金等の補強部材をハウジング18に固定したものでもよい。さらに、ハウジング18は、フレーム部分のみを説明したが、偏向器13等を保護するカバー等を付随させた構造を有している。
【0049】
偏向器13等を支持する支持板18iは、水平方向に配置されるものに限らず、鉛直方向に配置されるものであってもよい。
【0050】
以上で説明した画像形成部20又は光プリントヘッド(光書込装置)73は、デジタル複写機に限らずプリンターに組み込むこともできる。
【符号の説明】
【0051】
10…画像読取部、 12…光源装置、 13…偏向器、 13a…回転多面鏡、 13b…モータ部、 14…光学走査系、 14a…走査レンズ、 14b,14c…ミラー、 16…フィルター、 18…ハウジング、 18a…光源保持部、 18a…素子保持部、 18b…偏向器保持部、 18c,18d,18e…素子保持部、 18f…表側、 18i…支持板、 18j…壁体、 18r…裏側、 20…画像形成部、 40…給紙部、 51…搬送部、 53…定着部、 70…像形成ユニット、 70Y,70M,70C,70K…像形成ユニット、 71…感光ドラム、 71a…受光面、 72…帯電部、 73…光プリントヘッド、 74…現像部、 81a,81b,81c,81d…固定部、 101…制御部、 91…振動防止枠、 91a…振動抑制部、 91b…振動伝達遮断部、 92…包囲内領域、 92a…可動平面部、 92b…矩形板部、 93…端部、 95…孔、 100…画像形成装置、 LB…光線