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特許7168911撮像環境測定器および撮像環境測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】撮像環境測定器および撮像環境測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20221102BHJP
   G02B 21/34 20060101ALI20221102BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G01N27/04 A
G02B21/34
C12M1/34 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019013390
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020122672
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 泰志
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0316442(US,A1)
【文献】特開2017-169365(JP,A)
【文献】国際公開第2015/136794(WO,A1)
【文献】特開2016-059323(JP,A)
【文献】特開2008-256927(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0002848(US,A1)
【文献】HIRANO et al.,Construction of Time-Lapse Scanning Electrochemical Microscopy with Temperature Control and Its Application To Evaluate the Preservation Effects of Antifreeze Proteins on Living Cells,Analytical Chemistry,米国,2008年12月01日,第80巻第23号,p.9349-9354
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
G02B 21/34
C12M 1/00-1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置とともに用いられる撮像環境測定器であって、
前記情報処理装置は、前記撮像環境測定器により測定される測定データに基づいて、撮像対象の試料が収容された容器内の撮像環境を提示可能に構成され、
前記撮像環境測定器は、
前記容器内に配置され、 前記容器内の湿度および温度の少なくとも一方に対応する物理量を検出するセンサ部と、
前記センサ部を駆動し、前記センサ部により検出された物理量を測定データとして取得する駆動部と、
前記容器外に配置された 第1のアンテナと、
前記駆動部により取得された測定データを前記第1のアンテナを通して送信する第1の通信部とを備え、
前記容器に設けられる、撮像環境測定器。
【請求項2】
前記センサ部、前記駆動部、前記第1のアンテナおよび前記第1の通信部が実装され、前記容器に取り付け可能なフレキシブル配線回路基板をさらに備える、請求項1記載の撮像環境測定器。
【請求項3】
前記フレキシブル配線回路基板は、前記センサ部が実装された第1の部分と、前記第1のアンテナが実装された第2の部分とを有し、前記第1の部分が前記容器内に収容されかつ前記第2の部分が前記容器外に位置するように前記容器に取り付け可能に構成された、請求項2記載の撮像環境測定器。
【請求項4】
前記第1の通信部は、前記第1のアンテナを通して電力を受信し、受信された電力を前記センサ部および前記駆動部に供給する、請求項1~3のいずれか一項に記載の撮像環境測定器。
【請求項5】
前記センサ部は、前記容器内の湿度を検出する湿度センサを含み、
前記駆動部は、前記湿度センサの周囲の温度をさらに取得可能に構成され、取得された前記湿度センサの周囲の温度に基づいて、前記湿度センサから取得された湿度を補償する、請求項1~4のいずれか一項に記載の撮像環境測定器。
【請求項6】
前記湿度センサの周囲の温度を検出し、検出された温度を前記駆動部に与える温度センサをさらに備える、請求項5記載の撮像環境測定器。
【請求項7】
前記センサ部は、前記容器内の温度を検出する第1の温度センサを含み、
前記駆動部は、前記容器外の温度を測定データとしてさらに取得可能に構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の撮像環境測定器。
【請求項8】
前記容器外の温度を検出し、検出された温度を前記駆動部に与える第2の温度センサをさらに備える、請求項7記載の撮像環境測定器。
【請求項9】
撮像対象の試料が収容された容器に設けられる請求項1~8のいずれか一項に記載の撮像環境測定器と、
前記撮像環境測定器により送信された測定データに基づいて、前記容器内の撮像環境を提示する情報処理装置とを備える、撮像環境測定システム。
【請求項10】
前記容器が載置可能に構成された容器載置部をさらに備え、
前記容器載置部は、
第2のアンテナと、
前記撮像環境測定器が近接されることにより、前記撮像環境測定器により送信された測定データを前記第2のアンテナを通して受信する第2の通信部とを含み、
前記情報処理装置は、前記第2の通信部により受信された測定データを取得する、請求項9記載の撮像環境測定システム。
【請求項11】
前記容器を加熱する加熱部をさらに備える、請求項9または10記載の撮像環境測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像環境測定器および撮像環境測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体細胞を用いた研究が盛んに行われている。このような細胞の培養が行われる際には、培養容器に培養対象の細胞および液体状の培地が収容される(例えば特許文献1参照)。この状態で、培養容器が細胞の増殖に適した温度および湿度に維持されたインキュベータの内部に収容される。これにより、培養容器内で細胞が培養される。
【0003】
作業者は、培養中の細胞を適宜観察するために、培養容器をインキュベータから取り出し、細胞観察装置にセットする。このような細胞観察装置としては、例えばインライン型ホログラフィック顕微鏡(IHM)が用いられる。細胞観察装置において撮像が行われることにより、培養容器内の細胞の画像が生成される。ここで、培養容器に結露が発生すると、生成される画像の質が劣化し、細胞を確認することができない。そこで、培養容器に結露が発生しないように、細胞観察装置の内部の温度は、インキュベータの内部と同様の温度に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-99260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、培養容器に結露が発生しないように細胞観察装置の内部の環境が適切に維持された場合でも、生成される画像にノイズが混入することがあった。この場合、細胞の撮像を再度行う必要がある。しかしながら、このような撮像を繰り返すと、作業者の負担が増加するとともに、作業の効率が低下する。そのため、試料の適切な撮像を容易にする撮像環境測定器および撮像環境測定システムを開発することが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、試料の適切な撮像を容易にする撮像環境測定器および撮像環境測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、画像にノイズが混入する原因を特定するために、種々の実験および考察を繰り返した結果、画像に不要な干渉縞が発生することに注目した。このような干渉縞は、培養容器に非常に小さい凹凸等の構造が発生することに起因すると考えられる。本発明者は、さらなる実験および考察を繰り返した結果、上記の構造は結露による目視できないほどの微小な水滴であること、および水滴は培養容器をインキュベータから取り出した後、室温下で20秒以内の短時間で発生することを見出した。さらに、本発明者は、培養容器に水滴が一度発生すると、たとえインキュベータの内部と同様の温度に維持された細胞観察装置の内部に培養容器を収容しても、結露は短時間では解消されないことを見出した。
【0008】
撮像前に培養容器を加熱することにより結露を解消することは可能である。しかしながら、作業者には、結露を解消するための適切な加熱量が不明である。そのため、加熱量が小さ過ぎる場合には、結露が解消されず、適切な撮像を安定的に行うことができない。一方、加熱量が大き過ぎる場合には、試料が損傷を受けることとなる。これらの知見に基づいて、本発明者は以下の本発明に想到した。
【0009】
(1)第1の発明に係る撮像環境測定器は、情報処理装置とともに用いられる撮像環境測定器であって、情報処理装置は、撮像環境測定器により測定される測定データに基づいて、撮像対象の試料が収容された容器内の撮像環境を提示可能に構成され、撮像環境測定器は、容器内に配置され、容器内の湿度および温度の少なくとも一方に対応する物理量を検出するセンサ部と、センサ部を駆動し、センサ部により検出された物理量を測定データとして取得する駆動部と、容器外に配置された第1のアンテナと、駆動部により取得された測定データを第1のアンテナを通して送信する第1の通信部とを備え、容器に設けられる。
【0010】
この撮像環境測定器においては、撮像対象の試料が収容された容器内の湿度および温度の少なくとも一方に対応する物理量が容器内に配置されたセンサ部により検出され、センサ部により検出された物理量が駆動部により測定データとして取得される。駆動部により取得された測定データが第1の通信部により容器外に配置された第1のアンテナを通して送信される。
【0011】
この構成によれば、撮像環境測定器により測定される測定データに基づいて、情報処理装置により容器内の撮像環境が提示される。したがって、使用者は、情報処理装置により提示された容器内の撮像環境を認識することにより、容器内の試料が適切に撮像可能であるか否かを判断することができる。容器内の試料を適切に撮像可能でない場合には、使用者は、試料が適切に撮像可能となるように容器の加熱を行うことができる。ここで、使用者は、容器内の撮像環境を認識することにより、画像にノイズが混入せずかつ試料が損傷を受けない適切な加熱量を把握することが可能である。これにより、試料の適切な撮像を容易に行うことができる。
【0012】
(2)撮像環境測定器は、センサ部、駆動部、第1のアンテナおよび第1の通信部が実装され、容器に取り付け可能なフレキシブル配線回路基板をさらに備えてもよい。この場合、折り曲げまたは折り畳んだ状態でフレキシブル配線回路基板を容器に取り付けることが可能である。これにより、撮像環境測定器をコンパクトに容器に取り付けることができる。また、容器自体にセンサ部、駆動部、第1のアンテナおよび第1の通信部を直接実装する必要がなく、所望の容器に撮像環境測定器を容易に取り付けることができる。
【0013】
(3)フレキシブル配線回路基板は、センサ部が実装された第1の部分と、第1のアンテナが実装された第2の部分とを有し、第1の部分が容器内に収容されかつ第2の部分が容器外に位置するように容器に取り付け可能に構成されてもよい。この場合、容器内の湿度または温度を正確に検出しつつ、測定データの送信を良好に行うことができる。
【0014】
(4)第1の通信部は、第1のアンテナを通して電力を受信し、受信された電力をセンサ部および駆動部に供給してもよい。この場合、センサ部および駆動部に電力を与えるためのバッテリを撮像環境測定器に設ける必要がない。これにより、撮像環境測定器を小型化および軽量化することができる。
【0015】
(5)センサ部は、容器内の湿度を検出する湿度センサを含み、駆動部は、湿度センサの周囲の温度をさらに取得可能に構成され、取得された湿度センサの周囲の温度に基づいて、湿度センサから取得された湿度を補償してもよい。この場合、容器内の湿度がより正確に測定される。これにより、情報処理装置は、容器内のより正確な撮像環境を提示することが可能となる。
【0016】
(6)撮像環境測定器は、湿度センサの周囲の温度を検出し、検出された温度を駆動部に与える温度センサをさらに備えてもよい。この場合、駆動部は、湿度センサの周囲の温度を温度センサから容易に取得することができる。
【0017】
(7)センサ部は、容器内の温度を検出する第1の温度センサを含み、駆動部は、容器外の温度を測定データとしてさらに取得可能に構成されてもよい。この場合、情報処理装置は、容器内の温度および容器外の温度に基づいて容器内のより正確な撮像環境を提示することが可能となる。
【0018】
(8)撮像環境測定器は、容器外の温度を検出し、検出された温度を駆動部に与える第2の温度センサをさらに備えてもよい。この場合、駆動部は、容器外の温度を第2の温度センサから容易に取得することができる。
【0019】
(9)第2の発明に係る撮像環境測定システムは、撮像対象の試料が収容された容器に設けられる第1の発明に係る撮像環境測定器と、撮像環境測定器により送信された測定データに基づいて、容器内の撮像環境を提示する情報処理装置とを備える。
【0020】
この撮像環境測定システムにおいては、撮像対象の試料が収容された容器に上記の撮像環境測定器が設けられる。また、撮像環境測定器により送信された測定データに基づいて、情報処理装置により容器内の撮像環境が提示される。この構成によれば、使用者は、情報処理装置により提示された容器内の撮像環境を認識することにより、容器内の試料が適切に撮像可能であるか否かを判断することができる。容器内の試料を適切に撮像可能でない場合には、使用者は、試料が適切に撮像可能となるように容器の加熱を行うことができる。これにより、試料の適切な撮像を容易に行うことができる。
【0021】
(10)撮像環境測定システムは、容器が載置可能に構成された容器載置部をさらに備え、容器載置部は、第2のアンテナと、撮像環境測定器が近接されることにより、撮像環境測定器により送信された測定データを第2のアンテナを通して受信する第2の通信部とを含み、情報処理装置は、第2の通信部により受信された測定データを取得してもよい。この場合、容器を容器載置部に安定的に載置することができる。また、容器が容器載置部に載置されることにより、近距離無線通信が成立し、容器載置部を介して撮像環境測定器から情報処理装置に測定データを与えることができる。
【0022】
(11)撮像環境測定システムは、容器を加熱する加熱部をさらに備えてもよい。この構成によれば、容器内の試料を適切に撮像可能でない場合、使用者は、加熱部を用いて試料が適切に撮像可能となるように容器の加熱を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、試料の適切な撮像を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像環境測定システムの構成を示す平面図および側面図である。
図2】培養容器の一例をそれぞれ示す平面図および側面図である。
図3図1の撮像環境測定器を含む撮像環境測定システムの構成を示す図である。
図4図3の容器載置部の構成を示す斜視図である。
図5】第1の実施の形態の変形例に係る撮像環境測定器の構成を示す平面図である。
図6】インキュベータから取り出された後の培養容器の画像である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る撮像環境測定器の構成を示す平面図である。
図8】第2の実施の形態に係る撮像環境測定システムの構成を示す図である。
図9】第2の実施の形態の変形例に係る撮像環境測定器の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[1]第1の実施の形態
(1)撮像環境測定器の構成
以下、本発明の実施の形態に係る撮像環境測定器具および撮像環境測定システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。図1(a),(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像環境測定器の構成をそれぞれ示す平面図および側面図である。図1(a),(b)に示すように、撮像環境測定器10は、FPC(Flexible Printed Circuits)基板11、センサ部12a、駆動部13、通信部14およびアンテナ15を備える。
【0026】
FPC基板11は、ベース絶縁層11a、配線11bおよびカバー絶縁層11cを含む。ベース絶縁層11aおよびカバー絶縁層11cは、例えばポリイミドにより折り曲げまたは折り畳み可能に形成される。センサ部12a、駆動部13、通信部14およびアンテナ15は、ベース絶縁層11a上に実装され、配線11bにより接続される。センサ部12aはFPC基板11の一端部に位置し、アンテナ15はFPC基板11の他端部に位置する。カバー絶縁層11cは、駆動部13、通信部14およびアンテナ15を覆うようにベース絶縁層11a上に形成される。
【0027】
本実施の形態においては、センサ部12aは湿度センサである。センサ部12aは、セルロース化合物、ポリビニール化合物または芳香族系ポリマー等の感湿膜材料を有する高分子系湿度センサであることが好ましい。この場合、撮像環境測定器10をコンパクトに構成することができる。センサ部12aは、感湿膜材料の所定の物理量(本例では電気抵抗)を湿度として検出する。センサ部12aは、金属酸化物系湿度センサであってもよい。
【0028】
駆動部13は、センサ部12aに交流電圧を印加してセンサ部12aを駆動する。また、駆動部13は、センサ部12aにより検出された電気抵抗に基づいて湿度を測定データとして算出する。
【0029】
通信部14は、例えばRFID(Radio Frequency Identification)通信回路である。アンテナ15は、例えばRFIDアンテナであり、比較的大きい寸法を有する。通信部14は、駆動部13により算出された測定データをアンテナ15を通して外部に送信する。また、通信部14は、アンテナ15を通して外部から電力を受信し、センサ部12aおよび駆動部13に与える。
【0030】
撮像環境測定器10は、細胞等の試料の培養に用いられる培養容器に取り付けられる。図2(a),(b)は、培養容器の一例をそれぞれ示す平面図および側面図である。図2(a)に示すように、培養容器1は、透明の樹脂部材により形成された培養プレート2とプレートカバー3とを含む。培養プレート2には、複数(本例では6個)のウェル4が形成される。各ウェル4には、培養対象の試料および液体状の培地が収容される。プレートカバー3は、複数のウェル4を覆うように培養プレート2に取り付けられる。
【0031】
図2(b)に示すように、プレートカバー3に撮像環境測定器10が取り付けられる。本例では、センサ部12aが実装されたFPC基板11の一端部が培養容器1内に収容された状態で、両面テープまたは接着剤等の固定部材によりプレートカバー3の内面に固定される。アンテナ15が実装されたFPC基板11の他端部は、培養容器1から外部に引き出される。この場合、培養容器1内の湿度を正確に検出しつつ、測定データの送信を良好に行うことができる。
【0032】
FPC基板11の他端部は、FPC基板11が折り曲げられることによりプレートカバー3の上面に載置される。これにより、FPC基板11の他端部に比較的大きいアンテナ15が実装された場合でも、撮像環境測定器10をコンパクトに培養容器1に取り付けることができる。また、FPC基板11の他端部はプレートカバー3に固定されておらず、後述する試料の撮像時には、図2(b)に矢印で示すように、プレートカバー3の上面から退避可能である。そのため、上方から撮像が行われる場合でも、FPC基板11の他端部により試料の撮像が阻害されることがない。
【0033】
(2)撮像環境測定システムの構成
図3は、図1の撮像環境測定器10を含む撮像環境測定システムの構成を示す図である。図3に示すように、撮像環境測定システム100は、インキュベータ110および観察装置120とともに用いられる。インキュベータ110の内部は、試料の増殖に適した温度(例えば37℃±1℃)および湿度(例えば95%)に維持される。培養容器1がインキュベータ110の内部に収容されることにより、培養容器1内で試料が培養される。
【0034】
使用者は、培養中の試料を適宜観察するために、培養容器1内の培地の交換時等に、培養容器1をインキュベータ110から取り出し、観察装置120にセットする。観察装置120は、例えばインライン型ホログラフィック顕微鏡(IHM)である。観察装置120の内部の温度は、インキュベータ110の内部と同様の温度に維持される。観察装置120は、培養容器1内の試料を撮像することにより試料の画像を生成する。
【0035】
撮像環境測定システム100は、撮像環境測定器10に加えて、容器載置部20、情報処理装置30および加熱部40を備える。図4(a),(b)は、図3の容器載置部20の構成を示す斜視図である。図4(a)に示すように、容器載置部20は、プレート部21、通信部22、アンテナ23および通信部24を含む。プレート部21は、培養容器1を載置可能な平板形状を有する。そのため、培養容器1をプレート部21に安定的に載置することができる。
【0036】
通信部22は、図1(a),(b)の通信部14と同様のRFID通信回路である。アンテナ23は、図1(a),(b)のアンテナ15と同様のRFIDアンテナであり、プレート部21に内蔵される。通信部22は、撮像環境測定器10から送信される測定データを、アンテナ23を通して受信する。また、通信部22は、アンテナ23を通して外部に電力を送信する。
【0037】
図4(b)に示すように、撮像環境測定器10は、培養容器1がプレート部21に載置されることにより、アンテナ23から送信される電力を受信し、動作可能となる。したがって、センサ部12aおよび駆動部13に電力を与えるためのバッテリを撮像環境測定器10に設ける必要がない。これにより、撮像環境測定器10を小型化および軽量化することができる。
【0038】
このように、撮像環境測定器10と容器載置部20との間では、近距離無線通信が行われる。そのため、厳密には、撮像環境測定器10は、培養容器1がプレート部21に載置されない場合でも、アンテナ23から数cm程度の距離までアンテナ23に近接されることにより、アンテナ23から送信される電力を受信し、動作可能となる。
【0039】
通信部24は、通信インターフェースであり、図3の情報処理装置30と通信可能に構成される。通信部24は、Wi-Fi(登録商標)規格、Bluetooth(登録商標)規格またはZigBee(登録商標)規格等に従った無線通信を行ってもよいし、USB(Universal Serial Bus)等を介した有線通信を行ってもよい。通信部24は、通信部22により受信された測定データを情報処理装置30に与える。
【0040】
情報処理装置30は、例えばパーソナルコンピュータである。情報処理装置30は、タブレット端末またはスマートデバイス等の移動自在な携帯端末であってもよい。情報処理装置30には、撮像環境測定器10に適合する専用のソフトウエアが予めインストールされている。情報処理装置30は、容器載置部20から測定データを一定時間ごとに取得し、取得された測定データに基づいて培養容器1内が結露した状態にあるか否かを使用者に通知する。
【0041】
本実施の形態においては、情報処理装置30は、測定データが示す湿度が所定のしきい値以上である場合、培養容器1内が結露した状態にあることを使用者に通知するが、本発明はこれに限定されない。情報処理装置30は、測定データが示す湿度が所定のしきい値未満である場合、培養容器1内が結露していない状態にあることを使用者に通知してもよい。
【0042】
通知の方法として、情報処理装置30が表示装置を有する場合には、通知の内容に対応する文字列が表示装置に表示されてもよい。情報処理装置30が音声出力装置を有する場合には、通知の内容に対応する音声(ブザー等の通知音を含む。)が音声出力装置から出力されてもよい。情報処理装置30がランプ等の表示灯を有する場合には、通知の内容に対応する態様で表示灯が点灯または消灯されてもよい。
【0043】
加熱部40は、例えばホットプレートであり、培養容器1を加熱可能に設けられる。加熱部40は、容器載置部20のプレート部21に内蔵されてもよい。使用者は、情報処理装置30による通知を認識し、培養容器1内が結露しないように加熱部40を操作することができる。
【0044】
(3)第1の実施の形態の変形例
図5は、第1の実施の形態の変形例に係る撮像環境測定器10の構成を示す平面図である。変形例に係る撮像環境測定器10について、図1の撮像環境測定器10と異なる点を説明する。図5に示すように、変形例に係る撮像環境測定器10は、温度センサ16をさらに備える。なお、通信部14は、アンテナ15を通して外部から受信した電力を温度センサ16にも与える。
【0045】
温度センサ16は、ベース絶縁層11aに実装され、配線11bにより駆動部13に接続される。温度センサ16は、例えば熱電対であり、センサ部12aの周囲の温度を検出する。駆動部13は、温度センサ16を駆動するとともに、温度センサ16により検出された温度を算出し、算出された温度に基づいて湿度を補償する。これにより、駆動部13は、培養容器1内の湿度をより正確に算出することができる。
【0046】
なお、本例では、FPC基板11のベース絶縁層11aおよびカバー絶縁層11cは、ポリイミドにより形成される。そのため、ベース絶縁層11aおよびカバー絶縁層11cがガラスエポキシにより形成される場合に比べて、FPC基板11の熱容量が小さい。すなわち、温度変化に対するFPC基板11の感度が高い。したがって、温度センサ16は、センサ部12aの周囲の温度をより正確に算出することができる。
【0047】
一方、本実施の形態の変形例においては、温度センサ16がFPC基板11に設けられるが、本発明はこれに限定されない。FPC基板11の外部にセンサ部12aの周囲の温度を検出する図示しない温度センサが設けられ、駆動部13が当該温度センサにより検出された温度を取得可能に構成される場合には、温度センサ16はFPC基板11に設けられなくてもよい。この場合、駆動部13は、当該温度センサから取得された温度に基づいて湿度を補償する。
【0048】
(4)効果
図6は、インキュベータ110から取り出された後の培養容器1の画像である。図6(a)~(d)は、培養容器1がインキュベータ110から取り出されてから20秒、60秒、100秒および150秒経過後のウェル4周辺をそれぞれ示す。図6(e)~(h)は、図6(a)~(d)における丸印が付された部分を拡大して示す。
【0049】
図6(a)~(d)に示すように、培養容器1がインキュベータ110から取り出され、室温下に置かれてから150秒経過した場合でも、目視では結露による水滴がプレートカバー3に付着することはほとんど確認されない。しかしながら、図6(e)~(f)に示すように、画像を拡大すると、培養容器1がインキュベータ110から取り出され、室温下に置かれてから20秒以内に結露による水滴がプレートカバー3に付着することが確認された。
【0050】
このような目視不可能なほどの微小な水滴がプレートカバー3に付着すると、観察装置120により生成される画像にノイズが混入する。また、プレートカバー3に水滴が一度付着すると、たとえインキュベータ110の内部と同様の温度に維持された観察装置120の内部に培養容器1を収容しても、水滴は短時間では除去されない。
【0051】
そこで、本実施の形態に係る撮像環境測定システム100においては、撮像対象の試料が収容された培養容器1に撮像環境測定器10が設けられる。撮像環境測定器10においては、培養容器1内の湿度がセンサ部12aにより検出される。検出された湿度が駆動部13により測定データとして取得される。取得された測定データが通信部14によりアンテナ15を通して送信される。
【0052】
培養容器1が容器載置部20に載置または近接されることにより、撮像環境測定器10により送信された測定データが容器載置部20を介して情報処理装置30に与えられる。測定データに基づいて、情報処理装置30により培養容器1内の撮像環境、具体的には、培養容器1内が結露した状態にあるか否かが提示される。
【0053】
したがって、使用者は、情報処理装置30により提示された培養容器1内の撮像環境を認識することにより、培養容器1内の試料が適切に撮像可能であるか否かを判断することができる。培養容器1内の試料を適切に撮像可能でない場合には、使用者は、試料が適切に撮像可能となるように加熱部40を操作して培養容器1の加熱を行うことができる。ここで、使用者は、培養容器1内の撮像環境を認識することにより、画像にノイズが混入せずかつ試料が損傷を受けない適切な加熱量を把握することが可能である。これにより、試料の適切な撮像を容易に行うことができる。
【0054】
また、本実施の形態においては、センサ部12a、駆動部13、通信部14およびアンテナ15がFPC基板11に実装され、FPC基板11が培養容器1に取り付けられる。この場合、培養容器1自体にセンサ部12a、駆動部13、通信部14およびアンテナ15を直接実装する必要がなく、所望の培養容器1に撮像環境測定器10を容易に取り付けることができる。
【0055】
容器載置部20は、インキュベータ110内に設けられてもよいし、観察装置120内に設けられてもよい。あるいは、撮像環境測定システム100に容器載置部20が複数設けられ、一部の容器載置部20がインキュベータ110内および観察装置120内等の所望の装置内に配置されてもよい。この場合、使用者は、インキュベータ110内で試料の培養を行いながら、あるいは、観察装置120内の試料の撮像の準備を行いながら、培養容器1内の撮像環境を認識することができる。
【0056】
[2]第2の実施の形態
(1)撮像環境測定システムの構成
第2の実施の形態に係る撮像環境測定システム100について、第1の実施の形態に係る撮像環境測定システム100と異なる点を説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態に係る撮像環境測定器10の構成を示す平面図である。図8は、第2の実施の形態に係る撮像環境測定システム100の構成を示す図である。本実施の形態に係る撮像環境測定システム100は、図7の撮像環境測定器10を含む。
【0057】
図7に示すように、本実施の形態においては、撮像環境測定器10は、センサ部12aに代えてセンサ部12bを備えるとともに、温度センサ17をさらに備える。本実施の形態においては、センサ部12bは温度センサである。センサ部12bおよび温度センサ17の各々は例えば熱電対であってもよい。センサ部12bおよび温度センサ17は、ベース絶縁層11aに実装され、配線11bにより駆動部13に接続される。
【0058】
図8に示すように、センサ部12bは、培養容器1内に収容され、培養容器1内の所定の物理量(本例では熱起電力)を温度として検出する。温度センサ17は、培養容器1から外部に引き出され、培養容器1外の温度を検出する。上記のように、本例では、FPC基板11のベース絶縁層11aおよびカバー絶縁層11cはポリイミドにより形成される。そのため、センサ部12bおよび温度センサ17は、それぞれ培養容器1内および培養容器1外の温度をより正確に算出することができる。
【0059】
駆動部13は、センサ部12bおよび温度センサ17の各々を駆動する。また、駆動部13、センサ部12bおよび温度センサ17の各々により検出された温度を測定データとして算出する。通信部14は、アンテナ15を通して外部から受信した電力を温度センサ17にも与える。また、通信部14は、駆動部13により算出された測定データをアンテナ15を通して外部に送信する。測定データは、容器載置部20を介して情報処理装置30に与えられる。
【0060】
情報処理装置30には、培養容器1内の温度と、培養容器1外の温度と、培養容器1内の湿度との対応関係を示す対応情報が記憶されている。情報処理装置30は、測定データおよび対応情報に基づいて、培養容器1内が結露した状態にあるか否かを使用者に通知する。対応情報は、例えば湿り空気線図であってもよい。
【0061】
具体的には、情報処理装置30は、培養容器1内の温度および培養容器1外の温度をそれぞれ乾球温度および湿球温度として、湿り空気線図から露点温度を推定する。推定された露点温度が培養容器1内の温度以上である場合、情報処理装置30は、培養容器1内が結露していない状態にあると判断する。
【0062】
他の判断方法として、情報処理装置30は、培養容器1内の温度および培養容器1外の温度をそれぞれ乾球温度および湿球温度として、湿り空気線図から培養容器1内の湿度を推定してもよい。また、推定された培養容器1内の湿度が所定のしきい値未満である場合、情報処理装置30は、培養容器1内が結露していない状態にあると判断してもよい。
【0063】
(2)第2の実施の形態の変形例
本実施の形態に係る撮像環境測定器10においては、温度センサ17がFPC基板11に設けられるが、本発明はこれに限定されない。図9は、第2の実施の形態の変形例に係る撮像環境測定器10の構成を示す平面図である。図9に示すように、温度センサ17は、FPC基板11に設けられなくてもよい。この場合、駆動部13は、FPC基板11の外部に設けられかつ培養容器1外の温度を検出する温度センサにより検出された温度を取得可能に構成され、当該温度センサにより検出された温度を算出する。
【0064】
また、本実施の形態に係る撮像環境測定器10は、センサ部12bが培養容器1内に収容されるように培養容器1に取り付けられるが、本発明はこれに限定されない。培養容器1内の温度と培養容器1外の所定の部分の温度との対応関係が既知である場合には、撮像環境測定器10は、センサ部12bが培養容器1内に収容されず、培養容器1外の当該所定の部分の温度を検出するように培養容器1に取り付けられてもよい。この場合、駆動部13は、センサ部12bにより検出された培養容器1外の所定の部分の温度に基づいて培養容器1内の温度を算出する。
【0065】
(3)効果
本実施の形態に係る撮像環境測定器10においては、培養容器1内の温度および培養容器1外の温度がセンサ部12bおよび温度センサ17によりそれぞれ検出される。検出された培養容器1内の温度および培養容器1外の温度が駆動部13により測定データとして取得される。取得された測定データが通信部14によりアンテナ15を通して送信される。測定データと湿り空気線図等の対応情報とに基づいて、情報処理装置30により培養容器1内の撮像環境が提示される。
【0066】
したがって、第1の実施の形態と同様に、使用者は、情報処理装置30により提示された培養容器1内の撮像環境を認識することにより、培養容器1内の試料が適切に撮像可能であるか否かを判断することができる。培養容器1内の試料を適切に撮像可能でない場合には、使用者は、試料が適切に撮像可能となるように加熱部40を操作して培養容器1の加熱を行うことができる。ここで、使用者は、培養容器1内の撮像環境を認識することにより、画像にノイズが混入せずかつ試料が損傷を受けない適切な加熱量を把握することが可能である。これにより、試料の適切な撮像を容易に行うことができる。
【0067】
[3]他の実施の形態
(1)第1の実施の形態において、センサ部12a、駆動部13、通信部14およびアンテナ15がFPC基板11に実装されるが、本発明はこれに限定されない。センサ部12a、駆動部13、通信部14およびアンテナ15の少なくとも一部がリジッド基板に実装されてもよい。あるいは、センサ部12a、駆動部13、通信部14およびアンテナ15の少なくとも一部が培養容器1に実装され、印刷技術により形成された配線により接続されてもよい。
【0068】
同様に、第2の実施の形態において、センサ部12b、駆動部13、通信部14、アンテナ15および温度センサ17がFPC基板11に実装されるが、本発明はこれに限定されない。センサ部12b、駆動部13、通信部14、アンテナ15および温度センサ17の少なくとも一部がリジッド基板に実装されてもよい。あるいは、センサ部12b、駆動部13、通信部14、アンテナ15および温度センサ17の少なくとも一部が培養容器1に実装され、印刷技術により形成された配線により接続されてもよい。
【0069】
(2)上記実施の形態において、センサ部12a,12bは湿度および温度の少なくとも一方に対応する物理量を検出するが、本発明はこれに限定されない。センサ部12a,12bは湿度および温度の両方に対応する物理量を検出し、情報処理装置30は、検出された湿度および温度の両方に基づいて培養容器1内が結露した状態にあるか否かを使用者に通知してもよい。
【0070】
(3)上記実施の形態において、情報処理装置30は、容器載置部20を介して撮像環境測定器10から測定データを取得するが、本発明はこれに限定されない。情報処理装置30は、容器載置部20を介さずに撮像環境測定器10から測定データを直接取得してもよい。
【0071】
(4)上記実施の形態において、情報処理装置30は、培養容器1内が結露した状態にあるか否かを使用者に通知するが、本発明はこれに限定されない。情報処理装置30は、培養容器1内の温度または湿度を撮像環境として提示してもよい。
【0072】
(5)上記実施の形態において、撮像環境測定器10は細胞等の試料撮像環境を測定するために用いられるが、本発明はこれに限定されない。撮像環境測定器10は、低温での保管が必要な試料、または温度環境の変化に対して脆弱性を有する試料の撮像環境をリアルタイムに測定するために用いられてもよい。
【0073】
[4]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
上記実施の形態においては、培養容器1が容器の例であり、アンテナ15,23がそれぞれ第1および第2のアンテナの例であり、通信部14,22がそれぞれ第1および第2の通信部の例であり、FPC基板11がフレキシブル配線回路基板の例である。第1の実施の形態においては、センサ部12aがセンサ部および湿度センサの例であり、温度センサ16が温度センサの例である。第2の実施の形態においては、センサ部12bがセンサ部および第1の温度センサの例であり、温度センサ17が第2の温度センサの例である。
[5]参考形態
(1)第1の参考形態に係る撮像環境測定器は、情報処理装置とともに用いられる撮像環境測定器であって、情報処理装置は、撮像環境測定器により測定される測定データに基づいて、撮像対象の試料が収容された容器内の撮像環境を提示可能に構成され、容器内の湿度および温度の少なくとも一方に対応する物理量を検出するセンサ部と、センサ部を駆動し、センサ部により検出された物理量を測定データとして取得する駆動部と、第1のアンテナと、駆動部により取得された測定データを第1のアンテナを通して送信する第1の通信部とを備え、容器に設けられる。
この撮像環境測定器においては、撮像対象の試料が収容された容器内の湿度および温度の少なくとも一方に対応する物理量がセンサ部により検出され、センサ部により検出された物理量が駆動部により測定データとして取得される。駆動部により取得された測定データが第1の通信部により第1のアンテナを通して送信される。
この構成によれば、撮像環境測定器により測定される測定データに基づいて、情報処理装置により容器内の撮像環境が提示される。したがって、使用者は、情報処理装置により提示された容器内の撮像環境を認識することにより、容器内の試料が適切に撮像可能であるか否かを判断することができる。容器内の試料を適切に撮像可能でない場合には、使用者は、試料が適切に撮像可能となるように容器の加熱を行うことができる。ここで、使用者は、容器内の撮像環境を認識することにより、画像にノイズが混入せずかつ試料が損傷を受けない適切な加熱量を把握することが可能である。これにより、試料の適切な撮像を容易に行うことができる。
(2)撮像環境測定器は、センサ部、駆動部、第1のアンテナおよび第1の通信部が実装され、容器に取り付け可能なフレキシブル配線回路基板をさらに備えてもよい。この場合、折り曲げまたは折り畳んだ状態でフレキシブル配線回路基板を容器に取り付けることが可能である。これにより、撮像環境測定器をコンパクトに容器に取り付けることができる。また、容器自体にセンサ部、駆動部、第1のアンテナおよび第1の通信部を直接実装する必要がなく、所望の容器に撮像環境測定器を容易に取り付けることができる。
(3)フレキシブル配線回路基板は、センサ部が実装された第1の部分と、第1のアンテナが実装された第2の部分とを有し、第1の部分が容器内に収容されかつ第2の部分が容器外に位置するように容器に取り付け可能に構成されてもよい。この場合、容器内の湿度または温度を正確に検出しつつ、測定データの送信を良好に行うことができる。
(4)第1の通信部は、第1のアンテナを通して電力を受信し、受信された電力をセンサ部および駆動部に供給してもよい。この場合、センサ部および駆動部に電力を与えるためのバッテリを撮像環境測定器に設ける必要がない。これにより、撮像環境測定器を小型化および軽量化することができる。
(5)センサ部は、容器内の湿度を検出する湿度センサを含み、駆動部は、湿度センサの周囲の温度をさらに取得可能に構成され、取得された湿度センサの周囲の温度に基づいて、湿度センサから取得された湿度を補償してもよい。この場合、容器内の湿度がより正確に測定される。これにより、情報処理装置は、容器内のより正確な撮像環境を提示することが可能となる。
(6)撮像環境測定器は、湿度センサの周囲の温度を検出し、検出された温度を駆動部に与える温度センサをさらに備えてもよい。この場合、駆動部は、湿度センサの周囲の温度を温度センサから容易に取得することができる。
(7)センサ部は、容器内の温度を検出する第1の温度センサを含み、駆動部は、容器外の温度を測定データとしてさらに取得可能に構成されてもよい。この場合、情報処理装置は、容器内の温度および容器外の温度に基づいて容器内のより正確な撮像環境を提示することが可能となる。
(8)撮像環境測定器は、容器外の温度を検出し、検出された温度を駆動部に与える第2の温度センサをさらに備えてもよい。この場合、駆動部は、容器外の温度を第2の温度センサから容易に取得することができる。
(9)第2の参考形態に係る撮像環境測定システムは、撮像対象の試料が収容された容器に設けられる第1の参考形態に係る撮像環境測定器と、撮像環境測定器により送信された測定データに基づいて、容器内の撮像環境を提示する情報処理装置とを備える。
この撮像環境測定システムにおいては、撮像対象の試料が収容された容器に上記の撮像環境測定器が設けられる。また、撮像環境測定器により送信された測定データに基づいて、情報処理装置により容器内の撮像環境が提示される。この構成によれば、使用者は、情報処理装置により提示された容器内の撮像環境を認識することにより、容器内の試料が適切に撮像可能であるか否かを判断することができる。容器内の試料を適切に撮像可能でない場合には、使用者は、試料が適切に撮像可能となるように容器の加熱を行うことができる。これにより、試料の適切な撮像を容易に行うことができる。
(10)撮像環境測定システムは、容器が載置可能に構成された容器載置部をさらに備え、容器載置部は、第2のアンテナと、撮像環境測定器が近接されることにより、撮像環境測定器により送信された測定データを第2のアンテナを通して受信する第2の通信部とを含み、情報処理装置は、第2の通信部により受信された測定データを取得してもよい。この場合、容器を容器載置部に安定的に載置することができる。また、容器が容器載置部に載置されることにより、近距離無線通信が成立し、容器載置部を介して撮像環境測定器から情報処理装置に測定データを与えることができる。
(11)撮像環境測定システムは、容器を加熱する加熱部をさらに備えてもよい。この構成によれば、容器内の試料を適切に撮像可能でない場合、使用者は、加熱部を用いて試料が適切に撮像可能となるように容器の加熱を行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
1…培養容器,2…培養プレート,3…プレートカバー,4…ウェル,10…撮像環境測定器,11…FPC基板,11a…ベース絶縁層,11b…配線,11c…カバー絶縁層,12a,12b…センサ部,13…駆動部,14,22,24…通信部,15,23…アンテナ,16,17…温度センサ,20…容器載置部,21…プレート部,30…情報処理装置,40…加熱部,100…撮像環境測定システム,110…インキュベータ,120…観察装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9