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特許7168917クロマトグラフ用吸光度検出器および基準位置検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】クロマトグラフ用吸光度検出器および基準位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/74 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
G01N30/74 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020566061
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2019001353
(87)【国際公開番号】W WO2020148878
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】米倉 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真人
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-081991(JP,A)
【文献】特開平04-031747(JP,A)
【文献】特開平09-096560(JP,A)
【文献】特開平04-315020(JP,A)
【文献】特開2003-315020(JP,A)
【文献】特開2003-090794(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140617(WO,A1)
【文献】特開昭61-237024(JP,A)
【文献】特開昭60-129645(JP,A)
【文献】特開2013-11473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/74,
G01N 21/27,21/59,
G01J 1/04,3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源により発生された光を受けるフローセルと、
前記フローセルを透過した光を検出する光検出器と、
前記光源から前記フローセルへの光路に回転可能に配置され、前記光路における光の少なくとも一部を遮る遮光部材と、
前記遮光部材を回転させることにより、前記光源から前記フローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光状態と前記光源から前記フローセルへの光を遮らない非遮光状態とに前記遮光部材を変化させるモータと、
試料の吸光度の検出を行う通常動作前の基準位置検出動作時に、前記モータを回転させることにより前記遮光部材を回転方向における任意の初期位置から回転させるとともに前記光検出器の受光量変化を取得し、取得した受光量変化に基づいて、前記遮光部材が前記光路に対して予め定められた一定の角度をなすときの前記遮光部材の回転位置であって前記初期位置に対する相対的な回転位置を、前記遮光部材の回転方向における前記遮光部材の基準位置として検出する基準位置検出部と
前記通常動作時に、前記フローセルに試料が流れる状態で、前記基準位置検出部により検出された前記基準位置に基づいて前記モータの回転位置を制御することにより、前記遮光部材を前記遮光状態と前記非遮光状態とに変化させる通常動作制御部とを備えた、クロマトグラフ用吸光度検出器。
【請求項2】
前記基準位置検出部は、前記遮光部材を1回転させる間に、前記光検出器の受光量変化を取得し、取得した受光量変化に基づいて前記遮光部材の回転方向における前記遮光部材の基準位置を検出する、請求項1記載のクロマトグラフ用吸光度検出器。
【請求項3】
前記基準位置検出部は、前記取得した受光量変化における特定の状態または変化を有する部分に対応する前記遮光部材の回転位置に基づいて前記遮光部材の基準位置を検出する、請求項1記載のクロマトグラフ用吸光度検出器。
【請求項4】
光源と、
前記光源により発生された光を受けるフローセルと、
前記フローセルを透過した光を検出する光検出器と、
前記光源から前記フローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光部材と、
前記遮光部材を回転させることにより、前記光源から前記フローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光状態と前記光源から前記フローセルへの光を遮らない非遮光状態とに前記遮光部材を変化させるモータと、
前記モータを回転させるとともに前記光検出器の受光量変化を取得し、取得した受光量変化に基づいて前記遮光部材の回転方向における前記遮光部材の基準位置を検出する基準位置検出部とを備え、
前記基準位置検出部は、前記光検出器の受光量が予め定められた値以下になる前記モータの回転角度範囲の略中点を基準位置として検出する、クロマトグラフ用吸光度検出器。
【請求項5】
前記基準位置検出部により検出された基準位置における前記モータの回転角度を基準として前記遮光部材を前記遮光状態と前記非遮光状態とに切り替える、請求項1~4のいずれか一項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器。
【請求項6】
前記遮光部材は、光を遮るシャッタおよび特定の波長の光を透過させる一または複数のフィルタのうち少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器。
【請求項7】
吸光度検出器において光源からフローセルへの光路に回転可能に配置されて前記光路における光の少なくとも一部を遮る遮光部材の基準位置を検出する基準位置検出方法であって、
前記吸光度検出器における前記光源により光を発生させるステップと、
試料の吸光度を検出する通常動作前の基準位置検出動作時に、モータにより前記遮光部材を回転方向における任意の初期位置から回転させることにより、前記光源から前記フローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光状態と前記光源からフローセルへの光を遮らない非遮光状態とに前記遮光部材を変化させるステップと、
前記基準位置検出動作時の前記遮光部材の回転時に前記フローセルを透過した光を光検出器により検出するステップと、
前記基準位置検出動作時に、前記遮光部材の回転に伴う前記光検出器の受光量変化を取得し、取得した受光量変化に基づいて、前記遮光部材が前記光路に対して予め定められた一定の角度をなすときの前記遮光部材の回転位置であって前記初期位置に対する相対的な回転位置を、前記遮光部材の回転方向における基準位置を検出するステップと
前記通常動作時に、前記フローセルに試料が流れる状態で、前記検出された前記基準位置に基づいて前記モータの回転位置を制御することにより、前記遮光部材を前記遮光状態と前記非遮光状態とに変化させるステップとを含む、吸光度検出方法。
【請求項8】
吸光度検出器において光源からフローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光部材の基準位置を検出する基準位置検出方法であって、
前記吸光度検出器における前記光源により光を発生させるステップと、
前記遮光部材を回転させることにより、前記光源から前記フローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光状態と前記光源からフローセルへの光を遮らない非遮光状態とに前記遮光部材を変化させるステップと、
前記遮光部材の回転時に前記フローセルを透過した光を光検出器により検出するステップと、
前記遮光部材の回転に伴う前記光検出器の受光量変化を取得し、取得した受光量変化に基づいて前記遮光部材の回転方向における基準位置を検出するステップとを含み、
前記遮光部材を変化させるステップは、モータにより前記遮光状態と前記非遮光状態とに前記遮光部材を変化させることを含み、
前記基準位置を検出するステップは、前記光検出器の受光量が予め定められた値以下になる前記モータの回転角度範囲の略中点を基準位置として検出することを含む、基準位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフ用吸光度検出器および基準位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸光度検出器は、例えば液体クロマトグラフにおいて分析カラムで分離された試料の成分を検出するために使用される。吸光度検出器は、光源、シャッタ、光学系、フローセルおよび光検出器を備える(例えば、特許文献1参照)。フローセルには分析カラムからの溶出液が供給される。光源により発せられた光は光学系によりフローセルに導かれる。光検出器では、フローセルを透過した各波長範囲の光の強度の時間的な変化が検出される。シャッタは、モータを含むシャッタ駆動機構により光源からフローセルへの光を遮る状態と光源からフローセルへの光を遮らない状態とに回転可能に設けられる。
【文献】国際公開第2013/140617号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モータにより回転するシャッタにより光源からの光を遮るときには、シャッタを光源からフローセルに導かれる光に対してほぼ垂直にする必要がある。この場合、シャッタの基準位置(原点位置)からのモータの回転角度を制御することによりシャッタの角度が調整される。ここで、基準位置とは、シャッタの基準の回転位置である。吸光度検出器がオフされたときには、モータの回転軸は任意の回転位置で停止する。そのため、シャッタも任意の角度で停止し、基準位置で停止するとは限らない。そのため、吸光度検出器がオンされたときのシャッタの初期位置に対するシャッタの基準位置を検出することが必要である。シャッタの基準位置を検出するためにエンコーダが用いられている。
【0004】
しかしながら、エンコーダの部品コスト、エンコーダのための配線、およびエンコーダに供給される電力が必要となる。また、エンコーダには寿命があり、エンコーダのメンテナンスが必要となる。
【0005】
本発明の目的は、低コストおよび少ない手間で遮光部材の基準位置を検出することが可能なクロマトグラフ用吸光度検出器および基準位置検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
クロマトグラフ用吸光度検出器は、光源と、前記光源により発生された光を受けるフローセルと、前記フローセルを透過した光を検出する光検出器と、前記光源からフローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光部材と、前記遮光部材を回転させることにより、前記光源からフローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光状態と前記光源からフローセルへの光を遮らない非遮光状態とに前記遮光部材を変化させるモータと、前記モータを回転させるとともに前記光検出器の受光量変化を取得し、取得した受光量変化に基づいて前記遮光部材の回転方向における前記遮光部材の基準位置を検出する基準位置検出部とを備える。
【0007】
基準位置検出方法は、吸光度検出器において光源からフローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光部材の基準位置を検出する基準位置検出方法であって、前記吸光度検出器における光源により光を発生させるステップと、前記遮光部材を回転させることにより、前記光源から前記フローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光状態と前記光源からフローセルへの光を遮らない非遮光状態とに前記遮光部材を変化させるステップと、前記遮光部材の回転時に前記フローセルを透過した光を光検出器により検出するステップと、前記遮光部材の回転に伴う前記光検出器の受光量変化を取得し、取得した受光量変化に基づいて前記遮光部材の回転方向における基準位置を検出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クロマトグラフ用吸光度検出器において低コストおよび少ない手間で遮光部材の基準位置を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は実施の形態に係るクロマトグラフ用吸光度検出器の構成を示すブロック図である。
図2図2は遮光部材の構成を示す模式図である。
図3図3は第1のフィルタの構成を示す図である。
図4図4はモータに与えられる制御パルス数による光検出器の受光量変化の一例を示す図である。
図5図5図1の検出器制御部の機能的な構成を示すブロック図である。
図6図6は実施の形態に係る基準位置検出方法を示すフローチャートである。
図7図7図1の吸光度検出器を含む液体クロマトグラフの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態に係るクロマトグラフ用吸光度検出器および基準位置検出方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(1)吸光度検出器の構成
図1は一実施の形態に係るクロマトグラフ用吸光度検出器の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る吸光度検出器は、例えば液体クロマトグラフに用いられる。
【0012】
図1の吸光度検出器10は、光源11、遮光部材12、フローセル13、光学系14、光検出器15、モータ16および検出器制御部30を含む。本実施の形態では、光源11は、例えば重水素ランプである。
【0013】
光源11により発生された光は、集光ミラー等を含む光学系(図示せず)によりフローセル13に導かれる。光源11とフローセル13との間の光路LPに遮光部材12が配置される。遮光部材12は、モータ16の回転軸16aに取り付けられる。遮光部材12の詳細については後述する。
【0014】
フローセル13には、例えば液体クロマトグラフの分析カラムから供給される移動相および試料が流れる。光学系14は、ミラーおよび回折格子等を含み、フローセル13を透過した光を光検出器15に導く。光検出器15は、例えばフォトダイオードまたはフォトダイオードアレイを含み、各波長範囲の光の強度の時間的な変化を検出する。
【0015】
検出器制御部30は、入出力I/F(インタフェース)31、CPU(中央演算処理装置)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34および記憶装置35を含む。入出力I/F31、CPU32、RAM33、ROM34および記憶装置35はバス38に接続されている。
【0016】
記憶装置35は、半導体メモリまたはメモリカード等の記憶媒体を含み、検出器制御プログラムを記憶する。RAM33は、CPU32の作業領域として用いられる。ROM34にはシステムプログラムが記憶される。CPU32は、記憶装置35に記憶された検出器制御プログラムをRAM33上で実行することにより入出力I/F31を通して光源11およびモータ16を制御するとともに光検出器15の出力信号を入出力I/F31を通して受ける。また、検出器制御プログラムは、基準位置検出プログラムを含む。CPU32が記憶装置35に記憶された基準位置検出プログラムをRAM33上で実行することにより後述する基準位置検出方法が実施される。入出力I/F31は、例えば液体クロマトグラフの分析制御部50(図7)に接続される。
【0017】
(2)遮光部材12の構成
図2は遮光部材の構成を示す模式図である。図2に示されるように、遮光部材12は、板状のシャッタ12a、板状の第1のフィルタ12b、板状の第2のフィルタ12cおよび円筒状の取り付け部材12dにより構成される。取り付け部材12dの外周面にシャッタ12a、第1のフィルタ12bおよび第2のフィルタ12cが一体的に取り付けられている。本実施の形態では、シャッタ12aと第1のフィルタ12bとが90度をなし、第1のフィルタ12bと第2のフィルタ12cとが90度をなす。取り付け部材12dは、モータ16の回転軸16aに嵌め込まれている。モータ16の回転軸16aが回転することによりシャッタ12a、第1のフィルタ12bおよび第2のフィルタ12cが一体的に回転する。
【0018】
図3は第1のフィルタ12bの構成を示す図である。図3に示されるように、第1のフィルタ12bは、矩形状の遮光板121の中央に円形のフィルタ部材122が設けられた構成を有する。フィルタ部材122は、例えば、紫外波長領域の光を透過する特性を有する。図3の第1のフィルタ12bが図1の光路LPに対して垂直である場合には、光源11から発生される光が第1のフィルタ12bに対して垂直に入射する。この場合、光はフィルタ部材122の中央部の領域L1に入射する。第1のフィルタ12bが光路LPに対して傾斜している場合には、光源11から発生される光が第1のフィルタ12bに対して斜めに入射する。この場合、光がフィルタ部材122と遮光板121との境界を含む領域L2に入射する。それにより、フローセル13に導かれる光の量が減少する。
【0019】
同様に、図2の第2のフィルタ12cは、矩形状の遮光板123の中央に円形のフィルタ部材124が設けられた構成を有する。フィルタ部材124は、フィルタ部材122とは異なる波長領域の光を透過する特性を有する。
【0020】
本実施の形態では、モータ16はステッピングモータである。図1の検出器制御部30がモータ16に制御パルスを含むパルス信号および回転方向を指示する回転方向指示信号を与える。モータ16に制御パルスが与えられるごとに回転方向指示信号により指示された方向に回転軸16aが一定角度ずつ回転する。
【0021】
(3)光検出器15の受光量変化の例
図4はモータ16に与えられる制御パルス数による光検出器15の受光量変化の一例を示す図である。図4の縦軸は、光検出器15の受光量を表し、横軸は、検出器制御部30からモータ16に与えられる制御パルス数を表す。
【0022】
図4の例では、1つの制御パルスが与えられると、モータ16は7.5度回転する。したがって、モータ16に48個の制御パルスが与えられることによりモータ16が360度回転する。それにより、モータ16が360度回転したときの光検出器15の出力信号に基づいて、図4の受光量変化が取得される。モータ16および遮光部材12の回転角度は、制御パルス数に比例する。制御パルス数が0であるときの遮光部材12の回転位置が初期位置である。
【0023】
図4の受光量変化では、回転位置P1から受光量が減少し、回転位置Paで0となる。回転位置Paから回転位置Pbまでの範囲で受光量は0に維持される。受光量は、回転位置P2および回転位置P4で極大値を示し、回転位置P3および回転位置P5で極小値を示す。
【0024】
本実施の形態では、遮光部材12の基準位置は、シャッタ12aが図1の光路LPに対して垂直になる回転位置である。この場合、受光量が予め定められたしきい値Th以下となる回転角度範囲が遮光角度範囲ΔRとして検出される。図4の例では、遮光角度範囲ΔRは回転位置Paから回転位置Pbまでの範囲である。遮光角度範囲ΔRでは、シャッタ12aにより光源11からフローセル13への光の実質的に全量が遮られている。遮光角度範囲ΔRの中心角度位置P0が遮光部材12の基準位置OR1として決定される。基準位置OR1は、遮光角度範囲ΔRの中心角度位置P0と厳密に一致しなくてもよく、略中心角度位置に決定されてもよい。略中心角度位置とは、基準位置OR1に基づいて遮光部材12の角度が制御された場合に、吸光度検出器10の特性のばらつきが許容範囲内になるような角度範囲である。例えば、許容される角度範囲は、例えば遮光角度範囲ΔRの例えば、-1%~+1%、-2%~+2%、-5%~+5%、または-10%~+10%に設定される。
【0025】
図4の例では、制御パルス数が13である回転位置が基準位置OR1である。したがって、遮光部材12が初期位置にある状態からモータ16に13個の制御パルスが与えられると、シャッタ12aが光路LPに対して垂直になる。モータ16にさらに12個の制御パルスが与えられると、遮光部材12の回転位置はフィルタ位置F1になる。この場合、第1のフィルタ12bが光路LPに対して垂直になる。モータ16にさらに12個の制御パルスが与えられると、遮光部材12の回転位置はフィルタ位置F2になる。この場合、第2のフィルタ12cが光路LPに対して垂直になる。
【0026】
(4)検出器制御部30の機能的な構成
図5図1の検出器制御部30の機能的な構成を示すブロック図である。図5に示すように、検出器制御部30は、光源駆動部301、モータ駆動部302、受光量取得部303、受光量変化生成部304、遮光角度範囲検出部305、中心角度位置検出部306、基準位置決定部307、基準位置記憶部308、動作切替部309および通常動作制御部310を含む。上記の構成要素(301~310)の機能は、図1のCPU32が記憶装置35等の記憶媒体(記録媒体)に記憶されたコンピュータプログラムである検出器制御プログラムを実行することにより実現される。なお、検出器制御部30の一部または全ての構成要素が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。基準位置記憶部308は、図1のRAM33により構成される。
【0027】
以下、基準位置検出方法を実施する動作を基準位置検出動作と呼び、吸光度を検出する動作を通常動作と呼ぶ。
【0028】
光源駆動部301は、光源11をオンおよびオフする。モータ駆動部302は、モータ16を回転させる。受光量取得部303は、光検出器15の出力信号に基づいて、光検出器15の受光量を取得する。受光量変化生成部304は、受光量取得部303により取得された受光量に基づいて、受光量変化を生成する。遮光角度範囲検出部305は、受光量変化生成部304により生成された受光量変化に基づいて遮光角度範囲ΔRを検出する。中心角度位置検出部306は、遮光角度範囲検出部305により検出された遮光角度範囲ΔRの中心角度位置P0を検出する。基準位置決定部307は、遮光角度範囲ΔRの略中心角度位置を基準位置として決定する。本実施の形態では、基準位置決定部307は、遮光角度範囲ΔRの中心角度位置P0を基準位置OR1として決定する。基準位置記憶部308は、基準位置決定部307により決定された基準位置OR1を記憶する。
【0029】
動作切替部309は、基準位置検出動作と通常動作とを切り替える。通常動作制御部310は、通常動作時に、光源11のオンオフおよびモータ16の動作等を制御するとともに、光検出器15の出力信号を受ける。
【0030】
(5)基準位置検出方法
図6は実施の形態に係る基準位置検出方法を示すフローチャートである。図6の基準位置検出方法は、基準位置検出プログラムの実行により実施される。
【0031】
動作切替部309は、吸光度検出器10の電源がオンされたか否かを判定する(ステップS1)。電源がオンされた場合には、基準位置検出動作が行われる。この場合、光源駆動部301は、光源11をオンにする(ステップS2)。モータ駆動部302は、モータ16に制御パルスを与えることにより遮光部材12の回転を開始させる(ステップS3)。
【0032】
受光量取得部303は、光検出器15の出力信号に基づいて光検出器15の受光量を取得する(ステップS4)。モータ駆動部302は、モータ16に与えられた制御パルスの数に基づいて遮光部材12が1回転したか否かを判定する(ステップS5)。遮光部材12が1回転していない場合には、受光量取得部303はステップS4に戻り、光検出器15の受光量を取得する。遮光部材12が1回転した場合には、遮光部材12の1回転による受光量変化が受光量変化生成部304により生成される。
【0033】
遮光角度範囲検出部305は、生成された受光量変化において、受光量がしきい値Th以下の回転角度範囲を遮光角度範囲ΔRとして検出する(ステップS6)。中心角度位置検出部306は、遮光角度範囲ΔRの中心角度位置P0を検出する(ステップS7)。基準位置決定部307は、中心角度位置P0を基準位置OR1として決定する(ステップS8)。基準位置記憶部308は、決定された基準位置OR1を記憶する(ステップS9)。図4の例では、制御パルス数が13に相当する回転位置が基準位置OR1である。制御パルス数が13に相当する回転位置で遮光部材12のシャッタ12aが光路LPに直交する。
【0034】
その後、動作切替部309は、基準位置検出動作を通常動作に切り替える。それにより、通常動作制御部310は通常動作を実行する(ステップS10)。通常動作では、吸光度検出器10による吸光度の検出が行われる。この場合、通常動作制御部310は、基準位置記憶部308に記憶された基準位置に基づいて遮光部材12の回転角度を制御する。それにより、光源11により発生された光がシャッタ12aにより遮られる状態と、光源11により発生された光がフローセル13に導かれる状態と、光源11により発生された光が第1のフィルタ12bまたは第2のフィルタ12cを通してフローセル13に導かれる状態とが切り替えられる。通常動作が終了すると、通常動作制御部310が光源11をオフにする。
【0035】
上記の基準位置検出方法によると、吸光度検出器10の電源がオンされた場合に、基準位置検出方法が実施される。それにより、遮光部材12の基準位置がエンコーダを用いることなく検出される。
【0036】
(6)液体クロマトグラフ
図7図1の吸光度検出器10を含む液体クロマトグラフの構成を示すブロック図である。
【0037】
図7の液体クロマトグラフ100は、移動相用のポンプ110、試料導入部120、導入ポート130、分析カラム140、カラムオーブン150および吸光度検出器10を含む。分析カラム140は、カラムオーブン150内に設けられる。カラムオーブン150は、分析カラム140を設定された温度に維持する。
【0038】
ポンプ110は、移動相容器111内の移動相(溶離液)を吸引し、分析カラム140に供給する。試料導入部120は、例えばオートサンプラまたはインジェクタを含み、分析対象である試料を導入ポート130において移動相に導入する。分析カラム140を通過した移動相および試料は、吸光度検出器10のフローセル13(図1)を流れ、廃液容器112に排出される。
【0039】
液体クロマトグラフ100は、分析制御部50、操作部51および表示部52を含む。操作部51は、使用者が分析制御部50に種々の指令を与えるために用いられる。分析制御部50は、ポンプ110、試料導入部120、カラムオーブン150および吸光度検出器10を制御する。また、分析制御部50は、吸光度検出器10の出力信号に基づいてクロマトグラムを生成する。生成されたクロマトグラムは表示部52に表示される。
【0040】
(7)実施の形態の効果
本実施の形態に係る吸光度検出器10および液体クロマトグラフ100においては、通常動作前の基準位置検出動作時に光検出器15の受光量変化に基づいて遮光部材12の基準位置OR1が検出される。そのため、遮光部材12の基準位置OR1を検出するためにエンコーダが不要となる。それにより、エンコーダの部品コスト、エンコーダのための配線、エンコーダに供給される電力およびエンコーダのメンテナンスが不要となる。したがって、液体クロマトグラフ100の吸光度検出器10において低コストおよび少ない手間で遮光部材12の基準位置OR1を検出することが可能となる。
【0041】
また、検出された基準位置OR1と制御パルス数との関係に基づいて遮光部材12の回転位置を制御することができる。したがって、基準位置検出動作後に遮光部材12を基準位置OR1に戻すことなく、通常動作時に、遮光部材12を任意の回転位置に迅速に制御することができる。
【0042】
(8)他の実施の形態
上記実施の形態では、遮光部材12がシャッタ12a、第1のフィルタ12bおよび第2のフィルタ12cを含むが、遮光部材12がシャッタ12a、第1のフィルタ12bおよび第2のフィルタ12cのうち1つまたは2つを含んでもよい。
【0043】
上記実施の形態では、遮光部材12がモータ16の回転軸16aに取り付けられているが、遮光部材12がギア等の伝達機構を通してモータ16により駆動されてもよい。
【0044】
上記実施の形態では、遮光角度範囲ΔRの略中心位置に遮光部材12の基準位置が設定されているが、遮光部材12の基準位置OR1はこれに限定されない。例えば、光検出器15の受光量が予め定められた値以上となるモータ16の回転角度範囲の略中心角度位置に基準位置が設定されてもよい。例えば、図4の例において、光検出器15の受光量が100%となるモータ16の回転角度範囲の略中心角度位置に基準位置OR2が設定されてもよい。この場合、図4の例では、遮光部材12が初期位置にある状態からモータ16に1個の制御パルスが与えられると、遮光部材12の回転位置は基準位置OR2となる。
【0045】
また、基準位置は、受光量変化における他の特定の状態または変化を有する部分に設定されてもよい。例えば、受光量の立ち下がりが開始する回転位置P1に基準位置が設定されてもよく、受光量が極大値となる回転位置P2または回転位置P4に基準位置が設定されてもよく、受光量が極小値となる回転位置P3または回転位置P5に基準位置が設定されてもよい。
【0046】
上記実施の形態では、光源11が重水素ランプであるが、光源11がタングステンランプ等の他のランプであってもよく、または発光ダイオード等の他の発光素子であってもよい。
【0047】
上記実施の形態では、吸光度検出器10が液体クロマトグラフ100に用いられているが、吸光度検出器10が超臨界流体クロマトグラフ等の他のクロマトグラフに用いられてもよい。
【0048】
(9)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0049】
(第1項) 一態様に係るクロマトグラフ用吸光度検出器は、
光源と、
前記光源により発生された光を受けるフローセルと、
前記フローセルを透過した光を検出する光検出器と、
前記光源から前記フローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光部材と、
前記遮光部材を回転させることにより、前記光源から前記フローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光状態と前記光から前記フローセルへの光を遮らない非遮光状態とに前記遮光部材を変化させるモータと、
前記モータを回転させるとともに前記光検出器の受光量変化を取得し、取得した受光量変化に基づいて前記遮光部材の回転方向における前記遮光部材の基準位置を検出する基準位置検出部とを備えれていてよい。
【0050】
第1項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器によれば、遮光部材の回転により得られる光検出器の受光量変化に基づいて、遮光部材の基準位置が検出される。そのため、遮光部材の基準位置を検出するためにエンコーダが不要となる。それにより、エンコーダの部品コスト、エンコーダのための配線、エンコーダに供給される電力およびエンコーダのメンテナンスが不要となる。したがって、吸光度検出器において低コストおよび少ない手間で遮光部材の基準位置を検出することが可能となる。
【0051】
(第2項) 第1項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器において、
前記基準位置検出部は、前記遮光部材を1回転させる間に、前記光検出器の受光量変化を取得し、取得した受光量変化に基づいて前記遮光部材の回転方向における前記遮光部材の基準位置を検出してもよい。
【0052】
第2項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器によれば、単純な動作より光検出器の受光量変化を容易に取得することができる。
【0053】
(第3項) 第1項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器において、
前記基準位置検出部は、前記取得した受光量変化における特定の状態または変化を有する部分に対応する前記遮光部材の回転位置に基づいて前記遮光部材の基準位置を検出してもよい。
【0054】
第3項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器によれば、遮光部材の構成に応じて特定の状態または変化を有する部分に基づいて遮光部材の基準位置を検出することができる。
【0055】
(第4項) 第3項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器において、
前記特定の状態または変化を有する部分は、前記光検出器の受光量が予め定められた値以下になる前記モータの回転角度範囲の略中点であり、
前記基準位置検出部は、前記回転角度範囲の略中点を基準位置として検出してもよい。
【0056】
第4項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器によれば、遮光部材が光源からフローセルへの光路に略垂直になるときの遮光部材の回転位置を基準位置として検出することができる。
【0057】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか一項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器において、
前記基準位置検出部により検出された基準位置における前記モータの回転角度を基準として前記遮光部材を前記遮光状態と前記非遮光状態とに切り替えてもよい。
【0058】
遮光部材が停止状態から基準位置まで回転した場合のモータの回転角度を把握することは可能である。したがって、第5項に記載の吸光度検出器によれば、遮光部材を基準位置に戻すことなく、遮光部材の初期位置から遮光部材を回転させることにより、遮光部材を遮光状態と非遮光状態とに迅速に切り替えることができる。
【0059】
(第6項) 第1項~第4項のいずれか一項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器において、
前記遮光部材は、光を遮るシャッタおよび特定の波長の光を透過させる一または複数のフィルタのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0060】
第6項に記載のクロマトグラフ用吸光度検出器によれば、光源により発生された全ての光または一部の波長の光がフローセルに導かれない状態と光源により発生された全ての光または特定の波長の光がフローセルに導かれる状態とがエンコーダを用いることなく切り替えられる。
【0061】
(第7項) 他の態様に係る基準位置検出方法は、
吸光度検出器において光源からフローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光部材の基準位置を検出する基準位置検出方法であって、
前記吸光度検出器における前記光源により光を発生させるステップと、
前記遮光部材を回転させることにより、前記光源から前記フローセルへの光の少なくとも一部を遮る遮光状態と前記光源からフローセルへの光を遮らない非遮光状態とに前記遮光部材を変化させるステップと、
前記遮光部材の回転時に前記フローセルを透過した光を光検出器により検出するステップと、
前記遮光部材の回転に伴う前記光検出器の受光量変化を取得し、取得した受光量変化に基づいて前記遮光部材の回転方向における基準位置を検出するステップとを含んでいてよい。
【0062】
第7項に記載の基準位置検出方法によれば、遮光部材の回転により得られる光検出器の受光量変化に基づいて、遮光部材の基準位置が検出される。そのため、遮光部材の基準位置を検出するためにエンコーダが不要となる。それにより、エンコーダの部品コスト、エンコーダのための配線、エンコーダに供給される電力およびエンコーダのメンテナンスが不要となる。したがって、吸光度検出器において低コストおよび少ない手間で遮光部材の基準位置を検出することが可能となる。
(第8項) 第7項に記載の基準位置検出方法において、
前記遮光部材を変化させるステップは、モータにより前記遮光状態と前記非遮光状態とに前記遮光部材を変化させることを含み、
前記基準位置を検出するステップは、前記光検出器の受光量が予め定められた値以下になる前記モータの回転角度範囲の略中点を基準位置として検出することを含んでもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7