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特許7168929ウェアラブルデバイス、入浴ナビゲーションシステム、入浴ナビゲーション方法、及びプログラム。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ウェアラブルデバイス、入浴ナビゲーションシステム、入浴ナビゲーション方法、及びプログラム。
(51)【国際特許分類】
   G16H 70/00 20180101AFI20221102BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20221102BHJP
   A61B 5/145 20060101ALI20221102BHJP
   A61B 5/22 20060101ALI20221102BHJP
   G08B 21/08 20060101ALI20221102BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G16H70/00
A61B5/02 310Z
A61B5/145
A61B5/22 100
G08B21/08
G08B25/04 K
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018092763
(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公開番号】P2019200448
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「自発・自律型エビデンスに基づくBathing Navigationの実現」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
(73)【特許権者】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(73)【特許権者】
【識別番号】518169266
【氏名又は名称】株式会社APC
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】早坂 信哉
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄介
(72)【発明者】
【氏名】壽福 良平
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-158574(JP,A)
【文献】特開2015-103110(JP,A)
【文献】特開2003-225174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
A61B 5/145
A61B 5/22
A61B 5/02
G08B 25/04
G08B 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが装着可能なウェアラブルデバイスであって、
生体情報測定部と、記憶部と、制御部と、情報提示部とを備え、
前記生体情報測定部は、前記ユーザの生体情報を測定し、
前記記憶部は、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて生成された特徴データの一部又は全部を記憶し、
前記知見情報は、少なくとも第1及び第2情報に分類され、
前記第1情報とは、前記医学的知見と、前記主観的知見のうちの一部とを含むもので、
当該一部には、前記入浴体験者を対象としたアンケート結果、及びソーシャルネットワークサービスの投稿内容が含まれ、
前記第2情報とは、過去に複数のユーザが行った入浴に関する客観的情報と、それらのユーザの前記入浴に対する無意識の主観的情報とを紐づけたものであり、
前記制御部は、前記生体情報測定部より測定された前記生体情報と、前記記憶部に記憶された前記特徴データとに基づいて、前記ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を判定し、
前記情報提示部は、前記入浴判定情報に基づいて適切及び/又は不適切な入浴条件に関する情報を提示する、
デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスにおいて、
通信部を更に備え、この通信部は、
ネットワークに接続され、且つ
所定の浴場における入浴施設名、水温、水質及び環境温度の少なくとも1つを含む入浴条件情報を受信可能に構成され、
前記制御部は、前記生体情報と、前記特徴データと、前記通信部が受信した入浴条件情報とに基づいて、当該入浴条件情報に係る入浴条件下での前記ユーザに対する入浴の危険性を判定する、
デバイス。
【請求項3】
ユーザが装着可能なウェアラブルデバイスであって、
生体情報測定部と、記憶部と、制御部と、情報提示部とを備え、
前記生体情報測定部は、前記ユーザの生体情報を測定し、
前記記憶部は、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて生成された特徴データの一部又は全部を記憶し、
前記制御部は、前記生体情報測定部より測定された前記生体情報と、前記記憶部に記憶された前記特徴データとに基づいて、前記ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を判定し、
前記情報提示部は、前記入浴判定情報に基づいて適切及び/又は不適切な入浴条件に関する情報を提示し、
通信部を更に備え、この通信部は、
ネットワークに接続され、且つ
所定の浴場における入浴施設名、水温、水質及び環境温度の少なくとも1つを含む入浴条件情報を受信可能に構成され、
前記制御部は、前記生体情報と、前記特徴データと、前記通信部が受信した入浴条件情報とに基づいて、当該入浴条件情報に係る入浴条件下での前記ユーザに対する入浴の危険性を判定する、
デバイス
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のウェアラブルデバイスにおいて、
位置情報取得部を更に備え、この位置情報取得部は、前記ユーザの位置情報を取得可能に構成され、
前記制御部は、前記位置情報に基づいて、前記ユーザが入浴を所望する又は入浴中の浴場を特定し、
前記通信部は、前記所望する又は入浴中の浴場の入浴施設名、水温、水質及び環境温度の少なくとも1つを含む入浴条件情報を受信可能に構成される、
デバイス。
【請求項5】
請求項2~請求項4の何れか1つに記載のウェアラブルデバイスにおいて、
前記通信部は、前記ネットワークを介して外部サーバから新たな特徴データを受信し、
前記記憶部は、
前記新たな特徴データを記憶するか、又は
既に記憶している前記特徴データを前記新たな特徴データに更新して記憶する、
デバイス。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載のデバイスにおいて、
前記特徴データは、
前記第1情報に基づいて入浴条件と入浴による効果の予測モデルを立て、
続いて、前記予測モデルを基に、前記第2情報に対してニューラルネットワークを用いた特徴抽出を実行する、
ことによって生成されたデータベースを構成するデータである、
デバイス。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1つに記載のデバイスにおいて、
前記情報提示部は、前記不適切な入浴条件における過去の事故例に関する情報を提示するように構成される、
デバイス。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1つに記載のデバイスにおいて、
前記情報提示部は、入浴施設名、水温、水質及び環境温度の少なくとも1つに関する情報を提示するように構成される、
デバイス。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか1つに記載のウェアラブルデバイスにおいて、
前記制御部は、前記生体情報と、前記特徴データと、所定の浴場における水温とに基づいて、前記ユーザに対する入浴の危険性を判定する、
デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のウェアラブルデバイスにおいて、
前記所定の浴場における水温は、次の(1)及び(2)の少なくとも一方によって測定されたものである、
(1)当該ウェアラブルデバイスに設けられた温度センサ又は外部の温度センサ
(2)当該ウェアラブルデバイスに設けられた撮像部又は外部の撮像装置を用いて、前記水温の表示計を読み取ること
デバイス。
【請求項11】
請求項1~請求項10の何れか1つに記載のデバイスにおいて、
前記生体情報は、心拍数、運動量、血圧、血中酸素濃度、及び血中アルコール濃度のうちの少なくとも1つを含む、
デバイス。
【請求項12】
入浴ナビゲーションシステムであって、
サーバと、ユーザが装着可能なウェアラブルデバイスとを備え、これらがネットワークを介して接続され、
前記サーバは記憶部を備え、この記憶部は、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて生成された特徴データを記憶可能に構成され、
前記知見情報は、少なくとも第1及び第2情報に分類され、
前記第1情報とは、前記医学的知見と、前記主観的知見のうちの一部とを含むもので、
当該一部には、前記入浴体験者を対象としたアンケート結果、及びソーシャルネットワークサービスの投稿内容が含まれ、
前記第2情報とは、過去に複数のユーザが行った入浴に関する客観的情報と、それらのユーザの前記入浴に対する無意識の主観的情報とを紐づけたものであり、
前記ウェアラブルデバイスは、生体情報測定部と、通信部と、情報提示部とを備え、
前記生体情報測定部は、前記ユーザの生体情報を測定し、
前記通信部は、前記ネットワークを介して前記サーバと前記生体情報及び/又は前記特徴データを送受信可能に構成され、
前記情報提示部は、入浴判定情報に基づいて適切及び/又は不適切な入浴条件に関する情報を提示し、
前記ウェアラブルデバイス及び前記サーバの少なくとも一方は、制御部を更に備え、
前記入浴判定情報は、入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含み、前記生体情報と前記特徴データとに基づいて前記制御部によって判定される、
システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記ウェアラブルデバイスは記憶部を更に備え、この記憶部は、前記サーバから前記通信部が受信した前記特徴データの一部又は全部を記憶するように構成される、
システム。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載のシステムにおいて、
前記サーバの記憶部に記憶された前記特徴データは、前記ネットワークを介して追加、修正、削除を含む各情報の更新が可能に構成される、
システム。
【請求項15】
入浴ナビゲーション方法であって、判定ステップと、情報提示ステップとを備え、
入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて決定されたデータを特徴データと定義した場合において、
前記知見情報は、少なくとも第1及び第2情報に分類され、
前記第1情報とは、前記医学的知見と、前記主観的知見のうちの一部とを含むもので、
当該一部には、前記入浴体験者を対象としたアンケート結果、及びソーシャルネットワークサービスの投稿内容が含まれ、
前記第2情報とは、過去に複数のユーザが行った入浴に関する客観的情報と、それらのユーザの前記入浴に対する無意識の主観的情報とを紐づけたものであり、
前記判定ステップでは、前記ユーザの生体情報と、前記特徴データとに基づいて、前記ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を前記ユーザの入浴前に判定し、
前記情報提示ステップでは、前記入浴判定情報に基づいて次の(1)及び(2)の少なくとも一方を提示し、
(1)危険な入浴条件についての過去の事故例に関する情報
(2)安全な及び/又は快適な入浴条件について、入浴施設名、水温、水質及び室温の少なくとも1つに関する情報
前記提示された情報に基づいて、前記ユーザに適切な入浴環境・入浴施設に誘導を促す、
方法。
【請求項16】
コンピュータを生体情報測定部、判定部、情報提示部として機能させるためのプログラムであって、
前記生体情報測定部、前記判定部、及び前記情報提示部は、生体情報測定機能、判定機能、及び情報提示機能をそれぞれ備え、
入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて決定されたデータを特徴データと定義した場合において、
前記知見情報は、少なくとも第1及び第2情報に分類され、
前記第1情報とは、前記医学的知見と、前記主観的知見のうちの一部とを含むもので、
当該一部には、前記入浴体験者を対象としたアンケート結果、及びソーシャルネットワークサービスの投稿内容が含まれ、
前記第2情報とは、過去に複数のユーザが行った入浴に関する客観的情報と、それらのユーザの前記入浴に対する無意識の主観的情報とを紐づけたものであり、
前記生体情報測定機能によって、ユーザの生体情報を測定させ、
前記判定機能によって、前記ユーザの生体情報と、前記特徴データとに基づいて、前記ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を判定させ、
前記情報提示機能によって、前記入浴判定情報に基づいて適切な及び/又は不適切な入浴条件に関する情報を提示させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルデバイス、入浴ナビゲーションシステム、入浴ナビゲーション方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
入浴中の事故死は年間19000人と交通事故死の約4倍にのぼり、入浴者の健康状態と水浴内容(時間、温度、泉質、環境など)が適合しない「不適切な水浴」が数多く行われていると考えられる。
【0003】
特許文献1には、入浴環境に起因するヒートショック防止装置が開示されている。このヒートショック防止装置は、入浴に係る脱衣場の温度と浴室の温度とを計測して、ヒートショックのおそれがある場合に警告を促すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2018-35980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるヒートショック防止装置は、あくまでも温度だけを基準として一般的にヒートショックが起こりうる可能性がある条件に警告を発するに過ぎない。また、当該ヒートショック防止装置を設置した場所(通常では自宅の浴室)での使用に限られており、例えば、温泉施設や海水浴等においての事故を防ぐことができない。
【0006】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、場所を限定されず、より高精度にユーザに入浴に関する情報を提示可能なウェアラブルデバイス、入浴ナビゲーションシステム、入浴ナビゲーション方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観点によれば、ユーザが装着可能なウェアラブルデバイスであって、生体情報測定部と、記憶部と、制御部と、情報提示部とを備え、前記生体情報測定部は、前記ユーザの生体情報を測定し、前記記憶部は、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて生成された特徴データの一部又は全部を記憶し、前記制御部は、前記生体情報測定部より測定された前記生体情報と、前記記憶部に記憶された前記特徴データとに基づいて、前記ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を判定し、前記情報提示部は、前記入浴判定情報に基づいて適切及び/又は不適切な入浴条件に関する情報を提示する、デバイスが提供される。
【0008】
本観点に係るウェアラブルデバイスは、生体情報、並びに入浴に関する医学的知見及び入浴体験者の主観的知見を含む情報に基づいて生成された特徴データに基づいて、ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を判定し、更にユーザに適切な情報を提示可能であることを特徴とする。このような構成を有するウェアラブルデバイスにより入浴中の事故を抑制することができる。
【0009】
別の観点によれば、入浴ナビゲーションシステムであって、サーバと、ユーザが装着可能なウェアラブルデバイスとを備え、これらがネットワークを介して接続され、前記サーバは記憶部を備え、この記憶部は、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて生成された特徴データを記憶可能に構成され、前記ウェアラブルデバイスは、生体情報測定部と、通信部と、情報提示部とを備え、前記生体情報測定部は、前記ユーザの生体情報を測定し、前記通信部は、前記ネットワークを介して前記サーバと前記生体情報及び/又は前記特徴データを送受信可能に構成され、前記情報提示部は、入浴判定情報に基づいて適切及び/又は不適切な入浴条件に関する情報を提示し、前記ウェアラブルデバイス及び前記サーバの少なくとも一方は、制御部を更に備え、前記入浴判定情報は、入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含み、前記生体情報と前記特徴データとに基づいて前記制御部によって判定される、システムが提供される。
【0010】
本観点に係るシステムは、生体情報、並びに入浴に関する医学的知見及び入浴体験者の主観的知見を含む情報に基づいて生成された特徴データに基づいて、ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を判定し、更にユーザに適切な情報を提示可能であることを特徴とする。このような構成を有するシステムにより入浴中の事故を抑制することができる。
【0011】
更に別の観点によれば、入浴ナビゲーション方法であって、判定ステップと、情報提示ステップとを備え、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて決定されたデータを特徴データと定義した場合において、前記判定ステップでは、前記ユーザの生体情報と、前記特徴データとに基づいて、前記ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を前記ユーザの入浴前に判定し、前記情報提示ステップでは、前記入浴判定情報に基づいて次の(1)及び(2)の少なくとも一方を提示し、(1)危険な入浴条件についての過去の事故例に関する情報(2)安全な及び/又は快適な入浴条件について、入浴施設名、水温、水質及び室温の少なくとも1つに関する情報前記提示された情報に基づいて、前記ユーザに適切な入浴環境・入浴施設に誘導を促す、方法が提供される。
【0012】
本観点に係る方法では、生体情報、並びに入浴に関する医学的知見及び入浴体験者の主観的知見を含む情報に基づいて生成された特徴データに基づいて、ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を判定し、更にユーザに適切な情報を提示し、これに基づいてユーザに適切な入浴環境・入浴施設への誘導を促すことを特徴とする。このような方法により入浴中の事故を抑制することができる。
【0013】
更に別の観点によれば、コンピュータを生体情報測定部、判定部、情報提示部として機能させるためのプログラムであって、前記生体情報測定部、前記判定部、及び前記情報提示部は、生体情報測定機能、判定機能、及び情報提示機能をそれぞれ備え、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて決定されたデータを特徴データと定義した場合において、前記生体情報測定機能によって、ユーザの生体情報を測定させ、前記判定機能によって、前記ユーザの生体情報と、前記特徴データとに基づいて、前記ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を判定させ、前記情報提示機能によって、前記入浴判定情報に基づいて適切な及び/又は不適切な入浴条件に関する情報を提示させる、プログラムが提供される。
【0014】
本観点に係るプログラムを用いてコンピュータに実行させることで、生体情報、並びに入浴に関する医学的知見及び入浴体験者の主観的知見を含む情報に基づいて生成された特徴データに基づいて、ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を判定し、更にユーザに適切な情報を提示し、これに基づいてユーザに適切な入浴環境・入浴施設への誘導を促すことを特徴とする。このようなプログラムにより入浴中の事故を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る入浴ナビゲーションシステムの構成概要図。
図2図1同様入浴ナビゲーションシステムの構成概要図であって、特にウェアラブルデバイスの構成が示されている。
図3】端末の構成概要図。
図4】端末を用いたSNS投稿(第1情報取得)の一例を示す図。
図5】特定多数を対象とした温泉に関するアンケート結果:入浴した温泉の水温別感想。
図6】特定多数を対象とした温泉に関するアンケート結果:温泉の利用頻度別感想。
図7】特定多数を対象とした温泉に関するアンケート結果:入浴した温泉の入浴時間別感想。
図8】ウェアラブルデバイスを用いた第2情報取得の模式図。
図9】ニューラルネットワークを用いた特徴抽出の模式図。
図10】ウェアラブルデバイスの警告表示/情報提示の一例を示す模式図。
図11】ウェアラブルデバイスの警告表示/情報提示の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。特に、本明細書において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものを指す。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、0又は1で構成される2進数のビット集合体として信号値の高低によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0017】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CLPD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0018】
1.全体構成
第1節では、本実施形態に係る入浴ナビゲーションシステム1の全体構成について説明する。図1は、入浴ナビゲーションシステム1の構成概要を示す図である。入浴ナビゲーションシステム1は、図1に示されるように、ウェアラブルデバイス2と、データベースサーバ3と、端末4とを備え、何れの構成要素もインターネット(特許請求の範囲における「ネットワーク」の一例)に接続されている。以下、第1.1~1.3節において、ウェアラブルデバイス2、データベースサーバ3及び端末4についてそれぞれ説明する。
【0019】
1.1 ウェアラブルデバイス2
ウェアラブルデバイス2は、ユーザ(例えば、入浴をこれから行う又は所望する者)の腕等に装着可能に構成された装置であり、その形状が特に限定されるものではない。図2は、入浴ナビゲーションシステム1の構成概要を示す図であり、特にウェアラブルデバイス2の構成概要が示されている。図示の通り、ウェアラブルデバイス2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23と、生体情報測定部24と、撮像部25と、位置情報取得部26と、情報提示部27を有し、これらの構成要素がウェアラブルデバイス2の内部において通信バス20を介して接続されている。以下、各構成要素について更に説明する。
【0020】
<通信部21>
通信部21は、無線LANネットワーク通信、LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を含む複数の通信手段の集合として実施することが好ましい。特に、LTE/3G等のモバイル通信によってインターネットと接続されることで、使用場所の制限がほとんどなくデータベースサーバ3との情報の送受信が可能な構成を有するとよい。
【0021】
<記憶部22>
記憶部22は、特徴データを記憶する。ここで特徴データについて補足をする。特徴データは、データベースサーバ3から通信部21を介して受信したものであり、データベースサーバ3に記憶されるものの全部でもよいし一部でもよい。より詳細には、データベースサーバ3には特徴データのマスターデータが存在している。そのため、初回はデータベースサーバ3における特徴データをインターネットを介してダウンロードするとよい。そして、当該マスターデータは随時更新されていくため、定期的に自動で又は必要に応じてインターネットを介して、データベースサーバ3における特徴データの最新データに同期されることが好ましい。他にも制御部23が実行するための種々のプログラム等を記憶する。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、或いは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。
【0022】
<制御部23>
制御部23は、ウェアラブルデバイス2に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部23は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部23は、記憶部22に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、ウェアラブルデバイス2に係る種々の機能を実現する。特に制御部23は、後述の生体情報測定部24によって測定された生体情報(バイタルデータ)と、記憶部22に記憶された特徴データとに基づいて、ユーザに対する入浴の危険性を判定する。なお、図2においては、単一の制御部23として表記されているが、実際はこれに限るものではなく、機能ごとに複数の制御部23を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0023】
<生体情報測定部24>
生体情報測定部24は、ウェアラブルデバイス2を装着しているユーザの生体情報を取得する。ここでいうユーザの生体情報とは、心拍数、運動量、血圧、血中酸素濃度、及び血中アルコール濃度のうちの少なくとも1つを含む。したがって、生体情報測定部24は、これらの測定に際して好ましいセンサの複合体として実施されうる。
【0024】
<撮像部25>
撮像部25は、小型のCMOSセンサやCCDセンサを備えるカメラである。撮像部25が撮像した画像は記憶部22に保存され、必要に応じて制御部23が撮像した画像に対して適切な画像認識等を実行することとなる。これについては第2.2節において例を示して説明する。
【0025】
<位置情報取得部26>
位置情報取得部26は、全地球無線測位システム(GPS)を用いることでウェアラブルデバイス2の地球上における位置情報を取得する。例えば、ウェアラブルデバイス2を装着したユーザが、どの温泉施設にいるかといった情報を位置情報取得部26によって取得することができる。これについては第3節において例を示して説明する。
【0026】
<情報提示部27>
情報提示部27は、ユーザの視覚、聴覚、又は触覚を刺激することで情報を提示する部であり、例えば、ディスプレイ27a(図10等において図示)、スピーカー(不図示)、バイブレータ(不図示)等の複合体であることが好ましい。特に、情報提示部27は、制御部23によって判定された入浴の危険性に基づいて、ユーザに入浴に関する適切な情報を提示することができる。例えば、提示する情報としては、危険性が高い(=危険な)不適切な入浴条件について警告(文字情報、音声情報、振動等)を発することや、危険性が低い(=安全な)適切な入浴条件を提示(文字情報、音声情報、振動等)すること等が挙げられる。
【0027】
1.2 データベースサーバ3
図1及び図2に示されるように、データベースサーバ3(特許請求の範囲における「サーバ」、「外部サーバ」の一例)は、記憶部31と、特徴抽出部32(人工知能)とを備える。もちろん、有線又は無線LANネットワーク通信等によってインターネットと接続されることで、ウェアラブルデバイス2や端末4との情報の送受信が可能な構成を有している。以下各構成要素について更に説明する。
【0028】
<記憶部31>
記憶部31は、第1及び第2情報と、特徴データとを記憶する。これは、例えばハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)やソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして実施されうる。もちろん、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとしても実施され、これらの組合せであることが好ましい。第1及び第2情報と、特徴データとについては、第2節において詳述する。
【0029】
<特徴抽出部32>
特徴抽出部32は、入力された情報群から何らかの特徴を抽出する人工知能としての機能を有する部である。特に、特徴抽出部32は、第1情報を参考に第2情報から特徴を抽出して特徴データを生成することに留意されたい。より詳細には、特徴データは、第1情報に基づいて入浴条件と入浴による効果の予測モデルを立て、続いて、当該予測モデルを基に、第2情報に対してニューラルネットワークを用いた特徴抽出を実行することによって決定されたデータベースを構成するデータであることに留意されたい(詳細は、第2節を参照)。
【0030】
1.3 端末4
図3は、端末4の構成概要を示す機能ブロック図である。図示の通り、端末4は、通信部41と、記憶部42と、制御部43と、表示部44と、入力部45を有し、これらの構成要素が端末4の内部において通信バス40を介して接続されている。端末4の所有者は図1においては、ユーザとは異なる1人の人物として描かれているが、実際は不特定多数であることが好ましく、更にウェアラブルデバイス2を装着しているユーザ自身が端末4を使用してもよい。以下各構成要素について更に説明する。
【0031】
<通信部41>
端末4は、ポータビリティの高いスマートフォンやタブレット端末が好ましい。通信部41は、無線LANネットワーク通信、LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth通信等を含む複数の通信手段の集合として実施することが好ましい。特に、LTE/3G等のモバイル通信によってインターネットと接続されることで、使用場所の制限がほとんどなくデータベースサーバ3との情報の送受信が可能な構成を有するとよい。
【0032】
<記憶部42>
記憶部42は、制御部43が実行するための種々のプログラム等を記憶する。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして実施されうる。また記憶部42は、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとしても実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。
【0033】
<制御部43>
制御部43は、端末4に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部43は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部43は、記憶部42に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、端末4に係る種々の機能を実現する。特に制御部43は、表示部44に表示されたGUIの動き処理を実行する。
【0034】
<表示部44>
表示部44は、ポータビリティの高いことを考慮して端末4自体に含まれるものを想定しているが、これに限らず外付けされるものであってもよい。内蔵/外付け含め、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示デバイスを、必要に応じて使い分けて実施することが好ましい。表示部44は、制御部43による所定の制御信号に応答して、GUIの画面を選択的に表示しうる。なお、GUIについて補足すると、例えば、アイコン、スライドバー、ラジオボタン等といった具体的なインターフェースが表示されうる。後述のソーシャルネットワークサービス(SNS)のウェブサイトの表示もここで行われうる。
【0035】
<入力部45>
入力部45は、例えば、端末4自体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。特に、入力部45は、表示部44に重畳的に設けられたタッチパネルとして実施されることが好ましい。もちろん、スイッチボタン、マウス、キーボード、音声入力等のユーザインターフェースを適宜採用してもよい。入力部45を介して、ユーザの指示(コマンド)を受け付ける。当該指示は、通信バス40を介して制御部43に転送され、制御部43が必要に応じて所定の制御や演算を実行しうる。特に本実施形態においては、端末4の使用者がソーシャルネットワークサービス(SNS)に記事を投稿する際に、入力部45が用いられる。かかる投稿記事は、第1情報としてサーバデータベースに記憶される。これについては、第2.1節において詳述する。
【0036】
2.特徴データの生成
第2節では、特徴データの生成について説明する。前述の通り、特徴データは、データベースサーバ3における記憶部31に記憶されているもので、インターネットを介してその全部又は一部がウェアラブルデバイス2における記憶部22にも同期されている。以下、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報とを分類した第1及び第2情報を説明した上で、特徴データの生成について詳述する。
【0037】
2.1 第1情報
本実施形態において、第1情報は「入浴に関する公知の知見に基づく公知情報を含む情報」と定義される。例えば、第1情報には、これまでに学術的に医師等によって提唱されてきた医学的知見が含まれうる。また、入浴体験者の主観的知見として、入浴に関してSNS等といったインターネット上に公開された記事(投稿内容)や入浴に関する特定多数又は不特定多数を対象としたアンケートもここに含まれうる。
【0038】
図4は、端末4を用いたSNS投稿の一例が示されている。端末4の使用者が、入浴に関する記事をSNSに投稿している(ここでは、いわゆるつぶやき系のアプリケーションを想定)。例えば、図4に示されるようなつぶやきであれば、これに既存の自然言語処理を経て、「ABC温泉+40度+気持ち良い+温まる+寝られる」といった情報が第1情報として蓄積される。
【0039】
図5図7は、実際に行われた特定多数を対象とした温泉に関するアンケート結果の一例が示されている。何れも文字が大きいものほど、アンケート結果に多くあった事項であることを表している。図5A図5Cは、入浴した温泉の水温別に感想をまとめたものである。図6A図6Cは、温泉の利用頻度別に感想をまとめたものである。図7A図7Dは、入浴した温泉の入浴時間別に感想をまとめたものである。
【0040】
2.2 第2情報
本実施形態において、第2情報は「過去に複数のユーザが行った入浴に関する客観的情報と、それらのユーザの前記入浴に対する無意識の主観的情報とを紐づけた情報」と定義される。客観的情報とは、過去に複数のユーザが行った入浴に際してその水温、水質、環境温度といった非生体情報と、心拍数、運動量、血圧、血中酸素濃度、及び血中アルコール濃度といった生体情報とを含むものと留意されたい。一方、無意識の主観的情報(特許請求の範囲における「入浴体験者の主観的知見の一部」の一例)とは、ウェアラブルデバイス2が検出したユーザの無意識的な入浴に関する感想、意見、効果等に係る情報の総称である。例えば、ユーザが入浴中に無意識につぶやいた独り言や入浴中の表情等が挙げられる。
【0041】
図8は、ウェアラブルデバイス2を用いた第2情報の取得の一例を示している。なお、客観的情報のうち非生体情報はウェアラブルデバイス2によって取得されてもよいが、入浴施設別に設けられたセンサや撮像部等で適宜取得してもよい。ウェアラブルデバイス2によって非生体情報を取得する場合、例えば水温を取得するために不図示の温度センサが設けられていてもよい。或いは、撮像部25が予め設けられている水温表示計を撮像し、制御部23が記憶部22に記憶された所定の画像処理プログラムを読み込んで、当該水温を取得可能に実施してもよい。かかる情報が第2情報としてデータベースサーバ3における記憶部31に蓄積される。換言すると、データベースサーバ3の記憶部31に記憶された特徴データは、インターネットを介して追加、修正、削除を含む各情報の更新が可能に構成されるということに留意されたい。
【0042】
特に、公知情報としての第1情報は、医学的知見のみであると統計データとして母数の少なさが懸念される。現実に温泉分野における学術研究では、母数の少ないデータが数多く発表されており、これを補う上でも、アンケートやソーシャルネットワークサービスによって得られた知見を含めることに意義があると考えられる。また、これらをそのまま用いるのではなく、これらをある種のモデルとして実際にユーザが無意識に発する主観を分析することで、より高精度な情報提示が実現されうる。情報提示の仕方については、第3節において例を挙げて説明するものとする。
【0043】
2.3 特徴抽出
特徴抽出部32は、記憶部31に記憶された第1情報から予測モデルを構築する。続いて、特徴抽出部32は、記憶部31に記憶された第2情報に対してニューラルネットワークに基づく学習を実行する。かかる学習は、第1及び第2情報が恒常的に更新されていくさなか、継続的に実施することとなる。
【0044】
図9は、ニューラルネットワークNNを用いた特徴抽出の模式図である。ニューラルネットワークNNは、種々のパラメータに基づく入力値が入力されるものであり、複数の計算ノードNにより構成され、計算ノードN毎に予め定められた重みwが設定されている。ここで、重みwは、計算ノードNの結合効率を表す量で、結合加重とも呼ばれるものである。ニューラルネットワークNNは、ソフトウェア又はハードウェアとして実装することができ、例えば、データベースサーバ3のファームウェア上に実装することができる。重みwは、予め機械学習されることにより設定されてもよいし、データベースサーバ3における特徴抽出部32により機械学習が実行されることにより設定されてもよい。
【0045】
図9に示すように、ニューラルネットワークNNは、複数の層(第1層L1~第4層L4)及び複数の計算ノードN(N_11~N_41)により構成される。ここで、N_ijは、第i層のj番目の計算ノードNを表す。本実施形態では、i=4、j=5としてニューラルネットワークNNを構築している。なお、i,jの値はこれに限定されず、例えばi=1~100、j=1~100の間の整数又は100以上の整数とすることができる。
【0046】
また、各計算ノードNには、予め定められた重みwが設定される。例えば、第2層の計算ノードN_23に着目した場合、計算ノードN_23と、一つ前の層である第1層の全計算ノードN_11~N_15の間に、重みwが設定される。重みwは、例えば-1~1の値に設定される。
【0047】
ニューラルネットワークNNには、種々のパラメータが入力される。本実施形態では、第2情報に含まれる情報項目、すなわち、客観的情報である水温、水質及び環境温度や、無意識の主観的情報である独り言や表情が、ニューラルネットワークNNに入力されるパラメータとなる。
【0048】
各パラメータは、0~1の値に正規化され、各種パラメータにより規定される入力信号を第1層L1に入力する。かかる入力信号は、第1層の計算ノードN_11~N_15から、第2層L2の計算ノードN_21~N_25にそれぞれ出力される。このとき、計算ノードN_11~N_15から出力された値に対し、計算ノードN毎に設定された重みwを掛け合わせた値が計算ノードN_21~N_25に入力される。これをもう一度繰り返すと、第3層L3の計算ノードN_31~N_35となる。
【0049】
計算ノードN_31~N_35の入力値を足し合わせ、かかる値(又はこれに所定のバイアス値を加算した値)を所定の活性化関数に入力する。そして、活性化関数の出力値が次ノードである計算ノードN_41に伝搬される。このとき、計算ノードN_31~N_35と計算ノードN_41の間との間に設定された重みwと上記出力値を掛け合わせた値が計算ノードN_41に入力される。計算ノードN_41は、入力値を足し合わせ、合計値を出力信号として出力する。このとき、計算ノードN_41は、入力値を足し合わせ、合計値にバイアス値を加算した値を活性化関数に入力してその出力値を出力信号として出力してもよい。ここで、本実施形態では、出力信号の値は0~1の値となるように調整されている。出力信号として、対応する特徴データが得られ、これらをデータベースとしてまとめて記憶部31に記憶される。
【0050】
3.入浴ナビゲーション
第3節では、ウェアラブルデバイス2を用いた入浴ナビゲーションについて説明する。
【0051】
3.1 温泉施設での利用例
ウェアラブルデバイス2を装着したユーザが、ある温泉施設(ここではABC温泉と呼ぶ)において入浴を考えている。ウェアラブルデバイス2における位置情報取得部26は、ユーザの位置情報(ABC温泉に所在)を取得し、これを記憶部22が一時的に記憶する。すると、制御部23は、生体情報測定部24によって取得された生体情報と記憶部22に記憶された特徴データとに基づいて、ABC温泉の入浴がユーザにとって適切かどうかを判断する。もちろん通信部21がインターネット経由でデータベースサーバ3から特徴データの最新データを受信してこれを用いるように実施してもよい。換言すると、制御部23は、ユーザの入浴の危険性(特許請求の範囲における「入浴判定情報」の一例)をユーザの入浴前に判定している(特許請求の範囲における「判定ステップ」の一例)。図10は、このときのウェアラブルデバイス2の警告表示/情報提示の一例を示す模式図である。ユーザの血圧が低く、ABC温泉の入浴が不適切(危険性が高い)である旨の警告を発している。また、ABC温泉とは異なるDEF温泉(入浴施設名)が情報として提示されている(特許請求の範囲における「情報提示ステップ」の一例)。ここで特定の入浴施設名を挙げずに、好ましい水温、水質、又は環境温度等(危険性が低い)を提示するように実施してもよい。このような利用例の下、ユーザはより適切な入浴環境や入浴施設に誘導を促されることとなる。
【0052】
3.2 家庭での利用例
ウェアラブルデバイス2を装着したユーザが自宅において入浴を考えている。ユーザは、ウェアラブルデバイス2における撮像部25に、自宅の浴室に設けられた設定温度の温度表示計の表示を読み取らせ、これを記憶部22が一時的に記憶する。また、不図示の温度センサが室温(環境温度)を自動的に取得し、これを記憶部22が一時的に記憶する。すると、制御部23は、生体情報測定部24によって取得された生体情報と記憶部22に記憶された特徴データとに基づいて、当該設定温度及び当該室温での入浴がユーザにとって適切かどうかを判断する。もちろん通信部21がインターネット経由でデータベースサーバ3から特徴データの最新データを受信してこれを用いるように実施してもよい。換言すると、制御部23は、ユーザの入浴の危険性をユーザの入浴前に判定している(特許請求の範囲における「判定ステップ」の一例)。図11は、このときのウェアラブルデバイス2の警告表示/情報提示の一例を示す模式図である。例えば、ユーザが、水温44度且つ環境温度(室温)8度で入浴しようとした場合に、当該入浴条件での過去の事故例を表示して入浴が不適切である旨の警告を発している。また、好ましい入浴条件情報が提示されている(特許請求の範囲における「情報提示ステップ」の一例)。このような利用例の下、ユーザはより適切な入浴環境や入浴施設に誘導を促されることとなる。
【0053】
3.3 その他の応用例
【0054】
第1に、ユーザごとに個別の設定をできるように実施してもよい。前述の通り、ユーザには個人差や好みが見られることから、個人差や好みを学習させたデータをユーザ個別のウェアラブルデバイス2の記憶部22に記憶させるとよい。例えば、生体情報測定部24によって睡眠状態の判別を可能に実施することで、ウェアラブルデバイス2に睡眠評価機能をもたせることができる。特に不眠ぎみのユーザには、危険性(事故防止)という観点とは別に快適性を観点として、よく眠れるという特徴がある入浴条件情報(例えば、図7Dに示される長めの入浴等)を提示するとよい。更に、肌荒れがひどいユーザには、肌に優しい入浴条件情報を積極的に情報として提示するとよい。例えば、ユーザが酸性硫黄泉の入浴後であれば、近隣の塩化物泉や硫黄塩泉に誘導するように情報を提示することができる。なお、これらの危険性及び/又は快適性を含む情報が、入浴判定情報に相当し、当該情報が制御部23によって判定される。
【0055】
第2に、浴場として自宅での入浴や温泉施設の例を上げているが、プールや海水浴等の水泳もこれに含まれうることに留意されたい(特許請求の範囲における「浴場」の一例)。例えば、日本国においては小学校での児童の水泳教育が義務付けられているが、登校前の検温以外に水泳授業参加への制限がないことが現状である。そこで、児童にウェアラブルデバイス2を装着させることで、生体情報測定部24が児童(ユーザ)の体温を測定し授業直前に発熱した場合といった危険な水泳授業への参加を防止することができる。更に例えば、生体情報測定部24が海水浴客(ユーザ)の血中アルコール濃度を測定し、これに対して警告を発するように実施すれば、飲酒に起因する海水浴場での事故を防止することができる。
【0056】
第3に、上記のような応用例も特徴データに含まれるように、特徴データを生成するとよい。
【0057】
4.結言
以上のように、本実施形態によれば、場所を限定されず、より高精度にユーザに入浴に関する情報を提示可能なウェアラブルデバイス、入浴ナビゲーションシステム、入浴ナビゲーション方法、及びプログラムを提供することができる。
【0058】
なお、ウェアラブルデバイス2がインターネットに接続せずに、ウェアラブルデバイス2と他の端末(例えばユーザの所持する端末4)とがペアリングされていて、当該他の端末を介してデータベースサーバ3から特徴データの更新を実施してもよい。或いは、ウェアラブルデバイス2に不揮発性の記憶部を一切設けず、常にデータベースサーバ3の記憶部31に記憶された特徴データを読み込むように実施してもよい。
【0059】
また、ウェアラブルデバイス2における制御部23に代えて、データベースサーバ3における制御部(不図示)が入浴の危険性の判定を行うように実施してもよい。より詳細に考えると、ウェアラブルデバイス2における通信部21がインターネットを介して生体情報測定部24より測定した生体情報をデータベースサーバ3に送信し、データベースサーバ3における制御部が当該生体情報と特徴データとに基づいて入浴の危険性の判定を行い、その結果を再びウェアラブルデバイス2に返すように実施すればよい。
【0060】
具体的には、ユーザが装着可能なウェアラブルデバイス2が提供され、このウェアラブルデバイス2は、生体情報測定部24と、記憶部22と、制御部23と、情報提示部27とを備え、生体情報測定部24は、ユーザの生体情報を測定し、記憶部22は、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて生成された特徴データの一部又は全部を記憶し、制御部23は、生体情報測定部24より測定された生体情報と、記憶部22に記憶された特徴データとに基づいて、ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を判定し、情報提示部27は、前記入浴判定情報に基づいて適切及び/又は不適切な入浴条件に関する情報を提示する。
【0061】
また、具体的には、データベースサーバ3と、ユーザが装着可能なウェアラブルデバイス2とを備え、これらがネットワーク(インターネット)を介して接続される入浴ナビゲーションシステム1が提供され、この入浴ナビゲーションシステム1では、データベースサーバ3は記憶部31を備え、この記憶部31は、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて生成された特徴データを記憶可能に構成され、ウェアラブルデバイス2は、生体情報測定部24と、通信部21と、情報提示部27とを備え、生体情報測定部24は、ユーザの生体情報を測定し、通信部21は、ネットワーク(インターネット)を介してデータベースサーバ3と生体情報及び/又は特徴データを受信可能に構成され、情報提示部27は、入浴判定情報に基づいて適切及び/又は不適切な入浴条件に関する情報を提示し、ウェアラブルデバイス2及びデータベースサーバ3の少なくとも一方は、制御部(例えば制御部23)を更に備え、入浴判定情報は、入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含み、生体情報と特徴データとに基づいて、当該制御部によって判定される。
【0062】
そして、このようなウェアラブルデバイス2を含む入浴ナビゲーションシステム1によって、入浴ナビゲーション方法が提供され、この方法では、判定ステップと、情報提示ステップとを備え、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて生成された特徴データと定義した場合において、判定ステップでは、ユーザの生体情報と、特徴データとに基づいて、ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を前記ユーザの入浴前に判定し、情報提示ステップでは、前記入浴判定情報に基づいて次の(1)及び(2)の少なくとも一方を提示し、(1)危険な入浴条件についての過去の事故例に関する情報(2)安全な及び/又は快適な入浴条件について、入浴施設名、水温、水質及び室温の少なくとも1つに関する情報、かかる提示された情報に基づいて、前記ユーザに適切な入浴環境・入浴施設に誘導を促す。
【0063】
更に、ウェアラブルデバイス2をハードウェアとして実施するためのソフトウェアをプログラムとして実施することができる。かかるプログラムは、内蔵の記憶部に格納してもよく、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に格納してもよい。また、外部の記憶部に格納されたプログラムを読み出し、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現してもよい。すなわち、コンピュータを生体情報測定部、判定部、情報提示部として機能させるためのプログラムが提供され、このプログラムでは、当該生体情報測定部、判定部、前記情報提示部は、生体情報測定機能、判定機能、及び情報提示機能をそれぞれ備え、入浴に関する医学的知見と入浴体験者の主観的知見とを含む知見情報に基づいて決定されたデータを特徴データと定義した場合において、生体情報測定機能によって、ユーザの生体情報を測定させ、判定機能によって、ユーザの生体情報と、特徴データとに基づいて、ユーザに対する入浴の危険性及び/又は快適性に関する情報を含む入浴判定情報を判定させ、情報提示機能によって、入浴判定情報に基づいて適切な及び/又は不適切な入浴条件に関する情報を提示させる。
【0064】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 :入浴ナビゲーションシステム
2 :ウェアラブルデバイス
20 :通信バス
21 :通信部
22 :記憶部
23 :制御部
24 :生体情報測定部
25 :撮像部
26 :位置情報取得部
27 :情報提示部
27a :ディスプレイ
3 :データベースサーバ
31 :記憶部
32 :特徴抽出部
4 :端末
40 :通信バス
41 :通信部
42 :記憶部
43 :制御部
44 :表示部
45 :入力部
L1 :第1層
L2 :第2層
L3 :第3層
L4 :第4層
N :計算ノード
NN :ニューラルネットワーク
N_ij :計算ノード
w :重み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11