(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】茶園における液剤散布方法 並びに液剤散布装置
(51)【国際特許分類】
A01C 23/00 20060101AFI20221102BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A01C23/00 C
A01M7/00 D
(21)【出願番号】P 2019041414
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591155242
【氏名又は名称】鹿児島県
(73)【特許権者】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【氏名又は名称】東山 喬彦
(72)【発明者】
【氏名】飯牟▲禮▼ 啓介
(72)【発明者】
【氏名】深水 裕信
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智久
(72)【発明者】
【氏名】山田 健二
(72)【発明者】
【氏名】平岩 栄太朗
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-154719(JP,A)
【文献】特開2010-104274(JP,A)
【文献】特開2004-267812(JP,A)
【文献】特開平7-289057(JP,A)
【文献】実開平3-037812(JP,U)
【文献】実開平1-128852(JP,U)
【文献】特開昭60-160830(JP,A)
【文献】実開昭58-070732(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00 - 23/04
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝に沿って移動しながら液剤を散布し、目的とする茶畝の施肥・防虫防疫を行う方法であって、
この方法は、茶畝樹冠表層部に接しながら回転する散布本体を有する散布手段と、散布手段または茶畝上面に液剤を供給する液剤供給部とを具えて成る液剤散布機体によって行うものであり、
施肥・防虫防疫作業を行うにあたっては、液剤供給部から液剤を供給しながら、散布手段の散布本体を作業進行方向に対し、畝頂の茶葉を後方から撫で上げるように回転接触させ、液剤を茶畝に散布するようにしたことを特徴とする茶園における液剤散布方法。
【請求項2】
茶畝に沿って移動しながら液剤を散布し、目的とする茶畝の施肥・防虫防疫を行う液剤散布装置であって、
この液剤散布装置は、液剤散布機体と、この液剤散布機体を移動できるように取り付ける支持体とを具えて成り、
このうち液剤散布機体は、茶畝樹冠表層部に接しながら回転する散布本体を有する散布手段と、散布手段または茶畝上面に液剤を供給する液剤供給部とを具え、
液剤供給部から液剤を供給しながら、散布手段の散布本体を作業進行方向に対し、畝頂の茶葉を後方から撫で上げるように回転接触させ、液剤を茶畝に散布する構成であることを特徴とする茶園における液剤散布装置。
【請求項3】
前記散布本体は、回転軸に対し複数基取り付けられ、且つ回転軸に対しねじり状に設けられる構成であることを特徴とする請求項2記載の茶園における液剤散布装置。
【請求項4】
前記液剤供給部は、液剤を噴出するノズルが散布手段の前方に設けられ、散布本体が接触する前の茶葉に液剤が散布される構成であることを特徴とする請求項2または3記載の茶園における液剤散布装置。
【請求項5】
前記茶畝への液剤の散布量は、10a当たり20リットル~100リットルであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の茶園における液剤散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶園を良好な状態に保つため、あるいは茶品質の向上を図るために、茶畝に薬液や液肥等の液剤を散布する液剤散布方法並びにそれに用いる液剤散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茶園管理の一つの形態として、例えば茶樹の保護、具体的には有害虫の防除や病疫の発生回避等の作業がある。
このための手法として例えば茶畝跨走型茶園管理機が用いられることがあり、これは茶畝を跨いで移動する走行機体に、アーチ型のブームノズルを設け、茶畝上面に薬剤を噴霧する手法である(例えば特許文献1参照)。また、摘採または整枝した直後の茶茎の切断面に薬剤を塗布するためのローラーを設け、これを茶畝上で自転させながら薬剤を塗布する手法も提案されている(例えば特許文献2・3参照)。
これらの手法は、いずれも茶畝上面に薬剤が噴霧ないしは塗布されるものであり、実際には、その効果として一定の限界がある。すなわち、茶樹に対しての有害虫あるいはその卵、病疫原である有害菌類または微生物は、多くの場合、茶の葉裏に生息しており、上記手法では、このような葉裏まで薬剤が供給されないことがあり、充分な防除効果が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-348724号公報
【文献】特開平7-289057号公報
【文献】特開平9-154367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、例えば防虫防疫作業において、茶樹の葉裏にも効果的に液剤(薬液)を作用させ得るようにした新規な液剤散布方法並びに液剤散布装置の開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載の茶園における液剤散布方法は、
茶畝に沿って移動しながら液剤を散布し、目的とする茶畝の施肥・防虫防疫を行う方法であって、
この方法は、茶畝樹冠表層部に接しながら回転する散布本体を有する散布手段と、散布手段または茶畝上面に液剤を供給する液剤供給部とを具えて成る液剤散布機体によって行うものであり、
施肥・防虫防疫作業を行うにあたっては、液剤供給部から液剤を供給しながら、散布手段の散布本体を作業進行方向に対し、畝頂の茶葉を後方から撫で上げるように回転接触させ、液剤を茶畝に散布するようにしたことを特徴として成るものである。
【0006】
また請求項2記載の茶園における液剤散布装置は、
茶畝に沿って移動しながら液剤を散布し、目的とする茶畝の施肥・防虫防疫を行う液剤散布装置であって、
この液剤散布装置は、液剤散布機体と、この液剤散布機体を移動できるように取り付ける支持体とを具えて成り、
このうち液剤散布機体は、茶畝樹冠表層部に接しながら回転する散布本体を有する散布手段と、散布手段または茶畝上面に液剤を供給する液剤供給部とを具え、
液剤供給部から液剤を供給しながら、散布手段の散布本体を作業進行方向に対し、畝頂の茶葉を後方から撫で上げるように回転接触させ、液剤を茶畝に散布する構成であることを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項3記載の茶園における液剤散布装置は、前記請求項2記載の要件に加え、
前記散布本体は、回転軸に対し複数基取り付けられ、且つ回転軸に対しねじり状に設けられる構成であることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項4記載の茶園における液剤散布装置は、前記請求項2または3記載の要件に加え、
前記液剤供給部は、液剤を噴出するノズルが散布手段の前方に設けられ、散布本体が接触する前の茶葉に液剤が散布される構成であることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項5記載の茶園における液剤散布装置は、請求項2から4のいずれか1項記載の要件に加え、
前記茶畝への液剤の散布量は、10a当たり20リットル~100リットルであることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0010】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
すなわち、請求項1または2記載の発明によれば、散布本体を作業進行方向に対し、畝頂の茶葉を後方から撫で上げるように回転させるため、茶葉の裏側(葉裏)にも満遍なく液剤を散布することができ、葉裏に生息する有害虫やその卵、あるいは病疫原である有害菌類または微生物などを効果的に防除(駆除)することができる。
【0011】
また、請求項3記載の発明によれば、回転軸に対し複数基の散布本体がねじり状に設けられるため、液剤を茶葉、特に裏面に、より効果的に散布することができる。
【0012】
また、請求項4記載の発明によれば、液剤は、まず散布本体が接触する前の茶葉に散布され、その後、この茶葉を後方から撫で上げるように散布本体が回転するため、より一層効果的に、液剤を茶葉、特に裏面に散布することができる。
【0013】
また、請求項5記載の発明によれば、茶畝への液剤の散布量を確実に抑えることができ、その数値を具体的に例示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の液剤散布装置(茶園における液剤散布装置)を装着した茶園管理機の一例を骨格的に示す斜視図(a)、並びに液剤を茶畝樹冠表層部に散布する散布本体を部分的に示す斜視図(b)、並びに液剤を散布する様子を拡大して示す説明図(c)である。
【
図2】本発明の液剤散布装置を装着した茶園管理機の一例を示す側面図(a)、並びに走行機体に液剤散布機体を取り付ける際の様子を骨格的に示す部分斜視図(b)である。
【
図3】液剤散布機体の一例を示す正面図(a)、並びに液剤を散布する様子を示す説明図(b)、並びに散布本体を異ならせた液剤散布機体の改変例を示す正面図(c)である。
【
図4】回転軸に対するひねりを、一基の散布本体の途中で逆転させたようなねじり状態の改変例(散布本体の改変例)を示す説明図(a)、並びに散布本体要素同士の間に隙間状のスリットを形成し、各々の散布本体要素を分離し易いように形成した散布本体を非取付状態で示す平面図(b)である。
【
図5】暖簾タイプ(短冊タイプ)の散布本体を骨格的に示す端面図(a)、並びにブラシタイプの散布本体を骨格的に示す端面図(b)、並びに暖簾タイプ及びブラシタイプを併用した散布本体を骨格的に示す端面図(c)である。
【
図6】茶畝の長手方向から視て、散布手段を三分割した液剤散布機体の改変例を示す正面図(a)、並びに回転軸に対しひねりを有しない状態で散布本体を設けた散布手段の改変例を示す斜視図(b)である。
【
図7】散布手段に対し液剤の噴出態様を異ならせた改変例を二種示す説明図である。
【
図8】3条タイプの液剤散布装置を骨格的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法をも含むものである。
なお、説明にあたっては、液剤散布装置1から説明する。
【実施例】
【0016】
本発明の、茶園における液剤散布装置1(以下、単に液剤散布装置1とする)は、一例として
図1・
図2に示すように、茶畝Tを跨ぐように走行する走行機体2等の支持体(走行機体と同じ符号2を付す)と、この走行機体2(支持体2)によって茶畝T上面に位置するように支持される液剤散布機体3とを具えて成るものである。すなわち、本実施例の液剤散布装置1は、茶園で用いられることが多い茶畝跨走型茶園管理機の走行機体2に、液剤散布機体3を装着する構造を基本とする。
ここで液剤とは、防虫防疫用の薬剤(薬液)と、液肥(液体肥料)との総称である。
また「液剤散布装置1」という名称中の「液剤散布」とは、防虫防疫(病害虫防除)のための薬剤散布を意味する他、茶品質の向上のための液肥散布も含むものである。
なお、以下の説明では、防虫防疫のために行う液剤散布(薬剤散布)について主に説明する。
【0017】
また、実質的な説明に先立ち、まず上記「茶畝跨走型茶園管理機」における「茶園管理機」について説明しておく。「茶園管理機」とは、作業内容に応じて適宜の茶園管理機体を、走行機体2に取り付けて(付け替えて)、目的の作業を行うものである。なお、この種の茶園管理機体としては、樹形を整え樹勢の回復を図るために枝幹を剪除する剪枝機体や、茶葉Aの摘採を行う摘採機体、あるいは茶畝Tに被せた寒冷紗等の被覆資材を巻き取るための巻取展開機体などが知られているが、ここでは茶園管理機体として液剤散布機体3を適用するものである。因みに「茶畝跨走型」とは、走行機体2が茶畝Tを跨ぐように走行しながら、各種の茶園管理作業を行うために付した名称である。
このように本実施例の液剤散布装置1は、走行機体2に対しユニット式の液剤散布機体3を取り付けて成るが、液剤散布機体3を設けない部位に、他の管理機体を取り付けておくこと自体は可能である。ただし、液剤散布機体3と他の管理機体を同時に取り付ける場合、液剤散布機体3を機能させている際には(液剤散布中は)、他の管理機体は機能させないものである。
以下、液剤散布装置1を構成する走行機体2と液剤散布機体3とについて説明する。
【0018】
まず走行機体2について説明する。
走行機体2は、茶畝Tを跨いで畝間(畝地)を接地走行するものであり、走行方向(茶畝Tの長手方向)から見て概ね門型状に形成されたフレーム21を骨格部材とする。このフレーム21は、畝間に立ち上げ状態に設けられる左右の脚部フレーム21Aと、左右の脚部フレーム21Aを繋ぐ連結フレーム21Bとを具えて成るものである。
また、脚部フレーム21Aの下端には一例としてクローラを適用した走行体22が設けられる。もちろん、この走行体22は、このようなクローラに限らず、畝地を過剰に押し付けないような空気タイヤ、あるいは双方を適用した形態(例えば前側に空気タイヤ、後側にクローラを適用した形態)等が適宜採り得る。
【0019】
更に連結フレーム21Bの上部には、液剤散布装置1に乗車した作業者が座る操縦席(操縦者用シート)23、操縦桿24、液剤散布装置1の制御や操作等を行うためのコントロールボックス25を設けるものである。そして操縦席23の側傍には、例えばディーゼルエンジン等を適用した原動機26を搭載するものであり、一例として、この原動機26により図示を省略する油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプにより供給される作動油によって前記走行体22の駆動、更には後述する液剤散布機体3の散布本体313の回転駆動等を行う。
そして、上述したように、このような走行機体2に対して、液剤散布機体3を茶畝Tの上方に位置するように取り付けるものである。
【0020】
なお支持体2としては、このような走行機体2の他、手押し式の台車や可搬式のフレーム等も適用できる。つまり、本発明に係る液剤散布装置1としては、乗用型の茶園管理機タイプが典型的な形態として挙げられるが、支持体2としては必ずしも自走式の走行機体2を適用する必要はなく、上記のように作業者が押して移動させる台車や、作業者が二人一組となって手で持ちながら移動させるようなフレーム等も支持体2として適用できる。このように液剤散布機体3を茶畝T上面に位置するように支持するものであれば、自走の可否に係わらず支持体2として種々の形態が採り得る。
【0021】
次に、上記走行機体2に対して、液剤散布機体3を茶畝Tの上方に位置するように取り付けるためのアダプタ部材について説明する。
当該アダプタ部材としては、一例として
図2に示すように、フレーム21の前端部に、左右一対の昇降ガイドブラケット27Aと昇降受けローラ27Bとから成る昇降案内部材27を設け、これに左右一対の昇降アダプタ28を支持させる。なお、左右それぞれの昇降アダプタ28は、別々に昇降位置を変更することができる。
昇降アダプタ28の具体的構成は、上下に長杆状に延び、前記昇降案内部材27に直接支持される昇降ポスト281と、その下端部に設けられる取付金具としての取付アダプタ282とにより構成される。なお、昇降シフトのための機構は、従来公知の機構を採用するものであり、一例として昇降ポスト281の下端に接続したシフトケーブルをシリンダ等により引き上げる等の手法を採る。
【0022】
取付アダプタ282は、昇降ポスト281に一体的に設けられるものであり、ここには上向きに開放する切欠き282nが形成される。また、取付アダプタ282には、切欠き282nの下方にピン孔282hが形成され、このピン孔282hには、液剤散布機体3の装着状態をロックするためのロックピン282pが差し込まれる。なお、ロックピン282pは、液剤散布機体3の非取付時においても、上記ピン孔282hに差し込まれて保持される。従って、液剤散布機体3を取り付ける際には、ロックピン282pをピン孔282hから一旦、抜き取るものである。
因みにロックピン282pとしては、差し込み先端側に、弾性的に突出(出没)するボールBを有するものが好ましい。これは、装着後に差し込んだロックピン282pのボールBが突出することにより、この装着状態が維持(ロック)できるためである。
【0023】
次に液剤散布機体3について説明する。
液剤散布機体3は、上述したように液剤散布(薬液散布)による防除を行うユニット式の管理機体であり、特にここでは茶畝Tの上面だけでなく、茶葉Aの葉裏にも効率的に液剤Lが散布できるようにしている。
具体的には一例として
図1~
図3に示すように、液剤散布機体3は、液剤Lを実質的に茶畝Tに散布する散布手段31と、散布手段31まで液剤Lを移送する液剤供給部32とを具えて成り、これらをフレームに一体的に組み付けて成る。ここで当該フレームは、散布手段31と液剤供給部32とを一体的に組み付けるだけでなく、走行機体2に対し、液剤散布機体3をユニットとして、簡易に着脱(取付け・取り外し)し得る機能を有し、このため当該フレームを本明細書では「ユニット化フレーム33」と称する。
以下、散布手段31、液剤供給部32、ユニット化フレーム33について説明する。
【0024】
まず散布手段31について説明する。
散布手段31は、上述したように液剤Lを実質的に茶畝Tに散布するものであり、特にここでは茶葉Aの葉裏に効果的に液剤Lを散布する(付着させる)ものである。
なお散布手段31は、茶畝Tの長手方向(管理機正面)から視て、例えば左右で二分割され、これらが茶畝Tの仕立形状に沿うように山形(逆V字状)を成すように配置される。
また左右の散布手段31は、各々、回転軸311と、この回転軸311の周面に設けられる取付本体312と、茶畝樹冠表層部に直接接触する散布本体313とを具えて成り、散布本体313は取付本体312を介して回転軸311に取り付けられる。
【0025】
なお散布本体313自体は、例えば薄い厚み寸法を有する平面矩形状の板として形成され(
図4参照)、この板材に多数のスリット314を形成することにより(回転軸311に対しほぼ直交する方向のスリット314)、細長い短冊状の散布本体要素313aが多数並列状に形成される。このため散布本体313そのものを、回転軸311(取付本体312)から外して平面的に視た場合には、言わば暖簾のような状態を呈する。因みに、このような散布本体313を暖簾タイプ(短冊タイプ)と称する。
そして、このような散布本体313によって液剤Lを茶葉Aに散布するには、例えば
図1(c)に示すように、まず散布本体313の前方に位置する茶葉Aに、液剤Lを散布(噴出)した後、液剤Lが掛かった茶葉Aを、回転する散布本体313でならすものである。この際、散布手段31においては、多数の散布本体要素313aが茶葉Aの葉裏を撫で上げるように回転接触することから、この接触時に茶葉Aに散布された液剤Lが、茶葉Aの葉裏に、あたかも塗り付けられるように塗布される。
【0026】
また取付本体312は、一例として
図1(b)に示すように、回転軸311に対し、ねじり状に設けられ、これにより非取付状態で平面矩形状を呈する散布本体313を、取付状態では、回転軸311に対しひねりを有したねじり状に取り付けることができる。もちろん、取付本体312に散布本体313を取り付けるにあたっては、スリット314が形成されていない端縁側を取付本体312に保持させるものであり、ここでの保持手法としては、例えばクランプやボルト・ナットによる螺合締結等の手法が挙げられる。
そして、散布本体313を回転軸311に対しねじり状に取り付けることで、例えば
図1(b)に示すように、回転軸311の回転に伴い、細長状を成す個々の散布本体要素313aが、時間差でしなる(撓む)ようになり(側面から見て、全ての散布本体要素313aが重なってしなることがほとんどなく)、液剤Lを茶葉Aの裏面により効果的に散布(塗布)することができる。なお、散布本体313を回転軸311に対しねじり状に取り付けるにあたり、その巻き込み方向としては、右巻きまたは左巻きのどちらでも構わないし、巻き込みの途中で巻き方を変更しても構わない。
【0027】
また、散布本体313としては、剛性の低いもの(いわゆるコシがほぼ無いもの)が好ましく、これは上記のように、個々の散布本体要素313aが、回転によって、よりしなり易く(撓み易く)なるためである。因みに、散布本体313の素材を具体的に挙げると、例えば布、不織布、薄いゴム板または合成樹脂製の薄板などが挙げられるが、当然ながら散布本体313をこのような薄板素材で形成しても、回転の遠心力によって個々の散布本体要素313aが千切れないことが前提となる。もちろん散布本体313は、長さ(取付状態において回転軸311の径方向長さ)が長いほど、またスリット314の切り込み長さが長いほど、回転中、しなり易いものであり、散布本体313の製作にあたっては、このようなことも考慮される。
因みに、
図1(c)等は、個々の散布本体要素313aが、回転中、殆どしならない状態で描いたが、これは便宜的に図示したためであり、実際には上記
図1(b)に示すように、回転によって個々の散布本体要素313aがしなることが好ましい。逆に言えば、そのために、散布本体313の素材や形状等を設定することが望ましい。
【0028】
また、上記
図1(b)では、回転によって個々の散布本体要素313aが、いわゆるバラけた状態でしなるように図示したが、例えば
図4(a)では個々の散布本体要素313aが、バラバラにならず、連続したウエーブ状を呈するように図示しており、このような状況は散布本体313の剛性や形状、スリット314の切り込み長さ、回転軸311の回転速度等によって、種々変化し得るものである。
また、上記
図1(c)では、一本の回転軸311に対し四基の散布本体313(取付本体312)を放射状に設けたが(いわゆる4等配)、この数は適宜変更可能である。
【0029】
また、回転軸311(散布本体313)の回転方向は、上記
図1(c)に示すように、作業進行方向(機体進行方向)において、回転する散布本体313によって、散布本体要素313aが畝頂(茶畝樹冠表層部)の茶葉Aを後方から撫で上げるように(下方からめくり上げるように)接触する回転とする。この回転により、しなった個々の散布本体要素313aが、茶葉Aの特に裏側を満遍なく、なぞるように接触して行き、葉裏にも充分に液剤Lを散布(塗布)することができる。
【0030】
また散布本体313(取付本体312)は、回転軸311に対し一定のピッチで巻き付くようないわゆる螺旋(螺旋階段)状に設けることはもちろん、このような巻付ピッチを徐々に変更して行くことも可能である。また散布本体313は、例えば
図4(a)に示すように、回転軸311に対するひねりを、一基の散布本体313の途中で逆転させたようなねじり状態(例えば右巻きから左巻きに変更するような状態)で設けることも可能であり、このような状態は全て特許請求の範囲に記載する「ねじり状」に包含される。
【0031】
次に、液剤供給部32について説明する。
液剤供給部32は、上述したように茶葉Aに散布する液剤Lを、図示を省略する液剤タンクから散布手段31に供給するものである。
ここで上述したように散布手段31(散布本体313)が、茶畝Tのほぼ全幅にわたって形成されるため、液剤供給部32もこれに対応して、茶畝Tのほぼ全幅にわたるように形成される。
なお、液剤タンクは、例えば防虫防疫作業を行う場合のみ、走行機体2上に搭載・設置するのが一般的である。
【0032】
液剤供給部32は、一例として
図1~
図3に示すように、液剤タンク(図示略)と、移送チューブ321と、分散給液管322と、液剤Lを茶畝上面や散布手段31に向けて噴出(供給)するノズル323とを具えて成る。
ここでノズル323は、例えば散布本体313の近傍に配置され、且つ茶畝Tのほぼ全幅にわたって形成される回転軸311や散布本体313に対し、より均等に液剤Lを噴出することができるよう畝幅方向において複数設けられるものである(
図3(a)参照)。また、このため分散給液管322を茶畝Tのほぼ全幅にわたって設け、複数のノズル323に対し液剤Lを分散供給するものである。
また、移送チューブ321は、液剤タンクから分散給液管322まで液剤Lを移送するためのフレキシブルチューブ(例えばシリコン製)であり、例えば移送チューブ321の終端が、分散給液管322のほぼ中央上部に接続される。
【0033】
ノズル323は、一例として
図1(c)に示すように、散布本体313の前方(作業進行方向の前方側)に設置され(例えば進行方向に対し約45度下向きに設置され)、ここから前方側の茶畝頂部に向けて噴出される。これにより、まず茶畝頂部の茶葉Aに液剤Lを散布(噴出)した後、液剤Lが掛かった茶葉Aを、回転する散布本体313でならすものであり、葉裏にも効果的に液剤Lが散布される。もちろんノズル323の設置位置や液剤Lの噴出方向等は、種々の変更が可能である。
【0034】
また、ここでは液剤Lを茶葉Aや散布手段31に供給するにあたり、液剤Lに圧力を掛けて勢い良く噴出(噴射)する形態として説明したが、液剤Lの供給は、必ずしもこのような噴出に限定されるものではなく、例えば
図2(a)に示すような、シャワーリング、特に重力を利用した自然落下のシャワーリング形態も可能である。またこのような連続供給だけでなく、滴下での断続的供給(間欠的供給)も可能である。なお自然落下によるシャワーリングや滴下による供給を採用した場合、給液時に液剤Lに圧力を作用させなくてもよいため、液剤排出用(液剤供給用)のポンプは必ずしも必要ではない。
因みに、液剤排出用のポンプを使って液剤Lを噴出する場合には、液剤供給(噴射)のタイミングを、散布本体313の回転と同期させることもできる。
【0035】
次にユニット化フレーム33について説明する。
ユニット化フレーム33は、上述したように、液剤散布機体3を走行機体2に対し、ユニットとして簡易に着脱(取付け・取り外し)できるようにしたものであり、実質的には上記散布手段31と液剤供給部32とを一体的に組み付けて成るフレーム部材である。
ユニット化フレーム33は、例えば
図3に示すように、茶畝Tのほぼ全幅寸法を有するパイプ状のフレーム部材(これを幅方向フレーム331とする)を、数本、前後方向(茶畝Tの長手方向)に接続して成り、このものは散布手段31が左右二分割で形成されることから、正面から見て、茶畝上面に沿う山形(逆V字状)に形成される。
【0036】
また、本実施例では、この幅方向フレーム331に対し、左右両側に側板332が設けられるとともに、茶畝中央部に中板333が設けられる。因みに上記散布手段31の回転軸311は、この側板332と中板333との間に取り付けられる。また一方の側板332に対し、回転軸311を回動させる油圧モータM等が取り付けられる。
更に、上述した液剤Lの分散給液管322は、前記幅方向フレーム331に対し、あるいは側板332や中板333に対し取り付けられる。
【0037】
また、ユニット化フレーム33は、例えば下面以外がカバー334で覆われ、このカバー334によって、散布された液剤Lが、微細な霧(雲)の状態でカバー334内に充満し、葉裏に回り込むような空間を形成し得る。すなわち、液剤Lは、ノズル323から噴射される際に微細な霧状になり、散布中、これをカバー334内に一旦、閉じ込めるようにすることで、微細な霧(雲)状の液剤Lを茶畝樹冠面上に創出するものである。もちろん、このようなカバー334は、散布中の液剤Lの周囲への飛散も防止できるものである。また、このようなカバー334を設けることで、散布した液剤Lが風に流され難くなり、操縦席23に乗り込んだ作業者や周辺住民等の吸い込みや肌への付着等の懸念も大きく軽減される。
【0038】
そして、このようなユニット化フレーム33の左右両側に、一例として
図2(b)に示すように、走行機体2への取付けを図るための取付用ポスト335が設けられる。
この取付用ポスト335には、その上部において左右に突出する位置決めピン335pが設けられ、またその下方にピン孔335hが開口されて成る。この位置決めピン335pとピン孔335hとの距離(間隔)は、取付アダプタ282の切欠き282nとピン孔282hとの距離(間隔)と一致するように形成される。
因みに、液剤散布機体3を走行機体2に取り付けた状態では、液剤散布機体3側の位置決めピン335pを、走行機体2(取付アダプタ282)側の切欠き282nに収めた後、上述したロックピン282pを走行機体2(取付アダプタ282)側のピン孔282h及び液剤散布機体3側のピン孔335hを貫通するように嵌め込むものである。
【0039】
なお、実際に、液剤散布機体3を走行機体2に取り付ける際には、例えば液剤散布機体3を、走行機体2の取付アダプタ282(最も下げた位置)よりも上方に保持するユニット保持台車(図示略)を適用することが好ましい。
このユニット保持台車は、台車底部にコロやタイヤ等の転動輪(方向転換可能)を設け、これにより液剤散布機体3を載せた状態で自由に移動することができるようにした台車であり、これを適用することで、より容易に液剤散布機体3を走行機体2に取付けることができる。
因みに、液剤散布機体3自体は、ユニット化フレーム33に対し、回転軸311と散布本体313を伴った散布手段31の単位で交換自在とすることが可能である。
【0040】
本発明の液剤散布装置1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下、この装置を適用して茶葉Aに液剤Lを散布する態様について説明しながら、併せて、本発明の防虫防疫方法(茶園における防虫防疫方法)について説明する。
なお説明にあたっては、液剤Lの実質的な散布態様の説明に先立ち、液剤散布機体3を走行機体2に取り付ける態様から説明する。また、液剤散布機体3を走行機体2に取り付けるには、上述したユニット保持台車を用いて行うものとする。
【0041】
《I》〔液剤散布機体の走行機体への取付け〕
(1)液剤散布機体のユニット保持台車への載置
液剤散布機体3を取り付けるにあたっては、上記のように液剤散布機体3をまずユニット保持台車に載せておく。ここで、ユニット保持台車に載せた際の液剤散布機体3の高さは、走行機体2の取付アダプタ282を最も下げた位置よりも高い位置に設定される。具体的には、液剤散布機体3の取付用ポスト335の下端が、取付アダプタ282の上端(切欠き282n)よりも高い位置になるように、液剤散布機体3をユニット保持台車によって保持する。
【0042】
(2)ロックピンの抜き取り
その後、走行機体2の前面に設置されている取付アダプタ282(ピン孔282h)に差し込まれているロックピン282pを抜き取る。この際、ロックピン282pの差し込み先端側に、弾性的に突出するロック用のボールBが存在する場合には、適宜の操作によりこのボールBを没入させて、ロックピン282pをピン孔282hから抜き取るものである。
【0043】
(3)取付アダプタの下降
その後、取付アダプタ282を下げ(例えば最も低い位置)、取付アダプタ282を、少なくとも液剤散布機体3の取付用ポスト335の下端位置よりも下げておく。なお、このような下降操作は、走行機体2側の原動機26を始動し、昇降操作用の上下レバー等を操作して行う。
【0044】
(4)ユニット保持台車の移動
その後、液剤散布機体3を載せたユニット保持台車を、茶園管理機(走行機体2)の前側、すなわち昇降ポスト281の前側に移動させ、液剤散布機体3を装着可能位置とする。この際、液剤散布機体3の取付用ポスト335から左右に突出する位置決めピン335pが、上方から視て、取付アダプタ282の切欠き282nとほぼ合致するようにユニット保持台車を移動させるものである。
【0045】
(5)取付アダプタの上昇
次いで、走行機体2側の原動機26を始動させ、昇降操作用の上下レバー等を操作して、走行機体2の昇降ポスト281(取付アダプタ282)を徐々に上昇させて行く。
【0046】
(6)液剤散布機体の装着
取付アダプタ282の上昇に伴い、液剤散布機体3の位置決めピン335pが、走行機体2の切欠き282nに相対的に収まるようになり、この状態でユニット化フレーム33のピン孔335hと、取付アダプタ282のピン孔282hとが合致していることを確認した後、原動機26を停止させる。その後、これら両方のピン孔282h・335hにロックピン282pを差し込み、取付状態をロックする。
この後、回転軸311を回転させる油圧モータMに接続された油圧ホースを、走行機体2に設けられた油圧ポンプと接続するものであり、これにはワンタッチ接続が行えるカプラ等を適用することが好ましい。
その後、回転軸311の回転数の微調整等、適宜の設定調整を行った後、実質的な液剤散布作業に移行する。
【0047】
《II》〔実質的な液剤散布作業〕
以上のようにして液剤散布機体3を走行機体2に装着した後、作業者が操縦席23に座り、散布対象の茶畝Tに、茶園管理機としての液剤散布装置1を乗り入れ、液剤Lの散布作業を行う。
当該作業中、散布手段31の回転軸311は、一例として
図1(c)や
図2に示すように、作業進行方向(機体進行方向)において、回転する散布本体313によって、畝頂(茶畝樹冠表層部)の茶葉Aを後方から撫で上げるように(下方からめくり上げるように)回転する。このため、この回転により、しなった個々の散布本体要素313aが、茶葉A(特に葉裏)を満遍なく、なぞるように接触して行く。
【0048】
また、液剤Lは、例えば
図1(c)に示すように、ノズル323によって、まず散布本体313が接触する前の茶葉Aに斜め上方から前方に向けて散布され、その後、液剤Lが散布された茶葉Aを下から撫で上げるように散布本体313が回転して行く。
そのため、例えば茶畝樹冠表層部において比較的下方に位置する茶葉表面(上面)に散布された液剤Lが、散布本体313との接触により散布本体313の表面に付着し、ここに付着した液剤Lが茶畝樹冠表層部における比較的上方に位置する茶葉Aの葉裏に塗り付けられるようになり、葉裏にも満遍なく液剤Lが散布(塗布)される。
もちろん、回転によって散布本体313が葉裏に直接接触するため、この物理的な接触によって、葉裏に生息していた有害虫やその卵は、直接除去され得る(掻き落とされる)ものである。
【0049】
また、ユニット化フレーム33が、カバー334で覆われている場合には、ノズル323から噴出された液剤Lが、まずこのカバー334内で、微細な霧(雲)の状態で充満し、葉裏に回り込むようになる。そのためカバー334を設けた場合には、葉裏に液剤Lがより一層効果的に散布され、茶葉Aにおいて特に葉裏に生息する有害虫やその卵、あるいは病疫原である有害菌類または微生物などを効果的に防除(駆除)することができるものである。
【0050】
《III 》液剤塗布量
このように本発明では茶葉A(特に葉裏)に効率的に液剤Lを散布することができるため、従来に比べ、茶畝Tへの液剤Lの散布量を大幅に減少させることができるものであり、例えば従来、10a当たり200~400リットルであった散布量を、10a当たり20リットル~100リットルに減少させることができる。
【0051】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、上述した基本の実施例では、散布本体313に多数の散布本体要素313aを形成するにあたり、単なる切り込み線としてのスリット314を入れて形成するように示したが、散布本体要素313aを形成するスリット314としては、必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、例えば
図4(b)に示すように、適宜の間隙を有するようにスリット314を形成し、散布本体要素313a同士を幾分離して設けることが可能である。なお、上記
図4(b)中の符号315は、スリット314の根元最奥部(切り込み奥部)に形成した亀裂防止孔であり、これは回転による遠心力を受けても散布本体要素313aがスリット根元部から千切れないようにするためである(言わば応力分散作用)。因みに、このような応力分散用の亀裂防止孔315は、単なる切り込み線としてのスリット314を形成した
図1(b)のような場合にも採用できる構成であり、有効である。
【0052】
また先に述べた基本の実施例では、主に暖簾タイプ(短冊タイプ)の散布本体313について述べたが(
図1(b)や
図4(b)参照)、散布本体313としては、多数本の毛で形成した、いわゆるブラシタイプのものも適用可能である。具体的には、一例として
図5(b)に示すように、暖簾タイプの散布本体313における各散布本体要素313aを、複数本の毛を束ねたものまたは一本の毛で形成したものが挙げられ、これをブラシタイプの散布本体313と称する。なお、ブラシタイプの散布本体313においても、回転軸311に対しひねりを有したねじり状に設けることが好ましい。因みに、本出願人が行った試験では、ブラシタイプの散布本体313では、ナイロンのより糸で形成したものが、散布効果としてより好ましい結果が得られたものである。また、ブラシタイプの散布本体313の場合には、例えば毛の長さを異ならせた数種のものを予め用意しておくことで、茶葉Aの葉裏に、より満遍なく液剤Lを散布する(付着させる)ことができる。
もちろん、散布本体313は、暖簾タイプとブラシタイプとのいずれかである必要はなく、例えば
図5(c)に示すように、これらを併用して構成することも可能である。
【0053】
また、先に述べた基本の実施例では、茶畝Tの長手方向から視て、散布手段31を左右に二分割し、これらを茶畝Tの仕立形状に沿うように山形(逆V字状)に配置する形態を示したが、散布手段31は必ずしも茶畝Tの左右で二分割される必要はなく、例えば
図6(a)に示すように、茶畝Tの中央部と、その両側とにおいて三分割で形成することも可能である。
また、先に述べた基本の実施例では、散布本体313を回転軸311に対しねじり状に取り付けるように説明したが、例えば
図6(b)に示すように、回転軸311の長手方向にひねりを有しないストレート板状に設けることが可能である。この場合、当然ながら散布本体313を保持する取付本体312を、回転軸311の長手方向に沿うように真っ直ぐに設けるものである。
【0054】
また、先に述べた基本の実施例では、ノズル323を散布本体313の前方に設け、まずここから液剤Lを、茶葉A(散布手段31が接触する前の茶葉A)に斜め上方から前方に向けて散布し、その後、液剤Lが散布された茶葉Aを、散布本体313によって下から撫で上げるように回転させる態様であった(
図1(c)参照)。
しかしながら、液剤Lの散布態様は必ずしも、これに限定されるものではなく、例えば
図7(a)に示すように、回転する散布本体313に、まず液剤Lを付着させ、この散布本体313で茶畝樹冠表層部の茶葉Aの葉裏を撫で上げるように掻き上げて、葉裏に液剤Lを散布(塗布)する態様も可能である。この場合、ノズル323は、例えば上記
図7(a)に示すように、散布本体313の前方上部に設け、ここからほぼ真下の散布本体313に向けて、液剤Lを供給する形態が採り得る。因みに、このような場合には、液剤Lの供給は、噴出でなく自然落下によるシャワーリングや滴下でも構わない。
また、例えば
図7(b)に示すように、回転する散布本体313で、まず茶畝樹冠表層部の茶葉A、すなわち液剤Lを散布する前の茶葉Aの葉裏を撫で上げるように掻き上げてから、茶葉Aに液剤Lを散布する態様も可能である。この場合、例えば上記
図7(b)に示すように、ノズル323を散布本体313の後方(作業進行方向に対する後方)に設け、ここからやや前方の茶畝上面に向けて液剤Lを散布する形態が採り得る。
【0055】
また、先に述べた基本の実施例では、基本的に1条タイプの液剤散布装置1を図示したが、液剤散布装置1は必ずしも1条タイプに限定されるものではなく、例えば
図8に示すように、一回の走行で複数の茶畝Tに液剤Lを散布する多条タイプとすることも可能である。因みに、上記
図8では3条タイプの液剤散布装置1を図示しており、この場合には左右両側の液剤散布機体3を、中央の液剤散布機体3と同時にまたは単独で昇降動できるような取付態様が好ましい。
【0056】
また、先に述べた基本の実施例では、基本的に防虫防疫を目的とした薬剤散布について説明したが、本発明は茶品質の向上を目的として液肥を茶畝Tに散布したい場合においても適用できる。特に本発明は、液肥を茶葉Aの葉裏に散布したい場合に好適であるが、液肥を茶葉表面(上面)に散布したい場合にも適する。
【符号の説明】
【0057】
1 液剤散布装置(茶園における液剤散布装置)
2 走行機体(支持体)
3 液剤散布機体
2 走行機体
21 フレーム
21A 脚部フレーム
21B 連結フレーム
22 走行体
23 操縦席(操縦者用シート)
24 操縦桿
25 コントロールボックス
26 原動機
27 昇降案内部材
27A 昇降ガイドブラケット
27B 昇降受けローラ
28 昇降アダプタ
281 昇降ポスト
282 取付アダプタ
282n 切欠き
282h ピン孔
282p ロックピン
B ボール
3 液剤散布機体
31 散布手段
32 液剤供給部
33 ユニット化フレーム
31 散布手段
311 回転軸
312 取付本体
313 散布本体
313a 散布本体要素
314 スリット
315 亀裂防止孔
32 液剤供給部
321 移送チューブ
322 分散給液管
323 ノズル
33 ユニット化フレーム
331 幅方向フレーム
332 側板
333 中板
334 カバー
335 取付用ポスト
335p 位置決めピン
335h ピン孔
T 茶畝
A 茶葉
L 液剤
M 油圧モータ