IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】糸及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 4/00 20060101AFI20221102BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20221102BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20221102BHJP
   A61L 17/08 20060101ALI20221102BHJP
   A61L 17/14 20060101ALI20221102BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20221102BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20221102BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
D01F4/00 A
D06M10/00 K
D06M15/643
A61L17/08
A61L17/14
A61L27/38 100
A61L27/38
A61L27/52
A61L27/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019519124
(86)(22)【出願日】2018-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2018015488
(87)【国際公開番号】W WO2018211877
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2017098931
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人科学技術振興機構研究成果展開事業、大学発新産業創出プログラム(START)、プロジェクト支援型、研究課題「コラーゲンビトリゲルの形状加工技術を活用した医療機器および創薬支援ツールの開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】青木 茂久
(72)【発明者】
【氏名】江内田 寛
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 歩
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-059728(JP,A)
【文献】特開2008-264147(JP,A)
【文献】特開2007-204881(JP,A)
【文献】特開2015-035978(JP,A)
【文献】特開2016-069783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0273993(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00-13/04
D02G 1/00-3/48
A61L 2/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の型を用いてゲル化させてなる柱状アテロコラーゲンゲルに紫外線を照射する工程Aと、
前記紫外線照射後の柱状アテロコラーゲンゲルをガラス化して、糸状アテロコラーゲンゲル乾燥体を得る工程Bと、
前記糸状アテロコラーゲンゲル乾燥体を再水和して、糸状アテロコラーゲンビトリゲルを得る工程Cと、
前記糸状アテロコラーゲンビトリゲルを再ガラス化して、糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体を得る工程Dと、
前記糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体に紫外線を再照射する工程Eと、
をこの順に備える糸の製造方法。
【請求項2】
前記工程Eの後、さらに、紫外線を再照射された前記糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体に疎水性溶媒を付着又は含浸させる工程Fを備える請求項に記載の糸の製造方法。
【請求項3】
前記糸は、縫合糸として使用可能な組織再生糸である請求項1又は2に記載の糸の製造方法。
【請求項4】
前記糸は、細胞移植用担体である請求項1~のいずれか一項に記載の糸の製造方法。
【請求項5】
前記糸は、結膜瘻孔部の補填材である請求項1~のいずれか一項に記載の糸の製造方法。
【請求項6】
前記糸は、腹膜炎抑制剤又は腹膜線維化抑制剤である請求項1~のいずれか一項に記載の糸の製造方法。
【請求項7】
アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体からなり、破断強度が0.2kgf以上であり、縫合糸として使用可能な組織再生糸又は細胞移植用担体である疎水性溶媒が付着又は含浸された糸。
【請求項8】
前記疎水性溶媒がシリコンオイルである請求項に記載の糸。
【請求項9】
前記糸は、結膜瘻孔部の補填材である請求項又はに記載の糸。
【請求項10】
前記糸は、腹膜炎抑制剤又は腹膜線維化抑制剤である請求項のいずれか一項に記載の糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸及びその製造方法に関する。
本願は、2017年5月18日に、日本に出願された特願2017-098931号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、これまで、アテロコラーゲンビトリゲル膜を開発し、皮膚、角膜、気管、関節軟骨、鼓膜及び食道等の損傷組織を再生できることを実証してきた。この過程で、アテロコラーゲンビトリゲル膜は、創傷部における上皮化促進効果及び瘢痕形成抑制効果を有する生体適合性素材であることが明らかとなった。
【0003】
このような背景のもと、皮膚の組織再生に有用なアテロコラーゲンビトリゲル膜は、既に製薬企業等にて医療機器としての研究開発が進められている。一方、日本において使用可能なアテロコラーゲンを原料とする人工真皮としては、インテグラ(登録商標)(Integra Life Science社製)、テルダーミス(登録商標)(テルモ社製)及びペルナック(登録商標)(グンゼ社製)の3製品が存在する。これらの人工真皮は、アテロコラーゲンスポンジとシリコン膜とから構成された真皮再建用のテンプレートである。これらのことから、アテロコラーゲンビトリゲルは再生医療分野での適用拡大を見込めることから、膜状のみならず、糸状についても開発が求められていた。
【0004】
一方、本発明者らは、これまで、ネイティブコラーゲンビトリゲルを、膜状、糸状、管状等の任意の形状に加工する技術を開発してきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-204881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アテロコラーゲンゲルはネイティブコラーゲンゲルよりも強度がないため、特許文献1に記載の方法では、ネイティブコラーゲンゲルよりも強度がないアテロコラーゲン等のハイドロゲルを用いて、糸状のビトリゲルを製造することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ネイティブコラーゲンゲルよりも強度がないハイドロゲルを原料として使用できる糸の製造方法を提供する。また、前記製造方法により得られ、優れた強度を有する糸を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、柱状のハイドロゲルに紫外照射を施して、ガラス化し、再水和することで糸状のアテロコラーゲンビトリゲルが製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る糸の製造方法は、
柱状ハイドロゲルに紫外線を照射する工程Aと、
前記紫外線照射後の柱状ハイドロゲルをガラス化して、糸状ハイドロゲル乾燥体を得る工程Bと、
前記糸状ハイドロゲル乾燥体を再水和して、糸状ビトリゲルを得る工程Cと、
をこの順に備える方法である。
上記第1態様に係る糸の製造方法において、前記工程Cの後、さらに、前記糸状ビトリゲルを再ガラス化して、糸状ビトリゲル乾燥体を得る工程Dを備えてもよい。
上記第1態様に係る糸の製造方法において、前記工程Dの後、前記糸状ビトリゲル乾燥体に紫外線を再照射する工程Eを備えてもよい。
上記第1態様に係る糸の製造方法において、前記工程Eの後、さらに、紫外線を再照射された前記糸状ビトリゲル乾燥体に疎水性溶媒を付着又は含浸させる工程Fを備えてもよい。
上記第1態様に係る糸の製造方法において、前記ハイドロゲルが、アテロコラーゲンゲルであってもよい。
上記第1態様に係る糸の製造方法において、前記糸は、縫合糸として使用可能な組織再生糸であってもよい。
上記第1態様に係る糸の製造方法において、前記糸は、細胞移植用担体であってもよい。
上記第1態様に係る糸の製造方法において、前記糸は、結膜瘻孔部の補填材であってもよい。
上記第1態様に係る糸の製造方法において、前記糸は、腹膜炎抑制剤又は腹膜線維化抑制剤であってもよい。
【0010】
本発明の第2態様に係る糸は、ビトリゲル乾燥体からなり、疎水性溶媒が付着又は含浸されている。
前記糸の破断強度が0.1kgf以上であってもよい。
前記糸の破断強度が0.2kgf以上であってもよい。
前記ビトリゲル乾燥体がアテロコラーゲンビトリゲル乾燥体であってもよい。
前記疎水性溶媒がシリコンオイルであってもよい。
前記糸は、縫合糸として使用可能な組織再生糸であってもよい。
前記糸は、細胞移植用担体であってもよい。
前記糸は、結膜瘻孔部の補填材であってもよい。
前記糸は、腹膜炎抑制剤又は腹膜線維化抑制剤であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、ネイティブコラーゲンゲルよりも強度がないハイドロゲルを原料として使用できる糸の製造方法を提供することができる。また、前記製造方法により得られ、優れた強度を有する糸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】実施例1における各条件の糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1における破断強度を示すグラフである。
図1B】実施例1における各条件の糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2における破断強度を示すグラフである。
図1C】実施例1における各条件のポリグラクチン縫合糸バイクリル(登録商標)における破断強度を示すグラフである。
図2】実施例2におけるシリコンオイルを浸潤させた糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1を用いてマウス切開部を縫合した画像である。
図3A】実施例2における縫合7日目のシリコンオイルを浸潤させた糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1(浸潤体1)を用いたマウス縫合部の組織切片をヘマトキシリン-エオジン(HE)染色した結果を示す画像である。
図3B】実施例2における縫合7日目のポリグラクチン縫合糸バイクリル(登録商標)(乾燥体3)を用いたマウス縫合部の組織切片をHE染色した結果を示す画像である。
図3C】実施例2における縫合7日目のシリコンオイルを浸潤させた糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1(浸潤体1)を用いたマウス縫合部の組織切片を抗α平滑筋アクチン(α-smooth muscle actin:α-SMA)抗体による免疫染色した結果を示す画像である。
図3D】実施例2における縫合7日目のポリグラクチン縫合糸バイクリル(登録商標)(乾燥体3)を用いたマウス縫合部の組織切片を抗αSMA抗体による免疫染色した結果を示す画像である。
図4A】実施例3における糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2を補填材として用いてブタの結膜瘻孔部を塞いだ画像である。
図4B】実施例3における従来の補填材であるプラスチックポートを用いてブタの結膜瘻孔部を塞いだ画像である。
図5A】実施例4における内皮細胞と共に培養した再水和させた糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1(再水和体1)の画像である。
図5B】実施例4における線維芽細胞と共に培養した再水和させた糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1(再水和体1)の画像である。
図5C】実施例4における線維芽細胞と共に培養した再水和させたポリグラクチン縫合糸バイクリル(登録商標)(再水和体3)の画像である。
図6A】実施例5で用いられた糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体(CXM1及びCXM5)の画像である。
図6B】実施例5における糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体のマウス腹腔内への挿入方法を示す図である。
図6C】実施例5における糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体をマウス腹腔内へ挿入している様子を示す画像である。
図7A】実施例5における腹膜炎誘導後40日目に開腹した各群のマウスの腹膜の様子を示す画像である。上図は開腹したマウスの腹部全体を示す画像であり、下図は腹膜を拡大した画像である。スケールバーは1cmを示す。
図7B】実施例5における腹膜炎誘導後40日目の各群のマウスの組織切片のHE染色像である。上図は壁側腹膜のHE染色像であり、下図は臓側腹膜のHE染色像である。スケールバーは100μmを示す。
図7C】実施例5における腹膜炎誘導後40日目の各群のマウスの壁側腹膜の組織切片のアザン染色像である。スケールバーは200μmを示す。
図7D】実施例5における腹膜炎誘導後40日目の各群のマウスの線維化した腹膜の中皮下結合織の厚さを示すグラフである。
図8A】実施例5における腹膜炎誘導後56日目に開腹した各群のマウスの腹膜の様子を示す画像である。上図は開腹したマウスの腹部全体を示す画像であり、下図は腹膜を拡大した画像である。スケールバーは1cmを示す。
図8B】実施例5における腹膜炎誘導後56日目の各群のマウスの組織切片のHE染色像である。上図は壁側腹膜のHE染色像であり、下図は臓側腹膜のHE染色像である。スケールバーは100μmを示す。
図8C】実施例5における腹膜炎誘導後56日目の各群のマウスの壁側腹膜の組織切片のアザン染色像である。スケールバーは200μmを示す。
図8D】実施例5における腹膜炎誘導後56日目の各群のマウスの線維化した腹膜の中皮下結合織の厚さを示すグラフである。
図9】実施例5における腹膜炎誘導後40日目の各群のマウスの腹膜の組織切片の各種抗体による免疫染色像である。抗サイトケラチンAE1/AE3(CK AE1/AE3)抗体、抗ビメンチン抗体及び抗N-カドヘリン抗体による免疫染色像のスケールバーは50μmを示す。抗結合組織成長因子(connective tissue growth factor:CTGF)抗体及び抗α-SMA抗体による免疫染色像のスケールバーは100μmを示す。
図10A】実施例5における腹膜炎誘導後40日目の各群のマウスの腹膜の組織切片の各種抗体による免疫染色像である。スケールバーは50μmを示す。
図10B】実施例5における腹膜炎誘導後40日目の各群のマウスの中皮下間質層(submesothelial interstitial layer:SMIL)中のCD45陽性細胞の数を示すグラフである。
図10C】実施例5における腹膜炎誘導後40日目の各群のマウスのSMIL中のF4/80陽性細胞の数を示すグラフである。
図10D】実施例5における腹膜炎誘導後40日目の各群のマウスのSMIL中の増殖細胞核抗原(proliferating cell nuclear antigen:PCNA)陽性細胞の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪糸の製造方法≫
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る糸の製造方法は、
柱状ハイドロゲルに紫外線を照射する工程Aと、
前記紫外線照射後の柱状ハイドロゲルをガラス化して、糸状ハイドロゲル乾燥体を得る工程Bと、
前記糸状ハイドロゲル乾燥体を再水和して、糸状ビトリゲルを得る工程Cと、
をこの順に備える方法である。
【0014】
従来の製造方法では、ネイティブコラーゲンゲルよりも強度のないハイドロゲルを用いて糸を製造することができなかった。
これに対し、本実施形態の製造方法によれば、ネイティブコラーゲンゲルよりも強度のないハイドロゲルを原料としても、糸を製造することができる。
以下、本実施形態の糸の製造方法の各工程について、詳細を説明する。
【0015】
[工程A]
まず、柱状ハイドロゲルに紫外線を照射し、柱状ハイドロゲルの強度を上げる。
工程Aで用いられる柱状ハイドロゲルは、例えば、ゾルを所望の径となるように筒状の型等を用いて、ゲル化させて得られたものであればよい。また、ゲル化する際にゾルを保温する温度は、用いるゾルの種類に応じて適宜調整すればよい。例えば、ゾルがコラーゲンゾルである場合、ゲル化する際の保温は、用いるコラーゲンの動物種に依存したコラーゲンの変性温度より低い温度とすればよく、一般的には20℃以上37℃以下の温度で保温することで数分から数時間でゲル化を行うことができる。
【0016】
なお、本明細書において、「ゾル」とは、液体を分散媒とする分散質のコロイド粒子(サイズ:約1~数百nm程度)が、特に高分子化合物で構成されるものを意味する。ゾルとしてより具体的には、天然物高分子化合物や合成高分子化合物の水溶液である。そのため、これら高分子化合物の化学結合により架橋が導入されて網目構造をとった場合は、その網目に多量の水を保有した半固形状態の物質である、「ハイドロゲル」に転移する。すなわち、「ハイドロゲル」とは、ゾルをゲル化させたものを意味する。
また、「ビトリゲル」とは、従来のハイドロゲルをガラス化(vitrification)した後に再水和して得られる安定した状態にあるゲルのことを指し、本発明者によって、「ビトリゲル(vitrigel)(登録商標)」と命名されている。
また、本明細書においては、本実施形態の製造工程を詳細に説明するにあたり、当該ガラス化工程の直後であり再水和の工程を経ていないハイドロゲルの乾燥体に対しては、単に「ハイドロゲル乾燥体」とした。そして、当該ガラス化工程の後に再水和の工程を経て得られたゲルを「ビトリゲル」として区別して表し、そのビトリゲルをガラス化させて得られた乾燥体を「ビトリゲル乾燥体」とした。また、ビトリゲル乾燥体に紫外線照射する工程を施して得られるものを「紫外線を再照射された糸状ビトリゲル乾燥体」とした。従って、「ビトリゲル」は水和体である。
【0017】
また、柱状ハイドロゲルの原料となるゾルとしては、生体適合性を有する材料であればよく、例えば、ゲル化する細胞外マトリックス由来成分、フィブリン、寒天、アガロース、セルロース等の天然高分子化合物、及びポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、poly(II-hydroxyethylmethacrylate)/polycaprolactone等の合成高分子化合物が挙げられる。
前記ゲル化する細胞外マトリックス由来成分としては、例えば、コラーゲン(I型、II型、III型、V型、XI型等)、マウスEHS腫瘍抽出物(IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン等を含む)より再構成された基底膜成分(商品名:マトリゲル)、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、ゼラチン等が挙げられ、これらに限定されない。それぞれのゲル化に至適な塩等の成分、その濃度、pH等を選択し所望のビトリゲルを製造することが可能である。また、原料を組み合わせることで、様々な生体内組織を模倣したビトリゲルを得ることができる。
中でも、ゾルとしては、ゲル化する細胞外マトリックス由来成分が好ましく、コラーゲンがより好ましい。また、コラーゲンの中でもより好ましい原料としては、ネイティブコラーゲン又はアテロコラーゲンを例示でき、アテロコラーゲンがさらに好ましい。すなわち、本工程において用いられるハイドロゲルとしては、創傷部における上皮化促進効果及び瘢痕形成抑制効果を有する生体適合性素材であることから、アテロコラーゲンゲルが特に好ましい。
また、上記例示されたゾルから得られるハイドロゲルは、その組成及び含有量によっては、ネイティブコラーゲンゲルと同等の強度を有するゲル、又は、ネイティブコラーゲンゲルよりも強度のないゲルとなる。また、ネイティブコラーゲンゲルよりも強度のあるゲルとなってもよい。いずれの強度のハイドロゲルであっても、本実施形態の製造方法によれば、上記例示されたゾルから得られるハイドロゲルを原料として、糸を製造することができる。
【0018】
なお、本明細書において「上皮化促進効果」とは、創傷部の治癒過程において、肉芽組織の形成を抑制し、さらに表皮細胞の増殖を促進することで、再生上皮の形成が促進されることを意味する。アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体からなる糸を縫合糸として使用することで、上皮化が促進されるため、従来よりも短期間での創傷部の治癒を期待できる。
また、「瘢痕形成抑制効果」とは、創傷部が治癒した後に残る痕(瘢痕)、いわゆる傷痕が形成されることを抑制する効果を意味する。アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体からなる糸を縫合糸として使用することで、傷痕を残さずに創傷部を治療することができる。
【0019】
本工程における柱状ハイドロゲルへの紫外線の照射エネルギーは、ハイドロゲルが続く工程Bにおいて、例えば柱状ハイドロゲルを吊るした状態でガラス化を行った場合に、切断されない程度の強度となればよく、ハイドロゲルの組成及び含有量に応じて適宜調整すればよい。柱状ハイドロゲルへの紫外線の照射エネルギーは、例えば0.1mJ/cm以上6000mJ/cm以下であればよく、例えば10mJ/cm以上4000mJ/cm以下であればよく、例えば100mJ/cm以上3000mJ/cm以下であればよい。
また、柱状ハイドロゲルへの紫外線の照射は、柱状ハイドロゲルの全面に紫外線が照射されるように、紫外線の照射部位を、柱状ハイドロゲルの一方の面と他方の面と(例えば、「上面と下面と」、又は、「表面と裏面と」等)に分けて照射して、その総照射量を、柱状ハイドロゲルへの単位面積あたりの紫外線総照射量としてもよい。
【0020】
[工程B]
次いで、紫外線照射後の柱状ハイドロゲルを乾燥し、ガラス化させることで、糸状ハイドロゲル乾燥体を得る。
柱状ハイドロゲルを乾燥させることにより、柱状ハイドロゲル内の自由水を完全に除去し、さらに結合水の部分除去を進行させることができる。
このガラス化工程(柱状ハイドロゲル内の自由水を完全に除去した後に、結合水の部分除去を進行させる工程)の期間を長くするほど、再水和した際には透明度、強度に優れた糸状ビトリゲルを得ることができる。なお、必要に応じて短期間のガラス化後に再水和して得た糸状ビトリゲルをPBS等で洗浄し、再度ガラス化することもできる。
【0021】
乾燥方法としては、例えば、風乾、密閉容器内で乾燥(容器内の空気を循環させ、常に乾燥空気を供給する)、シリカゲルを置いた環境下で乾燥する等、種々の方法を用いることができる。例えば、風乾の方法としては、10℃、40%湿度で無菌に保たれたインキュベーターで2日間乾燥させる、又は、無菌状態のクリーンベンチ内で一昼夜、室温で乾燥する等の方法を例示することができる。
また、本工程において、上述の工程Aで紫外線を照射させたことで、柱状ハイドロゲルは適度な強度を有するため、乾燥の際に、物干し等に吊り下げた状態で効率的に乾燥させることができる。
【0022】
[工程C]
次いで、得られた糸状ハイドロゲル乾燥体を再水和して糸状ビトリゲルを得る。
このとき、生理食塩水、PBS(Phosphate Buffered Saline)等を用いて、再水和させればよい。
【0023】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る糸の製造方法は、前記工程Cの後、さらに、前記糸状ビトリゲルを再ガラス化して、糸状ビトリゲル乾燥体を得る工程Dを備える方法である。
【0024】
本実施形態の製造方法によれば、ネイティブコラーゲンゲルよりも強度のないハイドロゲルを原料としても、糸を製造することができる。
工程A~工程Cについては、上述の第1実施形態に記載のとおりである。本実施形態における工程Dについて、以下に詳細を説明する。
【0025】
[工程D]
次いで、得られた糸状ビトリゲルを乾燥し、再度ガラス化する。
乾燥方法としては、上記工程Bで例示された方法と同様の方法が挙げられる。
また、本工程において、糸状ビトリゲルは適度な強度を有するため、乾燥の際に、物干し等に吊り下げた状態で効率的に乾燥させることができる。
【0026】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る糸の製造方法は、前記工程Dの後、さらに、前記糸状ビトリゲル乾燥体に紫外線を再照射する工程Eを備える方法である。
【0027】
本実施形態の製造方法によれば、ネイティブコラーゲンゲルよりも強度のないハイドロゲルを原料としても、糸を製造することができる。また、本実施形態の製造方法により得られる糸は、優れた強度を有する。
工程A~工程Dについては、上述の第1実施形態及び第2実施形態に記載のとおりである。本実施形態における工程Eについて、以下に詳細を説明する。
【0028】
[工程E]
次いで、得られた糸状ビトリゲル乾燥体に紫外線を再照射して、糸状ビトリゲル乾燥体の強度をさらに上げる。
【0029】
本工程における糸状ビトリゲル乾燥体への紫外線の照射エネルギーは、糸状ビトリゲル乾燥体が縫合糸等で使用した場合に切断されない程度の強度となればよく、糸状ビトリゲル乾燥体の組成及び含有量に応じて適宜調整すればよい。糸状ビトリゲル乾燥体への紫外線の照射エネルギーは、例えば0.1mJ/cm以上6000mJ/cm以下であればよく、例えば10mJ/cm以上4000mJ/cm以下であればよく、例えば100mJ/cm以上3000mJ/cm以下であればよい。
また、糸状ビトリゲル乾燥体への紫外線の照射は、糸状ビトリゲル乾燥体の全面に紫外線が照射されるように、紫外線の照射部位を、糸状ビトリゲル乾燥体の一方の面と他方の面と(例えば、「上面と下面と」、又は、「表面と裏面と」等)に分けて照射して、その総照射量を、糸状ビトリゲル乾燥体への単位面積あたりの紫外線総照射量としてもよい。
【0030】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態に係る糸の製造方法は、前記工程Eの後、さらに、紫外線が再照射された前記糸状ビトリゲル乾燥体に疎水性溶媒を付着又は含浸させる工程Fを備える方法である。
【0031】
本実施形態の製造方法によれば、ネイティブコラーゲンゲルよりも強度のないハイドロゲルを原料として糸を製造することができる。また、本実施形態の製造方法により得られる糸は、疎水性溶媒が潤滑剤として作用することで、しなやかさが増しており、且つ、疎水性溶媒を含むことで、水系溶媒の存在下においても強度を保つことができる。
工程A~工程Eについては、上述の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態に記載のとおりである。本実施形態における工程Fについて、以下に詳細を説明する。
【0032】
[工程F]
次いで、紫外線再照射後の糸状ビトリゲル乾燥体に疎水性溶媒を付着又は含浸させる。これにより、糸状ビトリゲル乾燥体のしなやかさが増して、縫合糸等の用途で用いる際に、疎水性溶媒が潤滑剤として働き、裂傷部をひっかかりなく、なめらかに縫合することができる。また、疎水性溶媒を糸状ビトリゲル乾燥体の表面上に付着させる、又は、表面直下から内部へと含侵させることで、縫合部において体液等による再水和による強度の低下が防止され、糸の強度が維持される。
なお、ここでいう「付着させる」とは、疎水性溶媒を糸状ビトリゲル乾燥体の表面にくっつかせることを意味し、「含浸させる」とは疎水性溶媒を糸状ビトリゲル乾燥体の表面直下から内部へと染み込ませることを意味する。
【0033】
本工程において用いられる疎水性溶媒としては、生体適合性を有するものであればよく、公知の医療用途で用いられる疎水性溶媒が例示される。疎水性溶媒として具体的には、例えば、医療用パラフィン;植物、海産物、又は動物源からの液状油(例えば、オリーブオイル、コーン油、大豆油、キャノーラ油、綿実油、ヤシ油、胡麻油、ヒマワリ油、ルリヂサ種子油、チョウジ油、麻実油、ニシン油、タラ肝油、サケ油、アマニ油、麦芽油、マツヨイグサ油、及びそれらの任意の割合の混合物等);リノール及びリノレン酸、γ -リノール酸(GLA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、並びにドコサヘキサエン酸(DHA)等のω-3及びω-6脂肪酸を含む多価不飽和油;バラ、チャノキ、メボウキ、カンファー、カルダモン、ニンジン、コウスイガヤ、オニサルビア(クラリー)、セージ、チョウジ、イトスギ、乳香、ショウガ、グレープフルーツ、ヒソップ、ジャスミン、ラベンダー、レモン、マンダリン、マヨラナ、没薬、ネロリ油、ナツメグ、プチグレン、セージ、タンジェリン、バニラ、及びバーベナ等由来の精油;トリグリセリドオイル、シリコンオイル等が挙げられ、これらに限定されない。これら疎水性溶媒を単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
中でも、疎水性溶媒としては、シリコンオイルであることが好ましい。シリコンオイルは変性されていないものであってもよく、変性されたものであってもよい。シリコンオイルとしてより具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン等が挙げられ、これらに限定されない。
【0034】
疎水性溶媒を付着又は含浸させる温度は、特別な限定はなく、例えば10℃以上40℃以下であればよい。
疎水性溶媒を付着又は含浸させる時間は、特別な限定はなく、例えば30分以上48時間以下であればよい。
疎水性溶媒を付着又は含浸させる方法としては、例えば、疎水性溶媒に糸状ビトリゲル乾燥体を浸漬させる方法、糸状ビトリゲル乾燥体に疎水性溶媒を塗布する方法、糸状ビトリゲル乾燥体に疎水性溶媒を噴霧する方法等が挙げられ、これらに限定されない。
【0035】
<用途>
本実施形態の製造方法により得られた糸は、後述の実施例に示すとおり、例えば、組織再生糸、細胞移植用担体等として用いることができる。又は、本実施形態の製造方法により得られた糸は、後述の実施例に示すとおり、硝子体手術の際に治療機器を硝子体内に挿入するために作製する結膜瘻孔部の補填材として用いることができる。又は、本実施形態の製造方法により得られた糸は、後述の実施例に示すとおり、腹腔内へ挿入して腹膜炎及び腹膜線維化を抑制する留置材として用いることができる。
【0036】
≪糸≫
本発明の一実施形態に係る糸は、ビトリゲル乾燥体からなり、疎水性溶媒が付着又は含浸されている。
【0037】
本実施形態の糸は、ビトリゲル乾燥体から構成されながらも、優れた強度を有するため、縫合糸等として利用することができる。また、本実施形態の糸は、疎水性溶媒が潤滑剤として作用することで、しなやかさが増しており、且つ、疎水性溶媒を含むことで、水系溶媒の存在下においても強度を保つことができる。そのため、本実施形態の糸を縫合糸として用いた場合において、手術後に縫合部が離開することなく、維持される。
【0038】
<物性>
本実施形態の糸の横断面の形状は、特別な限定はなく、例えば、三角形、四角形(正方形、長方形、台形含む)、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形;円形、楕円形、略円形、楕円形、略楕円形、半円形、扇形等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、糸の横断面の形状は、円形であることが好ましい。
また、本実施形態の糸の横断面の形状が円形である場合、その平均直径は、用途に応じて適宜選択すればよい。糸の平均直径としては、例えば1μm以上1mm以下であればよく、例えば3μm以上900μm以下であればよい。
【0039】
本実施形態の糸の破断強度は、縫合糸等の用途で用いた場合に切断しない程度の強度であればよい。糸の破断強度として具体的には、例えば0.1kgf以上であればよく、例えば0.2kgf以上であればよい。糸の破断強度の下限値が上記範囲以上であることにより、縫合糸等の用途で用いた場合に切断しない程度の強度を有することができる。
なお、糸の破断強度の測定方法は、以下のとおりである。
デジタルフォースゲージ(日本電産シンポ社製)を使用して、糸を全長5cmに切断した後に両端の1cmを固定して、毎分9mmで引っ張った時の破断強度(kgf)を測定すればよい。
次いで、本実施形態の糸の構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0040】
<ビトリゲル乾燥体>
本実施形態の糸は、ビトリゲル乾燥体からなる。
ビトリゲル乾燥体の原料となるゾルとしては、上述の糸の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、本実施形態の糸を構成するビトリゲル乾燥体としては、創傷部における上皮化促進効果及び瘢痕形成抑制効果を有する生体適合性素材であることから、アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体であることが好ましい。
【0041】
<疎水性溶媒>
本実施形態の糸は、疎水性溶媒が付着又は含浸されている。
疎水性溶媒としては、上述の糸の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。中でも、本実施形態の糸に含まれる疎水性溶媒としては、シリコンオイルであることが好ましい。
【0042】
<用途>
本実施形態の糸は、後述の実施例において示すとおり、優れた強度を有し、且つ、体液等が存在してもその強度が維持されることから縫合糸として有用である。さらに、本実施形態の糸を縫合糸として使用した場合に、創傷部において組織の再生が促進され、且つ、瘢痕が形成されない。すなわち、本実施形態の糸は、縫合糸として使用可能な組織再生糸として有用である。
特に、本実施形態の糸が、アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体で構成される場合、創傷部における上皮化促進効果及び瘢痕形成抑制効果を有することから、組織再生糸として好適である。
なお、本明細書において、「組織再生糸」とは、縫合部における組織の再生を促進する糸を意味する。ここで、「組織の再生の促進」とは、具体的には、創傷部の治癒過程における創収縮の促進、肉芽組織の形成抑制、表皮細胞の増殖による再生上皮の形成促進等を示す。
【0043】
また、本実施形態の糸は、後述の実施例において示すとおり、優れた細胞接着性及び細胞増殖性を有する。このことから、本実施形態の糸を用いて所望の細胞を培養し、当該細胞が接着された状態の糸を被検体の生体に移植することができる。すなわち、本実施形態の糸は、細胞移植用担体として有用である。
【0044】
また、本実施形態の糸は、後述の実施例において示すとおり、硝子体手術の際に治療機器を硝子体内に挿入するために作製する結膜瘻孔部の補填材として有用である。
【0045】
また、本実施形態の糸が、アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体で構成される場合、後述の実施例に示すとおり、壁側腹膜及び臓側腹膜の炎症及び線維化に対して抑制作用を有する。さらに、臓側腹膜(腸管同士)の癒着に対して抑制作用を有する。また、本実施形態の糸は、生体内に留置しても安全であり、腹膜以外の組織においても同様に炎症抑制作用又は線維化抑制作用を有すると考えられる。すなわち、本実施形態の糸は、炎症抑制剤又は線維化抑制剤(特に、腹膜炎抑制剤又は腹膜線維化抑制剤)として有用である。また、本実施形態の糸は、腸管癒着抑制剤として有用である。
【実施例
【0046】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[製造例1]糸の製造
(1)柱状アテロコラーゲンゲルの調製
まず、1.0%ブタアテロコラーゲン溶液(関東化学社製)と無血清培養液とを等量混和した0.5%のブタ由来アテロコラーゲン溶液を調製した。次いで、調製したアテロコラーゲン溶液を1mLピペット内に1.4mL、5mLピペット内に7mL、それぞれ吸い込ませた。次いで、各ピペットの両端をパラフィルムで密閉し、細胞培養用インキュベーター(37℃、5%CO)内で2時間静置し、ゲル化させて、柱状アテロコラーゲンゲルを調製した。
【0048】
(2)柱状アテロコラーゲンゲルへの紫外線照射
次いで、各ピペットの両端からパラフィルムを除去した。ピペット内から柱状アテロコラーゲンゲルを取り出し、ビニールシートが敷かれた平面状のトレイの上に直線的に張った状態で静置した。次いで、紫外線を照射し(照射エネルギー:800mJ/cm)、柱状アテロコラーゲンゲルを反転させて、再度紫外線を照射した(照射エネルギー:800mJ/cm)。合計の紫外線照射エネルギーは、1600mJ/cmであった。
【0049】
(3)糸状アテロコラーゲンゲル乾燥体の調製
次いで、紫外線が照射された柱状アテロコラーゲンゲルの一端をポリプロピレン樹脂製の物干しの縁に固定して吊るした。次いで、温度10℃、湿度40%の条件の恒温恒湿機を備えた簡易クリーンベンチ内で、充分に風乾して、吊るされた状態の柱状アテロコラーゲンゲルをガラス化させて、糸状アテロコラーゲンゲル乾燥体を調製した。
【0050】
(4)糸状アテロコラーゲンビトリゲルの調製
次いで、得られた糸状アテロコラーゲンゲル乾燥体をPBSで再水和し、糸状アテロコラーゲンビトリゲルを調製した。
【0051】
(5)糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体の調製
次いで、得られた糸状アテロコラーゲンビトリゲルの一端をポリプロピレン樹脂製の物干しの縁に固定して吊るした。次いで、温度10℃、湿度40%の条件の恒温恒湿機を備えた簡易クリーンベンチ内で、充分に風乾して、吊るされた状態の糸状アテロコラーゲンゲルを再ガラス化させて、糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体を調製した。
【0052】
(6)糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体への紫外線照射
次いで、得られた糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体を平面状のトレイの上に直線的に張った状態で静置した。次いで、紫外線を照射し(照射エネルギー:400mJ/cm)、糸状アテロコラーゲンゲルを反転させて、再度紫外線を照射した(照射エネルギー:400mJ/cm)。合計の紫外線照射エネルギーは、800mJ/cmであった。
得られた紫外線照射後の糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体の平均直径について、1mLのピペットを用いて製造されたもの(以下、「糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1」と称する場合がある)は、148±42μmであり、5mLのピペットを用いて製造されたもの(以下、「糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2」と称する場合がある)は、444±30μmであった。
【0053】
[実施例1]糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体の破断強度確認試験
製造例1で製造された糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1及び糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2の破断強度を測定した。
測定対象として、糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1(以下、「乾燥体1」と称する場合がある)、乾燥体1を再水和した糸状アテロコラーゲンビトリゲル(以下、「再水和体1」と称する場合がある)、シリコンオイルを浸潤させた糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1(以下、「浸潤体1」と称する場合がある)、糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2(以下、「乾燥体2」と称する場合がある)、乾燥体2を再水和した糸状アテロコラーゲンビトリゲル(以下、「再水和体2」と称する場合がある)及びシリコンオイルを浸潤させた糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2(以下、「浸潤体2」と称する場合がある)を準備した。
また、対照として、ポリグラクチン縫合糸バイクリル(登録商標)(7-0、縫合糸の規格の平均直径:50~69μm程度)(以下、「乾燥体3」と称する場合がある)、乾燥体3を再水和したバイクリル(登録商標)(以下、「再水和体3」と称する場合がある)及びシリコンオイルを浸潤させたバイクリル(登録商標)(以下、「浸潤体3」と称する場合がある)も準備した。
【0054】
また、破断強度の具体的な測定方法としては、デジタルフォースゲージ(日本電産シンポ社製)を使用して、全長5cmに切断した後に両端の1cmを固定して、毎分9mmで引っ張った時の破断強度(kgf)を計測した。結果を図1A図1B及び図1Cに示す。
図1Aは、各条件の糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1における破断強度、図1Bは各条件の糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2における破断強度、及び、図1Cは各条件のポリグラクチン縫合糸バイクリル(登録商標)における破断強度を示したものである。
【0055】
図1A図1Cから、乾燥体1及び浸潤体1は、対照であるバイクリル(登録商標)の乾燥体3、再水和体3及び浸潤体3とほぼ同等の破断強度であることが確かめられた。一方、再水和体1及び再水和体2は、破断強度が0.1kgfよりも小さかった。
また、乾燥体2及び浸潤体2は破断強度が1kgfよりも大きく、対照であるバイクリル(登録商標)の乾燥体3、再水和体3及び浸潤体3よりも優れた強度を有することが確かめられた。これは、平均直径の大きさに由来するものであると推察された。
【0056】
[実施例2]糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体を用いたマウス切開部の縫合試験
製造例1で得られた糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1をシリコンオイルで浸潤させたもの(浸潤体1)が手術用に耐えうる強度であることを確かめるために、マウス表皮切開部の縫合試験を行った。縫合を行った当日のマウスの画像を図2に示す。
【0057】
図2から、浸潤体1は縫合糸としての強度を充分に有し、手術後に創部離開を来さないことが確かめられた。
【0058】
また、縫合7日目の縫合部の組織切片を作製し、ヘマトキシリン-エオジン(HE)染色及び抗α平滑筋アクチン(α-smooth muscle actin:α-SMA)抗体を用いた免疫染色を行った。HE染色の結果を図3Aに、抗α-SMA抗体による免疫染色による結果を図3Cに示す。
さらに、対照としてポリグラクチン縫合糸バイクリル(登録商標)(7-0、縫合糸の規格の平均直径:50~69μm程度)(乾燥体3)を用いてマウス表皮切開部の縫合試験を行った。浸潤体1を用いた場合と同様に、縫合7日目の縫合部の組織切片を作製し、HE染色及び抗α-SMA抗体を用いた免疫染色を行った。HE染色の結果を図3Bに、抗α-SMA抗体による免疫染色による結果を図3Dに示す。
【0059】
図3A及び図3Bから、浸潤体1を用いた縫合部では、乾燥体3と同様に、良好に結紮され、組織同士の結合が確認された。
さらに、図3C及び図3Dから、乾燥体3を用いた場合と比較して、浸潤体1を用いた場合では、瘢痕形成の主体となるαSMA陽性の筋線維芽細胞数が、縫合部周囲で圧倒的に少ないことが明らかとなった。
【0060】
[実施例3]糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体を用いたブタ結膜瘻孔部の補填試験
製造例1で得られた糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2(乾燥体2)が優れた強度を有することを確かめるために、ブタの結膜欠損部(瘻孔部)に補填材として使用した。補填材として埋め込んだ当日のブタの結膜瘻孔部の画像を図4Aに示す。図4Aにおいて、矢印は、埋め込まれた乾燥体2を示す。
また、対照として、通常、結膜瘻孔部の補填材として用いられるプラスチックポートを埋め込んだ。その結果を図4Bに示す。図4Bにおいて、矢印は、埋め込まれたプラスチックポートを示す。
【0061】
図4A及び図4Bから、乾燥体2は優れた強度を有し、結膜瘻孔部を塞ぐ補填材として利用可能であることが確かめられた。
【0062】
[実施例4]糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体を用いた細胞接着性及び増殖性確認試験
製造例1で糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1を再水和したもの(再水和体1)が良好な細胞接着性及び増殖性を有することを確かめるために、内皮細胞及び線維芽細胞を用いた細胞培養試験を行った。
具体的には、内皮細胞(MS-1、ATCC(American Type Culture Collection))及び線維芽細胞(Wistar rat由来初代培養真皮線維芽細胞)をそれぞれ、5cmに切断した再水和体1とともにシャーレで10日間培養した。培養後、再水和体1を取り出し、HE染色を行い、光学顕微鏡(OLYMPUS社製、BX53)を用いて観察した。図5Aは、内皮細胞と共に培養した再水和体1を示す画像であり、図5Bは線維芽細胞と共に培養した再水和体1を示す画像である。図5Aにおいて、矢印は、再水和体1に接着した内皮細胞を示す。
【0063】
さらに、対照として製造例1でポリグラクチン縫合糸バイクリル(登録商標)を再水和したもの(再水和体3)についても同様に、5cmに切断し、線維芽細胞とともにシャーレで10日間培養した。培養後、再水和体3を取り出し、HE染色を行い、光学顕微鏡(OLYMPUS社製、BX53)を用いて観察した。図5Cは、線維芽細胞と共に培養した再水和体3を示す画像である。
【0064】
図5Cから、再水和させたポリグラクチン縫合糸バイクリル(登録商標)を用いた場合では、非常に少数の細胞のみが接着し増殖も低かった。一方、図5Bから、再水和させた糸状アテロコラーゲンビトリゲルを用いた場合では、多数の細胞が接着し増殖していた。
また、図5A及び図5Bから、再水和させた糸状アテロコラーゲンビトリゲルは、内皮細胞及び線維芽細胞共に良好な接着性及び増殖性を示すことが確認された。
【0065】
[実施例5]糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体を用いた腹膜炎抑制効果及び腹膜線維化抑制効果確認試験
製造例1で製造された糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1及び糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2を腹膜線維化モデルマウスに留置することによる影響を調べた。
【0066】
(1)糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体のマウス腹腔内への挿入及び留置
図6Aは、製造例1で製造された糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1及び糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2を示す画像である。図6Aにおいて、「CXM1」は糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1を示し、「CXM5」は糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2を示す。また、図6Bは、糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体のマウス腹腔内への挿入方法を示す図である。
体重40gの雌のICRマウスの腹腔内に、留置針及びピンセットを用いて、糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体1及び糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体2をそれぞれ挿入し、留置した(図6C参照)。
【0067】
(2)クロルヘキシジンの腹腔内注入による腹膜線維化モデルマウスの誘導
糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体を留置させた翌日に、当該マウスの腹腔内に0.1%のクロルヘキシジン溶液(15%エタノール含有生理食塩水溶液を用いて予め調製)を体重1kg当たり10mLの投与量で、1日おきに投与した。
なお、対照試験群も含め、以下の4群を準備した。
Sham群:針穿刺のみ、クロルヘキシジン腹腔内注射なし
CG群:クロルヘキシジン腹腔内注射のみ
Gel群:アテロコラーゲンゲル腹腔内注入、クロルヘキシジン腹腔内注射あり
CXM群:糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体腹腔内挿入、クロルヘキシジン腹腔内注射あり
【0068】
(3)腹膜の観察
腹膜炎誘導後40日目及び56日目に、各群のマウス1匹ずつを開腹し、目視により観察した。結果を図7A(腹膜炎誘導後40日目)及び図8A(腹膜炎誘導後56日目)に示す。図7Aにおいて、CG群及びGel群に記載の矢頭は、腹膜と腸管との癒着を示し、Gel群に記載の矢印は腹膜に留置されたコラーゲンゲルを示し、CXM群に記載の矢印は腹膜に留置された糸状アテロコラーゲンビトリゲルを示す。また、図8Aにおいて、CG群に記載の矢頭は、腹膜と腸管との癒着を示し、CXM群に記載の矢印は腹膜に留置された糸状アテロコラーゲンビトリゲルを示す。
【0069】
(4)HE染色及びアザン染色
次いで、腹膜炎誘導後40日目及び56日目の各群のマウスの腹膜の組織切片を作製し、HE染色及びアザン染色を行った。腹膜炎誘導後40日目の各群のマウスにおける結果を図7B(HE染色像)及び図7C(アザン染色像)に示す。また、腹膜炎誘導後56日目の各群のマウスにおける結果を図8B(HE染色像)及び図8C(アザン染色像)に示す。
図7B及び図8Bにおいて、上図は壁側腹膜のHE染色像であり、下図は臓側腹膜のHE染色像である。スケールバーは100μmを示す。また、図7C及び図8Cにおいて、スケールバーは200μmを示す。
さらに、図7C及び図8Cそれぞれに示すアザン染色像から、各群のマウスの中皮下結合織の厚さ(μm)を測定し、その平均値をグラフ化した(図7D及び図8D参照)。
【0070】
図7A図7Dから、腹膜炎誘導後40日目の時点で、Gel群及びCMX群は、CG群と比較して、壁側腹膜の線維化が有意に抑制されていた。また、CMX群は、Gel群よりも、壁側腹膜の線維化抑制効果が特に顕著であった。
また、図8A図8Dから、腹膜炎誘導後56日目の時点で、CMX群は、CG群と比較して、壁側腹膜の線維化が有意に抑制されていた。また、これ以降は、CG群の体重減少が著しく、試験の継続が不能であった。
【0071】
(5)線維化マーカーに対する抗体を用いた免疫染色
次いで、腹膜炎誘導後40日目の各群のマウスの腹膜の組織切片を作製し、各種抗体を用いて免疫染色を行った。用いた抗体を以下に示す。
抗サイトケラチンAE1/AE3(CK AE1/AE3)抗体:CK AE1/AE3は、汎用の上皮性マーカーである。
抗ビメンチン(Vimentin)抗体:ビメンチンは、間葉系細胞に特有の中間径フィラメントである。間葉系細胞のマーカー。
抗N-カドヘリン(N-cadherin)抗体:上皮細胞が間葉系細胞へと分化するプロセスで、N-カドヘリンを発現する。上皮-間葉分化転換のマーカー。
抗結合組織成長因子(connective tissue growth factor:CTGF)抗体:CTGFは、線維芽細胞の増殖とコラーゲンの産生を冗進させる因子である。線維化マーカー。
抗α-SMA抗体:上皮細胞が間葉系細胞へと分化するプロセスで、α-SMAを発現する。上皮-間葉分化転換のマーカー。
また、免疫染色の結果を図9に示す。図9において、抗CK AE1/AE3抗体、抗ビメンチン抗体及び抗N-カドヘリン抗体による免疫染色像のスケールバーは50μmを示す。抗CTGF抗体及び抗α-SMAによる免疫染色像のスケールバーは100μmを示す。また、図9の抗α-SMA抗体による免疫染色像において、矢頭は、陽性コントロールとなる血管壁を示す。
【0072】
図9から、腹膜炎誘導後40日目の時点で、CXM群は、CG群と比較して、ビメンチン陽性細胞、N-カドヘリン陽性細胞及びα-SMA陽性細胞の出現が抑制されていた。これは腹膜の線維化の原因となる中皮細胞の上皮-間葉分化転換と筋線維芽細胞の出現とが抑制されたことを意味する。
【0073】
(6)炎症マーカーに対する抗体を用いた免疫染色
次いで、腹膜炎誘導後40日目の各群のマウスの腹膜の組織切片を作製し、各種抗体を用いて免疫染色を行った。用いた抗体を以下に示す。
抗CD45抗体:CD45は、白血球のマーカーである。
抗F4/80抗体:F4/80は、マウスの成熟マクロファージのマーカーである。
抗増殖細胞核抗原(proliferating cell nuclear antigen:PCNA)抗体:PCNAは、細胞周期関連核タンパク質である。細胞増殖と細胞周期とのマーカー(G1~S期)。
また、免疫染色の結果を図10Aに示す。図10Aにおいて、スケールバーは50μmを示す。
さらに、図10Aの各免疫染色像から、マウスの中皮下間質層(submesothelial interstitial layer:SMIL)中のCD45陽性細胞の数、F4/80陽性細胞の数及びPCNA陽性細胞の割合を算出して、グラフ化した(図10B図10D参照)。なお、図10B及び図10Cでは、各陽性細胞の数を面積(mm)で表し、図10Dでは、SMIL全体の面積に対するPCNA陽性細胞の面積の割合(%)で表した。
【0074】
図10A図10Dから、腹膜炎誘導後40日目の時点で、CXM群は、CG群と比較して、CD45陽性の白血球、F4/80陽性のマクロファージ及びPCNA陽性の間葉系細胞の出現が有意に抑制されていた。この結果から、CMX群では、腹膜炎が抑制されたことで、腹膜線維化が抑制されたことが示唆された。
【0075】
以上のことから、糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体は、クロルヘキシジンによる腹膜の炎症及び線維化を抑制することが明らかとなった。ゲル状のコラーゲンにおいても同様の腹膜の炎症抑制効果及び線維化抑制効果が認められたが、糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体とゲル状のコラーゲンとの間ではその効果に有意差が見られた。すなわち、糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体は、ゲル状のコラーゲンよりも、顕著に優れた腹膜の炎症抑制効果及び線維化抑制効果を有していた。
また、腹膜炎誘導後56日目でも、糸状アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体の性状に大きな変化が見られなかった(図8A図8C参照)。このことから、これ以降も腹膜線維化抑制効果は継続するものと推察された。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本実施形態の糸の製造方法によれば、優れた強度を有する糸を製造することができる。また、前記製造方法により得られた糸がアテロコラーゲンビトリゲル乾燥体からなる場合、アテロコラーゲンビトリゲル乾燥体が高密度に収束した構造であり、上皮化促進効果及び瘢痕形成抑制効果を有する。そのため、前記糸は、組織再生糸として有用である。さらに、前記製造方法により得られた糸は、良好な細胞接着性及び増殖性を有する。そのため、細胞移植用担体として有用である。さらに、前記製造方法により得られた糸は、壁側腹膜及び臓側腹膜の炎症及び線維化に対して抑制作用を有する。また、臓側腹膜(腸管同士)の癒着に対して抑制作用を有する。そのため、腹膜炎抑制剤、腹膜線維化抑制剤又は腸管癒着抑制剤として有用である。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
図10C
図10D