(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】印字検査装置及び印字検査方法
(51)【国際特許分類】
B65B 61/26 20060101AFI20221102BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221102BHJP
【FI】
B65B61/26
G06T7/00 300E
(21)【出願番号】P 2016143667
(22)【出願日】2016-07-21
【審査請求日】2019-06-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000128131
【氏名又は名称】株式会社エヌテック
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(73)【特許権者】
【識別番号】593205831
【氏名又は名称】東邦商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂野 和見
(72)【発明者】
【氏名】西田 孝
(72)【発明者】
【氏名】平野 宏一
(72)【発明者】
【氏名】豊島 邦光
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】八木 誠
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-27250(JP,A)
【文献】実開平5-43726(JP,U)
【文献】特開2006-285767(JP,A)
【文献】特開昭63-29887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B61/26
G07T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位時間毎に予め定められた順序で経時的に変化する文字記号が印字されたワークの印字部の正誤を連続的に検査する印字検査装置であって、
前記順序に対応して経時的に変化する文字記号マスタが記憶される記憶部と、
ワークを連続的に搬送する搬送装置に付設され前記印字検査装置より上流側に位置する印字機によって文字記号が印字されたワークの印字部を撮影する撮影部と、
前記撮影部が撮影した前記印字部に対して、該当単位時の文字記号マスタと前単位時の文字記号マスタと次単位時の文字記号マスタとを少なくとも含む連続する異なる単位時の複数の文字記号マスタとのマッチング処理を行うマッチング処理部と、
前記マッチング処理の結果、マッチングした文字記号マスタが、該当単位時の文字記号マスタであるときはそのまま検査を続行し、一方、該当単位時の文字記号マスタではなくかつ前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれの単位時の文字記号マスタでもないときは誤信号を発し、前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれか1つの単位時の文字記号マスタであるときには誤信号を発することなくマッチングした前記いずれか1つの単位時の文字記号マスタを該当単位時の文字記号マスタとして更新する検査部とを備え、
前記記憶部には、前記単位時間で前記印字部を検査可能な最大ワーク数以上の閾値が記憶されており、
前記文字記号マスタ更新時にリセットされ、前記検査部により前記印字部が同じ文字記号であるとの検査結果が連続して得られた前記ワークの個数を計数する計数部を更に備え、
前記計数部が計数したワーク数が前記閾値を超えても、前記文字記号が経時変化をしなかった場合は、前記印字機の異常として印字内容が正しくない旨の異常信号を出力することを特徴とする印字検査装置。
【請求項2】
時計を更に備え、
検査開始から前記該当単位時の文字記号マスタを最初に更新するまでの初期期間では、前記時計の時刻に応じた文字記号マスタを前記該当単位時の文字記号マスタとし、前記印字部に対して、前記複数の文字記号マスタとのマッチング処理を行い、マッチングした文字記号マスタが前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時の文字記号マスタ以外のいずれかの文字記号マスタである場合は、前記マッチングした前記いずれかの文字記号マスタを前記該当単位時の文字記号マスタとする最初の更新を行い、前記初期期間を過ぎた後は、マッチングした文字記号マスタが前記該当単位時よりも前の単位時の文字記号マスタであっても、前記該当単位時よりも前の単位時の文字記号マスタを前記該当単位時の文字記号マスタとする更新はせず、以後順次これを繰り返して検査することを特徴とする請求項1に記載の印字検査装置。
【請求項3】
前記マッチング処理部は、前記撮影部が撮影した前記印字部に対して、該当単位時の文字記号マスタと前単位時の文字記号マスタと次単位時の文字記号マスタとを少なくとも含む連続する異なる単位時の複数の文字記号マスタとの類似度を求めるマッチング処理を行い、
前記検査部は、前記マッチング処理の結果、最もマッチングした文字記号マスタが、該当単位時の文字記号マスタであるときはそのまま検査を続行し、一方、該当単位時の文字記号マスタではなくかつ前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれの単位時の文字記号マスタでもないときは誤信号を発し、前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれか1つの単位時の文字記号マスタであるときには誤信号を発することなく最もマッチングした前記いずれか1つの単位時の文字記号マスタを該当単位時の文字記号マスタとして更新することを特徴とする請求項
1に記載の印字検査装置。
【請求項4】
単位時間毎に予め定められた順序で経時的に変化する文字記号が印字されたワークの印字部の正誤を連続的に検査する印字検査方法であって、
ワークを連続的に搬送する搬送装置に付設さ
れ印字検査装置より上流側に位置する印字機によって文字記号が印字されたワークの前記印字部を撮影する撮影ステップと、
前記撮影された前記印字部に対して、該当単位時、前単位時及び次単位時の各文字記号マスタを少なくとも含む連続する異なる単位時の複数の文字記号マスタとのマッチング処理を行い、マッチングした文字記号マスタが、該当単位時の文字記号マスタであるときはそのまま検査を続行し、一方、該当単位時の文字記号マスタではなくかつ前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれの単位時の文字記号マスタでもないときは誤信号を発し、前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれか1つの単位時の文字記号マスタであるときには誤信号を発することなくマッチングした前記いずれか1つの単位時の文字記号マスタを該当単位時の文字記号マスタとして更新し、以後順次これを繰り返して検査する検査ステップと、
前記文字記号マスタ更新時にリセットされ、前記検査ステップにより前記印字部が同じ文字記号であるとの検査結果が連続して得られた前記ワークの個数を計数する計数ステップと、
前記計数ステップで計数したワーク数が前記単位時間で前記印字部を検査可能な最大ワーク数以上の閾値を超えても、前記文字記号が経時変化をしなかった場合は、前記印字機の異常として印字内容が正しくない旨の異常信号を出力する出力ステップとを備えたことを特徴とする印字検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器等のワークの印字を検査する印字検査装置及び印字検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、コンベヤ上を連続搬送されるワークに印字された製造年月日および製造時刻などの単位時間毎に予め定められた順序で経時的に変化する文字記号からなる印字部の正誤を連続的に検査する印字検査装置(検査部)が開示されている。印字検査装置は、予め定められた順序に対応して経時的に変化する文字記号マスタを備え、ワークの印字部と該当単位時の文字記号マスタとの対比を行い、一致したときはそのまま検査を続行し、一方、一致しないときには次単位時の文字記号マスタとの対比を行う。ワークの印字部が次単位時の文字記号マスタと一致しないときには誤信号を発し、次単位時の文字記号マスタと一致したときには誤信号を発することなく検査部における該当単位時の文字記号マスタを次単位時の文字記号マスタに更新し、以後順次これを繰り返して検査する。
【0003】
また、特許文献1には、上記第1の検査方法の他に第2の検査方法も開示されている。第2の検査方法では、ワークの印字部と該当単位時の文字記号マスタとの対比を行い、一致したときはそのまま検査を続行し、一方、一致しないときには前単位時および次単位時の文字記号マスタとの対比を行う。前単位時および次単位時の文字記号マスタのいずれとも一致しないときには誤信号を発し、前単位時または次単位時の文字記号マスタと一致したときには誤信号を発することなく該当単位時の文字記号マスタを、一致した前単位時または次単位時の文字記号マスタに更新し、以後順次これを繰り返して検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された印字検査装置では、印字機が正確に経時的印字をしていることを前提としており、例えば、印字機の時計が故障し、印字機が経時的変化をコントロールできなくなった場合、文字記号が更新せず、同じ印字をし続けてしまい、これを誤印字と判断することができないという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、印字機が印字の経時的変化をコントロールできなくなった場合に、その不具合を検知できる印字検査装置及び印字検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する印字検査装置は、単位時間毎に予め定められた順序で経時的に変化する文字記号が印字されたワークの印字部の正誤を連続的に検査する印字検査装置であって、前記順序に対応して経時的に変化する文字記号マスタが記憶される記憶部と、ワークの印字部を撮影する撮影部と、前記撮影部が撮影した前記印字部に対して、該当単位時の文字記号マスタと前単位時の文字記号マスタと次単位時の文字記号マスタとを少なくとも含む連続する異なる単位時の複数の文字記号マスタとのマッチング処理を行うマッチング処理部と、前記マッチング処理の結果、マッチングした文字記号マスタが、該当単位時の文字記号マスタであるときはそのまま検査を続行し、一方、該当単位時の文字記号マスタではなくかつ前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれの単位時の文字記号マスタでもないときは誤信号を発し、前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれか1つの単位時の文字記号マスタであるときには誤信号を発することなくマッチングした前記いずれか1つの単位時の文字記号マスタを該当単位時の文字記号マスタとして更新する検査部とを備え、前記記憶部には、前記単位時間で前記印字部を検査可能な最大ワーク数以上の閾値が記憶されており、前記検査部により前記印字部が同じ文字記号であるとの検査結果が連続して得られた前記ワークの個数を計数する計数部を更に備え、前記計数部が計数したワーク数が前記閾値を超えても、前記文字記号が経時変化をしなかった場合は、印字機が異常である旨の異常信号を出力する。
【0008】
この構成によれば、検査部により印字部が同じ文字記号であるとの検査結果が連続して得られたワークの個数が計数部により計数される。計数部が計数したワーク数が、単位時間に検査可能な最大ワーク数以上の閾値を超えても、文字記号が経時変化をしなかった場合は、時計の故障等による印字機の異常である旨の異常信号が出力される。異常信号の出力の結果、例えば印字機が異常である旨が報知されるか、印字機の印字が停止されるかする。よって、時計の故障等による印字機の異常である場合に、ワークの印字部に同じ文字記号の印字部が印字され続ける事態を回避できる。
【0009】
上記印字検査装置において、時計を更に備え、検査開始から前記該当単位時の文字記号マスタを最初に更新するまでの初期期間では、前記時計の時刻に応じた文字記号マスタを前記該当単位時の文字記号マスタとし、前記印字部に対して、前記複数の文字記号マスタとのマッチング処理を行い、マッチングした文字記号マスタが前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時の文字記号マスタ以外のいずれかの文字記号マスタである場合は、前記マッチングした前記いずれかの文字記号マスタを前記該当単位時の文字記号マスタとする最初の更新を行い、前記初期期間を過ぎた後は、マッチングした文字記号マスタが前記該当単位時よりも前の単位時の文字記号マスタであっても、前記該当単位時よりも前の単位時の文字記号マスタを前記該当単位時の文字記号マスタとする更新はしないことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、検査開始から初期期間の間は、時計の時刻に応じた文字記号マスタを該当単位時の文字記号マスタとし、印字部に対して、複数の文字記号マスタとのマッチング処理が行われ、マッチングした文字記号マスタが複数の文字記号マスタのうち該当単位時の文字記号マスタ以外のいずれかの文字記号マスタである場合は、マッチングしたいずれかの文字記号マスタを該当単位時の文字記号マスタとする最初の更新が行われる。初期期間を過ぎた後は、マッチングした文字記号マスタが該当単位時よりも前の単位時の文字記号マスタであっても、該当単位時よりも前の単位時の文字記号マスタを該当単位時の文字記号マスタとする更新は行われない。このため、初期期間を過ぎた後に、該当単位時よりも前の単位時の文字記号マスタを該当単位時の文字記号マスタとして更新したことに起因し、印字部が正しい印字内容であるにも関わらず誤信号が発せられる不都合な事態を回避できる。よって、ワークの印字部の正誤を検査する検査精度を高めることができる。
【0011】
上記印字検査装置において、前記マッチング処理部は、前記撮影部が撮影した前記印字部に対して、該当単位時の文字記号マスタと前単位時の文字記号マスタと次単位時の文字記号マスタとを少なくとも含む連続する異なる単位時の複数の文字記号マスタとの類似度を求めるマッチング処理を行い、前記検査部は、前記マッチング処理の結果、最もマッチングした文字記号マスタが、該当単位時の文字記号マスタであるときはそのまま検査を続行し、一方、該当単位時の文字記号マスタではなくかつ前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれの単位時の文字記号マスタでもないときは誤信号を発し、前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれか1つの単位時の文字記号マスタであるときには誤信号を発することなく最もマッチングした前記いずれか1つの単位時の文字記号マスタを該当単位時の文字記号マスタとして更新することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、撮影部が撮影した印字部に対して、該当単位時の文字記号マスタと前単位時の文字記号マスタと次単位時の文字記号マスタとを少なくとも含む連続する異なる単位時の複数の文字記号マスタとの類似度を求めるマッチング処理がマッチング処理部により行われる。マッチング処理の結果、最もマッチングした文字記号マスタが、該当単位時の文字記号マスタであるときはそのまま検査を続行し、一方、該当単位時の文字記号マスタではなくかつ複数の文字記号マスタのうち該当単位時以外のいずれの単位時の文字記号マスタでもないときは誤信号が発せられる。また、最もマッチングした文字記号マスタが複数の文字記号マスタのうち該当単位時以外のいずれかの単位時の文字記号マスタであるときには誤信号が発せられることなく最もマッチングしたいずれか1つの単位時の文字記号マスタを検査部における該当単位時の文字記号マスタとして更新される。よって、ワークの印字部の正誤を検査する検査精度を高めることができる。
【0013】
上記課題を解決する印字検査方法は、単位時間毎に予め定められた順序で経時的に変化する文字記号が印字されたワークの印字部の正誤を連続的に検査する印字検査方法であって、ワークの前記印字部を撮影する撮影ステップと、前記撮影された前記印字部に対して、該当単位時、前単位時及び次単位時の各文字記号マスタを少なくとも含む連続する異なる単位時の複数の文字記号マスタとのマッチング処理を行い、マッチングした文字記号マスタが、該当単位時の文字記号マスタであるときはそのまま検査を続行し、一方、該当単位時の文字記号マスタではなくかつ前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれの単位時の文字記号マスタでもないときは誤信号を発し、前記複数の文字記号マスタのうち前記該当単位時以外のいずれか1つの単位時の文字記号マスタであるときには誤信号を発することなくマッチングした前記いずれか1つの単位時の文字記号マスタを該当単位時の文字記号マスタとして更新し、以後順次これを繰り返して検査する検査ステップと、前記検査ステップにより前記印字部が同じ文字記号であるとの検査結果が連続して得られた前記ワークの個数を計数する計数ステップを更に備え、前記計数部が計数したワーク数が前記単位時間で前記印字部を検査可能な最大ワーク数以上の閾値を超えても、前記文字記号が経時変化をしなかった場合は、印字機が異常である旨の異常信号を出力する出力ステップとを備えている。この方法によれば、上記印字検査装置と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、単位時間毎に予め定められた順序で経時的に変化する文字記号が印字されたワークの印字部の正誤を連続的に検査する場合における検査精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態における製品の製造ラインに付設された印字機および印字検査装置を概略的に示した模式平面図。
【
図2】印字機によって印字された印字部の一例を示す図。
【
図3】印字検査装置の時計の時刻を文字記号に変換する際に用いる時間テーブルを示す図。
【
図4】パターンマッチングに用いる文字パターンの一例を示す説明図。
【
図6】ライン停止時における印字検査方法の一例を示す流れ図。
【
図7】ライン停止時における印字検査方法の他の一例を示す流れ図。
【
図8】印字検査装置の電気的構成及び機能的構成を示すブロック図。
【
図9】印字検査処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、印字検査装置に係る一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、製造ライン10には、一例として清涼飲料の入った紙パック容器等の容器からなるワークWを連続的に搬送するコンベヤ11C(搬送路)を有する搬送装置11が配設され、製造ライン10の最終工程に付設された印字機12によって、コンベヤ11Cに載って搬送されるワークW0の所定位置に文字記号からなる印字部Pが印字される。
【0017】
図1に示すように、製造ライン10における印字機12よりもワークWの搬送方向Xの下流側の位置には、コンベヤ11C上のワークWの印字部Pを検査する印字検査装置13が設けられている。印字機12は、内蔵する時計T1の時刻に応じた文字記号を印字する。また、印字検査装置13は、内蔵する時計T2の時刻に応じた文字記号マスタを用いて、ワークWの印字部Pの文字記号と文字記号マスタとを対比して印字部Pの正誤を判定する検査を行う。さらに製造ライン10において、印字検査装置13よりもワークWの搬送方向Xの下流側の位置には、印字不良である不良品のワークW2をコンベヤ11C上から排斥する排斥装置14が配設されている。排斥装置14とコンベヤ11Cを挟んだ反対側の位置には、不良品プール15が配置されている。排斥装置14により排斥された不良品のワークW2は、不良品プール15へ排斥される。なお、本実施形態では、ワークW0に印字される予め定められた単位時間(例えば分)毎に経時変化する文字記号は、3桁であるが、説明を簡単にするため、1桁の文字記号「A」「B」…の順で印字機12が印字部Pを印字する例を示している。
【0018】
図2は、ワークW0に印字される印字部Pの一例であり、印字部Pには、その印字内容として、賞味期限日、製造時分、ラインナンバー、工場ナンバーの各項目が含まれる。印字機12には、印字部Pを構成する各項目の印字内容、その配置位置及びその配置順を、製品毎に入力設定することが可能である。また、印字検査装置13にも、同様に、印字部Pを構成する各項目の印字内容、その配置位置及びその配置順を、製品毎に入力設定することが可能である。印字検査装置13に入力設定された各項目の印字内容、配置位置及び配置順のデータは、印字内容・位置順パラメータとして後述するメモリ50(
図8参照)に記憶される。
図2に示す印字部Pの例では、賞味期限日、製造時分、ラインナンバー、工場ナンバーがこの順番で1行に印字される。本例の印字部Pでは「製造時分」の項目が経時的に変化する印字部分であり、例えば単位時間である1分毎に変化する3桁のアルファベットによって表示される。なお、
図2は、ワークWの印字部Pを、印字検査装置13の検査用カメラ22(
図8参照)が撮影した画像データからなる印字部PIを示すものでもある。
【0019】
図3に示す時間テーブルTTは、印字検査装置13が、内蔵の時計T2の時刻(時分)を、3桁(3文字)のアルファベットに変換するときに用いられる。すなわち、第1桁は時間単位を示すもので、0時はA、1時はB、2時はCというアルファベット順で22時はW、23時はXというように予め定められている。第2桁は10分単位を示すもので、0分台はA、10分台はB、20分台はC、30分台はD、40分台はE、50分台はFと定められている。同様に、第3桁は1分単位を示すもので、0分はA、1分はB、2分はC、3分はD、4分はEで、9分はJとなる。従って、
図2の印字部P中の製造時分「ABC」は「0時12分」を表し、1分後の「0時13分」は「ABD」、1分前の「0時11分」は「ABB」となる。
【0020】
図1に示す製造ライン10において、印字機12よりも搬送方向Xの上流側では印字前の製品であるワークW0が搬送される。印字機12は内蔵する時計T1の時刻に基づいて経時的に変化する製造時分を含む例えば
図2に示す印字部PをワークW0に印字する。印字機12によって印字されたワークWの印字部Pは、印字検査装置13により検査される。本例の印字検査装置13は、公知の画像認識処理の一例であるパターンマッチング処理(テンプレートマッチング処理)によって、印字部Pの文字記号の正誤を判断する。検査の結果、良品とされたワークW1はコンベヤ11Cにより搬送方向Xの下流側へ搬送される。一方、印字抜けあるいは判読不能等と判断された印字不良のワークW2は、
図1に示したように、排斥装置14によってコンベヤ11C上から不良品プール15に排斥される。なお、本例では、パターンマッチング処理の一例として正規化相関マッチング処理を採用しているが、他の方式のマッチング処理を用いてもよい。
【0021】
また、
図4に示すように、パターンマッチング処理に用いる文字記号データCDが、印字検査装置13のメモリ50(
図8参照)に記憶されている。文字記号データCDには、各文字記号につき複数種(
図4の例では10種)ずつの文字パターンCP(文字記号パターン)が含まれている。
図4では、文字記号データCDのうち文字記号「E」の例で文字パターンCPを示しており、文字記号「E」に対して複数種(例えば10種)の文字パターンが設定されている。パターンマッチング処理を行うときは、1つのマスタにつき複数種の文字パターンCPと印字部Pとを対比して類似度を求め、10種の文字パターンCPのうち1つでも類似度が閾値を超えればマッチングできたものとする。なお、
図1中の「A」,「B」は印字部Pを表し、以下の実施形態では、説明の簡略のために経時的に変化する1桁の文字記号からなる印字部Pの例について説明する。
図2に示した3桁あるいはそれ以上の桁数の印字部Pでも基本的な処理内容については同様である。
【0022】
図1からも理解されるように、印字機12における印字は、内蔵された時計T1に基づいて、単位時間毎、ここでは1分毎にAからB、BからCのようにアルファベット順で経時的に変化する。本実施形態における印字検査装置13の印字検査では、時々刻々変化する印字部Pに追随するために、次のような手法を採用する。
【0023】
印字検査装置13は、印字部Pにおける文字記号の印字順序に対応して経時的に変化する文字記号マスタをメモリ50(
図8参照)に記憶している。印字検査装置13は、印字部Pの文字記号に対してパターンマッチング処理を行うときに、単位時間(例えば1分)ずつずれた連続する複数の異なる単位時の文字記号マスタを用いる。詳しくは、連続する複数の異なる単位時の文字記号マスタとして、該当単位時の文字記号マスタと、該当単位時よりも1つ単位時間後の次単位時の文字記号マスタと、該当単位時よりも1つ単位時間前の前単位時の文字記号マスタとを少なくとも含む複数の連続する異なる単位時の文字記号マスタを用いる。本例では、該当単位時の文字記号マスタ、次単位時の文字記号マスタ、及び前単位時の文字記号マスタからなる、3つの連続する異なる単位時の文字記号マスタを用いる。なお、以下では、該当単位時の文字記号マスタを「該当単位時マスタ」、次単位時の文字記号マスタを「次単位時マスタ」、前単位時の文字記号マスタを「前単位時マスタ」と呼ぶ場合もある。
【0024】
印字検査装置13は、単位時の異なる3つの文字記号マスタと、印字部Pの文字記号とのパターンマッチング処理を行い、各文字記号マスタに対する印字部Pの文字記号の類似度を求める。類似度は例えば相関値で示され、0~1の範囲の値で示される。数値が大きいほど類似度が高い。印字検査装置13は、類似度が閾値未満であればマッチングできなかったと判断し、類似度が閾値以上であればマッチングできたと判断する。閾値は例えば0.6~0.8の範囲内の値に設定されている。該当単位時マスタ、次単位時マスタ及び前単位時マスタのうち少なくとも1つとマッチングできた場合、そのマッチングできた少なくとも1つのうち最もマッチングできた(つまり最も類似度が高かった)文字記号マスタが、該当単位時マスタ、次単位時マスタ及び前単位時マスタのうちいずれであるかを判定する。最もマッチングできた文字記号マスタが、該当単位時マスタであれば、そのまま検査を継続する。また、最もマッチングできた文字記号マスタが、該当単位時マスタではなく、次単位時マスタであれば、その次単位時マスタを該当単位時マスタとして更新する。
【0025】
図5は印字検査方法の流れ図である。この図は左側に示すワークWの印字部Pを検査するときに、印字検査装置13がパターンマッチング処理を実行して行う印字検査処理の内容を時間の経過とともに示したものである。以下、
図5を参照して、印字検査装置13が、ワークWの印字部Pを検査するときの検査の流れの概略を説明する。なお、ワークWには搬送される順番にn1,n2,…の符号を付している。印字部Pの検査を行うときは、該当単位時マスタと次単位時マスタと前単位時マスタとを用いて、該当単位時マスタとの±1分のずれを許容して単位時の異なる3つのマスタを使用してマッチング処理を行う。
図5の例では、該当単位時マスタ「E」、前単位時マスタ「D」、次単位時マスタ「F」であるものとする。
【0026】
図5のワークn1では、パターンマッチング処理の結果、印字部「E」が該当単位時マスタ「E」とマッチングするため、マスタ「D」「E」または「F」とマッチングし(ステップS101)、かつ最も高いマッチングが該当単位時マスタ「E」なので(ステップS102)、そのまま検査を継続する。
【0027】
ワークn2でも同様に、パターンマッチング処理の結果、印字部「E」が該当単位時マスタ「E」とマッチングするため、マスタ「D」「E」または「F」とマッチングし(ステップS103)、かつ最も高いマッチングが該当単位時マスタ「E」なので(ステップS104)、そのまま検査を継続する。
【0028】
図5のワークn3は、印字部Pが印字乱れによって判読が不能な場合で、印字検査装置13における該当単位時マスタ「E」、前単位時マスタ「D」、次単位時マスタ「F」のどれとも、ワークWの印字部「?」がマッチングしない(ステップS105)。このとき、印字検査装置13は、NG処理として誤信号を発し(ステップS106)、印字不良のワークW2は排斥装置14の駆動により不良品プール15へ排斥される。
【0029】
一方、
図5のワークn4のように印字部Pの文字記号が「E」から「F」に切り替わった場合は、次単位時マスタ「F」とマッチングするため、該当単位時マスタ「E」、前単位時マスタ「D」、次単位時マスタ「F」のうちいずれかとマッチングしたと判定される(ステップS107で肯定判定)。そして、最も高いマッチングが該当単位時マスタの「E」ではなく次単位時マスタ「F」であるため(ステップS108,S109)、該当単位時マスタを「F」に更新する(ステップS110)。ワークn4は良品としてコンベヤ11Cの下流側へ搬送される。
【0030】
そして、
図5のワークn5のように、印字部Pの文字記号「F」に文字記号「E」と誤認される虞のある汚れが付いていた場合、マッチング処理の結果、印字部「F」は、例えば前単位時マスタ「E」と該当単位時マスタ「F」とマッチングするため、3つのマスタ「E」「F」または「G」とマッチングしたと判定される(S111で肯定判定)。そして、最も高いマッチングが該当単位時マスタ「F」ではなく(ステップS112)、次単位時マスタ「G」でもないので(ステップS113)、前単位時マスタ「E」に時間を遡るマスタの更新は行うことなく、そのまま検査を継続する。ここで、前単位時マスタ「E」が最も高いマッチングであっても、±1分以内のずれなので、NG処理とはせずOK処理を行う。これは、印字機12が内蔵する時計T1と、印字検査装置13が内蔵する時計T2は、必ずしも時刻が正確に一致する訳ではなく、通常、数秒~数10秒のずれがあるが、時刻のずれは通常±1分以内に収まっているためである。この結果、ワークn5は不良品として排斥されることなく良品としてコンベヤ11Cの下流側へ搬送される。以後、同様に、順次これを繰り返して連続的に検査を行っていく。なお、後述する検査開始後の初期期間である場合に限り、前単位時マスタ「E」へ時間を戻す更新も行う。
【0031】
次に
図6及び
図7を参照して、製造ライン10が一時停止された後に再稼動された場合に印字検査装置13が行う印字検査について説明する。工程上の都合あるいは予期しない事態の発生により、製造ライン10が一旦停止し、印字検査装置13にワークWが導入されなくなる。この場合、製造ライン10の再稼働により印字機12によるワークW0への印字が再開され、印字部Pが印字されたワークWが印字検査装置13に導入される。なお、製造ライン10が再稼働されたときに印字機12と印字検査装置13との間にワークWが滞留していた場合、印字検査装置13はその滞留していたワークWの印字部Pについては経時変化する時分を検査対象から除外し、固定文字の検査と印字有無検査に留め、該当単位時マスタの更新は内蔵時計T2の時刻により自動更新される。
【0032】
印字検査装置13は製造ライン10の停止時には該当単位時マスタとして「F」を持っており、製造ライン10の停止中も、印字検査装置13が内蔵する時計T2によって経過時間とともに「G」、「H」とその該当単位時マスタを自動更新する。しかしながら、印字機12の時計T1と印字検査装置13の時計T2とは同期しておらず、その誤差は少なからず存在する。この種の印字および検査は1分間に1000個以上、毎秒数十個という単位で行われるものであるので、僅かな時間のずれが大量の不良品を生ずる結果となる。
【0033】
図6の例において、製造ライン10の停止前の最後のワークn10においてその印字部「F」と該当単位時マスタ「F」とがマッチングするので、3つのマスタ「E」「F」または「G」がマッチングしたと判定される(ステップS121で肯定判定)。そして、最も高いマッチングが該当単位時マスタ「F」となるので(ステップS122)、ワークn10を良品として検査を終えた後、製造ライン10は停止する。その後、所定の時間を経過した後、停止していた製造ライン10が再稼働したとする。印字検査装置13が内蔵する時計T2は、製造ライン10の停止時の時刻から停止していた時間が経過した時刻を指す。このため、印字検査装置13は、該当単位時マスタを内蔵時計T2の現在時刻に対応するマスタ「H」に更新する。すなわち、
図6の例では、検査終了時(製造ライン停止時)の内蔵時計T2の時刻に対応するマスタ「G」から検査開始時の内蔵時計T2の時刻に対応するマスタ「H」に自動更新される。
【0034】
製造ライン10の再稼動後、
図6の例ではワークn21の印字部「I」と3つのマスタ「G」「H」または「I」とのマッチング処理を行った結果、次単位時マスタ「I」とマッチングするので、3つのマスタ「G」「H」または「I」とマッチングしたと判定される(ステップS123で肯定判定)。そして、最も高いマッチングが該当単位時マスタ「H」ではなく次単位時マスタ「I」となるので(ステップS124,S125)、該当単位時マスタを「I」に更新する(ステップS126)。
【0035】
次に
図6におけるワークn22の例では、印字部「I」が該当単位時マスタ「I」とマッチングするので、マスタ「H」「I」または「J」とマッチングしたと判断され(S127)、最も高いマッチングが該当単位時マスタ「I」となるので(S128)、良品としてコンベヤ11C上を下流側へ向かって搬送されるとともに印字検査は継続される。以後、同様に、順次これを繰り返して連続的に印字検査を行っていく。
【0036】
次に
図7を参照して、製造ライン10が一時停止後に再稼動された場合に印字検査装置が行う印字検査について説明する。
図7において製造ライン10の停止前の最後のワークn10の印字部「F」と該当単位時マスタ「F」とのマッチング処理の結果、該当単位時マスタ「F」がマッチングするので、3つのマスタ「E」「F」または「G」がマッチングしたと判定される(ステップS131で肯定判定)。そして、最も高いマッチングが該当単位時マスタ「F」となり(ステップS132)、ワークn10を良品として検査を終えた後、製造ライン10が停止したとする。その後、停止していた製造ライン10が再稼働したとき、印字検査装置13の内蔵時計T2は製造ライン10の停止時の時刻から停止していた時間を経過した時刻にあるため、印字検査装置13は、該当単位時マスタを、内蔵時計T2の現在時刻に対応するマスタに更新する。すなわち、
図7の例では、検査終了時(製造ライン停止時)の内蔵時計T2の時刻に対応するマスタ「G」から検査開始時の内蔵時計T2の時刻に対応するマスタ「H」に自動更新する。ここまでは、
図6における印字検査処理と同様である。
【0037】
図7の例では、製造ライン10の再稼動後、ワークn31の印字部「G」と3つのマスタ「G」「H」または「I」とのマッチング処理の結果、前単位時マスタ「G」がマッチングするので、3つのマスタ「G」「H」または「I」とマッチングしたと判定される(ステップS133で肯定判定)。そして、最も高いマッチングが該当単位時マスタ「H」ではなく次単位時マスタ「I」でもなかった場合、つまり前単位時マスタ「G」であった場合は(ステップS134,S135で否定判定)、該当単位時マスタを「G」に更新する(ステップS136)。
【0038】
次に
図7におけるワークn32の例では、印字部「G」とマスタ「F」「G」または「H」とのマッチング処理の結果、該当単位時マスタ「G」がマッチングするので、マスタ「F」「G」または「H」とマッチングしたと判定され(ステップS137で肯定判定)、最も高いマッチングが該当単位時マスタ「G」と判定される(ステップS138)。その結果、ワークn32は良品としてコンベヤ11C上を下流側へ向かって搬送されるとともに印字検査が継続される。以後、同様に、順次これを繰り返して連続的に印字検査を行っていく。
【0039】
本実施形態の印字検査装置13は、以下に示す3つの印字検査方法を採用している。1つめは、
図5~
図7に示したように、印字部Pの文字記号に対して、該当単位時マスタと次単位時マスタと前単位時マスタとのパターンマッチング処理を行い、マッチングした1つ以上のマスタのうち最もマッチングしたマスタが該当単位時マスタでない場合は、その最もマッチングしたマスタを、該当単位時マスタとして更新する。
【0040】
また、2つめは、印字機12の時計T1が故障して停止した場合、経時的に変化させるべき印字内容が更新されず同じ印字をし続ける事態を開始するための印字検査方法である。本実施形態では、印字機12が正確に経時的印字をしていることを前提にしている。もし印字機12が印字の経時変化をコントロールできなくなった場合、具体的には印字機12の時計T1が故障して停止した場合、経時的に変化させるべき印字内容は更新されず同じ印字をし続けることになる。例えば特許文献1に記載の印字検査方法では、このような同じ印字をし続ける状況になっても、誤印字と判断することができなかった。これに対して本実施形態では、製造ライン10の設定ライン速度(単位時間当たりに検査可能な最大ワーク数)(個/分)に応じた単位時間で検査可能な最大ワーク数を閾値として設定しておく。そして、前記2つめとして、同じ印字内容のワークWが連続する個数をカウントしてこのカウント値が閾値(最大ワーク数)を超えても、印字内容が経時変化をしなかった場合、印字機12の異常と判断する。
【0041】
さらに、3つめは、検査開始から該当単位時マスタを最初に更新するまでの初期期間においては、前単位時マスタを該当単位時マスタとする更新を許容するものの、初期期間の経過後は、前単位時マスタを該当単位時マスタとする更新を許容しない。特許文献1の印字検査装置では、印字部Pに汚れが付いた文字記号が、間違った文字記号として認識される場合がある。例えばE→F→Gと経時変化する印字において、本来「F」の印字が、下部分に汚れ等があり、「E」がマッチングしたとき、該当単位時マスタは「E」に更新されてしまう。この場合、印字が「F」から「G」に更新されたとき、特許文献1に記載の印字検査方法では、「D」「E」「F」で検査するため、正常な「G」を印字不良としてしまうという課題がある。本実施形態では、上記課題を解決するため、前記3つめとして、検査開始後、一旦「F」に更新した後(初期期間の経過後)は、最も高いマッチングが前単位時マスタ「E」であっても、時間を遡る前単位時マスタ「E」への更新はしないようにしている。なお、検査開始後の最初に、最も高いマッチングが該当単位時マスタであると判定されたために、該当単位時マスタを更新する必要がない場合が稀に発生する。この場合、該当単位時マスタの最初の更新まで前単位時マスタへの更新を許容すると、前単位時マスタへの不適切な更新が行われてしまう虞がある。そのため、前単位時マスタを該当単位時マスタとする更新を許容するうえで、初期期間に制限時間を設けることが好ましい。この制限時間としては、例えば単位時間(例えば1分)、あるいは単位時間に印字機12から印字検査装置13までのワークWの搬送に必要な搬送所要時間を加えた時間などが挙げられる。
【0042】
次に、
図8を参照して、印字検査装置13の電気的構成及び機能的構成を説明する。
図8に示すように、印字検査装置13は、コントローラ20、ワーク検出センサ21および検査用カメラ22を備える。ワーク検出センサ21は、コンベヤ11C上を搬送される印字後のワークWを、印字機12と検査用カメラ22との間の位置で検知可能である。また、検査用カメラ22は、コンベヤ11C上を搬送されるワークWの印字部Pを撮影可能な高さ位置に配置されている。
【0043】
コントローラ20には、ワーク検出センサ21、検査用カメラ22、排斥装置14が電気的に接続されている。コントローラ20は、ワーク検出センサ21で検知したワークWの印字部Pを検査用カメラ22で撮影することにより画像データからなる印字部PIを取得する。そして、コントローラ20は、取得した印字部PIと、連続する3つの異なる単位時の文字記号マスタとをパターンマッチング処理により対比して、3つの異なる単位時の文字記号マスタに対する印字部PIの類似度を求め、これらの類似度を用いて印字部Pの印字内容(文字記号)の正誤を判定する印字検査を行う。印字検査の結果、印字部Pが文字記号の間違った印字不良である場合、コントローラ20は誤信号を出力することにより排斥装置14を駆動させてその印字不良のワークW2をコンベヤ11Cから不良品プール15上へ排斥する。
【0044】
図8に示すように、コントローラ20は、回路基板(マザーボード)に実装されたコンピュータ31、タイミング制御部32、液晶パネル等からなる表示部33及び入力装置34を備える。コントローラ20は、例えばコンピュータ31及びタイミング制御部32を内蔵する筐体を備え、その筐体の表面に表示部33及び入力装置34を備えている。コンピュータ31には、タイミング制御部32、表示部33及び入力装置34が電気的に接続されている。なお、コントローラ20は、パーソナルコンピュータにより構成してもよい。
【0045】
タイミング制御部32は、ワーク検出センサ21がワークWを検出すると、そのワークWが検査用カメラ22の正面に達したタイミングで検査用カメラ22にワークWの印字部Pの撮影を実行させる。つまり、タイミング制御部32は、ワーク検出センサ21がワークWを検知した検知結果に基づいて検査用カメラ22がそのワークの印字部Pを撮影できるように撮影タイミングを制御する。検査用カメラ22が撮影した画像データからなる印字部PIはコンピュータ31に取得される。
【0046】
また、タイミング制御部32は、コンピュータ31から印字部Pが印字不良である旨の誤信号を入力すると、その印字不良のワークW2が排斥装置14の正面に達したタイミングで排斥装置14を駆動させ、その印字不良のワークW2をコンベヤ11C上から不良品プール15へ排斥する。なお、タイミング制御部32による排斥装置14の駆動タイミング制御は、ワーク検出センサ21の検出信号に基づき行ってもよいし、排斥装置制御用の不図示のワーク検出センサの検出信号に基づき行ってもよい。
【0047】
また、コンピュータ31は、表示部33に表示した設定画面を見ながらユーザが入力装置34を操作して入力した、
図2に示す印字部Pの項目、各項目の印字内容・印字位置順のデータを受け付ける。コンピュータ31は、このデータを後述する印字パラメータPPとして受け付ける。また、コンピュータ31は、検査用カメラ22が撮影して取得した印字部PIに基づく印字検査の結果を表示部33に表示する。
【0048】
また、コンピュータ31は、CPU40(中央処理装置)、記憶部の一例としてのメモリ50及び時計T2(内蔵時計)を備える。メモリ50には、印字部Pの検査をコンピュータ31に実行させるためのプログラムPR、印字パラメータPP、
図3に示す時間テーブルTT、
図4に一部を示す文字記号データCD及び検査に使用する検査用マスタIM等が記憶されている。印字パラメータPP及び時間テーブルTTは、ユーザが入力装置34を操作することで外部からコンピュータ31に入力され、製品(ワーク)の品種や製造ライン毎に切り換えられる。また、検査用マスタIMは、パターンマッチング処理で使用される、該当単位時マスタ、前単位時マスタ及び次単位時マスタからなり、コンピュータ31が実行する印字検査処理において経時的に更新される。
【0049】
製造ライン10が停止状態から稼動して印字検査装置13が印字検査を開始してから最初の単位時間(例えば1分)を経過するまでの期間内に印字機12の時計T1の時刻と印字検査装置13の時計T2の時刻とのずれに起因する最初のマスタ更新が必要に応じて行われる。印字検査の開始から最初のマスタ更新を行うまでの初期期間を過ぎた後は、前単位時マスタを該当単位時マスタとする、時間を遡るマスタの更新は許可しない。つまり、本例では、初期期間を過ぎた後は、次単位時マスタを該当単位時マスタとする更新のみが許可される。
【0050】
また、
図2の例から分かるように、印字部Pとして、経時的に変化する製造時分だけでなく、年月日や固定文字も印字されており、その印字される項目毎の印字内容・印字位置順や印字形式・文字の長さも、品種や製造ラインにより異なる。このため、各項目の印字内容・印字位置順や印字形式・文字の長さを特定可能な印字パラメータPPが、製品の品種や製造ライン毎に切替え可能となっている。印字部Pには、例えば文字記号列が2段(2行)で印字される場合や、一部の項目が印字されない場合もあり、この種の情報も印字パラメータPPから特定できる。なお、メモリ50は、ハードディスクやRAMの一部の記憶領域により構成される。
【0051】
図8に示すCPU40は、プログラムPRの実行により機能するソフトウェアからなる複数の機能部を有する。すなわち、CPU40は、機能部として、制御部41、印字設定部42、データ登録部43、画像取得部44、マスタ更新部45、検査部46、異常判定部47及び表示制御部48を備える。
【0052】
制御部41は、印字検査装置13の制御の全体を司り、各部42~48に所定の処理又は制御を指示する。
印字設定部42は、表示制御部48を介して表示部33に不図示の設定画面を表示させるとともに、ユーザが設定画面を見ながら入力装置34の操作で入力した印字部の項目、項目毎の印字内容・印字位置順等のデータを受け付け、その受け付けた各種データを含む印字パラメータPPをメモリ50に書き込む。
【0053】
データ登録部43は、入力装置34からワークWの品種や製造ライン毎に受け付けた
図3に示された時間テーブルTT及び
図4に一部が示された文字記号データCDをメモリ50に登録する。
【0054】
画像取得部44は、検査用カメラ22が撮影した画像データからなる印字部PIを取得する。
マスタ更新部45は、検査部46が取得した印字部PIに基づく印字検査においてマスタ更新条件が成立すると、該当単位時マスタを現在のマスタから次単位時マスタ等の他のマスタに更新するマスタ更新処理を行う。このマスタ更新処理では、該当単位時マスタの更新に伴い、前単位時マスタと次単位時マスタも一緒に更新される。なお、検査開始時の初期段階を過ぎてからは、マスタ更新部45は、前単位時マスタへの更新は許可せず、次単位時マスタへの更新のみ許可する。
【0055】
検査部46は、画像取得部44が取得した画像データからなる印字部PIと検査用マスタIMとを対比するマッチング処理を行うことにより、印字部Pの正誤を判定する印字検査を行う。検査部46は、印字位置検出部61、マッチング処理部62および判定部63を有している。
【0056】
印字位置検出部61は、印字パラメータPPを参照して、画像データからなる印字部PIの中から項目毎の位置領域を検出するとともに、その検出した項目の領域から所望の文字記号を1つずつ切り出す。
【0057】
マッチング処理部62は、メモリ50の文字記号データCDから、印字部PIから切り出した文字記号に対応する文字パターンCPをメモリ50から読み出し、検査対象の文字記号と文字パターンCP(
図4参照)とを対比するマッチング処理を行う。マッチング処理部62は、印字部PI中の経時変化する文字記号(一例として製造時分)については、検査用マスタIMとマッチング処理を行って、該当単位時マスタ、前単位時マスタ及び次単位時マスタに対する文字記号の類似度を求める。このとき、マッチング処理部62は、該当単位時マスタ、前単位時マスタ及び次単位時マスタのそれぞれについて、
図4に示すような複数種(例えば10種)の文字パターンCPを用いて検査対象の文字記号と対比するパターンマッチング処理を行う。このように本例のマッチング処理部62は、複数桁の文字記号について1文字(1桁)ずつ類似度を求める。
【0058】
判定部63は、類似度が所定の閾値を超えた場合にマッチングできたと判定する。また、判定部63は、類似度が閾値を超えてマッチングできたマスタが2つ以上存在する場合、そのうち最もマッチングした(最も高い類似度の)マスタを特定する判定も行う。
【0059】
そして、マスタ更新部45は、最もマッチングしたマスタが該当単位時マスタであれば、その該当単位時マスタを維持しマスタの更新を行わない。一方、マスタ更新部45は、最もマッチングしたマスタが該当単位時マスタでなければ、検査開始の初期期間においては前単位時マスタと次単位時マスタとのうち最もマッチングした一方を、該当単位時マスタとして更新する。一方、初期期間を過ぎた後は、最もマッチングしたマスタが次単位時マスタである場合に限り、次単位時マスタを該当単位時マスタとして更新する。
【0060】
異常判定部47は、印字機12が時計T1の故障等の異常であるか否かを判定し、異常と判定した場合に異常信号を出力することで、同じ文字記号の印字部PがワークW0に印字され続けることを回避する。異常判定部47は、計数部の一例としての一致カウンタ64を備える。一致カウンタ64は、文字記号マスタ更新時にリセットされ、検査部46により印字部PIが同じ文字記号であると認識されたワークWの数を計数する機能を有する。異常判定部47は、一致カウンタ64の計数値がその閾値である設定ライン速度以下であるか否かを判断する。ここで、設定ライン速度とは、現在設定されている搬送速度でコンベヤが単位時間(本例では1分)当たりに搬送可能な最大ワーク数(個/分)、つまり単位時間で印字部Pを検査可能な最大ワーク数に等しい。この単位時間で印字部Pを検査可能な最大ワーク数と同じ値の閾値である設定ライン速度(例えば個/分)は、メモリ50に記憶されている。異常判定部47は、一致カウンタ64の計数値が設定ライン速度以下であるうちは、印字機12が正常であると判定して正常信号を出力する。一方、異常判定部47は、一致カウンタ64の計数値が設定ライン速度を超えれば、つまり一致カウンタの計数値が設定ライン速度を超えても印字部Pの経時変化がなければ、印字機12が異常であると判定して異常信号を出力する。
【0061】
表示制御部48は、表示部33に不図示の設定画面、印字検査結果、異常メッセージ等を表示させる。
次に、
図9を参照して印字検査装置13の作用を説明する。コンピュータ31がプログラムPRを実行することで行われる印字検査処理を、
図9に示すフローチャートを参照して説明する。印字機12が内蔵する時計T1と、印字検査装置13が内蔵する時計T2は、必ずしも時刻が正確に一致する訳ではなく、通常、数秒~数10秒のずれがあるが、時刻のずれは通常±1分以内に収まっている。また、印字機12の時計T1が故障して時刻が変わらなくなった場合、同じ印字内容を印字し続けることになる。本実施形態では、この種の印字検査における誤検出(誤判定)を回避する処理が行われる。なお、印字機12から印字検査装置13までワークWが搬送される搬送所要時間は極めて短い(例えば1~5秒の範囲内の値)ものの零ではないので、仮に時計T1,T2が正確に同時刻であっても、厳密には印字と印字検査との間に搬送所要時間分の印字内容のずれは生じる。
【0062】
製造ライン10が製品の品種の切り換え等により停止状態から稼動すると、あるいはトラブルが発生して一時停止していた製造ライン10が稼動を再開すると、印字検査装置13のコンピュータ31は
図9にフローチャートで示されるプログラムPRを実行する。
【0063】
まずステップS11では、内蔵時計によるマスタの更新を行う。すなわち、コンピュータ31は、印字検査装置13の内蔵時計T2の時刻に応じた文字記号マスタに更新する。具体的には、コンピュータ31の制御部41が時計T2の時刻を基に
図3に示す時間テーブルTTを参照し、そのときの時刻に対応する文字記号マスタを該当単位時マスタとして更新する。なお、このマスタ更新時に一致カウンタ64はリセットされる。
【0064】
ステップS12では、画像データを取得する。すなわち、コンピュータ31は、タイミング制御部32を介して検査用カメラ22にワークWの印字部Pの撮影を指示し、検査用カメラ22が撮影して得た画像データをコンピュータ31の画像取得部44が取得する。なお、本実施形態では、ステップS12の処理が「撮影ステップ」の一例に相当する。
【0065】
ステップS13では、ワークの印字部と、該当単位時マスタ、前単位時マスタ、次単位時マスタとのマッチング処理を行う。詳しくは、検査部46の印字位置検出部61が、検査用カメラ22から取得した画像データの中から印字部PIを検出し、印字パラメータPPを参照して印字部PIから経時変化する項目の文字記号(一例として製造時分)を1つずつ切り出す。次にマッチング処理部62は、切り出した経時変化する文字記号と、検査用マスタIMとのマッチング処理を行って、該当単位時マスタ、前単位時マスタ及び次単位時マスタに対する文字記号の類似度を求める。なお、印字部P中の経時変化しない文字記号についてもマッチング処理を行う。
【0066】
ステップS14では、マッチングできたか否かを判断する。すなわち、検査部46の判定部63が、該当単位時マスタ、前単位時マスタおよび次単位時マスタのうち、印字部PIの文字記号の類似度が閾値以上となるマスタが1つ以上あるか否かを判断する。マッチングできなければステップS24に進んで、NG処理を行う。コンピュータ31はNG処理として、印字内容が正しくない旨の誤信号を出力するとともに、例えば表示部33にエラーの旨を表示させる。誤信号を受け付けたタイミング制御部32は排斥装置14を駆動し、印字不良のワークW2をコンベヤ11C上から不良品プール15へ排斥する。一方、マッチングできればステップS15に進む。
【0067】
ステップS15では、最も高いマッチングは該当単位時マスタであるか否かを判断する。詳しくは、検査部46の判定部63が、類似度が閾値を超えてマッチングできたマスタが2つ以上存在する場合は、その2つ以上のマスタのうち最も高いマッチング(最も高い類似度)のマスタを特定する判定を行う。最もマッチングしたマスタが該当単位時マスタであればステップS16に進み、最も高いマッチングが該当単位時マスタでなければステップS19に進む。
【0068】
ステップS16では、一致カウンタの計数値をカウントアップさせる。これにより一致カウンタ64は、印字部Pに同じ文字記号が印刷されたワークWの撮影個数を計数する。なお、本実施形態では、ステップS15(肯定判定の場合)及びS16の処理が「計数ステップ」の一例に相当する。
【0069】
次のステップS17では、一致カウンタの計数値が設定ライン速度以下であるか否かを判断する。ここで、設定ライン速度とは、現在設定されている搬送速度でコンベヤが1分当たりに搬送可能な最大ワーク数(個/分)に等しい。一致カウンタ64の計数値が設定ライン速度以下でなければステップS18に進み、一致カウンタ64の計数値が設定ライン速度以下であればステップS23に進む。
【0070】
ステップS18では、NG処理を行うとともに、印字機が異常である旨を報知する。NG処理として印字内容が正しくない旨の誤信号を出力するとともに、例えば表示部33に印字機12が異常である旨の異常メッセージ等を表示させる。印字機12の異常としては、印字機12の時計T1の時刻が変わらなくなった故障が挙げられる。なお、本実施形態では、ステップS17及びS18の処理が「出力ステップ」の一例に相当する。
【0071】
ステップS19では、最も高いマッチングは、次単位時マスタであるか否かを判断する。最も高いマッチングが次単位時マスタであればステップS20に進み、最も高いマッチングが次単位時マスタでなければ、つまり最も高いマッチングが前単位時マスタである場合はステップS21に進む。
【0072】
ステップS20では、次単位時マスタを該当単位時マスタに更新し、これに伴い前単位時マスタ及び次単位時マスタも更新するとともに、一致カウンタをリセットする。
ステップS21では、検査開始初期期間であるか否かを判断する。検査開始初期期間であれば、ステップS22に進み、検査開始初期期間でなければステップS23に進む。
【0073】
ステップS22では、前単位時マスタを該当単位時マスタに更新し、これに伴い前単位時マスタ及び次単位時マスタも更新するとともに、一致カウンタをリセットする。
ステップS23では、OK処理を行う。印字部Pのうち経時変化する文字記号と該当単位時マスタとが一致して検査結果が正しい場合(S15で肯定)、最もマッチングしたマスタが次単位時マスタである場合(S19で肯定)、最もマッチングしたマスタが前単位時マスタである場合(S21,S22)は、正しい旨の信号を出力する。これと共に例えば表示部33に印字内容が正しい旨を表示する。OK処理又はNG処理を終えた後は、ステップS25に進む。
【0074】
ステップS25では、製造ラインが停止したか否かを判断する。製造ラインが停止していなければ、ステップS12に戻り、ステップS12~S25の処理を、製造ライン10が停止するまで繰り返すことで、ワークWを1個ずつ順番に検査する。なお、本実施形態では、ステップS13~S25の処理が「検査ステップ」の一例に相当する。
【0075】
以上詳述したように、この実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)印字検査装置13の記憶部の一例であるメモリ50には、単位時間で印字部Pを検査可能な最大ワーク数と同じ値の閾値として設定ライン速度(例えば個/分)が記憶されている。コンピュータ31は、検査部46により連続して印字部PIが同じ文字記号であると認識されたワークWの数を計数する計数部の一例である一致カウンタ64を備える。一致カウンタ64が計数したワーク数が設定ライン速度(例えば個/分)を超えても文字記号が経時変化をしなかった場合は、印字機12が異常である旨の異常信号を出力する。この結果、表示部33に印字機12が異常である旨が表示されて検査員に報知されるか、印字機12の印字が停止されるかする。よって、時計T1の故障等の印字機12の異常に起因し、同じ文字記号の印字部PがワークW0に印字され続けることを回避できる。
【0076】
(2)検査開始から該当単位時マスタを最初に更新するまでの初期期間では、印字部PIに対して、該当単位時と前単位時と次単位時の各文字記号マスタとの類似度を求めるマッチング処理を行う。そして、最もマッチングした文字記号マスタが該当単位時マスタではなく前単位時マスタ又は次単位時マスタである場合は、最もマッチングした前単位時マスタ又は次単位時マスタを該当単位時マスタとする最初の更新を行う。つまり、最もマッチングした前単位時マスタと次単位時マスタのうち一方を該当単位時マスタとする更新が許可される。一方、初期期間を過ぎた後は、最もマッチングしたマスタが前単位時マスタであっても、前単位時マスタを該当単位時マスタとする更新はしない。よって、製造ライン10の稼動直後の初期期間では、前単位時マスタに戻る該当単位時マスタの更新も許可されるので、印字機12と印字検査装置13との各々の内蔵時計T1,T2の時刻のずれに応じて該当単位時マスタの更新を適切に行うことができる。
【0077】
また、初期期間を過ぎた後は、前単位時マスタを該当単位時マスタとする不適切な更新を回避できる。例えば特許文献1に記載の第2の検査方法では、本来「F」の印字が、下部分に汚れ等があり、「E」と認識したとき、文字記号マスタは前単位時の文字記号「E」に更新されてしまう。この場合、印字が「F」から「G」に更新されたとき、「D」「E」「F」で検査するため、正常な「G」なのに印字不良としてしまうという課題がある。しかし、本実施形態では、初期期間を過ぎた後は、該当単位時よりも前の前単位時マスタへの更新を許容しない。よって、本来「F」の印字が下部分に汚れ等が原因で仮に「E」が最もマッチングしても、該当単位時よりも前の単位時である前単位時マスタ「E」を該当単位時マスタとする更新は行われない。このため、初期期間を過ぎた後に、該当単位時よりも前の前単位時マスタを該当単位時マスタとして更新したことに起因し、印字部が正しい印字内容であるにも関わらず誤信号が発せられる不都合な事態を回避できる。よって、本実施形態の印字検査装置13では、正常な印字「G」は正常と判定され、誤って印字不良とされる事態を回避できる。したがって、この点からも印字検査装置13によれば、ワークWの印字部Pの正誤を検査する検査精度を高めることができる。
【0078】
(3)印字部Pに汚れが付いていた場合、印字部Pが間違った文字記号として認識されてNGになる虞がある。例えばE→F→Gと経時変化する印字において、印字が「E」から「F」へ更新されたとき、特許文献1に記載の印字検査装置における第2の検査方法では、本来「F」の印字が下部分に汚れ等があり、検査で「E」がマッチングする場合がある。この場合、該当単位時マスタが「E」に更新され、「D」「E」「F」で検査するため、印字が「F」から「G」に切り換わった際に、正常な「G」なのに不良と判定されるという課題がある。これに対して、本実施形態の印字検査装置13によれば、印字部Pの文字記号と、単位時の異なる3つのマスタとマッチングする。そのため、本来「F」の印字が下部分に汚れ等があり、検査で「E」がマッチングしても、「F」が最もマッチングした場合には、「F」に更新される。この場合、印字が「F」から「G」に更新されたとき、「E」「F」「G」で検査するため、正常な「G」は正常と判定され、文字記号マスタが「F」から「G」に更新される。よって、本実施形態の印字検査装置13によれば、特許文献1に記載の印字検査装置に比べ、ワークWの印字部Pの正誤を検査する検査精度を高めることができる。
【0079】
(4)印字検査方法によれば、ワークWの印字部Pを撮影する撮影ステップ(S12)と、撮影された経時的に変化する印字部の正誤を検査する検査ステップ(S13~S25)とを備える。検査ステップでは、該当単位時、前単位時及び次単位時の各文字記号マスタに対する印字部PIの類似度を求め、印字部PIの類似度から最もマッチングした文字記号マスタが該当単位時マスタであるときはそのまま検査を続行する。一方、最もマッチングした文字記号マスタが、該当単位時マスタではなくかつ前単位時マスタと次単位時マスタのうちいずれでもなければ誤信号を発し、前単位時マスタと次単位時マスタのいずれかであるときは誤信号を発することなく該当単位時マスタを最もマッチングした前単位時又は次単位時マスタに更新し、以後順次これを繰り返して検査する。よって、この印字検査方法によれば、上記(1)の効果を同様に得ることができる。
【0080】
実施形態は、上記に限定されず、以下のように変更してもよい。
・
図9におけるステップS17では、単位時間である1分単位で印字内容を変化させる例であるため、設定ライン速度の単位を「個/分」としたが、10分単位で印字内容を変化させる場合、設定ライン速度の単位は「個/10分」とすればよい。また、1時間単位で印字内容を変化させる場合、設定ライン速度の単位は「個/時間」とすればよい。また、印字機の異常と判定する閾値として用いるワーク数は、印字内容が経時的に変化する単位時間当たりに搬送される最大ワーク数(設定ライン速度)に限らず、その最大ワーク数よりもマージンを見込んだ所定数多い値でもよい。要するに、閾値は最大ワーク数以上であればよい。
【0081】
・前記実施形態では、検査に用いる文字記号マスタの数を、該当単位時マスタ、前単位時マスタ及び次単位時マスタの3つとしたが、これら3つの文字記号マスタが少なくとも含まれていれば4つ以上の幾つとしてもよい。例えば該当単位時マスタ、前単位時マスタ、次単位時マスタ、前々単位時マスタ及び次々単位時マスタの5つでもよいし、該当単位時マスタを含むその前後6つ(±3分)の単位時マスタからなる7つでもよい。単位時間当たりに検査が必要なワーク数(ワーク検査処理速度)とコンピュータの処理速度とに応じて、印字検査に用いる文字記号マスタの数を決めればよい。なお、コンピュータがマルチコアプロセッサを搭載する場合、検査に用いる文字記号マスタの数は、コンピュータが並列処理可能な数以下にするのが好ましい。
【0082】
・前記実施形態において、検査開始から該当単位時マスタの最初の更新を行って初期期間が過ぎた後でも、最もマッチングしたマスタが前単位時マスタである場合は、前単位時マスタを該当単位時マスタとする更新を行ってもよい。すなわち、連続した異なる単位時の複数の文字記号マスタのうち該当単位時よりも前の単位時の文字記号マスタが最もマッチングした場合は、初期期間であるか否かに関わらず、該当単位時よりも前の単位時の文字記号マスタを該当単位時マスタとする更新を行ってもよい。この構成によれば、前記実施形態における前記(3)の効果は得られないものの、前記(1)の効果を得ることができる。
【0083】
・ワークは、紙パックからなる容器に限定されない。例えばガラス瓶、プラスチックボトル、包装袋などでもよい。また、ワークは、飲料品、食料品、健康食品、化粧品、加工品等でもよい。印字機12により印字され、印字検査装置13による印字の検査が行われるワークであればよい。また、経時変化する文字記号は、年月日時分秒、年月日時分何10秒、年月日時分、年月日時何10分、年月日時、年月日(以下、「製造年月日時分等」という。)のうちいずれかであればよい。また、経時変化する文字記号は、トレーサビリティを目的にするものに限定されず、製造時期、加工時期、検査時期、賞味期限や消費期限など、何を示す時分等であってもよい。
【0084】
・印字部Pの文字記号は、時刻の時分等を示す数字をアルファベット等の文字に変換したものでもよいし、時刻を示す数字そのものでもよい。また、ワークに印字される文字記号は、年月日・時分等の時期や時間に関する文字記号に限定されず、単位時間(分、時又は日)ごとに変更される文字記号であればよい。また、経時的に変化する文字記号は、文字のみ、数字のみ、記号のみに限らず、数字と文字の組合せ、数字と記号の組合せ、記号と文字の組合せ、数字と記号と文字の組合せでもよい。
【0085】
・時分を表わす3桁の文字記号について1つ(1文字)ずつマッチング処理を行って印字検査したが、複数桁のうち経時変化する一部の桁のみを検査する構成としてもよい。例えば該当単位時マスタ「AAB」、前単位時マスタ「AAA」、次単位時マスタ「AAC」である場合、1桁目の「B」、「A」,「C」のみを検査することとし、該当単位時マスタ「AAJ」、前単位時マスタ「AAI」、次単位時マスタ「ABA」である場合、経時変化する1桁目「J」,「I」と下2桁「BA」について検査すればよい。このように経時変化する複数桁の文字記号のうち該当単位時マスタに対して単位時間の前後で変化する桁のみを検査することにより、検査処理速度を高め、高速な印字検査を実現できる。
【0086】
・ワークの印字部が検査用カメラ22の正面を向くようにコンベヤ11C上を搬送しながらワークを回転させる回転装置を設けてもよい。
・マッチング処理は、パターンマッチング処理に限定されない。
【符号の説明】
【0087】
10…製造ライン、11…搬送装置、11C…コンベヤ、12…印字機、13…印字検査装置、14…排斥装置、15…不良品プール、20…コントローラ、21…ワーク検出センサ、22…撮影部の一例としての検査用カメラ、31…コンピュータ、32…タイミング制御部、40…CPU、41…制御部、42…印字設定部、43…データ登録部、44…画像取得部、45…マスタ更新部、46…検査部、47…異常判定部、48…表示制御部、50…記憶部の一例としてのメモリ、62…マッチング処理部、64…計数部の一例としての一致カウンタ、T1…時計(印字機側)、T2…時計(印字検査装置)、W…ワーク、P…印字部、PI…印字部(画像データ)、PR…プログラム、PP…印字パラメータ、TT…時間テーブル、CD…文字記号データ、IM…検査用マスタ、X…搬送方向。