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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】混練方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 31/29 20220101AFI20221102BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20221102BHJP
   F04B 43/12 20060101ALI20221102BHJP
   C06B 21/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B01F31/29
B01F23/50
F04B43/12 C
C06B21/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018097411
(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公開番号】P2019202247
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】羽生 宏人
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 祥大
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-006090(JP,B1)
【文献】特公昭49-010723(JP,B1)
【文献】特表平07-502688(JP,A)
【文献】特開平10-043564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0123466(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 31/29
B01F 31/55
B01F 23/50
C06B 21/00
F04B 43/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練装置を用いて混合物を混練する混練方法であって、
前記混練装置は、連続する複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントは、それぞれ、筒状の膨縮体を有し、
前記複数のセグメントは、それぞれ、前記膨縮体が内側に膨張変形することで前記膨縮体の内側が実質的に閉塞した閉塞状態と、前記膨縮体が前記閉塞状態よりも外側に変形した開放状態と、の間で作動状態を切替え可能であり、
少なくとも、前記開放状態の前記セグメントの前記膨縮体と当該セグメントに隣接する前記閉塞状態の前記セグメントの前記膨縮体とによって形成される、実質的に封鎖され、前記膨縮体に押圧されることによって圧縮状態とされた前記混合物で満たされた圧縮空間を、前記複数のセグメントの個々の前記作動状態の組合せを変化させることによって繰り返し形成することにより、前記混合物を混練し、
前記圧縮空間を、前記開放状態の少なくとも1つの前記セグメントと、当該少なくとも1つのセグメントの両隣の前記閉塞状態の前記セグメントと、によって形成し、その後に前記圧縮空間を前記混合物の少なくとも一部とともに前記複数のセグメントの間で移動させることにより、前記圧縮空間を、前記開放状態の少なくとも1つの前記セグメントと、当該少なくとも1つのセグメントの一端に隣接する前記閉塞状態の前記セグメントと、当該少なくとも1つのセグメントの他端に配置された閉塞壁と、によって形成する、混練方法。
【請求項2】
前記圧縮空間を前記混合物の少なくとも一部とともに前記複数のセグメントの間で往復させることにより、前記圧縮空間を繰り返し形成する、請求項に記載の混練方法。
【請求項3】
前記複数のセグメントは、それぞれ、前記膨縮体の外側への作動流体の供給によって前記開放状態から前記閉塞状態へと前記作動状態が切替わる一方、前記膨縮体の外側からの前記作動流体の排出によって前記閉塞状態から前記開放状態へと前記作動状態が切替わる、請求項1又は2に記載の混練方法。
【請求項4】
前記複数のセグメントは、それぞれ、前記開放状態から前記閉塞状態へと前記作動状態が切替わることで前記膨縮体の軸方向に収縮する一方、前記閉塞状態から前記開放状態へと前記作動状態が切替わることで前記軸方向に伸長する、請求項1~のいずれか一項に記載の混練方法。
【請求項5】
前記混合物は、液体と当該液体に溶解しない固体とによって構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の混練方法。
【請求項6】
前記固体は、粉末である、請求項に記載の混練方法。
【請求項7】
前記混合物は、火薬である、請求項1~のいずれか一項に記載の混練方法。
【請求項8】
混練装置を用いて混合物を混練する混練方法であって、
前記混練装置は、連続する複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントは、それぞれ、筒状の膨縮体を有し、
前記複数のセグメントは、それぞれ、前記膨縮体が内側に膨張変形することで前記膨縮体の内側が実質的に閉塞した閉塞状態と、前記膨縮体が前記閉塞状態よりも外側に変形した開放状態と、の間で作動状態を切替え可能であり、
少なくとも、前記開放状態の前記セグメントの前記膨縮体と当該セグメントに隣接する前記閉塞状態の前記セグメントの前記膨縮体とによって形成される、実質的に封鎖され、前記膨縮体に押圧されることによって圧縮状態とされた前記混合物で満たされた圧縮空間を、前記複数のセグメントの個々の前記作動状態の組合せを変化させることによって繰り返し形成することにより、前記混合物を混練し、
前記複数のセグメントは、それぞれ、前記開放状態から前記閉塞状態へと前記作動状態が切替わることで前記膨縮体の軸方向に収縮する一方、前記閉塞状態から前記開放状態へと前記作動状態が切替わることで前記軸方向に伸長する、混練方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合物を混練する混練方法として、連続する複数のセグメントを備える混練装置を用いるものが知られている。このような混練装置において、複数のセグメントは、それぞれ、筒状の膨縮体を有している。また、複数のセグメントは、それぞれ、膨縮体が内側に膨張変形することで膨縮体の内側が実質的に閉塞した閉塞状態と、膨縮体が閉塞状態よりも外側に変形した開放状態と、の間で作動状態を切替え可能である。このような混練装置を用いた混練方法は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/056378号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1には、混合物を効果的に混練するための具体的な方法は開示されていない。
【0005】
本発明の目的は、混合物を効果的に混練することができる混練方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る混練方法は、
混練装置を用いて混合物を混練する混練方法であって、
前記混練装置は、連続する複数のセグメントを備え、
前記複数のセグメントは、それぞれ、筒状の膨縮体を有し、
前記複数のセグメントは、それぞれ、前記膨縮体が内側に膨張変形することで前記膨縮体の内側が実質的に閉塞した閉塞状態と、前記膨縮体が前記閉塞状態よりも外側に変形した開放状態と、の間で作動状態を切替え可能であり、
少なくとも、前記開放状態の前記セグメントの前記膨縮体と当該セグメントに隣接する前記閉塞状態の前記セグメントの前記膨縮体とによって形成される、実質的に封鎖され、前記膨縮体に押圧されることによって圧縮状態とされた前記混合物で満たされた圧縮空間を、前記複数のセグメントの個々の前記作動状態の組合せを変化させることによって繰り返し形成することにより、前記混合物を混練するものである。
【0007】
本発明の1つの実施形態として、前記混練方法においては、前記圧縮空間を前記混合物の少なくとも一部とともに前記複数のセグメントの間で移動させることにより、前記圧縮空間を繰り返し形成する。
【0008】
本発明の1つの実施形態として、前記混練方法においては、前記圧縮空間を前記混合物の少なくとも一部とともに前記複数のセグメントの間で往復させることにより、前記圧縮空間を繰り返し形成する。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記混練方法においては、前記圧縮空間を、前記開放状態の少なくとも1つの前記セグメントと、当該少なくとも1つのセグメントの両隣の前記閉塞状態の前記セグメントと、によって形成する。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記混練方法においては、前記圧縮空間を、前記開放状態の少なくとも1つの前記セグメントと、当該少なくとも1つのセグメントの一端に隣接する前記閉塞状態の前記セグメントと、当該少なくとも1つのセグメントの他端に配置された閉塞壁と、によって形成する。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、
前記混練装置は、2つのみの前記セグメントを有し、
前記2つのセグメント全体の両端には、それぞれ、前記閉塞壁が設けられている。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記複数のセグメントは、それぞれ、前記膨縮体の外側への作動流体の供給によって前記開放状態から前記閉塞状態へと前記作動状態が切替わる一方、前記膨縮体の外側からの前記作動流体の排出によって前記閉塞状態から前記開放状態へと前記作動状態が切替わる。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記複数のセグメントは、それぞれ、前記開放状態から前記閉塞状態へと前記作動状態が切替わることで前記膨縮体の軸方向に収縮する一方、前記閉塞状態から前記開放状態へと前記作動状態が切替わることで前記軸方向に伸長する。
【0014】
本発明の1つの実施形態として、前記混合物は、液体と当該液体に溶解しない固体とによって構成されている。
【0015】
本発明の1つの実施形態として、前記固体は、粉末である。
【0016】
本発明の1つの実施形態として、前記混合物は、火薬である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に従う混練方法によれば、混合物を効果的に混練することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る混練方法において用いる混練装置を示す縦断面図である。
図2A図1に示す混練装置を構成する複数のセグメントの1つを示す縦断面図である。
図2B図2Aに示すセグメントにおける内筒及びリングを示す斜視図である。
図2C図2AのA-A線に沿う横断面図である。
図3A図1に示す混練装置を構成する複数のセグメントの1つの他の例を示す縦断面図である。
図3B図3AのB-B線に沿う横断面図である。
図3C図3Aに示すセグメントの斜視図である。
図4A】本発明の第1実施形態に係る混練方法による混練の要領を説明するための縦断面図である。
図4B図4Aの状態から、圧縮空間を混合物の一部とともに1セグメント分前進させたときの状態を示す縦断面図である。
図4C図4Bの状態から、圧縮空間を混合物の一部とともに1セグメント分後退させたときの状態を示す縦断面図である。
図5A】本発明の第2実施形態に係る混練方法による混練の要領を説明するための縦断面図である。
図5B図5Aの状態から、圧縮空間を混合物の一部とともに1セグメント分後退させたときの状態を示す縦断面図である。
図6A】本発明の第3実施形態に係る混練方法による混練の要領を説明するための縦断面図である。
図6B図6Aの状態から、圧縮空間を混合物の一部とともに1セグメント分後退させたときの状態を示す縦断面図である。
図7A】本発明の第4実施形態に係る混練方法による混練の要領を説明するための縦断面図である。
図7B図7Aの状態から、圧縮空間を混合物の一部とともに1セグメント分後退させたときの状態を示す縦断面図である。
図8】本発明の実施例における、ストランド燃焼試験から得られた各サンプルの燃焼速度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の様々な実施形態に係る混練方法について詳細に例示説明する。なお、説明の便宜上、図4A図7Bにおける左から右への移動を前進といい、その反対の移動を後退という。また、図4A図7Bにおける左側の端を一端といい、右側の端を他端という。なお、図4A図7Bにおいて、膨縮体4A及びフランジ7の厚みは、図示を省略している。
【0020】
まず、図1図4Cを参照して、本発明の第1実施形態に係る混練方法について詳細に例示説明する。本実施形態に係る混練方法は、混練装置1Aを用いて混合物2(図4A等参照)を混練する方法である。本実施形態では、混合物2は、液体と当該液体に溶解しない固体とによって構成されている。より具体的には、固体は、粉末である。混合物2は、例えば、ロケットのコンポジット推進薬等の火薬であってもよい。コンポジット推進薬としての混合物2は、例えば、酸化剤としての粉末、金属燃料としての粉末及びバインダとしての液体によって構成することができる。また、可塑剤、硬化剤等を適宜少量添加することができる。混合物2は、セメントや、製麺用の生地等であってもよく、また、これらに限定されない。本実施形態に係る混練方法は、液体と当該液体に溶解しない固体とによって構成された固液混合物の混練に適している。また、本実施形態に係る混練方法は、用いる混練装置が静電気等の誤着火原を生じ難いため、固液混合物としての火薬の混練(捏和)に特に適している。
【0021】
図1に示すように、混練装置1Aは、連続する複数のセグメント3Aを備えている。複数のセグメント3Aは、それぞれ、筒状の膨縮体4Aを有している。また、複数のセグメント3Aは、それぞれ、膨縮体4Aが内側に膨張変形することで膨縮体4Aの内側が実質的に閉塞した閉塞状態と、膨縮体4Aが閉塞状態よりも外側に変形した開放状態と、の間で作動状態を切替え可能である。膨縮体4Aの内側が「実質的に閉塞する」とは、閉塞部を通じた混合物2の流動が防止される程度に閉塞することを意味する。また、後述する、圧縮空間Sが「実質的に封鎖される」とは、封鎖部を通じた混合物2の流動が防止される程度に封鎖されることを意味する。
【0022】
本実施形態では、複数のセグメント3Aは、それぞれ、膨縮体4Aの外側への作動流体5(図2A参照)の供給によって開放状態から閉塞状態へと作動状態が切替わる一方、膨縮体4Aの外側からの作動流体5の排出によって閉塞状態から開放状態へと作動状態が切替わるように構成されている。作動流体5は、例えば、空気若しくは二酸化炭素等の気体、又は、水若しくは油等の液体であってよい。
【0023】
本実施形態では、複数のセグメント3Aは、それぞれ、図2A図2Cに示すような構成を有している。すなわち、本実施形態では、複数のセグメント3Aは、それぞれ、膨縮体4Aと、膨縮体4Aの外側に配置される筒状の外筒6Aと、セグメント3Aの軸方向の両端にそれぞれ配置される円環板状のフランジ7と、膨縮体4Aの外面に取り付けられるリング8と、によって構成されている。外筒6A、フランジ7及びリング8は、本実施形態では、剛体で構成されている。なお、セグメント3Aの軸方向とは、膨縮体4Aの中心軸線Oに沿う方向(すなわち、膨縮体4Aの軸方向)を意味する。また、膨縮体4Aの中心軸線Oを含む断面を縦断面といい、膨縮体4Aの中心軸線Oと直交する断面を横断面という。
【0024】
膨縮体4Aにおける軸方向の両端は、それぞれ、フランジ7の内周縁に、適切な接合手段によって気密且つ液密に固着されている。外筒6Aにおける軸方向の両端は、それぞれ、フランジ7の外周縁に、適切な接合手段によって気密且つ液密に固着されている。したがって、膨縮体4A、外筒6A及び一対のフランジ7により、作動流体5のためのチャンバ9が区画されている。
【0025】
チャンバ9には、混練装置1Aが備える流体給排装置10が接続されている。流体給排装置10によってチャンバ9に作動流体5を供給することができる。また、流体給排装置10によってチャンバ9から作動流体5を排出することができる。流体給排装置10は、複数のセグメント3Aのチャンバ9に対して個々に作動流体5の供給及び排出を制御することができる。流体給排装置10は、複数のセグメント3Aのうちの幾つかに対してまとめて作動流体5の供給及び排出を行ってもよい。流体給排装置10は、例えば、エアコンプレッサ、減圧弁、ON/OFF弁及びプロセッサ(マイコン等)等によって構成することができる。
【0026】
図2Bに示すように、リング8は、膨縮体4Aが挿入される星形状の開口8aを有している。膨縮体4Aは、ゴム又はエラストマー等の弾性体により、円筒状に形成されている。膨縮体4Aがリング8の星形状の開口8aに挿入されることにより、膨縮体4Aは、リング8の開口8aの周縁部に接触する部分において、星形状の横断面形状となる。これにより、膨縮体4Aは、チャンバ9に作動流体5が供給されたときに、図2Cに二点鎖線で示すように、横断面において4方向から内側に安定して膨張変形することができる。このように、膨縮体4Aは、少なくとも、混合物2が膨縮体4Aの内側に入っていないときに、開放状態から閉塞状態に作動状態を切替え可能である。リング8の開口8aの形状は、星形状に限られず、例えば三角形状等の非円形状であってもよい。この場合も、膨縮体4Aは、チャンバ9に作動流体5が供給されたときに、横断面において開口8aの形状に応じた方向から内側に安定して膨張変形することができる。しかし、リング8を設けない構成としてもよい。この場合、膨縮体4Aは、円筒状以外の筒状に形成されていてもよいし、円筒状に形成されていてもよい。膨縮体4Aを円筒状に形成する場合には、膨縮体4Aが内側に膨張変形する際の横断面形状を安定させるために、例えば、軸方向に延在する溝を周方向の複数位置に設けてもよい。この場合にも、膨縮体4Aは、少なくとも、混合物2が膨縮体4Aの内側に入っていないときに、開放状態から閉塞状態に作動状態を切替え可能となる。
【0027】
複数のセグメント3Aは、隣接するセグメント3Aのフランジ7同士が、適切な接合手段によって気密且つ液密に固着されている。したがって、複数のセグメント3A全体の膨縮体4Aの内側には、全てのセグメント3Aが開放状態のときに、複数のセグメント3A全体の長手方向に亘って延在する内側空間が形成される。本実施形態では、内側空間は、複数のセグメント3A全体における長手方向の両端で外部に開放されている。したがって、内側空間の一端から混合物2を導入し、混合物2を内側空間の他端に向けて移動させながら混練し、内側空間の他端から混練後の混合物2を取出すことができる。このように、本実施形態の混練装置1Aによれば、混合物2の混練と搬送とを同時に実現することができる。
【0028】
セグメント3Aの構成は、図2A図2Cに示したものに限られず、例えば、図3A図3Cに示すようなものであってもよい。図3A図3Cに示すセグメント3Bは、膨縮体4Bと、膨縮体4Bの外側に配置される筒状の外筒6Bと、によって構成されている。外筒6Bは、本実施形態では、剛体で構成されている。膨縮体4Bにおける軸方向の両端は、外筒6Bに、適切な接合手段によって気密且つ液密に固着されている。外筒6Bの内面には、全周に亘って連続する周溝11が設けられている。周溝11には、流体給排装置10が接続されている。流体給排装置10により、周溝11を介して、膨縮体4Bの外面と外筒6Bの内面との間に作動流体5を供給することができる。また、流体給排装置10により、周溝11を介して、膨縮体4Bの外面と外筒6Bの内面との間から作動流体5を排出することができる。流体給排装置10は、複数のセグメント3Bに対して個々に作動流体5の供給及び排出を制御することができる。流体給排装置10は、複数のセグメント3Bのうちの幾つかに対してまとめて作動流体5の供給及び排出を行ってもよい。なお、周溝11を設けないで、膨縮体4Bの外面と外筒6Bの内面との間に対して直接、作動流体5の供給及び排出を行うようにしてもよい。
【0029】
外筒6Bは、軸方向に亘って星形状の横断面形状となっている。膨縮体4Bは、ゴム又はエラストマー等の弾性体により、円筒状に形成されている。膨縮体4Bの外面が星形状の外筒6Bの内面に固着又は接触することにより、膨縮体4Bは、軸方向に亘って星形状の横断面形状となる。これにより、膨縮体4Bは、周溝11に作動流体5が供給されたときに、図3Bに二点鎖線で示すように、横断面において4方向から内側に膨張変形することができる。外筒6Bの横断面形状は、星形状に限られず、例えば三角形状等の非円形状であってもよいし、円形状であってもよい。また、膨縮体4Bは、円筒状以外の筒状に形成されていてもよい。
【0030】
複数のセグメント3Bは、隣接するセグメント3Bの外筒6B同士及び膨縮体4B同士が、適切な接合手段によって気密且つ液密に固着されている。したがって、複数のセグメント3B全体の膨縮体4Bの内側には、全てのセグメント3Bが開放状態のときに、複数のセグメント3B全体の長手方向に亘って延在する内側空間が形成される。なお、隣接するセグメント3Bの外筒6B同士及び/又は膨縮体4B同士は、一体に形成されていてもよい。
【0031】
本実施形態では、このような混練装置1Aを用いて、少なくとも、開放状態のセグメント3Aの膨縮体4Aと当該セグメント3Aに隣接する閉塞状態のセグメント3Aの膨縮体4Aとによって(より具体的には、開放状態の少なくとも1つのセグメント3Aと、当該少なくとも1つのセグメント3Aの両隣の閉塞状態のセグメント3Aと、によって)形成される、実質的に封鎖され、膨縮体4Aに押圧されることによって圧縮状態とされた混合物2で満たされた圧縮空間S(図4A参照)を、複数のセグメント3Aの個々の作動状態の組合せを変化させることによって繰り返し形成することにより、混合物2を混練する。
【0032】
すなわち、本実施形態に係る混練方法においては、このような、実質的に封鎖され、膨縮体4Aに押圧されることによって圧縮状態とされた混合物2で満たされた圧縮空間Sが形成されるように、複数のセグメント3A全体の長手方向に亘って延在する内側空間への混合物2の投入量(すなわち、当該内側空間の容積に対する混合物2の体積の比率)を調整することができる。混合物2を当該内側空間に投入する際は、例えば、液体成分と粉末成分とを別々に投入してもよいし、これらを任意の混練装置で予混練して得られたスラリを投入してもよいし、スラリと液体成分とを別々に投入してもよいし、スラリと粉末成分とを別々に投入してもよいし、所定成分のスラリと他の成分のスラリとを別々に投入してもよい。
【0033】
また、本実施形態に係る混練方法においては、圧縮空間Sを混合物2の少なくとも一部とともに複数のセグメント3Aの間で移動させることにより、圧縮空間Sを繰り返し形成する。すなわち、本実施形態に係る混練方法は、図4Bに示すように、圧縮空間Sを混合物2の少なくとも一部とともに複数のセグメント3Aの間で移動させるように、複数のセグメント3Aの個々の作動状態の組合せを変化させる工程を含んでいる。当該工程は、例えば、図4A図4Bに示すように、開放状態の1つのセグメント3Aを閉塞状態にする一方、当該セグメント3Aの他端に位置するセグメント3Aを閉塞状態から開放状態にすることにより、行うことができる。すなわち、一方側のセグメント3Aの圧縮空間Sにおける開放状態の膨縮体4Aを内側に膨張変形させることによって混合物2を押圧し、その際、他方側のセグメント3Aにおける膨縮体4Aを閉塞状態から外側に変形させることにより、一方側から他方側に混合物2が押し込まれるように流動していき、他方側のセグメント3Aに膨縮体4Aで囲まれた空間が形成された状態で、この空間が圧縮状態の混合物2で満たされることになる。
【0034】
また、本実施形態に係る混練方法は、圧縮空間Sを、混合物2の少なくとも一部とともに、複数のセグメント3A全体における長手方向の一端から他端まで移動させるように、複数のセグメント3Aの個々の作動状態の組合せを変化させる工程を含んでいる。
【0035】
本実施形態によれば、少なくとも、開放状態のセグメント3Aの膨縮体4Aと当該セグメント3Aに隣接する閉塞状態のセグメント3Aの膨縮体4Aとによって、実質的に封鎖され圧縮状態の混合物2で満たされた圧縮空間S(図4A参照)を形成することにより、混合物2の流動による混練効果と混合物2の圧縮による混練効果とを同時に得ることができる。このように、混合物2の流動だけでなく圧縮によっても混練を行うことにより、混合物2を構成する液体を、混合物2を構成する固体(粉末)の乾いた部分に効果的に浸透させることができる。したがって、本実施形態に係る混練方法によれば、混合物2が液体に対する粉末の配合比率が高い高粉末配合率の混合物2である場合でも、混合物2の流動及び圧縮による混練により、液体が粉末粒子を包み込んだ均質な可塑性物質又はスラリに変化させることができる。また、本実施形態に係る混練方法によれば、例えばプラネタリミキサを用いた混練方法に比べ、混合物2に加わる剪断力を小さくできるため、混練に際して粉末の破壊が生じ難い。したがって、混練によって発現させるべき混合物2の性質を安定して得ることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る混練方法によれば、圧縮空間Sを混合物2の少なくとも一部とともに複数のセグメント3Aの間で移動させることにより、前述した混合物2の流動による混練効果を高めることができる。
【0037】
また、本実施形態に係る混練方法によれば、圧縮空間Sを混合物2の少なくとも一部とともに、複数のセグメント3A全体における長手方向の一端から他端まで移動させることにより、混合物2の混練と搬送とを同時に実現することができる。
【0038】
本実施形態に係る混練方法においては、圧縮空間Sを混合物2の少なくとも一部とともに複数のセグメント3Aの間で往復させることにより、圧縮空間Sを繰り返し形成してもよい。すなわち、本実施形態に係る混練方法は、図4Cに示すように、圧縮空間Sを混合物2の少なくとも一部とともに複数のセグメント3Aの間で往復させるように、複数のセグメント3Aの個々の作動状態の組合せを変化させる工程を含んでもよい。このような工程によれば、振り子運動によって混合物2の流動を促進することができるので、混合物2の流動による混練効果を高めることができる。
【0039】
次に、図5A図5Bを参照して、本発明の第2実施形態に係る混練方法について詳細に例示説明する。本実施形態で用いられる混練装置1Bは、複数のセグメント3A全体における長手方向の他端に閉塞壁12が設けられている点を除いては、第1実施形態で用いられる混練装置1Aと同様の構成を有している。
【0040】
本実施形態では、混練装置1Bは、図5A図5Bに示すように、連続する複数のセグメント3Aを備えている。そして、複数のセグメント3A全体における長手方向の他端には、円板状の閉塞壁12が適切な接合手段によって気密且つ液密に固着されている。したがって、複数のセグメント3A全体の膨縮体4Aの内側に形成される内側空間は、長手方向の他端において閉塞壁12によって閉塞されている。このような混練装置1Bによれば、内側空間の一端から混合物2を導入し、混合物2を内側空間で移動させながら混練し、内側空間の一端から混練後の混合物2を取出すことができる。セグメント3Aの構成は、第1実施形態の場合と同様に、種々の変更が可能である。
【0041】
このような混練装置1Bを用いる本実施形態に係る混練方法においては、図5Aに示すように、圧縮空間Sを、少なくとも、開放状態のセグメント3Aの膨縮体4Aと当該セグメント3Aに隣接する閉塞状態のセグメント3Aの膨縮体4Aとによって(より具体的には、開放状態の少なくとも1つのセグメント3Aと、当該少なくとも1つのセグメント3Aの一端に隣接する閉塞状態のセグメント3Aと、当該少なくとも1つのセグメント3Aの他端に配置された閉塞壁12と、によって)形成する。
【0042】
また、本実施形態に係る混練方法は、圧縮空間Sを混合物2の少なくとも一部とともに、複数のセグメント3A全体における長手方向の一端から他端まで移動させた後、図5Bに示すように当該他端から当該一端まで移動させるように、複数のセグメント3Aの個々の作動状態の組合せを変化させる工程を含んでいる。
【0043】
本実施形態に係る混練方法によれば、第1実施形態の場合と同様に、混合物2の流動による混練効果と混合物2の圧縮による混練効果とを同時に得ることができる。
【0044】
本実施形態に係る混練方法は、圧縮空間Sを混合物2の少なくとも一部とともに複数のセグメント3A全体における長手方向の一端から他端まで移動させる際に、圧縮空間Sを混合物2の少なくとも一部とともに複数のセグメント3Aの間で往復させるように、複数のセグメント3Aの個々の作動状態の組合せを変化させる工程を含んでもよい。また、本実施形態に係る混練方法は、圧縮空間Sを混合物2の少なくとも一部とともに複数のセグメント3A全体における長手方向の他端から一端まで移動させる際に、圧縮空間Sを混合物2の少なくとも一部とともに複数のセグメント3Aの間で往復させるように、複数のセグメント3Aの個々の作動状態の組合せを変化させる工程を含んでもよい。
【0045】
次に、図6A図6Bを参照して、本発明の第3実施形態に係る混練方法について詳細に例示説明する。本実施形態で用いられる混練装置1Cは、2つのみのセグメント3Aを有し、2つのセグメント3A全体の両端に、それぞれ、閉塞壁12が設けられている点を除いては、第2実施形態で用いられる混練装置1Bと同様の構成を有している。
【0046】
本実施形態では、混練装置1Cは、図6A図6Bに示すように、連続する2つのみのセグメント3Aを備えている。そして、2つのセグメント3A全体における長手方向の両端には、それぞれ、円板状の閉塞壁12が適切な接合手段によって気密且つ液密に固着されている。したがって、2つのセグメント3A全体の膨縮体4Aの内側に形成される内側空間は、長手方向の両端において閉塞壁12によって閉塞されている。本実施形態では、2つの閉塞壁12の一方に、開閉可能な、内側空間に導入する混合物2の導入路を設け、2つの閉塞壁12の他方に、開閉可能な、内側空間から排出する混合物2の排出路を設けてもよい。また、このような導入路及び/又は排出路を、例えば、図2Aに示したフランジ7に設けることができる。導入路及び排出路は、ON/OFF弁及びプロセッサ(マイコン等)等によって開閉制御されてもよい。このような混練装置1Cによれば、内側空間に混合物2を導入し、混合物2を内側空間で移動させながら混練し、内側空間から混練後の混合物2を取出すことができる。セグメント3Aの構成は、第1実施形態の場合と同様に、種々の変更が可能である。
【0047】
このような混練装置1Cを用いる本実施形態に係る混練方法は、図6Aに示すように、圧縮空間Sを、開放状態のセグメント3Aと、当該開放状態のセグメント3Aの一端に隣接する閉塞状態のセグメント3Aと、当該開放状態のセグメント3Aの他端に配置された閉塞壁12と、によって形成する第1工程と、図6Bに示すように、圧縮空間Sを、開放状態のセグメント3Aと、当該開放状態のセグメント3Aの他端に隣接する閉塞状態のセグメント3Aと、当該開放状態のセグメント3Aの一端に配置された閉塞壁12と、によって形成する第2工程と、を交互に繰り返すように、複数のセグメント3Aの個々の作動状態の組合せを変化させる工程を含んでいる。
【0048】
本実施形態に係る混練方法によれば、第1実施形態の場合と同様に、混合物2の流動による混練効果と混合物2の圧縮による混練効果とを同時に得ることができる。また、本実施形態に係る混練方法によれば、振り子運動の繰り返しによって混合物2の流動を促進することができるので、混合物2の流動による混練効果を高めることができる。
【0049】
次に、図7A図7Bを参照して、本発明の第4実施形態に係る混練方法について詳細に例示説明する。本実施形態で用いられる混練装置1Dは、複数(図の例では、2つ)のセグメント3Cが、それぞれ、開放状態から閉塞状態へと作動状態が切替わることで軸方向に収縮する一方、閉塞状態から開放状態へと作動状態が切替わることで軸方向に伸長するように構成されている点を除いては、第3実施形態で用いられる混練装置1Cと同様の構成を有している。
【0050】
本実施形態では、混練装置1Dは、図7A図7Bに示すように、連続する2つのみのセグメント3Cを備えている。そして、2つのセグメント3C全体における長手方向の両端には、それぞれ、円板状の閉塞壁12が適切な接合手段によって気密且つ液密に固着されている。したがって、2つのセグメント3C全体の膨縮体4Cの内側に形成される内側空間は、長手方向の両端において閉塞壁12によって閉塞されている。セグメント3Cの構成は、第1実施形態の場合と同様に、種々の変更が可能である。
【0051】
そして、本実施形態では、2つのセグメント3Cは、それぞれ、外筒6Cが、それぞれ、軸方向に延在する複数の繊維コードが埋設された軸方向繊維強化型の弾性筒状体によって構成され、膨縮体4Cが、第1~第3実施形態の場合と同様に繊維コードが埋設されていない弾性筒状体によって構成されている。しかし、例えば、外筒6Cと膨縮体4Cの両方を軸方向繊維強化型の弾性筒状体によって構成してもよい。このような構成により、2つのセグメント3Cは、それぞれ、開放状態から閉塞状態へと作動状態が切替わることで軸方向に収縮する一方、閉塞状態から開放状態へと作動状態が切替わることで軸方向に伸長することができる。なお、外筒6Cを、このような軸方向繊維強化型の弾性筒状体に代えて、弾性筒状体の外側がスリーブ状に編み込まれた繊維コードで覆われた、いわゆるマッキベン型人工筋肉のようなスリーブ状繊維強化型の弾性筒状体によって構成してもよい。
【0052】
このような混練装置1Dを用いる本実施形態に係る混練方法は、図7Aに示すように、圧縮空間Sを、開放状態のセグメント3Cと、当該開放状態のセグメント3Cの一端に隣接する閉塞状態のセグメント3Cと、当該開放状態のセグメント3Cの他端に配置された閉塞壁12と、によって形成する第1工程と、図7Bに示すように、圧縮空間Sを、開放状態のセグメント3Cと、当該開放状態のセグメント3Cの他端に隣接する閉塞状態のセグメント3Cと、当該開放状態のセグメント3Cの一端に配置された閉塞壁12と、によって形成する第2工程と、を交互に繰り返すように、複数のセグメント3Cの個々の作動状態の組合せを変化させる工程を含んでいる。
【0053】
本実施形態に係る混練方法によれば、第1実施形態の場合と同様に、混合物2の流動による混練効果と混合物2の圧縮による混練効果とを同時に得ることができる。また、本実施形態に係る混練方法によれば、振り子運動の繰り返しによって混合物2の流動を促進することができるので、混合物2の流動による混練効果を高めることができる。また、本実施形態に係る混練方法によれば、開放状態のセグメント3Cが閉塞状態に切替わる際に、当該セグメント3Cの膨縮体4Cが内側に膨張変形しながら軸方向に収縮するため、混合物2を軸方向に強く押し出すことができる。したがって、混合物2の流動を促進して混練効果を高めることができる。
【0054】
なお、前述した第1~第3実施形態においても、本実施形態のように、複数のセグメント3Aの全部又は一部を、それぞれ、開放状態から閉塞状態へと作動状態が切替わることで軸方向に収縮する一方、閉塞状態から開放状態へと作動状態が切替わることで軸方向に伸長するように構成してもよい。
【0055】
前記の説明は、本発明の実施形態の一例を示したものにすぎず、発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【0056】
例えば、第1~第4実施形態において、閉塞壁及び/又はフランジ等に、混合物2の混練の進行に伴って粉末間の微小隙間から混合物の外側に徐々に抜け出す僅かな空気を、混練装置の外部に排出する空気排出路を設けてもよい。
【実施例
【0057】
本発明の実施例として、前述した第4実施形態で用いる混練装置1Dと同様の構成の混練装置を製作し、コンポジット推進薬の捏和を行い、捏和後のコンポジット推進薬の性能を評価した。
【0058】
捏和の対象とした混合物は、ロケットのコンポジット推進薬とした。その成分は、酸化剤としてのAP粉末(ammonium perchlorate、過塩素酸アンモニウム)、金属燃料としてのAl粉末(aluminium、アルミニウム)、液体状バインダとしてのHTPB(Hydroxyl Terminated Polybutadiene、末端水酸基ポリブタジエン)、液体状可塑剤としてのDOA(Dioctyl adipate、アジピン酸ジオクチル)及び液体状硬化剤としてのIPDI(Isophorone diisocyanate、イソホロンジイソシアネート)とした。また、その配合比率(質量比)は、AP:Al:HTPB:DOA:IPDI=68:18:12:1:1とした。AP粉末は、日本カーリット製で粒径400μm、200μm、50μmの混合物を使用した。Al粉末は、東洋アルミニウム製のTFH-A05P(メディアン径5μm)を使用した。HTPBは、JSR製のP-41を使用した。Al粉末、HTPB、DOA、IPDIは、AP粉末を混合する前にプラネタリミキサで予捏和した。
【0059】
製作した混練装置は、膨縮体の軸方向の長さを90mmとし、膨縮体の内径をφ60mmとした。2つのセグメントの間に予捏和スラリとAP粉末の投入口を備えたアクリル樹脂製のリング状のディスク(厚さ10mm)を挟んだ。セグメントのフランジ(厚さ10mm)に80℃の温水を流し、内部を加温した。混練装置には、膨縮体の外側に圧縮空気を供給口からレギュレータ・電磁弁を通じて供給した。
【0060】
2つのセグメントの作動状態を同時に切替え(すなわち、作動流体を一方のセグメントに供給すると同時に他方のセグメントから排出し)、その作動間隔は2秒とした。印加圧縮空気圧は60kPaとした。そして、混練装置の内側空間の容積に対し、捏和効果に最適な混合物の投入量(仕込み量)を探るために、仕込み量をパラメータとして500gから50gステップで3水準設定した。設定した3つの仕込み量(500g、550g、600g)のいずれの場合においても、まず、予捏和スラリを混練装置内に投入し、混練装置を5分間作動させて装置内部に予捏和スラリを分散させた。次にAP粉末を投入し、設定した捏和時間(30分、40分、60分、80分)で装置を作動させた。得られた推進薬スラリは注型後1時間程度減圧下で脱泡を行い、常圧の60℃雰囲気の恒温槽で1週間硬化させた。
【0061】
硬化させた推進薬はX線非破壊検査で内部を確認した上で、ストランド燃焼試験を行った。ストランド燃焼試験では、当該硬化させた推進薬を、7mm×7mm×40mmの角柱形に切り出し、表面をエポキシ樹脂でレストリクタ処理し、窒素ガス加圧下で燃焼させた。推進薬中央部20mmの燃焼速度を画像解析から算出した。
【0062】
試料仕込み量をパラメータに60分捏和を行った推進薬サンプルの比較を行った。仕込み量500gの場合、X線透過画像でボイドが複数存在していることを確認した。捏和が不十分であった可能性がある。600gの場合、捏和後の混合不十分な状態が視認された。また、各仕込み量に対して9サンプルずつ、3~7MPaの範囲でストランド燃焼試験を行った。表1に、仕込み量をパラメータとした、サンプル燃焼速度の圧力指数n及び相関係数R2を示す。550gの場合、圧力指数n及び相関係数R2に問題がないことが確認された。これらの結果から、当該装置のスケールでは仕込み量は550gが適当であり、500g及び600gでは不適当であると判断される。実験で用いた装置では、仕込み量が約540gを越える時に「実質的に封鎖され、膨縮体に押圧されることによって圧縮状態とされた混合物で満たされた圧縮空間」が形成されることが計算上確認されており、これは上記の実験結果と整合している。仕込み量が500gの場合には、開放状態のセグメントが閉塞状態に切替わったときに形成される閉鎖空間が混合物で満たされていないため、膨縮体と混合物との間に介在する空気により、膨縮体の押圧による混合物の圧縮効果が十分に得られなかったと推測される。また、仕込み量が600gの場合には、開放状態のセグメントが閉塞状態に切替わることができず、混合物の十分な流動が得られなかったと推測される。
【表1】
【0063】
次に、仕込み量550gとして捏和時間をパラメータとした場合、捏和時間30分の試料のみX線透過画像で複数のボイドが確認された。また、捏和時間80分の場合、捏和後、既に硬化が進んでおり、スラリの流動性低下が確認された。図8にストランド燃焼試験から得られた各サンプルの燃焼速度特性を示す。なお、図8において、近似直線は、30分及び60分が実線で示され、40分及び80分が破線で示されている。各サンプルの近似直線との相関係数R2と、5MPaにおける換算燃焼速度とは、表2のようになった。捏和時間40分、60分ともに相関係数R2及び換算燃焼速度はいずれも同等であり捏和は十分であった。
【表2】
【0064】
このように抽出した混練装置の使用条件(仕込み量550g、捏和時間40分)で推進薬を捏和し、φ80mm固体ロケットモータ用グレインを試作した。燃焼試験を実施したところ、平均内圧5.48MPaで燃焼したことを確認した。
【符号の説明】
【0065】
1A、1B、1C、1D 混練装置
2 混合物
3A、3B、3C セグメント
4A、4B、4C 膨縮体
5 作動流体
6A、6B、6C 外筒
7 フランジ
8 リング
8a 開口
9 チャンバ
10 流体給排装置
11 周溝
12 閉塞壁
O 中心軸線
S 圧縮空間
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8