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特許7168957床面表示フィルム及びその製造方法並びに該床面表示フィルムを備える車両用床面表示フィルム
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  • 特許-床面表示フィルム及びその製造方法並びに該床面表示フィルムを備える車両用床面表示フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】床面表示フィルム及びその製造方法並びに該床面表示フィルムを備える車両用床面表示フィルム
(51)【国際特許分類】
   G09F 19/22 20060101AFI20221102BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221102BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20221102BHJP
   G09F 21/04 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G09F19/22 H
B32B27/00 E
B41M3/00 Z
G09F21/04 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018211051
(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公開番号】P2020076902
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390014487
【氏名又は名称】住江織物株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴山 誉宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一馬
【審査官】富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-026764(JP,A)
【文献】特開2007-210309(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008917(WO,A1)
【文献】実開平05-003502(JP,U)
【文献】特開2015-148794(JP,A)
【文献】特開2017-164905(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146644(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 19/00-27/00
B32B 1/00-43/00
B41M 1/00-3/18、7/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面フィルム層と、該表面フィルム層の下面側に印刷層と、該印刷層の下面側に第1粘着樹脂層と、を備えた床面表示フィルムであって、
前記印刷層は第1印刷層と、該第1印刷層の下面側に第2印刷層からなり、
前記表面フィルム層の印刷層側のぬれ指数が55以上~70以下であり、
前記第1印刷層と前記第2印刷層とが同じアクリル系樹脂で形成されており、
前記第1印刷層と前記第2印刷層はUVインクジェット印刷で印刷された層であり、
前記第1印刷層に含まれる顔料を含むインクの含有率が0%以上~1%以下であり、
前記第2印刷層は顔料を含むインクを含有し、かつ、有色であることを特徴とする床面表示フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の床面表示フィルムの下面側にアルミフィルム層と、該アルミフィルム層の下面側に第2粘着樹脂層と、を備えた車両用床面表示フィルム
【請求項3】
表面フィルムを加熱処理する第1工程と、
前記加熱処理を経て得られた表面フィルムの加熱処理面にコロナ処理する第2工程と、
前記コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面に第1印刷層をUVインクジェット印刷で印刷する第3工程と、
前記第1印刷層を印刷した表面フィルムの第1印刷層面側に第2印刷層をUVインクジェット印刷で印刷する第4工程と、を含み、
前記第1印刷層と前記第2印刷層とが同じアクリル系樹脂で形成されており、第2工程で前記コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面側のぬれ指数が55以上~70以下であり、
前記第1印刷層に用いられるインク溶液に含まれる顔料を含むインクの含有率が0%以上~1%以下であり、
前記第2印刷層に用いられるインク溶液には顔料を含むインクを含むことを特徴とする床面表示フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄道、バス等の床面表示フィルムとして好適に用いられる床面表示フィルム及び該床面表示フィルムを備える車両用床面表示フィルムに関する。
【0002】
また、本明細書及び特許請求の範囲において、「ぬれ指数」の語は、JIS K 6768-1999に準拠して、ぬれ張力試験混合液(30mN/m~73mN/m)を用いて、綿棒にぬれ張力試験混合液を含浸させ、加熱処理及びコロナ処理を行った表面フィルム層の表面に横方向1回だけ塗布し、判定は、試薬を塗布したのち2秒経過した時点での液膜の中央部の状態で判定する。塗布した液膜が破れを生じないでもとの状態を維持しているとき、「ぬれている」と判定し、破れが生じているときは「ぬれていない」と判定する。ぬれ張力試験混合液のぬれ指数(ダイン数)を意味する。
【背景技術】
【0003】
従来、鉄道、バス等の車両の床材としては、難燃性、耐摩耗性、耐熱性に優れることから、可塑剤を多量に含有せしめた塩化ビニル樹脂(PVC)からなる床材が多く採用されている。
【0004】
しかしながら、PVC製床材は、燃焼時において多量の発煙と共に塩化水素等の有害ガスを発生することから、火災時において避難者が有害ガスを吸入してしまう防災上の問題、また焼却廃棄処理によって環境汚染をもたらすという問題がある。また、PVC製床材は、可塑剤を多量に含有しているので、特有の臭気があり、このような可塑剤による臭気はシックハウス症候群の原因の1つとも言われている。また、長年の使用により可塑剤が揮発減量し床材としての柔軟性が低下するという問題や、長年の使用により可塑剤が表面にブリードしてきて曇りを生じやすく外観体裁が悪くなるという問題もあり、PVC材料に代えて、燃焼時に有害ガスの発生が少ないオレフィン系床材が開発されている。
【0005】
近年、ユーザーの要望の多様化により鉄道、バス等の車両の窓や壁などに表示フィルムが貼られており、様々な表示フィルムが開発されている。
【0006】
なお、出願人は特許文献1を出願しており、表面フィルム層と、該表面フィルム層の下面側に印刷層と、該印刷層の下面側に中間粘着樹脂層と、該中間粘着樹脂層の下面側にアルミフィルム層と、該アルミフィルム層の下面側に裏面粘着樹脂層を積層し、前記表面フィルム層は、ポリオレフィン系樹脂と、前記水素化石油樹脂と、スチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーと、を含み、前記表面フィルム層における前記水素化石油樹脂の含有率が3%~20%であり、前記表面フィルム層の破断応力が20MPa以上であり、前記表面フィルム層の引張弾性率が100MPa~700MPaであることを特徴とする車両用床表示フィルムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-91975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1ではスクリーン印刷において、表面フィルム層の透明性に優れ、鉄道車両等の過酷な使用環境で使用しても耐えうる強度を保持し、表面フィルム層と印刷層との密着性に優れた効果を発揮する。しかしながら、スクリーン印刷では、色数が限られてしまい、小ロットでの生産対応などが難しい問題がある。そこで、色数も多く、小ロットでも対応可能なUVインクジェット印刷での床面表示フィルムの開発が求められている。
【0009】
本発明は、かかる技術的背景を鑑みてなされたものであって、UVインクジェット印刷でも、表面フィルム層と印刷層との密着性に優れる床面表示フィルム及びその製造方法を提供することが目的である。また、床面表示フィルムを備える車両用床面表示フィルムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1] 表面フィルム層と、該表面フィルム層の下面側に印刷層と、該印刷層の下面側に第1粘着樹脂層と、を備えた床面表示フィルムであって、
前記印刷層は第1印刷層と、該第1印刷層の下面側に第2印刷層からなり、
前記表面フィルム層の印刷層側のぬれ指数が55~70であり、
前記第1印刷層と前記第2印刷層とが同じアクリル系樹脂で形成されており、
前記第1印刷層と前記第2印刷層はUVインクジェット印刷で印刷された層であり、
前記第1印刷層に含まれる顔料を含むインクの含有率が0%~1%以下であり、
前記第2印刷層は顔料を含むインクを含有し、かつ、有色であることを特徴とする床面表示フィルム。
【0014】
[2] 前項1に記載の床面表示フィルムの下面側にアルミフィルム層と、該アルミフィルム層の下面側に第2粘着樹脂層と、を備えた車両用床面表示フィルム。
【0015】
[3]表面フィルムを加熱処理する第1工程と、
前記加熱処理を経て得られた表面フィルムの加熱処理面にコロナ処理する第2工程と、
前記コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面に第1印刷層をUVインクジェット印刷で印刷する第3工程と、
前記第1印刷層を印刷した表面フィルムの第1印刷層面側に第2印刷層をUVインクジェット印刷で印刷する第4工程と、を含み、
前記第1印刷層と前記第2印刷層とが同じアクリル系樹脂で形成されており、
第2工程で前記コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面側のぬれ指数が55以上~70以下であり、
前記第1印刷層に用いられるインク溶液に含まれる顔料を含むインクの含有率が0%以上~1%以下であり、
前記第2印刷層に用いられるインク溶液には顔料を含むインクを含むことを特徴とする床面表示フィルムの製造方法。




【発明の効果】
【0016】
[1]の発明では、表面フィルム層と、表面フィルム層の下面側に印刷層と、印刷層の下面側に第1粘着樹脂層と、を備えた床面表示フィルムであって、印刷層は第1印刷層と、第1印刷層の下面側に第2印刷層からなり、表面フィルム層の印刷層側のぬれ指数が55~70であり、第1印刷層に含まれる顔料を含むインクの含有率が0%~1%以下であり、第2印刷層は有色であるから、表面フィルム層と印刷層との密着性に優れた床面表示フィルムを提供することができる。
【0017】
[2]の発明では、第1印刷層及び第2印刷層はUVインクジェット印刷で印刷された層であるから、UVインクジェット印刷でも、表面フィルム層と印刷層との密着性に優れることができる。
【0018】
[3]の発明では、第1印刷層及び第2印刷層を形成する合成樹脂はアクリル系樹脂であるから、表面フィルム層と印刷層との密着性を向上させることができる。
【0019】
[4]の発明では、前項1~3のいずれか1項の床面表示フィルムの下面側にアルミフィルム層と、アルミフィルム層の下面側に第2粘着樹脂層と、を備えた車両用床面表示フィルムであるから、鉄道車両に求められる燃焼性に優れた車両用床面表示フィルムを提供することができる。
【0020】
[5]の発明では、表面フィルムを加熱処理する第1工程と、加熱処理を経て得られた表面フィルムの加熱処理面にコロナ処理する第2工程と、コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面に第1印刷層をUVインクジェット印刷で印刷する第3工程と、第1印刷層を印刷した表面フィルムの第1印刷層面側に第2印刷層をUVインクジェット印刷で印刷する第4工程とを含み、第2工程でコロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面側のぬれ指数が55~70であり、第1印刷層に用いられるインク溶液に含まれる顔料を含むインクの含有率が0%~1%以下であり、第2印刷層に用いられるインク溶液には顔料を含むインクを含むから、UVインクジェット印刷でも、表面フィルム層と印刷層との密着性に優れた床面表示フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る床面表示フィルムの一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る車両用床面表示フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る床面表示フィルムの一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の床面表示フィルム1は、表面フィルム層2と、該表面フィルム層2の下面側に印刷層3と、該印刷層3の下面側に第1粘着樹脂層4と、を備えた床面表示フィルムであって、前記印刷層3は第1印刷層5と、該第1印刷層5の下面側に第2印刷層6からなり、前記表面フィルム層2の印刷層側のぬれ指数が55~70であり、前記第1印刷層5に含まれる顔料を含むインクの含有率が0%~1%以下であり、前記第2印刷層6は有色であることを特徴とする。なお、図1には、製造時には必要な離形紙は省略している。
【0023】
床面表示フィルム1は、上から表面フィルム層2と、該表面フィルム層2の下面側に印刷層3と、該印刷層3の下面側に第1粘着樹脂層4と、を備えていることが必要である。
【0024】
前記表面フィルム層2を構成する樹脂としては、ポリウレタン系樹脂であることが好ましい。表面フィルム層2は印刷層3を保護することができる。
【0025】
前記表面フィルム層2の厚みとしては、0.3mm~1.5mmであることが好ましい。
【0026】
前記表面フィルム層2の表面には、エンボス加工された凹凸表面であっても構わない。
【0027】
前記表面フィルム層2には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、熱安定剤、難燃剤、耐候剤、着色剤、帯電防止剤、充填剤等の各種添加剤を適宜含有せしめてもよい。
【0028】
前記表面フィルム層2の印刷層側のぬれ指数が55~70であることが必要である。55未満では表面フィルム層2と印刷層3との密着性が悪くなり、70を超えても生産性が悪くなる。中でも、60~70であることが好ましい。前記表面フィルム層2の印刷層側とは、表面フィルム層2の最表面側ではなく、表面フィルム層2と印刷層3とが接着している側、すなわち表面フィルム層2の下面側のことを意味している。
【0029】
前記印刷層3は、第1印刷層5と、該第1印刷層5の下面側に第2印刷層6からなる必要がある。前記印刷層3は2層で構成されている必要があり、第1印刷層5及び第2印刷層6はUVインクジェット印刷で印刷された層である必要がある。前記印刷層3を備えているため、床面表示フィルム1に意匠性を付与させることができる。なお、UVインクジェット印刷とは、液状のUV硬化型インク溶液を基材に吹きつけ、UV光(紫外線)を照射し、瞬時にインク溶液を硬化させる印刷方式のことを意味する。
【0030】
前記第1印刷層5は表面フィルム層2と第2印刷層6との密着性を向上させるための層であり、前記第2印刷層6は意匠性を付与するための層である。
【0031】
床面表示フィルム1の場合、前記第1粘着樹脂層4は、床面と床面表示フィルム1との接着のために用いられる。
【0032】
車両用床面表示フィルム7は、上から表面フィルム層2と、該表面フィルム層2の下面側に印刷層3と、該印刷層3の下面側に第1粘着樹脂層4と、該第1粘着樹脂層4の下面側にアルミフィルム層8と、該アルミフィルム層8の下面側に第2粘着樹脂層9を備えていることが必要である。
【0033】
前記第1粘着樹脂層4及び前記第2粘着樹脂層9に用いられる樹脂成分としては同じ樹脂を用いることが好ましい。車両用床面表示フィルム7の場合、前記第1粘着樹脂層4は印刷層3とアルミフィルム層8との接着のために用いられ、前記第2粘着樹脂層9は床面と車両用床面表示フィルム7との接着のために用いられる。
【0034】
前記第1粘着樹脂層4及び前記第2粘着樹脂層9を構成する樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、天然ゴム系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂が挙げられる。中でもアクリル系樹脂を用いることが、粘着力が強く、また凝集力も強い点で、好ましい。
【0035】
前記第1粘着樹脂層4の形成量(乾燥後)及び前記第2粘着樹脂層9の形成量(乾燥後)としては、35g/m~135g/mであることが好ましい。
【0036】
前記アルミフィルム層8としては、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミ箔、アルミシートであることが好ましい。この場合、車両の施工床面の細かな凹凸への追従性が向上すると共に、かつ、鉄道車両に求められる燃焼性にも優れることができる。
【0037】
前記第1印刷層5に含まれる顔料を含むインクの含有率が0%~1%以下である必要がある。前記第1印刷層5には顔料を含むインクの含有率が0%、すなわち、顔料を含むインクの含有率を含んでいないことが最も好ましく、顔料を含むインクを含んでいない第1印刷層5の色は無色となる。顔料を含むインクの含有率は多くても1%以下である必要がある。第1印刷層5は、UVインクジェット印刷に用いられる顔料を含むインクの含有率が0%~1%以下であるため、表面フィルム層2との密着性を向上させることができる。第1印刷層5にUVインクジェット印刷に用いられる顔料を含むインクの含有率が1%を超えていると、表面フィルム層2と第1印刷層5との密着性が悪くなる。前記第1印刷層5には、顔料を含むインクが0%~1%含まれ、顔料を含まないインクが99%~100%含まれている。
【0038】
前記第2印刷層6は有色である必要がある。なお、有色とは色がついていることを意味する。前記第2印刷層6に含まれる顔料を含むインクの含有率は意匠性を付与できる範囲であれば特に限定されるものではない。第2印刷層6にUVインクジェット印刷に用いられる顔料を含むインクが含んでいることで、床面表示フィルム1及び車両用床面表示フィルム7に意匠性を付与することができる。また、第1印刷層5と第2印刷層6とが同じ合成樹脂で形成されていることで、第1印刷層5と第2印刷層6との密着性を向上させることができる。前記第2印刷層6には、顔料を含むインクと、顔料を含まないインクとが含まれている。
【0039】
前記顔料を含むインクとは、UVインクジェット印刷で印刷した際、色をつけることができる材料のことを意味し、例えば、シアン、ライトシアン、マゼンタ、イエロー等が挙げられる。前記顔料とは、カーボンブラック、ピグメントイエロー、銅フタロシアニン顔料、酸化チタン等が挙げられる。前記顔料を含まないインクとは、メジュームインクのことを意味する。
【0040】
前記第1印刷層5を形成する合成樹脂は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、中でも、アクリル系樹脂であることがより好ましい。アクリル系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
【0041】
前記第2印刷層6を形成する合成樹脂は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、中でも、アクリル系樹脂であることがより好ましい。アクリル系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
【0042】
本発明に係る床面表示フィルム1の製造方法としては、表面フィルムを加熱処理する第1工程と、前記加熱処理を経て得られた表面フィルムの加熱処理面にコロナ処理する第2工程と、前記コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面に第1印刷層5をUVインクジェット印刷で印刷する第3工程と、前記第1印刷層5を印刷した表面フィルムの第1印刷層面側に第2印刷層6をUVインクジェット印刷で印刷する第4工程と、を含み、第2工程で前記コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面側のぬれ指数が55~70であり、前記第1印刷層5に用いられるインク溶液に含まれる顔料を含むインクの含有率が0%~1%以下であり、前記第2印刷層6に用いられるインク溶液には顔料を含むインクを含むことを特徴とする。
【0043】
前記第1工程では、表面フィルムを加熱処理することが必要である。加熱処理する温度としては100℃~160℃であることが好ましい。100℃以上であることでコロナ処理前に効果的に加熱することができ、160℃以下であることで表面フィルムの溶融を抑制することができる。
【0044】
表面フィルムを加熱処理する装置としては、特に限定されるものではないが、オーブン、遠赤外線ヒーター、ドラムヒーター等が挙げられ、中でも、遠赤外線ヒーターとドラムヒーターで加熱処理することが好ましい。
【0045】
前記第2工程では、前記加熱処理を経て得られた表面フィルムの加熱処理面にコロナ処理することが必要である。コロナ処理は加熱処理した後に、コロナ処理を行う必要があり、加熱処理した表面フィルムの加熱処理した面にコロナ処理を行う必要がある。コロナ処理とは、プラスチック、紙、金属箔などの処理基材表面をコロナ放電照射により改質させる表面処理のことを意味する。
【0046】
表面フィルムをコロナ処理する装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、コロナ表面処理装置等を用いて行うことができる。
【0047】
前記第2工程で、前記コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面側のぬれ指数が55~70である必要がある。55未満では表面フィルム層2と印刷層3との密着性が悪くなり、70を超えても生産性が悪くなる。中でも、60~70であることが好ましい。
【0048】
前記第3工程では、前記コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面にUVインクジェット印刷で第1印刷層5を印刷することが必要である。表面フィルムの加熱処理面とコロナ処理面と第1印刷層5を印刷する面とは、すべて同じ面である必要がある。表面フィルムに加熱処理し、コロナ処理した後に、最後に第1印刷層5をUVインクジェット印刷で印刷する順番依存性もある。
【0049】
前記第1印刷層5に用いられるインク溶液に含まれる顔料を含むインクの含有率が0%~1%以下であることが必要である。前記第1印刷層5に用いられるインク溶液には顔料を含むインクの含有率が0%、すなわち、顔料を含むインクを含んでいないことが最も好ましく、顔料を含むインクを含んでいない第1印刷層5の色は無色となる。顔料を含むインクを含んでいたとしても、多くても1%以下である必要がある。第1印刷層5に用いられるインク溶液に含まれる顔料を含むインクの含有率が0%~1%以下であるため、表面フィルム層2との密着性を向上させることができる。第1印刷層5のUVインクジェット印刷に用いられるインク溶液に含まれる顔料を含むインクの含有率が1%を超えていると、表面フィルム層2と第1印刷層5との密着性が悪くなる。前記第1印刷層5のUVインクジェット印刷に用いられるインク溶液には、顔料を含むインクが0%~1%含まれ、顔料を含まないインクが99%~100%含まれている。
【0050】
前記第4工程では、前記第1印刷層5を印刷した表面フィルムの第1印刷層面側に第2印刷層6をUVインクジェット印刷で印刷することが必要である。表面フィルムの加熱処理面とコロナ処理面と第1印刷層5を印刷する面と第2印刷層6を印刷する面は、すべて同じ面である必要がある。表面フィルムに加熱処理し、コロナ処理した後に、第1印刷層5をUVインクジェット印刷で印刷し、最後に第2印刷層6をUVインクジェット印刷で印刷する順番依存性もある。
【0051】
前記第2印刷層6に用いられるインク溶液には顔料を含むインクを含んでいることが必要である。前記第2印刷層6に用いられるインク溶液に含まれる顔料を含むインクの含有率は意匠性を付与できる範囲であれば特に限定されるものではない。第2印刷層6には、UVインクジェット印刷に用いられる顔料を含むインクが含んでいることで意匠性を付与することができる。また、第1印刷層5と第2印刷層6とが同じ合成樹脂で形成されていることで、第1印刷層5と第2印刷層6との密着性を向上させることができる。前記第2印刷層6のUVインクジェット印刷に用いられるインク溶液には、顔料を含むインクと、顔料を含まないインクとが含まれている。
【0052】
前記第2印刷層6をUVインクジェット印刷で印刷した後の本発明に係る床面表示フィルム1及び車両用床面表示フィルム7の製造方法としては、特に限定されず、例えば、カレンダー加工機、押出加工機等の公知の装置やホットラミネート加工機、プレス貼合せ等の公知の積層技術を用いて積層することにより製造することができる。また、その積層順序も特に限定されない。
【0053】
このように、床面表示フィルム1及び車両用床面表示フィルム7は、意匠性の付与、誘導情報、利用区分情報、広告、宣伝等の情報を表示することができるので、乗客に効果的に伝えることができる。
【実施例
【0054】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0055】
<実施例1>
第1工程では、表面フィルム(ポリウレタン樹脂、厚み0.35mm)の片面側を遠赤外線ヒーター及びドラムヒーターで加熱処理(150℃×2分)を行った。次に、第2工程では、加熱処理を経て得られた表面フィルムの加熱処理面にコロナ表面処理装置(春日電機社製)を用いて(放電量625w・min/m)でコロナ処理を行った。なお、コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面側のぬれ指数が65であった。次に、第3工程では、コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面にUVインクジェット印刷機(FUJIFILM社製)を用いて、顔料を含むインクの含有率が0%、すなわち顔料を含むインクを含まないインク溶液を塗布した後、UV照射でインク溶液を硬化させ、表面フィルムのコロナ処理面に第1印刷層を印刷した。なお、第1印刷層は無色透明であった。次に、第1印刷層を印刷した表面フィルムの第1印刷層面側に第2印刷層にUVインクジェット印刷(FUJIFILM社製)を用いて顔料を含むインクを含むインク溶液を塗布した後、UV照射でインク溶液を硬化させ、表面フィルムの第1印刷層面側に第2印刷層を印刷し、上から表面フィルム層、第1印刷層、第2印刷層が積層された第1積層体を得た。なお、第2印刷層は有色で、色がついていた。次に、第1積層体の第2印刷層の下面側に第1粘着樹脂(アクリル系2液硬化型の樹脂)を塗布して、第1粘着樹脂の塗布面に離形紙を貼り合せて、図1に示す総厚0.5mmの床面表示フィルム1を得た。なお、図1には、製造時には必要な離形紙は省略している。
【0056】
<実施例2>
第1印刷層に用いられるインク溶液に含まれる顔料を含むインクの含有率が0.5%であるインク溶液を用い、コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面側のぬれ指数が56になるようにコロナ処理の放電量を625w・min/mから200w・min/mに変更した以外は、実施例1と同様にして、床面表示フィルム1を得た。
【0057】
<比較例1>
第1工程は行っただけで、第2工程も行わない、第3工程も行わない設定にした以外は、実施例1と同様にして、床面表示フィルムを得た。
【0058】
<比較例2>
第1工程は行わない、第2工程だけ行い、第3工程も行わない設定にした以外は、実施例1と同様にして、床面表示フィルムを得た。
【0059】
<比較例3>
第1工程は行わない、第2工程も行わない、第3工程だけ行う設定にした以外は、実施例1と同様にして、床面表示フィルムを得た。
【0060】
<比較例4>
第1工程は行い、第2工程も行い、第3工程だけ行わない設定にした以外は、実施例1と同様にして、床面表示フィルムを得た。
【0061】
<比較例5>
第1工程は行い、第2工程は行わない、第3工程は行う設定にした以外は、実施例1と同様にして、床面表示フィルムを得た。
【0062】
<比較例6>
第1工程は行わない、第2工程は行い、第3工程も行い、コロナ処理を経て得られた表面フィルムのコロナ処理面側のぬれ指数が50になるようにコロナ処理の放電量を625w・min/mから100w・min/mに変更する設定にした以外は、実施例1と同様にして、床面表示フィルムを得た。
【0063】
<比較例7>
第1印刷層に用いられるインク溶液として、顔料を含むインクの含有率が3%であるインク溶液を用い、第2印刷層に用いられるインク溶液には顔料を含むインクを含まない設定にした以外は、実施例1と同様にして、床面表示フィルムを得た。
【0064】
【表1】
【0065】
上記のようにして得られた各床面表示フィルムに対して、別工程でアルミフィルム(厚み0.05mm)の上面に第2粘着樹脂を塗布し、第2粘着樹脂を塗布した面に離形紙を貼り合せて、粘着アルミフィルム積層体を得た。次に、実施例1~2、比較例1~7で作成した床面表示フィルムの第1粘着樹脂層側と、別工程で作成した粘着アルミフィルム積層体のアルミフィルム側とを、貼り合せて、実施例1~2、比較例1~7の車両用床面表示フィルム7を得た。次に、下記評価方法に基づいて評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0066】
<剥離強度評価法(常態)>
表面フィルム層と印刷層の密着性を、JIS K 6854-2:1999に準拠して評価した。評価サンプルは実施例1~2、比較例1~7の車両用床面表示フィルム7を用いて評価した。車両用床面表示フィルムを幅25mm、長さ250mmでカットし、端部から100mmの箇所に離型紙側からアルミフィルム層まで切り込みを入れ試験片を作成した。試験片の離型紙を端部から120mmまで剥がし、50mm(幅)×200mm(長さ)×2mm(厚み)のサイズのPP板に端部を合わせて貼り付けた。引張試験機を用いて、引張速度500mm/minではく離試験を行い、剥離状態がPP板と第2粘着樹脂層とで剥離、第1粘着樹脂層とアルミフィルム層とで剥離、印刷層と第1粘着樹脂層とで剥離している状態を「○」、剥離状態が表面フィルム層と印刷層で剥離した状態を「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0067】
<剥離強度評価法(ジャングル試験後)>
表面フィルム層と印刷層の密着性を、JIS K 6854-2:1999に準拠して評価した。評価サンプルは80℃×90%のオーブンに1週間放置した実施例1~2、比較例1~7の車両用床面表示フィルム7を用いて実施した。80℃×90%のオーブンに1週間放置した車両用床面表示フィルムを幅25mm、長さ250mmでカットし、端部から100mmの箇所に離型紙側からアルミフィルム層まで切り込みを入れ試験片を作成した。試験片の離型紙を端部から120mmまで剥がし、50mm(幅)×200mm(長さ)×2mm(厚み)のサイズのPP板に端部を合わせて貼り付けた。引張試験機を用いて、引張速度500mm/minではく離試験を行い、剥離状態がPP板と第2粘着樹脂層とで剥離、第1粘着樹脂層とアルミフィルム層とで剥離、印刷層と第1粘着樹脂層とで剥離している状態を「○」、剥離状態が表面フィルム層と印刷層で剥離した状態を「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0068】
<剥離強度評価法(スーパーUV試験後)>
表面フィルム層と印刷層の密着性を、JIS K 6854-2:1999に準拠して評価した。評価サンプルはスーパーUV(岩崎電気株式会社製スーパーUVテスター、SUV-W161)で条件(照射100mW/cm、温度63℃、湿度50%、降雨条件120分に30秒)で20時間照射した実施例1~2、比較例1~7の車両用床面表示フィルム7を用いて実施した。スーパーUVで20時間照射した車両用床面表示フィルム7を幅25mm、長さ250mmでカットし、端部から100mmの箇所に離型紙側からアルミフィルム層まで切り込みを入れ試験片を作成した。試験片の離型紙を端部から120mmまで剥がし、50mm(幅)×200mm(長さ)×2mm(厚み)のサイズのPP板に端部を合わせて貼り付けた。引張試験機を用いて、引張速度500mm/minではく離試験を行い、剥離状態がPP板と第2粘着樹脂層とで剥離、第1粘着樹脂層とアルミフィルム層とで剥離、印刷層と第1粘着樹脂層とで剥離している状態を「○」、剥離状態が表面フィルム層と印刷層で剥離した状態を「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0069】
表1から明らかなように、本発明の実施例1~2の車両用床面表示フィルムは、剥離強度が優れていた。
【0070】
これに対して比較例1の車両用床面表示フィルムは、コロナ処理を行わず、第1印刷層を印刷していないので、剥離強度が劣っていた。比較例2の車両用床面表示フィルムは、加熱処理を行わず、第1印刷層を印刷していないので、剥離強度が劣っていた。比較例3の車両用床面表示フィルムは、加熱処理を行わず、コロナ処理も行っていなく、ぬれ指数が38であるので、剥離強度が劣っていた。比較例4の車両用床面表示フィルムは、第1印刷層を印刷していないので、剥離強度が劣っていた。比較例5の車両用床面表示フィルムは、コロナ処理を行っていなく、ぬれ指数が38であるので、剥離強度が劣っていた。比較例6の車両用床面表示フィルムは、加熱処理を行っていなく、ぬれ指数が50であるので、剥離強度が劣っていた。比較例7の車両用床面表示フィルムは、第1印刷層は顔料を含むインクの含有率が3%であるため、剥離強度が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る床面表示フィルムは、例えば、一般家庭、オフィス用等の床面表示フィルム等として好適であり、車両用床面表示フィルムは、例えば、鉄道、バス、船舶、等の床面表示フィルム等として好適である。
【符号の説明】
【0072】
1・・・床面表示フィルム
2・・・表面フィルム層
3・・・印刷層
4・・・第1粘着樹脂層
5・・・第1印刷層
6・・・第2印刷層
7・・・鉄道車両用床面表示フィルム
8・・・アルミフィルム層
9・・・第2粘着樹脂層
図1
図2