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  • 特許-吊りボルト固定具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】吊りボルト固定具
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20221102BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20221102BHJP
   F16B 45/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
E04B9/18 B
F16B1/00 B
F16B45/00 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019013579
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020122294
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591020685
【氏名又は名称】株式会社能重製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】能重 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】八百板 潤
(72)【発明者】
【氏名】前川 伸哉
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-143116(JP,U)
【文献】特開2014-181459(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187484(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00,9/18,9/20
F16B 1/00
F16B 45/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C形鋼に吊りボルトを垂下固定するための吊りボルト固定具であって、
前記C形鋼の開口下端部に係合する上部係合部と、前記C形鋼の下面部に対向し、前記吊りボルトが螺合する吊りボルト保持部と、該上部係合部と該吊りボルト保持部とを連結する第一背板部と、を有する本体部分と、
締結具によって前記C形鋼に取り付け可能であって、前記第一背板部の外側に位置する第二背板部と、該第二背板部に連結するとともに該C形鋼に取り付けられた際に前記吊りボルト保持部を取り囲む固定部と、を有する補強部分と、を備え、
前記第一背板部と前記第二背板部の何れか一方は、上下方向に延在する長孔を有し、該第一背板部と該第二背板部の何れか他方は、該長孔に挿通され、前記本体部分に対して前記補強部分を移動させる際に該長孔に沿って移動して該本体部分に対して該補強部分を上下方向に案内する軸部を有する吊りボルト固定具。
【請求項2】
前記軸部は、前記長孔の幅よりも大きな外形であって該長孔に挿通された該軸部の抜け出しを阻止するフランジ部を有する請求項1に記載の吊りボルト固定具。
【請求項3】
前記固定部は、前記C形鋼の下面部に対向する一対の天板部と、該天板部を貫いて前記締結具を挿通させる孔部と、一対の該天板部をそれぞれ前記第二背板部に連結する一対の側壁部を有し、
一対の前記側壁部は、該側壁部の相互間に前記吊りボルト保持部を位置させて前記本体部分に対して前記補強部分を移動させる際に上下方向に案内するものとして機能する請求項1又は2に記載の吊りボルト固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C形鋼に対して吊りボルトを垂下固定するための吊りボルト固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば天井下地に使用されるC形鋼に対して吊りボルトを垂下固定するにあたっては、例えば特許文献1に示されているような吊りボルト用ハンガーが使用される。特許文献1の図3(b)に示されているように、この吊りボルト用ハンガー5は、C形鋼3の開口下端部に係合する係嵌部14と、C形鋼3の下面部に対向する横板片5bに吊りボルト2が螺合するネジ孔15とを備えるものである。そして、係嵌部14をC形鋼3に係合させておき、次いで、吊りボルト2の上端部がC形鋼3の下面部に近づくようにして吊りボルト2を締め込むことによって、C形鋼3に対して吊りボルト2を垂下固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-97250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこのような吊りボルト用ハンガーは、例えば吊りボルトの締め込みが不十分である場合に地震等で強い揺れを受けると、C形鋼に対して横ずれしたり、係嵌部がC形鋼の開口下端部から外れてC形鋼から脱落したりする不具合が生じるおそれがある。
【0005】
一方、このような不具合を防止するには、吊りボルト用ハンガーを取り囲むような補強部材を別途準備しておき、吊りボルト用ハンガーによってC形鋼に吊りボルトを垂下固定させた後、このハンガーの外側から補強部材を嵌め込んで、ビスなどの締結具によって補強部材をC形鋼に固定する方法が考えられる。しかし、このような吊りボルト用ハンガーの取り付けは、通常、直接目視できない高所での作業となり、補強部材をハンガーに嵌め込む際には時間を要することが想定されるうえ、取り付け作業は腕を上げた状態で行われるため、作業者にかなりの負担を強いることになる。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであって、C形鋼に対して吊りボルトを垂下固定するにあたり、C形鋼に対する横ずれや脱落を確実に防止することができるとともに、取り付け作業も行いやすい吊りボルト固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、C形鋼に吊りボルトを垂下固定するための吊りボルト固定具であって、前記C形鋼の開口下端部に係合する上部係合部と、前記C形鋼の下面部に対向し、前記吊りボルトが螺合する吊りボルト保持部と、該上部係合部と該吊りボルト保持部とを連結する第一背板部と、を有する本体部分と、締結具によって前記C形鋼に取り付け可能であって、前記第一背板部の外側に位置する第二背板部と、該第二背板部に連結するとともに該C形鋼に取り付けられた際に前記吊りボルト保持部を取り囲む固定部と、を有する補強部分と、を備え、前記第一背板部と前記第二背板部の何れか一方は、上下方向に延在する長孔を有し、該第一背板部と該第二背板部の何れか他方は、該長孔に挿通され、前記本体部分に対して前記補強部分を移動させる際に該長孔に沿って移動して該本体部分に対して該補強部分を上下方向に案内する軸部を有するものである。
【0008】
このような吊りボルト固定具において、前記軸部は、前記長孔の幅よりも大きな外形であって該長孔に挿通された該軸部の抜け出しを阻止するフランジ部を有することが好ましい。
【0009】
また前記固定部は、前記C形鋼の下面部に対向する一対の天板部と、該天板部を貫いて前記締結具を挿通させる孔部と、一対の該天板部をそれぞれ前記第二背板部に連結する一対の側壁部を有し、一対の前記側壁部は、該側壁部の相互間に前記吊りボルト保持部を位置させて前記本体部分に対して前記補強部分を移動させる際に上下方向に案内するものとして機能することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従う吊りボルト固定具は、本体部分によってC形鋼に吊りボルトを垂下固定することができ、また、締結具でC形鋼の下面部に取り付けられる補強部分によって、C形鋼に対する本体部分の横ずれや脱落を防止することができる。そして、本体部分でC形鋼に吊りボルトを垂下固定した後に補強部材をC形鋼に取り付ける際は、本体部分の第一背板部と補強部分の第二背板部の何れか一方に設けた長孔と、第一背板部と第二背板部の何れか他方に設けた軸部が、本体部分に対して補強部材を移動させる際に上下方向に案内するように機能するため、補強部材を簡単に取り付けることができる。また、補強部分を上下方向に移動できることから、サイズや板厚が異なるC形鋼にも取り付けることができるため、汎用性も優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従う吊りボルト固定具の一実施形態を示す、(a)は斜視図であり、(b)は視点を変えて示した斜視図である。
図2図1に示した吊りボルト固定具を構成する本体部分につき、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図であり、(d)は背面図である。
図3図1に示した吊りボルト固定具を構成する補強部分につき、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は底面図であり、(b)は側面図であり、(e)は斜視図である。
図4】本体部分によって吊りボルトをC形鋼に垂下固定させる状況について説明する図であって、(a)は側面視での断面図であり、(b)は斜視図である。
図5】補強部分をC形鋼に取り付ける状況について説明する図であって、(a)は側面視での断面図であり、(b)は斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従う吊りボルト固定具の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書等における「上」、「下」の位置関係は、吊りボルト固定具によってC形鋼に吊りボルトを垂下固定した状態での向きをいう。
【0013】
図1に示すように本実施形態の吊りボルト固定具1は、本体部分2、補強部分3、及びリベット4で構成される。
【0014】
本体部分2は、図1に示すように第一背板部21、上部係合部22、及び吊りボルト保持部23で構成される。図2に示すように第一背板部21は、板状をなし上下方向に延在するように設けられる。第一背板部21の幅方向中央部には、上方に位置するとともに第一背板部21を貫く(上部係合部22も貫く)上孔21aと、下方に位置して第一背板部21を貫く下孔21bが設けられている。そして上部係合部22は、第一背板部21の上端部に連結するものであって、第一背板部21に対して折り返すようにして下方に向けて延在する表板部22aと、表板部22aの下端部から略水平方向に延在する上片部22bとを備えている。そして吊りボルト保持部23は、第一背板部21の下端部に連結するものであって、上片部22bの下方に位置する底壁部23aと、底壁部23aを貫く孔の周囲にバーリングを設けるとともにこの孔とバーリングの内面に雌ねじを形成したナット部23bとを備えている。なおナット部23bには、図4に示した吊りボルト100が螺合する。
【0015】
補強部分3は、図1に示すように第二背板部31、及び固定部32で構成される。図3に示すように第二背板部31は、板状をなし上下方向に延在するように設けられる。第二背板部31の幅方向中央部には、上下方向に延在する長孔31aが設けられる。また第二背板部31の下端部には、略水平方向に延在する下片部31bが設けられている。そして固定部32は、第二背板部31の左右において第二背板部31に連結する一対の側壁部32aと、それぞれの側壁部32aの上端部に連結するとともに互いに離反するようにして略水平方向に延在する一対の天板部32bと、天板部32bを貫く円形の孔部32cを備えている。また固定部32は、それぞれの側壁部32aの下端部から略水平方向に延在する一対の側片部32dを備えている。なお側片部32d同士の間には、隙間32eが設けられる。なお、下片部31bと側片部32dの機能については後述する。
【0016】
リベット4は、図1に示すように、円柱状の軸部41と、軸部41の一端部に連結するとともに軸部41の外径よりも大径になる円板状のフランジ部42とを備えている。リベット4は、補強部分3に対して本体部分2を、第一背板部21の外側に第二背板部31を位置させるとともに吊りボルト保持部23が一対の側壁部32aの間に収まるようにして挿入しておき、軸部41の他端部を、長孔31aに挿入するとともに下孔21b(図2参照)にも挿入した後、カシメることによって本体部分2に固定される。
【0017】
ここで、軸部41の外径は、長孔31aの幅よりも小さくなっている。また吊りボルト保持部23の幅は、一対の側壁部32a同士の間隔よりも小さくなっている。このため本体部分2は、補強部分3に対して上下方向に移動することができる。またこのとき、長孔31aは軸部41を上下方向に案内するように機能し、また一対の側壁部32aは吊りボルト保持部23を上下方向に案内するように機能する。なおフランジ部42の外径は、長孔31aの幅よりも大きいため、補強部分3が本体部分2から外れることはない。
【0018】
このような構成になる吊りボルト固定具1に対し、図4に示すように吊りボルト100は、隙間32eを通してナット部23bに螺合される。なお吊りボルト100は、完全には締め込まず、吊りボルト100の上端部と上片部22bとの間には、十分な隙間をあけておく。そしてこの状態の吊りボルト固定具1を、C形鋼200に取り付ける。なおC形鋼200は、リップ溝形鋼とも称されるものであって、図示したように横断面形状がC字状をなす薄板状のものである。また本実施形態のC形鋼200は、開口部201を側方に指向させた状態で天井下地に使用されるものとする。そして、開口部201の下方に位置するとともに上方に向けて指向する部位を開口下端部202と称し、開口下端部202から略水平方向に延在する部位を下面部203と称することとする。
【0019】
吊りボルト固定具1をC形鋼200に取り付けるにあたっては、まず上部係合部22を開口下端部202に引っ掛けておき、更に吊りボルト100の上端部が下面部203に近づく向きに吊りボルト100を回転させる。これにより下面部203は、吊りボルト100によって締め込まれて上片部22bと吊りボルト100の上端部で挟持されるため、吊りボルト100は、C形鋼200に垂下固定される。
【0020】
その後は、図5に示すように本体部分2に対して補強部分3を上方へ移動させて、天板部32bを下面部203に当て付ける。上述したように補強部分3は、リベット4によって本体部分2から外れることがないうえ、上方へ移動させる際は、長孔31aと軸部41、及び一対の側壁部32aと吊りボルト保持部23によって案内されるため、直接目視できず、また腕を上げた状態で行われる高所での作業も簡単に行うことができる。
【0021】
その後はビスなどの締結具300を、孔部32cを挿通させて下面部203に締め付けることによって、補強部分3をC形鋼200に取り付けることができる。このとき本体部分2は、C形鋼200に固定された補強部分3によって取り囲まれた状態になっているため、本体部分2がC形鋼200に対して横ずれしたり脱落したりする不具合を防止することができる。なお、吊りボルト100に下方へ向かう過大な力が作用した際は、吊りボルト100に作用する力によって吊りボルト保持部23が下方へ撓むように変形し、更には本体部分2が脱落するおそれがあるが、吊りボルト保持部23の下方に位置する下片部31bと側片部32dによって吊りボルト保持部23の過剰な変形が抑制できるため、本体部分2の脱落をより確実に防止することができる。また、本体部分2に対して補強部分3を移動させることができることから、サイズや板厚が多少異なるC形鋼200に対しても、同一の吊りボルト固定具1を使用することができる。
【0022】
以上、本発明について具体的な実施形態を示しながら説明したが、本発明に従う吊りボルト固定具は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に従う範疇で種々の変更を加えたものも含まれる。例えば上述した実施形態では、補強部分3の第二背板部31に長孔31aを設け、リベット4の軸部41は第一背板部21を有する本体部分2に固定されるように構成したが、本体部分2の第一背板部21に長孔を設け、軸部41を持つリベット4は補強部分3に固定されるように構成してもよい。またフランジ部42は、長孔31aよりも外形が大きければよく、形状は円形でなくてもよい。なお本体部分2に設けた上孔21aは、ビスなどの締結具を挿通させて図4に示した開口下端部202に締め付けることによって、本体部分2をC形鋼200に固定することを意図して設けているが、必ずしも設ける必要はない。
【符号の説明】
【0023】
1:吊りボルト固定具
2:本体部分
3:補強部分
4:リベット
21:第一背板部
21a:上孔
21b:下孔
22:上部係合部
22a:表板部
22b:上片部
23:吊りボルト保持部
23a:底壁部
23b:ナット部
31:第二背板部
31a:長孔
31b:下片部
32:固定部
32a:側壁部
32b:天板部
32c:孔部
32d:側片部
32e:隙間
41:軸部
42:フランジ部
100:吊りボルト
200:C形鋼
201:開口部
202:開口下端部
203:下面部
300:締結具
図1
図2
図3
図4
図5