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特許7168984太陽電池モジュールの電気部材回収装置及びリサイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールの電気部材回収装置及びリサイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/35 20220101AFI20221102BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20221102BHJP
【FI】
B09B3/35
B09B3/30
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019031711
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020131165
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】595142336
【氏名又は名称】株式会社環境保全サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】狩野 公俊
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-192942(JP,A)
【文献】特開2015-205249(JP,A)
【文献】特開2011-173099(JP,A)
【文献】特開2017-34087(JP,A)
【文献】特開2014-54593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
H01L 31/04-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板とバックシートとの間に太陽電池セル及びこれらの配線材を含む電気部材を封止材を用いて介装してなる太陽電池モジュールの当該電気部材を回収する太陽電池モジュールの電気部材回収装置であって、上記太陽電池モジュールから予めガラス基板の略全部が除去されバックシートに電気部材が付着した状態のシート状部材から当該電気部材を可能な限り回収する太陽電池モジュールの電気部材回収装置において、
上記シート状部材を受け入れてその電気部材を下にして供給する供給部と、該供給部から供給されたシート状部材をその電気部材を下にして支承し回転させられて下流に向けて搬送するとともに該シート状部材のバックシートから電気部材を掻き落すブラシローラと、該ブラシローラに対して上記シート状部材を相対的に押圧する押圧手段とを備えたことを特徴とする太陽電池モジュールの電気部材回収装置。
【請求項2】
上記ブラシローラを、上記シート状部材の搬送方向に沿って間隔を隔てて複数設けたことを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュールの電気部材回収装置。
【請求項3】
上記ブラシローラを基台に設け、上記押圧手段を、上記ブラシローラに対峙し上記シート状部材が摺接する押さえプレートと、該押さえプレート及び上記ブラシローラ間の間隔を調整可能に該押さえプレートを上記基台に対して支持する支持部とを備えて構成したことを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池モジュールの電気部材回収装置。
【請求項4】
上記支持部を、上記基台に対して上下動可能に設けられ下側に上記押さえプレートを保持するベース部材と、上記基台に設けられ上記ベース部材を上下動させるとともに該ベース部材を所要の上下移動位置で位置決めする移動機構とを備えて構成したことを特徴とする請求項3記載の太陽電池モジュールの電気部材回収装置。
【請求項5】
上記移動機構を、雄ネジ棒と、該雄ネジ棒を進退動させる雌ネジが形成されたウォーム及び該ウォームを回転させて上記雄ネジ棒を進退動させるウォームホイールを収納したギヤケースとを備えたジャッキを用い、該ジャッキを上記ベース部材の上記搬送方向に直交する幅方向に沿って間隔を隔てて複数配設し、該ジャッキのギヤケースを基台に取付けるとともに、該ジャッキの雄ネジ棒の一端を上記ベース部材に取付け、上記基台に、電動モータと、上記一対のジャッキのウォームのウォーム軸を同期して回動させるように上記電動モータの回転を上記ウォーム軸に伝達するギヤ伝動機構とを設けたことを特徴とする請求項4記載の太陽電池モジュールの電気部材回収装置。
【請求項6】
上記押さえプレートの上記ベース部材に対する上下位置を調整可能な位置調整機構を設けたことを特徴とする請求項4または5記載の太陽電池モジュールの電気部材回収装置。
【請求項7】
上記ブラシローラを、上記シート状部材の搬送方向に沿って間隔を隔てて複数設け、上記押さえプレートを上記複数のブラシローラ毎に設け、該各押さえプレートの上記シート状部材の搬送方向上流側の上流側縁部を該搬送方向上流側に向けて上向きに傾斜形成したことを特徴とする請求項3乃至6何れかに記載の太陽電池モジュールの電気部材回収装置。
【請求項8】
上記供給部を、上記受け入れるシート状部材を支承する支承板と、該支承板上のシート状部材に上から当接するとともに回転させられて該シート状部材を該支承板上に摺接させながら上記ブラシローラ側に送る送りローラとを備えて構成したことを特徴とする請求項1乃至7何れかに記載の太陽電池モジュールの電気部材回収装置。
【請求項9】
上記支承板の上流側に、上記シート状部材をその電気部材を下にして送る送りコンベアを設け、該送りコンベアの上記シート状部材の載置面を上流側から下流側に向けて下向きに傾斜させたことを特徴とする請求項8記載の太陽電池モジュールの電気部材回収装置。
【請求項10】
上記送りローラの上流側に上記支承板に対面して設けられシート状部材をガイドするガイド板を設け、該ガイド板の上流側の上流側縁部を上流側に向けて上向きに傾斜形成したことを特徴とする請求項9記載の太陽電池モジュールの電気部材回収装置。
【請求項11】
ガラス基板とバックシートとの間に太陽電池セル及びこれらの配線材を含む電気部材を封止材を用いて介装してなる太陽電池モジュールからガラスと有用金属を含む他の材料を分別する太陽電池モジュールのリサイクルシステムにおいて、
太陽電池モジュールに金属製の枠体を設けたパネル製品から枠体を外して太陽電池モジュールを取り出して送出する太陽電池モジュール取出し装置と、
該太陽電池モジュール取出し装置から送出された太陽電池モジュールのガラス基板を破砕してガラス片を含む破砕物とガラス基板の略全部が除去されバックシートに電気部材が付着した状態のシート状部材とに分離し、該シート状部材を送出するガラス基板破砕分離装置と、
該ガラス基板破砕分離装置により分離されたガラス片を含む破砕物を篩により所定粒度範囲のガラス粒を含む中粒物,所定粒度範囲以上の大きさの粗物及び所定粒度範囲以下の大きさの細粒物に分離する篩装置と、
上記ガラス片分離装置で分離された中粒物から風力選別により軽量粉を回収してガラス粒を選別する風力選別装置と、
該風力選別装置で選別されたガラス粒から可能な限り有色のガラス粒を除いて無色のガラス粒を分別して取り出す色分別装置と、
該色分別装置により分別された無色のガラス粒から金属を除去する金属除去装置と、
上記ガラス基板破砕分離装置から送出されたバックシートに電気部材が付着した状態のシート状部材から電気部材を回収する上記請求項1乃至10何れかに記載の太陽電池モジュールの電気部材回収装置とを備えたことを特徴とする太陽電池モジュールのリサイクルシステム。
【請求項12】
上記太陽電池モジュールの電気部材回収装置により電気部材が回収されたシート状部材を破砕するバックシート破砕装置を備えたことを特徴とする請求項11記載の太陽電池モジュールのリサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの例えば銀などの有用金属を含む電気部材を回収する太陽電池モジュールの電気部材回収装置及びこの電気部材回収装置を備え太陽電池モジュールからガラスと有用金属を含む他の材料を分別する太陽電池モジュールのリサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば、図11に示すように、太陽電池モジュールMは、ガラス基板1とバックシート2との間に太陽電池セル3及びこれらの配線材4を含む電気部材5をEVA等の封止材6を用いて介装して矩形板状に構成されている。これを用いたパネル製品Sは、例えば、この太陽電池モジュールMをアルミニウム等の枠体7で囲繞して構成されている。そして、太陽電池モジュールMの寿命がくるなどして使用しなくなったパネル製品Sは、廃棄されるが、近年、リサイクルすることが行われている。
【0003】
従来、この種のリサイクルシステムとしては、例えば、本願出願人が先に提案し、特開2016-203128号公報(特許文献1)に掲載されたものが知られている。これは、予め、パネル製品Sから、配線用の端子ボックスやケーブルを取り外すとともに、枠体7を取り外して、太陽電池モジュールMを得ておく。それから、この太陽電池モジュールMを、そのガラス基板1を下にして、一対の破砕ローラ間に送り込み、この一対の破砕ローラにより太陽電池モジュールMを挾持してガラスを破砕し、このガラスを破砕した処理物を下流側に設けたガラス片を掻き落す掻落しローラと押さえローラとの間に送り込み、掻落しローラによって破砕したガラス片を掻き落す。これにより、ガラスを回収するととともに、電気部材5を含む封止材6が付着したシート状部材を得る。シート状部材は、粉砕する等してその後の処理に委ねる。
【0004】
ところで、シート状部材に付着した電気部材5には、有用金属が含まれており、特に、太陽電池セルには銀が含まれており、そのため、この有用金属を再利用するために、バックシートに付着した電気部材5の回収も図りたい。この場合には、例えば、電気部材5が付着したバックシートをアルカリ性剥離剤溶液等の薬液に浸漬して比重分離により電気部材5を回収することが考えられる(例えば、特開2014-104406号公報(特許文献2)等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-203128号公報
【文献】特開2014-104406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、金属単体を抽出するには最終的には薬品を用いた化学処理や溶融処理によらざるを得ないが、この金属を含む電気部材5の回収においては、薬液を用いると、処理が煩雑で回収コストも高くなるという問題があった。
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、電気部材を機械的に簡易に回収できるようにした太陽電池モジュールの電気部材回収装置及びリサイクルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明の太陽電池モジュールの電気部材回収装置は、ガラス基板とバックシートとの間に太陽電池セル及びこれらの配線材を含む電気部材を封止材を用いて介装してなる太陽電池モジュールの当該電気部材を回収する太陽電池モジュールの電気部材回収装置であって、上記太陽電池モジュールから予めガラス基板の略全部が除去されバックシートに電気部材が付着した状態のシート状部材から当該電気部材を可能な限り回収する太陽電池モジュールの電気部材回収装置において、
上記シート状部材を受け入れてその電気部材を下にして供給する供給部と、該供給部から供給されたシート状部材をその電気部材を下にして支承し回転させられて下流に向けて搬送するとともに該シート状部材のバックシートから電気部材を掻き落すブラシローラと、該ブラシローラに対して上記シート状部材を相対的に押圧する押圧手段とを備えた構成としている。
供給されるシート状部材には、僅かにガラス片が付着していても差し支えない。
【0008】
これにより、供給部においてシート状部材を受け入れてその電気部材を下にして供給すると、シート状部材は、ブラシローラに支承されるとともに押圧手段によりブラシローラに押圧されながらブラシローラによって搬送され、この搬送過程で、ブラシローラの回転によってシート状部材に付着した電気部材が掻き落される。この際、電気部材は封止材を介してバックシートに付着しているので、シート状部材からは電気部材が封止材を含んで細粉片として掻き落されていく。この場合、押さえプレートによってシート状部材がブラシローラに対して押さえられるので、掻落しが確実に行われる。即ち、シート状部材はブラシローラの回転により搬送されるが、押さえプレートの摺動抵抗があるので、シート状部材は徐々に搬送されながら、ブラシローラにより繰り返し擦られることになることから、シート状部材から電気部材が封止材を含んで細粉片として掻き落されていく。電気部材が掻き落されるこのため、薬液を用いなくてもシート状部材から電気部材を機械的に容易に分離できるようになり、回収のスピード化を図ることができ、回収効率の向上を図ることができる。掻き落された細粉片は集約され、これから銀などの高価な有用金属を抽出することができる。電気部材が掻き落されたバックシートは排出され、例えば、焼却処分される。尚、この場合、電気部材のうち太陽電池セルは特に破砕され易く、良く掻き落されて行くが、銅線などの配線材は細長いので、封止材に絡んでバックシートに残されるものもある。しかし、銀などの高価な金属は、太陽電池セルに主に含まれているので、回収率は高いものになる。
【0009】
そして、必要に応じ、上記ブラシローラを、上記シート状部材の搬送方向に沿って間隔を隔てて複数設けた構成としている。複数のブラシローラにより繰り返し電気部材が掻き落されるので、電気部材の回収率を向上させることができる。
【0010】
また、必要に応じ、上記ブラシローラを基台に設け、上記押圧手段を、上記ブラシローラに対峙し上記シート状部材が摺接する押さえプレートと、該押さえプレート及び上記ブラシローラ間の間隔を調整可能に該押さえプレートを上記基台に対して支持する支持部とを備えて構成している。これにより、支持部により押さえプレート及びブラシローラ間の間隔を調整することができる。そのため、押さえプレートの押さえ力を調整して、シート状部材の搬送速度と、ブラシローラの回転によるブラシローラの擦り頻度を適正に調整することができ、電気部材の掻落しを確実に行わせることができる。
【0011】
更に、必要に応じ、上記支持部を、上記基台に対して上下動可能に設けられ下側に上記押さえプレートを保持するベース部材と、上記基台に設けられ上記ベース部材を上下動させるとともに該ベース部材を所要の上下移動位置で位置決めする移動機構とを備えて構成している。移動機構を設けたので、押さえプレート及びブラシローラ間の間隔調整を容易に行うことができる。
【0012】
この場合、上記移動機構を、雄ネジ棒と、該雄ネジ棒を進退動させる雌ネジが形成されたウォームホイール及び該ウォームホイールを回転させて上記雄ネジ棒を進退動させるウォームを収納したギヤケースとを備えたジャッキを用い、該ジャッキを上記ベース部材の上記搬送方向に直交する幅方向に沿って間隔を隔てて複数配設し、該ジャッキのギヤケースを基台に取付けるとともに、該ジャッキの雄ネジ棒の一端を上記ベース部材に取付け、上記基台に、電動モータと、上記一対のジャッキのウォームのウォーム軸を同期して回動させるように上記電動モータの回転を上記ウォーム軸に伝達するギヤ伝動機構とを設けたことが有効である。これにより、ジャッキを搬送方向に直交する幅方向に沿って間隔を隔てて複数配設したので、ジャッキは押さえ力が強固であることから、ブラシローラの回転による掻落し動作中に、押さえプレートが撓んだりガタついたりしにくくなり、摩擦抵抗によりシート状部材をしっかり保持でき、そのため、ブラシローラによる電気部材の掻落しを確実に行わせることができる。
【0013】
また、この場合、上記押さえプレートの上記ベース部材に対する上下位置を調整可能な位置調整機構を設けたことが有効である。押さえプレート及びブラシローラ間の間隔調整を、この位置調整機構によっても行うことができる。そのため、調整を細かく行うことができ、それだけ、ブラシローラによる電気部材の掻落しを確実に行わせることができる。押さえプレート及びブラシローラ間の間隔調整は、主には移動機構で行なう。
【0014】
更に、必要に応じ、上記ブラシローラを、上記シート状部材の搬送方向に沿って間隔を隔てて複数設け、上記押さえプレートを上記複数のブラシローラ毎に設け、該各押さえプレートの上記シート状部材の搬送方向上流側の上流側縁部を該搬送方向上流側に向けて上向きに傾斜形成した構成としている。押さえプレートを、ブラシローラ毎に独立して設けたので、押さえプレート間で、シート状部材に対する押圧力が一度解放されることから、シート状部材に無理な力が作用して捻じれるなどの事態を防止することができ、円滑に搬送させながらブラシローラによる掻落しを行わせることができる。また、各押さえプレートの上流側縁部を上向きに傾斜形成したので、シート状部材が搬送される際、その先端縁が傾斜した上流側縁部に当接して、ブラシローラに向けて進行するようにガイドされることから、シート状部材が上向きに逃げて装置から外れる事態を防止することができ、シート状部材を確実に押圧プレートの一般部とブラシローラとの間に送り込むことができる。
【0015】
更にまた、必要に応じ、上記供給部を、上記受け入れるシート状部材を支承する支承板と、該支承板上のシート状部材に上から当接するとともに回転させられて該シート状部材を該支承板上に摺接させながら上記ブラシローラ側に送る送りローラとを備えて構成している。送りローラでシート状部材を送るので、シート状部材を確実に押圧プレートの一般部とブラシローラとの間に送り込むことができる。
【0016】
また、必要に応じ、上記支承板の上流側に、上記シート状部材をその電気部材を下にして送る送りコンベアを設け、該送りコンベアの上記シート状部材の載置面を上流側から下流側に向けて下向きに傾斜させた構成としている。シート状部材を斜めにして送るので、支承板に載置させやすくなるととともに、送りローラに噛み易くすることができる。
【0017】
この場合、上記送りローラの上流側に上記支承板に対面して設けられシート状部材をガイドするガイド板を設け、該ガイド板の上流側の上流側縁部を上流側に向けて上向きに傾斜形成したことが有効である。シート状部材が送りコンベアから送られてくる際、その先端縁がガイド板の傾斜した上流側縁部に当接して、ガイド板にガイドされるので、シート状部材が上向きに逃げて装置から外れる事態を防止することができ、シート状部材を確実に送りローラに向けて送ることができる。
【0018】
そして、上記課題を解決するための本発明の太陽電池モジュールのリサイクルシステムは、ガラス基板とバックシートとの間に太陽電池セル及びこれらの配線材を含む電気部材を封止材を用いて介装してなる太陽電池モジュールからガラスと有用金属を含む他の材料を分別する太陽電池モジュールのリサイクルシステムにおいて、
太陽電池モジュールに金属製の枠体を設けたパネル製品から枠体を外して太陽電池モジュールを取り出して送出する太陽電池モジュール取出し装置と、
該太陽電池モジュール取出し装置から送出された太陽電池モジュールのガラス基板を破砕してガラス片を含む破砕物とガラス基板が略全部を除去されバックシートに電気部材が付着した状態のシート状部材とに分離し、該シート状部材を送出するガラス基板破砕分離装置と、
該ガラス基板破砕分離装置により分離されたガラス片を含む破砕物を篩により所定粒度範囲のガラス粒を含む中粒物,所定粒度範囲以上の大きさの粗物及び所定粒度範囲以下の大きさの細粒物に分離する篩装置と、
上記ガラス片分離装置で分離された中粒物から風力選別により軽量粉を回収してガラス粒を選別する風力選別装置と、
該風力選別装置で選別されたガラス粒から可能な限り有色のガラス粒を除いて無色のガラス粒を分別して取り出す色分別装置と、
該色分別装置により分別された無色のガラス粒から金属を除去する金属除去装置と、
上記ガラス基板破砕分離装置から送出されたバックシートに電気部材が付着した状態のシート状部材から電気部材を回収する上記の太陽電池モジュールの電気部材回収装置とを備えた構成としている。
【0019】
これにより、ガラス基板破砕分離装置により、ガラス片を含む破砕物と、ガラス基板の略全部が除去されバックシートに電気部材が付着した状態のシート状部材とに分離される。このガラス基板破砕分離装置においては、電気部材もある程度破砕されることから、破砕物には電気部材の破片も含まれる。
この破砕物は、次に、篩装置により、所定粒度範囲のガラス粒を含む中粒物,所定粒度範囲以上の大きさの粗物及び所定粒度範囲以下の大きさの細粒物に分離される。「粗物」,「細粒物」は、夫々集約される。
所定粒度範囲のガラス粒を含む中粒物は、風力選別装置により、これから風力選別により軽量粉が回収され、ガラス粒として選別される。「軽量粉」は、集約される。
【0020】
選別されたガラス粒は、色分別装置により、可能な限り有色のガラス粒が除かれ、無色のガラス粒として分別して取り出される。「有色含有ガラス粒」は集約される。
無色のガラス粒は、金属除去装置によりこれから金属が除去されて、精製される。「無色のガラス粒」,除去された「金属」は、夫々集約される。
【0021】
一方、太陽電池モジュールの電気部材回収装置においては、ブラシローラの回転によってシート状部材に付着した電気部材が掻き落される。この際、電気部材は封止材を介してバックシートに付着しているので、シート状部材からは電気部材が封止材を含んで細粉片として掻き落されていく。このため、薬液を用いなくてもシート状部材から電気部材を機械的に容易に分離できるようになり、回収のスピード化を図ることができ、回収効率の向上を図ることができる。バックシートは掻き落されなかった多くの封止材と僅かの電気部材を付着させたまま排出される。掻き落された「電気部材を含む細粉片」は集約される。
【0022】
このように集約された「電気部材を含む細粉片」,「粗物」,「細粒物」,「軽量粉」には、銀などの有用金属が含まれるので、これから有用金属を抽出することができる。
また、金属除去装置により除去された「金属」は、配線などに用いられた比較的大きい銅などが多いが、これからも金属を抽出することができる。バックシートは掻き落されなかった多くの封止材と僅かの電気部材とともに例えば焼却処分される。
そして、金属が除去された「無色のガラス粒」は、種々のガラス製品の原材料として用いることができる。「有色含有ガラス粒」は、ガラス製品としてよりは、むしろ、例えば、土木の骨材等として用いることができる。このように、本システムにおいては、太陽電池モジュールを有効にリサイクルの用に供することができる。
【0023】
また、必要に応じ、上記太陽電池モジュールの電気部材回収装置により電気部材が回収されたシート状部材を破砕するバックシート破砕装置を備えた構成としている。その後の例えば焼却処理を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電気部材回収装置において、供給部がシート状部材を受け入れてその電気部材を下にして供給すると、シート状部材は、ブラシローラに支承されるとともに押圧手段によりブラシローラに押圧されながらブラシローラによって搬送され、この搬送過程で、押さえプレートの摺動抵抗があるので、シート状部材は徐々に搬送されながら、ブラシローラにより繰り返し擦られることになることから、シート状部材から電気部材が封止材を含んで細粉片として掻き落されていく。電気部材が掻き落されるこのため、薬液を用いなくてもシート状部材から電気部材を機械的に容易に分離できるようになり、回収のスピード化を図ることができ、回収効率の向上を図ることができる。掻き落された細粉片は集約され、これから銀などの高価な有用金属を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールのリサイクルシステムを示す平面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールのリサイクルシステムにおいて、ガラス基板破砕分離装置及び本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの電気部材回収装置のある側から見た立面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールのリサイクルシステムにおいて、ガラス基板破砕分離装置が分離したガラス片を処理する側の装置を示す立面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの電気部材回収装置を模式的に示す斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの電気部材回収装置を示す正面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの電気部材回収装置を示す右側面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの電気部材回収装置の要部を示す斜視図である。
図8】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの電気部材回収装置の要部を示す正面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの電気部材回収装置で用いるジャッキの構成を示す断面図である。
図10】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールのリサイクルシステムにおいて、ガラス基板破砕分離装置の要部を示す図である。
図11】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールのリサイクルシステム及び電気部材回収装置が処理する太陽電池モジュールの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの電気部材回収装置及びリサイクルシステムについて詳細に説明する。
図1乃至図3には、本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールのリサイクルシステムRを示す。本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの電気部材回収装置Kは、このリサイクルシステムRの一部を構成する。一般に、例えば、図11に示すように、太陽電池モジュールMは、ガラス基板1とバックシート2との間に太陽電池セル3及びこれらの配線材4を含む電気部材5をEVA等の封止材6を用いて介装して矩形板状に構成され、これを用いたパネル製品Sは、この太陽電池モジュールMをアルミニウム等の枠体7で囲繞して構成されている。そして、本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールMのリサイクルシステムRは、パネル製品Sを処理する。
【0027】
先ず、実施の形態に係る太陽電池モジュールの電気部材回収装置Kについて説明する。これは、ガラス基板1とバックシート2との間に太陽電池セル3及びこれらの配線材4を含む電気部材5を封止材6を用いて介装してなる太陽電池モジュールMの当該電気部材5を回収するもので、太陽電池モジュールMから予め後述のガラス基板破砕分離装置110によってガラス基板1の略全部が除去されバックシート2に電気部材5が付着した状態のシート状部材8から当該電気部材5を可能な限り回収するものである。特に、電気部材5のうち太陽電池セル3を細断して回収する。
【0028】
本電気部材回収装置Kの基本的構成は、4図乃至図8に示すように、基台10と、後述のガラス基板破砕分離装置110から送出されるシート状部材8を受け入れてその電気部材5を下にして供給する供給部20と、基台10に設けられ供給部20から供給されたシート状部材8をその電気部材5を下にして支承し回転させられて下流に向けて搬送するとともにシート状部材8のバックシート2から電気部材5を掻き落すブラシローラ40と、ブラシローラ40に対してシート状部材8を相対的に押圧する押圧手段50とを備えてなる。
【0029】
ガラス基板破砕分離装置110側であって、供給部20の後述の支承板21の上流側には、ガラス基板破砕分離装置110から送出されるシート状部材8をその電気部材5を下にして送る送りコンベア11が設けられている。この送りコンベア11のシート状部材8の載置面12は、上流側から下流側に向けて下向きに傾斜させてある。
【0030】
供給部20は、基台10に設けられ送りコンベア11から送られるシート状部材8を受け入れて支承する支承板21と、後述の支持部52のベース部材53に設けられ支承板21上のシート状部材8に上から当接するとともに回転させられてシート状部材8を支承板21上に摺接させながら上記ブラシローラ40側に送る送りローラ22とを備えて構成されている。
【0031】
支承板21は、その上面のレベルを調整可能に基台10に対して上下動可能に設けられている。詳しくは、図8に示すように、支承板21の裏面の左右側には、夫々脚板23が設けられている一方、基台10からは各脚板23に対応し脚板23が上下方向に摺接する立設板24が立設されており、脚板23が立設板24を上下方向に摺動することにより支承板21は上下に移動可能になっている。また、脚板23にはボルト25が挿通される挿通孔(図示せず)が設けられる一方、立設板24には挿通孔に対応し上下方向に長い長孔26が設けられ、挿通孔と長孔26にボルト25を挿通して支承板21の所要の上下方向位置においてナット27で締め付けることにより、支承板21を基台10に対してロックできるようにしている。更に、支承板21の左右端には、ナット27を緩めた状態で、支承板21を上下移動させる上下移動機構30が設けられている。この上下移動機構30は、基台10に立設された支柱ボルト31と、支柱ボルト31の上端に螺合するととともに上端が支承板21の裏面に当接し回転により上下動して支承板21を上下動させる所定長さの調整ナット32と、この調整ナット32をロックするロックナット33とを備えて構成されている。この支承板21の上面のレベル調整により、シート状部材8をブラシローラ40に適正に支承させることができる。
【0032】
送りローラ22は、シート状部材8の送り方向に直交する方向に軸線を有し、後述のベース部材53に設けた軸受部34に軸支されており、ベース部材53に搭載した電動駆動モータ35により回転駆動させられる。また、送りローラ22は、支軸36と、この支軸36に所定間隔で複数設けられ、シート状部材8の上面に噛合する歯車状に形成されたギヤローラ37とから構成されている。
【0033】
この送りローラ22の上流側には、後述のベース部材53に設けられるとともに支承板21に対面して設けられシート状部材8をガイドするガイド板38が設けられている。ガイド板38の上流側の上流側縁部38aは、上流側に向けて上向きに傾斜形成されている。
【0034】
ブラシローラ40は、シート状部材8の送り方向に直交する方向に軸線を有し、シート状部材8の搬送方向に沿って間隔を隔てて複数(実施の形態では2つ)、軸受41を介して基台10に設けられている。ブラシローラ40は、回転軸42に弾性変形する金属製の毛を植設して構成されている。実施の形態では、ブラシローラ40は、毛の材質は金属・樹脂であり、太さが、0.5mm~1.5mm、長さが、50mm~100mmである。毛の材質,太さ,長さは適宜に定めて良い。また、ブラシローラ40は、直径が、100mm~200mm、全長が、1200mm~1500mmに設定されている。寸法はこれに限定されない。
【0035】
基台10には、2つのブラシローラ40を同期して駆動するブラシローラ駆動部43が設けられている。図5及び図6に示すように、ブラシローラ駆動部43は、基台10の上部に設けられた電動モータ44と、電動モータ44の回転軸に設けられた原動スプロケット45と、一方のブラシローラ40の回転軸に設けられた従動スプロケット46と、原動スプロケット45及び従動スプロケット46間に掛渡されたチェーン47とを備えている。また、ブラシローラ駆動部43は、従動スプロケット46のある反対側の回転軸端と他方のブラシローラ40の回転軸端に夫々設けられ一方のブラシローラ40の回転を伝達するための伝達スプロケット48と、この伝達スプロケット48間に掛渡されたチェーン49とを備えている。
【0036】
押圧手段50は、ブラシローラ40に対峙しシート状部材8が摺接する押さえプレート51と、押さえプレート51及びブラシローラ40間の間隔を調整可能に押さえプレート51を基台10に対して支持する支持部52とを備えて構成されている。詳しくは、押さえプレート51は、ブラシローラ40に対応した長さと幅を有した略矩形板状のもので、各ブラシローラ40毎に、夫々、設けられている。各押さえプレート51のシート状部材8の搬送方向上流側の上流側縁部51aは、搬送方向上流側に向けて上向きに傾斜形成されている。
【0037】
支持部52は、基台10に対して上下動可能に設けられ下側に押さえプレート51を保持する枠体を備えたベース部材53と、基台10に設けられベース部材53を上下動させるとともにベース部材53を所要の上下移動位置で位置決めする移動機構54とを備えて構成されている。ベース部材53は、図4及び図5に示すように、ベース部材53の4つのコーナ部に設けられたスライダ53a及びこれをガイドし基台10に取り付けられたレール53bを介して上下動可能にしてある。
【0038】
移動機構54は、図4乃至図6図9に示すように、雄ネジ棒55と、雄ネジ棒55を進退動させる雌ネジ56aが形成されたウォームホイール56及びこのウォームホイール56を回転させて雄ネジ棒55を進退動させるウォーム57を収納したギヤケース58とを備えたジャッキ60を用い、このジャッキ60をベース部材53の搬送方向に直交する幅方向に沿って間隔を隔てて複数(実施の形態では互いに対称位置に2つ)配設してある。ジャッキ60のギヤケース58は基台10の上部に掛渡した架設板10aに取付けられるとともに、ジャッキ60の雄ネジ棒55の一端は、ベース部材53に取付部材61を介して取付けられている。基台10には、電動モータ62と、一対のジャッキ60のウォーム57のウォーム軸63を同期して回動させるように電動モータ62の回転をウォーム軸63に伝達するギヤ伝動機構64とが設けられている。電動モータ62の正逆回転により、ギヤ伝達機構64を介して、雄ネジ棒55を進退動させ、電動モータ62を停止することにより、ベース部材53を所用の位置に位置決めできるようにしている。符号65は雄ネジ棒55を覆う上カバー、66は蛇腹状の下カバーである。
【0039】
また、押さえプレート51はベース部材53に対して上下位置可変に設けられている。詳しくは、図8に示すように、押さえプレート51の上面の左右側には、夫々、ベース部材53の枠体の側面を摺接可能な立脚板70が設けられており、立脚板70がベース部材53の枠体を上下方向に摺動することにより押さえプレート51は上下位置可変になっている。また、枠体7にはボルト71が挿通される挿通孔(図示せず)が設けられる一方、立脚板70には挿通孔に対応し上下方向に長い長孔72が設けられ、挿通孔と長孔72にボルト71を挿通して押さえプレート51の所要の上下方向位置においてナット73で締め付けることにより、押さえプレート51をベース部材53の枠体7に対してロックできるようにしている。
【0040】
更に、本装置には、図6に示すように、ナット73を緩めた状態で押さえプレート51のベース部材53に対する上下位置を調整可能な位置調整機構80が設けられている。位置調整機構80は、ベース部材53に設けた板部材81と押さえプレート51との間に架設され一端が押さえプレート51に取り付けられ他端が板部材81に形成された貫通孔(図示せず)に挿通される雌ネジが形成されたロッド82と、ロッド82の雌ネジに螺合し回転させられてロッド82を上下動させるとともに互いに締め付けることによりロッド82を板部材81に固定する一対のナット83,84とを備えて構成されている。ロッド81及び一対のナット83,84の組は、搬送方向に直交する幅方向に沿って所要間隔で一対設けられている。
【0041】
従って、太陽電池モジュールの電気部材回収装置Kによれば、後述のガラス基板破砕分離装置110からシート状部材8が送出されると、このシート状部材8は送りコンベア11により電気部材5を下にして供給部20の支承板21に送られ、送りローラ22に至って送りローラ22により下流に送られていく。この場合、送りコンベア11は、シート状部材8を斜めにして送るので、支承板21に載置させやすくなるととともに、送りローラ22に噛み易くすることができる。また、供給部20には、支承板21に対面して設けられシート状部材8をガイドするガイド板38が設けられており、ガイド板38の上流側の上流側縁部38aは上流側に向けて上向きに傾斜形成されているので、シート状部材8が送りコンベア11から送られてくる際、その先端縁がガイド板38の傾斜した上流側縁部38aに当接して、ガイド板38にガイドされるので、シート状部材8が上向きに逃げて装置から外れる事態を防止することができ、シート状部材8を確実に送りローラ22に向けて送ることができる。また、送りローラ22は、支承板21上のシート状部材8に上から当接するとともに回転させられてシート状部材8を支承板21上に摺接させながら下流に送るので、シート状部材8を確実に送り込むことができる。
【0042】
供給部20の送りローラ22によって送られたシート状部材8は、図8に示すように、ブラシローラ40に支承されるとともに押圧手段50によりブラシローラ40に相対的に押圧されながらブラシローラ40によって搬送され、この搬送過程で、ブラシローラ40の回転によってシート状部材8に付着した電気部材5が掻き落される。この際、電気部材5は封止材6を介してバックシート2に付着しているので、シート状部材8からは電気部材5が封止材6を含んで細粉片として掻き落されていく。この場合、押さえプレート51によってシート状部材8がブラシローラ40に対して押さえられるので、掻落しが確実に行われる。即ち、シート状部材8はブラシローラ40の回転により搬送されるが、押さえプレート51の摺動抵抗があるので、シート状部材8は徐々に搬送されながら、ブラシローラ40により繰り返し擦られることになることから、シート状部材8から電気部材5が封止材6を含んで細粉片として掻き落されていく。このため、薬液を用いなくてもシート状部材8から電気部材5を機械的に容易に分離できるようになり、回収のスピード化を図ることができ、回収効率の向上を図ることができる。尚、この場合、電気部材5のうち太陽電池セル3は特に破砕され易く、良く掻き落されて行くが、銅線などの配線材4は細長いので、封止材6に絡んでバックシート2に残されるものもある。しかし、銀などの高価な金属は、太陽電池セル3に主に含まれているので、回収率は高いものになる。
【0043】
また、この場合、ブラシローラ40は、シート状部材8の搬送方向に沿って間隔を隔てて複数(実施の形態では2つ)設けられているので、この複数のブラシローラ40により繰り返し電気部材5が掻き落されることから、電気部材5の回収率を向上させることができる。
【0044】
更に、ブラシローラ40は基台10に設けられ、押圧手段50の押さえプレート51により相対的に押圧されるが、押さえプレート51を支持する支持部52により押さえプレート51及びブラシローラ40間の間隔を調整することができるので、押さえプレート51の押さえ力を調整して、シート状部材8の搬送速度と、ブラシローラ40の回転によるブラシローラ40の擦り頻度を適正に調整することができ、電気部材5の掻落しを確実に行わせることができる。この支持部52による間隔調整は、押さえプレート51を保持するベース部材53を、移動機構54で上下動させるとともに所要の上下移動位置で位置決めするので、押さえプレート51及びブラシローラ40間の間隔調整を容易に行うことができる。
【0045】
更にまた、押さえプレート51のベース部材53に対する上下位置を調整可能な位置調整機構80があるので、押さえプレート51及びブラシローラ40間の間隔調整を、この位置調整機構80によっても行うことができる。そのため、調整を細かく行うことができ、それだけ、ブラシローラ40による電気部材5の掻落しを確実に行わせることができる。押さえプレート51及びブラシローラ40間の間隔調整は、主には移動機構54で行なう。
【0046】
この場合、移動機構54は、ジャッキ60を搬送方向に直交する幅方向に沿って間隔を隔てて複数配設して構成されるので、ジャッキ60は押さえ力が強固であることから、ブラシローラ40の回転による掻落し動作中に、押さえプレート51が撓んだりガタついたりしにくくなり、摩擦抵抗によりシート状部材8をしっかり保持でき、そのため、ブラシローラ40による電気部材5の掻落しを確実に行わせることができる。
【0047】
また、押さえプレート51は、複数のブラシローラ40毎に設けられており、ブラシローラ40毎に独立して設けられているので、押さえプレート51間で、シート状部材8に対する押圧力が一度解放されることから、シート状部材8に無理な力が作用して捻じれるなどの事態を防止することができ、円滑に搬送させながらブラシローラ40による掻落しを行わせることができる。また、各押さえプレート51のシート状部材8の搬送方向上流側の上流側縁部51aは、搬送方向上流側に向けて上向きに傾斜形成されているので、シート状部材8が搬送される際、その先端縁が傾斜した上流側縁部51aに当接して、ブラシローラ40に向けて進行するようにガイドされることから、シート状部材8が上向きに逃げて装置から外れる事態を防止することができ、シート状部材8を確実に押圧プレートの一般部とブラシローラ40との間に送り込むことができる。
【0048】
次に、図1乃至図3に示す本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールのリサイクルシステムRについて説明する。実施の形態に係るリサイクルシステムRは、太陽電池モジュールMに金属製の枠体7を設けたパネル製品Sから、枠体7と太陽電池モジュールMとを分離し、この太陽電池モジュールMからガラスと有用金属を含む他の材料を分別するものである。
【0049】
このリサイクルシステムRの基本的構成は、太陽電池モジュール取出し装置100,ガラス基板破砕分離装置110,篩装置120,風力選別装置130,色分別装置140,金属除去装置150,上記の電気部材回収装置K及びバックシート破砕装置160を備えてなる。
【0050】
太陽電池モジュール取出し装置100は、図示外のスタッカから供給されるパネル製品Sから枠体7を外して太陽電池モジュールMを取り出して送出するものである。太陽電池モジュール取出し装置100は、供給されたパネル製品Sを太陽電池モジュールMのバックシート2を上にして所定位置に移動させるリフタ101と、リフタ101によって所定位置に移動させられたパネル製品Sの太陽電池モジュールMのバックシート2を吸着盤により吸着してこのパネル製品Sを取り出し所要位置に搬送して位置決めするパネル搬送装置102と、所要位置に位置決めされたパネル製品Sから油圧駆動により枠体7をクランプして引っ張って外す図示外の枠体取外し機構とを備えて構成されている。パネル搬送装置102は、枠体7が外された太陽電池モジュールMをガラス基板破砕分離装置110に搬送する。「枠体7」は集約される。
【0051】
ガラス基板破砕分離装置110は、太陽電池モジュール取出し装置100からパネル搬送装置102によって搬送された太陽電池モジュールMを送出コンベア111で受け取るとともにガラス基板1を下にし且つ傾斜させて送出し、この送出コンベア111によって送出された太陽電池モジュールMのガラス基板1を破砕してガラス片を含む破砕物とガラス基板1の略全部が除去されバックシート2に電気部材5が付着した状態のシート状部材8とに分離し、このシート状部材8を、上記の電気部材回収装置Kに送出する。
【0052】
図10に示すように、ガラス基板破砕分離装置110は、送出コンベア111によって傾斜させられて送出された太陽電池モジュールMを挾持し回転させられて太陽電池モジュールMを搬送するとともに太陽電池モジュールMのガラス基板1を破砕する一対の破砕ローラ112を備えている。この一対の破砕ローラ112は、夫々、その外周面に先端が尖った破砕歯を行列状に設けて構成されており、太陽電池モジュールMを略水平方向に搬送するように設けられている。
【0053】
また、ガラス基板破砕分離装置110においては、各破砕ローラ10の下流側に設けられ太陽電池モジュールMのバックシート2側に付着したガラスのガラス片を掻き落す掻落しローラ113と、掻落しローラ113に対して太陽電池モジュールMを押さえる押さえローラ114とを備えている。また、掻落しローラ113と押さえローラ114との組が複数組(実施の形態では3組)水平方向に列設させられている。掻落しローラ113は、破砕ローラ112と同様に、その外周面に先端が尖った破砕歯を行列状に設けて構成されており、一方、押さえローラ114は、その外周面が円筒平面に形成され、若しくは、破砕ローラ112と同様に形成され、回転自在に支持されている。破砕されたガラス片を含む破砕物は、シュータ115で集約されベルトコンベア116でホッパ117に搬送され、一時的に貯留される。一方、このガラス基板破砕分離装置110によって、太陽電池モジュールMからガラス基板1の略全部が除去されバックシート2に電気部材5が付着した状態のシート状部材8は、上述の電気部材回収装置Kの供給部20に送給される。
【0054】
篩装置120は、ホッパ117に貯留され適量ずつ供給されるガラス片を含む破砕物を篩により所定粒度範囲のガラス粒を含む「中粒物」,所定粒度範囲以上の大きさの「粗物」及び所定粒度範囲以下の大きさの「細粒物」に分離するものである。「粗物」,「細粒物」は、夫々、容器や袋等に入れられて集約される。「中粒物」は、次に搬送される。
【0055】
風力選別装置130は、篩装置120で分離された「中粒物」から風力選別により軽量粉を回収して「ガラス粒」を選別して取り出すもので、周知の方法を採用することができる。「軽量粉」は、容器や袋等に入れられて集約される。「ガラス粒」は、次に搬送される。
【0056】
色分別装置140は、風力選別装置130で選別された「ガラス粒」から可能な限り有色のガラス粒を除いて無色のガラス粒を分別して取り出す。例えば、ガラス粒を落下させ、この過程で、ガラス粒に有色のものを含むか否かをCCDカメラなどの識別センサにより検知し、有色のものを含むことを検知したとき、有色のものを含むガラス粒の小集合を例えばエアエジェクターで取り除く周知の方法を採用することができる。「有色含有ガラス粒」は、容器や袋等に入れられて集約される。「無色のガラス粒」は、次に搬送される。
【0057】
金属除去装置150は、色分別装置140により分別された「無色のガラス粒」から金属を除去する。例えば、コンベアでガラス粒を搬送し、この搬送過程で金属検知器により金属を検知し、金属有を検知したとき、金属を含むガラス粒の小集合を例えば落下により取り除く周知の方法を採用することができる。「無色のガラス粒」,「金属を含むガラス粒」は、容器や袋等に入れられて集約される。
【0058】
電気部材回収装置Kは、上記のガラス基板破砕分離装置110によって、ガラス基板1の略全部が除去されバックシート2に電気部材5が付着した状態のシート状部材8を処理する。即ち、上述したように、太陽電池モジュールMの電気部材回収装置Kにおいては、ブラシローラ40の回転によってシート状部材8に付着した電気部材5が掻き落される。この際、電気部材5は封止材6を介してバックシート2に付着しているので、シート状部材8からは電気部材5が封止材6を含んで細粉片として掻き落されていく。このため、薬液を用いなくてもシート状部材8から電気部材5を機械的に容易に分離できるようになり、回収のスピード化を図ることができ、回収効率の向上を図ることができる。バックシート2は掻き落されなかった多くの封止材6と僅かの電気部材5を付着させたまま排出される。掻き落された「電気部材を含む細粉片」は集約される。詳細は上述したとおりである。
【0059】
バックシート破砕装置160は、太陽電池モジュールMの電気部材回収装置Kにより電気部材5が回収されたシート状部材8を破砕する。「シート状部材の破砕物」は、容器や袋等に入れられて集約される。
【0060】
このように集約された「電気部材を含む細粉片」,「粗物」,「細粒物」,「軽量粉」には、銀などの有用金属が含まれるので、これから銀などの高価な有用金属を抽出することができる。
また、金属除去装置150により除去された「金属を含むガラス粒」は、金属として配線などに用いられた比較的大きい銅などが多いが、これからも金属を抽出することができる。
「シート状部材の破砕物」は、主にバックシート2に掻き落されなかった多くの封止材6と僅かの電気部材5を含むが、例えば焼却処分される。電機部材を取り出すようにすることもできる。
【0061】
そして、金属が除去された「無色のガラス粒」は、種々のガラス製品の原材料として用いることができる。「有色含有ガラス粒」は、ガラス製品としてよりは、むしろ、例えば、土木の骨材等として用いることができる。このように、本システムにおいては、太陽電池モジュールMを有効にリサイクルの用に供することができる。
【0062】
尚、上記実施の形態において、電気部材回収装置はリサイクルシステムを構成する装置として説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、単独で用いるようにしても良く、適宜変更して差支えない。本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
R リサイクルシステム
K 電気部材回収装置
S パネル製品
M 太陽電池モジュール
1 ガラス基板
2 バックシート
3 太陽電池セル
4 配線材
5 電気部材
6 封止材
7 枠体
8 シート状部材
10 基台
11 送りコンベア
20 供給部
21 支承板
22 送りローラ
38 ガイド板
40 ブラシローラ
43 ブラシローラ駆動部
50 押圧手段
51 押さえプレート
52 支持部
53 ベース部材
54 移動機構
60 ジャッキ
62 電動モータ
64 ギヤ伝動機構
80 位置調整機構
100 太陽電池モジュール取出し装置
110 ガラス基板破砕分離装置
120 篩装置
130 風力選別装置
140 色分別装置
150 金属除去装置
160 バックシート破砕装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11