(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】肥満症を予防および治療するための方法および薬物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20221102BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20221102BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221102BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20221102BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20221102BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221102BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221102BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20221102BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20221102BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221102BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20221102BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221102BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221102BHJP
C07K 14/745 20060101ALN20221102BHJP
C12N 9/68 20060101ALN20221102BHJP
C12N 15/57 20060101ALN20221102BHJP
【FI】
A61K38/48 100
A61P3/04
A61K45/00
A61P3/06
A61P9/12
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/06
A61P9/10 101
A61P19/02
A61P19/08
A61P1/16
A61P43/00 121
C07K14/745 ZNA
C12N9/68
C12N15/57
(21)【出願番号】P 2019532067
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 CN2017116562
(87)【国際公開番号】W WO2018108161
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/110172
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518217305
【氏名又は名称】タレンゲン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALENGEN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リ ジナン
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0200387(US,A1)
【文献】特表2012-532596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の肥満症を予防または治療するための、有効量のプラスミノーゲンを含む医薬組成物であって、前記プラスミノーゲンは、
配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記プラスミノーゲンは、組織および/または器官、および/またはその周囲、ならびに/あるいは腹腔における脂質の異常沈着または過剰沈着を減少させることによって肥満症を治療する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記プラスミノーゲンは、皮下、心臓、肝臓、肺臓、腎臓、血管、腸間膜、腹膜、体腔、および器官周囲からなる群より選択される部位における脂質の異常沈着または過剰沈着を減少させる、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記プラスミノーゲンは、前記対象の血脂を低下させることによって肥満症を治療する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記プラスミノーゲンは、前記対象のトリグリセリドおよび低密度リポタンパク質レベルを低下させることによって肥満症を治療する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記肥満症は、単純性肥満症またはその他の疾患に継発する肥満症である、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記肥満症は、内分泌障害疾患、糖代謝疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、心血管疾患、腸疾患、甲状腺疾患、胆嚢または胆道疾患、過量飲酒、あるいは薬物作用に継発するものである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
組織および/または器官、および/またはその周囲、皮下、あるいは腹腔における脂肪の異常沈着または過剰沈着を減少させることにより、対象の肥満症の発症リスクを低めるための、有効量のプラスミノーゲンを含む医薬組成物であって、前記プラスミノーゲンは、
配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、医薬組成物。
【請求項9】
前記プラスミノーゲンは、
1)皮下、心臓、肝臓、肺臓、腎臓、血管、腸間膜、腹膜、体腔、器官周囲からなる群より選ばれる一つ以上の部位における脂質の異常沈着または過剰沈着を減少させることと、
2)肝臓脂肪の除去を促進することと、
3)血中脂質の除去を促進することと
からなる群より選択される一つ以上の方法によって対象の体内の脂肪の異常沈着または過剰沈着を低減する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記プラスミノーゲンは、血清のトリグリセリドレベル、低密度リポタンパク質レベルを低下させる、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記プラスミノーゲンは、一種以上のその他の薬物または治療方法と併用される、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記一種以上のその他の薬物は、高血圧の治療薬、糖尿病の治療薬、アテローム性動脈硬化症の治療薬、慢性糸球体腎炎の治療薬、慢性腎盂腎炎の治療薬、ネフローゼ症候群の治療薬、腎機能不全の治療薬、尿毒症の治療薬、腎移植の治療薬、脂肪肝の治療薬、肝硬変の治療薬、肥満症の治療薬からなる群より選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満症およびその関連疾患を予防および/または治療するための方法および薬物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肥満症(оbesity)とは、体内において脂肪の堆積が過剰および/または分布が異常であることをいう。世界保健機関の定義によると、体重超過および肥満は、健康を害し得る体内脂肪の過剰および/または異常累積のことである。1948年にWHOは肥満を疾患と定義し、国際疾患分類(International classification of disease,ICD)に追加した。2013年6月に、アメリカ医学会協会(American Medical Association,AMA)はその歴史上で初めて正式に肥満を疾患とし、医学的な介入措置でそれを予防および治療する必要があると宣言した[1]。また、体重超過と肥満は、心脳血管疾患(心臓病、高血圧、血脂異常、脳卒中)、2型糖尿病、筋肉骨格疾患(骨関節炎など)、消化系疾患(胆嚢疾患)、睡眠時無呼吸または呼吸障害およびいくつかの癌(子宮内膜癌、乳癌、結腸癌)などを含む、多くの疾患の危険要素である[2]。WHOのデータによると、2014年に全世界で19億以上の成人が体重超過し、そのうち6億人以上は肥満である[2]。中国では成人の体重超過率は31.5%であり、肥満率は12.2%である[3]。体重超過および肥満はすでに住民の健康に影響を与える重要な疾患となっている。
【0003】
臨床上では主に体の外部特徴を測って間接的に体内脂肪を反映する。よく使用される測定指標は、体格指数(body mass index,BMI)および腹囲(waist circumference,WC)である。BMIは肥満症を診断するための最も重要な指標であり、腹囲は腹部の脂肪の累積程度を反映することができる。現在、世界保健機関の分類基準では、BMI≧25kg・m2を体重超過とし、BMI≧30kg・m2を肥満としている。この分類は主に欧州白人のデータによって制定されているが、BMIが同じである場合に、アジア人体内の脂肪の割合は西洋人より高く、腹部の肥満はより深刻である[4]。
【0004】
中国の肥満に関するデータを研究することによって、2003年に『中国成人体重超過および肥満症予防制御指南(試用)』ではBMI≧24kg・m2を中国成人の体重超過の限界とし、BMI≧28kg・m2を肥満の限界とし、2011年に『中国成人肥満症予防治療専門家の共通認識』では、男性腹囲≧90cm、女性腹囲≧85cmを腹部肥満の判断基準としている。
【0005】
肥満症の治療は主にライフスタイルへの干渉、薬物治療、および外科手術治療に分けられる。現在、根拠に基づいた医学的証拠では、ライフスタイルへの干渉は第一線の治療案として推薦されている。『中国成人体重超過および肥満症予防制御指南(試用)』によると、ライフスタイルへの干渉が無効になる場合、すなわち、体重を5%と軽減できず、BMI指数が依然として28を超えた場合、薬物治療が薦められる。体重超過且つ一種の合併症(心血管疾患、高血圧、2型糖尿病など)が伴われる患者に対しても、ライフスタイルへの干渉が無効になった場合、薬物治療が薦められる。
【0006】
抗肥満薬は、中枢による食欲抑制薬、食欲を抑制する胃腸ホルモン系、外周に作用して栄養物質の吸収を妨害するおよび栄養物質代謝を増加させる薬物に分けられることができる。中枢による食欲抑制薬としての三つの持効性抗肥満薬のうちの二つはすでに使用停止されている。リモナバン(rimonabant)およびシブトラミン(sibutra
mine)はそれぞれ精神および心血管疾患のリスクを増やすため、2008年10月と2010年1月にEMEAによって使用停止を要求され[5-6]、かつての広範応用から使用停止になったため、抗肥満薬の市場が一度空白になった。近年来、胃腸ホルモンは食欲調節、血糖コントロールにおける作用に関する研究は盛んであり、これらの薬物は動物実験において、食欲を抑制し、体重を軽減する明らかな作用があるが、その安全性および使用の有効量については、まだ多くのさらなる臨床的試験研究が必要である。外周に作用する薬物は次の二つのターゲットに対する。すなわち、1.胃腸に作用して脂肪吸収リパーゼ阻害剤とナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤を減少させる;2.脂肪組織に作用して脂肪合成を減少させ、脂肪加水分解を促進する:主に脂肪代謝通路での酵素系を含む。リパーゼ阻害剤は胃腸と膵臓のリパーゼを阻害することによって飲食中の脂肪の吸収を減少させる。オルリスタット(оrlistat)は抗肥満の効果が明らかであり、副作用が小さいが、アメリカでは13人の服用者には重度の肝損傷があったと報告され、最近、FDAはそのメーカーに製品プロトコルの更新を促すことを決めた[7]。
【0007】
薬物治療を実施する前の3ヶ月において、少なくとも毎月薬物の有効性および安全性を評価し、その後も3ヶ月ごとに1回評価すべきである[8]。抗肥満薬の安全性はその広範な応用を制限する主因であり、また、薬物の抗肥満効果も限られている。そのため、現在では、薬物治療は肥満症治療の補助手段であり、医療専門家の助けでライフスタイルを改善することこそ、体重超過および肥満を治療するための第一選択方法である。肥満症は慢性疾患であり、永久の抗肥満効果を果たす薬物はなく、長期的に薬物を服用するしか体重を保持することができない。数が増え続ける体重超過および肥満の患者に面して、より安全で効果的な抗肥満薬を見つけることは、人々の切実な望みである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は下記項に係る。
【0009】
1.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の肥満症を予防または治療するための方法。
【0010】
2.前記プラスミノーゲンは、組織器官、組織器官周囲および/または腹腔における脂質の異常沈着または過剰沈着を減少させることによって肥満症を治療する、項1に記載の方法。
【0011】
3.前記プラスミノーゲンは、皮下、心臓、肝臓、肺臓、腎臓、血管、腸間膜、腹膜、体腔、器官周囲における脂質の異常沈着または過剰沈着を減少させる、項2に記載の方法。
【0012】
4.前記プラスミノーゲンは、被験者の血脂を低下させることによって、特にトリグリセリドと低密度リポタンパク質レベルを低下させることによって肥満症を治療する、項1に記載の方法。
【0013】
5.前記肥満症は、単純性肥満症またはその他の疾患に継発する肥満症である、項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【0014】
6.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の肥満症を予防または治療するための方法であって、前記肥満症は、内分泌障害疾患、糖代謝疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、心血管疾患、腸疾患、甲状腺疾患、胆嚢または胆道疾患、過量飲酒、薬物作用に継発するものである、被験者の肥満症を予防または治療するための方法。
【0015】
7.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の疾患と合併する肥満症を予防および/または治療するための方法であって、前記疾患と合併する肥満症は、内分泌疾患と合併する肥満症、代謝性疾患と合併する肥満症、心血管疾患と合併する肥満症、消化系疾患と合併する肥満症、退行性疾患と合併する肥満症を含む、被験者の疾患と合併する肥満症を予防および/または治療するための方法。
【0016】
8.前記肥満症は、糖尿病と合併する肥満症、高血圧と合併する肥満症、アテローム性動脈硬化症と合併する肥満症、肝臓疾患と合併する肥満症、骨粗しょう症と合併する肥満症を含む、項7に記載の方法。
【0017】
9.被験者に治療に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、肥満症による合併症を予防または治療するための方法であって、前記肥満症の合併症は、心脳血管疾患、代謝性疾患、筋肉骨格疾患、消化系疾患、睡眠時無呼吸、呼吸障害を含む、肥満症による合併症を予防または治療するための方法。
【0018】
10.前記合併症は、高血圧、糖尿病、冠状動脈心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、アテローム性動脈硬化症、脳血栓、脳出血、骨関節炎、骨増殖症、胆嚢炎、脂肪肝、肝硬変である、項9に記載の方法。
【0019】
11.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者のアテローム性動脈硬化症の発症リスクを低めるため方法。
【0020】
12.前記プラスミノーゲンは肥満症を治療することによって被験者のアテローム性動脈硬化症の発症リスクを低める、項11に記載の方法。
【0021】
13.組織器官またはその周囲、皮下または腹腔における脂肪の異常または過剰沈着を減少させるように被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の肥満症の発症リスクを低めるための方法。
【0022】
16.被験者の肥満症を予防または治療するための薬物の製造におけるプラスミノーゲンの用途。
【0023】
17.前記プラスミノーゲンは、
1)皮下、心臓、肝臓、肺臓、腎臓、血管、腸間膜、腹膜、体腔、器官周囲からなる群より選ばれる一つ以上の部位における脂質の異常沈着または過剰沈着を減少させることと、
2)肝臓脂肪の除去を促進することと、
3)血中脂質の除去を促進することで被験者の心臓病の発症リスクを低めることと
からなる群より選ばれる一つ以上によって被験者体内の脂肪の異常または過剰沈着を低減する、項16に記載の用途。
【0024】
18.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の血脂を低下させるため方法。
【0025】
19.前記プラスミノーゲンは、血清のトリグリセリドレベル、低密度リポタンパク質レベルを低下させる、項18に記載の方法。
【0026】
20.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与して血管壁における脂質の異常または過剰沈着を軽減することを含む、被験者のアテローム性動脈硬化症または心臓病の発症リスクを低めるための方法。
【0027】
21.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与して肝臓による沈着脂肪の除去を促進することを含む、被験者の肥満症を治療するための方法。
【0028】
22.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の肥満症を治療するための方法であって、前記プラスミノーゲンは、
1)皮下、心臓、肝臓、肺臓、腎臓、血管、腸間膜、腹膜、体腔、器官周囲からなる群より選ばれる一つ以上の部位における脂質の異常沈着または過剰沈着を減少させることと、
2)肝臓脂肪の除去を促進することと、
3)血中脂質の除去を促進することと
からなる群より選ばれる一つ以上によって被験者体内の脂肪を低減する、被験者の肥満症を治療するための方法。
【0029】
23.前記肥満症は、単純性肥満症またはその他の疾患に継発する肥満症である、項22に記載の方法。
【0030】
24.前記肥満症は、内分泌障害疾患、糖代謝疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、心血管疾患、腸疾患、甲状腺疾患、胆嚢または胆道疾患、過量飲酒、薬物作用に継発するものである、項23に記載の方法。
【0031】
25.前記プラスミノーゲンは一種以上のその他の薬物または治療方法と併用することができる、項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【0032】
26.前記一種以上のその他の薬物は、高血圧の治療薬、糖尿病の治療薬、アテローム性動脈硬化症の治療薬、慢性糸球体腎炎の治療薬、慢性腎盂腎炎の治療薬、腎臓病症候群の治療薬、腎機能不全の治療薬、尿毒症の治療薬、腎移植の治療薬、脂肪肝の治療薬、肝硬変の治療薬、肥満症の治療薬を含む、項25に記載の方法。
【0033】
27.前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、チロキシンを含む、項26に記載の方法。
【0034】
28.前記薬物は、スタチン系、フィブラート系、ニコチン酸、コレスチラミン、クロフィブラート、益壽寧や血脂平や心脈楽のような不飽和脂肪酸、硫酸多糖類のような脂質低下薬;アスピリン、ペルサンチン、クロピドグレル、シロスタのような抗血小板薬;ヒドララジン、ニトログリセリンと硝酸イソソルビド、ニトロプルシドナトリウム、プラゾシンのようなα1受容体遮断薬、フェントラミンのようなα受容体遮断薬、サルブタモールのようなβ2受容体刺激薬、カプトプリル、エナラプリル、ニフェジピンやジルチアゼム、サルブタモール酸、ミノキシジル、プロスタグランジン、カルジオナトリンのような血管拡張薬;ウロキナーゼとストレプトキナーゼ、組織型プラスミノーゲン活性化剤、単鎖ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化剤、TNK-組織型プラスミノーゲン活性化剤のような血栓溶解薬;ヘパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、ビバリルジンのような抗凝固薬を含む、項27に記載の方法。
【0035】
29.前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するものである、項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【0036】
30.前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12において、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を添加、削除および/または置換したものであり、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である、項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【0037】
31.前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である、項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【0038】
32.前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性を保持した変異体である、項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【0039】
33.前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである、項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【0040】
34.前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである、項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【0041】
35.前記プラスミノーゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである、項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【0042】
36.前記プラスミノーゲンは、ヒト由来の天然プラスミノーゲンである、項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【0043】
37.前記被験者はヒトである、項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【0044】
38.前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している、項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【0045】
39.前記不足または欠乏は、先天的、継発的および/または局所的である、項38に記載の方法。
【0046】
40.項1~39のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲン。
【0047】
41.薬学的に許容される担体および項1~39のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲンを含む薬物組成物。
【0048】
42.(i)項1~39のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲンと、(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための手段(means)とを含む、予防性または治療性キット。
【0049】
43.前記手段はシリンジまたはバイアルである、項42に記載のキット。
【0050】
44.項1~39のいずれか1項に記載の方法を実施するように前記プラスミノーゲン
を前記被験者に投与することを指示するラベルまたはプロトコルをさらに含む、項42または43に記載のキット。
【0051】
45.ラベルを含む容器と、
(i)項1~39のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲン、またはプラスミノーゲンを含む薬物組成物とを含む製品であって、
前記ラベルは、項1~39のいずれか1項に記載の方法を実施するように前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する、製品。
【0052】
46.その他の薬物を含む、もう一つ以上の部材または容器をさらに含む、項42~44のいずれか1項に記載のキット、または項45に記載の製品。
【0053】
47.前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、チロキシンからなる群より選ばれる、項46に記載のキットまたは製品。
【0054】
48.プラスミノーゲンを含む抗肥満薬。
【0055】
49.プラスミノーゲンを含む抗肥満製品。
【0056】
50.体重を減らすためのプラスミノーゲンの用途。
【0057】
本発明はさらに、上記方法に用いられる薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。
【0058】
一つの局面において、本発明は、被験者に予防および/または治療に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の肥満症およびその関連疾患を予防および/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の肥満症およびその関連疾患の予防および/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の肥満症およびその関連疾患を予防および/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の肥満症およびその関連疾患の予防および/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の肥満症およびその関連疾患を予防および/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0059】
一部の実施形態において、前記肥満症は、過剰な飲食による肥満症である。一部の実施形態において、前記肥満症は継発性肥満症であり、例えば、内分泌障害疾患、糖代謝疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、心血管疾患、腸疾患、甲状腺疾患、胆嚢または胆道疾患、飲酒、薬物治療によって引き起こされるまたはそれに伴われる脂肪代謝障害のような脂肪代謝障害疾患に継発するものである。一部の実施形態において、前記脂肪代謝障害は、高血圧、糖尿病、慢性肝炎、肝硬変、腎損傷、慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、腎病症候群、腎機能不全、腎移植、尿毒症、甲状腺機能低下、閉塞性胆嚢炎、閉塞性胆管炎、薬物またはホルモン治療によって引き起こされるまたはそれに伴われる脂肪代謝障害である。一部の実施形態において、前記脂肪代謝障害は、高脂血症、高リポタンパク質血症、脂肪肝、アテローム性動脈硬化症、肥満症、臓器脂肪沈着である。
【0060】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の身体の組織器官における異常または過剰な脂肪沈着を予防および/または低減するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の身体の組織器官における異常
または過剰な脂肪沈着の予防および/または低減におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の身体の組織器官における異常または過剰な脂肪沈着を予防および/または低減するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の身体の組織器官における異常または過剰な脂肪沈着の予防および/または低減に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の身体の組織器官における異常または過剰な脂肪沈着を予防および/または低減するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0061】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の身体の組織器官における異常または過剰な脂肪沈着による疾患を予防および/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の身体の組織器官における異常または過剰な脂肪沈着による疾患の予防および/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の身体の組織器官における異常または過剰な脂肪沈着による疾患を予防および/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の身体の組織器官における異常または過剰な脂肪沈着による疾患を予防および/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0062】
一部の実施形態において、前記身体の組織器官における異常または過剰な脂肪沈着とは、血液、皮下組織、血管壁、臓器における異常または過剰な脂肪沈着のことである。一部の実施形態において、前記身体の組織器官における異常または過剰な脂肪沈着による疾患は、肥満症、高脂血症、高リポタンパク質血症、脂肪肝、アテローム性動脈硬化症、脂質性心臓損傷、脂質性腎損傷、脂質性膵島損傷を含む。
【0063】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の脂肪代謝障害による肥満症を予防および/または治療する方法に係る。本発明はさらに、被験者の脂肪代謝障害による肥満症の予防および/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の脂肪代謝障害による肥満症を予防および/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の脂肪代謝障害による肥満症の予防および/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の脂肪代謝障害による肥満症を予防および/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。一部の実施形態において、前記疾患は、肥満症、高脂血症、高リポタンパク質血症、脂肪肝、アテローム性動脈硬化症、脂質性心臓損傷、脂質性腎損傷を含む。
【0064】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、異常または過剰な脂肪沈着を低減することによって被験者の疾患を治療するための方法に係る。本発明はさらに、異常または過剰な脂肪沈着を低減することによって被験者の疾患の治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、異常または過剰な脂肪沈着を低減することによって被験者の疾患を治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、異常または過剰な脂肪沈着を低減することによって被験者の疾患の治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、異常または過剰な脂肪沈着を低減することによって被験者の疾患を治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0065】
一部の実施形態において、前記疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、脂肪肝、肝硬変、脳虚血、脳梗塞、腎機能不全、腎臓病症候群、腎機能不全、肥満症を含む。
【0066】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の組織器官の脂質性損傷を予防および/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の組織器官の脂質性損傷の予防および/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の組織器官の脂質性損傷を予防および/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の組織器官の脂質性損傷の予防および/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の組織器官の脂質性損傷を予防および/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0067】
一部の実施形態において、前記組織器官は、動脈管壁、心臓、肝臓、腎臓、膵臓を含む。
【0068】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の高脂血症を改善するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症の改善におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症を改善するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の高脂血症の改善に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症を改善するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0069】
一部の実施形態において、前記高脂血症は、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、混合型高脂血症、および低高密度リポタンパク質血症からなる群より選ばれる一つ以上である。
【0070】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させるための方法に係る。本発明はさらに、被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクの低下におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させるための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクの低下に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させるための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0071】
一部の実施形態において、前記被験者は、高血圧、肥満症、糖尿病、慢性肝炎、肝硬変、腎損傷、慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、腎病症候群、腎機能不全、腎移植、尿毒症、甲状腺機能低下、閉塞性胆嚢炎、または閉塞性胆管炎に罹患している、または前記被験者は、脂肪代謝に影響する薬物またはホルモンを服用している。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、血の総コレステロールレベルを低下させることと、トリグリセリドレベルを低下させることと、低密度リポタンパク質レベルを低下させることと、高密度リポタンパク質レベルを上昇させることとからなる群より選ばれる一つ以上によって被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させる。
【0072】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の高脂血症を改善することによって疾患を治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症を改善することによって疾患を治療することにおけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症を改善することによって疾患を治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の高脂血症を改善することによって疾患を
治療することに使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症を改善することによって疾患を治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0073】
一部の実施形態において、前記疾患は、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、慢性肝炎、脂肪肝、肝硬変、脳循環不全、脳虚血、脳梗塞、慢性腎炎、慢性腎盂腎炎、腎機能不全、腎臓病症候群、尿毒症、肥満症を含む。
【0074】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の高血脂の関連疾患を予防および/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の高血脂の関連疾患の予防および/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の高血脂の関連疾患を予防および/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の高血脂の関連疾患の予防および/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の高血脂の関連疾患を予防および/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。一部の実施形態において、前記疾患は、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、慢性肝炎、脂肪肝、肝硬変、脳循環不全、脳虚血、脳梗塞、慢性腎炎、慢性腎盂腎炎、腎機能不全、腎臓病症候群、尿毒症、肥満症を含む。
【0075】
本発明の上記いずれか一つの実施形態において、前記プラスミノーゲンは、一種以上のその他の薬物または治療方法と併用することができる。一部の実施形態において、前記一種以上のその他の薬物は、高血圧の治療薬、糖尿病の治療薬、アテローム性動脈硬化症の治療薬、慢性糸球体腎炎の治療薬、慢性腎盂腎炎の治療薬、腎臓病症候群の治療薬、腎機能不全の治療薬、尿毒症の治療薬、腎移植の治療薬、脂肪肝の治療薬、肝硬変の治療薬、肥満症の治療薬を含む。一部の実施形態において、前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、チロキシンを含む。一部更なる実施形態において、前記薬物は、スタチン系、フィブラート系、ニコチン酸、コレスチラミン、クロフィブラート、益壽寧や血脂平や心脈楽のような不飽和脂肪酸、硫酸多糖類のような脂質低下薬;アスピリン、ペルサンチン、クロピドグレル、シロスタのような抗血小板薬;ヒドララジン、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニトロプルシドナトリウム、プラゾシンのようなα1受容体遮断薬、フェントラミンのようなα受容体遮断薬、サルブタモールのようなβ2受容体刺激薬、カプトプリル、エナラプリル、ニフェジピン、ジルチアゼム、サルブタモール酸、ミノキシジル、プロスタグランジン、カルジオナトリンのような血管拡張薬;ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織型プラスミノーゲン活性化剤、単鎖ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化剤、TNK-組織型プラスミノーゲン活性化剤のような血栓溶解薬;ヘパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、ビバリルジンのような抗凝固薬を含む。
【0076】
本発明の上記いずれか一つの実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するものである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12において、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を添加、削除および/または置換したものであり、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である。
【0077】
一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性を保持した変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸配列は2、6、8、10または12に示される通りである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト由来の天然プラスミノーゲンである。
【0078】
一部の実施形態において、前記被験者はヒトである。一部の実施形態において、前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している。一部の実施形態において、前記不足または欠乏は、先天的、継発的および/または局所的である。
【0079】
一部の実施形態において、前記薬物組成物は、薬学的に許容される担体および前記方法に使用されるプラスミノーゲンを含む。一部の実施形態において、前記キットは、(i)前記方法に使用されるプラスミノーゲンと、(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための手段(means)とを含む、予防性または治療性キットであってもよい。一部の実施形態において、前記手段はシリンジまたはバイアルである。一部の実施形態において、前記キットは、前記いずれかの方法を実施するように前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するラベルまたはプロトコルをさらに含む。
【0080】
一部の実施形態において、前記製品は、ラベルを含む容器と;(i)前記方法に使用されるプラスミノーゲン、またはプラスミノーゲンを含む薬物組成物とを含む製品であり、前記ラベルは、前記いずれかの方法を実施するように前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する。
【0081】
一部の実施形態において、前記キットまたは製品は、その他の薬物を含む、もう一つ以上の部材または容器をさらに含む。一部の実施形態において、前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、チロキシンからなる群より選ばれる。
【0082】
前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは全身または局所投与により投与され、好ましくは、静脈内、筋肉内、皮下という経路により投与される。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与する。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは毎日0.0001~2000mg/kg、0.001~800mg/kg、0.01~600mg/kg、0.1~400mg/kg、1~200mg/kg、1~100mg/kg、10~100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001~2000mg/cm2、0.001~800mg/cm2、0.01~600mg/cm2、0.1~400mg/cm2、1~200mg/cm2、1~100mg/cm2、10~100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量を投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは少なくとも毎日投与する。
【0083】
本発明は、本発明に係る実施形態どうしの技術的特徴のすべての組み合わせを明確にカ
バーし、且つこれらの組み合わせた技術構成は前記実施形態が単独且つ明確に開示されているように、本出願で明確に開示されている。また、本発明はさらに各実施形態および要素のすべてのサブの組み合わせを明確にカバーし、この組み合わせた技術構成は本明細書中において明確に開示されている。
[発明の詳細な説明]
【0084】
定義
本発明でいう「脂肪代謝障害」は「脂肪代謝異常」、「脂肪代謝乱れ」ともいわれ、脂肪代謝が異常を起こし、乱れ、あるいは障害されて引き起こされる臨床または病理的表現の総称である。本文において、「脂肪代謝障害」、「脂肪代謝異常」、「脂肪代謝乱れ」は互いに置き換えて使用することができる。本発明において、「脂肪代謝」、「脂代謝」、「脂質代謝」は互いに置き換えて使用することができる。
【0085】
「脂肪代謝障害の関連疾患」は、脂肪代謝障害に相関する疾患の総称である。前記相関は、病因の相関、発症メカニズムの相関、病理的表現の相関、臨床症状の相関、および/または治療原則の相関であってもよい。
【0086】
「血脂」は、トリグリセリド、コレステロール、およびリン脂質などの総称であり、リポタンパク質は、アポリポタンパク質と血脂とからなる球状高分子複合体であり、リポタンパク質が含むコレステロール、トリグリセリドの成分の違いおよび密度によって、カイロミクロン(CM)、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)の5種類に分けられている。血脂危険レベルによって、臨床で最もよく見られる異常なリポタンパク質血症の類型として、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、混合型高脂血症、低高密度リポタンパク質血症が挙げられる。継発性血脂は、糖尿病、甲状腺機能低下、腎臓病症候群、腎移植、重篤肝臓病、閉塞性胆道疾患、肥満症、飲酒、エストロゲン治療などのような薬物治療によく見られており、継発性血脂を排除できれば、原発性血脂異常であることは考えられる。
【0087】
「高血脂」は、血漿におけるコレステロール、トリグリセリド、リン脂質、および脂質化していない脂肪酸など、血脂成分が増加する病理的状況を指す。
【0088】
「高血脂の関連疾患」とは、病因、発症メカニズム、病理的表現、臨床症状、および/または治療原則が高血脂と相関する疾患のことである。好ましくは、前記疾患は、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、慢性肝炎、脂肪肝、肝硬変、脳循環不全、脳虚血、脳梗塞、慢性腎炎、慢性腎盂腎炎、腎機能不全、腎臓病症候群、尿毒症、肥満症を含むが、これらに限られていない。
【0089】
脂肪代謝または運転異常による血漿における一種以上の脂質異常は、「高脂血症」、「高血脂症」、または「血脂異常」(dyslipidemia)と称される。
【0090】
脂質は水に溶けない、または微量に溶けるので、タンパク質と結合してリポタンパク質の形でしか血液循環において運送できないため、高脂血症はよく「高リポタンパク質血症」を反映している。
【0091】
本発明の「高血脂の関連疾患」は、「高脂血症の関連疾患」、「高リポタンパク質血症の関連疾患」とも言われる。
【0092】
「肥満症」は「肥満」ともいい、体内において脂肪の堆積が過剰および/または分布が異常であることをいう。肥満または肥満症によく使用される判断指標は、体格指数(BM
I)と腹囲(WC)がある。現在、世界保健機関の分類基準では、BMI≧25kg・m2を体重超過とし、BMI≧30kg・m2を肥満としている。しかし、この指標は、国家、地域、人種によってその上下限にはやや差がある。例えば、2003年に『中国成人体重超過および肥満症予防制御指南(試用)』ではBMI≧24kg・m2を中国成人の体重超過の限界とし、BMI≧28kg・m2を肥満の限界としている。以上の「肥満」と「体重超過」についての分類から見ると、体重超過と肥満は違う程度を表している。本発明の請求項および明細書でいう肥満または肥満症は、「体重超過」という意味もカバーする。本発明でいう「肥満」、「肥満症」、および[体重超過]は、様々な原因であってもよく、例えば、単なる食事することによる体重の増加過ぎでもよい。
【0093】
本発明の実験によって、プラスミノーゲンが、体内器官、器官周囲、腹腔などの部位における脂肪の異常または過剰な沈着を改善することができることは証明されているので、プラスミノーゲンを抗肥満薬に使用して肥満または体重超過の状況を治療し、脂肪を低減して体重を軽減することができる。
【0094】
本発明は、抗肥満薬に使用されるプラスミノーゲン、またはプラスミノーゲンを含む薬物組成物、キットまたは製品に係る。本発明のプラスミノーゲンは薬物に使用できる他、食品添加剤として食品または飲料に使用することができる。本発明のプラスミノーゲンは、ダイエットのために美容ダイエット製品に使用することもできる。そのため、本発明のプラスミノーゲンは様々な便利な形でダイエットや体重を減らすニーズのある被験者に投与することができる。
【0095】
プラスミンはプラスミノーゲン活性化系(PA系)の重要な成分である。それは広スペクトルのプロテアーゼであり、細胞外マトリックス(ECM)の幾つかの成分を加水分解することができ、これらの成分はフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニンおよびプロテオグリカンを含む[9]。また、プラスミンは一部のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(pro-MMP)を活性化させて活性のあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)にすることができる。そのためプラスミンは細胞外タンパク加水分解作用の一つの重要な上流調節因子である[10、11]。プラスミンはプラスミノーゲンが二種類の生理性のPA:組織型プラスミノーゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)をタンパク質加水分解することで形成されるものである。プラスミノーゲンは血漿および他の体液中において、相対的レベルが比較的高く、従来的にはPA系の調節は主にPAの合成および活性レベルよって実現されると考えられている。PA系成分の合成は異なる要素によって厳密な制御を受け、例えばホルモン、成長因子およびサイトカインである。また、この他に、プラスミンとPAsの特定の生理的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミン(α2-antiplasmin)である。PAsの活性は、uPAとtPAとのプラスミノーゲン活性剤阻害剤-1(PAI-1)に同時に阻害され、uPAを主に阻害するプラスミノーゲン活性剤阻害剤-2(PAI-2)によって調節される。一部の細胞表面には直接加水分解する活性のあるuPA特異性細胞表面受容体(uPAR)がある[12、13]。
【0096】
プラスミノーゲンは単一鎖の糖タンパクであり、791個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDaである[14、15]。プラスミノーゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液に存在している。血漿中に含まれるプラスミノーゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノーゲンは組織および体液中のタンパク質加水分解活性の大きな潜在的な由来である[16、17]。プラスミノーゲンには二種類の分子の形が存在する:グルタミン酸-プラスミノーゲン(Glu-plasminogen)およびリジン-プラスミノーゲン(Lys-plasminogen)である。天然的に分泌されかつ分解していない形のプラスミノーゲンは一つのアミノ基末端(N-末端)グルタミン酸を有し、そのためグルタミン酸-プラスミノーゲンと称される。しかし、プラスミンが存在する場
合、グルタミン酸-プラスミノーゲンはLys76-Lys77においてリジン-プラスミノーゲンに加水分解される。グルタミン酸-プラスミノーゲンと比較して、リジン-プラスミノーゲンはフィブリンとより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAによって活性化されることができる。この二種類の形のプラスミノーゲンのArg560-Val561ペプチド結合はuPA またはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって接続された二重鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらす[18]。プラスミノーゲンのアミノ基末端部分は五つの相同性三環を含み、即ちいわゆるkringlesであり、カルボキシル基末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のKringlesはプラスミノーゲンとフィブリンおよびその阻害剤α2-APの特異的相互作用を介在するリジン結合部位を含む。最も新しく発見されたのは38kDaのフィブリンプラスミノーゲンフラグメントであり、kringlel-4を含み、血管生成の有効的な阻害剤である。このフラグメントはアンジオスタチン(Angiostatin)と命名され、幾つかのプロテアーゼ加水分解プラスミノーゲンから生成される。
【0097】
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病理学的血栓の形成を予防するキーポイントである[19]。プラスミンはさらにECMの幾つかの成分に対する基質特異性を有し、これらはラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカンおよびゼラチンを含み、これはプラスミンがECM再建において重要な作用を有することを示している[15、20、21]。間接的に、プラスミンはさらにいくつかのプロテアーゼ前駆体を活性プロテアーゼに変換することによりECMのその他の成分を分解し、MMP-1、MMP-2、MMP-3およびMMP-9を含む。そのため、以下のように提唱する人がいる。プラスミンは細胞外タンパク加水分解の重要な上流調節因子である可能性がある[22]。また、プラスミンはいくつかの潜在的な形の成長因子を活性化させる能力を有する[23-25]。体外において、プラスミンはさらに補体系の成分を加水分解させて走化性の補体フラグメントを放出することができる。
【0098】
「プラスミン」は血液中に存在する非常に重要な酵素であり、フィブリン凝塊をフィブリン分解生成物およびD-二量体に加水分解する。
「プラスミノーゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドのヒト由来の天然プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列4)は計算によれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約90kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノーゲンは七つのドメインを含む:C末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメインおよび5つのKringleドメイン(Kringle1-5)を含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1-Gly19を含み、PApは残基Glu20-Val98を含み、Kringle1は残基Cys103-Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184-Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275-Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377-Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481-Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581-Arg804を含む。
【0099】
Glu-プラスミノーゲンは天然のフルサイズのプラスミノーゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)。該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示される通りである。体内において、さらにGlu-プラスミノーゲンの第76-77位のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys-プラスミノーゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。δ-プラスミノーゲン(δ-plasminogen)はフルサイ
ズのプラスミノーゲンにKringle2-Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1およびセリンプロテアーゼドメインしか含有せず[26、27]、δ-プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり[27]、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7である。ミニプラスミノーゲン(Mini-plasminogen)はKringle5およびセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443-Asn791(シグナルペプチドGlu-プラスミノーゲン配列を含まないGlu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており[28]、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノーゲン(Micro-plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基は開始アミノ酸である)と文献が報告し[29]、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531-Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許の配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
【0100】
本発明の「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」とは互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノーゲン」と「フィブリンプラスミノーゲン」、「繊維タンパクプラスミノーゲン」とは互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
【0101】
本願において、プラスミノーゲンの「欠乏」とは、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より低く、被験者の正常な生理学的機能に影響を及ぼすのに十分に低いことをいう。プラスミノーゲンの「欠乏」の意味は、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より明らかに低く、活性または発現が極微量であり、外部供給によってのみ正常な生理学的機能を維持できることである。
【0102】
当業者は以下のように理解できる。本発明のプラスミノーゲンのすべての技術構成はプラスミンに適用でき、そのため、本発明に記載の技術構成はプラスミノーゲンおよびプラスミンをカバーするものである。
【0103】
循環プロセスにおいて、プラスミノーゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションであるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノーゲン活性化剤(plasminogen activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン分解生成物およびD-二量体に加水分解させ、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノーゲンのPApドメインはプラスミノーゲンを非活性閉鎖コンフォメーションにする重要なエピトープであり、しかしKRドメインは受容体および基質上のリジン残基と結合できるものである。プラスミノーゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、以下を含む:組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)、カリクレインおよび血液凝固因子XII(ハーゲマン因子)などである。
【0104】
「プラスミノーゲン活性フラグメント」とはプラスミノーゲンタンパク質において、基質中のターゲット配列と結合してタンパク質加水分解機能を発揮できる活性フラグメントである。本発明はプラスミノーゲンの技術構成に係り、プラスミノーゲン活性フラグメントでプラスミノーゲンの代替とする技術構成を含む。本発明に記載のプラスミノーゲン活性フラグメントはプラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むタンパク質であ
り、好ましくは、本発明に記載のプラスミノーゲン活性フラグメントは配列14、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性のアミノ酸配列を含有するタンパク質を含むものである。そのため、本発明に記載のプラスミノーゲンは該プラスミノーゲン活性フラグメントを含み、且つ依然として該プラスミノーゲン活性を有するタンパク質を含む。
【0105】
現在、血液中のプラスミノーゲンおよびその活性測定方法は以下を含む:組織フィブリンプラスミノーゲン活性化剤の活性に対する測定(t-PAA)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤抗原に対する測定(t-PAAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノーゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン-抗プラスミン複合体に対する測定(PAP)。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象(被験者)の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のプラスミノーゲンはSKの作用下においてプラスミンとなり、後者は発光基質に作用し、それから分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノーゲンの活性と正比例の関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のフィブリンプラスミノーゲン活性に対して測定を行うことができる。
【0106】
「オルソログ(ortholog)」とは異なる種どうしのホモログであり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含む。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノーゲンはヒト由来の天然プラスミノーゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノーゲン活性を有するプラスミノーゲンオルソログを含む。
【0107】
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの指定されたアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーションおよび機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、塩基性、疎水性など)のアミノ酸でペアレントタンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジンおよびリジンは親水性の塩基性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%~99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換バリアント」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素を含み、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然またはペアレントタンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
【0108】
「分離された」プラスミノーゲンとは天然環境から分離および/または回収されたプラスミノーゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノーゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製し、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製する、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になる精製する、または(3)同質性になるまで精製する。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノーゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造することが
でき、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノーゲンを含む。
【0109】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体を指し、遺伝的にコードされたおよび非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、および修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するか有しない)を含む融合物;等々である。
【0110】
参照ポリペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要に応じてギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的とした比較は本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は配列をアライメントするための適切なパラメータを決めることができ、比較対象の配列のフルサイズに対して最大比較の要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN-2により得られるものである。
【0111】
ALIGN-2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、所定のアミノ酸配列Aの所定のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bに対して、と、またはについてのあるアミノ酸配列と同一性を有する又は含む所定のアミノ酸配列Aともいう)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
【0112】
そのうちXは配列アライメントプログラムALIGN-2において該プログラムのAおよびBのアライメントにおいて同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つそのうちYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。特に断りのない限り、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN-2コンピュータプログラムによって得られるものである。
【0113】
本文において使用されているように、用語の「治療」および「処理」は期待される薬理および/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状を完全または一部予防すること、および/または疾患および/またはその症状を一部または完全に治癒するものとすることができる。さらに以下を含む:(a)疾患が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況であること;(b)疾患を抑制し、その形成を阻害すること;および(c)疾患および/またはその症状を減軽し、即ち疾患および/またはその症状を減退させること。
【0114】
用語の「個体」、「被験者」および「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
【0115】
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与して疾患の治療に用いられる際に疾患の前記予防および/または治療を実現できるプラスミノーゲンの量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノーゲン、治療しようとする被験者の疾患および/または症状の重症度および年齢、体重などに従って変化するものである。
【0116】
本発明のプラスミノーゲンの調製
プラスミノーゲンは治療の用途に用いられるために、自然界から分離および精製されるものでもよく、標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することでもよい。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノーゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmocおよびBocは、プラスミノーゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:BaranyおよびSolid-Phase Peptide Synthesis;3-284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);およびGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3-10およびCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723-8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖が構築されている機能性ユニットにより不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンと単一のN保護を受けているアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と接続する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、それからそれを切除する。
【0117】
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノーゲンを生産する。例えば、プラスミノーゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に接続させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然に関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメントおよび転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーターシステムとすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせる。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現およびプラスミノーゲンの収集および精製に適した条件下において宿主を維持する。
【0118】
適切な発現ベクターは通常宿主体内において附加体または宿主染色体DNAの整合部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、インビトロで所望のDNA配列によって形質転換されたそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
【0119】
大腸菌(Escherichia coli)は目的抗体をコードするポリヌクレオチドをクローンする原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)およびその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Sal
monella)、セラチア属(Serratia)、および各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と相容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、β-ラクタマーゼプロモーターシステム、またはファージλ由来のプロモーターシステムである。プロモーターは一般的に発現を制御し、必要に応じて遺伝子配列を制御する場合に、転写および翻訳を起動するために、さらにリボソームの結合位置配列を有してもよい。
【0120】
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えばサッカロミセス(S.cerevisiae))およびピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であり、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列などを含む。典型的なプロモーターは3-ホスホグリセリン酸キナーゼおよびその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母プロモーターはアルコール脱水素酵素、イソチトクロムC、およびマルトースとガラクトースの利用のための酵素のプロモーターを含む。
【0121】
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えば体外細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明のプラスミノーゲンの発現および生成に用いることができる(例えば目的抗-Tau抗体をコードするポリヌクレオチド)。例えばWinnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、および形質転換されたB細胞またはハイブリドーマを含む。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、およびエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、および必要とされる加工情報位置、例えばリボソームの結合サイト、RNAの切断サイト、ポリアデノシン酸化サイト、および転写ターミネーター配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウィルス、サイトメガロウイルスなどの派生のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
【0122】
一旦合成(化学または組み換え的に)されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノーゲンを精製することができる。該プラスミノーゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%~90%の純度で、少なくとも約90%~95%の純度で、または98%~99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、目的抗体以外の大分子などである。
【0123】
薬物配合剤
所望の純度のプラスミノーゲンと必要に応じた薬用担体、賦形剤、または安定化剤(Remington′s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))とを混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定化剤は所要の用量および濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩およびその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;アルキルパラヒドロキ
シ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール);低分子量ポリペプチド(少なくとも10個の残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖およびその他の炭水化物はグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク複合体);および/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましくは凍結乾燥された抗-VEGF抗体配合剤であり、WO 97/04801に記載されているとおりであり、本明細書において参考とされるものである。
【0124】
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状の必要とする一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。例えば、血圧降下薬、抗不整脈薬、糖尿病治療薬等である。
【0125】
本発明のプラスミノーゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に内包ことができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子およびナノカプセル)中に入れまたは粗エマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセルおよびポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術はRemington′s Pharmaceutical Sciences
16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0126】
体内に投与することに用いられる本発明のプラスミノーゲンは必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥および再度配合する前または後に除菌濾過膜で濾過することで容易に実現できる。
【0127】
本発明のプラスミノーゲンは緩衝製剤を調製できる。緩衝製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過マトリックスを含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。緩衝基質の実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98-105(1982))またはポリ(ビニールアルコール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸の共重合体(Sidman,ら,Biopolymers
22:547(1983)),分解できないエチレン-ビニルアセテート(ethylene-vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体およびリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、およびポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン-酢酸エチルおよび乳酸-ヒドロキシ酢酸は、持続的に分子を100日間以上放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーにより設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S-S結合を形成するであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、および特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現できる。
【0128】
投与および使用量
異なる方式、例えば静脈内、腹膜内、皮下、頭蓋骨内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈)、筋肉内投与により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。
【0129】
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液および乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルのような植物油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、アルコール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、塩水および緩衝媒介を含む。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガ―デキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体および栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤およびその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。
【0130】
医療関係者は各種臨床的要素により用量案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数および経路、全体の健康度、および同時に投与するその他の薬物を含む。本発明が含有するプラスミノーゲンの薬物組成物の用量の範囲は例えば被験者体重に対して毎日約0.0001~2000mg/kgであり、または約0.001~500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)とすることができる。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1-50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた任意のスケジュール表に従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量のスケジュール表は連続数日1-10mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において治療効果および安全性はリアルタイムに評価すべきである。
【0131】
製品または薬物キット
本発明の一つの実施形態は製品または薬物キットに係るものであり、肥満症およびその関連疾患の治療に使用できる本発明のプラスミノーゲンまたはプラスミンを含有する。前記製品は好ましくは一つの容器、ラベルまたはプロトコルを含む。適切な容器はボトル、バイアル、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたはバイアルであり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノーゲン/プラスミンである。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明の前記糖尿病によって引き起こされる肥満およびその関連疾患の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の塩水、リンガー溶液およびグルコース溶液を含む。さらには商業および使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針および注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するプロトコルを含み、これは例えば前記組成物の使用者にプラスミノーゲン組成物および疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【
図1】
図1は高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスにプラスミノーゲンを28日投与した後の体重変化の計算結果を示すものである。29日目の体重から1日目の体重を差し引いた数値が結果として示されている。その結果、ブランク対照群の体重変化は明らかではなく、溶媒PBS投与対照群が軽減された体重はプラスミノーゲン投与群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが肥満モデルマウスの体重の軽減を促進することができることを示している。
【
図2】
図2は高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスにプラスミノーゲンを28日投与した後のボディマス指数の統計結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのボディマス指数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意であり(*は、P<0.05を表し、**は、P<0.01を表す)、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群マウスのボディマス指数はブランク対照群により近い。これは、プラスミノーゲンが肥満モデルマウスのボディマス指数を有意に低め、肥満を軽減することができることを示している。
【
図3】
図3は高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスにプラスミノーゲンを28日投与した後のLee’s指数(Lee's index)の統計結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのLee’s指数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意であり(*は、P<0.05を表す)、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群マウスのLee’s指数はブランク対照群により近い。これは、プラスミノーゲンが肥満モデルマウスのLee’s指数を有意に低め、肥満を軽減することができることを示している。
【
図4】
図4は高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスの血脂検出結果を示すものである。Aは総コレステロールであり、Bは低密度リポタンパク質であり、Cは高密度リポタンパク質である。その結果、プラスミノーゲン投与群、溶媒PBS投与対照群、およびブランク対照群の総コレステロール、低密度リポタンパク質、および高密度リポタンパク質濃度はいずれも有意な差がない。これは、本実験で高カロリーにより誘発された肥満モデルマウスの血脂には顕著な変化がないことを示している。
【
図5】
図5は高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスの血清レプチンの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群、溶媒PBS投与対照群、およびブランク対照群のレプチン濃度はいずれも有意な差がない。これは、本実験で高カロリーにより誘発された肥満モデルマウスのレプチンには顕著な変化がないことを示している。
【
図6】
図6は高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスの血清インスリンの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群、溶媒PBS投与対照群、およびブランク対照群のインスリン濃度はいずれも有意な差がない。これは、本実験で高カロリーにより誘発された肥満モデルマウスのインスリンには顕著な変化がないことを示している。
【
図7】
図7は高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスにプラスミノーゲンを28日投与した後の腹腔脂肪係数の統計結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの腹腔脂肪係数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意であり(*は、P<0.05を表す)、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群マウスの腹腔脂肪含有量はブランク対照群により近い。これは、プラスミノーゲンが肥満モデルマウスの腹腔脂肪の沈着を有意に低めることができることを示している。
【
図8】
図8は高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスにプラスミノーゲンを28日投与した後腹腔脂肪のHE染色の脂肪空胞面積の統計結果を示すものである。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒PBS投与対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群の平均脂肪空胞の面積は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さく、その差が統計学的にとても有意であり(**は、P<0.01を表す)、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群の脂肪空胞面積はブランク対照群マウスにより近い。これは、プラスミノーゲンが肥満モデルマウスの脂肪細胞の大きさを有意に低め、腹腔脂肪の沈着を減少させることができることを示している。
【
図9】
図9は14~15週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを28日投与した後の血清レプチンの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清レプチン濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、その差が統計学的にとても有意であり(**は、P<0.01を表す)、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群の血清レプチンレベルは健常マウスにより近い。これは、プラスミノーゲンは2型糖尿病初期のマウスの血清レプチンレベルを低めることができることを示している。
【
図10】
図10は23~25週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを28日投与した後の血清レプチンの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清レプチン濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、その差が統計学的にとても有意である(**は、P<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンは2型糖尿病後期のマウスの血清レプチンレベルを低めることができることを示している。
【
図11】
図11は16週齢の高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の肝臓のオイルレッドO染色の観察結果を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群であり、Cは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの肝臓における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの肝臓における脂肪沈着を改善できることを示している。
【
図12】
図12は16週齢の高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈洞のオイルレッドO染色の観察結果を示すものである。AおよびCは溶媒PBS投与対照群であり、BおよびDはプラスミノーゲン投与群であり、Eは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの大動脈洞における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの大動脈洞における脂肪沈着を改善できることを示している。
【
図13】
図13はプラスミノーゲンを30日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎臓のオイルレッドO染色の観察結果を示すものである。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒PBS投与対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの腎脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である。また、プラスミノーゲン投与群の脂質沈着レベルはブランク対照群マウスに似ている。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの腎臓における脂肪の沈着を低減でき、それによって脂肪沈着による腎損傷を減少させることができることを示している。
【
図14】
図14は3%コレステロール食により誘発された高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを20日投与した後の血清の低密度リポタンパク質コレステロールの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清の低密度リポタンパク質コレステロール濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの血清における低密度リポタンパク質コレステロールの含有量を低減することができ、高血脂を改善する機能を有することを示している。
【
図15】
図15はプラスミノーゲンを20日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清のアテローム性動脈硬化指数の検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのアテローム性動脈硬化指数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的にとても有意である(**は、P<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスのアテローム性動脈硬化症のリスクを効果的に低下させることができることを示している。
【
図16】
図16はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の血清総コレステロールの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの総コレステロール濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの血清における総コレステロールの含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化モデルマウスの血脂障害を改善できることを示している。
【
図17】
図17はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の血清のトリグリセリドの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのトリグリセリド濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの血清におけるトリグリセリドの含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化モデルマウスの血脂障害を改善できることを示している。
【
図18】
図18はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の血清の低密度リポタンパク質コレステロールの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清の低密度リポタンパク質コレステロール濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの血清における低密度リポタンパク質コレステロールの含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化モデルマウスの血脂障害を改善できることを示している。
【
図19】
図19はプラスミノーゲンを投与した後の肥満モデルマウスの視床下部レプチン受容体の免疫組織の化学的染色の結果を示すものである。AおよびDはブランク対照群であり、BおよびEは溶媒PBS投与対照群であり、CおよびFはプラスミノーゲン投与群であり、Gは定量分析結果である。その結果、溶媒PBS投与対照群マウスの視床下部レプチン受容体の発現はブランク対照群より明らかに多いに対して、プラスミノーゲン投与群マウスの視床下部レプチン受容体の発現は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、ブランク対照群のレベルに近く、しかもその差が統計学的に有意である(P=0.01)。これは、プラスミノーゲンが肥満マウスの視床下部レプチン受容体の発現を有意に低めることができることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0133】
[実施例1]
実施例1は、プラスミノーゲンが高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスに対する影響に関するものである。
マウスモデルおよび群分け
8週齢のC57オスマウス14匹を取って体重によってランダムに二つの群に分け、ブランク対照群で4匹とモデル群で10匹とした。ブランク対照群マウスに通常の維持食を与え、モデル群マウスに脂肪分45%カロリー比高脂肪食(TP23000、南通トロフィー飼料科技有限公司)を12週間給餌して肥満モデルを建築した
[30]。本文において、脂肪分45%カロリー比高脂肪食は高カロリー食と略称される。12週間後、モデル群マウスの体重を測って体重によってさらにランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で各群5匹ずつとした。ヒトプラスミノーゲンをPBSに溶けた。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、ブランク対照群に対しては何の処置もしなかった。上記実験動物に連続して28日間投与し(投与開始当日を1日目とし)、29日目に下記処置および測定を行った。
測定および結果
体重測定
上記実験動物に対して1日目、29日目に体重を測って体重の変化を計算した。29日
目の体重から1日目の体重を差し引いた数値が結果として示されている。
その結果、ブランク対照群の体重変化は明らかではなく、溶媒PBS投与対照群が軽減された体重はプラスミノーゲン投与群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)(
図1)。これは、プラスミノーゲンが肥満モデルマウスの体重を有意に低めることができることを示している。
ボディマス指数の測定
29日目に上記マウスに対して体重を測ってマウスの体長を量り、ボディマス指数を計算した。ボディマス指数=体重(kg)/体長
2(m)。
ボディマス指数は、現在国際的によく使用されている、人体の太り具合および健康であるか否かを量る基準である。ボディマス指数は肥満モデル動物の太り具合の指標とすることもできる
[43,44]。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのボディマス指数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意であり(*は、P<0.05を表す)、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群マウスのボディマス指数はブランク対照群により近い(
図2)。これは、プラスミノーゲンが肥満モデルマウスのボディマス指数を有意に低め、肥満を軽減することができることを示している。
Lee’s指数の測定
上記マウスに対して29日目に体重を測ってからマウスの体長を量り、Lee’s指数を計算した。
【数1】
Lee’s指数は肥満程度を反映するための有効な指数である
[31-32]。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのLee’s指数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意であり(*は、P<0.05を表す)、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群マウスのLee’s指数はブランク対照群により近い(
図3)。これは、プラスミノーゲンが肥満モデルマウスのLee’s指数を有意に低め、肥満を軽減することができることを示している。
血脂レベルの検出
上記モデルマウスに対して29日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血清の総コレステロール、低密度リポタンパク質および高密度リポタンパク質の検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1、A113-1、A112-1)を用い、対応するキットに記載の方法に従って血清の総コレステロール、低密度リポタンパク質および高密度リポタンパク質濃度を測定した。
その結果、プラスミノーゲン投与群、溶媒PBS投与対照群、およびブランク対照群の総コレステロール(
図4A)、低密度リポタンパク質(
図4B)、および高密度リポタンパク質(
図4C)の濃度はいずれも顕著な差がない。これは、本実験で高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスの血脂には顕著な変化がないことを示している。
血清レプチンレベルの検出
血清レプチンレベル検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号H174)を用いてそのキットに記載の方法に従って上記血清中のレプチンレベルを検出した。
その結果、プラスミノーゲン投与群、溶媒PBS投与対照群、およびブランク対照群のレプチン濃度はいずれも顕著な差がない(
図5)。これは、本実験で高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスのレプチンには顕著な変化がないことを示している。
レプチン(Leptin,LP)は脂肪組織より分泌されるホルモンである。レプチンが血液循環に入ると糖、脂肪、およびエネルギー代謝の調節に参与し、生体に摂食を減少させ、エネルギーの放出を増やし、脂肪細胞の合成を抑制し、さらに体重を軽減すると考えられていた。しかし、一部の肥満体にレプチン抵抗があり、血液中のレプチンレベルが
上昇した
[34]。相関研究によると、db/dbマウスにレプチン抵抗があり、血清のレプチンレベルが顕著に上昇した
[35-36]。
血清インスリンレベルの検出
血清インスリン検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号H174)を用いてそのキットに記載の方法に従って上記血清中のインスリンレベルを検出した。
その結果、プラスミノーゲン投与群、溶媒PBS投与対照群、およびブランク対照群のインスリン濃度はいずれも有意な差がない(
図6)。これは、本実験で高カロリー食により誘発された肥満モデルマウスのインスリンには顕著な変化がないことを示している。
腹腔脂肪量の検出
上記マウスに対して29日目に体重を測ってから殺処分し、腹腔脂肪を取って重量を量った。腹腔脂肪係数(%)=(腹腔脂肪重量/体重)*100。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの腹腔脂肪係数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意であり(*は、P<0.05を表す)、しかもブランク対照群マウスの脂肪係数により近い(
図7)。これは、プラスミノーゲンが肥満モデルマウスの腹腔脂肪の沈着を有意に低めることができることを示している。
腹腔皮下脂肪の空胞面積の検出
29日目に上記マウスを殺処分し、腹腔脂肪を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織サンプルをアルコールで段階的に脱水させおよびキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは4μmであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水してヘマトキシリンおよびエオシンで染色(HE染色)させ、1%塩酸エタノールで分別させ、アンモニア水でブルーイングさせ、さらにアルコールで段階的に脱水させて封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。Image-pro plus画像処理ソフトを使って脂肪空胞の面積を分析した。
肥満体のエネルギー摂取がエネルギー消耗を超えると、大量の脂質が脂肪細胞に蓄積して脂肪組織の拡張、すなわち脂肪細胞の増大を引き起こし、脂肪空胞の面積が増えることになる
[33]。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図8C)の脂肪空胞の面積は溶媒PBS投与対照群(
図8B)より明らかに小さく、その差が統計学的にとても有意であり(**は、P<0.01を表す)(
図8D)、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群の脂肪空胞面積はブランク対照群マウスにより近い(
図8A)。これは、プラスミノーゲンが肥満モデルマウスの脂肪細胞の大きさを有意に低め、腹腔脂肪の沈着を減少させることができることを示している。
【0134】
[実施例2]
実施例2は、プラスミノーゲンが糖尿病初期マウスの血清レプチンの濃度を低めることに関するものである。
14~15週齢のdb/dbオスマウス12匹とdb/mマウス3匹を取り、体重を測ってからdb/dbマウスを体重によってランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群とで、各群6匹ずつとした。投与開始当日を1日目とし、1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し始めた。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、28日間連続的に投与した。db/mマウスを健常対象マウスとして投薬の処置はしなかった。28日目にマウスを16時間禁食し、29日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血清レプチンの濃度の検出を行った。血清レプチン検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号H174)を用い、そのキットに記載の方法に従って上記血清におけるレプチンレベルを検出した。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清レプチン濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、その差が統計学的にとても有意であり(**は、P<0.01を表す
)、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群の血清レプチンレベルは健常マウスにより近い(
図9)。これは、プラスミノーゲンは2型糖尿病初期のマウスの血清レプチンレベルを有意に低めることができることを示している。
【0135】
[実施例3]
実施例3は、プラスミノーゲンが糖尿病後期マウスの血清レプチンの濃度を低めることに関するものである。
23~25週齢のdb/dbオスマウス13匹を取り、体重を測ってからマウスを体重によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し始めた。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、28日間連続的に投与した。28日目にマウスを16時間禁食し、29日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、血清レプチンの濃度の検出を行った。血清レプチン検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号H174)を用い、そのキットに記載の方法に従って上記血清におけるレプチンレベルを検出した。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清レプチン濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、その差が統計学的にとても有意である(**は、P<0.01を表す)(
図10)。これは、プラスミノーゲンは2型糖尿病後期のマウスの血清レプチンレベルを低めることができることを示している。
【0136】
[実施例4]
実施例4は、プラスミノーゲンが16週齢の高脂血症モデルマウスの肝臓における脂肪沈着を低減することに関するものである。
6週齢のオスC57マウス11匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血症を誘発し
[37―38]、このモデルを16週齢高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で6匹とプラスミノーゲン投与群で5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して肝臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
オイルレッドO染色は、脂質沈着を表し、脂質沈着の程度を反映することができる
[39]。その結果、プラスミノーゲン投与群(
図11B)マウスの肝臓における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群(
図11A)より明らかに少なく、しかもその定量分析の差が統計学的に有意である(
図11C)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの肝臓における脂肪の沈着を低減できることを示している。
【0137】
[実施例5]
実施例5は、プラスミノーゲンが16週齢の高脂血症モデルマウスの大動脈洞における脂質沈着を低減することに関するものである。
6週齢のオスC57マウス11匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血症を誘発し
[37-38]、このモデルを16週齢高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与え
た。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で6匹とプラスミノーゲン投与群で5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して心臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、大動脈洞の凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で40倍(
図11A、11B)、200倍(
図11C、11D)にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図12B、12D)マウスの大動脈洞における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群(
図12A、12C)より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(
図12E)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの大動脈洞における脂質沈着を低減できることを示している。
【0138】
[実施例6]
実施例6は、プラスミノーゲンが3%コレステロール食により誘発された高脂血症モデルマウスの腎脂肪沈着を低減することに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し
[37-38]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。また、同じ週齢のオスC57マウスを5匹取ってブランク対照群とし、実験期間中に通常の維持食を給餌した。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロールを測定し、モデルマウスを総コレステロール濃および体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群とで、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は30日間である。31日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図13C)マウスの腎脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図13B)より明らかに少なく、しかもその定量分析の差が統計学的に有意である(
図13D)。また、プラスミノーゲン投与群の脂質沈着レベルはブランク対照群マウス(
図13A)に似ている。これは、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎臓における脂肪の沈着を低減でき、それによって脂肪沈着による腎損傷を減少させることができることを示している。
【0139】
[実施例7]
実施例7は、プラスミノーゲンが3%コレステロール食により誘発された高脂血症モデルマウスの血清における低密度リポタンパク質コレステロールレベルを低めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し
[37-38]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)
を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度および体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、20日間投与した。20日目にマウスを16時間禁食した後、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、低密度リポタンパク質コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A113-1)を用いて低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を測定した。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの(LDL-C)濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(
図14)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの血清における低密度ポリタンパク質コレステロール含有量を低めることができることを示している。
【0140】
[実施例8]
実施例8は、プラスミノーゲンが3%コレステロール食により誘発された高脂血症モデルマウスのアテローム性動脈硬化症の形成リスクを低めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し
[37-38]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度および体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。20日目に投薬した後マウスを禁食し、16時間禁食した後、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、総コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて総コレステロール含有量を測定し、高密度リポタンパク質コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-2)を用いて高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)含有量を測定した。
アテローム性動脈硬化指数は、臨床上でアテローム性動脈硬化症を予測するための総合的指標であり、それが冠状動脈性心臓病のリスクを見積もる面における臨床的意義は、総コレステロール、トリグリセリド、高密度リポタンパク質および低密度リポタンパク質のいずれか一つより大きいと考えられている
[40]。アテローム性動脈硬化指数=(T-CHO-HDL-C)/HDL-C。
計算した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのアテローム性動脈硬化指数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的にとても有意である(
図15)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスのアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させることができることを示している。
【0141】
[実施例9]
実施例9は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの血清の総コレステロール含有量を低めることに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症を誘発した
[41-42]。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し
、30日間投与した。30日目にマウスを16時間禁食し、31日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、総コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて総コレステロールを測定した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスの総コレステロール濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(P=0.014)(
図16)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清における総コレステロール含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化症の血脂障害を改善できることを示している。
【0142】
[実施例10]
実施例10は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの血清のトリグリセリド含有量を低めることに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症を誘発した
[41-42]。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、30日間投与した。30日目にマウスを16時間禁食し、31日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、トリグリセリド検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A110-1)を用いてトリグリセリドを測定した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのトリグリセリド濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(P=0.013)(
図17)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清におけるトリグリセリド含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化症の血脂障害を改善できることを示している。
【0143】
[実施例11]
実施例11は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの血清の低密度リポタンパク質コレステロール含有量を低めることに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症を誘発した
[41-42]。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、30日間投与した。30日目にマウスを16時間禁食し、31日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A113-1)を用いてLDL-Cを測定した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのLDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(P=0.017)(
図18)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清における低密度リポタンパク質コレステロール含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化症の血脂障害を改善できることを示している。
【0144】
[実施例12]
実施例12は、プラスミノーゲンが肥満モデルマウスの視床下部レプチン受容体の発現を改善することに関するものである。
8週齢のC57オスマウス14匹を取って体重によってランダムに二つの群に分け、ブランク対照群で4匹とモデル群で10匹とした。ブランク対照群マウスに通常の維持食を与え、モデル群マウスに脂肪分45%カロリー比高脂肪食(TP23000、南通トロフィー飼料科技有限公司)を12週間給餌して肥満モデルを建築した
[1]。12週間後、モデル群マウスの体重を測って体重によってさらにランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群とで各群5匹ずつとした。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群にも同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、ブランク対照群に対しては何の液体も注射しなかった。28日間連続的に投与し、投与期間中にマウスにモデル建築用食を引き続き与えた。29日目にマウスを殺処分して視床下部を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させおよびキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは4μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗った。クエン酸で30分間修復し、室温で10分間冷却してから水で柔らかく流した。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。10%のヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄した。抗レプチン受容体抗体(Abcam)で4℃で終夜インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間ブルーイングし、そしてPBSで1回洗った。段階的に脱水させて透徹にし、封入させた後、切片を光学顕微鏡下で40倍(
図A-C)、200倍(
図E-F)にて観察した。
レプチン受容体の主な生理機能は、レプチンと結合し、レプチンが体内のエネルギーバランスを調節し、脂肪貯蔵、生殖活動などの生理作用を発揮し、レプチンの自己分泌調節に関与することである。異なるタイプのレプチン受容体は中枢および外周組織において選択的に発現される
[45-47]。
その結果、溶媒PBS投与対照群(
図19B、E)マウスの視床下部レプチン受容体の発現はブランク対照群(
図19A、D)より明らかに多いのに対して、プラスミノーゲン投与群(
図19C、F)マウスの視床下部レプチン受容体の発現は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、ブランク対照群のレベルに近く、しかもその差が統計学的に有意である(P=0.01)(
図19G)。これは、プラスミノーゲンが肥満マウスの視床下部レプチン受容体の発現を有意に低めることができることを示している。
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