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特許7169004細胞小器官内のグルタチオン測定用リアルタイム蛍光イメージングセンサおよびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】細胞小器官内のグルタチオン測定用リアルタイム蛍光イメージングセンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/16 20060101AFI20221102BHJP
   C07F 9/6561 20060101ALI20221102BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20221102BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20221102BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20221102BHJP
   C09B 57/02 20060101ALI20221102BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C07D491/16 CSP
C07F9/6561 Z
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12Q1/02
C09B57/02 H
G01N21/64 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020511502
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 KR2018009743
(87)【国際公開番号】W WO2019039888
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】10-2017-0107429
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520058756
【氏名又は名称】セルツーイン、 インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CELL2IN, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、フン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヘ ミ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジ ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミョン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ギ ハン
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0059978(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103820104(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0007723(US,A1)
【文献】REGISTRY(STN)[online],2001.12.07CAS登録番号 374544-06-6
【文献】Cho, A. Young; Choi, Kihang,A coumarin-based fluorescence sensor for the reversible detection of thiols,Chemistry Letters ,2012年,41(12),1611-1612
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式VまたはVIで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩:
【化1】
【化2】
前記は、(CH)p-(OCHCHO)q-(CH)r、または-(CHCH)s-である化合物(前記pおよびrは、0~5の整数であり、前記qおよびsは、1~5の整数である)。
【請求項2】
前記Rは、(OCHCHO)-、-(CHCH)-、または-(CH(OCHCHOCH)-のうちのいずれか1つであり、前記化学式VIで表される化合物は、下記化学式VII~化学式IXのいずれか1つで表されるものである、請求項1に記載の化学式VまたはVIで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩:
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項3】
前記化学式VまたはVIで表される化合物は、フリー(free)状態で550~680nmで最大放出波長を示し、チオールと結合した状態で430~550nmで最大放出波長を示すものである、請求項1に記載の化学式VまたはVIで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
前記放出波長の蛍光強度は、430nm~680nmの範囲で増減するものである、請求項3に記載の化学式VまたはVIで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化学式VまたはVIの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む生細胞(living cell)における抗酸化能測定用組成物。
【請求項6】
前記抗酸化能の測定は、生細胞におけるチオール水準の測定である、請求項5に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項7】
前記チオール水準の測定は、細胞小器官におけるチオール水準の測定である、請求項6に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項8】
前記細胞小器官は、ミトコンドリアまたはゴルジ体である、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項9】
前記ミトコンドリアにおける抗酸化能の測定は、化学式Vの化合物を使用するものである、請求項8に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項10】
前記ゴルジ体における抗酸化能の測定は、化学式VI~IXのうちのいずれか1つの化合物を使用するものである、請求項8に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項11】
前記チオール水準の測定において、チオールが増加するに伴い、550~680nmでの蛍光強度が減少し、430~550nmでの蛍光強度は増加するものである、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項12】
前記チオール水準の測定は、430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)を得て(obtaining)実施するものである、請求項11に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項13】
前記比率は、前記430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の関係(relationship)である、請求項12に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項14】
前記関係は、前記430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の数学的比率関係であり、前記数学的比率関係は、ミトコンドリアにおけるチオールの量に応じて比率計量的(ratiometrically)かつ可逆的に増減して、細胞内小器官におけるチオール量をリアルタイムに示すものである、請求項13に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項15】
前記チオール水準の測定は、細胞小器官内のチオールの定性または定量的検出である、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項16】
前記チオール水準の測定は、リアルタイム定量的測定である、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項17】
前記チオール水準の測定は、細胞の酸化的ストレスまたは酸化度を示すものである、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項18】
前記チオール水準の測定は、細胞の老化度を示すものである、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項19】
前記チオールは、グルタチオン(glutathione、GSH)、ホモシステイン(homocysteine、Hcy)、システイン(cysteine、Cys)、またはタンパク質のシステイン残基にあるチオールである、請求項7に記載の生細胞における抗酸化能測定用組成物。
【請求項20】
次の段階を含む生細胞内のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法:
(a)請求項5に記載の組成物および候補物質を同時にまたは順序にかかわらず順次に生細胞に投与するステップ;
(b)430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)を得て標準データと比較するステップ;
(c)試験物質をチオール増加剤または抑制剤として決定するステップ;および
(d)430~550nmでの蛍光強度に対する550~680nmでの蛍光強度の比率が減少する場合にチオール増加剤として決定し、蛍光強度の比率が増加する場合にチオール抑制剤として決定するステップ。
【請求項21】
光比率の測定は、細胞小器官であるミトコンドリアまたはゴルジ体に対して測定するものである、請求項20に記載の生細胞内のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項22】
請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物またはその塩を含む酸化ストレス誘発疾患診断キット。
【請求項23】
次のステップを含む対象から分離された生細胞における抗酸化能の測定方法:
(a)生細胞における430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)をリアルタイムに測定するステップ;
(b)請求項5に記載の組成物を生細胞に投与するステップ;
(c)酸化剤をステップ(b)の細胞に投与するステップ;および
(d)前記蛍光強度の比率値の変化を観察するステップ。
【請求項24】
前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記蛍光強度の比率値が前記酸化剤を投与しない生細胞の蛍光強度の比率値、または前記酸化剤を投与する前の蛍光強度の比率値に回復する時間を測定するステップを追加的に含み、前記時間が短いほど抗酸化能が高いと判断するものである、請求項23に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
【請求項25】
前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記酸化剤を投与しない生細胞の蛍光強度の比率値と前記酸化剤を投与した生細胞の蛍光強度の比率値との差の酸化剤投与時点から、前記酸化剤を投与する前の蛍光強度の比率値に回復する時点までの積分値を測定するステップを追加的に含み、前記積分値が小さいほど抗酸化能が高いと判断する、請求項23に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
【請求項26】
前記抗酸化能の測定方法は、前記ステップ(d)の後、前記酸化剤を投与した生細胞の蛍光強度の比率値が減少し始める前記酸化剤の最小濃度を滴定するステップを追加的に含み、前記最小濃度が高いほど抗酸化能が高いと判断する、請求項23に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
【請求項27】
前記測定方法は、生細胞内小器官であるミトコンドリアまたはゴルジ体に対して測定するものである、請求項23に記載の生細胞における抗酸化能の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞小器官内のグルタチオン測定用リアルタイム蛍光イメージングセンサおよびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、細胞小器官内のグルタチオン測定用新規化合物、新規化合物の製造方法、前記新規化合物を含む細胞小器官内のグルタチオン測定用リアルタイムイメージングセンサ、その製造方法および前記イメージングセンサを用いた細胞小器官内のグルタチオン測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体は抗酸化系の作用により活性酸素種を適切に除去して恒常性を維持するが、ROSの生成と抗酸化系作用との間のバランスが崩れると、酸化的ストレス(oxidative stress)が増加し、これは、老化を含めて退行性関節炎、白内障、アルツハイマーなどの老化関連退行性疾患、各種癌、線維化疾患をはじめとして、最近は、糖尿病、肥満、心血管疾患などの代謝性症侯群の発病に重要な共通の原因因子として注目されている。前記ROSは、不安定で反応性が高く、生体分子を酸化させて生化学的、生理的損傷を誘発させ、これは、老化の主要機序の一つである。したがって、人体の酸化度だけでなく、抗酸化度や抗酸化能力は生体年齢の計測において主なバイオマーカーになり得る。
【0003】
一方、中間葉幹細胞(mesenchymal stem cells)は、骨髄、臍帯血、胎盤(または胎盤組織細胞)、脂肪(または脂肪組織細胞)などの多様な成体細胞に由来する多分化性の性質を有する幹細胞である。例えば、骨髄(bone marrow)に由来する中間葉幹細胞は、脂肪組織、骨/軟骨組織、筋肉組織に分化できる多分化性によって細胞治療剤としての開発のために多様な研究が進められている。
【0004】
しかし、細胞治療剤の主要成分である幹細胞は、分離後の培養過程で多分化能、組織再生能を喪失して老化されやすく、治療的有効量に相当する大量の細胞を得るために複数の継代を経ている間にこのような危険性はさらに大きくなる。また、組織から得られる幹細胞は非常に少ない量であり、これを用いる際には大量の細胞が必要になるので、幹細胞の数を増殖させる培養が行われる。最近は、幹細胞の品質に関連し、幹細胞の抗酸化活性を測定してこれによって品質を管理する方法として、細胞内の抗酸化活性を測定する方法が開示されている(韓国登録特許第10-1575846号、韓国公開特許第2004-0030701号、Hongyan Liu et al.,Cytotherapy,14(2);162-172,2012)。
【0005】
しかし、幹細胞の抗酸化活性の測定により高い活性を備えた高品質の幹細胞の選別方法に関する研究は不十分であるのが現状である。したがって、希少価値の高い細胞治療剤資源である幹細胞の使用効率性を高めるために、高活性の幹細胞の選別に必要な抗酸化能測定用組成物の開発が必要になる。
【0006】
また、前記のように幹細胞を含む細胞の抗酸化能の測定において、生体試料からチオールを含有する物質の検出および識別は非常に重要である。これによって、細胞を破砕せずに生細胞(living cell)におけるチオールを効果的に検出する蛍光方法が開発されているが、細胞内の多様なソースのチオールの測定による抗酸化能測定物質が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、本発明に係るMitoFreSH-トレーサー(Mitochondria Fluorescent Real-time SH group-Tracer)またはGolgiFreSH-トレーサー(Golgi Fluorescent Real-time SH group-Tracer)を用いて、ミトコンドリアまたはゴルジ体内のチオールの量に応じて蛍光強度が連続的で比率計量的かつ可逆的に増減することを究明し、生きている細胞内ミトコンドリアまたはゴルジ体におけるチオールの量をリアルタイムに定量または定性的に検出するのに著しい敏感性を有するバイオセンサとして有用に利用可能であることを確認することにより、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、化学式III~Vで表されるMitoFreSH-トレーサー(Mitochondria Fluorescent Real-time SH group-Tracer)、または化学式VII~IXで表されるGolgiFreSH-トレーサー(Golgi Fluorescent Real-time SH group-Tracer)を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、MitoFreSH-トレーサー(Mitochondria Fluorescent Real-time SH group-Tracer)を含むミトコンドリアのチオール検出用組成物またはGolgiFreSH-トレーサー(Golgi Apparatus Fluorescent Real-time SH group-Tracer)を含むゴルジ体におけるチオール検出用組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、MitoFreSH-トレーサーまたはGolgiFreSH-トレーサーを用いた生細胞内ミトコンドリアまたはゴルジ体のチオール増加剤または抑制剤のスクリーニング方法を提供することである。
【0011】
本発明の目的および利点は、下記の発明の詳細な説明および請求の範囲によってより明確になる。
【0012】
しかし、本発明がなそうとする技術的課題は、以上に述べた課題に制限されず、述べていないさらに他の課題は、以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本願に記載の多様な具体例が図面を参照して記載される。下記の説明において、本発明の完全な理解のために、多様な特異的詳細事項、例えば、特異的形態、組成物および工程などが記載されている。しかし、特定の具体例はこれらの特異的詳細事項の一つ以上なしに、または他の公知の方法および形態とともに実行可能である。他の例において、公知の工程および製造技術は、本発明を不必要にあいまいにしないために、特定の詳細事項として記載されない。「一つの具体例」または「具体例」についての本明細書全体を通した参照は具体例と結び付いて記載された特別な特徴、形態、組成または特性が、本発明の一つ以上の具体例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる多様な位置で表現された「一つの具体例において」または「具体例」の状況は、必ずしも本発明の同一の具体例を示さない。追加的に、特別な特徴、形態、組成、または特性は、一つ以上の具体例において、何らかの好適な方法で組み合わされる。
【0014】
本明細書内で特別な定義がなければ、本明細書に使われたすべての科学的および技術的な用語は、本発明の属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0015】
本明細書において、用語「比率計量的(ratiometric)」は、算出量が投入量(input)に直接的に比例することを意味する。具体的には、本発明の一実施形態において、「比率計量的」は、本発明の組成物がチオール投入量に応じて直接的に比例して蛍光強度または蛍光強度の比率が増加または減少することを意味する。
【0016】
本明細書において、用語「検出」は、試料中で化学種や生物学的物質の存在の有無やその量を測定することを意味する。
【0017】
本明細書において、用語「可逆的(reversible)」は、化学反応で反応物と生成物の混合物が平衡状態の混合物を生成することが可能な状態を意味する。より具体的には、本明細書において、化学式Iで表される化合物とチオールの反応が平衡状態をなして、チオールの量に応じて正反応または逆反応して可逆的に反応が進行できることを意味する。
【0018】
本明細書において、用語「チオール(thiol)」は、炭素と結合したスルフヒドリル基を含む有機化合物を意味し、スルフヒドリル基またはチオール基は混用されて使用される。
【0019】
本発明の一様態によれば、本発明は、下記化学式Iで表される化合物またはその塩を含むミトコンドリアにおけるチオール検出用組成物を提供する:
【化1】
【0020】
前記化学式Iにおいて、Rは、1つ以上のNを含む3~7員環であるヘテロシクロアルキルであり、前記ヘテロシクロアルキルは、R置換基が結合しており;前記Rは、-(C(=O)NH)-(CH-PPh Cl(前記mは、1~4の整数である)、-(CH-PPh Cl(前記nは、1~6の整数である)、または-(C(=O)-(CH-R(前記pは、1~4の整数である)であり;前記Rは、-C(NHC(=O)-R)であり、前記Rは、次の化学式IIで表される置換基である:
【化2】
【0021】
前記化学式IIにおいて、前記xは、1~4の整数である。
【0022】
本発明者らは、細胞内ミトコンドリアにおけるチオールの量をリアルタイムに定量または定性的に検出するのに著しい敏感性を有するバイオセンサを開発するために鋭意研究努力をした。その結果、前記化学式Iで表される本発明のMitoFreSH-トレーサー(Mitochondria Fluorescent Real-time SH group-Tracer)が、細胞内ミトコンドリアにおけるチオールの量に応じて蛍光強度が連続的で比率計量的かつ可逆的に増減することを究明し、細胞内ミトコンドリアにおけるチオールの量をリアルタイムに定量または定性的に検出するのに著しい敏感性を有するバイオセンサとして有用に利用可能であることを立証した。
【0023】
本明細書において、用語「MitoFreSH-トレーサー(Mitochondria Fluorescent Real-time SH group-Tracer)」は、シアノアクリルアミド親電子体(cyanoacrylamide electrophile)を有するクマリン(coumarin)誘導体として化学式Iで表される化合物を意味し、本発明におけるミトコンドリア内のチオール検出用蛍光物質として使用される。
【0024】
本発明の一実施形態において、本発明のミトコンドリアは、生細胞(living cell)内に含まれたものである。本発明の組成物は、ミトコンドリア内のチオール水準を測定するにあたり、細胞から分離されたミトコンドリアに限らず、細胞内に含まれた状態のミトコンドリア内のチオール水準を測定できる特徴がある。特に、生きている細胞内ミトコンドリアにおけるチオール水準を特異的に検出することができる。
【0025】
本発明の一実施形態において、本発明のRは、1つまたは2つのNを含む6員環ヘテロシクロアルキルである。本発明において、「6員環ヘテロシクロアルキル」に含まれた用語「6員環」は、ビサイクリック化合物(bicyclic compound)またはスピロ化合物(Spiro compound)のように複数の環が接合された環化合物形態ではない、モノサイクリック化合物としての1つの6員環形態を意味し、「ヘテロシクロアルキル」は、非-芳香族性環状アルキルであって、環内に含まれた炭素原子のうちの少なくとも1つがヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、または硫黄によって置換されているものを意味する。本実施形態において、Rは、6員環ヘテロシクロアルキルであって、1つまたは2つの窒素を環内に含まれたヘテロ原子として含む。
【0026】
本発明の一実施形態において、本発明の化学式Iで表される化合物は、次の化学式III~Vで表される化合物のうちのいずれか1つ以上である:
【化3】
【化4】
【化5】
【0027】
本発明の前記化学式III~Vで表される化合物は、生細胞内ミトコンドリアにおけるチオールの量が増加するに伴い、MitoFreSH-トレーサーに結合するチオールの量が増加するので、フリー状態の化合物が示す550~680nmの蛍光強度は減少し、チオールが結合している化合物が示す430~550nmの蛍光強度は増加する。前記チオールの量に応じた蛍光強度は、比率計量的かつ可逆的に増減する。
【0028】
本発明の他の態様によれば、本発明は、下記化学式VIで表される化合物またはその塩を含むゴルジ体におけるチオール検出用組成物を提供する:
【化6】
【0029】
前記化学式VIにおいて、Rは、(CH)p-(OCHCHO)q-(CH)r、または-(CHCH)s-である化合物(前記p、q、r、sは、1~5の整数である)である。より詳細には、前記化学式VIにおいて、Rは、(OCHCHO)-、-(CHCH)-、および-(CH(OCHCHOCH)-のうちのいずれか1つである。
【0030】
本発明者らは、細胞内ゴルジ体におけるチオールの量をリアルタイムに定量または定性的に検出するのに著しい敏感性を有するバイオセンサを開発するために鋭意研究努力をした。その結果、前記化学式VIで表される本発明のGolgiFreSH-トレーサー(Golgi Fluorescent Real-time SH group-Tracer)が、細胞内ゴルジ体におけるチオールの量に応じて蛍光強度が連続的で比率計量的かつ可逆的に増減することを究明し、細胞内ゴルジ体におけるチオールの量をリアルタイムに定量または定性的に検出するのに著しい敏感性を有するバイオセンサとして有用に利用可能であることを立証した。
【0031】
本明細書において、用語「GolgiFreSH-トレーサー(Golgi Fluorescent Real-time SH group-Tracer)」は、シアノアクリルアミド親電子体(cyanoacrylamide electrophile)を有するクマリン(coumarin)誘導体として化学式VIで表される化合物を意味し、本発明におけるゴルジ体内のチオール検出用蛍光物質として使用される。
【0032】
本発明の前記化学式VIで表される化合物は、生細胞内ゴルジ体におけるチオールの量が増加するに伴い、MitoFreSH-トレーサーに結合するチオールの量が増加するので、フリー状態の化合物が示す550~680nmの蛍光強度は減少し、チオールが結合している化合物が示す430~550nmの蛍光強度は増加する。前記チオールの量に応じた蛍光強度は、比率計量的かつ可逆的に増減する。
【0033】
本発明の一実施形態において、本発明の化学式VIで表される化合物は、次の化学式VII~IXで表される化合物のうちのいずれか1つ以上である:
【化7】
【化8】
【化9】
【0034】
本発明に係る化合物を含む組成物を用いて、幹細胞を含むすべての細胞の細胞内小器官であるミトコンドリアまたはゴルジ体の抗酸化能を測定して抗酸化能に関連する細胞の活性を正確に測定することができ、高活性の細胞分類が可能である。本発明の組成物を用いた細胞の活性の測定は抗酸化能の測定を含むが、これに限定されるものではない。
【0035】
本発明の一実施形態において、化学式IまたはVIで表される化合物;そのラセミ体、光学異性体、部分立体異性体、光学異性体の混合物、または部分立体異性体の混合物;その薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む細胞内小器官の抗酸化能測定用組成物を提供した。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式IまたはVIで表される化合物は、フリー(free)状態、すなわち、チオール基が結合していない状態で550~680nmで最大放出波長を示し、チオールと結合した状態で430~550nmで最大放出波長を示す。本発明の他の実施形態によれば、本発明の化学式IまたはVIで表される化合物は、フリー状態で550~650、550~620、550~600、570~590、または580nmで最大放出波長を示す。
【0037】
本発明の他の実施形態によれば、本発明の化学式IまたはVIで表される化合物は、チオールと結合した状態で450~550、470~550、470~530、490~530、500~520、または510nmで最大放出波長を示す。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、本発明の化学式IまたはVIで表される化合物は、ミトコンドリアにおけるチオールが増加するに伴い、放出波長の蛍光強度が連続的で可逆的に増減する。より具体的な実施形態によれば、前記放出波長の蛍光強度は、430nm~680nmの範囲で増減する。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、本発明の化学式IまたはVIで表される化合物は、ミトコンドリアにおけるチオールが増加するに伴い、550~680nmでの蛍光強度が減少し、430~550nmでの蛍光強度は増加する。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、本発明のチオールの検出は、430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の比率(ratio)を得て(obtaining)実施する。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、本発明の比率は、前記430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の関係(relationship)である。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、本発明の関係は、前記430~550nmでの蛍光強度および550~680nmでの蛍光強度の数学的比率関係であり、前記数学的比率関係は、生細胞におけるチオールの量に応じて比率計量的(ratiometrically)かつ可逆的に増減して、細胞小器官におけるチオール量をリアルタイムに示す。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、本発明の検出は、前記細胞小器官であるミトコンドリア、ゴルジ体、または核内のチオールの定性または定量的検出である。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、本発明の検出は、リアルタイム定量的検出である。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、本発明のミトコンドリア、ゴルジ体、または核におけるチオールの検出は、細胞の酸化的ストレスまたは酸化度を示す。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、本発明のミトコンドリア、ゴルジ体、または核におけるチオールの検出は、細胞の老化度を示す。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、本発明のチオールは、グルタチオン(glutathione、GSH)、ホモシステイン(homocysteine、Hcy)、システイン(cysteine、Cys)、またはタンパク質のシステイン残基にあるチオールをすべて含むが、これに限定されるものではない。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、本発明の組成物を含む酸化ストレス誘発疾患診断キットを提供する。本明細書の用語「酸化ストレス誘発疾患」は、酸化ストレスによって発生する疾患を意味し、「活性酸素種(ROS)連関疾患」と同一の意味で使用される。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、本発明の酸化ストレス誘発疾患は、老化、退行性関節炎、白内障、アルツハイマー病、癌、線維化疾患、糖尿病、肥満、虚血、虚血性再灌流損傷、炎症、全身性紅斑性狼瘡、心筋梗塞、血栓性脳卒中、出血性脳卒中、出血、脊髄外傷、ダウン症候群、クローン病、リウマチ関節炎、ブドウ膜炎、肺気腫、胃潰瘍、酸素中毒、腫瘍、または放射線症である。
【発明の効果】
【0050】
本発明に係る化合物を含む組成物を用いて生細胞(living cell)、特に、幹細胞内小器官であるミトコンドリアまたはゴルジ体の抗酸化能を測定することができ、細胞小器官の抗酸化能の測定結果によって高活性の幹細胞を選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、MitoFreSH-トレーサーの構造を示すものである。
図2図2は、MitoFreSH-トレーサーがグルタチオンの還元型と可逆的で速やかに反応するとの実験結果を示すものであり(a.u.は任意単位、Exは最大励起波長、Emは最大放出波長をそれぞれ示す)、図2Aは、MitoFreSH-トレーサーの可逆反応を示す図であり、図2Bは、MitoFreSH-トレーサーを20分間多様な濃度のグルタチオン([GSH]0=0~100mM)に平衡を合わせた後、その反応を測定した結果を示す図であり、図2Bにて上段(upper)は、MitoFreSH-トレーサーの可逆反応をUV可視光線吸収スペクトルによって測定した結果を示す図であり、図2Bにて下段(lower)は、430nm(図2Bの下段左側)および520nm(図2Bの下段右側)で励起(excitation)によって発生したMitoFreSH-トレーサーの蛍光放出スペクトルを510nm(F510)および580nm(F580)でそれぞれモニタリングしてグラフ(図2C)で示す図であり、図2Dは、F510およびF580に分けて計算し、増加した濃度のグルタチオンに合わせた放出比率を示す結果である。
図3図3は、HeLa細胞においてMTT分析により多様な濃度のMitoFreSH-トレーサー処理による24時間後の細胞生存度の様相を分析した結果である。
図4図4は、MitoFreSH-トレーサーで生細胞のミトコンドリア内のグルタチオン水準をイメージング化できることを示す結果であって、図4Aは、MitoFreSH-トレーサーでローディングされた細胞の共焦点顕微鏡蛍光イメージを示す結果であり(F510=Ex403-Em525/25;F580=Ex488-Em595/25;大きさ棒=10im)、図4Bは、MitoFreSH-トレーサーでローディングされた細胞の顕微鏡観察を開始してから3分後に0.5mMジアミド(DiAmide、DA)を細胞培養液に処理した後、その共焦点顕微鏡蛍光イメージを示す結果であり(F510=Ex403-Em525/25;F580=Ex488-Em595/25;大きさ棒=10im)、図4Cは、3つそれぞれの細胞の蛍光比(図4A、矢先)を測定した結果を示す図である。
図5図5は、MitoFreSH-トレーサーでミトコンドリアで発生した活性酸素によって減少する生細胞のミトコンドリア内のグルタチオン水準をイメージング化できることを示す結果であって、図5Aは、アンチマイシンAを細胞培養液に24時間処理後、MitoFreSH-トレーサーでローディングした細胞を共焦点顕微鏡で観察した蛍光イメージを示す結果であり(F510=Ex403-Em525/25;F580=Ex488-Em595/25;大きさ棒=10im)、図5Bは、それぞれの細胞の蛍光比を測定した結果を示すものである。
図6図6は、GolgiFreSH-トレーサーの構造を示すものである。
図7図7は、HeLa細胞においてGolgiFreSH-トレーサーがゴルジ体内に分布するかを分析した結果である(F510=Ex403-Em525/25;F580=Ex488-Em595/25;大きさ棒=10im)。
図8図8は、GolgiFreSH-トレーサーが生細胞のゴルジ体内のグルタチオン水準をイメージング化できることを示す結果であって、図8Aは、GolgiFreSH-トレーサーを細胞にローディングした後、その共焦点顕微鏡蛍光イメージを示す結果であり(F510=Ex403-Em525/25;BODIPY TR C5-ceramide、Golgi apparatus dye;大きさ棒=10im)、図8Bは、図8Aのイメージにおいて蛍光比を測定した結果を示すものである。
図9図9は、GolgiFreSH-トレーサーで生細胞内ゴルジ体のグルタチオン水準を数値化できることを示す結果である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明に係る化合物を含む組成物を用いて生細胞、特に、幹細胞内小器官であるミトコンドリアまたはゴルジ体の抗酸化能を測定することができ、細胞小器官の抗酸化能の測定結果によって高活性の幹細胞を選別することができる。
【実施例
【0053】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0054】
製造例1.ミトコンドリア抗酸化能測定用化合物の合成
細胞小器官であるミトコンドリアの抗酸化能の測定に用いる化合物(MitoFreSH-PPh、MitoFreSH-Piperazine、およびMitoFreSH-Cl)の製造方法は、下記の通りである。
【0055】
1-1.MitoFreSH-PPh(化学式III)の製造方法
【化10】
【0056】
化合物1
【化11】
【0057】
(2-ブロモエチル)アミンヒドロブロミド{(2-bromoethyl)amine hydrobromide、8.6g、42mmol}とトリフェニルホスフィン(triphenylphosphine、10g、38mmol)をCHCN50mLに溶かした溶液を加熱して、18時間還流させた後、常温に冷却させた。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物を蒸留水に溶かした後、KCO飽和水溶液を添加してpH値を11に調節した。この混合物をCHClで抽出した溶液をNaSOを添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去した。残りの固体をEtOで洗った後、減圧乾燥して、化合物1を得た(10g、68%)。
H NMR(400MHz,CDCl):a(ppm)=7.66-7.87(m,15H),4.01-4.08(m,2H),3.15-3.21(m,2H),2.67(s,2H).31P NMR(121MHz,CDCl):a(ppm)=24.60.
【0058】
化合物2
【化12】
【0059】
1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ピペリジンカルボン酸{1-(tert-butoxycarbonyl)-4-piperidinecarboxylic acid(0.15g、0.65mmol)}、オキシマ{oxyma(0.10g、0.71mmol)}、N,N-ジイソプロピルエチルアミン{N,N-diisopropylethylamine(DIEA;0.33mL、1.9mmol)}、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド{1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide(EDCI;0.12g、0.71mmol)}、そして化合物1(0.21g、0.54mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide、DMF)3mLに溶かした溶液を、常温で11時間撹拌した。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィー(MeOH/CHCl 6/94)で精製して、黄色固体形態の化合物2を得た(0.21g、63%)。
H NMR(400MHz,CDCl):a(ppm)=8.90-8.93(t,J=5.7Hz,1H),7.69-7.85(m,15H),4.07(br s,2H),3.69-3.80(m,4H),2.73(br s,2H),2.34-2.42(m,1H),1.75-1.78(d,J=11.6Hz,1H),1.51-1.55(m,1H),1.44(s,9H).
【0060】
化合物3
【化13】
【0061】
化合物2(0.14g、0.23mmol)を塩酸/ジオキサン(HCl/dioxane)4M溶液に溶かした後、常温で1時間撹拌した。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの化合物を精製過程を経ずに次の反応に使用した。
H NMR(400MHz,CDCl):a(ppm)=9.66(br s,1H),9.17(br s,1H),9.00(br s,2H),7.73-7.85(m,15H),3.74-3.79(m,2H),3.63-3.67(m,2H),3.38(br s,2H),2.96(br s,2H),2.49(br s,1H),2.28(br s,2H),2.06(br s,2H).
【0062】
前記化合物とシアノ酢酸(cyanoacetic acid、21mg、0.25mmol)、oxyma(35mg、0.25mmol)、DIEA(0.15mL、0.83mmol)、EDCI(47mg、0.25mmol)をDMF1mLに溶かした溶液を、常温で14時間撹拌した。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をカラムクロマトグラフィー(MeOH/CHCl 8/92)で精製して、黄色固体形態の化合物3を得た(49mg、45%)。
H NMR(400MHz,CDCl):a(ppm)=9.47-9.49(t,J=5.8Hz,1H),7.70-7.86(m,15H),4.43-4.56(d,J=13.3Hz,1H),3.66-3.82(m,4H),3.51(s,2H),3.16-3.23(m,1H),2.71-2.78(m,1H),2.54-2.62(m,1H),1.94-1.97(d,J=14.4Hz,1H),1.82-1.85(d,J=11.2Hz,1H),1.64-1.75(m,1H),1.52-1.62(m,1H),1.43-1.47(m,1H).
【0063】
MitoFreSH-PPh(化学式III)
【化14】
【0064】
10-オキソ-2,3,5,6-テトラヒドロ-1H,4H,10H-11-オキサ-3a-アザベンゾ[de]アントラセン-9-カルボアルデヒド{10-oxo-2,3,5,6-tetrahydro-1H,4H,10H-11-oxa-3a-azabenzo[de]anthracene-9-carbaldehyde(36mg、0.13mmol)}、化合物3(70mg、0.13mmol)、そしてピペリジン(piperidine、13iL、0.13mmol)を2-プロパノール1mLに溶かした溶液を、60℃で1時間加熱した後、常温に冷却した。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィー(MeOH/CHCl 5/95)で精製して、赤色固体形態の化合物(MitoFreSH-PPh)を得た(36mg、36%)。
1H NMR(400MHz,CDCl):a(ppm)=9.44(br s,1H),9.36(br s,1H),8.63(s,1H),7.89(s,1H),7.71-7.84(m,15H),7.50(s,1H),6.99(s,1H),6.84(s,1H),3.62-3.88(m,4H),3.32-3.38(m,4H),2.84-2.88(m,2H),2.75-2.78(m,2H),2.53-2.60(m,1H),1.96-2.04(m,4H),1.88-1.95(m,4H),1.62-1.71(m,4H).
【0065】
1-2.MitoFreSH-Piperazine(化学式IV)の合成
【化15】
【0066】
化合物4
【化16】
【0067】
タート-ブチルピペラジン-1-カルボン酸塩{tert-butyl piperazine-1-carboxylate(1.0g、5.3mmol)}とシアノ酢酸(cyanoacetic acid、0.54g、1.2eq.)をDMF10mLに溶かした溶液に、DIEA(3.28mL、3.5eq.)とEDCI(1.56g、1.5eq.)を添加した。常温で12時間撹拌した後、減圧蒸留して溶媒を除去した。残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィーで精製して、白色固体形態の化合物4を得た(1.13g、84%)。
H NMR(400MHz,CDCl):a(ppm)=3.603.64(m,2H),3.503.55(m,2H),3.51(s,2H),3.433.48(m,4H),1.47(s,9H);HRMS(m/z):[M+H]+254.1496.
【0068】
化合物5
【化17】
【0069】
化合物4(0.30g、1.2mmol)を塩酸/ジオキサン(HCl/dioxane)4M溶液5mLに溶かした後、常温で1時間撹拌した。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの化合物5を精製過程を経ずに次の反応に使用した。
H NMR(400MHz,DMSO-d6):a(ppm)=9.54(br s,2H),4.12(s,2H),3.673.70(m,2H),3.583.61(m,2H),3.043.12(m,4H).
【0070】
化合物6
【化18】
【0071】
化合物5(0.15mmol)と(4-ブロモブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド{(4-bromobutyl)triphenylphosphonium bromide(0.15g、0.30mmol)をアセトニトリル(CHCN)1mLに溶かした溶液に、炭酸水素ナトリウム(NaHCO、64mg、0.7545mmol)を添加した。50℃で20時間撹拌した後、減圧蒸留して溶媒を除去した。残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィー(MeOH/CHCl 15/85)で精製して、白色固体形態の化合物6を得た(71mg、71%)。
H NMR(400MHz,CDCl):a(ppm)=7.69-7.88(m,15H),3.78-3.86(m,2H),3.71(s,2H),3.51-3.53(t,J=4.7Hz,2H),3.47-3.49(t,J=4.7Hz,2H),2.54-2.56(t,J=4.1Hz,2H),2.46-2.49(t,J=6.5Hz,2H),2.38-2.40(t,J=5.1Hz,2H),1.85-1.91(m,2H),1.66-1.74(m,2H).
【0072】
MitoFreSH-Piperazine(化学式IV)
【化19】
【0073】
10-オキソ-2,3,5,6-テトラヒドロ-1H,4H,10H-11-オキサ-3a-アザベンゾ[de]アントラセン-9-カルボアルデヒド{10-oxo-2,3,5,6-tetrahydro-1H,4H,10H-11-oxa-3a-azabenzo[de]anthracene-9-carbaldehyde(35mg、0.13mmol)、化合物6(64mg、0.12mmol)、そしてピペリジン(piperidine、12iL、0.12mmol)を2-プロパノール1mLに溶かした溶液を、60℃で1時間撹拌した後、常温に冷却した。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィー(MeOH/CHCl 6/94)で精製して、赤色固体形態の化合物MitoFreSH-Piperazineを得た(61mg、66%)。
H NMR(400MHz,CDCl):a(ppm)=8.61(s,1H),7.69-7.91(m,15H),7.45(s,1H),7.00(s,1H),6.86(s,1H),3.56(br s,4H),3.35-3.39(q,J=5.9Hz,4H),2.84-2.88(t,J=6.5Hz,2H),2.75-2.78(t,J=6.3Hz,2H),2.41-2.49(m,4H),1.84-2.04(m,12H).
【0074】
1-3.MitoFreSH-Cl(化学式V)の合成
【化20】
【0075】
化合物7
5-ベンジルN-(タート-ブトキシカルボニル)-L-グルタミン酸塩{5-benzyl N-(tert-butoxycarbonyl)-L-glutamate(0.10g、0.29mmol)}、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-hydroxybenzotriazole、HOBt、80mg、2.0eq.)、そしてDIEA(0.18mL、3.5eq.)をDMF1mLに溶かした溶液に、EDCI(0.11g、2.0eq.)と化合物1(0.13g、1.2eq.)を添加した。常温で16時間撹拌した溶液をエチル酢酸塩(EtOAc)で希釈した後、クエン酸(citric acid)0.5M水溶液と炭酸水素ナトリウム(NaHCO)飽和水溶液、塩化ナトリウム(NaCl)飽和水溶液で洗浄した。有機層を分離した後、硫酸ナトリウム(NaSO)を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去した。残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィーで精製して、白色固体形態の化合物4を得た(0.16g、76%)。HNMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)=9.49(brs,1H),7.687.83(m,15H),7.277.35(m,5H),5.87(d,J=9.2Hz,1H),5.08(s,2H),4.184.23(m,1H),3.613.87(m,4H),2.432.47(m,2H),2.122.22(m,1H),1.942.01(m,1H),1.43(s,9H);13CNMR(100MHz,CDCl):δ(ppm)=172.8,172.7,155.2,135.8,135.3(d,CP=3.0Hz),133.4(d,CP=10.4Hz),130.5(d,CP=12.7Hz),128.4,128.1,128.0,117.4(d,CP=85.9Hz),79.2,66.1,53.9,33.3,30.4,28.4,28.3,22.2(d,CP=49.7Hz);31P NMR(121MHz,CDCl):δ(ppm)=22.1;HRMS(m/z):[M]625.2826.
【0076】
化合物8
化合物7(1.2g、1.7mmol)をメタノール(CHOH)5mLと蒸留水5mLに溶かした溶液に、10%Pd-C(0.12g)を添加した後、H気体(1atm)を満たした反応容器で12時間撹拌する。セライト(Celite)を用いて濾過した溶液を減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの化合物8(1.04g、99%)を精製過程を経ずに次の反応に使用する。HNMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)=8.95(br s,1H),7.707.82(m,15H),5.97(br s,1H),4.16(br s,1H),3.603.90(m,4H),2.352.45(m,2H),1.952.05(m,2H),1.37(s,9H);31PNMR(121MHz,CDCl):δ(ppm)=22.1.
【0077】
化合物9
化合物8(0.15g、0.24mmol)、化合物5(49mg、1.05eq.)、そしてDIEA(0.15mL、3.5eq.)をDMF2mLに溶かした溶液に、HOBt(3mg、0.1eq.)とEDCI(95mg、2.0eq.)を添加する。常温で4時間撹拌した後、減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィーで精製して、黄色固体形態の化合物9を得る(0.14g、78%)。HNMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)=(主配座異性体)9.46(br s 1H),7.727.84(m,15H),5.79(d,J=7.8Hz,1H),4.154.21(m,1H),3.473.79(m,14H),2.502.60(m,2H),2.122.15(m,1H),2.00-2.04(m,1H),1.42(s,9H);13CNMR(100MHz,CDCl):δ(ppm)=(*主配座異性体;**副配座異性体)172.8**,172.7,171.2**,171.0,161.1,155.2,135.3,133.4(d,CP=10.3Hz),130.5(d,CP=12.7Hz),117.4(d,CP=85.8Hz),114.5,79.2,54.0.46.3,45.8**,45.3,44.7**,42.2**,41.9,41.2**,40.8,33.3,30.0**,29.5,29.2,28.9**,28.3,25.4,22.2(d,CP=49.8Hz);31P NMR(121MHz,CDCl):δ(ppm)=22.1;HRMS(m/z):[M]670.3157.
【0078】
化合物10
化合物9(0.23g、0.31mmol)を塩酸/ジオキサン(HCl/dioxane)4M溶液3mLに溶かした後、常温で1時間撹拌した。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの化合物10を精製過程を経ずに次の反応に使用した。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ(ppm)=9.44(d,J=6.1Hz,1H),8.49(brs,3H),7.767.94(m,15H),4.094.11(m,1H),3.803.84(m,2H),3.333.50(m,12H),2.502.55(m,2H),1.941.98(m,2H);31P NMR(121MHz,DMSO-d):δ(ppm)=22.4.
【0079】
化合物11
化合物10(0.10g、0.15mmol)と3-(クロロメチル)ベンゾイル塩化物{3-(chloromethyl)benzoyl chloride(25μL、1.05eq.)}をCHCl 1mLに溶かした溶液に、DIEA(58μL、2.0eq.)を添加した。常温で1時間撹拌した後、減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィーで精製して、白色固体形態の化合物11を得た(0.10g、85%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)=(主配座異性体)9.65(br s,1H),8.33(d,J=8.3Hz,1H),8.13(s,1H),8.05(d,J=7.8Hz,1H),7.697.82(m,15H),7.52(d,J=7.9Hz,1H),7.427.46(m,1H),4.744.79(m,1H),4.65(s,2H),3.353.74(m,14H),2.532.60(m,2H),2.252.30(m,2H);13C NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm)=(*主配座異性体;**副配座異性体)173.1**,173.0,171.3,171.2**,166.4,160.9,137.7,135.5,134.1,133.5(d,CP=10.3Hz),131.7,130.6(d,CP=12.7Hz),128.9,128.3,128.2**,127.8,127.7**,117.5(d,CP=85.9Hz),114.5,54.2,46.3,45.9,45.8**,45.3,44.8**,42.1**,42.0,41.3**,41.0,30.2**,29.7,28.3,28.0**,25.3,22.3(d,CP=49.8Hz);31P NMR(121MHz,CDCl):δ(ppm)=22.2;HRMS(m/z):[M]722.2662.
【0080】
MitoFreSH-Cl(化学式V)
化合物11(0.12g、0.16mmol)と10-オキソ-2,3,5,6-テトラヒドロ-1H,4H,10H-11-オキソ-3a-アザベンゾ[de]-アントラセン-9-カルボアルデヒド{10-oxo-2,3,5,6-tetrahydro-1H,4H,10H-11-oxa-3a-azabenzo[de]-anthracene-9-carbaldehyde(46mg、1.1eq.)}をDMF1mに溶かした溶液に、クロロトリメチルシラン(chlorotrimethylsilane、60μL、3.0eq.)を添加した後、130℃で5時間撹拌した。常温に冷却後、減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィーで精製して、赤色固体形態の化合物MitoFreSH-Clを得た(79mg、50%)。
H NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)=(主異性体)9.58(br s,1H),8.63(s,1H),8.40(d,J=7.4Hz,1H),7.728.21(m,18H),7.51(d,J=7.0Hz,1H),7.427.45(m,1H),7.00(s,1H),4.744.80(m,1H),4.60(s,2H),3.583.73(m,12H),3.333.38(m,4H),2.832.87(m,2H),2.722.78(m,2H),2.552.58(m,2H),2.27-2.31(m,2H),1.972.04(m,4H);13C NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm)=(主異性体)172.9,171.1,166.2,163.9,161.3,152.5,149.0,145.9,142.8,137.6,135.4,134.0,133.4(d,CP=10.3Hz),131.6,130.6(d,CP=12.7Hz),128.8,128.2,127.7,127.5,119.9,117.4(d,CP=85.9Hz),117.1,109.7,108.2,106.0,100.4,54.2,50.4,49.9,45.9,45.1(br),41.2(br),33.4,29.9,28.0,27.2,22.2(d,CP=50.0Hz),20.9,19.9,19.8;31P NMR(121MHz,CDCl):δ(ppm)=22.2;HRMS(m/z):[M]973.3616.
【0081】
製造例2.ゴルジ体の抗酸化能測定用化合物の合成
細胞小器官であるゴルジ体の抗酸化能の測定に用いる化合物(GolgiFreSH-トレーサー;GolgiFreSH-A/B/C)の製造方法は、下記の通りである。
【化21】
【0082】
前記RによるGolgiFreSH-A/B/Cの区分は、下記表1の通りである。
【表1】
【0083】
GolgiFreSH-トレーサー1~3の構造は、下記の通りである。
[GolgiFreSH-トレーサー1、化学式VII]
【化22】
[GolgiFreSH-トレーサー2、化学式VIII]
【化23】
[GolgiFreSH-トレーサー3、化学式IX]
【化24】
【0084】
化合物2
【化25】
【0085】
化合物1とシアノ酢酸(cyanoacetic acid、1.2当量)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-hydroxybenzotriazol、HOBt;1.5当量)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン{N,N-diisopropylethylamine(DIEA;2.0当量)}、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド{1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide(EDCI;2.5当量)}をN,N-ジメチルホルムアミド{N,N-dimethylformamide(DMF)}に溶かした溶液を、常温で15~20時間撹拌した。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をエチル酢酸塩(EtOAc)で希釈した後、塩化ナトリウム(NaCl)飽和水溶液で洗浄した。有機層を分離した後、硫酸ナトリウム(NaSO)を添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去した。残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物2を得た。
【0086】
化合物2A
H NMR(500MHz,CDCl):a(ppm)=6.73(br,1H),4.96(br,1H),3.57-3.69(m,8H),3.51(m,2H),3.41(s,2H),3.34(m,2H),1.45(s,9H).
【0087】
化合物2B
H NMR(500MHz,DMSO-d6):a(ppm)=8.19(t,J=5.2Hz,1H),6.79(t,J=5.6Hz,1H),3.59(s,2H),3.04(m,2H),2.88(m,2H),1.37(s,9H),1.33-1.39(m,4H),1.22-1.24(m,4H).
【0088】
化合物2C
H NMR(500MHz,CDCl):a(ppm)=7.18(br,1H),4.90(br,1H),3.62-3.69(m,8H),3.60(m,2H),3.53(t,J=6.0Hz,2H),3.45(m,2H),3.37(s,2H),3.22(m,2H),1.82(m,2H),1.76(m,2H),1.44(s,9H).
【0089】
化合物3
【化26】
【0090】
10-オキソ-2,3,5,6-テトラヒドロ-1H,4H,10H-11-オキサ-3a-アザベンゾ[de]アントラセン-9-カルボアルデヒド(10-oxo-2,3,5,6-tetrahydro-1H,4H,10H-11-oxa-3a-azabenzo[de]anthracene-9-carbaldehyde)と化合物2(1.0当量)、そしてピペリジン(piperidine、1.0当量)を2-プロパノールに溶かした溶液を、60℃で2~4時間加熱した後、常温に冷却させた。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3を得た。
【0091】
化合物3A
H NMR(500MHz,CDCl):a(ppm)=8.62(s,1H),8.55(s,1H),7.00(s,1H),6.67(br,1H),5.08(br,1H),3.62-3.65(m,5H),3.57(t,J=5.2Hz,2H),3.34-3.39(m,6H),2.87(t,J=6.5Hz,2H),2.76(t,J=6.2Hz,2H),1.96-2.00(m,4H),1.44(s,9H).
【0092】
化合物3B
H NMR(500MHz,CDCl):a(ppm)=8.60(s,1H),8.56(s,1H),7.00(s,1H),6.22(br,1H),4.53(br,1H),3.35-3.40(m,6H),3.11(m,2H),2.87(t,J=6.2Hz,2H),2.76(t,J=6.1Hz,2H),1.96-2.00(m,4H),1.44(s,9H),1.44-1.50(m,4H),1.35-1.38(m,4H).
【0093】
化合物3C
H NMR(500MHz,CDCl):a(ppm)=8.60(s,1H),8.53(s,1H),6.99(s,1H),6.97(br,1H),5.01(br,1H),3.72(m,2H),3.63-3.67(m,6H),3.59(m,2H),3.52-3.56(m,4H),3.35-3.39(m,4H),3.22(m,2H),2.87(t,J=6.4Hz,2H),2.76(t,J=6.2Hz,2H),1.96-2.00(m,4H),1.88(m,2H),1.75(m,2H),1.43(s,9H).
【0094】
GolgiFreSH
【化27】
【0095】
化合物3をトリフルオロ酢酸/ジクロロメタン{trifluoroacetic acid(TFA)/dichloromethane(1/1)}溶液に溶かした後、常温で1~2時間撹拌した。減圧蒸留して溶媒を除去した後、残りの化合物とインドメタシン(indomethacin、1.1当量)、HOBt(2.5当量)、DIEA(3.0当量)、EDCI(2.5当量)をDMFに溶かした溶液を、常温で7~8時間撹拌した。減圧蒸留して溶媒を除去し、残りの混合物をEtOAcで希釈した後、NaCl飽和水溶液で洗浄した。有機層を分離した後、NaSOを添加して乾燥した後、これを濾過して得た溶液を減圧蒸留して溶媒を除去した。残りの混合物をSiOカラムクロマトグラフィーで精製して、GolgiFreSHを得た。
【0096】
GolgiFreSH-A(化学式VII)
H NMR(500MHz,CDCl):a(ppm)=8.52(s,1H),8.49(s,1H),7.64(d,J=8.6Hz,2H),7.46(d,J=8.6Hz,2H),6.93(d,J=2.3Hz,1H),6.89(s,1H),6.80(d,J=9.1Hz,1H),6.61-6.63(m,2H),6.39(t,J=5.6Hz,1H),3.80(s,3H),3.65(s,2H),3.48-3.55(m,10H),3.44(m,2H),3.35-3.39(m,4H),2.86(t,J=6.2Hz,2H),2.72(t,J=6.5Hz,2H),2.40(s,3H),1.95-1.99(m,4H).
【0097】
GolgiFreSH-B(化学式VIII)
H NMR(500MHz,CDCl):a(ppm)=8.57(s,1H),8.50(s,1H),7.66(m,2H),7.48(m,2H),6.98(s,1H),6.90(d,J=2.4Hz,1H),6.87(d,J=9.1Hz,1H),6.69(dd,3J=9.1Hz,4J=2.4Hz,1H),6.23(t,J=5.7Hz,1H),5.78(t,J=5.8Hz,1H),3.82(s,3H),3.65(s,2H),3.28-3.39(m,6H),3.20(m,2H),2.86(t,J=6.4Hz,2H),2.76(t,J=6.2Hz,2H),2.39(s,3H),1.95-2.00(m,4H),1.50(m,2H),1.42(m,2H),1.22-1.31(m,4H);HRMS(m/z):[M+Na]+769.2772.
【0098】
GolgiFreSH-C(化学式IX)
H NMR(500MHz,CDCl):a(ppm)=8.55(s,1H),8.48(s,1H),7.67(d,J=8.0Hz,2H),7.47(d,J=8.0Hz,2H),6.98(t,J=4.9Hz,1H),6.96(s,1H),6.92(s,1H),6.87(d,J=9.0Hz,1H),6.66(d,J=9.0Hz,1H),6.34(t,J=4.9Hz,1H),3.81(s,3H),3.57-3.63(m,8H),3.42-3.51(m,8H),3.31-3.38(m,6H),2.85(t,J=6.2Hz,2H),2.75(t,J=5.9Hz,2H),2.37(s,3H),1.95-1.99(m,4H),1.84(m,2H),1.71(m,2H);HRMS(m/z):[M+Na]+900.3390.
【0099】
実施例1.実験材料および実験方法
1-1.試薬
ジアミド(diamide)、アンチマイシンA(Antimycin A)をそれぞれSigma-Aldrichから購入した。BODIPY TR C5-ceramideをThermo Fisher Scientificから購入した。
【0100】
1-2.FreSH-tracer(Fluorescent Real-time SH group-Tracer)化合物のチオール化合物とのin vitro反応
グルタチオン化合物(0~100mM)とFreSH-トレーサー化合物(10im)が混合された緩衝溶液(リン酸塩10mM、NaCl150mM、pH7.4、HO:DMSO=98:2)を製造し、この溶液の時間によるUV可視光線吸収スペクトルと蛍光放出スペクトルの変化をそれぞれシンコS-3100とHitachi F-7000分光光度計で測定した(図2参照)。
【0101】
1-3.チオール化合物のKd値の測定
In vitro反応によりグルタチオン(0~100mM)とFreSH-トレーサー派生化合物との間の化学平衡を形成した後、430nm波長の光で励起させた時に放出される蛍光放出スペクトルを測定した。最大放出波長(580nm)での蛍光強度とチオール化合物の濃度との間の相関関係を非線形回帰分析して、チオール化合物とFreSH-トレーサーとの間の化学平衡定数(Kd)が1~5mMを計算した。
【0102】
1-4.細胞毒性試験(MTT assay)
HeLa細胞(5×10cells/well)を96well dishに18時間培養した後、ジメチルスルホキシ化物(Dimethyl sulfoxide、DMSO)、MitoFreSHtracer(化学式III~V)、またはGolgiFreSHtracer(化学式VII~IX)を24時間処理した。PBSで洗浄後、メチルチアゾリルジフェニル-テトラゾリウム臭化物(MTT、Methylthiazolyldiphenyl-tetrazolium bromide)溶液(500ig/培養液mL)で3~4時間培養した。MTT溶液除去後、DMSOでホルマザンクリスタル(formazan crystal)を溶かした後、570nmで吸光度を測定した。LD50(50%Lethal Dose、半致死量)はGraphpad5.0ソフトウェアを用いて計算した(図3参照)。
【0103】
1-5.生きている細胞のイメージング(real-time cell imaging)
HeLa細胞を10%熱-不活性化ウシ胎児血清(FBS、Hyclone)、100U/mlのペニシリン、100ig/mlのストレプトマイシン硫酸塩、および2mMグルタミンを含み、フェノールレッドのないDMEMで培養した。HeLa細胞を35mmカバーガラスボトムディッシュ(SPL Lifesciences)に分注した後、37℃、5%CO条件で表示された時間の間培養した。蛍光顕微鏡分析の前に、10iMのFreSH-トレーサー派生化合物を含む2mLの培養培地を用いて、HeLa細胞を0.5~1.5時間培養した。PBSで2回洗浄した後、細胞のリアルタイムイメージをNikon A1レーザスキャニング共焦点顕微鏡を用いて取得した。CFIプランアポクロマート60X(Plan apochromat 60X)および1.40開口数(numerical aperture、NA)対物レンズを備えたNikon ECLIPSE Ti逆相顕微鏡に装着されたチャンバ内で、37℃および5%CO条件で細胞を培養し、イメージング実験を進行させた。FreSH-トレーサー派生化合物を403nmおよび488nmレーザ線で励起させ、それぞれ500~550nmおよび570~620nmバンド間隔のフィルタを通して蛍光を検出した。NIS-Elements ARソフトウェアを用いて実験データの分析と蛍光比率をイメージ化した(図4および図5)。
【0104】
1-6.高速大量細胞のイメージ分析
HeLa細胞を10%熱-不活性化ウシ胎児血清(FBS、Hyclone)、100U/mlのペニシリン、100ig/mlのストレプトマイシン硫酸塩、および2mMグルタミンを含み、フェノールレッドのないDMEMで培養した。HeLa細胞をGreiner 96wellディッシュ(Sigma-Aldrich)に分注した後、37℃、5%CO条件で表示された時間の間培養した。蛍光顕微鏡分析の前に、10iMのGolgiFreSH-トレーサーを含む培養培地を用いて、HeLa細胞を0.5~1.5時間培養した。Hank’s Balanced Salt Solutionで2回洗った後、細胞のリアルタイムイメージをOperetta High-Content Imaging System(PerkinElmer)を用いて得た。顕微鏡に装着されたチャンバ内で、37℃および5%CO条件で細胞を培養し、イメージング実験を進行させた。GolgiFreSH-トレーサーを410~430nmおよび490~510nmのLEDで励起させ、それぞれ460~540nmおよび560~630nmバンド間隔のフィルタを通して蛍光を検出した。BODIPY TR C5ceramideは560~580nmのLEDで励起させ、590~640nmバンド間隔のフィルタを通して蛍光を検出した。Harmonyソフトウェアを用いて実験データの分析を実施した(図4図5、および図8参照)。
【0105】
実施例2.細胞小器官ミトコンドリアの抗酸化能の測定
2-1.MitoFreSH-トレーサー(tracer)の比率計量的かつ可逆的にGSHと速やかに反応する特性の観察
MitoFreSH-トレーサーにグルタチオンの濃度を増加させながら添加した場合、紫外線および可視光線に対する吸光度がemax=430nmで増加し、emax=520nmでは減少し(図2B)、蛍光放出強度は約510nm(F510、eex=430nm;eem=510nm)で増加し、約580nm(F580、eex=520nm;eem=580nm)で減少した(Kd=1.3mM;図2B図2C)。本発明者らは、MitoFreSHトレーサーのF510とF580の蛍光放出強度比(F510/F580)が広いGSH濃度範囲で比例的に変化するという事実を確認した(図2D)。これは、前記センサが比率計量的センサとして利用可能であることを意味する。蛍光比から得られた回帰曲線は、細胞内に存在するグルタチオンの濃度より広い範囲(0~20mM)で線形性(R2=0.9836)を示した(図2D、insert)。
【0106】
前記データは、MitoFreSH-トレーサーが細胞内のグルタチオン量をモニタリングするための最適なセンサ特性を有することを示す。
【0107】
2-2.MitoFreSH-トレーサーの比率計量的分析による生きている細胞におけるミトコンドリアのグルタチオン水準の変化の可視化
本発明者らは、生きている細胞のミトコンドリアにおけるグルタチオン水準の変化を研究するにあたり、MitoFreSH-トレーサーの適用の可能性を研究した。本発明者らは、最小24時間毒性のない10iM MitoFreSH-トレーサーを添加した培地でHeLa細胞を培養しながら、共焦点顕微鏡分析により測定された蛍光比を擬色(false color)イメージとして典型的なミトコンドリア染色パターンを示すことを確認することができた(図4A)。センサがミトコンドリア内のグルタチオンの酸化還元条件の変化に反応するかを究明するために、本発明者らは、細胞内のグルタチオンを酸化させるために、センサがローディングされた生細胞に0.5mMジアミド(DA、Diamide)を処理した。培養培地にジアミドを添加すると、生細胞で即刻なセンサ反応が誘導されることを確認した(図4Bおよび4C)。生きている細胞のイメージから計算された当該センサの蛍光比はジアミド処理によって減少した(図4Bおよび4C)。
【0108】
この後、本発明者らは、ミトコンドリアで活性酸素が生成される条件でMitoFreSH-トレーサーの蛍光変化を調べた。ミトコンドリアで電子伝達系を妨げて活性酸素の生成を増加させるアンチマイシンAを75分間処理した場合、MitoFreSH-トレーサーの蛍光変化比がアンチマイシンA濃度依存的に減少することを確認した(図5Aおよび5B)。
【0109】
したがって、本発明者らは、前記実験結果により、MitoFreSH-トレーサーが生細胞のミトコンドリア内のGSH量の変化をリアルタイムモニタリングするのに利用可能であることを立証した。
【0110】
実施例3.細胞小器官ゴルジ体の抗酸化能の測定
3-1.GolgiFreSH-トレーサーの比率計量的分析による生きている細胞におけるグルタチオン水準の分析
本発明者らは、生きている細胞のゴルジ体におけるグルタチオン水準の変化を研究するにあたり、GolgiFreSH-トレーサーが細胞内で維持され適用可能か否かを研究した。GolgiFreSH-トレーサーを細胞培養液に添加後、細胞内の蛍光強度と蛍光比の変化を観察した。GolgiFreSH-トレーサーとゴルジ体マーカーであるBODIPY TR C5-ceramideをローディングしたHeLa細胞において高速大量細胞のイメージ分析により測定された蛍光位置を確認して、GolgiFreSH-トレーサーのF510がBODIPY TR C5-ceramide蛍光と大部分重なって現れることを確認して、GolgiFreSH-トレーサーがゴルジ体内に位置することを観察することができた(図7)。センサが細胞内のグルタチオンの酸化還元条件の変化に反応するかを究明するために、本発明者らは、センサがローディングされた生細胞に1mMジアミドを処理して細胞内のグルタチオンを酸化させた。培養培地にジアミドを添加すると、生細胞でセンサ反応が誘導されることを確認した(図8A)。生きている細胞のイメージから計算された当該センサの蛍光比はジアミド処理によって減少した(図8B)。次に、多様な濃度のジアミドを処理して分析した結果、GolgiFreSH-トレーサーの蛍光比がジアミド濃度依存的に減少することを確認することができた(図9)。したがって、本発明者らは、前記実験結果により、GolgiFreSH-トレーサーが生細胞のゴルジ体内のグルタチオン量の変化をリアルタイムモニタリングするのに利用可能であることを立証した。
【0111】
本発明に係る化合物または組成物を用いて、生きている細胞(living cell)内小器官であるミトコンドリアおよびゴルジ体の抗酸化能を測定することができる。これを幹細胞に適用して、幹細胞における抗酸化能の測定結果によって高活性の幹細胞を選別して細胞治療剤の効率性を増大させることができる。
【0112】
本明細書で引用したすべての参照文献、記事、公報および特許および特許出願が完全に本明細書に参照として組み込まれている。したがって、下記の請求の範囲の真義および範疇は上記の好ましい実施形態の説明に制限されてはならない。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る化合物を含む組成物を用いて生細胞、特に、幹細胞内小器官であるミトコンドリアまたはゴルジ体の抗酸化能を測定することができ、細胞小器官の抗酸化能の測定結果によって高活性の幹細胞を選別することができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9