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特許7169010ドローンシステム、ドローン、管制装置、およびドローンシステムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ドローンシステム、ドローン、管制装置、およびドローンシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/00 20060101AFI20221102BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20221102BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20221102BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20221102BHJP
   B64C 19/02 20060101ALI20221102BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20221102BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20221102BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20221102BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20221102BHJP
【FI】
G08G5/00 A
B64C27/08
B64C39/02
B64F1/36
B64C19/02
A01M7/00 H
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020571284
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004716
(87)【国際公開番号】W WO2020162586
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019021408
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】柳下 洋
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191254(JP,A)
【文献】特開2018-169995(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094842(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 5/00
B64C 27/08
B64C 39/02
B64F 1/36
B64C 19/02
A01M 7/00
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、
前記複数のドローンの動作を管制する管制装置と、
を少なくとも含むドローンシステムであって、
移動体および前記複数のドローンが移動するとき、前記複数のドローンの一部又は全部を、前記移動体に対して所定距離離間させて飛行させる移動管制部を備え、
前記ドローンは周辺の障害物を検知する障害物検知部を備え、前記移動管制部は、前記ドローンが障害物を検知すると、当該ドローンを含めた複数の前記ドローンを着陸させる、
ドローンシステム。
【請求項2】
前記移動管制部は、複数の前記ドローンを前記移動体の進行方向後方において所定距離ずつ離間させて飛行させる、
請求項1記載のドローンシステム。
【請求項3】
前記移動管制部は、複数の前記ドローンを前記移動体の上方において所定距離ずつ離間させて飛行させる、
請求項1又は2記載のドローンシステム。
【請求項4】
前記移動管制部は、前記移動体および複数の前記ドローンが移動している状態において、前記移動体が前記進行方向とは反対に移動するとき、前記進行方向において最後方の前記ドローンを先頭にして移動する、
請求項2記載のドローンシステム。
【請求項5】
前記移動管制部は、前記移動体および複数の前記ドローンが移動している状態において、前記移動体が前記進行方向とは反対に移動するとき、複数の前記ドローンを着陸させる、
請求項記載のドローンシステム。
【請求項6】
前記移動管制部が前記ドローンを着陸させるとき、警報を発信する、
請求項又は記載のドローンシステム。
【請求項7】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと接続され、
移動体および前記複数のドローンが移動するとき、前記複数のドローンの一部又は全部を、前記移動体に対して所定距離離間させて飛行させる管制装置であって
前記複数のドローンの一部が障害物を検知すると、当該ドローンを含めた複数の前記ドローンを着陸させる、管制装置
【請求項8】
作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンを少なくとも含むドローンシステムの制御方法であって、
移動体および前記複数のドローンが移動するとき、前記複数のドローンの一部又は全部を、前記移動体に対して所定距離離間させて飛行させるステップと、
前記ドローンにより周辺の障害物を検知するステップと、
前記ドローンが障害物を検知すると、当該ドローンを含めた複数の前記ドローンを着陸させるステップと、を含む、
ドローンシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ドローンシステム、ドローン、管制装置、およびドローンシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの薬剤散布が挙げられる(たとえば、特許文献1)。比較的狭い農地においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
準天頂衛星システムやRTK-GPS(Real Time Kinematic - Global Positioning System)などの技術によりドローンが飛行中に自機の絶対位置をセンチメートル単位で正確に知ることができるようになったことで、日本において典型的な狭く複雑な地形の農地でも、人手による操縦を最小限として自律的に飛行し、効率的かつ正確に薬剤散布を行なえるようになっている。
【0004】
その一方で、農業用の薬剤散布向け自律飛行型ドローンについては安全性に対する考慮が十分とは言いがたいケースがあった。薬剤を搭載したドローンの重量は数10キログラムになるため、人の上に落下する等の事故が起きた場合に重大な結果を招きかねない。また、通常、ドローンの操作者は専門家ではないためフールプルーフの仕組みが必要であるが、これに対する考慮も不十分であった。今までに、人間による操縦を前提としたドローンの安全性技術は存在していたが(たとえば、特許文献2)、特に農業用の薬剤散布向けの自律飛行型ドローンに特有の安全性課題に対応するための技術は存在していなかった。
【0005】
また、複数のドローンが作業を行う場合においては、複数のドローンが衝突することなく、安全かつ効率良く作業を遂行するシステムが必要とされている。
【0006】
特許文献3には、二組の移動体を交互に充電する場合に、一方の組の移動体の充電中に他方の組の移動体の動作が停止することなく移動体を交代するリモート制御装置が開示されている。リモート制御装置が有する制御部は、交代時期検出手段により移動体の交代時期であることが検出されると、無線送信により動作中の移動体と充電中の移動体とを交代させる。
【0007】
しかしながら、特許文献3には、いずれかの移動体が常に動作することを目的としており、複数の移動体が衝突することなく安全に作業を遂行することについては記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許公開公報 特開2001-120151
【文献】特許公開公報 特開2017-163265
【文献】特許公開公報 特開1998-143246
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
複数のドローンにより安全かつ効率よく作業を遂行するドローンシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るドローンシステムは、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、前記複数のドローンを離陸させる離陸順序を管制する管制装置と、を少なくとも含む。
【0011】
前記管制装置は、前記複数のドローンを1台ずつ離陸させるように構成されていてもよい。
【0012】
前記管制装置は、離陸している第1の前記ドローンの情報を取得し、当該ドローンが所定の条件を満たすとき、第2の前記ドローンを離陸させるように構成されていてもよい。
【0013】
前記管制装置は、第1の前記ドローンと第2の前記ドローンとの距離が所定以上となるとき、第2の前記ドローンを離陸させるように構成されていてもよい。
【0014】
前記管制装置は、発着台に着陸させる着陸順序を管制するように構成されていてもよい。
【0015】
前記管制装置は、前記複数のドローンの情報を取得するドローン情報取得部と、前記複数のドローンの前記発着台における滞在予定時間帯が重複するとき、前記複数のドローンの情報に基づいて、前記着陸順序を決定する着陸順序決定部と、をさらに備えていてもよい。
【0016】
前記ドローン情報取得部は、前記ドローンが前記発着台に帰還する原因に関する帰還情報を取得し、
前記着陸順序決定部は、前記帰還情報に基づいて前記着陸順序を決定してもよい。
【0017】
前記着陸順序決定部は、前記ドローンが使用者からの帰還指令に基づいて帰還する場合、当該ドローンを他の前記ドローンよりも先に着陸させるように構成されていてもよい。
【0018】
前記着陸順序決定部は、前記ドローンが、当該ドローンに発生する故障および異常の少なくとも1個に基づいて帰還する場合、当該ドローンを他の前記ドローンよりも先に着陸させるように構成されていてもよい。
【0019】
前記ドローン情報取得部は、前記複数のドローンが保有する資源の量を取得し、前記着陸順序決定部は、前記資源の量に基づいて前記着陸順序を決定してもよい。
【0020】
前記着陸順序決定部は、前記資源の量がより少ない前記ドローンを、他の前記ドローンよりも先に着陸させるように構成されていてもよい。
【0021】
前記資源の量は、前記ドローンを駆動するエネルギー量および前記ドローンが散布する薬剤の量の少なくともいずれか1個を含むように構成されていてもよい。
【0022】
前記滞在予定時間帯が重複するとき、前記着陸順序が後になる前記ドローンを、当該ドローンが前記発着台に着陸可能な状態となるまで待機させるように構成されていてもよい。
【0023】
前記滞在予定時間帯が重複するとき、前記着陸順序が後になる前記ドローンを、当該ドローンが前記発着台に着陸可能な状態となるまで、前記作業エリア内でホバリングさせて待機させるように構成されていてもよい。
【0024】
前記滞在予定時間帯が重複するとき、前記着陸順序が先になる前記ドローンを前記発着台に着陸させ、他の前記ドローンを前記発着台とは異なる場所に着陸させるように構成されていてもよい。
【0025】
前記滞在予定時間帯が重複する複数の前記ドローンの、少なくとも1個の前記ドローンに計画されている作業を短縮するように構成されていてもよい。
【0026】
前記管制装置は、前記滞在予定時間帯が重複する複数の前記ドローンにおいて、少なくとも1個の前記ドローンの飛行速度を変更することで、前記滞在予定時間帯を変更するように構成されていてもよい。
【0027】
前記滞在予定時間帯が重複する複数の前記ドローンの、少なくとも1個の前記ドローンの飛行速度を速めるように構成されていてもよい。
【0028】
前記ドローンの発着台は、前記ドローンに補充する資源を収容可能であり、前記管制装置は、前記資源を複数の前記ドローンに補充する補充計画を管制する補充管制部をさらに備えるように構成されていてもよい。
【0029】
前記補充計画は、前記ドローンの前記発着台への着陸順序、複数の前記ドローンに補充される前記資源の種類、前記資源の量、および補充を行う時点に関する情報の少なくとも1個を含むように構成されていてもよい。
【0030】
前記ドローンシステムは、前記補充計画の少なくとも一部を受信して通知する端末をさらに備えるように構成されていてもよい。
【0031】
前記補充管制部は、前記発着台から前記ドローンへの補充が計画されている前記資源の量を取得する補充計画取得部と、前記発着台に収容されている前記資源の量を取得する移動体資源取得部と、
をさらに備え、前記端末は、前記計画されている前記資源の量が、前記収容されている前記資源の量を上回るとき、その旨を発報するように構成されていてもよい。
【0032】
前記補充管制部は、直近に着陸が予定されている前記ドローンへの補充が計画されている前記資源の量が、前記発着台に収容されている資源の量を上回るとき、その旨を発報するように構成されていてもよい。
【0033】
前記発着台は、前記ドローンと共に移動可能な移動体であってもよい。
【0034】
前記移動体および複数の前記ドローンが移動するとき、複数の前記ドローンの一部又は全部を、前記移動体に対して所定距離離間させて飛行させる移動管制部をさらに備えていてもよい。
【0035】
前記移動管制部は、複数の前記ドローンを前記移動体の進行方向後方において所定距離ずつ離間させて飛行させるように構成されていてもよい。
【0036】
前記移動管制部は、複数の前記ドローンを前記移動体の上方において所定距離ずつ離間させて飛行させるように構成されていてもよい。
【0037】
前記移動管制部は、前記移動体および複数の前記ドローンが移動している状態において、前記移動体が前記進行方向とは反対に移動するとき、前記進行方向において最後方の前記ドローンを先頭にして移動するように構成されていてもよい。
【0038】
前記ドローンは周辺の障害物を検知する障害物検知部を備え、前記移動管制部は、前記ドローンが障害物を検知すると、当該ドローンを含めた複数の前記ドローンを着陸させるように構成されていてもよい。
【0039】
前記移動管制部は、前記移動体および複数の前記ドローンが移動している状態において、前記移動体が前記進行方向とは反対に移動するとき、複数の前記ドローンを着陸させるように構成されていてもよい。
【0040】
前記移動管制部が前記ドローンを着陸させるとき、警報を発信するように構成されていてもよい。
【0041】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るドローンシステムの制御方法は、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンを少なくとも含むドローンシステムの制御方法であって、前記複数のドローンを離陸させる離陸順序を管制するステップを含む。
【0042】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るドローンシステムの制御プログラムは、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンを少なくとも含むドローンシステムの制御プログラムであって、
前記複数のドローンを離陸させる離陸順序を管制する命令をコンピュータに実行させる。
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、CD-ROMなどのコンピュータ読取可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【0043】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るドローンは、作業エリア内を飛行して作業を遂行するドローンであって、離陸させる離陸順序を管制する管制装置と接続され、前記管制装置からの命令に基づいて離陸する。
【0044】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る移動体は、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと、前記複数のドローンを離陸させる離陸順序を管制する管制装置と、を少なくとも含むドローンシステムに含まれる移動体であって、前記移動体は、前記ドローンに補充する資源を収容可能である。
【0045】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る管制装置は、作業エリア内を飛行して作業を遂行する複数のドローンと接続され、前記複数のドローンに関する情報に基づいて、前記複数のドローンを離陸させる離陸順序を管制する。
【発明の効果】
【0046】
複数のドローンにより安全かつ効率よく作業を遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本願発明に係るドローンシステムが有するドローンの平面図である。
図2】上記ドローンシステムが有するドローンの正面図である。
図3】上記ドローンの右側面図である。
図4】上記ドローンの背面図である。
図5】上記ドローンの斜視図である。
図6】上記ドローンシステムの全体概念図である。
図7】上記ドローンシステムの第2実施形態を示す全体概念図である。
図8】上記ドローンシステムの第3実施形態を示す全体概念図である。
図9】上記ドローンが作業を行う圃場、上記移動体が走行する自動走行許可エリアの配置の様子を示す概念図である。
図10】上記ドローンの制御機能を表した模式図である。
図11】本願発明にかかる移動体の様子を示す概略斜視図である。
図12】上記移動体の、上記ドローンが載置される上面板が後方にスライドしている様子を示す概略斜視図である。
図13】上記ドローン、上記移動体、および本願発明にかかる管制装置が有する、複数の上記ドローンの着陸、資源の補充および移動を管制する機能に関する機能ブロック図である。
図14】上記移動体および複数のドローンが同時に移動する様子を示す(a)第1実施形態の模式図、および(b)別の実施形態の模式図である。
図15】上記管制装置が行う、着陸管制に関するフローチャートである。
図16】上記管制装置が行う、補充管制に関するフローチャートである。
図17】上記管制装置が行う、移動管制に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0049】
まず、本発明にかかるドローンシステムが有する、ドローンの構成について説明する。本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。
【0050】
図1乃至図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の本体110からのび出たアームにより本体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は図1における紙面下向きを進行方向とする。回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足107-1,107-2,107-3,107-4が伸び出ている。
【0051】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。図2、および、図3に示されるように、ローターが異物と干渉しないよう設けられたプロペラガードを支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0052】
薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0053】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから吐出するための手段である。
【0054】
図6に本願発明に係るドローン100の薬剤散布用途の実施例を使用したシステムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。同図において、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a、基地局404および移動体406aは、営農クラウド405にそれぞれ接続されている。これらの接続は、Wi-Fiや移動通信システム等による無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。
【0055】
ドローン100および移動体406aは、互いに情報の送受信を行い、協調して動作する。移動体406aは、発着台の例であり、発着地点406を有する。ドローン100は、ドローン100の飛行を制御する飛行制御部21の他、移動体406aと情報を送受信するための機能部を有している。
【0056】
操作器401は、使用者402の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作器(図示していない)を使用してもよい。非常用操作器は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい。さらに、操作器401とは別に、操作器401に表示される情報の一部又は全部を表示可能な小型携帯端末401a、例えばスマートホンがシステムに含まれていてもよい。また、小型携帯端末401aから入力される情報に基づいて、ドローン100の動作が変更される機能を有していてもよい。小型携帯端末401aは、例えば基地局404と接続されていて、基地局404を介して営農クラウド405からの情報等を受信可能である。
【0057】
圃場403は、ドローン100による薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の侵入者が存在する場合もある。
【0058】
基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK-GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっていてもよい(Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GPS基地局が独立した装置であってもよい)。また、基地局404は、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムを用いて、営農クラウド405と互いに通信可能であってもよい。基地局404は、本実施の形態においては、発着地点406と共に移動体406aに積載されている。
【0059】
営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。営農クラウド405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0060】
小型携帯端末401aは例えばスマートホン等である。小型携帯端末401aの表示部には、ドローン100の運転に関し予測される動作の情報、より具体的にはドローン100が発着地点406に帰還する予定時刻や、帰還時に使用者402が行うべき作業の内容等の情報が適宜表示される。また、小型携帯端末401aからの入力に基づいて、ドローン100および移動体406aの動作を変更してもよい。小型携帯端末401aは、ドローン100および移動体406aのいずれからでも情報を受信可能である。また、ドローン100からの情報は、移動体406aを介して小型携帯端末401aに送信されてもよい。
【0061】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点406から離陸し、圃場403に薬剤を散布した後に、あるいは、薬剤補充や充電等が必要になった時に発着地点406に帰還する。発着地点406から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、営農クラウド405等で事前に保存されていてもよいし、使用者402が離陸開始前に入力してもよい。
【0062】
なお、図7に示す第2実施形態のように、本願発明に係るドローン100の薬剤散布システムは、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a、営農クラウド405が、それぞれ基地局404と接続されている構成であってもよい。
【0063】
また、図8に示す第3実施形態のように、本願発明に係るドローン100の薬剤散布システムは、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401aが、それぞれ基地局404と接続されていて、操作器401のみが営農クラウド405と接続されている構成であってもよい。
【0064】
図9に示すように、ドローン100は、圃場403a、403bの上空を飛行し、圃場内の作業を遂行する。移動体406aは、圃場403a、403bの周辺に設けられている自動運転許可エリア90を自動で走行する。自動運転許可エリア90は、例えば農道である。圃場403a、403bおよび自動運転許可エリア90は、作業エリアを構成する。また、自動運転許可エリア90は、移動体406aは移動可能であるが、ドローン100の着陸はできない移動許可エリア901と、移動体406aが移動可能で、かつ移動体406a上にドローン100が着陸可能な着陸許可エリア902と、に細分化されている。ドローン100の着陸ができない理由として、例えば当該エリアと圃場403aとの間に、ガードレール、電柱、電線、倉庫、墓等の障害物80が設置されていること等が挙げられる。
【0065】
本実施形態においては、1個の圃場403a(作業エリアの例)に複数のドローン100a、100b(以下、第1ドローン100a、および第2ドローン100bともいう。)が同時に飛行し、それぞれ作業を行ってもよい。第1ドローン100aが行う作業は第1作業の例、第2ドローン100bが行う作業は第2作業の例である。第1作業は、圃場403aの一部である第1作業エリア403cに網羅的に設定される第1運転経路51を飛行する動作を含む。第2作業は、圃場403aのうち第1作業エリア403c以外の領域である第2作業エリア403dに、網羅的に設定される第2運転経路52を飛行する動作を含む。ドローン100a、100bは、第1、第2運転経路51、52に沿って飛行しながら、薬剤を散布したり、圃場403a内を撮影したりする。
【0066】
第1運転経路51は、始点51s、作業済経路51a、未作業経路51b、および終点51eを備える。第1ドローン100aは始点51sから飛行を開始し、終点51eまで飛行する。ドローン100aがすでに飛行した経路を作業済経路51a、これから飛行する予定の経路を未作業経路51bとする。同様に、第2運転経路52は始点52s、作業済経路52a、未作業経路52b、および終点52eを備える。第2ドローン100bは始点52sから飛行を開始し、終点52eまで飛行する。ドローン100bがすでに飛行した経路を作業済経路52a、これから飛行する予定の経路を未作業経路52bとする。
【0067】
複数の移動体406A、406b(以下、第1移動体406A、第2移動体406Bともいう。)が、自動運転許可エリア90内を走行する。ドローンシステム500に含まれる複数のドローン100a、100b、および複数の移動体406A、406Bは、互いにネットワークを介して接続され、図13に後述する管制装置40により集中管理されている。
【0068】
本実施形態においては、ドローンおよび移動体の数は同数であるが、同数でなくてもよい。ドローンおよび移動体の数が同数である場合、移動体1台につきドローンが1台搭載可能であるので、移動体にすべてのドローンを積載して、作業エリア外からドローンを搬入することができる。また、移動体は複数のドローンに対して同時に資源を補充することはできないが、ドローンシステム500内にドローンと移動体が同数含まれる構成によれば全てのドローンに同時に資源補充が可能である。
【0069】
管制装置40は、独立した装置であってもよいし、複数のドローン100a、100b、複数の移動体406A、406B又は営農クラウド405等、ドローンシステム500に含まれる構成のいずれかに搭載されていてもよい。
【0070】
ドローン100は、移動体406aから離陸して圃場403a、403b内での作業を遂行する。ドローン100は、圃場403a、403b内での作業中に、適宜作業を中断して移動体406aに帰還し、バッテリ502および薬剤の補充を行う。ドローン100は所定の圃場の作業が完了すると、移動体406aに乗って別の圃場近傍まで移動した上で、移動体406aから再度離陸し、当該別の圃場における作業を開始する。このように、ドローン100の自動運転許可エリア90内の移動は、原則的に、移動体406aに乗って行われ、移動体406aは、作業を行う圃場近傍までドローン100を運搬する。この構成によれば、ドローン100のバッテリ502を節約することができる。また、移動体406aは、ドローン100に補充可能なバッテリ502や薬剤を格納しているため、ドローン100が作業を行っている圃場近傍に移動体406aが移動して待機する構成によれば、ドローン100への資源の補充を効率的に行うことができる。
【0071】
自動運転許可エリア90の外の領域は、自動運転不許可エリア91である。自動運転許可エリア90と自動運転不許可エリア91とは、区画部材407a、407b、407c、407d、407eにより区画されている。自動運転許可エリア90と自動運転不許可エリア91とは、各種障害物等で隔てられている他、道路が連続的に形成されていて、区画部材407a、407b、407c、407d、407eは、当該道路上に配置されていてもよい。言い換えれば、区画部材407a、407b、407c、407d、407eは、自動運転許可エリア90への侵入口に配置されている。
【0072】
区画部材407は、圃場403およびその周辺の領域であって、移動体406aやドローン100が作業する際に移動する作業エリアを区画するための部材であり、例えばカラーコーン(登録商標)、三角コーン、コーンバー、バリケード、フィールドアーチ、フェンス等である。区画部材407は、物理的に区画してもよいし、赤外線等の光線により区画されていてもよい。区画部材407は、主に作業エリア外の侵入者に作業中であることを知らせ、作業エリア内への立ち入りを制限するために用いられる。したがって、侵入者が遠方からでも視認できるような部材である。また、区画部材407は、作業の開始時に使用者402により設置されるため、設置および撤去が容易であるとよい。区画部材407は、ドローンシステム500内に複数含まれていてもよい。区画部材407は、侵入者が作業エリア内に侵入したことを検知して、移動体406aや操作器401、小型携帯端末401a等に当該侵入情報を伝達してもよい。なお、侵入者は、人や車、その他の移動体を含む。
【0073】
図10に本願発明に係る薬剤散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0074】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0075】
フライトコントローラー501は、Wi-Fi子機機能503を介して、さらに、基地局404を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、Wi-Fiによる通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0076】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段であり、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0077】
流量センサー510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。マルチスペクトルカメラ512は圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。侵入者検知カメラ513はドローン侵入者を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なるため、マルチスペクトルカメラ512とは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。侵入者接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサーである。なお、侵入者接触センサー515は、6軸ジャイロセンサー505で代用してもよい。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー517は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報をWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0078】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0079】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。Wi-Fi子機機能519は操作器401とは別に、たとえば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi-Fi子機機能に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。また、Wi-Fi子機機能に替えて、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムにより相互に通信可能であってもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0080】
●移動体の構成
図11および図12に示す移動体406aは、ドローン100が有する情報を受信して、使用者402に適宜通知し、又は使用者402からの入力を受け付けてドローン100に送信する装置である。また、移動体406aは、ドローン100を積載して移動可能である。移動体406aは、使用者402により運転可能である他、自律的に移動可能であってもよい。なお、本実施形態における移動体406aは自動車等の車両、より具体的には軽トラックを想定しているが、電車等の陸上走行可能な適宜の移動体であってもよいし、船舶や飛行体であってもよい。移動体406aの駆動源は、ガソリン、電気、燃料電池等、適宜のものであってよい。
【0081】
移動体406aは、進行方向前方に乗車席81、後方に荷台82が配置されている車両である。移動体406aの底面側には、移動手段の例である4個の車輪83が、駆動可能に配置されている。乗車席81には、使用者402が乗り込むことが可能である。
【0082】
乗車席81には、移動体406aおよびドローン100の様子を表示する表示部65が配置されている。表示部65は、画面を有する装置であってもよいし、フロントガラスに情報を投影する機構により実現されていてもよい。また、この表示部65に加えて、乗車席81を覆う車体810の背面側にも背面表示部65aが設置されていてもよい。この背面表示部65aは、車体810に対する角度が左右に変更可能であり、荷台82の後方および左右側方で作業している使用者402が画面を見て情報を取得することができる。
【0083】
移動体406aの荷台82前部左端には、丸棒の上方に円盤状の部材が連結された形状をしている基地局404が、乗車席81よりも上方に伸び出ている。なお、基地局404の形状および位置は、任意である。基地局404が荷台82の乗車席81側にある構成によれば、荷台82の後方にある構成と比較して、基地局404がドローン100の離着陸の妨げになりづらい。
【0084】
荷台82は、ドローン100のバッテリ502や、ドローン100の薬剤タンク104に補充される薬剤を格納する荷室821を有する。荷室821は、乗車席81を覆う車体810と、後方板822と、1対の側方板823、823と、上面板824とに囲まれた領域である。後方板822および側方板823は、「あおり」とも呼ばれる。後方板822の上部両端それぞれには、レール825が、側方板823の上端に沿って乗車席81背面側の車体810まで配設されている。上面板824は、ドローン100が載置され、離着陸することが可能な発着地点406である発着領域となっており、レール825に沿って進行方向前後に摺動可能になっている。レール825は、上面板824の平面より上方に突出するリブとなっていて、上面板824上に乗っているドローン100が移動体406aの左右端から滑り出てしまうことを防いでいる。また、上面板824の後方にも、レール825と同程度上面側に突出するリブ8241が形成されている。
【0085】
車体810上部および後方板822の進行方向後ろ側には、ドローンシステム500が作業中である旨を表示する警告灯830が配置されていてもよい。警告灯830は、配色又は明滅等で作業中と作業中以外とを区別する表示器であってもよいし、文字又は絵柄等が表示可能であってもよい。また、車体810上部の警告灯830は、車体810上方まで伸びあがって両面に表示することが可能であってもよい。この構成によれば、荷台82にドローン100が配置されている場合であっても、後方から警告を視認することができる。また、移動体406aの進行方向前方からも、警告を視認することができる。警告灯830が前方および後方から視認できることで、区画部材407を設置する手間を一部省略することができる。
【0086】
上面板824は、手動で摺動可能であってもよいし、ラックアンドピニオン機構などを利用して自動で摺動してもよい。上面板824を後方に摺動させると、荷台82の上方から荷室821に物品を格納したり、物品を取り出したりすることができる。また、上面板824が後方に摺動している形態においては、上面板824と車体810とが十分離間するため、ドローン100が発着地点406に離着陸可能である。
【0087】
上面板824には、ドローン100の足107-1,107-2,107-3,107-4が固定可能な足受部826が4個配設されている。足受部826は、例えばドローン100の4本の足107-1,107-2,107-3,107-4に対応する位置に1個ずつ設置されている、上面が円錐台状に凹んでいる円盤状の部材である。なお、足受部826の円錐台状の凹みの底と、足107-1,107-2,107-3,107-4の先端とは、互いに嵌合可能な形状になっていてもよい。足受部826上に着陸しているとき、ドローン100の足107-1,107-2,107-3,107-4は、足受部826の円錐面に沿って滑り、円錐台の底部に足107-1,107-2,107-3,107-4の先端が誘導される。ドローン100は適宜の機構により足受部826に自動又は手動で固定可能であり、移動体406aがドローン100を載せて移動する際にも、ドローン100が過度に振動したり落下することなくドローン100を安全に輸送することができる。また、移動体406aは、ドローン100が足受部826に固定されているか否かを検知可能である。
【0088】
上面板824の、略中央部には、ドローン100の離着陸の位置の目安を表示する円周灯850が配置されている。円周灯850は、略円状に配設される発光体群により形成されていて、発光体群は個別に明滅可能である。本実施形態では、円周上に約90度ごとに配置される4個の大きな発光体850aと、大きな発光体850aの間に2個ずつ等間隔に配置される小さな発光体850bとで、1の円周灯850を構成している。円周灯850は、発光体群850a、850bのうち1又は複数が点灯することで、ドローン100の離陸後の飛行方向、又は着陸する際に飛来する方向を表示する。なお、円周灯850は、部分的に明滅可能な1個の円環状の発光体により構成されていてもよい。
【0089】
1対の側方板823は、底部の辺が荷台82にヒンジで連結されていて、側方板823を外側に倒すことが可能である。図12では、進行方向左側の側方板823が外側に倒れている様子を示している。側方板823が外側に倒れると、移動体406aの側方から格納物を格納および取り出しが可能になる。側方板823は荷室821の底面と略平行に固定され、側方板823を作業台としても使用することができる。
【0090】
1対のレール825は、形態切替機構を構成する。また、側方板823と荷台82を連結するヒンジも、形態切替機構に含まれていてもよい。上面板824が荷室821の上方を覆って配置され、側方板823が起立して荷室821の側面を覆っている形態において、移動体406aは移動する。移動体406aが静止しているとき、上面板824が後方に摺動している形態、又は側方板823が倒れている形態に切り替えられ、使用者402は荷室821の内部にアプローチできる。
【0091】
ドローン100は、発着地点406に着陸している状態において、バッテリ502の補充を行うことができる。バッテリ502の補充とは、内蔵されているバッテリ502の充電、およびバッテリ502の交換を含む。荷室821にはバッテリ502の充電装置が格納されていて、荷室821に格納されているバッテリ502の充電が可能である。また、ドローン100は、バッテリ502に代えてウルトラキャパシタの機構を備え、荷室821内にはウルトラキャパシタ用の充電器が格納されていてもよい。この構成においては、ドローン100が足受部826に固定されている際に、ドローン100の足を介して、ドローン100に搭載されているバッテリ502を急速充電することができる。
【0092】
ドローン100は、発着地点406に着陸している状態において、薬剤タンク104に貯留される薬剤の補充を行うことができる。荷室821には、薬剤を希釈混合するための希釈混合タンク、撹拌機構、ならびに希釈混合タンクから薬剤を吸い上げて薬剤タンク104に注入せしめるポンプおよびホース等の希釈混合を行う適宜の構成要素が格納されていてもよい。また、荷室821から上面板824の上方へ伸び出て、薬剤タンク104の注入口に接続可能な補充用ホースが配管されていてもよい。
【0093】
上面板824の上面側には、薬剤タンク104から排出される薬剤を誘導する廃液溝840および廃液孔841が形成されている。廃液溝840および廃液孔841は、それぞれ2個ずつ配置されていて、ドローン100が移動体406aの左右どちらを向いて着陸しても、薬剤ノズル103の下方に廃液溝840が位置するようになっている。廃液溝840は、薬剤ノズル103の位置に沿って、移動体406aの長さ方向に沿って略真っ直ぐに形成されている、所定の幅を有する溝であり、乗車席81側に向かってわずかに傾斜している。廃液溝840の乗車席81側の端部には、それぞれ上面板824を貫通して荷室821の内部に薬液を誘導する廃液孔841が形成されている。廃液孔841は、荷室821内であって廃液孔841の略真下に設置されている廃液タンク842に連通している。
【0094】
薬剤タンク104に薬剤を注入する際、薬剤タンク104内に充満する気体、主に空気を外部に排出するエア抜き動作を行う。このとき、薬剤タンク104の排出口から薬剤が排出する動作が必要になる。また、ドローン100が作業終了後に、薬剤タンク104から薬剤を排出する動作が必要になる。上面板824に廃液溝840および廃液孔841が形成されている構成によれば、ドローン100を上面板824に配置した状態で、薬剤タンク104への薬剤注入および排出を行う際、廃液を廃液タンク842に誘導することができ、安全に薬剤注入および排出を行うことができる。
【0095】
●ドローンシステムが有するドローン、移動体、および管制装置の構成
図13に示すように、ドローンシステム500は、第1ドローン100a、第2ドローン100b、第1移動体406a、および管制装置40を含む。ドローン100、第1ドローン100a、第2ドローン100b、移動体406a、および管制装置40は、例えば互いにネットワークNWを介して接続されて構成されている。なお、ネットワークNWは、すべて無線であってもよいし、一部又は全部が有線であってもよい。また、具体的な接続関係は同図に限られるものではなく、各構成が直接又は間接的に接続されていればよい。第1および第2ドローン100a、100bは互いに同等の構成であるので、以降の説明では単にドローン100として説明する。
【0096】
本実施形態では、ドローンは2個、移動体は1個であるが、それぞれこれ以上であってもよい。また、ドローンと移動体の数は同数であってもよいし、個数が異なっていてもよい。複数のドローンは、複数の移動体406aのいずれにも離着陸可能であり、資源の補充が可能である。なお、資源の補充とは、バッテリ502の補充および薬剤の補充を含む概念である。
【0097】
●ドローン
ドローン100は、それぞれ飛行制御部21、搭載資源取得部22、およびバッテリ502を備える。
【0098】
飛行制御部21は、ドローン100が有するモータ102を稼働させ、ドローン100の飛行および離着陸を制御する機能部である。飛行制御部21は、例えばフライトコントローラ501の機能によって実現される。
【0099】
搭載資源取得部22は、ドローン100に搭載されている資源の量、すなわちバッテリ502の蓄電量および薬剤量を取得する機能部である。搭載資源取得部22は、蓄電量取得部221および薬剤量取得部222を備える。
【0100】
蓄電量取得部221は、ドローン100に搭載されているバッテリ502の蓄電量を取得する機能部である。バッテリ502の蓄電量は、資源の補充なしにドローン100を動作可能なエネルギー量を指すものとする。バッテリ502は、一次電池、二次電池、又は燃料電池等どのような形式のエネルギー供給機構であってもよい。
【0101】
蓄電量取得部221はバッテリ502の蓄電量を計測する別の構成から情報を取得してもよいし、蓄電量取得部221自身がバッテリ502の蓄電量を計測してもよい。
【0102】
薬剤量取得部222は、薬剤タンク104における薬剤の現在の貯留量を推定する機能部である。薬剤量取得部222は、重量測定部211aにより測定されるドローン100の重量から貯留量を推定してもよい。また、薬剤量取得部222は、例えば薬剤タンク104内の液面高さを推定する機能を有していてもよい。薬剤量取得部222は、薬剤タンク104内に配置される液面計又は水圧センサー等を用いて貯留量を推定してもよい。ドローン100が作業中の場合は、薬剤量取得部222は、流量センサー510によって測定される薬剤タンク104からの吐出流量を積算して薬剤吐出量を求め、当初積載された薬剤量から薬剤吐出量を減算することにより、貯留量を推定してもよい。
【0103】
障害物検知部23は、ドローン100の周辺の障害物を検知する機能部である。障害物検知部23は、例えば赤外線センサやマルチスペクトルカメラにより実現される。障害物検知部23により障害物がドローン100周辺の所定範囲にあることが検知されると、飛行制御部21によりドローン100を着陸させる。
【0104】
●移動体
移動体406aは、荷室821、収容資源取得部31、着陸検知部32および補充部33を備える。
【0105】
収容資源取得部31は、移動体406aが保有する資源の量を計量する機能部である。資源の量は、充電済みのバッテリ502の個数や薬剤量を含む。また、資源の量は、バッテリ502を充電する設備の充電余力であってもよい。ドローン100が燃料電池で駆動する構成の場合は、ドローン100に貯留可能な燃料ガス、例えば水素ガスの量であってもよい。移動体406aに準備されている資源の量は、使用者402による手入力によって取得されてもよいし、自動で取得する構成であってもよい。自動で取得する構成の例としては、薬剤量を取得するために荷室821の所定範囲の重量を計測する構成を有していてもよい。また、充電済みのバッテリ502の個数を取得するために、荷室821の所定範囲の重量に加えて、バッテリ502の蓄電量を測定する構成を有していてもよい。
【0106】
着陸検知部32は、移動体406aにドローン100が着陸しているか否かを検知する機能部である。着陸検知部32は、例えば足受部826に搭載されているタッチスイッチや静電容量センサ等、ドローン100の足107-1乃至107-4を検出する構成により、ドローン100が移動体406aに着陸しているか否かを検知する。着陸検知部32は、ドローンシステム500内にドローン100が複数ある場合は、足107-1乃至107-4からドローン100の固有情報を取得することで、いずれのドローン100が着陸しているかを識別可能であってもよい。また、着陸検知部32は、RTK-GPS等により各ドローン100の位置情報を取得することで、着陸しているドローン100を識別してもよい。
【0107】
補充部33は、移動体406aに着陸しているドローン100に資源を補充する機能部である。補充部33は、前述したように、移動体406aに着陸しているドローン100に搭載されているバッテリ502に充電することができる。また、バッテリ502に充電することに代えて、ウルトラキャパシタにより高速充電する構成であってもよい。さらに、補充部33は、薬剤タンク104に貯留される薬剤の補充を行うことができる。
【0108】
●管制装置
管制装置40は、ドローン100および移動体406aの作業計画を決定する機能部である。作業計画とは、ドローン100および移動体406aそれぞれの移動経路や、当該移動経路上における移動速度を含む。ドローン100の作業計画は、飛行速度、飛行加速度および着陸位置座標の他、薬剤散布の吐出タイミングおよび吐出量の情報も含む。移動体406aの作業計画は、移動速度、移動加速度およびドローン100が着陸する際の移動体406aの位置座標を含む。
【0109】
作業計画は、ドローンシステム500内のドローン100が1個であれば、ドローン100の資源量が所定の条件を満たすときや、作業を完了したときに帰還するように、各ドローン100に独立して設定されている。しかし、発着地点406の個数がドローン100の個数よりも少ない場合は、発着地点406に同時に着陸することができない。そこで、管制装置40により、ドローン100が発着地点406に滞在する時間帯が重複しないように管制を行うことができる。また、管制装置40は、作業計画において発着地点406でドローン100に資源を補充するにあたり、資源が各ドローン100の作業計画通りに補充されるように、ドローン100および移動体406aに収容される資源量の管理を行う。
【0110】
管制装置40は、ドローン情報取得部41、移動体情報取得部42、着陸管制部43、補充管制部44、および移動管制部45を備える。
【0111】
ドローン情報取得部41は、複数のドローン100それぞれの情報を取得する機能部である。ドローン情報取得部41は、例えば、ドローン100に現在計画されている作業計画を取得する。また、ドローン情報取得部41は、ドローン100の位置および状態を取得する。ドローン100の位置は、3次元座標に加えて、ドローン100が圃場403内にいるか、圃場403外にいるかの情報も含んでいてもよい。ドローン100の状態とは、ドローン100の動作状態、すなわち、ドローン100が移動中、ホバリング中、着陸中のいずれであるかの情報を含む。また、ドローン100が圃場403内の移動中において、薬剤を散布しているか否かの情報を含む。また、ドローン100の状態には、ドローン100に故障又は異常が発生しているか否かの情報を含む。異常とは、ドローン100自体の故障以外にドローン100の飛行の妨げとなる事象全般を指し、強風や、極度の低温および高温、障害物の引っ掛かり、バードストライク等、種々の事象を含む。
【0112】
ドローン情報取得部41は、ドローン100が圃場403外を移動中である場合には、ドローン100の目的地の情報も取得する。ドローン情報取得部41は、ドローン100の目的地が移動体406a上の発着地点406である場合、ドローン100の帰還原因に関する情報を取得してもよい。ドローン100の帰還原因は、例えば、ドローン100の資源の補充、すなわち充電又は薬剤の補充がある。また、ドローン100の帰還原因は、操作器401又は小型携帯端末401aから帰還指令が送信されている場合がある。さらに、ドローン100に故障又は異常が発生している場合がある。
【0113】
ドローン情報取得部41は、ドローン100の状態として、ドローン100が有する資源量の情報も取得可能である。ドローン100が有する資源とは、ドローン100の飛行エネルギー、例えばバッテリ502の蓄電量を含む。ドローン100の飛行エネルギーは、バッテリ502に代えて、ウルトラキャパシタにより蓄電される蓄電量であってもよい。また、ドローン100が有する資源とは、ドローン100の薬剤タンク104に貯留される薬剤を含む。
【0114】
ドローン情報取得部41が取得する上述の情報は、定期的にドローン100から直接又は間接的に受信してもよいし、状態変化又は資源量が所定範囲になったことを契機に情報を受信するように構成されていてもよい。
【0115】
移動体情報取得部42は、移動体406aの情報、例えば移動体406aの速度、加速度、位置および状態を取得する機能部である。移動体406aの位置は、3次元座標に加えて、移動体406aが移動許可エリア901および着陸許可エリア902のいずれに存在しているかの情報を含んでいてもよい。
【0116】
●着陸管制に関する構成
着陸管制部43は、ドローンシステム500に含まれる複数のドローン100が着陸するタイミングおよび着陸順序を管制する機能部である。着陸管制部43は、着陸予定取得部431、着陸順序決定部432、待機制御部4333、および帰還制御部434を備える。
【0117】
着陸予定取得部431は、ドローン情報取得部41により取得される情報に基づいて、ドローン100の着陸予定に関する情報を取得する機能部である。着陸予定取得部431は、ドローン100の位置や資源の保持量等に基づいて決定される着陸予定時刻、又はある基準時点から着陸予定時刻までの時間を取得する。着陸予定取得部431は、ドローン100の作業計画を参照して着陸予定時刻等又は着陸予定時刻までの時間を計算してもよいし、着陸予定時刻等又は着陸予定時刻までの時間をドローン100から取得してもよい。
【0118】
また、着陸予定取得部431は、各ドローン100が着陸した後、離陸する時点の情報を合わせて取得する。さらに、着陸予定取得部431は、各ドローン100が圃場403の退出点から退出する時点、発着地点406に到達する時点、発着地点406から離陸する時点、圃場403の進入点から進入する時点の情報を取得する。着陸予定取得部431は、上述の情報から、発着地点406における各ドローン100の滞在予定時間帯を算出可能である。
【0119】
着陸順序決定部432は、着陸予定取得部431により取得される情報に基づいて、複数のドローンの発着地点406における滞在予定時間帯が重複するとき、着陸順序を決定する機能部である。
【0120】
着陸順序決定部432は、ドローン情報取得部41により取得されるドローン100の情報に基づいて着陸順序を決定する。例えば、着陸順序決定部432は、ドローン情報取得部41により取得される、帰還する原因に関する帰還情報に基づいて着陸順序を決定する。着陸順序決定部432は、ドローン100が使用者からの帰還指令に基づいて帰還する場合、当該ドローン100を他のドローン100よりも先に着陸させる。
【0121】
また、着陸順序決定部432は、ドローン100が、当該ドローン100に発生する故障又は異常に基づいて帰還する場合、当該ドローン100を他のドローンよりも先に着陸させる。故障又は異常に基づく帰還は、帰還が遅れることで墜落や暴走の危険性が増大するので、早急に着陸させる必要があるためである。故障又は異常に基づいて帰還するドローン100は、帰還指令に基づいて帰還するドローン100よりも先に着陸させる。
【0122】
着陸順序決定部432は、複数のドローン100がそれぞれ保有する資源の量に基づいて前記着陸順序を決定してもよい。具体的には、着陸順序決定部432は、資源の量がより少ないドローン100を、他のドローン100よりも先に着陸させる。資源の量は、ドローン100を駆動するエネルギー量であってもよいし、ドローン100に貯留されている薬剤の量であってもよい。資源の量がより少ないドローン100は、資源の補充後に、より長時間の作業を行うことが予想されるため、先に補充作業を行って作業に復帰させることにより、複数のドローン100により遂行される総作業を早く完了させることができる。また、バッテリ502のエネルギー量がより少ないドローン100は、後述する待機のためのエネルギーを保有しない可能性があるので、先に着陸させるとよい。
【0123】
待機制御部433は、複数のドローン100の発着地点406における滞在予定時間帯が重複するとき、着陸順序が後になるドローン100を、発着地点406に着陸可能な状態となるまで待機させる機能部である。発着地点406には、同時に着陸可能な台数に限りがあるため、ドローン100を待機させることで衝突を防止し、ドローン100を安全に帰還させることができる。
【0124】
待機制御部433は、滞在予定時間帯が重複するとき、着陸順序が後になるドローン100を、圃場403内でホバリングさせて待機させてもよい。圃場403外には、使用者を含む人や移動体406aの往来があるため、ドローン100が待機していると衝突の危険があるため、ドローン100を圃場403内に待機させることで安全性を担保することができる。さらに、複数のドローン100は、退出点、発着地点406、および退出点から発着地点406までの発着経路が共通である。圃場403外を飛行する経路を共通化することで、使用者が、ドローン100の飛行経路を把握しやすくなり、使用者に安心感を与えられるためである。一方で、発着経路上に複数のドローン100が存在していると、互いに衝突する恐れがある。したがって、ドローン100を圃場403内で待機させることで、発着地点406から圃場403に進入してくるドローン100との衝突を回避することができる。
【0125】
待機制御部433は、移動体情報取得部42から、発着地点406にドローン100が着陸可能である旨の情報を取得して、ドローン100の待機を終了させ、発着地点406へ飛行させる。また、待機制御部433は、発着地点406、発着経路、および退出点に他のドローン100が存在しないことを判定した上で、待機しているドローン100を発着地点406へ飛行させてもよい。
【0126】
なお、待機制御部433は、上述に加え、移動体406aにおいて補充作業中であること、又は移動体406aの周辺に使用者等の障害物があることに基づいて、ドローン100を圃場403内に待機させてもよい。
【0127】
帰還制御部434は、複数のドローン100の滞在予定時間帯が重複するとき、少なくとも1個のドローン100の飛行動作を変更する機能部である。帰還制御部434は、着陸順序が先になるドローン100を発着地点406に着陸させ、他のドローン100を発着地点406とは異なる場所に着陸させてもよい。例えば、他のドローン100は、移動体406aの近傍に着陸してもよい。また、他のドローン100は、移動体406aの進行方向後方側に、所定距離を空けて着陸してもよい。複数のドローン100および移動体406aが同時に移動する際、ドローン100は、例えば移動体406aの後方に連なって移動するため、あらかじめ当該位置に着陸しておくことで、ドローン100および移動体406aの移動をスムーズに開始することができる。
【0128】
帰還制御部434は、滞在予定時間帯が重複する複数のドローン100において、少なくとも1個のドローン100に予定されている作業計画を短縮することで、滞在予定時間帯を変更してもよい。すなわち、帰還制御部434は、1個のドローン100の資源が、まだ補充を要する状態に達する前に、作業を早く中断させて発着地点406に帰還させる。この構成によれば、ドローン100を待機させる構成に比べて、早く中断したドローンは早期に補充を完了し、圃場403での作業を再開することができるので、効率よく作業を遂行することができる。
【0129】
帰還制御部434は、滞在予定時間帯が重複する複数のドローン100において、少なくとも1個のドローン100の飛行速度を変更することで、滞在予定時間帯を変更してもよい。より具体的には、着陸予定が重複する複数のドローン100のうち、先に着陸することが決定されるドローン100の飛行速度を速める。この構成によれば、当初の作業計画の通りの経路を飛行した上で、滞在予定時間帯をずらして発着地点406に帰還することができる。すなわち、ドローン100を待機させる構成、および1個のドローン100の作業を早期に中断させる構成に比べて、より効率よく作業を遂行することができる。
【0130】
●補充管制に関する構成
補充管制部44は、資源を複数のドローン100に補充する補充計画を管制する機能部である。
【0131】
補充計画は、ドローン100の発着地点406への着陸順序、複数のドローン100に補充される資源の種類、資源の量、および補充を行う時点に関する情報の少なくとも1個を含む情報群である。すなわち、補充計画は、いずれのドローン100が、いつ発着地点406に帰還し、いずれの資源をどれだけ補充するかの情報である。補充管制部44は、ドローン情報取得部41からの情報に基づいて、補充計画を管制する。
【0132】
また、補充管制部44は、発着地点406を有する移動体406aに収容されている資源量を管制する。補充計画には、移動体406aに収容されている資源の種類および量の情報を含む。
【0133】
補充管制部44は、補充計画取得部441と、移動体資源取得部442と、を備える。
【0134】
補充計画取得部441は、発着地点406からドローン100への補充が計画されている資源量を取得する機能部である。
【0135】
移動体資源取得部442は、発着地点406に収容されている資源の量を取得する機能部である。
【0136】
補充管制部44は、補充計画の少なくとも一部の情報を操作器401又は小型携帯端末401aに伝達する。操作器401及び小型携帯端末401aは、当該補充計画を逐次表示させてもよいし、特定の情報に対しては別途発報する構成になっていてもよい。
【0137】
小型携帯端末401aは、操作器401に表示される情報のうち一部の情報のみを表示してもよいし、さらに一部の情報についてのみ音等別途の発報手段により発報してもよい。例えば、小型携帯端末401aには、移動体406aへの資源の補充が必要な場合や、総作業が完了して片付けが必要な場合など、使用者402の介入が必要な時点の情報、および各時点の予測に関する情報のみ小型携帯端末401aに表示がなされるように構成されていてもよい。また、移動体406aへの資源の補充が必要な時点、総作業が完了した時点、および異常が発生した時点において、使用者402に発報してもよい。
【0138】
操作器401には、直近に作業を行う圃場403および作業中の圃場403の情報に加えて、同一のドローンシステム500により作業が行われる、農道等で画されている別の圃場に計画されている補充計画を表示可能になっていてもよい。別の圃場は、例えば、後述する移動管制により、移動体406aおよび複数のドローン100が圃場403外を移動した上で作業が開始される、圃場403とは不連続な領域である。この構成によれば、同一のドローンシステム500により行われる作業全体に必要な資源の量を、操作器401により一元的に把握することができる。当該表示においては、当該圃場403および別の圃場に関する情報を連続的に表示されてもよいし、所定の操作により表示を切り替え可能になっていてもよい。
【0139】
補充管制部44は、直近に着陸が予定されているドローン100に補充が計画されている資源の量が、移動体406aに収容されている資源の量を上回るとき、その旨を発報する。資源の補充が移動体406aにより自動で行われる場合であっても、移動体406aに貯留されている資源が不足している場合は、使用者に移動体406aへの資源の補充を要請する必要があるためである。この構成によれば、特に直近に帰還するドローン100に対する資源の補充を計画通りに行えるよう、使用者に移動体406aへの資源の補充を促すことができる。
【0140】
補充管制部44は、操作器401又は小型携帯端末401aは、発着地点406からドローン100への資源の補充作業が、ドローン100の着陸予定時点までに完了しないことが予想されるとき、その旨を発報してもよい。この構成によれば、ドローン100への資源の補充が使用者により行われる場合に、当該発報により使用者に資源の補充を急がせることができる。また、ドローン100への資源の補充が自動で行われる場合でも、作業の進捗状況を使用者に伝達することができる。
【0141】
また、補充管制部44は、直近に着陸が予定されているドローン100に補充が計画されている資源の量が、移動体406aに収容されている資源の量を上回るとき、または、資源の補充作業が完了しないとき、ドローン100に待機命令を送信してもよい。待機命令が受信されるドローン100は、例えば圃場403内でホバリングをして、待機命令が解除されるまで待機する。移動体406aに資源を補充する場合、使用者が移動体406a近傍に存在している蓋然性が高い。その際にドローン100が移動体406aに近づくと、使用者による補充作業を妨げる恐れがあるため、ドローン100は圃場403内に待機させることで、作業効率および安全性を担保することができる。
【0142】
●ドローンの移動管制に関する構成
移動管制部45は、移動体406aおよび複数のドローン100を同時に安全に移動するため、移動体406aおよび複数のドローン100の移動経路を管制する機能部である。移動管制部45は、ドローン情報取得部41および移動体情報取得部42によりドローン100および移動体406aの位置情報を取得し、速度および加速度やその向きにフィードバックすることにより、各構成の位置、速度および加速度が所定の条件を満たすように管制する。なお、移動体406aは、移動管制部45の管制に基づいて自律的に移動してもよいし、移動体406aは使用者の運転により移動し、ドローン100は移動体406aの動作に基づいて追従して移動してもよい。
【0143】
図14(a)に示すように、例えば、ドローンシステム500内にドローン100が複数個存在している場合、第1のドローン100aは移動体406a上の発着地点406に着陸した状態で移動する。第2乃至第4のドローン100b、100c、100dは、移動体406aに対して所定距離ずつ離間して飛行する。移動管制部45は、複数のドローン100を移動体406aの進行方向後方において所定距離ずつ離間させて直列に並んで飛行させてもよい。この構成によれば、ドローン100は、移動体406aが通行した経路上を移動体406aの後に続いて飛行することになるため、障害物が存在する可能性が低く、安全に飛行することができる。
【0144】
図14(b)に示すように、移動管制部45は、複数のドローン100を移動体の上方において所定距離ずつ離間させて飛行させてもよい。移動体406aおよびドローン100が移動する経路は、主に圃場403周辺の農道が想定されている。農道において、移動体406aより上方に障害物が存在する可能性は低いので、安全に飛行することができる。また、ドローン100が移動中に墜落した場合であっても、移動体406a上に落下することになるため、人や建物等ドローンシステム500外の構成に危害を加える可能性が低くなり、安全である。
【0145】
移動管制部45は、移動体406aが進行方向とは反対に移動するとき、進行方向において最後方の前記ドローンを先頭にして移動してもよい。このとき、ドローン100が有する障害物検知部23により、ドローン100が障害物を検知すると、ドローン100を含めた複数のドローン100を着陸させる。
【0146】
移動管制部45は、移動体406aが進行方向とは反対に移動するとき、複数のドローン100を着陸させるように構成されていてもよい。この構成によれば、ドローン100に障害物検知部23が備わっていない場合であっても、移動体406aが後進する際の安全を担保することができる。
【0147】
移動管制部45は、ドローン100を着陸させるとき、ドローン100、操作器401、小型携帯端末401a又は移動管制部45を介して、使用者にその旨の警報を通知してもよい。警報は、音および表示など、適宜の通知手段であってよい。使用者がドローン100に注意を向けることで、例えば移動体406aと着陸しているドローン100とが衝突するのを防ぐことができ、安全である。
【0148】
●着陸管制に関するフローチャート
図15を用いて、発着地点406への滞在予定時間帯が重複しているときの管制装置40の動作の一例を説明する。なお、管制装置40は、以下に説明する工程を全作業の開始時に行っても良いし、作業中に定期的に行っても良い。また、管制装置40は、作業中に特定の事象が生じた時点で、以下の工程を行ってもよい。例えば、管制装置40は、以下の工程を、あるドローン100に故障又は異常が発生した時点、帰還命令が発せられた時点、もしくは計画とは異なる待機時間が生じた時点に行ってもよい。
【0149】
まず、ドローン情報取得部41は、ドローンシステム500に含まれる複数のドローン100に計画されている滞在予定時間帯を取得する(S11)。
【0150】
次いで、着陸予定取得部431は、滞在予定時間帯が重複するドローン100があるか判定する(S12)。
【0151】
滞在予定時間帯が重複するドローン100がない場合、着陸順序決定部432は、ドローン100の着陸順序を変更せず、処理を終了する。ドローン100は、当初の作業計画通りに、発着地点406に順次着陸する。
【0152】
滞在予定時間帯が重複するドローン100がある場合、着陸順序決定部432は、帰還原因が故障又は異常のドローン100があるかを判定する(S13)。故障又は異常のドローン100がある場合、着陸順序決定部432は、当該ドローン100の着陸順位を1番に決定する(S14)。
【0153】
次いで、着陸順序決定部432は、使用者からの帰還命令により帰還するドローン100があるか判定する(S15)。帰還命令により帰還するドローン100がある場合、着陸順序決定部432は、当該ドローン100の着陸順位を次に着陸するように決定する(S16)。すなわち、故障又は異常のドローン100がある場合は、当該ドローン100を二番に決定し、故障又は異常のドローン100がない場合は、当該ドローン100を一番に決定する。
【0154】
次いで、着陸順序決定部432は、残りのドローン100に関し、搭載している資源量が少ない順に着陸するように決定し、処理を終了する(S17)。
【0155】
●補充管制に関するフローチャート
図16を用いて、移動体406aに収容されている資源量を管制する管制装置40の動作の一例を説明する。なお、管制装置40が以下の工程を行うタイミングは、着陸管制と同様、全作業の開始時に行っても良いし、作業中に定期的に行っても良い。着陸管制の工程と、補充管制の工程は、同時に行われてもよいし、別のタイミングで行われてもよい。
【0156】
まず、補充計画取得部441は、複数のドローン100それぞれが補充のために帰還する時点、ならびに補充される資源の種類および量を取得する(S21)。
【0157】
移動体資源取得部442は、移動体406aに収容されている資源の量を取得する(S22)。なお、ステップS21およびS22は順不同であり、同時に行われてもよい。
【0158】
補充管制部44は、移動体406aの収容量が十分か否か判定する(S23)。移動体406aの収容量が十分ではない場合、資源の補充の要請を操作器401又は小型携帯端末401aに発報する(S24)。
【0159】
●移動管制に関するフローチャート
図17を用いて、移動体406aおよびドローン100を移動させるために行われる管制装置40の動作の一例を説明する。移動管制は、移動体406aおよび複数のドローン100が同時に移動する際に行われる。具体的には、移動管制は、ドローンシステム500が作業を行う圃場403間を移動する際に行われる。
【0160】
まず、複数のドローン100および移動体406aは、同時に移動を行う(S31)。このとき、移動管制部45は、各ドローン100および移動体406aの位置、速度、および加速度等を制御し、所定距離ずつ離間させて移動させる。移動中において、ドローン100が障害物を検知するとき(S32)、ドローン100は着陸する(S33)。また、操作器401又は小型携帯端末401aは、その旨の警報を通知する。
【0161】
なお、本説明においては、農業用薬剤散布ドローンを例に説明したが、本発明の技術的思想はこれに限られるものではなく、撮影・監視用など他の用途のドローン全般に適用可能である。特に、自律的に動作する機械に適用可能である。また、移動体は、車両に限らず適宜の構成であってもよい。
【0162】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本発明にかかるドローンシステムにおいては、ドローンに移動体から資源を補充するシステムにおいて、ドローンおよび移動体に収容されている資源が作業中に不足する場合にも、ドローンおよび移動体に効率よく資源を補充することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17