(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】プロスタグランジンE1メチルエステルの血管拡張薬の製造における使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5575 20060101AFI20221102BHJP
A61P 9/08 20060101ALI20221102BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61K31/5575
A61P9/08
A61P17/00
(21)【出願番号】P 2021529846
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 CN2019113558
(87)【国際公開番号】W WO2020108194
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】201811423944.4
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521083865
【氏名又は名称】シーアン リーバン ジャオシン バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ルータオ
(72)【発明者】
【氏名】アン, ロン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, イー
(72)【発明者】
【氏名】パン, ジンファ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, タオ
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-216820(JP,A)
【文献】国際公開第2003/092617(WO,A2)
【文献】国際公開第2003/057162(WO,A2)
【文献】特開2011-219408(JP,A)
【文献】Chinese Journal of Clinical Rational Drug Use,2015年,vol.8, no.12A,pp.177-180,doi: 10.15887/j.cnki.13-1389/r.2015.34.112
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 9/00-9/14
A61P 17/00-17/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造が式(I)で表されるプロスタグランジンE1メチルエステルの
、強皮症の動物の皮膚の厚さおよび/またはコラーゲン沈着を改善するための血管拡張薬の製造における
唯一の有効成分としての使用。
【化1】
【請求項2】
前記動物は哺乳動物である、請求項
1に記載の使用。
【請求項3】
前記動物はヒトである、請求項
1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に関し、具体的には、本発明はプロスタグランジンE1メチルエステルの血管拡張薬の製造における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンE1(プロスタグランジンE1)は天然の内因性血管拡張薬であり、ヒト細胞で合成可能であり、細胞機能を調節する重要な物質であり、生体内で蓄積することがなく、耐性を生じさせることがなく、無毒で、侵襲性の副作用がなく、治療効果が確実であり、外因性薬物より優れている。プロスタグランジンE1は生理活性が極めて強く、広い薬理活性を有しており、臨床的には心脳血管疾患、糖尿病合併症、呼吸器疾患、肺高血圧症、肝腎症候群(HRS)、肝不全、腎症等に応用できるが、血管を拡張して心臓負荷を軽減する作用だけでなく、ナトリウム排出、利尿、強心、冠動脈循環改善、心筋保護、微小循環改善等の効能を併せて有することが研究により見出されている。
【0003】
現在、プロスタグランジンE1アルキルエステルは、プロスタグランジンE1のプロドラッグと考えられている。例えば、特許文献1には、プロスタグランジンE1アルキルエステル(C1~4)をインポテンスの治療に用いることが開示されており、プロスタグランジンE1アルキルエステルは脂溶性を高めることにより皮膚を通してより良く吸収され、その後、加水分解酵素によりプロスタグランジンE1に分解されて効果を発揮するため、プロドラッグに属すると考えられている。特許文献2には、プロドラッグであるプロスタグランジンE1アルキルエステルと、油性担体と、皮膚浸透促進剤と、抗炎症剤とを含むプロスタグランジンE1アルキルエステル(C1~5)外用製剤が開示されている。
【0004】
しかし、本発明者らの検討の結果、プロスタグランジンE1メチルエステル自体が強い生物活性を有することが意外にも発見され、さらにその血管拡張に関する医薬用途が見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5681850号明細書
【文献】米国特許第6673841号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プロスタグランジンE1メチルエステルの血管拡張薬の製造における使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を奏するために、本発明は構造が式(I)で表されるプロスタグランジンE1メチルエステルの血管拡張薬の製造における使用を提供する。
【0008】
【0009】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記血管拡張薬は、微小循環障害、冠動脈心疾患、狭心症、心不全、肺性心疾患、脳梗塞、羊水塞栓症、または強皮症を治療するための薬物である。
【0010】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記血管拡張薬は血管を拡張することによって、微小循環障害、冠動脈心疾患、狭心症、心不全、肺性心疾患、脳梗塞、羊水塞栓症、または強皮症に対する治療を実現するものである。
【0011】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記微小循環障害は、閉塞性血栓性血管炎、閉塞性動脈硬化症、糖尿病、凍傷、火傷、又は床擦れに起因する。
【0012】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記血管拡張薬は、強皮症を治療するための薬物であり、前記血管拡張薬は、強皮症の動物の皮膚の厚さおよび/またはコラーゲン沈着を改善することによって強皮症に対する治療を実現するものである。
【0013】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記血管拡張薬は、強皮症を治療するための薬物であり、前記血管拡張薬は、強皮症の動物の皮膚の厚さおよび/またはコラーゲン沈着を改善することによって強皮症に対する治療を実現するものである。
【0014】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記動物は哺乳動物である。
【0015】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によると、前記動物はヒトである。
【0016】
以上のように、本発明はプロスタグランジンE1メチルエステルの血管拡張薬の製造における使用を提供する。本発明者らの研究の結果、プロスタグランジンE1メチルエステル自体が強い薬物活性を有し、DP1受容体と直接結合することができ、DP1受容体を活性化させることにより血小板凝集を抑制し、血管を拡張することができるため、プロドラッグとして加水分解後に遅延して効果を奏するものではない。また、具体的な実験例において、プロスタグランジンE1メチルエステルはプロスタグランジンE1よりも優れた薬理活性及び治療効果を示し、組織分布試験においてもプロスタグランジンE1メチルエステルが皮膚組織により容易に分布できることを示した。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実験例2のインキュベーション時間に伴う抑制率の変化を示すグラフである。
【
図2】実験例3の家兎摘出血管の拡張効能に対するプロスタグランジンE1メチルエステル濃度の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面及び実施例に基づいて詳しく説明するが、本発明の保護範囲はこれらに限定されるものではない。
【0019】
実施例1
本発明によるプロスタグランジンE1メチル([(1R,2R,3R)-3-ヒドロキシ-2-(S,E)-3-ヒドロキシ-1-エニル)-5-オキソシクロペンチル]ヘプタン酸メチル)の合成
【0020】
【0021】
原料であるプロスタグランジンE1(63mg、0.18mmol)を三口フラスコに加え、続いて、調製した1Mの乾燥THF/Et2O溶液を加えて撹拌し溶解させ、氷浴条件下、反応液にMeI(26mg、1M)溶液をゆっくり滴下し、滴下終了後、KOH(10mg、0.18mmol)及びBu4NBr(6mg、0.018mmol)を加えた。1時間撹拌して反応した後、室温まで加熱し、反応が終了するまでTLCでモニターした。水20mLを添加してクエンチさせ、EtOAc(10mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離液がn-ヘキサン/EA=1/1)により精製して、白色固体生成物(24.8mg、収率38%)を得た。
LCMS(MS Found:391.3[M+Na]+。1HNMR(400MHZ,DMSO)(ppm):5.46(s,2H)、5.01(s,1H)、4.57(s,1H)、3.88(s,2H)、3.57(s,3H)、1.9-2.3(m,5H)1.2-1.48(m,19H)、0.85(s,3H)。
【0022】
実施例2
化合物2([(1R,2R,3R)-3-ヒドロキシ-2-(S,E)-3-ヒドロキシ-1-エニル)-5-オキソシクロペンチル]ヘプタン酸エチル)の合成
【0023】
【0024】
原料であるプロスタグランジンE1(63mg、0.18mmol)を三口フラスコに加え、続いて、調製した1Mの乾燥THF/Et2O溶液を加えて撹拌し溶解させ、氷浴条件下、反応液にEtBr(20mg、1M)溶液をゆっくり滴下し、滴下終了後、KOH(10mg、0.18mmol)及びBu4NBr(6mg、0.018mmol)を加えた。1時間撹拌して反応した後、室温まで加熱し、反応が終了するまでTLCでモニターした。水20mLを添加してクエンチさせ、EtOAc(10mL×3)で抽出し、有機相を合わせ、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(溶離液がn-ヘキサン/EA=1/1)により精製して、白色固体生成物(20.5mg、収率29.8%)を得た。
LCMS(MS Found:405[M+Na]+。1HNMR(400MHZ,DMSO)(ppm):5.46(s,2H)、5.01(s,1H)、4.57(s,1H)、3.88(s,2H)、3.57(s,3H)、1.9-2.3(m,7H)1.2-1.48(m,19H)、0.85(s,3H)。
【0025】
実験例1
インビトロDP受容体ターゲット親和性試験
放射性リガンド([3H]Prostaglandin D2(PGD2))受容体競合結合試験を採用して、DP受容体に対する被験化合物の親和性を評価した。結果を下記の表1に示す。
【0026】
【0027】
結果により、プロスタグランジンE1メチルエステルがDP受容体に対して高い親和性を有することが示された。
【0028】
実験例2
本発明のプロスタグランジンE1メチルエステルのインビトロ抗血小板凝集試験における作用
健常成年SDラットの腹腔に10%抱水クロラールを注射して麻酔させた後、腹部大動脈で採取したラットの新鮮な全血を3.8%クエン酸ナトリウム溶液で凝結させる遠心管に入れ、900回転で10min遠心して、上層の血小板リッチ血漿(PRP)を採取して用意した。PRPの試験管を取り出して4000回転で10分間遠心し続けて、上層澄血漿(PPP)を採取して用意した。実験では、泰利康信LBY-NJ4型4チャネル血小板凝集装置を用いて、各化合物の抗凝集効能を測定した。
【0029】
300μLのPRPサンプルを含むカップに、2μL、100μMのプロスタグランジンE1、実施例1のプロスタグランジンE1メチルエステル、実施例2の化合物2、およびメタノール(溶媒)を先に加え、異なる時間(0、1、2、4、7、10、15min)インキュベートした後、凝集誘導剤である180μMのADP溶液を20μL加え、各サンプルの凝集率を測定し、ADPによる血小板凝集に対する化合物の抑制率を計算した。
抑制率%=(溶媒における凝集率-化合物における凝集率)/溶媒における凝集率×100%
【0030】
結果(
図1)から分かるように、PRPにプロスタグランジンE1と実施例のプロスタグランジンE1メチルエステルを加えるとすぐに発効し、抑制率が同程度であり、インキュベーション時間の経過につれて実施例の化合物の抗凝集効能が徐々に低下するが、10分後も抑制率が43.66%であるのに対して、プロスタグランジンE1は4分間インキュベーションした後の抑制率が僅かに4.93%であった。実施例2の化合物2は、添加後すぐに発効しないが、時間の経過につれて効能が徐々に強くなり、10分間インキュベーションした後に最大抑制率51.86%に達した。故に、実施例1におけるプロスタグランジンE1メチルエステルは、活性を有する非プロドラッグ化合物であり、プロスタグランジンE1と比較して2倍を超える抗凝集作用を有するものであり、一方、実施例の化合物2は、典型的なプロドラッグ型化合物であることが分かる。
【0031】
実験例3
本発明のプロスタグランジンE1メチルエステルのインビトロ血管ストリップ拡張試験における作用
実験は、ニュージーランドウサギ、雄、体重(2.5±0.3)kgの家兎を選択して摘出大動脈環サンプルを用意した。鈍器でウサギに気を失わせて、ウサギ解剖台に固定し、胸大動脈を迅速に分離し、37℃の飽和クレブス液(1000mL当たりNaClを6.9g、KClを0.35g、MgSO4・7H2Oを0.29g、KH2PO4を0.16g、NaHCO3を2.1g、CaCl2を0.28g、グルコースを2g含む)が入り、混合ガス(95%O2、5%CO2)が連続的に導入されるシャーレに入れ、血管内の残存血液を押し出し、周辺の脂肪及び結合組織を丁寧に剥がし、長さ0.5cmの動脈環を数段に切り取って用意した。血管環は、2本のステンレスL字フックで血管腔を貫通し、20mLのバスチューブ内に横に掛けられ、下方が固定され、上方が細いワイヤーでテンショントランスデューサーに接続され、静止張力を0.00gに調節してから、20min安定させた後、さらに3.00gの張力を与え、3.00g前後に維持するように張力レベルを調整し続け、2時間安定させた(15min毎に浴壁に沿ってクレブス液を交換した)。
【0032】
血管環張力の変化を、BL-420Sバイオシミュファクチャリングシステム(成都泰盟科技)を用いて記録した。血管環の収縮が安定した後、バスチューブ中のプロスタグランジンE1の最終質量濃度を0.05、0.1、0.2、0.4、0.8、1.6、3.2、6.4、12.8、25.6nMと順次増加させるようにプロスタグランジンE1と実施例化合物を加え、血管環の拡張効能を記録した。
【0033】
結果(
図2)により、本実験条件下で、家兎摘出血管に対する拡張効力は、実施例1のプロスタグランジンE1メチルエステル(EC50=1.090nM)がプロスタグランジンE1(EC50=9.767nM)よりも明らかに優れていることが分かる。
【0034】
実験例4
凍結したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を蘇生させ、10%(V/V)FBSを添加した低糖DMEM培地に置き、100U/Lのペニシリンと0.1g/Lのストレプトマイシンを加え、5%CO2、95%空気の雰囲気下、温度37℃の条件で人工培養し、3日毎に新鮮培地を交換し、細胞密度が70~80%となると、消化液(0.25%パンクレアチン/0.02EDTA)を用いて細胞を収穫した。細胞を再懸濁した後、96オリフィス板に孔当たり5×103の密度で接種した。
【0035】
1日培養した後、1~100nMのプロスタグランジンE1メチルエステルを添加して24時間インキュベーション培養を行い、MTT検出を行った。無薬小孔細胞に比べて、プロスタグランジンE1メチルエステルは明らかに血管内皮細胞の増殖を促進する作用を有し、該作用は血管新生を促進し、血管機能を改善し、微小循環障害の治療に臨床的に有用であることが分かる。
【0036】
実験例5
プロスタグランジンE1メチルエステルのマウス強皮症モデルにおける治療作用
強皮症は、皮膚、血管及び臓器の線維化、様々な細胞成分を破壊する自己抗体の大量の体内産生を特徴とする結合組織病であり、発症は線維化、炎症及び血管機能障害という3つの基本過程を有する。この疾患の病因及び発症メカニズムは、今のところ完全に解明されておらず、理想的な治療薬及び方法は未だ存在しない。
【0037】
本実験は、56匹の体重22~25gのBalb/cマウスを用い、それぞれ正常群、モデル群、溶媒群、プロスタグランジンE1の高、低投与群およびプロスタグランジンE1メチルエステルの高、低投与群という7群にランダムに分けた。
【0038】
モデル作成:マウス背部中央部の毛を剃毛し、正常群は背部に0.1mlのPBSを皮下注射し、残りの各群は0.1mlの0.2mg/mlのブレオマイシンを皮下注射し、1日1回、3週間注射した。
【0039】
投与方法:カナダALZET社の浸透圧投与ポンプOsmotic pumps(品番1004、100μlの薬物含有DMSO溶液を含む)を用い、一定速度で薬物を放出し、放出周期を28日間とした。プロスタグランジンE1の高、低投与群にそれぞれ28μg、14μgを投与した。プロスタグランジンE1メチルエステルの高、低投与群に同様にそれぞれ28μg、14μgを投与した。溶媒群には薬物を投与せず、浸透圧ポンプをマウス腹腔内埋め込み、挿管して下腔静脈を介して投与した。モデルを作成すると同時に投与を開始した。
【0040】
指標検出:投与終了後、動物を殺し、注射部分皮膚および肺切片を作製し、HE染色した。組織学的変化を観察し、皮膚(真皮)厚を測定した。そして、皮膚中のヒドロキシプロリンとタンパク質の含有量を光電比色法により測定することで、コラーゲン含有量を推定した。
【0041】
結果により、モデル群の注射部位の真皮層が明らかに厚くなり、コラーゲン線維が太くなり数が多くなり、線維間隙が狭く、毛包萎縮、血管壁が厚くなり、管腔内が狭く、炎症性細胞浸潤が見られた。各投与群では、マウスの部分皮膚は異なる程度で厚くなったが、いずれもモデル群より程度が軽く、コラーゲン線維の配列が緩んでおり、毛包の炎症性細胞浸潤が少ない。プロスタグランジンE1群およびプロスタグランジンE1メチルエステル群は、皮膚厚みがいずれも用量依存性を呈し、同じ薬物における高投与群は低投与群より優れ、且つプロスタグランジンE1メチルエステル群はプロスタグランジンE1群より明らかに優れている。肺組織は、大量の単球浸潤を伴う肺胞間隔の肥厚を呈し、線維芽細胞が増殖し、小血管壁が厚くなった。モデル群と比較して、薬を投与した各投与群では、肺胞間隔の肥厚程度がいずれも低減し、炎症細胞浸潤が少々緩和され、プロスタグランジンE1メチルエステル群はプロスタグランジンE1群より少々良好であった。
【0042】
コラーゲンの皮膚及び対応する内臓組織への過剰沈着は、強皮症の進行において重要な役割を果たす。結果により、モデル群は皮膚コラーゲン含量が顕著に高くなり、各投与群のコラーゲン含有量の平均値はモデル群と比較して低減したが、プロスタグランジンE1の2つの投与群には有意差が見られず顕著に異なっておらず、プロスタグランジンE1メチルエステルの2つの投与群は、モデル群及びプロスタグランジンE1の2つの投与群よりも、タンパク質含有量が顕著に低下した。各群のマウスの皮膚の厚さ及び皮膚コラーゲン含量を下記表2に示す。
【0043】
【0044】
上記結果から、プロスタグランジンE1メチルエステルは、マウス強皮症モデルに対して良好な改善効果を有し、プロスタグランジンE1よりも優れていることが示された。
【0045】
実験例6
プロスタグランジンE1メチルエステルのラットの皮膚組織における分布
本実験では、体重250~280gのSD雄ラット12匹を用い、ランダムにプロスタグランジンE1群とプロスタグランジンE1メチルエステル群という2群(n=6)に分けた。カナダALZET社の浸透圧投与ポンプOsmotic pumps(品番1003、100μlの薬物含有DMSO溶液を含む)を用い、一定速度で薬物を放出し、放出周期を3日間とし、それぞれ[3H]プロスタグランジンE1および[3H]プロスタグランジンE1メチルエステルを200μg投与し、浸透圧ポンプをマウス腹腔内埋め込み、挿管して下腔静脈を介して投与した。投与終了後、動物を殺し、皮膚組織を採取し(動物に対し同じ位置で採取)、秤量し、総放射能値を測定した。結果を下記表3に示す。
【0046】
【0047】
結果により、同じ投与量で、プロスタグランジンE1メチルエステル群は、プロスタグランジンE1群よりも皮膚組織濃度が顕著に高いことが分かる。