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特許7169037高分子型帯電防止剤含有樹脂組成物および成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】高分子型帯電防止剤含有樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20221102BHJP
   C08K 3/017 20180101ALI20221102BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20221102BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221102BHJP
   B65D 85/38 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C08L71/12
C08K3/017
C08L71/02
C08L101/00
B65D85/38 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022523075
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2021037907
【審査請求日】2022-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503288381
【氏名又は名称】株式会社秋本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 正徳
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一正
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-101452(JP,A)
【文献】特開平10-158500(JP,A)
【文献】特開平11-140299(JP,A)
【文献】国際公開第2021/006192(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/12
C08K 3/017
C08L 71/02
C08L 101/00
B65D 85/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HDTが135℃以上であり、かつ、樹脂コンパウンドの混練および成形加工が290℃以下で可能であり、しかも表面電気抵抗値が1.0×1012Ω以下である樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は A樹脂とB樹脂と高分子型帯電防止剤とを含有してなり、
前記A樹脂はポリフェニレンエーテル系樹脂であり、
前記B樹脂はブチレンテレフタレート系樹脂、エチレンテレフタレート系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、カーボネート系樹脂、プロピレン系樹脂、及びアリレート系樹脂の群の中から選ばれる1種または2種以上の樹脂であり、
前記B樹脂は、前記A樹脂100質量部に対して、5~45質量部であり、
前記高分子型帯電防止剤は、前記A樹脂100質量部に対して、7~35質量部であり、
前記樹脂組成物は、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、金属粉、金属繊維、及び帯電防止機能を有する界面活性剤を、実質上、含有していない
樹脂組成物。
【請求項2】
前記B樹脂は、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、及びポリアリレートの群の中から選ばれる1種または2種以上の樹脂である
請求項1の樹脂組成物。
【請求項3】
前記高分子型の帯電防止剤がポリエーテル型帯電防止剤である
請求項1又は請求項2の樹脂組成物。
【請求項4】
前記高分子型の帯電防止剤は数平均分子量が500以上である
請求項1~請求項3いずれかの樹脂組成物。
【請求項5】
前記高分子型帯電防止剤は、前記A樹脂100質量部に対して、10~25質量部である
請求項1~請求項4いずれかの樹脂組成物。
【請求項6】
前記A樹脂が下記一般式[I]で表される重合体のホモポリマー又はコポリマーである
請求項1~請求項5いずれかの樹脂組成物。
一般式[I]
(一般式[I]中、R,R,R,Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、炭化水素オキシ基、及びハロゲン原子とフェニル環との間に少くとも2個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素基またはハロゲン化炭化水素オキシ基である。nは20以上の整数である。)
【請求項7】
更に相溶化剤を含有する樹脂組成物であって、
前記相溶化剤が反応性相溶化剤である
請求項1~請求項6いずれかの樹脂組成物。
【請求項8】
前記相溶化剤は、前記A樹脂100質量部に対して、1~20質量部である
請求項7の樹脂組成物。
【請求項9】
吸水率が0.8%以下である
請求項1~請求項8いずれかの樹脂組成物。
【請求項10】
比重が1.0~1.1である
請求項1~請求項いずれかの樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~請求項10いずれかの樹脂組成物が成形されてなる
成形体。
【請求項12】
電気製品の収容トレイである
請求項11の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物および成形体に関する。前記成形体は、例えば電気製品(例えば、半導体素子(トランジスタまたはIC等)、その他の電子部品など)の保管、或いは前記電気製品の輸送、又は前記電気製品を実装装置(又は検査装置)にセットする際に用いられる容器(トレイとも称される。)である。
【背景技術】
【0002】
前記電気製品を輸送する場合、或いは前記電気製品を自動実装装置(又は特性検査装置)にセットする場合、又は前記電気製品を保管する場合、前記電気製品は合成樹脂製トレイの収容室に収容されている。JP1993-16984A(特許文献1)は前記トレイの一例を開示している。図1は複数枚のトレイが積み重なった状態での斜視図である。図2図1のI-I線での断面図である。図1,2中、1はトレイ、2は製品(部品)収容室、3は凸縁部、4は凹縁部、6は電子部品である(特許文献1参照)。JP2005-88995A(特許文献2)は前記トレイの一例を開示している。図3はトレイの平面図である。このトレイも使用時には複数枚が積み重ねられて使用される場合がある。図3中、1はトレイ、2は製品収容室、3は凸縁部、4は凸部である(特許文献2参照)。
【0003】
前記電気製品のケースが樹脂で構成された場合、静電気の発生(帯電)による塵の付着が指摘されている。放電障害も指摘されている。JP1992-246461A(特許文献3)、JP1995-228765A(特許文献4)、JP2002-212414A(特許文献5)、JP2010-229348A(特許文献6)、JP2012-31395A(特許文献7)は、前記ケースを帯電防止剤含有樹脂組成物で成形する事を提案している。前記特許文献3,4,5,6,7は、ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂を前記ケース構成材料に用いる事を提案している。帯電防止剤としては、導電性フィラー(カーボンブラック(CP)、カーボンファイバー(CF)、カーボンナノチューブ(CNT)、金属粉(MP)、金属繊維(MF)等)、界面活性剤(Surface Active Agent:SAA)、高分子型帯電防止剤(Polymer Antistatic Agent:PAA)などが知られている。前記ケースが帯電防止剤含有樹脂組成物で成形された場合、静電気の発生(帯電)の問題が改善されると謂われている。JP1989-156A(特許文献8)、JP1989-65167A(特許文献9)には、ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】JP1993-16984A
【文献】JP2005-88995A
【文献】JP1992-246461A
【文献】JP1995-228765A
【文献】JP2002-212414A
【文献】JP2010-229348A
【文献】JP2012-31395A
【文献】JP1989-156A
【文献】JP1989-65167A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
帯電防止剤としてCP,CF,CNT,MP,MF,SAA,PAA等が知られている。
【0006】
前記導電性フィラー(CP,CF,CNT,MP,MF)は多くの種類の樹脂への配合が可能であった。ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、ポリアリーレンスルフィド(PAS)等が使用された場合は、優れた耐熱性(熱変形温度)が得られた。表面電気抵抗値は低かった。
【0007】
前記導電性フィラーが用いられた場合、トレイの擦れ合い(トレイ同士の擦れ合い、トレイ内に収納されている電気製品とトレイとの擦れ合い)に因り、前記フィラーの脱落または粉落ちが起きた。汚れが起きた。前記CF,MFの場合には、前記CF,MFの突出や折れが起きた。前記トレイの表面電気抵抗が増大した。前記トレイに汚れが起きた。前記CPが用いられた場合は、前記CPは粉である為、前記汚れが甚だしかった。前記CNTが用いられた場合には、前記問題が多少は改善された。前記フィラーが前記トレイ表面に付着した場合には、前記フィラーが前記トレイ表面から前記電気製品に移行する場合が有る。このような場合、前記フィラーは導電性であるが故に、前記電気製品の特性に問題が起きる。
【0008】
前記導電性フィラーが配合された樹脂組成物は成形時の流動性が悪かった。成形加工性が低下した。成形品の外観性が悪い。成形品に表層剥離や肌荒れ等の問題が起きた。
【0009】
前記導電性フィラーを含有した樹脂組成物は暗色(例えば、黒色)である。明るい色からは程遠い。異なる色のトレイが得られない。この為、電気製品を、電気製品の種類(型番など)別に、異なる色のトレイに収納する事が出来ない。
【0010】
帯電防止剤として前記SAAが用いられた場合は、前記導電性フィラーが用いられた場合に比べて、特性(例えば、吸水性、耐熱性、表面電気抵抗特性、耐久性など)が悪かった。トレイが加熱されると、前記SAAのブリードアウトが大きかった。電気製品の汚染の問題が大きかった。
【0011】
帯電防止剤として前記PAAが用いられた場合、前記導電性フィラーが用いられた場合の問題が起き難かった。前記SAAが用いられた場合のようなブリードアウトの問題が起き難かった。軽量性、吸水性、表面電気抵抗などの特性の問題も認められなかった。樹脂組成物は成形時の流動性に問題が認められなかった。トレイの表層剥離や肌荒れ等の外観不良も認められなかった。異なる色のトレイが簡単に得られる。この為、電気製品を、電気製品の種類(型番など)別に、異なる色のトレイに収納する事が出来る。
【0012】
前記PAAが用いられた場合、前記導電性フィラーが用いられた場合に比べて、一般的には、耐熱性が劣っていた。熱変形温度(HDT)が低いものしか得られてなかった。前記導電性フィラーを含有した場合の如くの高いHDTを有する樹脂組成物が得られなかった。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、前記容器(トレイ)に好適な樹脂組成物を提供することである。樹脂コンパウンドの混練および成形加工が、例えば290℃以下で可能な樹脂組成物を提供することである。HDTが、例えば135℃以上の樹脂組成物を提供することである。吸水率が、例えば0.8%以下の樹脂組成物を提供することである。比重が、例えば1.0~1.1の樹脂組成物を提供することである。表面電気抵抗値が、例えば1.0×1012Ω以下の樹脂組成物を提供することである。高いクリーン性を有する樹脂組成物を提供することである。成形体が暗色(褐色や黒色)ではない色(例えば、白色あるいは明るい色)の樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者による検討の結果、下記の要件(1)~(7)が考慮された樹脂組成物は前記電気製品(電子部品(例えば、半導体素子(トランジスタまたはIC等)、その他の電子部品)など)を収容する容器(トレイ)に好適な事が判って来た。
(1)トレイの色
前記CP,CF,CNT,MP,MFが用いられると、前記トレイの色が黒色・濃灰色になり、見栄えが悪い。帯電防止剤は黒色系で無い事が望まれた。着色可能(色で識別可能)な「クリーンなトレイ」が望まれた。前記電気製品の保管等に際して、前記電気製品を、前記電気製品の種類毎に、所望の色に着色された(色で識別可能な)「クリーンなトレイ」に分けて収納できれば、分別が簡単である。前記電気製品の製造工程や生産管理において、前記電気製品の識別が簡単である。取扱性が良い。
前記CP,CF,CNT,MP,MFが用いられると、樹脂組成物の流動性が悪かった。成形性が低下した。
これに対して、前記高分子型帯電防止剤を含有する樹脂組成物は、前記CPを含有する樹脂組成物に比べて、帯電防止特性は劣るものの、前記汚れ等の問題が改善された。所望の色に着色された(色で識別可能な)「クリーンなトレイ」を得ることが出来た。
(2)汚れ(脱落・粉落ち・発塵による汚れ、繊維の突出や折れによる汚れ)
擦れ合い(トレイ同士の擦れ合い、及び/又はトレイ内に収納されている電気製品とトレイとの擦れ合い)に因り、汚れ(トレイ構成樹脂中に含まれている帯電防止剤(導電性物質)の粉落ち・発塵による汚れ、繊維の突出や折れによる汚れ)が起き難い事は大事であった。
前記帯電防止剤としてCP,CF,CNT,MP,MF等が配合された樹脂組成物からなるトレイは、HDT(耐熱性)は十分に高く、表面電気抵抗値も充分に低い。しかし、前記擦れ合いにより、前記汚れが起こる。前記帯電防止剤としてSAAが配合された樹脂組成物からなるトレイは、トレイ構成樹脂中に含まれているSAAがブリードアウトする。ブリードアウトしたSAAが、トレイの表面に付着し、トレイ内に収納されている電気製品に移行する。この為、前記電気製品の電気的特性が損なわれる。
前記CP,CF,CNT,MP,MF,SAAに代わる物質が求められ、「クリーンなトレイ」が望まれた。
前記PAAを含有する樹脂組成物は、前記CPを含有する樹脂組成物に比べて、帯電防止特性は劣るものの、前記汚れ等の問題が大きく改善された。「クリーンなトレイ」を得ることが出来た。
斯かる観点から、前記CP,CF,CNT,MP,MF,SAAは用いられない事が好ましかった。
前記汚れは、後述の[評価項目、評価方法]に記載の<鉛筆硬度(黒さ)>により判定される。
(3)熱変形温度(HDT(Heat Distortion Temperature:耐熱性))
JP1995-228765A(特許文献4)は、PPE(ポリフェニレンエーテル系樹脂)、又はPPEとHIPS(スチレン系樹脂)とMRF((メタ)アクリル酸グリシジルで変性されたスチレン系樹脂)と特定の構造を有する帯電防止剤との樹脂組成物のHDTが93~100℃である事を開示している。
樹脂組成物中の高分子型の帯電防止剤(PAA)の含有量が多くなると、表面電気抵抗は低く抑えられるが、HDTは低くなった。前記PAAが配合された樹脂組成物のHDTは、従来では、高くても、120℃程度であった。
電気製品を収容するトレイの樹脂組成物は、HDT(ISO75による)が135℃以上である事が好ましかった。更に好ましくは140℃以上であった。もつと好ましくは150℃以上であった。
しかし、単に、HDTが高い樹脂を用いれば良いと言う事では無かった。
樹脂のHDTは下記の通りである。
ポリエチレンテレフタレート(PET)のHDT=21~66℃
ポリプロピレン(PP)のHDT=40~60℃
ポリブチレンテレフタレート(PBT)のHDT=50~85℃
ポリアミド(PA)のHDT=65~104℃
ポリアクリル酸メチル(PMMA)のHDT=68~100℃
ポリスチレン(PS)のHDT=72~94℃
ポリアリレート(PAR)のHDT=80℃
アクリロニトリル-スチレン共重合体(SAN)のHDT=88℃~104℃
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)のHDT=94~107℃
ポリフェニレンサルファイド(PPS)のHDT=100~135℃
ポリカーボネート(PC)のHDT=121~132℃
ポリアセタール(POM)のHDT=123~136℃
ポリアリレート(PAR)のHDT=150~180℃
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のHDT=156~160℃
ポリスルホン(PSU)のHDT=174~190℃
液晶ポリマー(LCP)のHDT=174~190℃
ポリフェニレンエーテル(PPE)のHDT=187~191℃
ポリエーテルスルホン(PES)のHDT=196~203℃
ポリエーテルイミド(PEI)のHDT=197℃~210℃
ポリアリーレンスルフィド(PAS)のHDT=255~280℃
ポリアミドイミド(PAI)のHDT=278℃
(4)混練温度、成形加工温度
前記PAAの熱分解開始温度は285℃程度である。樹脂コンパウンドの混練温度や成形加工温度が高いと、前記PAAが分解する。帯電防止効果が低下する。前記PAAの熱分解はガスを発生させる。発生したガスは成形品の外観を悪くする。
斯かる観点から、樹脂コンパウンドの混練温度や成形加工温度は290℃以下が好ましかった。
CP,CF,CNT等の帯電防止剤の熱分解温度は500℃以上である。従って、前記CP,CF,CNT等の使用は高温での混練や射出成形加工に問題を引き起こさない。樹脂溶融温度が高く、かつ、HDTが高いPPE,PES,PSU,PAS等を用いる事が出来る。HDTが150℃以上の樹脂組成物が簡単に得られる。
これに対して、帯電防止剤として前記PAAが用いられた場合には、事情が異なる。285℃以下の温度で樹脂コンパウンドの混練が可能で射出成形が可能な熱可塑性樹脂としては、例えばPS(樹脂溶融温度=163~316℃)が挙げられる。ABS(樹脂溶融温度=177~316℃)が挙げられる。SAN(樹脂溶融温度=191~316℃)が挙げられる。PC(樹脂溶融温度=273~328℃)が挙げられる。しかし、前記樹脂はHDTが低い。
本発明者は、CP等を用いた場合の問題点が起き難い高分子型の帯電防止剤(PAA)を用いた場合に、HDTが135℃以上で、混練温度や成形加工温度が290℃以下の樹脂組成物を開発する為の検討を重ねた。その結果、A樹脂(PPE(樹脂溶融温度=220~350℃,HDT=187~191℃))を主たる樹脂とし、B樹脂(ブチレンテレフタレート系樹脂、エチレンテレフタレート系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、カーボネート系樹脂、プロピレン系樹脂、及びアリレート系樹脂の群の中から選ばれる1種または2種以上の樹脂)を併用した樹脂組成物は、前記PAAの熱分解の問題が起き難く、かつ、前記熱分解開始温度(285℃)でも樹脂コンパウンドの混練や成形加工が可能な事を見出した。
(5)表面電気抵抗
導電性フィラー(CP,CF,CNT,MP,MF)が配合された樹脂組成物の表面電気抵抗値は低い。配合量によっては、樹脂組成物の表面電気抵抗値が10Ω程度の場合もある。静電気の問題が小さい。この点から、CP,CF,CNT,MP,MFの使用は好都合である。
高分子型帯電防止剤(PAA)を含有する樹脂組成物の表面電気抵抗値は、CP等を含有する樹脂組成物の表面電気抵抗値に比べると、高い。PAAの含有量にも拠るが、PAA含有樹脂組成物の表面電気抵抗値は1012Ω程度の場合もある。
本発明者の検討に拠れば、表面電気抵抗値が1012Ω程度であっても、問題は小さかった。「表面電気抵抗値(IEC60093)≦1.0×1012Ω」で有れば問題は起き難かった。
「表面電気抵抗(IEC60093)≦1.0×1012Ω」は次の事を意味する。帯電防止剤の選択範囲が広くなる。帯電防止剤の添加量を少なく出来る。PAAの含有量を少なく出来る事は次の点で好ましい。HDTの向上が図れた。吸水率の減少を図れた。吸水率低下によって、成形体の寸法精度の向上と寸法の安定化が図れた。成形体の表面に発生する微小な剥離(小膨れ)が改善できた。強度低下を防ぐ事が出来た。
前記効果を得る為、高分子型帯電防止剤(PAA)含有量の低減を図るには、A樹脂(PPE)と、B樹脂(ブチレンテレフタレート系樹脂、エチレンテレフタレート系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、カーボネート系樹脂、プロピレン系樹脂、及びアリレート系樹脂の群の中から選ばれる1種または2種以上の樹脂)との配合量も大きな決め手であった。
(6)吸水率
本発明者は、前記トレイを吸水率の観点から論じた文献を未だ知らない。
前記CP,CF,NT,MP,MF等の吸水率は極めて小さい。CFの吸水率は0.05%である。前記PAAの吸水率は2~3%である。前記値(2~3%)は熱可塑性樹脂の吸水率と比べても大きい。
特許文献4は「ポリアルキレンオキシド(帯電防止剤)を多く含有したPPE樹脂組成物は成形品の強度低下、層状剥離、衝撃強度の問題が認められる。」旨を示している。
前記電気製品を収容するトレイは寸法精度と寸法安定性が重要な要素である。前記トレイに前記電子部品を収納して保管または輸送する場合、前記電子部品が収納されたトレイを積層(数段~十数段)する事が多い。この為、長さ(長尺、短尺、嵌合部分など)や厚さ(全高、嵌合部高さ)などの各部分の寸法精度が重要になる。反り・変形などが極力小さいことが求められる。前記電子部品が収容されたトレイを実装装置(または検査装置)にセットする際には、装置側の治具に嵌め込まれる。このセット時(嵌合時)にあっても、前記トレイの寸法が前記治具の寸法に合致している必用が有る。従って、前記トレイの寸法精度や寸法安定性が重要である。
寸法公差を規定するISO精級(f)では、寸法が120mm~400mmの場合は、普通公差は±0.2mmと定めている。更なる寸法精度が要求される製品の寸法公差は±0.15mmである。ICトレイの寸法を規定するJEDEC規格(米国のJEDEC Solid State Technology Association(日本の規格はJEITA規格))の寸法公差は、長尺で315.0mm±0.25mm、短尺で135.9mm±0.25mm である。
前記規格を満足させる為に、吸水率が寸法精度や寸法安定性に重要な要素である事が判って来た。樹脂組成物が用いられた前記トレイの寸法精度や寸法安定性を満足し、かつ、外観不良や強度物性低下を起こさない為には、吸水率が大きな要素である事が判って来た。本発明者の繰り返しての実験に拠れば、吸水率が0.8%以下の樹脂組成物で出来たトレイは前記問題が改善されていた。より好ましくは吸水率が0.63%以下の樹脂組成物であった。更に好ましくは吸水率が0.55%以下の樹脂組成物であった。特に好ましくは吸水率が0.47%以下の樹脂組成物であった。
前記吸水率には前記樹脂組成物を構成する樹脂の選定や配合割合が極めて重要であった。
吸水率は次のようにして求められた。75mm×75mm×3mm(厚さ)の基板が作製され、前記基板の吸水率が条件(ISO62)下で測定された。
樹脂の吸水率は次の通りである。
液晶ポリマー(LCP)の吸水率=0.002%
ポリプロピレン(PP)の吸水率=0.01~0.03%
ポリスチレン(PS)の吸水率=0.01~0.07%
ポリフェニレンサルファイド(PPS)の吸水率=0.01~0.07%
ポリフェニレンエーテル(PPE)の吸水率=0.05~0.07%
ポリブチレンテレフタレート(PBT)の吸水率=0.08~0.09%
ポリエ-テルエ-テルケトン(PEEK)の吸水率=0.10~0.14%
ポリエチレンテレフタレート(PET)の吸水率=0.09~0.20%
アクリル系樹脂(PMMA)の吸水率=0.10~0.40%
ポリエーテルスルホン(PES)の吸水率=0.12~0.43%
ポリカーボネート(PC)の吸水率=0.15%
アクリロニトリル-スチレン共重合体(SAN)の吸水率=0.20~0.30%
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)の吸水率=0.20~0.45%
ポリエーテルイミド(PEI)の吸水率=0.25%
ポリアセタール(POM)の吸水率=0.25~1.00%
ポリアリレート(PAR)の吸水率=0.26~0.75%
ポリスルホン(PSU)の吸水率=0.30%
ポリアミドイミド(PAI)の吸水率=0.33%
ポリアミド(PA)の吸水率=0.4~1.6%
(7)重量(比重、密度)
本発明者は比重の観点から前記トレイを論じた文献を知らない。
輸送などに際して、「軽さ」が重要な事は言うまでも無いであろう。軽量なトレイは取り扱い易い。輸送費用が軽減される。斯かる観点から、「比重≦1.1」が好ましかった。
前記PAAを含有する樹脂組成物は、前記CP等を含有する樹脂組成物に比べて、軽量であった。前記PAA含有樹脂組成物製トレイは前記CP含有樹脂組成物に比べて、例えば6~27%程度軽量であった。
樹脂の比重は下記の通りである。
PAAの比重=1.02~1.05
CPの比重= 2.20~2.26
CFの比重= 1.72~1.91
CNTの比重=1.3~2.0
PPEの比重=1.04~1.09
PPの比重=0.90~0.91
PSの比重=1.04~1.09
ABSの比重=1.075~1.10
SANの比重=1.08~1.10
PMMAの比重=1.17~1.20
PCの比重=1.20
PARの比重=1.17~1.21
PAの比重=1.08~1.15
PSUの比重=1.24~1.25
PEIの比重=1.27
PETの比重=1.29~1.40
PEEKの比重=1.30~1.32
PBTの比重=1.30~1.38
PPSの比重=1.34~1.35
PESの比重=1.37~1.46
LCPの比重=1.40
POMの比重=1.42
PAIの比重=1.42
【0015】
斯かる知見を基にして本発明が達成された。
【0016】
本発明は、
A樹脂とB樹脂と高分子型帯電防止剤とを含有する樹脂組成物であって、
前記A樹脂はポリフェニレンエーテル系樹脂であり、
前記B樹脂はブチレンテレフタレート系樹脂、エチレンテレフタレート系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、カーボネート系樹脂、プロピレン系樹脂、及びアリレート系樹脂の群の中から選ばれる1種または2種以上の樹脂であり、
前記B樹脂は、前記A樹脂100質量部に対して、5~45質量部であり、
前記高分子型帯電防止剤は、前記A樹脂100質量部に対して、7~35質量部である
樹脂組成物を提案する。
【0017】
本発明は、前記B樹脂が、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、及びポリアリレートの群の中から選ばれる1種または2種以上の樹脂である樹脂組成物を提案する。
【0018】
本発明は、前記高分子型の帯電防止剤が、好ましくは、ポリエーテル型帯電防止剤である樹脂組成物を提案する。
【0019】
本発明は、前記高分子型の帯電防止剤が、好ましくは、数平均分子量が500以上である樹脂組成物を提案する。
【0020】
本発明は、前記高分子型帯電防止剤が、前記A樹脂100質量部に対して、好ましくは、10~25質量部である樹脂組成物を提案する。
【0021】
本発明は、前記A樹脂が、好ましくは、後述の一般式[I]で表される重合体のホモポリマー又はコポリマーである樹脂組成物を提案する。
【0022】
本発明は、好ましくは、更に相溶化剤を含有する樹脂組成物を提案する。
【0023】
本発明は、前記相溶化剤が、好ましくは、反応性相溶化剤である樹脂組成物を提案する。
【0024】
本発明は、前記相溶化剤が、前記A樹脂100質量部に対して、好ましくは、1~20質量部である樹脂組成物を提案する。
【0025】
本発明は、前記樹脂組成物であって、好ましくは、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、金属粉、金属繊維、及び帯電防止機能を有する界面活性剤を、実質上、含有していない樹脂組成物を提案する。
【0026】
本発明は、前記樹脂組成物の吸水率が、好ましくは、0.8%以下である樹脂組成物を提案する。
【0027】
本発明は、前記樹脂組成物のHDTが、好ましくは、135℃以上である樹脂組成物を提案する。
【0028】
本発明は、前記樹脂組成物の表面電気抵抗値が1.0×1012Ω以下である樹脂組成物を提案する。
【0029】
本発明は、前記樹脂組成物の比重が、好ましくは、1.0~1.1である樹脂組成物を提案する。
【0030】
本発明は、前記樹脂組成物の混練および成形加工が、好ましくは、290℃以下の温度で可能である樹脂組成物を提案する。
【0031】
本発明は前記樹脂組成物製成形体を提案する。
【0032】
本発明は前記樹脂組成物製の電気製品収容トレイを提案する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の樹脂組成物は前記電気製品を収容するトレイの構成素材として好適であった。樹脂組成物の混練や成形加工が、例えば290℃以下の温度で可能であった。前記トレイのHDTが、例えば135℃以上であった。前記トレイの吸水率が、例えば0.8%以下であった。前記トレイの表面電気抵抗値が、例えば1.0×1012Ω以下であった。前記樹脂組成物にはCP等の黒色系帯電防止剤が実質的に含まれていない為、前記CP等に起因の問題(例えば、汚れ)が解決されていた。クリーン性が高い前記トレイが得られた。前記トレイの比重が、例えば1.0~1.1であった。CP含有樹脂組成物に比べて約6~27%程度軽量であった。CP等の黒色系帯電防止剤が実質的に含まれていない為、前記トレイの色彩感が良かった。前記電気製品の保管等に際して、前記電気製品を、その種類毎に、所望の色に着色された(色で識別可能な)トレイに分けて収納できた。分別が簡単であるから、前記電気製品の製造工程や生産管理において、前記電気製品の識別が簡単故に、取扱性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】複数枚のトレイ(容器)が積み重なった状態での斜視図
図2図1のI-I線での断面図
図3図1とは別のタイプのトレイ(容器)の平面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
第1の発明は樹脂組成物である。前記樹脂組成物は、A樹脂とB樹脂と高分子型帯電防止剤とを含有する。前記A樹脂はポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)である。前記B樹脂はブチレンテレフタレート系樹脂、エチレンテレフタレート系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、カーボネート系樹脂、プロピレン系樹脂、及びアリレート系樹脂の群の中から選ばれる1種または2種以上の樹脂である。前記高分子型帯電防止剤は、前記A樹脂100質量部に対して、7~35質量部である。好ましくは10質量部以上であった。更に好ましくは13質量部以上であった。もっと好ましくは15質量部以上であった。特に好ましくは20質量部以上であった。好ましくは30質量部以下であった。更に好ましくは25質量部以下であった。前記B樹脂は、前記A樹脂100質量部に対して、5~45質量部である。好ましくは10質量部以上であった。更に好ましくは15質量部以上であった。好ましくは35質量部以下であった。更に好ましくは30質量部以下であった。もっと好ましくは25質量部以下であった。
【0036】
前記A樹脂は、好ましくは、下記一般式[I]で表される樹脂であった。
一般式[I]
(一般式[I]中、R,R,R,Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基(例えば、アルキル基)、炭化水素オキシ基(例えば、アルコキシ基)、ハロゲン原子とフェニル環との間に少くとも2個の炭素原子を有するハロゲン化炭化水素基(例えば、ハロゲン化アルキル基)またはハロゲン化炭化水素オキシ基(例えば、ハロゲン化アルコキシ基)である。例えば、第3級α-炭素を含まないものから選ばれた一価置換基である。R,R,R,Rは、同じでも、異なっていても良い。nは重合度を表わす正の整数である。好ましくは20以上の整数である。更に好ましくは50以上の整数である。)
【0037】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂は、前記一般式[I]で表される重合体のホモポリマーでもコポリマーでも良い。好ましい具体例では、前記R,Rがアルキル基(炭素原子数1~4)である。前記R,Rが水素原子またはアルキル基(炭素原子数1~4)である。例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジラウリル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジメトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジクロル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジベンジル-1,4-)フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジブロム-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-ステアリルオキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メトキシ-6-エトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エトキシ-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-クロル-1,4-フェニレン)エーテル等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル共重合体としては、前記ポリフェニレンエーテルの繰返し単位中に、アルキル三置換フェノール(例えば、2,3,6-トリメチルフェノール)を一部含有する共重合体が挙げられる。前記ポリフェニレンエーテル系樹脂にスチレン系化合物がグラフトしたコポリマーであっても良い。スチレン系化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等が挙げられる。2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体であっても良い。JP1989-156A,JP1992-246461A,JP1995-228765A,JP2010-229348A等に開示のポリフェニレンエーテル系樹脂であっても良い。
【0038】
樹脂がポリフェニレンエーテル系樹脂のみでは本発明の目的が達成できなかった。ポリフェニレンエーテル系樹脂と共に併用される樹脂が検討された。その結果は、併用される樹脂は前記B樹脂(ブチレンテレフタレート系樹脂、エチレンテレフタレート系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、カーボネート系樹脂、プロピレン系樹脂、及びアリレート系樹脂の群の中から選ばれる1種または2種以上の樹脂)であった。
前記B樹脂は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、及びポリアリレート(PAR)の群の中から選ばれる1種類または2種類以上の樹脂であった。
他の樹脂(前記A,B以外の樹脂)が併用できる。しかし、前記A,B以外の樹脂は前記B樹脂の1/2以下の量である事が好ましかった。更に好ましくは前記B樹脂の1/4以下の量であった。前記量を越えてしまうと、(前記A樹脂+前記B樹脂)の組み合わせの特長が喪失してしまったからである。本願発明の特長が小さくなった。前記A,B以外の樹脂は熱可塑性樹脂が好ましかった。
【0039】
前記樹脂組成物は帯電防止剤を含有する。前記帯電防止剤は高分子型の帯電防止剤(PAA)である。高分子型が好ましいのは、分子量が比較的大きい(長さが長い)為、樹脂組成物中から帯電防止剤が滲出し難いからであった。この意味から高分子型の意味合いは解釈される。プレポリマーと言った概念のものも含まれる。例えば、分子量(数平均分子量:Mn)が500以上(更に好ましくは1000以上)の帯電防止剤は好ましかった。高分子型の帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミド(例えば、ビスフェノールAのポリオキシアルキレン付加物からなるポリエーテルエステルアミド(JP1995-10989A参照));ポリアミドイミドエラストマー;ポリオレフィンブロックと親水性ポリマーブロックとの結合単位が2~50の繰り返し構造を有するブロックポリマー(US特許第6552131号参照);ポリオレフィンとポリエーテルとのブロックコポリマー;幹ポリマー(ポリアミド)と枝ポリマー(ポリアルキレンエーテルとポリエステルとのブロックポリマー)とからなるグラフトポリマー;α-オレフィンと無水マレイン酸とポリアルキレンアリルエーテルとの共重合体;ポリエチレンエーテル、イソシアネート及びグリコールからなるポリマー;多価カルボン酸成分と有機ジイソシアネートとポリエチレングリコールとの共重合体;ポリエチレンオキサイド;ポリエチレンオキサイド共重合体;ポリエーテルエステル;ポリエーテルアミド;ポリエーテルエステルアミド;部分架橋ポリエチレンオキサイド共重合体;アイオノマー(例えば、側鎖にカルボン酸のアルカリ金属塩、スルホン酸のアルカリ金属塩、4級アンモニウム塩を有するポリマー);アルキレンオキシドと共役ジエン化合物とのゴム共重合体にビニル(又は、ビニリデン)単量体(例えば、スチレンスルホン酸ナトリウム)をグラフトさせたグラフトポリマー;ポリフェニレンエーテル樹脂にスルホネート基などの基を核置換させてイオン性誘導体を形成させたポリマー;ポリエーテルエステルイミドとカルボキシル基含有ビニル共重合体とから成る組成物;ポリオキシアルキレン基含有アルキルアミンとアルキルスルホン酸ナトリウムと無機アルカリ金属塩類との組成物;アクリル酸エステル系エラストマー;スチレンーアクリル酸共重合体等が挙げられる。勿論、これ等に限られない。高分子型の帯電防止剤(PAA)は周知である。前記高分子型の帯電防止剤(PAA)は、好ましくは、ポリエーテル型帯電防止剤であった。
前記高分子型帯電防止剤を含有する前記樹脂組成物のHDTは、前記CP等の導電性フィラーを含有している前記樹脂組成物の樹脂のHDTよりも低かった。それでも、本発明の樹脂組成物のHDTは問題が無かった。
【0040】
前記樹脂組成物は、好ましくは、更に相溶化剤を含有する。各種の相溶化剤が知られている。前記相溶化剤は、前記A樹脂と前記B樹脂と前記高分子型の帯電防止剤とに対する相溶化剤である。好ましい相溶化剤は反応性相溶化剤であった。前記相溶化剤としては極性官能基含有ポリスチレン系の反応性相溶化剤が挙げられる。オキサゾリン基含有反応性ポリスチレンが挙げられる。スチレン-ブタジエン共重合物の水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)が挙げられる。スチレン/無水マレイン酸(SMA)のランダム共重合樹脂が挙げられる。勿論、これ等に限られない。
前記相溶化剤は、前記A樹脂100質量部に対して、好ましくは、1~20質量部であった。更に好ましくは5質量部以上であった。もっと好ましくは7質量部以上であった。更に好ましくは15質量部以下であった。もっと好ましくは13質量部以下であった。
【0041】
前記樹脂組成物は、好ましくは、CP,CF,CNT,MP,MF,SAAを、実質上、含有していない。前記物質の粉末や繊維を多く含む樹脂組成物は、脱落、粉落ちや発塵、繊維の突出や折れの汚れの問題が起きた。SAA(界面活性剤)も、前記樹脂組成物中から滲出する恐れが高い。本発明にあっては斯かる問題が起きない。前記樹脂組成物は、好ましくは、濃灰色から黒色の帯電防止剤(CP,CF,CNT,MP,MF)を、実質的にも、含有していない。CP等の濃灰色から黒色の帯電防止剤を多く含むと、その弊害が大きいからである。しかし、少量で有れば弊害は小さいであろう。ここで、「実質的に含有していない」は「前記物質に基づく前記樹脂組成物の色が明確には判らない程度」を意味する。すなわち、CP,CF,CNT,MP,MFが或る程度含まれると、前記樹脂組成物は褐色ないしは黒色になる。見栄えが悪い。比重が大きくなる。脱落・粉落ち・発塵や繊維の突出や折れが起きる。
【0042】
前記樹脂組成物は着色物質を含有していない。しかし、着色物質の含有(添加:配合)を否定しない。例えば、加熱による前記樹脂組成物の変色が判る程度の含有量ならば、問題は無い。例えば、加熱によって前記樹脂組成物製トレイの色が変色した事は前記樹脂組成物の物性(例えば、表面電気抵抗値)が変化したであろう事を推察できる。なぜならば、前記樹脂組成物の変色は前記樹脂組成物(特に、樹脂)が劣化(変質:変性)した事を意味するからである。前記樹脂組成物の劣化は、例えば樹脂組成物の酸化(加熱によって促進された酸化)に因る。斯かる変色を知る事によって前記トレイの使用継続あるいは交換を判断できる。前記樹脂組成物を加熱し、変色と表面電気抵抗値との関係を予め調べておけば、或る色に変色した時(予め調べられている既定の色になった時)は表面電気抵抗値が或る閾値を越えたと考えられる。
【0043】
前記樹脂組成物は、好ましくは、HDTが135℃以上であった。更に好ましくは140℃以上であった。もっと好ましくは150℃以上であった。上限値に格別な制約はない。
前記樹脂組成物は、好ましくは、表面電気抵抗値が1.0×1012Ω以下であった。更に好ましくは1.0×1011Ω以下であった。もっと好ましくは1.0×1010Ω以下であった。例えば1.0×10Ω以上であった。
前記樹脂組成物は、好ましくは、吸水率が0.8%以下であった。より好ましくは吸水率が0.63%以下であった。更に好ましくは吸水率が0.55%以下であった。特に好ましくは吸水率が0.47%以下であった。
前記樹脂組成物は、好ましくは、比重が、1.0~1.1であった。更に好ましくは1.01以上であった。もっと好ましくは、1.02以上であった。更に好ましくは1.1未満であった。もっと好ましくは1.09以下であった。
前記樹脂組成物は、好ましくは、290℃以下で、樹脂コンパウンドの混練および成形加工が可能な事であった。
前記物性は本発明の樹脂組成物の内容と密接な関係を持っていた。
【0044】
第2の発明は成形体である。前記成形体は前記樹脂組成物製である。前記成形体は、例えばトレイである。例えば、ICトレイである。例えば、半導体素子(製品)収容トレイである。例えば、電気製品収容トレイである。前記トレイは、例えば電気製品(電子部品も電気製品に含まれる。)の収容部を具備する。前記収容部は複数(2以上)有る。前記トレイの形状(構造)は、例えば図1,3に示される形状(構造)が挙げられる。勿論、これに限定されない。
前記トレイは、好ましくは、アニール処理が行われている。加熱によって、前記トレイの残留応力が除去された。前記トレイの変形が防止される。形状・寸法が安定する。前記トレイの材料として本発明になる樹脂組成物が用いられた場合、前記トレイは形状・寸法安定性が優れていた。前記特許文献4に記載の問題点「ポリアルキレンオキシド(帯電防止剤)を多く含有したPPE樹脂組成物は成形品の強度低下、層状剥離、衝撃強度の問題が認められる。」は解決されていた。
前記トレイは、前記電気製品の輸送時(或いは、前記製品の特性検査時、又は前記製品の実装時、又は前記製品の保管時)に用いられる。前記トレイは、例えば加熱雰囲気下で使用される。例えば、空気雰囲気下(酸化性雰囲気下)で使用される。
【0045】
以下、具体的な実施例が挙げられる。但し、本発明は以下の実施例にのみ限定されない。本発明の特長が大きく損なわれない限り、各種の変形例や応用例も本発明に含まれる。
【0046】
[実施例、参考例]
<非晶性熱可塑性樹脂>
PPE(Iupiace PX-100F(三菱エンジニアリングプラスチック社製ポリフェニレンエーテル);HDT=191℃)
SAN(KIBISAN PN-117(台湾奇美實業(Chimei)社製アクリロニトリル-スチレン共重合体);HDT=89℃)
PC(Iupilon S2000R(三菱エンジニアリングプラスチック社製ポリカーボネート);HDT=130℃)
PS(トーヨースチロールGP MW1C(東洋スチロール社製ポリスチレン);HDT=72℃)
ABS(POLYLAC PA-757(台湾奇美實業(Chimei)社製アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体);HDT=:83℃)
PMMA(デルペット 60N(旭化成ケミカルズ社製ポリメタクリル酸メチル);HDT=91℃)
PAR(Uポリマー U-100(ユニチカ社製ポリアリレート);HDT=177℃)
PSU(Udel P-1700(SOLVAY社製ポリサルフォン);HDT=174℃)
PEI(ULTEM PEI(クレハエクストロン社製ポリエーテルイミド);HDT=200℃)
PAI(バイロマックス HR-11NN(東洋紡社製ポリアミドイミド);HDT=278℃)
PES(スミカエクセル PES3600G(住友化学社製ポリエーテルサルフォン);HDT=203℃)
<結晶性熱可塑性樹脂>
PP(サンアロマー PM600A(サンアロマー社製のポリプロピレン);HDT=103℃(0.45MPa))
POM(テナック 7050(旭化成ケミカルズ社製ポリアセタール);HDT=105℃)
PA(ハイプロン 70FN(アルケマ社製ポリアミド);HDT=65℃)
PET(バイロペット EMC-500(東洋紡社製ポリエチレンテレフタレート);HDT=85℃)
PBT(トレコン 1401×06(東レ社製ポリブチレンテレフタレート);HDT=70℃)
PPS(フォートロンKPS(クレハ社製ポリフェニレンサルファイド);HDT=110℃)
PEEK(VICTREX PEEKポリマー450G(Victrex社製ポリエーテルエーテルケトン);HDT=156℃)
LCP( ベクトラ A950(セラニーズ社製液晶ポリマー);HDT=190℃)
<熱硬化性樹脂>
EP(jER1004(三菱ケミカル社製固形エポキシ樹脂);HDT=80℃)
PF(スミライトレジン PR-HF-6(住友ベークライト社製ストレートフェノールノボラック樹脂);HDT=120℃)
UP(ユピカ 8510(日本ユピカ社製不飽和ポリエステル);HDT=90℃)
<硬化剤、架橋剤>
PPF(jER170(三菱ケミカル社製粉体フェノール類):EPの硬化剤)
HMTA(ヘキサメチレンテトラミン(富士フイルム和光純薬社製)):PFの硬化剤)
DAPP(ダイソーダップA(大阪ソーダ社製ジアリルフタレートプレポリマー);UPの架橋剤)
DCPO(パークミルD(日本油脂社製ジクミルパーオキサイド);UPとDAPPとの硬化剤)
<充填材>
SiO(アドマフューズFE9(アドマテックス社製非晶質シリカ粒子);EPの充填材)
CaCO(ホワイトンH(東洋ファインケミカル社製炭酸カルシウム);PFの充填材)
Al(OH)(ハイジライトH32(昭和電工社製水酸化アルミニウム);UPの充填材)
*SiO,CaCO,Al(OH)等の粒子は無機充填材である。
<離型剤>
ZNS(ジンクステアレートGP(日油社製金属石鹸);離型剤)
<帯電防止剤>
ペレクトロンAS(三洋化成社製の高分子型帯電防止剤(ポリエーテル型帯電防止剤));HDT=45℃)
ペレクトロンHS(三洋化成社製の高分子型帯電防止剤(ポリエーテル型帯電防止剤));HDT=45℃)
CP(ケッチェンブラック EC300J(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製カーボンブラック))
CF(トレカカットファイバー T010-003(東レ社製カーボン繊維))
CNT(MWNT(名城ナノカーボン社製カーボンナノチューブ))
<界面活性剤>
SAA(ケミスタット(三洋化成社製の非イオン界面活性剤))
<相溶化剤>
相溶化剤(エポクロス PRS-1005(日本触媒社製オキサゾリン基含有反応性ポリスチレン相溶化剤))
[配合例]
上記成分の配合割合は次の通りである。( )内の数字の単位は質量部である。
No.1:PPE(100)+PBT(20)+ペレクトロンAS(15)
No.2:PPE(100)+PBT(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.3:PPE(100)+PP(20)+ペレクトロンAS(15)
No.4:PPE(100)+PP(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.5:PPE(100)+PA(20)+ペレクトロンAS(15)
No.6:PPE(100)+PA(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.7:PPE(100)+PET(20)+ペレクトロンAS(15)
No.8:PPE(100)+PET(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.9:PPE(100)+PC(20)+ペレクトロンAS(15)
No.10:PPE(100)+PC(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.11:PPE(100)+PAR(20)+ペレクトロンAS(15)
No.12:PPE(100)+PAR(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.13:PPE(100)+PMMA(20)+ペレクトロンAS(15)
No.14:PPE(100)+PMMA(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.15:PPE(100)+PBT(7)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.16:PPE(100)+PBT(40)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.17:PPE(100)+PBT(5)+PET(2)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.18:PPE(100)+PBT(25)+PET(15)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.19:PPE(100)+PBT(13)+PP(7)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.20:PPE(100)+PBT(13)+PA(7)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.21:PPE(100)+PBT(13)+PET(7)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.22:PPE(100)+PBT(13)+PC(7)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.23:PPE(100)+PBT(13)+PAR(7)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.24:PPE(100)+PBT(13)+PMMA(7)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.25:PPE(100)+PC(13)+PAR(7)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.26:PPE(100)+PC(13)+PMMA(7)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)

No.27:PPE(100)+ペレクトロンAS(15)
No.28:PPE(100)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.29:PPE(100)+SAN(20)+ペレクトロンAS(15)
No.30:PPE(100)+SAN(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.31:PPE(100)+PSU(20)+ペレクトロンAS(15)
No.32:PPE(100)+PSU(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.33:PPE(100)+PEI(20)+ペレクトロンAS(15)
No.34:PPE(100)+PEI(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.35:PPE(100)+PES(20)+ペレクトロンAS(15)
No.36:PPE(100)+PES(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.37:PPE(100)+PAI(20)+ペレクトロンAS(15)
No.38:PPE(100)+PAI(20)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.39:PPE(100)+POM(20)+ペレクトロンAS(15)
No.40:PPE(100)+POM(23)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)

No.41:PPE(100)+PBT(3)+PET(1)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.42:PPE(100)+PBT(2)+PET(2)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.43:PPE(100)+PBT(40)+PET(10)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.44:PPE(100)+PBT(20)+PET(30)+ペレクトロンAS(15)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.45:PPE(100)+PBT(13)+PET(7)+ペレクトロンAS(5)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.46:PPE(100)+PBT(13)+PET(7)+ペレクトロンAS(40)+ エポクロスPRS-1005(10)
No.47:PPE(100)+PBT(13)+PET(7)+ペレクトロンAS(5)+ エポクロスPRS-1005(25)
No.48:PPE(100)+PBT(13)+PET(7)+ペレクトロンAS(40)+ エポクロスPRS-1005(25)

No.49:PPE(100)+PS(20)+CP(10)
No.50:PPE(100)+PS(20)+CF(10)
No.51:PPE(100)+PS(20)+CNT(5)
No.52:PPE(100)+PS(20)+SAA(10)

No.53:PC(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.54:PS(100)+SAN(15)+ペレクトロンHS(8)
No.55:ABS(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.56:SAN(115)+ペレクトロンAS(15)
No.57:PMMA(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.58:PAR(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.59:PSU(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.60:PEI(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.61:PAI(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.62:PES(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.63:PP(100)+SAN(15)+ペレクトロンHS(8)
No.64:POM(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.65:PBT(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.66:PPS(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.67:PEEK(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.68:LCP(100)+SAN(15)+ペレクトロンAS(15)
No.69:EP(100)+硬化剤PPF(25)+CP(10)+SiO(150)+離型剤ZNS(5)
No.70:PF(100)+硬化剤HMTA(25)+CP(10)+CaCO(150)+離型剤ZNS(5)
No.71:UP(100)+架橋剤DAPP(25)+硬化剤DCPO(3)+CP(10)+Al(OH)(150)+離型剤ZNS(5)
【0047】
<No.1~68>
上記配合割合の組成物がFM75B(三井三池社製ヘンシェルミキサー)で撹拌混合(3分間,800rpm)された。前記混合物がTEX44αIII(日本製鋼所社製ベント付き2軸押出機,200rpm,280℃)で溶融混錬された。押出ストランドが冷却カットされた。ペレットが得られた。前記ペレットがSi-III・KC-BRO(東洋機械金属社製射出成型機)に供給された。溶融射出成形(シリンダー温度=290℃、金型温度=90℃)が行われた。基板(75mm角×3mm厚さ)が得られた。
<No.69~71>
上記配合割合の組成物が前記FM75Bで撹拌混合(90℃,7分間,800rpm)された。前記混合物がTEX44α(日本製鋼所社製ベント付き熱硬化性樹脂用2軸押出機,100rpm,90℃)で溶融混錬された。ダイスから押出された混練物がホットカットされた。ペレットが得られた。前記ペレットがM-100ADS-TS(日本製鋼所社製熱硬化性樹脂用射出成型機)に供給された。溶融射出成形(シリンダー温度=90℃、金型温度=160℃)が行われた。基板(75mm角×3mm厚さ)が得られた。
【0048】
[評価項目、評価方法]
<2軸押出機での樹脂コンパウンド混練性>
◎:混練性が非常に良好。ストランド均一性が非常に良好。ペレットカットが非常に良好。
〇:混練性が良好。ストランド均一性が良好。ペレットカットが良好。
△:混練性がやや不良。ストランド均一性がやや不良。ペレットカット状態がやや不良。
×:混練性が不良。ストランド均一性が不良。ペレットカットが不良。
<射出成形性・外観>
◎:成形性が非常に良好。成形基板の外観が非常に良好。
〇:成形性が良好。成形基板の外観が良好。
△:成形性がやや不良。成形基板の外観がやや不良(膨れ小。層状剥離小)。
×:成形性が不良。成形基板の外観が不良(膨れ大、層状剥離大)。
<鉛筆硬度(黒さ):汚れ>
前記基板の角が、コピー用紙(コクヨ製A4)に押し当てられ(0.5Kg重)、引かれた。これによって線が描かれたと言う事は汚れが起き易い事である。その黒さが鉛筆硬度(黒度)10H~10Bで表現されている。線が全く描かれなかった場合はNDで表記されている。
◎:ND
△:10H~H
×:F~10B
<クリーン性>
射出成形によりJEDEC対応形状のICトレイが成形された。前記ICトレイの収容室に成形品(パナソニック社製エポキシ樹脂BGA用「CV8710MV」の薄板の成形加工品)が装填された。前記ICトレイが3段重ねられてバンドで縛られた。是が段ボール箱に20セット入れられた。
振動試験機(EMIC社製「VIBRATOR GENELATION」FT-10K/80)が用いられた。JIS Z0238「包装荷物振動試験方法」レベルIIで試験された。
◎:クリーン性が保持された。
×:クリーン性が無かった(汚れ現象(粉落ち、繊維の突出・折れ、ブリードアウト)が発生)。
<熱変形温度(HDT)>
測定機(3M-2型(東洋精機製作所社製))が用いられた。条件(ISO75(1.82MPa))の下でHDTが測定された。
◎:150℃以上
○:135℃以上~150℃未満
×:135℃未満
<表面電気抵抗値>
測定機(Simco-Ion表面抵抗計(ModelST-4)、表面抵抗計用IEC測定電極キット(シムコジャパン社製))が用いられた。条件(IEC60093)の下で表面電気抵抗値が測定された。
◎:1.0×1011Ω未満
〇:1.0×1011~1.0×1012Ω
×:1.0×1012Ωをオーバー
<吸水率>
基板(75mm角×3mm厚さ)の吸水率が測定(条件(ISO62))された。
◎:0.47%以下
〇:0.48~0.8%
×:0.8%をオーバー
<比重>
基板(75mm角×3mm厚さ)の比重が測定(条件(ISO1183))された。
◎:1.0~1.1
×:1.1をオーバー
<変色認識>
ETAC-HS320(楠本化成社製熱風乾燥機)が用いられて熱風乾燥が行われた。乾燥条件は135℃(加熱空気吹付温度)で500時間、又は150℃(加熱空気吹付温度)で250時間であった。
<変色認識:135℃/500時間加熱の可否>
目視での変色認識が可能か否かである。
◎:「500」は加熱開始から500時間経過の時点でも変色認識が可能。
〇:「400」は加熱開始から400時間の時点まで変色認識が可能。
△:「400未満の数字(N)」は加熱開始からN時間後まで変色認識が可能。
×:「0」は、加熱開始の時点で変色が認識できず。
<変色認識:150℃/250時間加熱の可否>
目視での変色認識が可能か否かである。
◎:「250」は加熱開始から250時間経過の時点でも変色認識が可能。
〇:「200」は加熱開始から200時間の時点まで変色認識が可能。
△:「200未満の数字(N)」は加熱開始からN時間後まで変色認識が可能。
×:「0」は加熱開始の時点で変色が認識できず。
【0049】
前記成形基板の特性が調べられた。その結果が下記の表-1,2,3に示される。
表-1
表-2
表-3
【0050】
この表-1,2,3から、本発明の樹脂組成物は前記電気製品を収容するトレイの構成素材として好適であった。樹脂組成物の混練や成形加工が、例えば290℃以下の温度で可能であった。前記トレイのHDTが、例えば135℃以上であった。前記トレイの吸水率が、例えば0.8%以下であった。前記トレイの表面電気抵抗値が、例えば1.0×1012Ω以下であった。前記樹脂組成物にはCP等の黒色系帯電防止剤が実質的に含まれていない為、前記CP等に起因の問題(例えば、汚れ)が解決されていた。クリーン性が高い前記トレイが得られた。前記トレイの比重が、例えば1.0~1.1であった。CP含有樹脂組成物に比べて約6~27%程度軽量であった。CP等の黒色系帯電防止剤が実質的に含まれていない為、前記トレイの色彩感が良かった。前記電気製品の保管等に際して、前記電気製品を、その種類毎に、所望の色に着色された(色で識別可能な)トレイに分けて収納できた。分別が簡単であるから、前記電気製品の製造工程や生産管理において、前記電気製品の識別が簡単故に、取扱性が良い。
【符号の説明】
【0051】
1 トレイ(容器)
2 収容室(収容部)
6 電子部品(製品)
【要約】
A樹脂とB樹脂と高分子型帯電防止剤とを含有する樹脂組成物であって、前記A樹脂はポリフェニレンエーテル系樹脂であり、前記B樹脂はブチレンテレフタレート系樹脂、エチレンテレフタレート系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、カーボネート系樹脂、プロピレン系樹脂、及びアリレート系樹脂の群の中から選ばれる1種または2種以上の樹脂であり、前記B樹脂は、前記A樹脂100質量部に対して、5~45質量部であり、前記高分子型帯電防止剤は、前記A樹脂100質量部に対して、7~35質量部である。

図1
図2
図3