(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】半導体デバイスのワイヤボールボンディング
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
H01L21/60 301D
(21)【出願番号】P 2020558663
(86)(22)【出願日】2018-01-15
(86)【国際出願番号】 CN2018072587
(87)【国際公開番号】W WO2019136743
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】ハン ゾン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン チアン タン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シオン
(72)【発明者】
【氏名】ジー チー ワン
(72)【発明者】
【氏名】シー リン リー
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-236565(JP,A)
【文献】特開2016-004970(JP,A)
【文献】特開2012-138476(JP,A)
【文献】特開昭60-097655(JP,A)
【文献】特開2017-005037(JP,A)
【文献】特開2011-103337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤボンディングを用いて半導体デバイスの構成要素を相互接続する方法であって、
パラジウムを含む被覆を有する被覆アルミニウムワイヤを提供することと、
前記被覆アルミニウムワイヤの第1の端部からフリーエアボールを形成することであって、前記フリーエアボールの形成の間に前記フリーエアボールの少なくとも一部から前記被覆が除去される、前記フリーエアボールを形成することと、
前記フリーエアボールを半導体チップ上のボンドパッドにボンドすることであって、前記ボンドパッドがアルミニウム表面層を有し、前記フリーエアボールと前記ボンドパッドのアルミニウム表面層とが均質のアルミニウム対アルミニウムボールボンドを形成する、前記フリーエアボールをボンドすることと、
前記被覆アルミニウムワイヤの反対の第2の端部をリードフレーム上のリードにボンドすることであって、前記リードがパラジウム表面層を有し、前記被覆アルミニウムワイヤの第2の端部と前記パラジウム表面層とが均質のパラジウム対パラジウムボンドを形成する、前記第2の端部をボンドすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記被覆が、前記フリーエアボールの形成の間に前記フリーエアボールの酸化を防止する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記均質のパラジウム対パラジウムボンドがスティッチボンドである、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記フリーエアボールが電気的フレームオフワンドを用いて作成される、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記電気的フレームオフワンドが150~170ミリアンペアの範囲の電流を用いる、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記半導体チップを前記リードフレームに取り付けることと、
前記均質のアルミニウム対アルミニウムボールボンドと前記均質のパラジウム対パラジウムボンドとをモールディング化合物で覆うことと、
前記半導体チップと前記リードフレームとを個々の半導体パッケージに分離することと、
を更に含む、方法。
【請求項7】
半導体デバイスであって、
リードを含むリードフレームであって、前記リードがパラジウム表面層を有する、前記リードフレームと、
第1の側と反対の第2の側とを有する半導体ダイであって、前記半導体ダイの第2の側が前記リードフレームに取り付けられ、前記半導体ダイが、前記第1の側にアルミニウムボンドパッドを有し、前記リードに近接する、前記半導体ダイと、
第1端部と反対の第2の端部とを有するパラジウム被覆アルミニウム相互接続ワイヤと、
前記アルミニウムボンドパッドと前記パラジウム被覆アルミニウム相互接続ワイヤの第1の端部との間のボールボンドであって、均質のアルミニウム対アルミニウムボールボンドである、前記ボールボンドと、
前記リードと前記パラジウム被覆アルミニウム相互接続ワイヤの第2の端部との間のボンドであって、均質のパラジウム対パラジウムボンドである、前記ボンドと、
を含む、半導体デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体デバイスであって、
前記パラジウム被覆アルミニウム相互接続ワイヤが、パラジウム銅被覆を形成するための銅を更に含む、半導体デバイス。
【請求項9】
請求項7に記載の半導体デバイスであって、
前記ボンドがスティッチボンドである、半導体デバイス。
【請求項10】
請求項7に記載の半導体デバイスであって、
前記ボールボンドがパラジウムを含まない、半導体デバイス。
【請求項11】
請求項7に記載の半導体デバイスであって、
前記ボールボンド
が前記アルミニウムボンドパッドから離れた第1の部分と前記アルミニウムボンドパッドに近接した第2の部分とを有し、前記第1の部分が前記第2の部分よりも多くのパラジウム被覆を有する、半導体デバイス。
【請求項12】
請求項7に記載の半導体デバイスであって、
前記均質のアルミニウム対アルミニウムボールボンドと前記均質のパラジウム対パラジウムボンドとの上の絶縁被覆を更に含む、半導体デバイス。
【請求項13】
請求項7に記載の半導体デバイスであって、
前記均質のアルミニウム対アルミニウムボールボンドに酸化がない、半導体デバイス。
【請求項14】
半導体デバイスであって、
支持構造と、
前記支持構造に取り付けられる半導体ダイであって、前記半導体ダイ上のボンドパッドを有し、前記ボンドパッドがアルミニウム表面層を有する、前記半導体ダイと、
前記半導体ダイに近接し、パラジウム表面層を有するボンドサイトと、
前記半導体ダイ上のボンドパッドを前記ボンドサイトに接続するための被覆アルミニウムワイヤであって、アルミニウムコアと、パラジウムを含む被覆と、前記被覆のない第1の端部と、反対の第2の端部とを含む、前記被覆アルミニウムワイヤと、
前記被覆アルミニウムワイヤの第1の端部と前記ボンドパッドのアルミニウム表面層との間に形成されるアルミニウム対アルミニウムのボールボンドと、
前記被覆アルミニウムワイヤの第2の端部と前記ボンドサイトのパラジウム表面層との間に形成されるパラジウムボンド対パラジウムのボンドと、
を含む、半導体デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体デバイスであって、
前記支持構造が半導体基板である、半導体デバイス。
【請求項16】
請求項14に記載の半導体デバイスであって、
前記アルミニウム対アルミニウムのボールボンドと前記パラジウム対パラジウムのボンドとを覆う被覆を更に含む、半導体デバイス。
【請求項17】
請求項14に記載の半導体デバイスであって、
前記被覆アルミニウムワイヤの被覆が銅を更に含む、半導体デバイス。
【請求項18】
請求項14に記載の半導体デバイスであって、
前記パラジウム対パラジウムのボンドがスティッチボンドである、半導体デバイス。
【請求項19】
請求項14に記載の半導体デバイスであって、
前記半導体ダイ上のボンドパッドが前記支持構造のボンドサイトより上にある、半導体デバイス。
【請求項20】
請求項14に記載の半導体デバイスであって、
前記支持構造がリードフレームであり、前記ボンドサイトが前記リードフレームのリードである、半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、半導体デバイスに関し、より詳細には、半導体デバイスにおけるワイヤボールボンディングに関する。
【0002】
半導体パッケージングにおいて、ワイヤボンディングは、半導体ダイを半導体パッケージ内のリードフレーム又は他の要素に電気的に結合するために用いられる。ワイヤボンディングの一つのタイプはボールボンディングである。ワイヤボールボンディングにおいて、電気的フレームオフ(EFO)ワンド(wand)を用いて、ボールが金属配線の一端に形成される。このボールは、半導体ダイ上のボンドパッドにボンドされる。金属配線の他方の端部は、第2のボンド(スティッチボンド)によって、半導体パッケージ内のリードフレーム又は別の要素上のリード又はボンドサイトにボンドされる。ワイヤボンディングは何十年にもの間当業界で良好に機能してきたが、依然として改善が望まれている。所望の改善の1つの分野は、金属間ボンドの態様に関するものである。
【発明の概要】
【0003】
一つの態様において、ワイヤボンディングを用いる半導体デバイスの構成要素を相互接続する方法が提示される。この方法は、アルミニウムワイヤを囲む被覆を有するアルミニウムワイヤの第1の端部にフリーエアボールを生成する工程を含み、被覆はパラジウムを含み、フリーエアボールには実質的に被覆はない。この方法は更に、半導体チップ上のボンドパッドにフリーエアボールをボンドする工程を含み、ボンドパッドはアルミニウム表面層を有し、フリーエアボールは、ボンドパッド上にボールボンドを形成して、実質的に均質のアルミニウム対アルミニウムボンドを形成する。この方法は更に、被覆アルミニウムワイヤの反対の第2の端部を、半導体チップとは離れたボンドパッドにボンドすることを含み、ボンドパッドはパラジウム表面層を有し、被覆アルミニウムワイヤの第2の端部及びボンドパッドは、実質的に均質のパラジウム対パラジウムボンドを形成する。
【0004】
別の態様において、半導体デバイスが、リードフレームと、第1の側及び対向する第2の側を有する半導体ダイとを含む。ダイの第2の側は、半導体ダイがその第1の側にアルミニウムボンドパッドを有する状態でリードフレームに取り付けられる。リードが、パラジウム表面層を有するリードを用いて、半導体ダイに近接してリードフレームに取り付けられる。このデバイスは更に、パラジウム被覆アルミニウム相互接続ワイヤを含み、パラジウム被覆アルミニウム相互接続ワイヤは、第1のボンドが実質的に均質のアルミニウム対アルミニウムボンドであるように第1のボンドを形成するために半導体ダイのアルミニウムボンドパッドにボンドされたフリーエアボールを備えるパラジウム被覆アルミニウムワイヤの第1の端部の上に形成されるボールボンドを有する。パラジウム被覆アルミニウム相互接続ワイヤの第2の端部が、第2のボンドが実質的に均質のパラジウム対パラジウムボンドであるように第2のボンドを形成するためにリードのパラジウム表面層にボンドされる。
【0005】
更に別の態様において、半導体デバイスが、支持構造と、支持構造に取り付けられる半導体ダイと、パラジウム表面層を有するボンドサイトとを含み、半導体ダイは、アルミニウム表面層を有する第1のボンドパッドを有する。ボンドサイトは半導体ダイに近接している。半導体デバイスは更に、半導体ダイ上の第1のボンドパッドを支持構造上のボンドパッドに接続するための被覆アルミニウムワイヤを含む。被覆アルミニウムの上の被覆はパラジウムを含む。被覆アルミニウムワイヤは、その上に形成されたフリーエアボールを有する第1の端部を有し、フリーエアボールは第1のボンドパッドにボンドされ、ボールボンドの形成の間、ボールボンドと第1のボンドパッドとの間のボンドが少なくとも実質的にアルミニウム対アルミニウムボンドであるように、被覆の少なくとも一部がフリーエアボールから除去される。被覆アルミニウムワイヤの第2の端部が、パラジウム対パラジウムボンドが形成されるようにボンドサイトのパラジウム表面層にボンドされる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】例示的な実施例に従った、半導体デバイス内のワイヤボンドの概略断面図である。
【0007】
【0008】
【0009】
【
図2A】ワイヤボンディングプロセスにおけるフリーエアボールの形成を表す概略断面図である。
【
図2B】ワイヤボンディングプロセスにおけるフリーエアボールの形成を表す概略断面図である。
【0010】
【0011】
【0012】
【
図3】例示的な実施例に従った、ワイヤボンディングプロセスにおけるフリーエアボールの概略部分断面図である。
【0013】
【
図4】例示的な実施例に従って、ワイヤボールボンディングを用いて半導体デバイスの構成要素を相互接続する方法のためのフローチャートである。
【0014】
【
図5】例示の実施例に従った、半導体デバイスにおけるワイヤボンドの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
銅及び金ワイヤは、ボールボンドを形成する際に用いられる熱及びその他の要因にもかかわらず望ましい特性を維持する能力があるため、ボールボンディングにおいて用いられる一般的なワイヤ材料である。しかしながら、ボールボンディングにおいて、ワイヤ相互接続は、ワイヤ相互接続がボンドされるボンドパッドとは異なる材料で形成されることが一般的であり、それにより、ワイヤ相互接続とボンドパッドとの間に金属間ボンドが形成される。2つの異なる材料を互いにボンドすることにより、ボンドサイト、インタフェース腐食、金属間形成、又はその他のボンド劣化状態内に、ボンド応力が生じる可能性がある。こういった懸念面は、本明細書において対処される。
【0016】
図1A~
図1Cを参照すると、ワイヤボールボンド102を用いる半導体デバイス100の例示的な実施例が提示されている。半導体デバイス100は、支持構造104、支持構造104に取り付けられる半導体ダイ106、及び、半導体ダイ106と、例えばボンドパッド(例えば、以下に紹介するボンドサイト116)などの半導体ダイ106の外のデバイスとの間の相互接続を提供するための被覆アルミニウムワイヤ108を含む。支持構造104は、いくつかの例示的な実施例において、半導体基板又はリードフレームであり得る。
【0017】
半導体ダイ106は、第1の側110と、対向する第2の側112とを有し、半導体ダイ106の第2の側112は、支持構造104に取り付けられる。被覆アルミニウムワイヤ108は、半導体ダイ106の第1の側110の第1のボンドパッド114を、半導体ダイ106の外にある支持構造104上のボンドサイト116に接続する。ボンドサイト116は、支持構造104上にあってもよく、或いは、その一部の上にあってもよい。上述のように、いくつかの態様において、支持構造104はリードフレームであり得る。支持構造104がリードフレームである場合、ある態様において、半導体ダイ106は、リードフレーム(支持構造104)の第1の部分115上にあり得、ボンドサイト116は、リードフレーム104の一部であるリードとも呼ばれる、第2の部分であり得る。
【0018】
第1のボンドパッド114は、少なくとも1つのアルミニウム表面層118を含む。ある態様において、アルミニウム表面層118はアルミニウム合金であり得る。第1のボンドパッド114は、アルミニウム表面層118と半導体ダイ106との間に拡散障壁層120を更に含み得る。限定的でない例示的な実施例において、拡散障壁層120はチタン窒化物(TiN)である。他の既知の拡散障壁層材料を用いてもよい。他の態様において、第1のボンドパッド114は、全てアルミニウムで、又はアルミニウム合金で形成される。アルミニウムは、半導体ダイ上の少なくとも幾つかのボンドパッドに対して望ましい特性を有するコスト効率の良い導電性材料である傾向がある。
【0019】
ボンドサイト116は、少なくともパラジウム(Pd)表面層122を含む。いくつかの態様において、ボンドサイト116は、支持構造104の必須部分である。更にいくつかの態様において、ボンドサイト116は、支持構造104又はリードフレームに取り付けられるリードである。他の態様において、ボンドサイト116は、支持構造104の表面に取り付けられる(明示的には示されていない)。ボンドサイト116は、パラジウム(Pd)層122の下に、ニッケル(Ni)層124及び銅(Cu)層126を更に含み得る。更にいくつかの態様において、ボンドサイト116が銀めっきを含み得る。ボンドサイト116は、パラジウム層、銅層、ニッケル層、銀層、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0020】
被覆アルミニウムワイヤ108は、パラジウムを含む被覆128によって囲まれるアルミニウムコア127を含む。いくつかの態様において、被覆128は、被覆128がパラジウム・銅被覆であるように、パラジウム及び銅を含む。被覆128は、アルミニウムコア127が、ワイヤボールボンディングプロセスの間に、ヒドロニウム(H+)を吸収し、脆くなったり、酸化したり、又はその他の方式で劣化するのを防止する。被覆アルミニウムワイヤ108は、第1の端部130と、反対の第2の端部132とを有する。被覆アルミニウムワイヤ108の第1の端部130は、半導体ダイ106上の第1のボンドパッド114にボンドされ、被覆アルミニウムワイヤ108の第2の端部132は、ボンドサイト116にボンドされる。
【0021】
図1A~
図1Cを更に参照すると、被覆アルミニウムワイヤ108の第1の端部130は、第1のボンドパッド114にボンドされる、その上に形成されるボールボンド134を有する。ボールボンド134は、フリーエアボール(FAB)135(
図2B)を用いて形成される。フリーエアボール135及び結果として得られるボールボンド134の形成の間、被覆128の少なくとも一部がアルミニウムコア127から除去される。フリーエアボールは、アルミニウムコア127から形成される。換言すれば、被覆128はアルミニウムコア127から除去され、それによってアルミニウムコア127の一部を露出させ、その結果、フリーエアボールの少なくとも一部、及びそのためボールボンド134は、実質的にアルミニウムから形成される。第1のボンド136又はインタフェースが、ここでは実質的にアルミニウムから形成されているボールボンド134と、第1のボンドパッド114のアルミニウム表面層118との間に形成される。第1のボンド136は、実質的に均質のアルミニウム対アルミニウムボンドである。第1のボンド136は実質的に均質のアルミニウム対アルミニウムボンドであるが、金属が実質的に均質のボンドを形成するのに充分に類似している限り、他の適切な金属を用いて、第1のボンドパッド114及びコア127を形成することができる。被覆128を除去し、フリーエアボールを、及びそれに続くボールボンド134を形成するプロセスについて、
図2A~
図2Cに関して以下でより詳細に説明する。
【0022】
被覆アルミニウムワイヤ108の第2の端部132は、ボンドサイト116のパラジウム表面層122にボンドされて、第2のボンド138を形成する。被覆アルミニウムワイヤ108を囲むパラジウム被覆128は、第2のボンド138が実質的に均質のパラジウム対パラジウムボンドであるように、第2のボンド138が形成されるときにそのままである。いくつかの態様において、第2のボンド138は、原子拡散が生じるスティッチボンドである。更に他の態様において、第2のボンド138はウェッジボンドである。第2のボンド138は実質的に均質のパラジウム対パラジウムボンドであるが、実質的に均質のボンドを形成するのに充分に類似した金属である限り、ボンドサイト116及び被覆128を形成するために、又は、ボンドサイト116及び被覆128において、他の適切な金属を用いることもできる。
【0023】
半導体デバイス100は、モールディング化合物146を更に含み得る。モールディング化合物146は、半導体ダイ106、被覆アルミニウムワイヤ108、第1のボンド136、及び第2のボンド138の少なくとも一部を覆い得る。モールディング化合物146は、任意の適切な絶縁材料であり得る。
【0024】
半導体デバイス100は、被覆アルミニウムワイヤ108と半導体ダイ106との間の第1のボンド136が実質的に均質のアルミニウム対アルミニウムボンドであることを可能にすると同時に、被覆アルミニウムワイヤ108とボンドサイト116との間の第2のボンド138が実質的に均質のアルミニウムワイヤ対パラジウムであることを可能にする、被覆されたパラジウム108を提供する。アルミニウム対アルミニウムの第1のボンド136及びパラジウム対パラジウムの第2のボンド138などの均質の金属性ボンドは、ワイヤのボンドパッドクラック、又は、高ボンディング応力によるボンドパッドからの持ち上がりの危険性を低減し、ボンドの信頼性及び寿命を増大させ、異質の金属間ボンドと比較した場合、ワイヤとボンドパッドとの間の電流及び熱伝達の効率を増大させる。
【0025】
ここで、
図2A~
図2Dを参照すると、ワイヤボールボンディングプロセスにおいてフリーエアボール135を形成するための概略図が提示されている。被覆アルミニウムワイヤ108の第1の端部130は、被覆アルミニウムワイヤ108がキャピラリ140の先端144を越えて距離D1延在するまで、キャピラリ140を通してフィードされる(
図2A)。ある態様において、被覆アルミワイヤ108の直径は、約0.7~1.3μmである。更にいくつかの態様において、被覆アルミニウムワイヤ108がキャピラリ140の先端144を越えて延在する距離D1は、8~15ミル(mils)であり得る。いくつかの態様において、フリーエアボール134の直径は約50マイクロメートルである。
【0026】
充分な量の被覆アルミニウムワイヤ108がキャピラリ140の先端144を越えて延在すると、電気的フレームオフ(EFO)ワンド142が被覆アルミニウムワイヤ108の第1の端部138に適用されて、フリーエアボール135を形成する。フリーエアボール135の形成の間、アルミニウムコア127は、パラジウム被覆128を除去することによって露出される。すなわち、ある態様において、パラジウム被覆128は、フリーエアボールの形成の間、第1の端部130から除去されるか、その他の方式で離れるよう移動される。パラジウム被覆128は、第1の例では、アルミニウムコア127が、ワイヤボールボンディングプロセスにおけるフリーエアボール135の形成の間に、ヒドロニウム(H
+)148を吸収し、脆くなったり、酸化したり、又はその他の方式で劣化するのを防止するために、存在する。ヒドロニウム148は、大気中に存在し、アルミニウムによって吸収されると、アルミニウム中にボイドを生成し得る。
図2Bは、フリーエアボール135によるヒドロニウム148の吸収がないこと、及びそのため、アルミニウムコア127を保護するために被覆128が存在しなかった場合に存在し得るフリーエアボール135におけるボイドがないことを図示する。
【0027】
フリーエアボール134は、被覆アルミニウムワイヤ108のアルミニウムコア127から形成される。電気的フレームオフワンド142は、フリーエアボール134が形成されるときに、フリーエアボール134の少なくとも一部が実質的にアルミニウムから形成されるように、パラジウム被覆128を除去するか、さもなければ、被覆アルミニウムワイヤ108の第1の端部130から離れるように移動させるために用いられる。ある態様において、パラジウム被覆128は、フリーエアボール134の形成の間、第1の端部130から除去されるか、さもなければ離れるように移動される。フリーエアボール134が実質的にアルミニウムで形成されているので、フリーエアボール134と第1のボンドパッド114との間の第1のボンド136は、均質のアルミニウム対アルミニウムボンドである(第1のボンド136は
図1Aに示されている)。
【0028】
電気的フレームオフワンド142は、被覆アルミニウムワイヤ108を、フリーエアボール形成において典型的に用いられるよりも高い電流に晒し得る。ある態様において、電気的フレームオフワンド142は、約150~170mAのEFO電流を放出する。更にいくつかの態様において、EFO電流は約160mAである。いくつかの態様において、電気的フレームオフワンド142と被覆アルミニウムワイヤ108の第1の端部130との間のEFOギャップD2は、約20~30ミル(mils)である。更にいくつかの態様において、EFOギャップD2は約25ミル(mils)である。ある態様において、電気的フレームオフワンド142は、約900~1000μsのEFO発射(fire)時間を有する。フリーエアボール134の形成は、ある態様において、アルミニウムが酸化するのを防止するのを助けるために不活性雰囲気中で行われ得る。非限定的な実施例において、不活性雰囲気は、約95パーセント窒素及び5パーセント水素で構成されてもよい。更にいくつかの態様において、不活性雰囲気は100パーセント窒素であり得る。
【0029】
図3は、例示的な実施例に従った、ワイヤボンディングプロセスにおけるフリーエアボール234の概略部分断面図である。フリーエアボール234は、フリーエアボール234の第1の部分250がパラジウム被覆228の少なくともいくらかを維持することを除いて、
図2Bに表されるフリーエアボール134と同様である。いくつかの態様において、フリーエアボール234の第1の部分250は、フリーエアボール234の第2の部分252よりも多くのパラジウム被覆228を有する。更にいくつかの態様において、パラジウム被覆228は、被覆アルミニウムワイヤ208のアルミニウムコア227の上よりも、フリーエアボール234の第1の部分250の上を厚くし得る。別の態様において、パラジウム被覆228は、フリーエアボール234の第1の部分250上の厚みが、被覆アルミニウムワイヤ208のアルミニウムコア227の上と同じであり得る。例示的な実施例において、フリーエアボール234の第2の部分252にはパラジウム被覆228がない。フリーエアボール234は、
図2A~
図2Dに関連して上述したものと同じプロセス及びパラメータを用いて形成され得る。
【0030】
図4は、例示的な実施例に従って、ワイヤボールボンディングを用いて半導体デバイスの構成要素を相互接続する方法のためのフローチャートである。工程302において、アルミニウムワイヤ108を囲む被覆128を有するアルミニウムワイヤ108の第1の端部130において、フリーエアボール134が作成される。被覆128はパラジウムを含む。フリーエアボール134には実質的に被覆128がないように形成され、そのため、パラジウムを実質的に含まない。工程304において、フリーエアボール134は、半導体ダイ106上の第1のボンドパッド114にボンドされる。第1のボンドパッド114はアルミニウム表面層118を含む。フリーエアボール134及び第1のボンドパッド114は、実質的に均質のアルミニウム対アルミニウムボンドである第1のボンド136を形成する。工程306において、パラジウムで被覆された被覆アルミニウムワイヤ108の第2の端部132は、半導体ダイ106から離れたスティッチボンド又はウェッジボンドによってボンドサイト116にボンドされる。ボンドサイト116はパラジウム表面層122を含む。被覆アルミニウムワイヤ108の第2の端部132と、ボンドサイト116とは、実質的に均質のパラジウム対パラジウムボンドである第2のボンド138を形成する。
【0031】
図5は、例示の実施例に従った、ワイヤボールボンド402を用いる半導体デバイス400の概略断面図である。半導体デバイス400は、電気的絶縁基板404、その上に支持される半導体チップ406、及び、半導体チップ406とボンドパッド(例えば、以下に紹介する第2の複数コンタクトパッド416の1つ)などの半導体チップ406の外にあるデバイスとを電気的に接続するための被覆アルミニウムワイヤ408を含む。明瞭化のため、半導体デバイス400のすべての態様が示されているわけではないことに留意されたい。例えば、絶縁基板404におけるビアは示されていない。
【0032】
半導体チップ406は、能動表面410と受動表面412とを有し、受動表面412は、接着層415を用いて基板404の第1の表面413に取り付けられる。能動表面410は、集積回路と、少なくともアルミニウム又はアルミニウム合金表面層を含む第1の複数のコンタクトパッド414とを含む。
【0033】
被覆アルミニウムワイヤ408は、半導体チップ306上の第1の複数のコンタクトパッド414を、第2の複数のコンタクトパッド416に接続する。第2の複数のコンタクトパッド416は、半導体チップ406に横方向に近接する基板404の第1の表面413上にある。第2の複数のコンタクトパッド416は、少なくともパラジウム表面層を含む。
【0034】
被覆アルミニウムワイヤ408は、パラジウム被覆428によって囲まれたアルミニウムコア427を含む。いくつかの態様において、パラジウム被覆428は銅を更に含み得る。被覆アルミニウムワイヤ408は、第1の端部430と、反対の第2の端部432とを有する。第1の端部430は、半導体チップ406上の第1の複数のコンタクトパッド414に接合され、第2の端部432は、第2の複数のコンタクトパッド416にボンドされる。
【0035】
それぞれの場合において、被覆アルミニウムワイヤ408の第1の端部430上に形成される、アルミニウムのフリーエアボール(FAB)434が、第1の複数のコンタクトパッド414のうちの1つに取り付けられる。アルミニウムのフリーエアボール434の形成の間、アルミニウムのフリーエアボール434がアルミニウムコア427の一部から形成されるように、パラジウム被覆428が除去される。第1のボンド436が、アルミニウムのフリーエアボール434と第1の複数のコンタクトパッドのアルミニウム表面層との間に形成され、第1のボンド436は、実質的に均質のアルミニウム対アルミニウムボンドである。被覆428を除去し、フリーエアボール434を形成するプロセスは、
図2A~
図2Dに関して上述したプロセスと同様である。
【0036】
被覆アルミニウムワイヤ412の第2の端部432は、第2の複数のコンタクトパッド416のパラジウム表面層にボンドされて、実質的に均質のパラジウム対パラジウムボンドである第2のボンド428を形成する。パラジウム対パラジウムボンドは、
図1Cに関連して記載したものに類似の方式で形成される。いくつかの態様において、第2のボンド438はスティッチボンドである。半導体デバイス400は、被覆アルミニウムワイヤ408と半導体チップ406との間の実質的に均質のアルミニウム対アルミニウムの第1のボンド436を可能にすると同時に、被覆アルミニウムワイヤ408と第2の複数のコンタクトパッド416との間の実質的に均質のパラジウム対パラジウムの第2のボンド438を可能にする、被覆アルミニウムワイヤ408を提供する。
【0037】
いくつかの態様において、基板404は、基板の第2の表面417上に配置される第3の複数のコンタクトパッド420を含む。更に或る態様において、複数の相互接続要素426が、第3の複数のコンタクトパッド420に接続される。モールディング化合物446が、半導体チップ406、被覆アルミニウムワイヤ408、第1のボンド436、及び第2のボンド438の少なくとも一部を覆い得る。
【0038】
半導体デバイスは、ウェハ上に形成される多くの半導体デバイスのうちの1つとし得ることが理解されるべきである。また、半導体デバイスがウェハから単体化又は分離されている場合、半導体デバイスは、半導体パッケージ又は個々の半導体パッケージと称され得ることを理解されたい。ウェハ上のスクライブラインに沿ってウェハを鋸引きすることにより、半導体デバイス又は半導体パッケージは単体化又は分離され得る。スクライブラインは、ウェハ上の隣り合うデバイス間にある。
【0039】
一態様において、半導体チップ又はダイがリードフレームに取り付けられる。この取り付けは、接着材、導電性接着材又はんだペースト、はんだワイヤ、はんだプリフォーム、又は他の手法を用いて、シリコンダイ又はチップをリードフレーム又はその他の基板に取り付けることによって達成され得る。一態様において、実質的に均質のアルミニウム対アルミニウムボールボンド及び実質的に均質のパラジウム対パラジウムボンドは、モールディング又は被覆化合物で被覆される。モールディング化合物は、任意の適切な被覆化合物、例えば、シリカ充填材で満たされたエポキシ樹脂であり得る。
【0040】
本明細書で説明されるワイヤボールボンディング手法は、様々な構成のために用いられ得ることを理解されたい。ワイヤボールボンディング手法がどのように用いられ得るかの幾つかの非限定的な例には、リードフレームへの半導体ダイの相互接続、基板への半導体ダイ、更には、別の半導体ダイにおける1つの半導体ダイが含まれる。
【0041】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。