(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】皮膚用乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/894 20060101AFI20221102BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20221102BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20221102BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221102BHJP
A61K 8/895 20060101ALI20221102BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20221102BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/04
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/895
A61K8/92
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2016189769
(22)【出願日】2016-09-28
【審査請求日】2019-03-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】原 武史
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】木村 敏康
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-103885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/894
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、下記成分(B)、下記成分(C)、並びに、下記成分(D)及び下記成分(E)を含有し、
前記成分(D)の含有量が、皮膚用乳化組成物100質量%に対して0.5~30質量%であり、前記成分(E)の含有量が、皮膚用乳化組成物100質量%に対して
0.3~3質量%であり、
前記成分(D)として
1,3-プロパンジオールとともにグリセリン類を含み、成分(D)中の
1,3-プロパンジオールの含有量が、成分(D)100質量%に対して
20~80質量%であり、成分(D)中のグリセリン類の含有量が、成分(D)100質量%に対して
20~80質量%であ
り、
前記成分(E)としてマカデミアナッツ油及びシア脂を含むことを特徴とする皮膚用乳化組成物。
成分(A):ポリエーテル変性シリコーン
成分(B):(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー
成分(C):ダイマー酸エステル
成分(D):多価アルコール
成分(E):植物油
【請求項2】
前記成分(A)がPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーであり、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンと(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーの質量比(前者/後者)が0.1~20である、請求項1に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項3】
前記成分(C)がダイマージリノール酸ダイマージリノレイルである、請求項1又は2に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項4】
前記成分(A)の含有量が、皮膚用乳化組成物100質量%に対して0.1~20質量%であり、前記成分(B)の含有量が、皮膚用乳化組成物100質量%に対して0.05~6質量%であり、前記成分(C)の含有量が、皮膚用乳化組成物100質量%に対して0.01~3質量%である、請求項1~3の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に塗布して用いられる乳化組成物(皮膚用乳化組成物)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な界面活性剤を用いた皮膚用乳化組成物と比べて、ポリエーテル変性シリコーンを乳化剤として用いた皮膚用乳化組成物は、べたつき感やヌルつき感がなく、みずみずしく軽い感触を有し、保存安定性に優れた効果を奏することが知られており、従来から様々な試みがなされている(特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-230923号公報
【文献】特開2014-162724号公報
【文献】特開2015-221775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリエーテル変性シリコーンを乳化剤として用いた皮膚用乳化組成物において、更なる保湿効果を付与すべく、多価アルコールや油剤を配合すると、塗布時の肌上での延展性が悪化することがあるという問題がある。また、べたつき感やヌルつき感が生じ易くなり、本来のみずみずしく軽い感触が損なわれることがあるという問題もある。
【0005】
従って、本発明の目的は、塗布時の肌上での延展性が良好で、且つ、従来のポリエーテル変性シリコーンを用いた乳化組成物に比べてさらなる保湿効果がある皮膚用乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、成分(A):ポリエーテル変性シリコーンと、成分(B):(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーと、成分(C):ダイマー酸エステルと、成分(D):多価アルコール及び/又は成分(E):植物油と、を配合した皮膚用乳化組成物によれば、塗布時の肌上での延展性が良好で、且つ、従来のポリエーテル変性シリコーンを用いた乳化組成物に比べてさらなる保湿効果がある皮膚用乳化組成物が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記成分(A)、下記成分(B)、下記成分(C)、並びに、下記成分(D)及び/又は下記成分(E)を含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物を提供する。
成分(A):ポリエーテル変性シリコーン
成分(B):(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー
成分(C):ダイマー酸エステル
成分(D):多価アルコール
成分(E):植物油
【0008】
上記成分(A)は、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び/又は(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーであることが好ましい。
【0009】
上記成分(C)は、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルであることが好ましい。
【0010】
上記皮膚用乳化組成物は、上記成分(D)を含み、上記成分(D)は少なくとも1,3-プロパンジオールを含むことが好ましい。
【0011】
上記皮膚用乳化組成物は、上記成分(D)及び上記成分(E)を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮膚用乳化組成物によれば、塗布時の肌上での延展性が良好で、且つ、従来のポリエーテル変性シリコーンを用いた乳化組成物に比べてさらなる保湿効果があるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の皮膚用乳化組成物は、ポリエーテル変性シリコーン、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ダイマー酸エステル、並びに、多価アルコール及び/又は植物油を少なくとも含む。なお、本明細書において、上記ポリエーテル変性シリコーンを「成分(A)」、上記(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーを「成分(B)」、上記ダイマー酸エステルを「成分(C)」、上記多価アルコールを「成分(D)」、上記植物油を「成分(E)」と称する場合がある。
【0014】
すなわち、本発明の皮膚用乳化組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、並びに、成分(D)及び/又は成分(E)を少なくとも含む。なお、本発明の皮膚用乳化組成物は、成分(D)及び成分(E)のうち、いずれか一方のみを含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよい。本発明の皮膚用乳化組成物は、上記成分(A)~(E)以外の成分を含んでいてもよい。また、本発明の皮膚用乳化組成物に含まれる各成分、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、及び、成分(A)~(E)以外の成分等の各成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0015】
また、本明細書において、本発明の皮膚用乳化組成物に含まれる各成分(例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、成分(A)~(E)以外の成分等)の含有量は、それぞれ、皮膚用乳化組成物中の合計の含有量が100質量%以下となるように、記載の範囲内から適宜選択することができる。
【0016】
[成分(A):ポリエーテル変性シリコーン]
上記成分(A)は、シロキサン骨格(シリコーン鎖;直鎖タイプのシリコーン鎖、又は分岐タイプのシリコーン鎖)とポリエーテル基(ポリエーテル鎖)を含むシリコーン化合物である。成分(A)は、主鎖内にポリエーテル鎖とシリコーン鎖を含むブロック共重合体タイプや末端変性タイプのシリコーン化合物であってもよいし、シロキサン骨格の側鎖としてポリエーテル基が結合した側鎖変性タイプのシリコーン化合物であってもよいし、シロキサン骨格をポリエーテル鎖で架橋している架橋タイプのシリコーン化合物であってもよい。中でも、乳化組成物の乳化安定性の観点から、シロキサン骨格の側鎖及び/又は末端にポリエーテル基を有するシリコーン化合物、シロキサン骨格をポリエーテル鎖で架橋しているシリコーン化合物を用いることが好ましい。
【0017】
上記シロキサン骨格(直鎖タイプのシリコーン鎖又は分岐タイプのシリコーン鎖)としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が挙げられる。中でも、ジメチルポリシロキサン、ポリジメチルシロキシエチルジメチコンが好ましい。上記シロキサン骨格は、1種のみを含むものであってもよいし、2種以上を含むものであってもよい。
【0018】
上記ポリエーテル基(ポリエーテル鎖)としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等のポリアルキレン基が挙げられる。中でもポリオキシエチレン基が好ましい。成分(A)におけるオキシアルキレン(例えば、オキシエチレン)の平均付加モル数は、特に限定されないが、5~30が好ましく、より好ましくは8~20である。上記ポリエーテル基は、1種のみを含むものであってもよいし、2種以上を含むものであってもよい。
【0019】
中でも、成分(A)は、乳化組成物の乳化安定性が向上する観点から、直鎖タイプのシリコーン鎖又は分岐タイプのシリコーン鎖を有するポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル鎖で架橋しているポリエーテル変性シリコーンであることが好ましく、より好ましくは、分岐タイプのシリコーン鎖の側鎖にポリエーテル鎖を有するポリエーテル変性シリコーン、直鎖タイプのシリコーン鎖をポリエーテル鎖で架橋しているポリエーテル変性シリコーンである。
【0020】
上記分岐タイプのシリコーン鎖の側鎖にポリエーテル鎖を有するポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が挙げられる。上記PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第16版,第2巻,Personal Care Products Council,2016年,p.2578):PEG-9 POLYDIMETHYLSILOXYETHYL DIMETHICONEで表記される化合物である。上記ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンは、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第16版,第2巻,Personal Care Products Council,2016年,p.1940):LAURYL PEG-9 POLYDIMETHYLSILOXYETHYL DIMETHICONEで表記される化合物である。
【0021】
上記直鎖タイプのシリコーン鎖をポリエーテル鎖で架橋しているポリエーテル変性シリコーンとしては、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー等が挙げられる。上記(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーは、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第16版,第1巻,Personal Care Products Council,2016年,p.1097-1098):DIMETHICONE/PEG-10/15 CROSSPOLYMERで表記される化合物である。
【0022】
成分(A)の市販品としては、例えば、商品名「KF-6028」、商品名「KF-6028P」(以上、HLB=4.0、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業(株)製)、商品名「KF-6038」(HLB=3.0、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業(株)製)、商品名「SH3773M」(HLB=8、PEG-12ジメチコン、東レ・ダウコーニング(株)製)、商品名「SH3775M」(HLB=5、PEG-12ジメチコン、東レ・ダウコーニング(株)製)、商品名「SH3749」(HLB=8、PEG/PPG-20/20ジメチコン、東レ・ダウコーニング(株)製)、商品名「SS2910」(HLB=4、PEG-10ジメチコン、東レ・ダウコーニング(株)製)、商品名「BY25-339」(HLB=8.5、PEG/PPG-30/10ジメチコン、東レ・ダウコーニング(株)製)、商品名「KF-6012」(HLB=7、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、信越化学工業(株)製)、商品名「KF-6015」(HLB=4.5、PEG-12ジメチコン、信越化学工業(株)製)、商品名「KF-6016」(HLB=4.5、PEG-9メチルエーテルジメチコン、信越化学工業(株)製)、商品名「KF-6017」(HLB=4.5、PEG-10ジメチコン、信越化学工業(株)製)、商品名「KSG-210」、商品名「KSG-240」(以上、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0023】
本発明の皮膚用乳化組成物において、成分(A)としては、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーが好ましく、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーの併用が特に好ましい。上記併用の場合、乳化組成物の乳化安定性が著しく向上し、また、乳化組成物中の水溶性物質(水、低級アルコール、多価アルコール等)の量が少なくても乳化安定性に優れる傾向がある。
【0024】
成分(A)として、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーを併用する場合、その質量比[前者/後者]は、特に限定されないが、0.1~20が好ましく、より好ましくは0.5~15、さらに好ましくは1~10、特に好ましくは1.3~8である。上記質量比が上記範囲内であると、乳化組成物の乳化安定性がさらに著しく向上し、また、乳化組成物中の水溶性物質の量が少なくても乳化安定性により優れる傾向がある。
【0025】
本発明の皮膚用乳化組成物中の成分(A)の含有量は、特に限定されないが、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%に対して、0.1~20質量%が好ましく、より好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは1.5~5質量%である。上記含有量が0.1質量%以上であると、乳化安定性がより一層向上する。一方、上記含有量が20質量%以下であると、使用感がより一層向上することがある。上記成分(A)の含有量は、本発明の皮膚用乳化組成物中の全ての成分(A)の合計の含有量である。
【0026】
成分(A)としてPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び/又は(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーを用いる場合、成分(A)中のPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び/又は(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーの含有量は、特に限定されないが、成分(A)100質量%に対して、50質量%以上(例えば50~100質量%)が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。上記含有量が50質量%以上であると、乳化組成物の乳化安定性がさらに著しく向上し、また、乳化組成物中の水溶性物質の量が少なくても乳化安定性により優れる傾向がある。上記含有量は、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン及び(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーのうちの、一方のみを使用する場合は一方の含有量であり、両方を使用する場合は両方の合計の含有量である。
【0027】
[成分(B):(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー]
上記成分(B)である(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーは、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第16版,第1巻,Personal Care Products Council,2016年,p.1102-1103):DIMETHICONE/VINYL DIMETHICONE CROSSPOLYMERで表記される化合物であり、ビニルジメチルポリシロキサンで架橋されたジメチルポリシロキサンである共重合体である。
【0028】
成分(B)の市販品としては、例えば、商品名「KSG-15」、商品名「KSG-16」、商品名「KSG-19」、商品名「KSG-1510」、商品名「KSG-1610」、商品名「KSG-016F」(以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0029】
本発明の皮膚用乳化組成物中の成分(B)の含有量は、特に限定されないが、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%に対して、0.05~6質量%が好ましく、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.3~3質量%である。上記含有量が0.05質量%以上であると、粘度が向上し、皮膚用乳化組成物としてより良好な粘度となる傾向がある。さらに、塗布時の肌上への延展性がより良好となり、また、べたつき感やヌルつき感がより抑制され、サラサラとした感触をより発揮できることがある。一方、上記含有量が6質量%以下であると、粘度が上昇しすぎるのを抑制し、塗布時の肌上での延展性がより良好となる。上記成分(B)の含有量は、本発明の皮膚用乳化組成物中の全ての成分(B)の合計の含有量である。
【0030】
[成分(C):ダイマー酸エステル]
上記成分(C)は、ダイマー酸のエステルであり、不飽和脂肪酸の重合によって得られる二塩基酸のエステルである。上記不飽和脂肪酸としては、例えば、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸等が挙げられる。また、エステル部に用いられるアルコールとしては、例えば、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール等が挙げられる他、ヒマシ油等を用いることもできる。
【0031】
成分(C)としては、特に限定されないが、例えば、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、ダイマージリノール酸ジグリセリンイソステアレート等が挙げられる。中でも、塗布時の肌上での延展性が特に良好となる観点から、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルが好ましい。
【0032】
成分(C)の市販品としては、例えば、商品名「LUSPLAN PI-DA」(ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、日本精化(株)製)、商品名「LUSPLAN DD-DA5」、商品名「LUSPLAN DD-DA7」、商品名「LUSPLAN SR-DM4」(以上、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、日本精化(株)製)、商品名「Plandool-S」、商品名「Plandool-H」(以上、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、日本精化(株)製)、商品名「リソカスタ DA-H」、商品名「リソカスタ DA-L」(以上、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、高級アルコール工業(株)製)、商品名「ハイルーセントISDA」(ダイマージリノール酸ジグリセリンイソステアレート、高級アルコール工業(株)製)等が挙げられる。
【0033】
本発明の皮膚用乳化組成物中の、成分(C)の含有量は、特に限定されないが、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%に対して、0.01~3質量%が好ましく、より好ましくは0.1~2質量%、さらに好ましくは0.2~1.5質量%である。上記含有量が0.01質量%以上であると、塗布時の肌上での延展性がより良好となる傾向がある。上記含有量が3質量%以下であると、べたつき感やヌルつき感がより抑制される傾向がある。上記成分(C)の含有量は、本発明の皮膚用乳化組成物中の全ての成分(C)の合計の含有量である。特に、本発明の皮膚用乳化組成物中のダイマージリノール酸ダイマージリノレイルの含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0034】
[成分(D):多価アルコール]
上記成分(D)は、多価アルコールである。成分(D)としては、特に限定されないが、例えば、グリコール、グリセリン類、糖アルコール等が挙げられる。上記グリコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。上記グリセリン類としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。上記糖アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ソルビトール、マルチトール、トレハロース等が挙げられる。中でも、グリコール、グリセリン類が好ましい。
【0035】
本発明の皮膚用乳化組成物において、成分(D)としては、炭素数6以下のグリコールを少なくとも含むことが好ましく、特に、1,3-プロパンジオールを少なくとも含むことが好ましい。すなわち、本発明の皮膚用乳化組成物は、成分(D)を含むことが好ましく、成分(D)が炭素数6以下のグリコールを少なくとも含むことがより好ましく、成分(D)が少なくとも1,3-プロパンジオールを含むことがさらに好ましい。この場合、本発明の皮膚用乳化組成物は、塗布時の延展性及び保湿効果に優れ、且つ、これらの効果を維持しながら、べたつき感やヌルつき感がなく、サラサラとした使用感を発揮できる傾向がある。
【0036】
本発明の皮膚用乳化組成物において、成分(D)としては、炭素数6以下のグリコール(特に、1,3-プロパンジオール)とともに、グリセリン類を含むことがさらに好ましい。この場合、本発明の皮膚用乳化組成物は、べたつき感やヌルつき感がなく、サラサラとした使用感を発揮しながら、保湿効果により一層優れる傾向がある。
【0037】
本発明の皮膚用乳化組成物中が成分(D)を含む場合、本発明の皮膚用乳化組成物中の、成分(D)の含有量は、特に限定されないが、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%に対して、0.5~30質量%が好ましく、より好ましくは1~25質量%、さらに好ましくは2~20質量%である。上記含有量が0.5質量%以上であると、保湿効果がより向上する。上記含有量が30質量%以下であると、塗布時の肌上への延展性がより良好となる傾向がある。また、成分(D)として炭素数6以下のグリコールを含む場合、上記含有量が上記範囲内であると、上記の効果に加え、べたつき感やヌルつき感がより抑制され、サラサラとした使用感をより一層発揮できる傾向がある。上記成分(D)の含有量は、本発明の皮膚用乳化組成物中の全ての成分(D)の合計の含有量である。
【0038】
成分(D)中の炭素数6以下のグリコール(特に、1,3-プロパンジオール)の含有量は、特に限定されないが、成分(D)100質量%に対して、10質量%以上(例えば10~100質量%)が好ましく、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~70質量%、特に好ましくは40~60質量%である。上記含有量が10質量%以上であると、本発明の皮膚用乳化組成物は、塗布時の延展性及び保湿効果に優れ、且つ、これらの効果を維持しながら、べたつき感やヌルつき感がなく、サラサラとした使用感をより一層発揮できる傾向がある。
【0039】
成分(D)として炭素数6以下のグリコールとともにグリセリン類を含む場合、成分(D)中のグリセリン類の含有量は、特に限定されないが、成分(D)100質量%に対して、10~90質量%が好ましく、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~70質量%、特に好ましくは40~60質量%である。上記含有量が上記範囲内であると、本発明の皮膚用乳化組成物は、べたつき感やヌルつき感がなく、サラサラとした使用感を発揮しながら、保湿効果により一層優れる傾向がある。
【0040】
[成分(E):植物油]
上記成分(E)は、植物油である。成分(E)としては、特に限定されないが、例えば、マカデミアナッツ油、ユーカリ油、ヤシ油、アボカド油、サフラワー油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ククイナッツ油、シア脂(シアバター)、アーモンド油、ヒマワリ油、ローズヒップ油、オリーブスクワラン、カメリアオイル、キウイフルーツシード油、ツバキ油、杏仁油、ゴマ油、大豆油、ホホバ油、ヒマシ油、ヘーゼルナッツ油、メドホーム油、ハッカ油、カロットオイル、これらの水素添加物(例えば、水素添加ヒマシ油、水素添加ホホバ油、水素添加パーム油、水素添加アボガド油、水素添加大豆油等)等が挙げられる。中でも、塗布時の肌馴染みを高め、保湿効果をより向上させる観点から、マカデミアナッツ油、シア脂、ホホバ油、水素添加ホホバ油、水素添加パーム油が好ましい。
【0041】
成分(E)の市販品としては、例えば、商品名「クロピュア マカダミア」(マカデミアナッツ油、クローダジャパン(株)製)、商品名「スーパーMCオイル」(マカデミアナッツ油、日興リカ(株)製)、商品名「NIKKOL マカデミアンナッツ油」(マカデミアナッツ油、日光ケミカルズ(株)製)、商品名「精製マカデミア油」(マカデミアナッツ油、日油(株)製)、商品名「クロピュア SB」、商品名「クロピュア リキッド ベジラン」(以上、シア脂、クローダジャパン(株)製)、商品名「シアバター RF」(シア脂、高級アルコール工業(株)製)、商品名「エコオイル RS」(ホホバ油、高級アルコール工業(株)製)、商品名「クロピュア ホホバ」(ホホバ油、クローダジャパン(株)製)、商品名「NIKKOL ホホバワックス」(水素添加ホホバ油、日光ケミカルズ(株)製)、商品名「NIKKOL Trifat P-52」(水素添加パーム油、日光ケミカルズ(株)製)、商品名「ノムコート PHS」(水素添加パーム油、日清オイリオグループ(株)製)等が挙げられる。
【0042】
本発明の皮膚用乳化組成物が成分(E)を含む場合、本発明の皮膚用乳化組成物中の、成分(E)の含有量は、特に限定されないが、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%に対して、0.1~5質量%が好ましく、より好ましくは0.3~3質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%である。上記含有量が0.1質量%以上であると、塗布時の肌馴染みがより高くなり、また、保湿効果がより向上する傾向がある。上記含有量が5質量%以下であると、べたつき感やヌルつき感がなく、塗布時の肌上への延展性がより良好となる傾向がある。上記成分(E)の含有量は、本発明の皮膚用乳化組成物中の全ての成分(E)の合計の含有量である。
【0043】
[水]
本発明の皮膚用乳化組成物は水を含むことが好ましい。上記水は、特に限定されないが、精製水が好ましい。本発明の皮膚用乳化組成物中の、水の含有量は、特に限定されないが、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%に対して、30~70質量%が好ましく、より好ましくは40~65質量%、さらに好ましくは45~60質量%である。
【0044】
[その他の成分]
本発明の皮膚用乳化組成物は、上記成分(A)~(E)や水以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。上記その他の成分しては、特に限定されず、例えば、化粧品や医薬部外品に通常用いられる成分等が挙げられる。具体的には、例えば、エタノール等の低級アルコール;高級アルコール、高級脂肪酸、成分(A)及び成分(B)以外のシリコーン油、成分(C)以外のエステル油、炭化水素油等の油性成分;ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム等の増粘剤;グリチルリチン酸及びその塩等の抗炎症剤;メントール等の清涼剤;リン酸及びその塩類、クエン酸及びその塩類、乳酸及びその塩類、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のpH調整剤;香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;金属イオン封鎖剤;被膜形成性高分子化合物;粉体;色素;顔料;ビタミン類;アミノ酸類;収斂剤;美白剤;動植物抽出物;酸;アルカリ等が挙げられる。なお、上記その他の成分からは、上記成分(A)~(E)に含まれるものは除かれるものとする。
【0045】
上記高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0046】
上記高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0047】
上記成分(A)及び成分(B)以外のシリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等のジメチルシリコーン油;メチルフェニルポリシロキサン等のメチルフェニルシリコーン油;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン(但し、成分(A)に該当するものを除く);メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノール等が挙げられる。中でも、ジメチルシリコーン油、環状シリコーン油が好ましい。
【0048】
本発明の皮膚用乳化組成物がシリコーン油を含む場合、本発明の皮膚用乳化組成物中の、シリコーン油の含有量は、特に限定されないが、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%に対して、5~35質量%が好ましく、より好ましくは7~32質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。上記含有量が上記範囲内であると、塗布時及び塗布後の肌のべたつき感がより抑制される傾向がある。
【0049】
上記成分(C)以外のエステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸プロピレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、アジピン酸ジイソプロピル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット等が挙げられる。
【0050】
本発明の皮膚用乳化組成物が成分(C)以外のエステル油を含む場合、本発明の皮膚用乳化組成物中の、成分(C)以外のエステル油の含有量は、特に限定されないが、製剤安定性の観点から、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%に対して、0.1~15質量%が好ましく、より好ましくは1~10質量%である。
【0051】
上記炭化水素油としては、例えば、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等が挙げられる。
【0052】
上記界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びこれらのアルキレンオキシド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロール及びその誘導体、ポリオキシエチレンラノリン及びその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類等のノニオン界面活性剤;高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸及びその塩、N-アシルサルコシン及びその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩等のアニオン界面活性剤;アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有第3級アミン塩等のアミン塩、モノアルキル型第4級アンモニウム塩、ジアルキル型第4級アンモニウム塩、トリアルキル型第4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型第4級アンモニウム塩等のアルキル第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等の環式第4級アンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム等のカチオン界面活性剤;アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤等が挙げられる。中でも、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0053】
本発明の皮膚用乳化組成物は、塗布時の肌上での延展性が良好で、且つ保湿効果に優れる観点から、油中水型[W/O型]([W/Si型])であることが好ましい。
【0054】
本発明の皮膚用乳化組成物は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、ディスパーミキサーで攪拌し、各成分を均一化する方法等が挙げられる。
【0055】
本発明の皮膚用乳化組成物は、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨等として用いられる。具体的には、フェイスクリーム(保湿用フェイスクリーム、マッサージクリーム等)、ボディクリーム(保湿用ボディクリーム、マッサージクリーム、デオドラントクリーム等)、ハンドクリーム等に好ましく用いられる。
【0056】
本発明の皮膚用乳化組成物を適用する部位としては、特に限定されず、例えば、顔(額、目元、目じり、頬、口元等)、身体(腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中等)等が挙げられる。中でも、特に好ましくは身体である。本発明の皮膚用乳化組成物は、身体用の皮膚用乳化組成物(特に、ハンドクリーム)であることが好ましい。
【0057】
本発明の皮膚用乳化組成物は、界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン[成分(A)]を用いて乳化した乳化組成物(特に、W/Si型の乳化組成物)であることにより、軽い感触(サラサラとした使用感)が得られる。さらに、特定の架橋型シリコーン化合物である(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー[成分(B)]により増粘されており、適度な粘度とすることができる。そして、多価アルコール[成分(D)]や植物油[成分(E)]を用いることによって、乳化組成物の保湿効果が向上する。
【0058】
ここで、界面活性剤としてポリエーテル変性シリコーンを用いた乳化組成物の場合、通常は、多価アルコールや植物油を配合することによって保湿効果が向上するが、その一方で、塗布時の肌上での延展性が低下したり、べたつき感やヌルつき感が発生してサラサラとした使用感が低下したりする。このため、従来、界面活性剤としてポリエーテル変性シリコーンを用いた乳化組成物であって、保湿効果に優れながら塗布時の肌上への延展性にも優れる乳化組成物、さらには使用感にも優れる乳化組成物は知られていなかった。
【0059】
しかしながら、本発明の皮膚用乳化組成物では、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーとともに、さらにダイマー酸エステル[成分(C)]を用いることによって、多価アルコールや植物油の配合による保湿効果の向上という効果を維持しながら、さらに保湿効果を付与しつつ、界面活性剤としてポリエーテル変性シリコーンを用いた乳化組成物が本来有する塗布時の肌上への延展性を低下させず維持することができる。このように、界面活性剤としてポリエーテル変性シリコーンを用いて乳化した乳化組成物(特に、W/Si型の乳化組成物)において使用することにより、保湿効果も付与しつつ、特に、上記乳化組成物の延展性も維持できるというダイマー酸エステルの効果は、これまでに知られていない効果である。
【0060】
また、保湿効果を向上させる成分として多価アルコールを用いた場合、上述のように通常はべたつき感やヌルつき感が生じやすいが、中でも炭素数6以下のグリコール(特に、1,3-プロパンジオール)を用いることにより、界面活性剤としてポリエーテル変性シリコーンを用いた乳化組成物が、べたつき感やヌルつき感を抑制してサラサラとした使用感を発揮することができる。さらに、ポリエーテル変性シリコーンとダイマー酸エステルとを配合した本発明の皮膚用乳化組成物においては、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーとともに炭素数6以下のグリコールを配合すると、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーを配合しない場合に対し、相乗効果と推測されるが、べたつき感やヌルつき感をさらに抑制してサラサラとした使用感をより一層発揮することができる。
【0061】
また、多価アルコールとしての炭素数6以下のグリコールと植物油とを併用した場合、塗布時の肌上での延展性やサラサラとした使用感を向上させつつ、保湿効果をより向上させ、さらに、塗布時の肌馴染みを高めることができる。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量)であり、特記しない限り「質量%」で表す。また、表中の配合量における「-」は、その成分を配合していないことを示す。
【0063】
実施例1~9、比較例1~4
表に記した各成分(成分(A)~(E)、水、及びその他の成分)を用い、実施例及び比較例の各皮膚用乳化組成物を常法により調製した。
【0064】
表に記載の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0065】
<成分(A)>
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン:商品名「KF-6028」(信越化学工業(株)製)
(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー:商品名「KSG-210」(信越化学工業(株)製)
<成分(B)>
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー※1):商品名「KSG-15」(信越化学工業(株)製)中の成分
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー※2):商品名「KSG-16」(信越化学工業(株)製)中の成分
<成分(C)>
ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル:商品名「LUSPLAN SR-DM4」(日本精化(株)製)
<成分(D)>
1,3-プロパンジオール:商品名「Zemea Select プロパンジオール」(デュポン(株)製)
濃グリセリン:商品名「化粧用濃グリセリン」(阪本薬品工業(株)製)
<成分(E)>
マカデミアナッツ油:商品名「マカデミアナッツ油」(サミット製油(株)製)
シア脂:商品名「Star Shea Butter refined」(IMCD Group B.V.社製)
<その他の成分>
トリ2-エチルへキサン酸グリセリル:商品名「エキセパールTGO」(花王(株)性)
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル:商品名「LUSPLAN SR-DM4」(日本精化(株)製)
デカメチルシクロペンタシロキサン:商品名「TSF405」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)及び商品名「KSG-15」(信越化学工業(株)製)中の成分
メチルポリシロキサン:商品名「DOW CORNING TORAY SH 200 C FLUID 20 CS」(東レ・ダウコーニング(株)製)及び商品名「KSG-16」(信越化学工業(株)製)中の成分
エタノール:商品名「95°一般発酵アルコール」(宝酒造(株)製)
【0066】
(評価)
実施例及び比較例で得られた各皮膚用乳化組成物について以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。なお、表中の評価における「-」は、乳化組成物として成り立たなかったため評価を行っていない。
【0067】
[試験例1:延展性(延び拡がり)の評価]
官能評価パネル10名により、実施例及び比較例で得られた各試料1gを、左右何れか一方の手の甲に塗布後、残る一方の手の指先で延び拡げてもらい、その時の肌上での「延展性」について下記評価基準に従い官能評価した。
<延展性(延び拡がり)の評価基準>
◎(かなり良好):10名中9名以上が、均一に延び拡がる(延展性に優れる)と回答
○(良好):10名中6~8名が、均一に延び拡がる(延展性に優れる)と回答
△(不十分):10名中3~5名が、均一に延び拡がる(延展性に優れる)と回答
×(不良):10名中2名以下が、均一に延び拡がる(延展性に優れる)と回答
【0068】
[試験例2:使用感の評価]
上記試験例1のパネルと同じ評価パネル10名により、試験例1の評価直後の肌状態について下記評価基準に従い官能評価した。
<使用感の評価基準>
◎(かなり良好):10名中9名以上が、べたつき感やヌルつき感がなく、サラサラとした感触であると回答
○(良好):10名中6~8名が、べたつき感やヌルつき感がなく、サラサラとした感触であると回答
△(不十分):10名中3~5名が、べたつき感やヌルつき感がなく、サラサラとした感触であると回答
×(不良):10名中2名以下が、べたつき感やヌルつき感がなく、サラサラとした感触であると回答
【0069】
[試験例3:保湿効果の評価]
上記試験例1のパネルと同じ評価パネル10名により、試験例2の評価30分後の肌状態について下記評価基準に従い官能評価した。
<保湿効果の評価基準>
◎(かなり良好):10名中9名以上が、保湿効果が持続していると回答
○(良好):10名中6~8名が、保湿効果が持続していると回答
△(不十分):10名中3~5名が、保湿効果が持続していると回答
×(不良):10名中2名以下が、保湿効果が持続していると回答
【0070】
【0071】
【0072】
本発明の皮膚用乳化組成物(実施例)は、塗布時の肌上での延展性が良好であり、保湿効果も良好であり、且つ、べたつき感やヌルつき感がなく、サラサラとした感触であり使用感が良好であると評価された。これに対し、成分(B)を含まない場合(比較例2)は、塗布時の肌上での延展性が不良であり、また、使用感も不良と評価された。成分(C)を含まない場合(比較例3)は、塗布時の肌上での延展性が不良と評価された。そして、成分(D)を含まない場合(比較例4)は、保湿効果が不十分であることに加え、使用感も不良と評価された。
【0073】
さらに、以下に、本発明の皮膚用乳化組成物の処方例を示す。
(処方例1)スキンクリーム
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.0質量%
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.0質量%
(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー 0.8質量%
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー※1) 0.2質量%
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー※3) 0.5質量%
ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル 0.8質量%
1,3-プロパンジオール 5.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
マカデミアナッツ油 0.5質量%
ホホバ油 0.5質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0質量%
メチルポリシロキサン 5.0質量%
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 5.0質量%
エタノール 10.0質量%
香料 0.3質量%
精製水 54.4質量%
合計 100.0質量%
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー※3):商品名「KSG-19」(信越化学工業(株)製)