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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】樹脂発泡複合体
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/04 20060101AFI20221102BHJP
   B65D 90/02 20190101ALI20221102BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20221102BHJP
   B32B 1/02 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
F17C3/04 D
B65D90/02 B
B32B5/24 101
B32B1/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017141218
(22)【出願日】2017-07-20
(65)【公開番号】P2019018512
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-06-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】有戸 裕一
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-234261(JP,A)
【文献】特開昭56-080596(JP,A)
【文献】特開2015-093598(JP,A)
【文献】特開昭60-154053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
F17C 3/04
B65D 90/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の樹脂発泡体が接合部を介して接合された構造を含む樹脂発泡複合体であって、
前記接合部の外周表面に存在する深さ1mm以上の窪みの数が、前記接合部の外周表面の長さ1mあたり3個以下であり、
前記接合部が接合材からなり、
前記接合部の厚みが100μm以上3000μm以下であり、
前記樹脂発泡体がフェノール樹脂発泡板であり、
少なくとも1個の前記樹脂発泡体の熱伝導率が、0.001W/mK以上0.028W/mK以下であり、
前記樹脂発泡体が表面に、樹脂繊維からなる不織布及びガラス繊維混抄紙からなる群から選択される少なくとも1種の面材を備えており、
前記接合部と、接合部に隣接する一方の前記樹脂発泡体を液体窒素に30分間浸漬し、その後23℃で24時間経過した際、及び更に24時間経過後に再度液体窒素で60分間浸漬し、その後23℃で24時間経過した際における、前記接合部を挟む2つの前記樹脂発泡体の外周表面に生じる亀裂の数の和が0個である、
液化ガスタンク用樹脂発泡複合体。
【請求項2】
前記接合部の外周表面に存在する深さ0.3mm以上1mm未満の窪みの数が、前記接合部の外周表面の長さ1mあたり10個以下である、請求項1記載の樹脂発泡複合体。
【請求項3】
少なくとも1個の前記樹脂発泡体の密度が15kg/m以上60kg/m以下である請求項1又は2に記載の樹脂発泡複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡複合体に関する。より詳細には、極低温物質の保冷等に適した断熱材に供される樹脂発泡複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
極低温用の断熱材は大きな温度差により歪が生じ亀裂が発生する事が懸念される。例えば、特許文献1に於いては、断熱材であるウレタンフォーム(以降ウレタン樹脂発泡体)の強化の為にウレタン樹脂発泡体内にガラスストランドを分散させ強度向上を図っているが、ガラスストランドの分散が悪いと大きな空間が出来、この空間が亀裂発生の原因になるため、ガラス繊維と樹脂発泡条件を最適化して大きな空間が出来ないようにした事例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭60-259414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明の様に、ウレタン樹脂発泡体の強度向上のためにウレタン樹脂発泡体内に密度の高いガラスストランドを入れると重量が増すばかりではなく、熱伝導率が上がり、断熱性能が損なわれるおそれもあった。
【0005】
本発明は、液化ガスタンク等の極低温物質の保冷目的で用いた場合にも、亀裂が発生しにくく、かつ、施工性が高く、更に高い断熱性能を維持できる樹脂発泡複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、樹脂発泡体を接合して使用する際に、樹脂発泡体間の接合部の外周表面の窪みを特定数以下にすることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の[1]~[3]を提供する。
[1]
2個の樹脂発泡体が接合部を介して接合された構造を含む樹脂発泡複合体であって、前記接合部の外周表面に存在する深さ1mm以上の窪みの数が、前記接合部の外周表面の長さ1mあたり3個以下であり、前記接合部が接合材からなり、前記接合部の厚みが100μm以上3000μm以下であり、前記樹脂発泡体がフェノール樹脂発泡板であり、少なくとも1個の前記樹脂発泡体の熱伝導率が、0.001W/mK以上0.028W/mK以下であり、前記樹脂発泡体が表面に、樹脂繊維からなる不織布及びガラス繊維混抄紙からなる群から選択される少なくとも1種の面材を備えており、前記接合部と、接合部に隣接する一方の前記樹脂発泡体を液体窒素に30分間浸漬し、その後23℃で24時間経過した際、及び更に24時間経過後に再度液体窒素で60分間浸漬し、その後23℃で24時間経過した際における、前記接合部を挟む2つの前記樹脂発泡体の外周表面に生じる亀裂の数の和が0個である、液化ガスタンク用樹脂発泡複合体。
【0008】
[2]
前記接合部の外周表面に存在する深さ0.3mm以上1mm未満の窪みの数が、前記接合部の外周表面の長さ1mあたり10個以下である[1]記載の樹脂発泡複合体。
【0010】
[3]
少なくとも1個の前記樹脂発泡体の密度が15kg/m以上60kg/m以下である[1]又は[2]に記載の樹脂発泡複合体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂発泡複合体は、上記構成を有することにより、液化ガスタンク等の極低温物質の保冷目的で用いた場合にも、亀裂が発生しにくく、かつ、施工性が高く、更に高い断熱性能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態の樹脂発泡複合体の一例を示す概略図である。
図2図2は、図1のX-X断面図である。
図3図3は、接合部の外周表面に窪みが多数ある樹脂発泡複合体の接合部断面図である。
図4図4は、図3の接合部はみ出し部の拡大図である。
図5図5は、接合部の外周表面に窪みが多数ある樹脂発泡複合体の一例である。
図6図6は、接合部の外周表面に存在する窪みの形状を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(本明細書において、「本実施形態」と称する場合がある。)について詳細に説明する。
【0016】
本実施形態における樹脂発泡複合体は、2個の樹脂発泡体が、接合材を含む接合部を介して接合された構造を少なくとも有している。
【0017】
ここで、本実施形態の樹脂発泡複合体を、図を用いて説明する。
本実施形態の樹脂発泡複合体1は、2個の樹脂発泡体2が接合部3を介して接合された構造を含む(図1参照)。本実施形態の樹脂発泡複合体1は、接合部3の外周表面の長さ1mあたりの、深さ1mm以上の窪みの数が10個以下である。
ここで、本明細書において「接合部の外周表面」とは、樹脂発泡複合体1の表面、即ち樹脂発泡体2における接合部3と接する面と反対側の表面、に対して平行な接合部3の任意の断面における外周表面をいい、例えば、樹脂発泡体2と接合部3との界面に沿う断面の外周表面として良い(図2参照)。また、接合部3の外周表面の長さとは、接合部の外周表面に沿った長さをいう。本実施形態の樹脂発泡複合体の一例の接合部断面である図2では、接合部がはみ出している部分がないため、接合部の断面は樹脂発泡複合体の表面と略同一形状である。
2個の樹脂発泡体を接合する際、接合強度の観点から、重ね合わせる樹脂発泡体2の表面の全面に接合部3を設けることが通常である。この場合、2個の樹脂発泡体を押し合わせて接合させる時に、樹脂発泡複合体側面に接合部がはみ出した、接合部はみ出し部5が形成されることがある(図3参照)。「接合部はみ出し部」とは、樹脂発泡体外端形4から、樹脂発泡体の外側に接合部がはみ出している部分をいう(図3、4参照)。ここで、「樹脂発泡体外端形」とは、樹脂発泡複合体を厚さ方向に見た時の2個の樹脂発泡体が重なり合う部分の形状をいう(図3、4参照)。
図3は、接合部の外周表面に窪みが多数ある樹脂発泡体複合体の接合部の断面であり、樹脂発泡体外端形4から接合部がはみ出している接合部はみ出し部5を示す模式図である。また、図4は、図3の接合部はみ出し部5の拡大図である。接合部はみ出し部5には、窪み6が形成されることがある。
ここで、「窪み」とは、接合部はみ出し部5にある窪みをいい、接合部はみ出し部5の外端から樹脂発泡体外端形4に対して垂線をおろしこの垂線の長さ即ち距離Dが極大となる2つの隣り合う点7に挟まれ、該距離Dが極小となる点8を1つ含む窪みをいう(図4参照)。但し、上記距離Dは、樹脂発泡体外端形4の外端を基準として、樹脂発泡体外端形4の外側をプラスの値とし、内側をマイナスの値とする。また、幅W、即ち距離Dが極大となる2つの隣り合う点7間の距離W、深さL、即ち2つの隣り合う点7のうち距離Dが大きい点7と、極小となる点8の距離Dとの距離の差、とした時に、Lが300μm以上であり、W/Lが10.0以下となる窪みをいう。
【0018】
本実施形態で使用する樹脂発泡体としては、例えば、フェノール樹脂発泡板、ウレタン樹脂発泡板、スチレン樹脂発泡板等の樹脂系の発泡板断熱材を使用することが出来る。熱伝導率が安定して小さい樹脂発泡板が好ましく、中でもフェノール樹脂発泡板は樹脂発泡板としては最も熱伝導率が小さく、特に好ましい。
本実施形態で使用する樹脂発泡体の熱伝導率の好ましい範囲は、0.001W/mK以上0.035W/mK以下であり、より好ましくは0.001W/mK以上0.028W/mK以下、さらに好ましくは0.001W/mK以上0.021W/mK以下、特に好ましくは0.001W/mK以上0.019W/mK以下である。2個の樹脂発泡体が接合部を介して接合された上記構造において、少なくとも1個の樹脂発泡体の熱伝導率が上記範囲であることが好ましく、2個の樹脂発泡体の熱伝導率が上記範囲であることがより好ましい。なお、本実施形態の樹脂発泡複合体の上記構造以外に樹脂発泡体が含まれる場合、該樹脂発泡体の熱伝導率は上記範囲であることが好ましい。
本実施形態で使用する樹脂発泡体の密度の好ましい範囲は、15kg/m3以上60kg/m3以下であり、より好ましくは20kg/m3以上50kg/m3以下である。密度が15kg/m3以上であれば、取扱い時に損傷し難い強度を持ち、60kg/m3以下であれば、軽量になるため施工性が高くなる。2個の樹脂発泡体が接合部を介して接合された上記構造において、少なくとも1個の樹脂発泡体の密度が上記範囲であることが好ましく、2個の樹脂発泡体の密度が上記範囲であることがより好ましい。なお、本実施形態の樹脂発泡複合体の上記構造以外に樹脂発泡体が含まれる場合、該樹脂発泡体の密度は上記範囲であることが好ましい。
【0019】
本実施形態の樹脂発泡複合体は、接合材を含む接合部を介して接合されており、接合部の外周表面が滑らかであることが好ましい。
接合部の外周表面に存在する、深さ1mm以上の窪みの数が、接合部の外周表面の長さ1mあたり10個以下であり、3個以下であることが好ましい。
また、接合部の外周表面に存在する深さ0.3mm以上1mm未満の窪みの数が、接合部の外周表面の長さ1mあたり10個以下であることが好ましく、より好ましくは3個以下である。窪みの有無は目視やデジタル顕微鏡等で確認でき、窪みの幅及び深さはノギスで測定したり、デジタル顕微鏡で観察する事により測定することができる。
【0020】
上記窪みの樹脂発泡複合体の厚み方向の形状について、図5図6を用いて説明する。
図5は、樹脂発泡複合体の、2個の樹脂発泡体が接合部を介して接合された樹脂発泡複合体の一例の側面の概略図である。上記窪み6は、樹脂発泡複合体1の厚み方向において、窪み6の端が樹脂発泡体2と接合部3との界面、または、樹脂発泡体2と接合部3との界面に沿う断面に接していると、極低温時に樹脂発泡体に亀裂が発生しやすくなる(図5参照)。上記窪みは、厚み方向の一方の端が樹脂発泡体2と接合部3との界面に接しているもの(6B)、厚み方向の両方の端が樹脂発泡体2と接合部3との界面に接しているもの(6A)、厚み方向の両方の端が何れも樹脂発泡体2と接合部3との界面に接していないもの(6C)がある。また、窪みの端が樹脂発泡体と接合部3との界面に接していない場合(6C)でも亀裂発生の原因になる可能性がある。(図5参照)
図6(A)は、図4と同様、接合部はみ出し部5の拡大図であり、図6(B)(C)は、図6(A)の接合部はみ出し部5にある窪み6の厚み方向断面(図6(A)に示す線Y-Yに沿う面により切断した時の断面)の例である。
図6(B)、図6(C)において、樹脂発泡体複合体の厚み方向全体にわたり、接合部はみ出し部5に窪み6が形成されている場合、厚み方向における窪み6の端は、図6(B)では樹脂発泡体2と接合部3との界面に接しており、図6(C)では、樹脂発泡体2の側面まではみ出している。樹脂発泡複合体の厚み方向における窪み6の端が、図6(B)、図6(C)のいずれの位置にある場合でも、亀裂発生の原因になる可能性がある。
【0021】
本実施形態の樹脂発泡複合体は、上記樹脂発泡体の表面に面材を備えていてもよい。面材としては、高分子繊維が好ましく、高分子繊維としては、例えば、樹脂繊維、ガラス繊維、セルロース繊維などが利用できる。好ましい繊維の形態としては、糸を織った布帛や、繊維を接着剤や熱融着により接着、あるいは機械的作用でからませて布状にした不織布やフェルト、また繊維を抄造法によりシート状に成形したもの等が使用できる。特に好ましい繊維の形態としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維等の樹脂繊維からなる不織布やガラス繊維混抄紙があげられる。
本実施形態の樹脂発泡複合体は、樹脂発泡体表面に接合部を設けてもよいし、樹脂発泡体の表面に設けられた面材に粘着テープを設ける等により接合部を設けてもよい。
【0022】
本実施形態で使用する樹脂発泡体の厚みは、10mm以上500mm以下が好ましく、より好ましくは20mm以上400mm以下、さらに好ましくは30mm以上300mm以下である。
樹脂発泡体の厚みが10mm以上であると断熱性能がより高まり、500mm以下であると応力抵抗性が高まる。樹脂発泡体の厚みは、定規やノギス等で測定できる。
【0023】
また、本実施形態の樹脂発泡複合体は、3個以上の樹脂発泡体を複合化して使用する場合に、発明の効果がより高まる事が期待でき、5個以上の樹脂発泡体を複合化して使用すると、より高い断熱性能を付与しながらも温度差により複合体が破壊しにくくなる効果が期待できる。本実施形態の樹脂発泡複合体において、接合部が2個以上ある場合、少なくとも1個の接合部において窪みの数が上記要件を満たすことが好ましく、全ての接合部において窪みの数が上記要件を満たすことがより好ましい。
【0024】
樹脂発泡複合体の好ましい厚みは40mm以上2000mm以下であり、より好ましくは50mm以上1500mm以下、更に好ましくは60mm以上1200mm以下である。樹脂発泡複合体の厚みが40mm以上であると断熱性能がより高まり、2000mm以下であると応力抵抗性が高まる。樹脂発泡複合体の厚みは、定規やノギス等で測定できる。
【0025】
本実施形態で使用する接合材としては、例えば、ウレタン系接着剤、SBR系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、酢ビ系接着剤、でんぷん糊、各種粘着剤、ニカワ等が挙げられる。中でも、低温耐性という観点から、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、が好ましい。また、各種粘着剤を用いた場合、樹脂発泡複合体における接合材の外周表面が滑らかになりやすく、好ましい。
【0026】
本実施形態における接合部の厚みは、1μm以上5000μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上4000μm以下であり、更に好ましくは100μm以上3000μm以下である。接合部の厚みは、目盛付き拡大鏡やデジタル顕微鏡、SEM等で確認することが出来る。
【0027】
本実施形態の樹脂発泡複合体は、例えば、液化ガスタンク断熱用や、極低温物質を貯蔵又は輸送する際の極低温タンクの保冷に利用でき、この場合、タンク表面温度と外気との温度差が150℃以上の貯蔵又は輸送用極低温タンクに、特に有意な効果を発現することができる。
【0028】
本実施形態の樹脂発泡複合体の製造方法としては、樹脂発泡体を接合材で接合した後に、(1)バンドソー等の切断機で接合部はみ出し部又は樹脂発泡複合体の外周を切断して、接合部の外周表面を滑らかにする方法;(2)接合部の外周表面にある接合部はみ出し部を溶剤で溶かして滑らかにする方法;(3)接合部の外周表面にある接合部はみ出し部を研磨により滑らかにする方法;(4)接着時に樹脂発泡複合体外周に離形性の良い当て板を当てて、はみ出す接合部の外周表面を滑らかにする方法;(5)変形しにくく滑らかな断面をもつシート状の粘着剤を用いて、接合する方法等が挙げられる。
【0029】
樹脂発泡体の熱伝導率は以下の方法によって求めた。
<樹脂発泡体の熱伝導率>
樹脂発泡複合体を構成する樹脂発泡体の熱伝導率は、600mm角に切り出した板状樹脂発泡体を、低温板5℃、高温板35℃の条件で、平板熱流計法に従い、JIS A1412に準拠して測定した。
【実施例
【0030】
以下に、実施例に基づいて本実施形態の樹脂発泡複合体をより詳細に説明する。
なお、実施例9、10は、参考例として記載するものである。
【0031】
(実施例1)
ウレタン系接着剤LOCTITE UK 5400(ヘンケル社製)1kgとLOCTITE UK 8202(ヘンケル社製)4kgをペール缶に計量し、均一に混合し接合材とした。
幅1500mm×長さ1200mm×厚み0.2mmのPPシートに、幅1000mm×長さ1000mmの枠を書き、枠の中に上記接合材を均一に塗布した。重量を測定した、幅1000mm×長さ1000mmに切り出した全体厚み50mm、密度27kg/m3の樹脂発泡体の両面に不織布面材を備えたフェノール樹脂発泡板1(旭化成建材(株)製)を、一方の不織布面材が下になるように、接合材が塗布されたPPシートの枠に合わせて伏せ、PPシートとフェノール樹脂発泡板1とがずれない様に裏返し、PPシートを押して、接合材をフェノール樹脂発泡板1の不織布面材に転写した。PPシートをフェノール樹脂発泡板1から剥がし、小口に付着した接合材を拭き取った。接合材を転写した後のフェノール樹脂発泡板1の重量を測定し、転写前のフェノール樹脂発泡板1の重量から計算した、転写した接合材量は292g/m2であった。接合材を転写させた不織布面材上に、別途幅1000mm×長さ1000mmに切り出したフェノール樹脂発泡板1の不織布面材が接合材を転写させた不織布面材に向くように、ずれない様に合わせ固定して、上に20kgの錘10個をのせ、24時間以上経過後に錘を外し、周囲を10mmずつバンドソーで切り取り、樹脂発泡複合体を得た。
接合部の外周表面は滑らかで、0.3mm以上の深さの窪みは無かった。用いたフェノール樹脂発泡板1の熱伝導率は、0.020W/mKであった。
【0032】
(実施例2)
フェノール樹脂発泡板1を、全体厚み100mm、密度27kg/m3の樹脂発泡体の両面に不織布面材を備えたフェノール樹脂発泡板2(旭化成建材(株)製)に変更し、接合材量が319g/m2で有った以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡複合体を得た。こちらも実施例1と同様に接合部の外周表面の接合材は滑らかで0.3mm以上の深さの窪みは無かった。用いたフェノール樹脂発泡板2の熱伝導率は、0.020W/mKであった。
【0033】
(実施例3)
フェノール樹脂発泡板1を、全体厚み50mm、密度40kg/m3の樹脂発泡体の両面に不織布面材を備えたフェノール樹脂発泡板3(旭化成建材(株)製)に変更し、接合材量が295g/m2で有った以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡複合体を得た。こちらも実施例1と同様に接合部の外周表面の接合材は滑らかで0.3mm以上の深さの窪みは無かった。用いたフェノール樹脂発泡板3の熱伝導率は、0.020W/mKであった。
【0034】
(実施例4)
フェノール樹脂発泡板1を、全体厚み60mm、密度25kg/m3の樹脂発泡体の両面に不織布面材を備えたフェノール樹脂発泡板4(旭化成建材(株)製)に変更し、接合材量が284g/m2で有った以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡複合体を得た。こちらも実施例1と同様に接合部の外周表面の接合材は滑らかで0.3mm以上の深さの窪みは無かった。用いたフェノール樹脂発泡板4の熱伝導率は、0.020W/mKであった。
【0035】
(実施例5)
フェノール樹脂発泡板1を、全体厚み25mm、密度27kg/m3の樹脂発泡体の両面に不織布面材を備えたフェノール樹脂発泡板5(旭化成建材(株)製)に変更し、接合材量が277g/m2で有った以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡複合体を得た。こちらも実施例1と同様に接合部の外周表面の接合材は滑らかで0.3mm以上の深さの窪みは無かった。
【0036】
(実施例6)
接合材量が91g/m2で、接合の際に上に乗せる20kgの錘を1個にし、周囲をバンドソーで切り取らなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡複合体を得た。接合部の外周表面には、凹凸が有り0.3mm以上の深さの窪みは5個確認されたが、1mm以上の窪みは無かった。
【0037】
(実施例7)
接合材量が115g/m2で、接合の際に上に乗せる20kgの錘を1個にし、周囲をバンドソーで切り取らなかった以外は、実施例3と同様にして樹脂発泡複合体を得た。接合部の外周表面には、凹凸が有り0.3mm以上の深さの窪みは4個確認されたが、1mm以上の窪みは無かった。
【0038】
(実施例8)
接合材量が100g/m2で、接合の際に上に乗せる20kgの錘を1個にし、周囲をバンドソーで切り取らなかった以外は、実施例4と同様にして樹脂発泡複合体を得た。接合部の外周表面には、凹凸が有り0.3mm以上の深さの窪みは4個確認されたが、1mm以上の窪みは無かった。
【0039】
(実施例9)
接合材量が172g/m2で、接合の際に上に乗せる20kgの錘を1個にし、周囲をバンドソーで切り取らなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡複合体を得た。接合部の外周表面には、凹凸が有り0.3mm以上の深さの窪みは16個確認され、そのうち4個が1mm以上の深さがあった。
【0040】
(実施例10)
接合材量が200g/m2で、接合の際に上に乗せる20kgの錘を1個にし、周囲をバンドソーで切り取らなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡複合体を得た。接合部の外周表面には、凹凸が有り0.3mm以上の深さの窪みは27個確認され、そのうち8個が1mm以上の深さがあった。
【0041】
(実施例11)
フェノール樹脂発泡板2を3回積層し夫々の接合材量が、335g/m2、362g/m2、287g/m2で有った以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡複合体を得た。こちらも実施例1と同様に接合部の外周表面の接合材は滑らかで0.3mm以上の深さの窪みは無かった。用いたフェノール樹脂発泡板2の熱伝導率は、0.020W/mKであった。
【0042】
(実施例12)
フェノール樹脂発泡板2を7回積層し、夫々の接合材量が298g/m2、322g/m2、310g/m2、293g/m2、341g/m2、289g/m2、308g/m2で有った以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡複合体を得た。こちらも実施例1と同様に接合部の外周表面の接合材は滑らかで0.3mm以上の深さの窪みは無かった。用いたフェノール樹脂発泡板2の熱伝導率は、0.020W/mKであった。
【0043】
(実施例13)
幅1000mm×長さ1000mmに切り出した両面に不織布面材を備えた全体厚み50mmのフェノール樹脂発泡板1の片面の不織布面材に両面粘着テープ(DCX-1080 スリーエムジャパン(株))をフェノール樹脂発泡板1からはみ出ない様に全面に貼り、剥離紙を剥がした粘着面に、別途幅1000mm×長さ1000mmに切り出した全体厚み50mmのフェノール樹脂発泡板1を、ずれない様に合わせ固定した。固定後、上に20kgの錘10個を乗せて24時間経過後、錘を外し、樹脂発泡複合体を得た。こちらも実施例1と同様に接合部の外周表面の接合材は滑らかで0.3mm以上の深さの窪みは無かった。
【0044】
(比較例1)
接合材量が338g/m2で、周囲をバンドソーで切り取らなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡複合体を得た。接合部の外周表面には、接合材がはみ出ていて、0.3mm以上の深さの窪みは112個確認され、そのうち49個が1mm以上の深さがあった。
【0045】
(比較例2)
接合材量が356g/m2で、周囲をバンドソーで切り取らなかった以外は、実施例2と同様にして樹脂発泡複合体を得た。比較例1と同様に接合部の外周表面には、接合材がはみ出ていて、0.3mm以上の深さの窪みは122個確認され、そのうち50個が1mm以上の深さが有った。
【0046】
(比較例3)
接合材量が340g/m2で、周囲をバンドソーで切り取らなかった以外は、実施例3と同様にして樹脂発泡複合体を得た。比較例1と同様に接合部の外周表面には、接合材がはみ出ていて、0.3mm以上の深さの窪みは84個確認され、そのうち26個が1mm以上の深さが有った。
【0047】
(比較例4)
接合材量が333g/m2で、周囲をバンドソーで切り取らなかった以外は、実施例4と同様にして樹脂発泡複合体を得た。比較例1と同様に接合部の外周表面には、接合材がはみ出ていて、0.3mm以上の深さの窪みは88個確認され、そのうち39個が1mm以上の深さが有った。
【0048】
(比較例5)
接合材量が295g/m2で、周囲をバンドソーで切り取らなかった以外は、実施例5と同様にして樹脂発泡複合体を得た。比較例1と同様に接合部の外周表面には、接合材がはみ出ていて、0.3mm以上の深さの窪みは60個確認され、そのうち23個が1mm以上の深さが有った。
樹脂発泡複合体の製造に用いた上記フェノール樹脂発泡板1~5の熱伝導率は、0.020W/mKであった。
【0049】
<樹脂発泡複合体の耐低温特性>
実施例1~13及び比較例1~5で作製し、接合部の外周表面の窪みを確認した樹脂発泡複合体を、液体窒素に浮かべ、上から押さえつけて、一番下側の接合部が完全に液体窒素に浸漬するように沈めた。30分間経過後に樹脂発泡複合体を取り出し、24時間以上室温(23℃)で静置した。静置後の樹脂発泡複合体の接合部の外周表面に水性インクを塗って亀裂の有無を目視で確認した。亀裂の有無及び数を確認した後、24時間以上室温(23℃)で静置し、水性インクが完全に乾いたことを確認後、もう一度樹脂発泡複合体を、液体窒素に浸漬し、60分間経過後、樹脂発泡複合体を取り出し、24時間以上室温(23℃)で静置した。
静置後、樹脂発泡複合体周縁部に水性インクを塗って亀裂の有無及び数を目視で確認した。
なお、亀裂とは、樹脂発泡体に入る亀裂をいい、亀裂の数とは、液体窒素に浸漬した接合部を挟む2つの樹脂発泡体の外周表面に発生する亀裂の数の和をいう。
【0050】
実施例と比較例の結果を表1にまとめた。
実施例が示す通り、樹脂発泡複合体の接合部に1mm以上の窪みが多いと液体窒素へ浸漬した際に亀裂が発生する事が確認できた。
実施例6~10では、転写した接合材の量が少なく、2個の樹脂発泡体の接着性能が若干低下した。本実施形態の樹脂発泡複合体において、接合する樹脂発泡体の接合強度の観点から、樹脂発泡体の表面全面(例えば、樹脂発泡体外端形全面)に接合部が設けられることが好ましい。
【0051】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、液化水素(LH2)、液化窒素(LN2)、液化酸素(LO2)、液化ヘリウム(LHe)等の極低温物質を貯蔵又は輸送する際の極低温タンクに適した樹脂発泡複合体である。
【符号の説明】
【0053】
1 樹脂発泡複合体
2 樹脂発泡体
3 接合部
4 樹脂発泡体外端形
5 接合部はみ出し部
6 窪み
6A 厚み方向の両方の端が樹脂発泡体2と接合部3との界面に接している窪み
6B 厚み方向の片方の端が樹脂発泡体2と接合部3との界面に接している窪み
6C 厚み方向の端が樹脂発泡体と接合部3との界面に接していない窪み
7 距離Dが極大となる点
8 距離Dが極小となる点
D 樹脂発泡体外端形4の外端と接合部はみ出し部の外端との、樹脂発泡体外端形4に対して垂直方向の距離
W 幅
L 深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6