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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20221102BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20221102BHJP
   C02F 11/14 20190101ALI20221102BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C02F1/00 C ZAB
C02F11/04
C02F11/14
C02F1/58 R
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017254488
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019118866
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-11-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】堀川 大介
(72)【発明者】
【氏名】早見 徳介
(72)【発明者】
【氏名】永森 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】平岩 良太
(72)【発明者】
【氏名】木内 智明
(72)【発明者】
【氏名】毛受 卓
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-088497(JP,A)
【文献】特開2012-135705(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148086(WO,A1)
【文献】特開2012-200652(JP,A)
【文献】特開2003-300095(JP,A)
【文献】特開2005-193146(JP,A)
【文献】特開2013-119080(JP,A)
【文献】特開平08-010791(JP,A)
【文献】特開2009-011993(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0131272(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00、1/58、3/28、11/00-11/20
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入排水に含まれる固形分を除去した後に、生物処理及び汚泥分離を行って処理水を得る際に、前記流入排水中から除去した固形分及び前記生物処理時の余剰汚泥に基づいてバイオガスを生成する消化槽から排出された汚泥を脱水して生成された脱離液の固液分離を行い、前記固液分離により得られた第1分離液を前記流入排水側に返流する第1固液分離装置と、
前記第1固液分離装置で回収された固形分を、前記消化槽から排出された汚泥と混和する混和装置と、
前記混和装置で混和された汚泥の分離性を促進するための薬剤を注入して脱水処理を行って、脱水汚泥と前記脱離液とを分離させる汚泥脱水機と、
前記第1固液分離装置で回収された固形分に残存する前記薬剤が前記固形分の全体に行き渡るように前記固形分を分散させる分散装置と、を備え、
前記第1固液分離装置は、前記混和装置で混和された汚泥を脱水して生成された前記脱離液の固液分離を行って前記第1分離液を生成し、
前記混和装置は、前記分散装置で分散された固形分と、前記消化槽から排出された汚泥とを混和する、水処理装置。
【請求項2】
前記第1固液分離装置は、沈降性汚泥と浮上性汚泥とを前記固形分として回収する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記第1分離液に含まれるリン成分を除去するリン除去装置を備え、
前記リン除去装置にて、前記第1分離液に含まれるリン成分を除去した後の第2分離液が前記流入排水側に返流される、請求項1又は2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記リン除去装置は、鉄塩又はアルミニウム塩を主剤とする無機凝集剤を用いて、リン固形化物を生成する、請求項3に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記リン除去装置で生成されたリン固形化物と前記第2分離液とに固液分離を行い、前記第2分離液を前記流入排水側に返流する第2固液分離装置を備える、請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記リン固形化物を前記混和装置に返送する経路を備え、
前記混和装置は、前記リン固形化物を、前記第1固液分離装置で回収された固形分と、前記消化槽から排出された汚泥とともに混和する、請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
当該水処理装置で本来処理するべき前記流入排水とは別に、有機バイオマスを前記消化槽に導入する導入経路を備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記導入経路上に設けられ、前記有機バイオマスの前処理を行う前処理施設を備える、請求項7に記載の水処理装置。
【請求項9】
流入排水に含まれる固形分を除去した後に、固液分離液中に含まれる有機物除去のために生物処理及び汚泥分離を行って処理水を得るとともに、前記流入排水中から除去した固形分及び前記生物処理時の余剰汚泥を消化槽に導入する工程と、
前記消化槽にてバイオガスを生成する工程と、
前記消化槽から排出された汚泥に、前記汚泥の分離性を促進するための薬剤を注入して汚泥脱水機で脱水して、脱離液と脱水汚泥とを生成する工程と、
第1固液分離装置にて前記脱離液の固液分離を行って固形分と第1分離液を生成し、前記第1分離液を前記流入排水側に返流するとともに、前記固形分に残存する前記薬剤が前記固形分の全体に行き渡るように前記固形分を分散させた分散固形分を、前記消化槽から排出された汚泥と混和した後に前記汚泥脱水機に送る工程と、を備える水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水処理装置及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理装置では、流入排水に含まれる固形分を除去した後に、固液分離液中に含まれる有機物除去のため、活性汚泥法などの生物処理、汚泥分離を行い、処理水を得るが、前述の流入排水中から除去した固形分や、生物処理時の余剰汚泥は、嫌気性消化槽を用いてバイオガスを生成するとともに、嫌気性消化槽から排出された汚泥を脱水機で脱水して得られた分離液を、流入排水側に返流している。
【0003】
しかしながら、嫌気性消化槽から排出された汚泥の脱水分離液中に含まれる汚泥の量などにより、流入排水側に返流される分離液中の固形分の量が変動する。これにより、嫌気性消化処理済みの固形分が再び嫌気性消化槽に流入して、バイオガスの生成効率を低下させるおそれがあるとともに、嫌気性消化槽から排出される汚泥の質の変動により、脱水処理時に注入される凝集剤等の薬剤の量が増えるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-26542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、流入排水側に返流される固形分の量を削減でき、かつ脱水処理時に注入される薬剤の量も削減可能な水処理装置及び水処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、流入排水に含まれる固形分を除去した後に、生物処理及び汚泥分離を行って処理水を得る際に、前記流入排水中から除去した固形分及び前記生物処理時の余剰汚泥に基づいてバイオガスを生成する消化槽から排出された汚泥を脱水して生成された脱離液の固液分離を行い、前記固液分離により得られた第1分離液を前記流入排水側に返流する第1固液分離装置と、
前記第1固液分離装置で回収された固形分を、前記消化槽から排出された汚泥と混和する混和装置と、を備え、
前記第1固液分離装置は、前記混和装置で混和された汚泥を脱水して生成された前記脱離液の固液分離を行って前記第1分離液を生成する、水処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態による水処理装置を備えた水処理システムの概略構成を示すブロック図。
図2】汚泥脱水機の周辺のより詳細な構成の一例を示す図。
図3】第2の実施形態による水処理装置を備えた水処理システムの概略構成を示すブロック図。
図4】第3の実施形態による水処理装置を備えた水処理システムの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、本件明細書と添付図面においては、理解のしやすさと図示の便宜上、一部の構成部分を省略、変更または簡易化して説明および図示しているが、同様の機能を期待し得る程度の技術内容も、本実施の形態に含めて解釈することとする。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による水処理装置1を備えた水処理システム2の概略構成を示すブロック図である。本実施形態による水処理装置1は、後述するように、図1の水処理システム2内の少なくとも一部の装置を備えたものである。
【0010】
図1の水処理システム2は、最初沈殿池3と、生物処理槽4と、最終沈殿池5と、初沈濃縮装置6と、汚泥濃縮装置7と、消化槽8と、ガス精製装置9と、発電機器10と、汚泥脱水機11と、第1固液分離装置12と、分散装置13とを備えている。
【0011】
最初沈殿池3には、流入排水が流入される。流入排水は、例えば下水であるが、必ずしも下水に限定されるものではなく、工場排水などでもよい。最初沈殿池3は、流入排水を貯める池であり、この池に沈殿された沈殿物は初沈濃縮装置6に送られて濃縮される。初沈濃縮装置6は、沈殿法や遠心分離法、固定床濾過法、移動床濾過法などの公知の固形分離濃縮技術を利用して、沈殿物を濃縮する。その際に、凝集剤などの濃縮促進剤を併用してもよい。
【0012】
最初沈殿池3の上澄み部分の排水は、生物処理槽4に送られる。生物処理槽4は、微生物の作用で、排水に含まれる有機物などを分解除去して水質の浄化を行う。生物処理槽4では、活性汚泥法、硝化脱窒法、微生物担体法などの好気性生物処理を含む公知の水処理技術を適用可能である。生物処理槽4で浄化された排水は、最終沈殿池5に送られる。生物処理槽4と最終沈殿池5を組み合わせて、膜分離型生物処理を行うことも可能である。最終沈殿池5は、活性汚泥を沈殿させる。最終沈殿池5の上澄み水は、処理水として川や海に放流される。最終沈殿池5に沈殿された活性汚泥は、汚泥濃縮装置7に送られる。
【0013】
汚泥濃縮装置7には、活性汚泥の他に、初沈濃縮装置6で濃縮された沈殿物も流入される。汚泥濃縮装置7は、これらの汚泥を濃縮する。汚泥濃縮装置7は、遠心分離法、固定床濾過法、移動床濾過法などの公知の固形分離濃縮技術を利用して、汚泥の濃縮処理を行う。その際に、凝集剤などの濃縮促進剤を併用してもよい。
【0014】
初沈濃縮装置6と汚泥濃縮装置7において、濃縮された汚泥から分離された分離液は、返流水として流入排水側に返流される。
【0015】
汚泥濃縮装置7で濃縮された汚泥は、嫌気性消化槽(以下、単に消化槽と呼ぶ)8に送られる。消化槽8では、嫌気性消化法を適用可能である。具体的には、消化槽8は、中温型メタン発酵法や高温型メタン発酵法などの公知技術を用いて、メタン等のバイオガスを生成する。また、消化槽8は、消化汚泥を排出する。
【0016】
ガス精製装置9は、バイオガスの精製を行う。ガス精製装置9は、バイオガス再資源化機器の仕様に応じたガス精製技術を用いることができ、例えば、ミスト除去技術や脱硫技術、メタンガス富化技術などの公知技術を用いることができる。また、バイオガス発生量に応じたバイオガスの一時的な貯留のためのガスホルダなどを設けてもよい。
【0017】
発電機器10は、バイオガスを用いた発電を行う。発電機器10は、ガスエンジンやガスタービン、燃料電池等を適用可能である。発電機器10から発生する排熱を、消化槽8にて有効利用する手段を併用することが望ましい。
【0018】
汚泥脱水機11は、消化槽8から排出された消化汚泥の脱水処理を行って、脱水汚泥と脱離液に分離する。脱水処理の際に、必要に応じて凝集剤が注入される。凝集剤は、カチオン基を有するカチオン型、又は両性型の有機高分子凝集剤などであり、無機凝集剤として、鉄塩やアルミニウム塩を主剤とする薬剤を併用してもよい。また、汚泥脱水機11は、遠心分離器やスクリュープレス脱水機、ベルトプレス脱水機などの公知の機器を用いて構成されるが、消化槽8から発生される汚泥性状に合わせて、具体的な機器の仕様と選定を行うのが望ましい。また、被処理汚泥の性状や処理量の変動に合わせて、汚泥脱水機11の運転制御を行うのが望ましい。さらには、被処理汚泥の性状や処理量の変動に合わせて、汚泥脱水機11に注入する薬剤の量を調整する薬剤注入制御機構を設けてもよい。汚泥脱水機11からは、分離固形分である脱水汚泥と脱離液とが排出される。
【0019】
脱離液は、流入排水側に返流されるが、この経路L1上には第1固液分離装置12が設けられている。第1固液分離装置12は、脱離液中の固形分を除去するとともに、第1分離液を生成する。第1固液分離装置12は、沈殿槽や傾斜板型沈殿槽などの重力沈降による固形分除去プロセスや、沈殿槽の上部に浮遊する浮遊性固形分の除去を促進するスカム回収機能などの浮上分離プロセス、あるいはこれらのプロセスの組合せを適用して、固液分離を行ってもよい。また、適用するプロセスごとに独立した個別槽を直列的に多段接続して、連続的な分離プロセスを行ってもよい。また、同一槽内での固形分の沈降回収と浮上回収を行う機構を設けてもよい。このように、第1固液分離装置12は、沈降性汚泥と浮上性汚泥とを固形分として回収してもよい。メタン発酵履歴のある有機汚泥では、貯留操作等により、微量のバイオガス等が生成されて固形分が浮遊し、沈降型固液分離法のみでは、固形分の除去が困難になりうるが、本実施形態の第1固液分離装置12を用いれば、脱離液中の固形分を適切に除去できる。
【0020】
第1固液分離装置12で回収された回収固形分は、汚泥脱水機11側に返送される。返送された固形分は、消化汚泥とともに、汚泥脱水機11に送られることになる。このように、第1固液分離装置12で回収された回収固形分は、消化汚泥とともに汚泥脱水機11に送られるため、汚泥脱水機11から排出される脱水汚泥を一元管理できる。また、第1固液分離装置12で回収された回収固形分に含まれる凝集剤成分を、消化汚泥に作用させることができ、汚泥脱水の促進を図ることができる。さらに、第1固液分離装置12で回収された回収固形分は、汚泥脱水機11で添加される凝集剤成分によるpH操作履歴のある汚泥成分であり、この汚泥成分が汚泥脱水機11に返送されることにより、脱水汚泥のpHを安定化させることができる。
【0021】
回収固形分の返送経路L2上には、分散装置13を設けてもよい。分散装置13は、回収固形分を破砕して分散する処理を行った後、汚泥脱水機11に返送する。分散装置13は、ホモジナイザ等の高速攪拌や超音波振動などの公知の分散処理を行うものであってもよい。また、分散装置13は、返送経路L2上へのインライン型構造を持っていてもよいし、あるいは貯槽型構造を持っていてもよい。また、第1固液分離装置12で分離された第1分離液は、流入排水側に返流される。
【0022】
本実施形態による水処理装置1は、図1の水処理システム2の大部分を備えていてもよいし、あるいは消化槽8の周辺の装置を備えていてもよい。例えば、水処理装置1は、汚泥脱水機11、第1固液分離装置12及び分散装置13を備えていてもよい。あるいは、水処理装置1は、第1固液分離装置12と分散装置13を備えていてもよい。あるいは、水処理装置1は、少なくとも第1固液分離装置12を備えていてもよい。
【0023】
次に、図1の水処理システム2の処理動作を説明する。水処理システム2への流入排水の処理に伴って発生する固形分は、初沈濃縮装置6と汚泥濃縮装置7による分離濃縮操作を経て、消化槽8に送られる。消化槽8は、固形分に対してメタン発酵処理を行う。消化槽8から排出される消化汚泥は汚泥脱水機11に送られる。汚泥脱水機11は、消化汚泥を脱水処理して、固形分である脱水汚泥を除去するとともに、液体成分である脱離液を排出する。
【0024】
脱離液は、返流水として、再び水処理システム2内を循環する。よって、消化槽8で生成されたメタン発酵処理済み固形物が再び消化槽8に戻り、消化槽8での被処理固形分の割合が減って、バイオガスの生成効率が低下するおそれがある。そこで、本実施形態では、脱離液の返流経路L1上に第1固液分離装置12を設けて、脱離液に含まれる沈降性及び浮遊性の固形物を回収する。回収された固形物は、返送経路L2を通って、汚泥脱水機11に返送される。この返送経路L2上に分散装置13を接続してもよい。
【0025】
分散装置13は、回収された固形物を微細化して、比表面積を増加させた上で、汚泥脱水機11に返送する。汚泥脱水機11では、脱水性能の向上のために、消化汚泥に凝集剤を注入しており、第1固液分離装置12で分離された固形物にも凝集剤が残存している。この固形物を汚泥脱水機11に返送する際、固形物に残存する凝集剤の作用を促進するには、固形物の全体に凝集剤を行き渡させるのが望ましい。そこで、本実施形態では、分散装置13にて、固形物の比表面積を増加させる。すなわち、固形物に含まれる凝集剤の成分の接触比表面積を増加させる。これにより、分散装置13で分散された固形物を汚泥脱水機11にて消化槽8からの消化汚泥と混和したときに、凝集剤が全体に満遍に行き渡って、脱水効率が向上する。また、汚泥脱水機11にて新たに注入される凝集剤の量を削減できる。
【0026】
また、分散装置13を設けることで、第1固液分離装置12で分離された固形物の均質化や、固形物内の気泡の除去等を行うことができ、汚泥脱水機11の脱水処理を促進することができる。
【0027】
図2は汚泥脱水機11の周辺のより詳細な構成の一例を示す図である。分散装置13で分散された固形物と、消化槽8からの消化汚泥とが混和装置14で混和された後に、汚泥脱水機11内で脱水処理される。汚泥脱水機11内で脱水処理する際に、不足分の凝集剤が注入される。分散装置13で、固形物を微細化させて比表面積を大きくしているため、混和装置14で消化汚泥と混和したときに、固形物に含まれていた凝集剤が、消化汚泥の全体に行き届くようになり、凝集剤の作用を高めることができる。
【0028】
図2では、混和装置14を汚泥脱水機11とは別個に設けているが、混和装置14を汚泥脱水機11の一部として見なしてもよい。
【0029】
一方、第1固液分離装置12で分離された第1分離液は、返流水の経路L1を通って流入排水側に返流される。
【0030】
このように、本実施形態では、汚泥脱水機11で分離された脱離液を返流水に返流する返流経路L1上に第1固液分離装置12を設けて、脱離液に含まれる固形物を回収して汚泥脱水機11に返送する。これにより、返流水に含まれる固形物を削減でき、メタン発酵処理済み固形物が消化槽8に流れ込まなくなり、バイオガスの生成効率を向上できる。
【0031】
また、第1固液分離装置12から汚泥脱水機11への返送経路L2上に分散装置13を設けることにより、第1固液分離装置12で分離された固形物を分散装置13で微細化して比表面積を大きくすることができる。よって、固形物を消化槽8からの消化汚泥と混和させたときに、固形物に残存している凝集剤の作用を向上させることができ、脱水処理の際に新たに注入する凝集剤の量を削減できる。
【0032】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、返流水に含まれるリン成分を除去するものである。
【0033】
図3は第2の実施形態による水処理装置1を備えた水処理システム2の概略構成を示すブロック図である。図3の水処理システム2は、図1の構成に加えて、リン除去装置15と、第2固液分離装置16とを備えている。
【0034】
リン除去装置15と第2固液分離装置16は、第1固液分離装置12で分離された第1分離液を流入排水側に返流する返流経路L1上に設けられている。リン除去装置15は、第1分離液に所定の薬剤を添加して、リン固定化物を生成する。第2固液分離装置16は、リン固定化物と第2分離液に分離して、リン固定化物を汚泥脱水機11に返送するとともに、第2分離液を流入排水側に返流する。
【0035】
下水等の排水の好気性処理である生物処理槽4に由来する余剰汚泥は、リンを含有している。この余剰汚泥内のリンは、嫌気性処理である消化槽8にて放出されて、液相中にリンが移行する。液相中のリンは、汚泥脱水機11から排出される脱離液に含まれており、この脱離液を固液分離する第1固液分離装置12から排出される第1分離液にも含まれている。図1の水処理システム2では、第1分離液は流入排水側に返流されるため、リンを含む返流水が循環されることになる。
【0036】
そこで、図3のリン除去装置15は、第1固液分離装置12で分離された第1分離液中に含まれるリン成分を、所定の薬剤を用いて固定化し、リン固定化物を生成する。これにより、第1分離液中のリン以外の含有成分に影響を与えることなく、リン成分を除去してリン成分の循環を抑制できる。リン除去装置15では、攪拌や剪断力などによる高速攪拌技術などを用いて第1分離液と薬剤とを混和し、第1分離液中のリンの固定化を迅速に行うことができる。ここで用いる薬剤は、鉄塩やアルミニウム塩などの無機凝集剤を一例として適用可能である。
【0037】
リン除去装置15のリン固形化物を含む排出液は、第2固液分離装置16に送られる。第2固液分離装置16は、公知の固液分離技術を用いて、リン固形化物を分離するとともに、第2分離液を返流水として流入排水側に返流する。第2固液分離装置16では、リン固形化物の分離性を促進させるために、凝集剤を添加してもよい。
【0038】
第2固液分離装置16で分離されたリン固形化物は排出されるが、分離されたリン固形化物を汚泥脱水機11側に返送する経路L3を設けてもよい。鉄塩やアルミニウム塩に由来する無機凝集剤によるリン除去操作により、リン固形化物のpHは、第1固液分離装置12から分散装置13を経て汚泥脱水機11に返送される固形物のpHよりも低くなるが、低pHのリン固形化物を汚泥脱水機11に返送することで、汚泥脱水機11にてカチオン官能基を有する有機高分子凝集剤を添加したときに、カチオン官能基のイオン化が促進される。よって、汚泥脱水機11の脱水処理を適切に運用することができ、汚泥脱水機11の脱水性能を向上できる。
【0039】
このように、第2の実施形態では、汚泥脱水機11からの脱離液を固液分離する第1固液分離装置12で得られた第1分離液中に含まれるリン成分をリン除去装置15で固形化するため、流入排水側に返流される返流水中のリン成分を除去できる。また、リン除去装置15で固形化したリン固形化物を第2固液分離装置16から汚泥脱水機11側に返送してもよく、この場合には、汚泥脱水機11にて添加される有機高分子凝集剤のカチオン官能基のイオン化を促進して、汚泥脱水の脱水処理を促進できる。
【0040】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、水処理システム2への本来の流入排水とは別の外部汚泥を水処理システム2で受け入れ可能にしたものである。
【0041】
図4は第3の実施形態による水処理装置1を備えた水処理システム2の概略構成を示すブロック図である。図4の水処理システム2は、図3の構成に外部汚泥の導入経路L4を設けた点だけが図3と相違している。なお、図1の水処理システム2に外部汚泥の導入経路L4を設けてもよい。
【0042】
ここで、外部汚泥とは、図4の水処理システム2とは別の下水処理場等から排出された汚泥や、生ゴミ塵芥や、植物培養用の菌床廃棄物などの有機汚泥などの有機バイオマスである。外部汚泥は、図4の水処理システム2内で、必要に応じて加熱などの処理を行って、嫌気性消化処理を行う消化槽8に導入される。消化槽8では、外部汚泥の減容化とバイオガスへの変換を行う。このように、図4の水処理システム2には、水処理システム2で本来処理するべき流入排水とは別に、外部汚泥(有機バイオマス)を消化槽8に導入する経路L4を備えている。
【0043】
外部汚泥の性状や量の変動に応じて、外部汚泥の貯槽や破砕前処理施設、熱処理施設、可溶化処理施設などの前処理施設17を設けてもよい。なお、熱処理施設では、発電機器10等の既設施設の排熱を利用すれば、より好適である。外部汚泥の受入によって、汚泥脱水機11に流入する消化汚泥の組成変動や脱離液の固形分の量、リン成分の量などが変動する。よって、流入排水への返流水の固形分やリン成分の量によって、固形分の量が増えて、リン成分の循環量も増加するなど、水処理システム2の負荷が増大する懸念がある。しかしながら、図4の水処理システム2では、第1固液分離装置12、リン除去装置15及び第2固液分離装置16を備えているため、外部汚泥を受け入れても、返流水の水質悪化を抑制することができる。
【0044】
なお、返流水に含まれる窒素濃度が増加するおそれがある場合には、第1固液分離装置12や第2固液分離装置16の下流側に、アンモニアストリッピングなどのアンモニア除去機構(不図示)などを設けてもよい。
【0045】
このように、第3の実施形態では、水処理システム2に本来の流入排水とは別の外部汚泥を導入する経路を設けたため、外部汚泥についてもバイオガスへの変換に利用できる。また、外部汚泥を受け入れても、第1固液分離装置12、リン除去装置15及び第2固液分離装置16を設けることで、返流水に含まれる固形分やリン成分の量を増やすことなく、固形分やリン成分を除去できる。
【0046】
上述した第1~第3の実施形態による水処理装置1及び水処理システム2は、下水処理施設だけでなく、産業排水処理施設や浄水処理施設などに適用可能である。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 水処理装置、2 水処理システム、3 最初沈殿池、4 生物処理槽、5 最終沈殿池、6 初沈濃縮装置、7 汚泥濃縮装置、8 消化槽、9 ガス精製装置、10 発電機器、11 汚泥脱水機、12 第1固液分離装置、13 分散装置、14 混和装置、15 リン除去装置、16 第2固液分離装置
図1
図2
図3
図4