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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】歯科的および医学的な治療および処置
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/40 20170101AFI20221102BHJP
【FI】
A61C5/40
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018040673
(22)【出願日】2018-03-07
(62)【分割の表示】P 2016016011の分割
【原出願日】2010-03-01
(65)【公開番号】P2018126524
(43)【公開日】2018-08-16
【審査請求日】2018-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】61/172,279
(32)【優先日】2009-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】12/395,643
(32)【優先日】2009-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517195398
【氏名又は名称】ピプステック,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィト,エンリコ・イー
(72)【発明者】
【氏名】タブス,ケモンズ
(72)【発明者】
【氏名】グローヴァー,ダグラス・エル
(72)【発明者】
【氏名】コロンナ,マーク・ピー
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】平瀬 知明
【審判官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0070195(US,A1)
【文献】特開平10-33548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/40
A61C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯の感染状態またはう蝕状態を治療するためのレーザシステムであって、
レーザシステムが、該感染状態またはう蝕状態を含む歯の治療領域内の、液体停留プールに照射されるように構成されたレーザを備え、
該液体停留プールがヒドロキシル含有分子を有する溶液を含有し、
該ヒドロキシル含有分子は水ではなく、
該レーザは、熱による隣接組織への損傷を回避するために、該隣接組織の温度が5℃を超えて上昇することを回避するように、該液体停留プール内で著しい熱を生じることなく、該治療領域から離れて位置する歯の箇所を清掃するため、および、光音響効果により前記歯の治療領域を清掃するために、該液体停留プールを活性化させるように、サブアブレーション閾値設定で作動するよう構成されており、
該レーザは、物質を炭化、燃焼、または熱溶融させずに治療領域から該物質を除去するのに十分な振動エネルギーを有する光音響波を、該液体停留プールにおいて発生させるように構成されており、
レーザシステムは、
レーザ光源と、
該レーザ光源の基端と連結した光ファイバと、
該光ファイバの末端と連結し、テーパー状であるアプリケータ先端と、
を備え、
該光ファイバがその外表面にクラッドを備え、
該アプリケータ先端が該クラッドの遠位端から更に遠位方向に延在し、
該レーザが、該アプリケータ先端が該液体停留プールに浸漬されている間、該液体停留プールに照射されるよう構成されている
ことを特徴とする、レーザシステム
【請求項2】
前記レーザが、感染またはう蝕している物質を前記治療領域における歯から除去するように前記液体停留プールを活性化させるように構成されている、請求項1に記載のレーザシステム
【請求項3】
前記レーザが、前記液体停留プールを膨張させるように構成されている、請求項1また
は2に記載のレーザシステム
【請求項4】
前記レーザが、前記治療領域内の感染状態またはう蝕状態にある組織を研磨するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザシステム
【請求項5】
前記レーザが、歯の健常な組織を損傷せずに前記液体停留プールに照射されるように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のレーザシステム
【請求項6】
前記レーザがパルスレーザーを備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のレーザシステム
【請求項7】
前記治療領域が根管を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のレーザシステム
【請求項8】
前記治療領域がカリエスを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のレーザシステム
【請求項9】
前記レーザが、700~3000nmの波長の光を前記液体停留プールに照射するよう構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のレーザシステム
【請求項10】
前記レーザがErYAGレーザである、請求項1~9のいずれか1項に記載のレーザシステム
【請求項11】
前記レーザがNdYAGレーザである、請求項1~9のいずれか1項に記載のレーザシステム
【請求項12】
前記レーザが、0.1~1.5Wの出力で前記液体停留プールに照射されるように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のレーザシステム
【請求項13】
前記レーザが、100ナノ秒~1000マイクロ秒のパルス接続時間で照射されるように構成されている、請求項6~12のいずれか1項に記載のレーザシステム
【請求項14】
前記レーザが、2~25Hzのパルス周波数で照射されるように構成されている、請求項6~13のいずれか1項に記載のレーザシステム
【請求項15】
前記レーザが、10~40秒のサイクル時間で照射されるように構成されている、請求項6~14のいずれか1項に記載のレーザシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本願は、2009年2月28日に出願された「Dental and Medi
cal Treatments and Procedures」という名称の米国特許出願第12/395,643号および2009年4月24日に出願された「Dental
and Medical Treatments and Procedures」という名称の米国仮特許出願第61/172,279号の優先権を主張し、これらの出願に関連するものである。上記の出願はすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[002]本発明は、歯科学、医学、および獣医学の分野に関連する。
【背景技術】
【0003】
[003]歯科学の分野において、最も重要で注意を要する処置の1つは、罹患(dise
ased)組織が実質的にない、かつその領域を封鎖する目的で消毒剤を使用して(antiseptically)永久的な防腐処置または閉鎖の準備が整った空洞を提供するための罹患根管の清掃または摘出の処置である。このステップは、適切に実施されると、治療の失敗につながる可能性がある根管内の有害な組織をその後で捕捉しなくても、生物学的に不活性な材料または修復材料を用いて根管を実質的に完全に充填すること(すなわち閉鎖)ができる。
【0004】
[004]典型的な根管処置では、次に、根管に隣接する罹患組織および残渣の根管からの
摘出が行われ、続いて閉鎖がなされる。多くの場合、閉鎖および最終補綴物装着(crowning)の前に、滅菌および炎症の低下を目的とした水酸化カルシウムペーストによる根管の中間充填が行われる。摘出処置を実施する際、歯科医は根管全体にアクセスし、必要に応じて根管を形成しなければならない。しかし、根管は、直径が非常に小さいことが多く、非常に湾曲して大きさおよび構成が不整な場合もある。したがって、多くの場合、根管の全体にアクセスして、根管壁の全面に対して適切に作業を行うとは非常に困難である。
【0005】
[005]多くの器具は、根管の清掃および形成という困難な作業を実施するように設計さ
れている。歴史的に、歯科医は、らせん状の刃先を持ちテーパーを有する細長い歯内治療用ファイルを使用して、根管領域に隣接する軟質物質および硬質物質を根管領域内から除去してきた。このような歯科根管処置では、他の点では健常な象牙質壁または歯根の物理構造に対して非常に積極的に穿孔およびファイリングを行うことが多く、それによって歯の完全性または強度が過度に弱まる。加えて、根管処置を実施する際、死んだ組織、損傷組織、または感染組織のすべてに対する効果的なデブリードマンまたは無害化を行い、根管系内の細菌、ウイルス、および/または他の望ましくない生体物質をすべて死滅させることが望ましい。典型的な根管系の図が図1Aおよび1Bに示されている。根管系は、主根管1と、主根管1から分岐する多数の側枝(lateral canal)または副根管(accessory canal)3とを含み、これらはいずれも罹患組織または死んだ組織、細菌などを含むことがある。根管処置時に、主根管の神経を機械的に剥離し、多くの場合には主根管の神経を側枝の神経から引き離すことが一般的である。その後、側枝の神経のほとんどは根管内の所定の位置に留まり、後に問題の原因となる場合がある。その後、主根管1は、テーパーを有するファイルを用いて清掃および摘出される。根管系の主根管および副根管をすべて摘出することが望ましいが、側枝3のいくつかは非常に細く、組織を除去するために到達することが極めて困難である。このような側枝は、多くの場合、主根管と直角をなし、主根管から分岐するので断面を曲げ、捻り、変化させること
があり、それによって任意の既知のファイルまたは他の機械デバイスを用いた摘出に実際上利用できない。したがって、側枝は、多くの場合、適切に摘出または清掃されない。往々にして、この点に関して何の努力もなされず、代わりに、化学的破壊および防腐処置プロセスを利用して、これらの領域に残存する物質を封鎖する。この手法は、抜歯および他の問題につながり得る破滅的な失敗の原因になる場合がある。さらに、主根管が、テーパーを有するファイルを用いて摘出されるとき、この操作により、望ましくないスミヤー層が主根管に沿って残されることがある。スミヤー層は、側枝の開口のいくつかを塞ぎ、根管を後で化学的に殺菌するために有害な物質を捕捉する他の問題を引き起こす場合がある。
【0006】
[006]歯科医は、神経および歯髄組織の機械的による主要な摘出の後で、根管系に1回
30~45分間残される次亜塩素酸ナトリウム溶液または他の種々の薬物を使用して、主根管と側枝の両方を化学機械的にデブリードマンおよび/または殺菌しようとすることができる。しかし、スミヤー層を清掃することおよび/またはより小さな捻れた側枝のいくつかに溶液を通らせて十分に湿らせることは困難であるため、この手法は必ずしも側枝およびその中に捕捉された物質をすべて完全にデブリードマンまたは無害化するわけではない。その結果、この方法を使用する多くの治療は、病状が再発するために、時間が経つと機能しなくなる。このため、再治療が必要となることが多く、抜歯が必要な場合もある。
【0007】
[007]歯内治療用ファイルの使用および根管治療の実施時のレーザ使用による関連する
欠点を減少または解消しようとする試みがなされてきた。これらの手法のうちのいくつかは、根管内の罹患組織および他の組織、細菌などの燃焼または炭化を伴う。これらの手法では、レーザ光は、罹患組織内またはその上に向けられるか焦点を合わせ、組織の強い燃焼、炭化、アブレーション、および破壊を行う非常に高い温度となると言われる。高い熱エネルギーを使用して組織を除去するこれらのアブレーション治療(ablative treatment)は、多くの場合、その下にある歯根5のコラーゲン線維および象牙質に損傷を与え、象牙質を構成するハイドロキシアパタイトを溶融することすらある。場合によっては、このような治療は、歯を取り囲む歯周物質および骨7で著しい熱を生じることがあり、骨および周囲組織の壊死を引き起こす可能性がある。加えて、このような治療中の高温により、主根管の壁が融解することがあり、多くの場合は側枝が封鎖され、それによって、それ以降の側枝の治療が妨げられる。根管治療にレーザを使用する他の試みでは、根管内に配置された流体内の焦点にレーザ光を集中させ、その流体を沸騰させた。流体を蒸発させることによって泡が生じ、泡が破裂すると根管から物質が侵食される。蒸発の潜熱を上回るまで流体温度を上昇させなければならないこのような治療では、流体の温度が著しく上昇し、主根管の一部分を融解させてその下にある象牙質、コラーゲン、および歯周組織に対する熱損傷を引き起こすこともある。これらの高エネルギーアブレーションレーザ治療によって歯構造にもたらされる損傷は、歯内治療用ファイルを利用する歯内療法と同様に、歯の完全性または強度を弱める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[008]したがって、生物学的構造を、損傷のない実質的に無傷の状態に保全しながら、
根管系の主根管ならびに側枝から罹患組織および細菌を除去する、低侵襲性のバイオミメティックな歯科的および医学的な治療が現在、引き続き必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、歯肉縁(gum line)の上まで延びる歯冠部分と、この歯冠と一体化され、かつそれから歯肉および隣接する顎骨の中に突き出す1つまたは複数の細長い歯根とを含む歯の根管を治療するための方法が提供される。各歯根は、歯冠内の髄室または歯冠腔(coronal chamber)と開放連通する(in o
pen communication with)神経および他の組織を含む歯髄を含む根管を有する。その治療のために前記1つまたは複数の歯根の根管への作業時アクセス(working access)を可能とする寸法に決められた髄室への開口が歯冠内に形成される。歯髄は、前記根管内の歯髄にアクセスする目的で髄室の中に開放領域を設けるために髄室から除去され、任意選択で、前記髄室内の前記開放領域と流体連通する前記根管内に開口を作製するために前記根管から歯髄の少なくとも一部を除去する。ヒドロキシル基を含有する液体が、少なくとも髄室内の開放領域に液体貯蔵部を形成するのに十分な量で投入(dispense)される。
【0010】
レーザ光線の源と、前記源に接続され、先端部分に前記レーザ光線を伝達するように構成された細長い光ファイバとを含むレーザシステムが提供される。先端は、円錐形の周囲壁を有する頂点に向けて先細りするテーパーを有する先端を含むことができ、その表面のほぼ全体は、前記レーザ光線がそこから略全方向に放射されるように、被覆されない。光ファイバは、前記光ファイバの表面が、前記テーパーを有する先端の全体の上で、および終端とテーパーを有する端の先頭との間のファイバの円筒状外表面の任意の部分の上で被覆されないように、源から、前記テーパーを有する前記先端の頂点から前記源に向かって基端方向に離隔された終端縁(terminus edge)まで約2から約10ミリメートルの距離延びる連続したシース被覆の形をしたクラッドも含むことができる。
【0011】
レーザの先端は液体貯蔵部にほぼ完全に浸漬され、前記レーザ光源を、約0.1Wから約1.5Wの出力レベル、約50から約1000マイクロ秒のパルス持続時間、約2Hzから約25Hzのパルス周波数、約10から約40秒のサイクル時間で、パルス出力する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】[009]図1aは、主根管または主要根管と、主根管から分岐する側枝と副側枝(sub-lateral canal)とを含む根管系を示す。これらの側枝のいくつかは、非常に小さく、任意の細菌および/またはウイルスを排除するために達することが非常に困難である。このような側枝は、主根管から分岐するので断面の曲げ、捻り、変化を生じる、および/または長く小さくなることがあり、それによってアクセスするまたは治療上目標とするのが非常に困難になる。図1bは、主根管または主要根管と、主根管から分岐する側枝と副側枝(sub-lateral canal)とを含む根管系を示す。これらの側枝のいくつかは、非常に小さく、任意の細菌および/またはウイルスを排除するために達することが非常に困難である。このような側枝は、主根管から分岐するので断面の曲げ、捻り、変化を生じる、および/または長く小さくなることがあり、それによってアクセスするまたは治療上目標とするのが非常に困難になる。
図2】[010]本発明の使用後の内部網状根管壁面をはっきり示す走査型電子顕微鏡写真(SEM)であって、示されるように、内部組織を取り去った後の根管壁構造の燃焼、融解、または他の変質(alteration)がなく、またはその多孔性が消失されずに保存される。その面は、高い多孔性および表面領域を保持し、すなわちゴム、ガッタパーチャ、ラテックス、レジンなどを使用して、以降の充填および防腐処置のために消毒される。
図3】[011]本発明の好ましい一実施形態により構成されたレーザファイバ先端の特徴の説明図である。
図4】[012]本発明の一実施形態によるレーザシステムの説明図である。
図5】[013]本発明の一実施形態によるレーザシステムのアプリケータ先端の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[015]本発明の好ましい一実施形態による方法および装置では、根管および側枝を効果
的に清掃する目的で根管内に投入された溶液中で光音響エネルギー波を生成するためにサブアブレーション(subablative)エネルギー源、好ましくはパルスレーザを使用する。本願に関する状況では、「サブアブレーション」という用語は、神経または他の天然の歯構造、物質、または組織の熱エネルギーにより誘起される破壊を生じたり引き起こしたりしない、すなわち歯物質を炭化、燃焼、または熱融解させないプロセスまたは機構を指すために使用される。本発明の好ましい一実施形態の構成に含まれるパルスレーザは、アブレーション効果を回避するために光エネルギーを多くの方向/向きで光ファイバ材料の表面から出させて、約0.1から約1.5ワット以下の比較的低い出力設定で維持された光エネルギー源から隣接する流体媒質に入らせるアプリケータ先端の露出された長さの近傍から略全方向に発する振動する光音響エネルギー波を誘導する。
【0014】
[016]本発明の一実施形態によれば、歯は、まず従来のように、歯冠腔または髄室およ
び関連する根管にアクセスするために歯冠内に歯冠アクセス開口(coronal access opening)を穿孔することによって、治療の準備が整えられる。これは、歯内治療の慣行(endodontic practice)で知られている根管治療のための歯の準備を目的とするカーバイドまたはダイヤモンドバーまたは他の標準的手法を用いて実施することができ、その後、髄室への根管の入口の上にある上部区域には、歯髄組織および他の組織は全体的にない。その後、シリンジまたは他の適切な機構の使用などによって、第1の溶液が髄室にゆっくりと投入され、少量が、今のところ除去されていない神経および他の組織を含む個別の根管に染み出し、および/または注入される。第1の溶液は、好ましくは、髄室を充填するのに十分な量で、髄室の上部の近傍に投入される。他の実施形態では、根管内の神経および他の組織の一部分は、第1の溶液が髄室に投入されて下降して根管に入る前に、ブローチまたは根管から神経を除去するための他の既知の方法を使用して除去されることができる。いくつかの実施形態では、単一の溶液のみを使用してよいが、以下により詳細に説明するように、複数の溶液または混合物を使用してもよい。
【0015】
[017]第1の溶液は、好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシル官能基および/また
は根管神経組織の破壊的なサブアブレーション分解を促進するためにすばやく振動するエネルギーの光音響波の形をしたレーザもしくは他のエネルギー源により励起されやすい他の励起性官能基(excitable functional grou)を有する分子を含む化合物を含む。キシレンなどの、励起性基を含有しない特定の流体は、エネルギー源を適用したときに、所望の光音響波を生成しないと思われることが認められている。本発明の一実施形態では、第1の溶液は、ヒドロキシル基または他の励起性基を含有する、水とエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の溶液などの標準的な歯科用洗浄剤混合物である。本発明の他の実施形態では、ヒドロキシル含有溶液は蒸留水のみであってよい。他の代替実施形態では、水以外の流体を含有する溶液を使用してもよいし、種々のペースト、過ホウ酸塩、アルコール、発泡材、化学に基づいた構造物(chemistry-based architecture)(たとえばナノチューブ、中空球)、および/またはゲル、または同種物の組み合わせを使用してもよい。加えて、種々の他の添加剤を溶液中に含めることができる。たとえば、限定するものではないが、第1の溶液は、ファイバの近傍から溶液を介して伝播されるエネルギー波への曝露によってエネルギー供給可能な(energizable)薬剤を含むことができる。これには、過酸化水素、過ホウ酸塩、次亜塩素酸塩、または他の酸化剤およびその組み合わせからなる群から選択される材料が含まれる。溶液中でエネルギー供給可能と思われるさらなる添加剤には、還元剤、シラノール、シラン化剤(silanating agent)、キレート剤、金属と配位結合したすなわち金属と錯体を形成したキレート剤(EDTA-カルシウムなど)、酸化防止剤、酸素の供給源、増感剤、触媒、磁性剤(magnetic agent)、迅速に膨張する化学物質、圧力または相の変化剤、および/または同種物の組み合わせからなる群から選択される材料が含まれる。溶液は、好ましくはナノチューブまたはバッキーボー
ルなどのフラーレンの性質を帯びたナノ構造またはミクロ構造を含有する粒子、または酸化漂白剤もしくは他の含酸素剤(oxygenated agent)などの溶液/混合物中の酸素化成分、エネルギー供給可能な成分、もしくは活性化可能な成分を用いて感作するか、もしくはこれらと相互作用することが可能な他のナノデバイス(マイクロサイズデバイスを含む)の懸濁液または混合物も含むことができる。種々の触媒は、酸化チタンまたは他の類似の無機剤もしくは無機金属とすることができる。第1の溶液は、溶液の表面張力を減少または変更するために表面活性剤または界面活性剤などのさらなる有効成分も含むことができる。このような界面活性剤は、神経、他の根管内組織、根管壁の間の潤滑性を向上させるために使用することができ、抗生物質、安定剤、消毒剤、抗ウイルス剤、殺菌剤、および極性または非極性溶媒なども使用することができる。システムで使用されるすべての材料は生体適合性を有し、必要に応じて歯科処置での使用に関してFDAその他の承認を得ることが特に好ましい。前述および他の添加剤のいずれかの量は、一般に、重量パーセントで数パーセントまたはほんの何分の1パーセント程度と非常に少ない。溶液/混合物の大半は、好ましくは水で、望ましくないまたは原因不明のイオン効果を回避するために好ましくは3回滅菌した蒸留水(sterile triple distilled water)である。
【0016】
[018]活性化エネルギー源(activating energy source)は
、歯冠部歯髄腔内に含まれる第1の溶液に適用される。好ましい一実施形態では、この活性化エネルギー源はパルスレーザ10である。レーザ光エネルギー16は、レーザ光源12と、その基端(proximate end)においてレーザ光源12に取り付けられ、その末端に隣接するアプリケータ先端20を有する光ファイバ14とを使用して送達される。光ファイバ14は、好ましくは、約200ミクロンから約400ミクロンの直径を有する。直径は、歯冠部歯髄腔に、さらに必要に応じて根管自体に、容易に嵌合するのに十分なほど小さくなければならないが、光音響効果を生じ、かつ回避可能な光の漏洩またはエネルギーの損失および歯またはファイバ先端の損傷を防ぐために、その中に伝えられた光を介して十分なエネルギーを提供するのに十分なほど大きくなければならない。好ましい一実施形態では、レーザ光源は、NdYAGレーザ、ErYAGレーザ、HoYagレーザ、NdYLFレーザ、チタンサファイアレーザ、またはErCrYSGGレーザなど、約700nmから約3000nmの波長を有する固体レーザである。ただし、他の適切なレーザ光源を種々の実施形態において使用することができる。
【0017】
[019]適切な寸法に決められたレーザアプリケータ先端20は、好ましくは、少なくと
も第1の溶液に十分に浸漬されるまで、歯冠腔内に設置される。「十分に浸漬される」とは、液面が光ファイバのクラッドまたは他の被覆18の縁と同じ高さであることを意味する。好ましくは、先端に隣接する光ファイバの任意のクラッドまたは被覆18の最末端縁は、ファイバの末端先端または端部の末端から約2~10mm、最も好ましくはそこから約5mm離隔される。その結果、ファイバの末端の最大約10mm、最も好ましくは約5mmは被覆されない。好ましくは、先端部のこの非被覆部の長さのすべてまたは実質的にすべてが浸漬される。アプリケータ先端の非被覆部が十分に浸漬されない場合、光が液体表面上の周辺に漏れ得るので、十分なエネルギーが流体に伝達されないことがある。したがって、クラッドの最末端縁または最外端縁を約10mmより多く離隔することは、それによってシステムの有効性が減少する可能性があるので、回避するべきであると考えられる。いくつかの適用例では、ファイバの端の非被覆領域の浸漬に利用可能な流体の体積および高さを増加させるために歯の開口の周囲およびその上に堰堤(dam)および貯蔵部(reservoir)を設けることが必要な場合がある。このような例では、液体の体積が増加し、先端部の非被覆領域の浸漬が深くなることによって、十分なエネルギーレベルを付与すると所望の光音響波強度が生じることができると思われる。このような例としては、たとえば上顎/下顎の中切歯または破折歯などの小さな歯を挙げることができる。堰堤または貯蔵部が使用されるある適用例では、流体の体積を増加させるため、先端部と
クラッドの間に10mmを超える間隔を有するレーザ先端を使用することが望ましい場合がある。
【0018】
[020]アプリケータ先端の最末端が端点に向かって先細りする、すなわち末端が「テー
パーを有する先端」22を有することが、好ましい一実施形態における本発明の特徴である。最も好ましくは、テーパーを有する先端は、約25から約40度のテーパー開先角度(included taper angle)を有する。したがって、アプリケータ先端20は、好ましくは、先端部から離れた間隔内の1点に光を集中させるように構成された集束レンズではない。このような構成は、1点に焦点を合わせたレーザ光によって高い熱エネルギーが生成されるために、アブレーション効果を引き起こすと考えられる。むしろ、本発明の好ましい実施形態による、テーパーを有するファイバ先端22のテーパー角があることおよび先端部からクラッドの端まで後方に離隔することによって、レーザファイバの端からだけでなく、先端からクラッドの縁まで比較的広い表面領域からの放射を意図したレーザエネルギーの比較的広い分散が可能であると考えられる。目的は、側面24から、およびテーパーを有するアプリケータ先端のテーパーを有する領域22から、略全方向にレーザ光を放射すること、したがって、光ファイバの石英材料の露出面のほぼ全体から周囲液体および隣接する材料に伝播する、より大きなまたはより全方向的な光音響波を発生させることである。特に、これによって、より高いレベルの、焦点を合わせたまたは屈折した放射レーザエネルギーに関連するアブレーション効果が回避され、好ましくは排除される。本発明による先端設計は、各パルスの立ち上がり区間の比較的急なまたは長い立ち上がり時間を示し、かつファイバの端の露出領域から流体を介して略全方向に伝播する、周囲流体媒質中の光音響波の大きさおよび方向を提供するように選択される。したがって、本発明によるテーパーを有する先端は、(標準的な先端の二次元の略平坦な円形の表面領域と比較して)より大きな、被覆されていない円錐形の表面領域上および後方に延びる円筒状壁表面上にレーザエネルギーを分散させ、それによって、連続した光音響波の立ち上がり区間が伝搬可能なはるかに大きな領域を生じさせる効果を有する。いくつかの実施形態では、先端部に隣接するファイバの露出領域は、溶液および隣接組織内で光音響波エネルギーの到達範囲をさらに広範なものにするように光放射の表面領域および角度の多様性(diversity)を増加させるために、つや消し(frosting)またはエッチングなどのテクスチャリングを含むことができる。
【0019】
[021]本出願人らは、レーザを第1の溶液に当てるときに、熱エネルギーの生成を制限
するようにレーザエネルギーを溶液に付与することが重要な場合があることを発見した。本発明では、アプリケータ先端を第1の溶液中に浸漬した後で、レーザエネルギーが、好ましくは、サブアブレーション閾値設定を使用して第1の溶液に付与され、それにより、以前にレーザを用いた根管治療を実施しようとした際に使用したアブレーション出力設定に起因する根管領域または壁における著しい熱エネルギーの生成によって生じる根管の象牙質壁、歯の根尖部、または周囲の骨もしくは組織における約5℃を超える温度上昇によって引き起こされる熱によって誘発される炭化、融解、または他の影響を回避する。本発明の好ましい実施形態による本発明の実施によって、わずか数℃の観測可能な温度上昇が溶液中で発生し、その結果、象牙質壁および他の隣接する歯構造および組織の温度上昇は、発生したとしても、数℃に過ぎない。これは、このような物質および組織の永久的な損傷を避けるために、これらを、5℃を超える温度上昇に対して任意の有効な時間曝露することを回避するための標準的な制約をはるかに下回る。
【0020】
[022]本発明者らは、約100ナノ秒から約1000マイクロ秒のレーザパルス持続時
間と、約50マイクロ秒の最も好ましいパルス幅を用いた、約0.1ワットから約1.5ワットの比較的低い出力設定によって、根管内でまたはこれに隣接して任意のアブレーション効果または他の熱効果を引き起こすために流体または周囲組織を加熱しなくても、所望の光音響効果が発生することを見出した。約5から25Hzの周波数が好ましく、約1
5Hzの周波数は、根管内の神経および他の組織を分解するための流体媒質における圧力波の調和振動の最適な増強をもたらすと思われる。
【0021】
[023]理想的な光音響波を発生させることが見出された特に好ましい出力レベルは、特
定の歯の平均歯根体積と関係がある。以下の図表(表1)は、本発明による、さまざまな種類およびサイズの歯における根管の治療に対して何が好ましい範囲の出力レベルと思われるかについて示す。
【0022】
【表1】
【0023】
[024]レーザが第1の溶液中に浸漬されるとき、レーザは、好ましくは約10秒から約
40秒の範囲の時間、最も好ましくは約20秒の時間、パルス出力される。レーザが約40秒より長くパルス出力される場合、過剰な熱エネルギーが流体中で出現し始め、場合によっては、上記で説明したように、歯の内部およびその周囲で有害な熱効果が生じることがある。かなり驚くべきことに、本発明のパラメータの条件下でのパルス出力によって、パルス出力中に根管から液圧で自然に排出する(self-eject)ことも観察される根管内のすべての神経、歯髄、および他の組織を依然として完全に破壊および/または分解しながら、発生したとしてもわずか数℃の測定可能な温度上昇が流体媒質中で発生することが見出された。
【0024】
[025]レーザが第1の溶液中でパルス出力された後、第1の溶液は安定化でき、次いで
同じまたは異なる溶液中でレーザパルス治療を再度繰り返すことができる。ある実施形態では、溶液は、残渣を徐々に除去するために、および熱エネルギーの発生または象牙質周囲の壁もしくは他の隣接構造への伝達を回避するために、レーザのパルス出力周期を繰り返す間に除去することができる。歯冠腔および根管は、標準的な歯科用洗浄剤を用いて洗浄でき、次に、歯冠腔に溶液を再度入れて、さらなるレーザパルス治療を実施することができる。任意の数のパルス出力フェーズまたは周期が繰り返され得るが、根管内のすべての物質の十分に有効な除去は約7回未満の周期で達成できると考えられる。
【0025】
[026]歯科医が本発明による根管治療を実施するのを支援するために、本発明の処置の
実施において重要と分かっている種々のパラメータ、機械の設定などの関係を与える光音響活性度指数(photoacoustic activity index)を開発した。本発明の実施において重要と思われる要因には、出力レベル、レーザパルス周波数、パルス持続時間、第1の溶液中の1分子当たりの平均的な励起性官能基の割合、レーザ光ファイバの直径、摘出処置の完了時に繰り返されるパルス周期の数、各周期の持続時間、第1の溶液の粘度、およびクラッドの先端と端の間の距離が含まれる。上記の要因のうち
特定のものの、理想的または最も好ましい要因値と思われるものからの偏差を関連付ける係数を決定した。これらの係数の表を以下に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】
【表6】
【0031】
【表7】
【0032】
【表8】
【0033】
【表9】
【0034】
【表10】
【0035】
[027]使用者は、機器、設定、および材料のパラメータに対応する上記の表の係数を次
の式に入力することができる。
光音響活性度指数(「PA」指数)=DPDxC(fq)xC(pw)xC(hy)xC(fd)xC(rp)xC(sa)xC(vs)xC(sl)
得られるPA指数値が、約0.1より大きい、より好ましくは約0.3を上回る場合、機器および材料は、一般に、根管内からのすべての根管神経、歯髄、および他の組織の分解およびほぼ完全かつ容易な除去に対して効果的な光音響波を発生させるために許容可能とすることができる。PA指数が約0.1未満の場合、所望のPA指数である1または一致(unity)にさらに近付くために、機器のセットアップ、設定、および方法のパラメータを変更する必要があることが示され得る。
【0036】
[028]本発明のパラメータおよび処置を使用して、除去または破壊されるべき根管組織
および他の物質は、主に高温への曝露による熱蒸発(thermal vaporization)、炭化、または他の熱効果を介してではなく、根管の液体の光音響流動(photoacoustic streaming)および根管の液体内の、光子励起アコースティックストリーミング(photon initiated photoacoustic streaming)を介して起動されるレーザである他の作用を介して、除去または破壊されると考えられる。比較的高い立ち上がり区間を有する光音響波は、レーザ光が光ファイバ材料の露出面から溶液中に移るときに生成される。レーザ光は、光ファイバの露出面と周囲液体の境界面から生ずる溶液を通過する波の非常に迅速で比較的激しい振動を作り出すと考えられる。放射される光エネルギーの迅速で激しい微動(microfluctuation)は、 特に根管系を通ってその中に伝播して根管系内で振動するエネルギーの光音響波を生成するファイバの露出面に隣接するヒドロキシル含有分子の急速な励起および/または膨張ならびに脱励起(de-excitation)および/または膨張を引き起こすと考えられる。これらの激しい光音響波は、細胞の遊離および/または細胞溶解および他の影響を促進し、かつ溶液中に浸漬された根管系および側枝系内のほぼすべての組織の迅速で容易な劣化/分解をもたらすかなりの振動エネルギーを提供すると考えられる。流体の化学作用と組み合わせたパルス出力する光音響エネルギー波も、神経および他の組織の残存物を含む得られる溶液/混合物が液圧効果によって根管から自然に排出されるまたは基本的に「ポンプで汲み上げられる」ことが観察されるように、熱によって誘発される根管内の神経および他の組織の著しい炭化または他の熱効果がなくてもそれらに多孔性をもたらし(porositize)、膨張させて最終的に分解する、神経および他の組織の膨張および収縮を物理的に激しく破壊する周期を発生させると考えられる。
【0037】
[029]光音響効果によって、主根管内の流体媒質の全体を通じて側枝に伝播するエネル
ギー波が生じ、それによって、歯根系(root system)全体が清掃される。実質的に圧縮不可能な流体媒質を使用することによって、光音響効果によって生じた波が、側枝を通って直ちに伝えられる。また、根管は凹面状のテーパーを有するので、光音響波は、頂点または行き止まり領域に向かっての破壊をさらに増大するために側枝の端に向かって横切るとき、増幅されると考えられる。
【0038】
[030]本発明の特定の実施形態では、第2の溶解溶液が、エネルギー源/第1の溶液に
よる治療の後で、根管に加えられることができる。この溶解溶液は、主根管内またはあらゆる側枝内に残存し得る任意の残りの神経構造または他の残渣を化学的に溶解および/または分解する。好ましい溶解溶液としては、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸ナトリウム、過ホウ酸塩、水酸化カルシウム、酢酸/潤滑剤/ドキシサイクリン、ならびにキレート剤(EDTA)などの物質および酸化チタンなどの無機剤を溶解する他の類似の神経組織または基材(matrix)がある。
【0039】
[031]最後に、所望の組織が歯の内部から除去された後、根管は、当業界で標準的な慣
行により、任意の残存する残渣および残存する溶液を除去するために洗浄され、次いで、ガッタパーチャ、根管レジンなどの最適な材料を用いて閉鎖されることができる。
【0040】
[032]フォーマイカ表面のダッペンディッシュ(Dampen dish)に流体を配
して定性実験を実施した。レーザアプリケータ先端は、流体内に設置され、繰り返し発射された。光音響波は、フォーマイカ表面上のダッペンディッシュを振動させ、可聴音を発生させた。特定の先端では、この可聴音は、レーザの出力レベルが増加するにつれて大きくなった。これは、ダッペンディッシュから2.54cm(1インチ)離して騒音計を設置してdBレベルを記録することによって確認された。これから、出力レベルは光音響波の振幅に比例することが示された。次に、レーザ出力レベルを一定に保って、先端を変化
させた。テーパーを有する先端および剥離したシースを有する先端は、標準的な平坦な先端より大きな光音響波を発生させた。次いで、テーパーを有する剥離した先端に、つや消しまたはエッチングを施した。この先端を検査したところ、つや消しを施していない先端より大きな光音響波を生成することが示された。これが3つの異なる出力レベルで真であることが確認された。出力レベルは一定に保ったので、光音響波の振幅は露出領域および表面の処理にも比例すると思われる。
【0041】
[033]アプリケータ先端の定量調査では、MEMS圧力センサを利用して光音響波の振
幅を測定した。この検査から、先端の形状およびテクスチャリングを変化させることによって光音響波の伝播が劇的に増加することが示された。本発明者らは、アプリケータ先端の端からクラッドを剥離すると、光音響波の効果が増加することも発見した。この点に関して、小さなプラスチック製バイアルを、小型のMEMSピエゾ抵抗式圧力センサ(Honeywellのモデル24PCCFA6D)に液圧で密に結合した流体接続に嵌合させた。センサの出力は、差動増幅器を経てデジタルオシロスコープ(TektronicsのモデルTDS 220)に結合した。バイアルおよびセンサに水を満たした。さまざまなアプリケータ先端構成を有するレーザ先端を、バイアル内の液面より下に十分に沈め、10HZの周波数で発射した。光音響圧力波の大きさを圧力センサで記録した。
【0042】
[034]テーパーを有する先端では、標準的な鈍端の先端に比べて、光音響波の生成から
測定した圧力の170%の増加が観察された。テクスチャリング(つや消し)を施したテーパーを有する先端では、標準的な鈍端の先端に比べて、光音響波の生成から測定した圧力の580%の増加が観察された。略直線的な方向で放射されるよりも、つや消しによって光が全方向に散乱し、より多くの流体分子の励起および膨張が起こる。
【0043】
[035]テーパーを有する端からポリアミドシースを約2mmから約10mm剥がすこと
によって、光音響波生成の増加が見られた。レーザ光はコヒーレントで、典型的には実質的に直進するが、いくらかの光は、ある角度でポリアミドシースに反射する。この光が光路を進むとき、引き続きポリアミドシースの内部に反射し、最終的には、シースが終わってシースで覆われていない区間を露出させると、シースに対してある角度で出て行く。したがって、レーザ光のいくらかも、テーパーを有する先端部の上流でポリアミドシースが取り外されたところで出て行く。テーパーを有する区間のすぐ上流でシースが2~10mm取り外されている先端を、上述の検査のセットアップに設置したところ、光音響波の著しく多い生成が示された。
【0044】
[036]本発明の種々の他の実施形態では、レーザ以外のエネルギー源を使用して光音響
波を発生させることができる。レーザ以外のエネルギー源には、光エネルギー、音響、超音波、光音響、熱音響、微小機械による(micromechanical)撹拌、磁場、電場、高周波、および溶液にエネルギーを付与できる他の励起機構または他の類似の形態の他の供給源が含まれるが、これらに限定されない。これらの供給源のいくつかは、歯の構造を外部から貫通する。さらなるサブアブレーションエネルギー源を使用して、化学音響波(chemoacoustic wave)(衝撃波および圧力波を生ずる急激な化学物質の膨張によって生じる衝撃波)などの、他のタイプの圧力波を溶液中で生ずることができる。このような波は、たとえば、励起時に急激に膨張する化学物質を有するナノ粒子を加えること、ハードシェル(たとえばポリビニルアルコール)でナノ粒子を被覆すること、および光、超音波、高周波などのエネルギー源で化学作用を活性化することによって生ずることができる。活性化する化学物質が膨張するので、圧力がハードシェル内で増大し、シェルが破裂すると、衝撃波が生じ、光音響波と同じように流体の全体にわたって伝播することができる。加えて、光音響波は、化学音響波を発生させるための活性化エネルギー源とすることができる。
【0045】
[037]さらに、本発明は、歯のカリエス(dental carie)、窩洞(cav
ities)、または歯のう蝕の治療など、根管治療以外の種々の処置に使用されることができる。加えて、本発明は、たとえば歯科用インプラント、骨感染症、歯周疾患、血管の凝固、臓器の結石、瘢痕組織など、感染症が問題となる骨および他の高度な網状物質の治療に使用可能とすることができる。穿孔された可能性がある先端の周囲に管構造を追加することにより、先端の周囲への流体の導入が可能となり、それによって、光音響波が、歯周組織および歯肉組織など、液量(fluid volume)を含まない、より難しい領域内に向けられる。これは、一種の光音響伝導管(photoacoustic transmission tube)と考えられる。本出願の処理は、治癒剤、化学物質、または生物製剤、すなわち抗生物質、ペプチド、タンパク質、酵素、触媒、遺伝子(DNA、mRNA、またはRNA、または誘導体)、または抗体を用いた治療薬、またはそれらの組み合わせへのより迅速なアクセスおよび浸透を可能とするために罹患組織または物質を膨張させることが必要な他の軟組織での適用例でも使用されることができる。場合によっては、本発明の方法は、罹患組織領域を迅速に溶解または破壊するために使用されることができる。加えて、本発明は、膿瘍内の罹患組織を膨張するために使用されることができ、治癒剤または生物学的薬剤の極めて迅速かつ効率的な浸透を可能にする。光音響波によって組織内に多孔性がもたらされることによって、破壊、治癒、または清掃、またはこれらの事象の組み合わせを生じ得る、以降の化学種の急速な注入が可能となり得る。この治癒作用の速度が速いため、標準的な治癒過程に必要な時間が長い、すなわち最初の感染症を感染症の伝播より速く制御できないので隣接する組織が感染する場合があるために現在は実施可能でない医療処置が可能となり得る。この場合、多孔性を向上させるように罹患組織を膨張させることによって、抗生物質または他の薬剤などの薬物へのほぼ瞬間的なアクセスが可能となり得る。
【0046】
[038]そのうえ、本発明は、移植の領域を含む細胞および/または組織の活性化、幹細
胞または始原細胞の亢進時の使用、ならびに増殖および分化を目的としたこれらの細胞の付着および/または刺激を開始、構成、または段階的に行うために適用されることができる。本発明はまた、たとえば、前駆細胞、始原細胞、または幹細胞などの細胞を活性化させるため、固有の新生(inherent nascent)骨または組織の成長および分化を促進するため、ならびに幹細胞または始原細胞が付着時に亢進され、増殖および分化のために刺激される移植において使用可能と思われる。
【0047】
[039]本発明の諸代替実施形態のうちの1つでは、ナノチューブまたは他のミクロ構造
は、磁場を印加することによって治療用流体内で動き回ることができる。代替磁場またはパルス化磁場は、治療用流体の大きな運動および撹拌を付与することができる。これらの場は歯全体を貫通するので、側枝系または副根管系の全体で撹拌作用も発生する。運動中のこれらの微粒子は、根管系内のあらゆる細菌、ウイルス、神経物質(nerve material)、または残渣に対する研磨材(abrasive)としても作用する。その効果は、根管系のより優れた清掃およびデブリードマンを提供するために、根管系の全体にわたって流体がより完全に循環することである。磁性材料は、ナノチューブまたはその磁気モーメントを増加させる他のミクロ構造内に挿入されたり、その上に吸着されたり、またはその中に吸収されたりすることもできる。
【0048】
[040]TiOまたは他の類似の化合物は、UV光に露光することによって、または電
場に入れることによって、活性化されて殺菌性となることができる。これらは、励起されると、細菌および残存する神経組織などの他の有機化合物を破壊することができる。このような化合物は、治療薬の一部とすることができ、治療用流体に向けられたUV光源、流体に浸されたUV源、またはUVレーザ光源によって活性化することができる。これらのTiOまたは他の類似の化合物は、代替電場またはパルス化電場によって活性化されることもできる。このような電場を供給する1つの手段は、歯のブリッジを形成(brid
ge)する外部デバイスによるものとすることができる。場は、歯全体にわたって伝播するので、副根管または側枝内のTiOまたは他の類似の化合物とも反応する。この作用は、微粒子を使用する上述の運動作用(motion action)と組み合わせることもできる。この組み合わせにより、根管は、より徹底的に清掃およびデブリードマンされる。電場は、外部から生成されて根管構造全体を貫通するので、歯が酸化チタンおよびその殺菌性を再活性化するために密閉された後、数か月または年単位で使用することができる。
【0049】
[041]本開示の好ましい実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示された
ものである。この開示は、網羅的であること、または種々の実施形態を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。上記の教示に鑑みて、他の変更または変形が可能である。実施形態について、基本的概念の原理およびその実際的な適用例の最良の説明を提供し、それによって当業者が種々の実施形態を、企図される特定の用途に適するように種々の変更を加えて利用できるように、選択し説明した。すべてのこのような変更および変形は、添付の特許請求の範囲が公平に、合法的に、公正に権利を与えられる範囲に照らして解釈されるときに判断される本開示の範囲内に入る。
図1
図2
図3
図4
図5