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特許7169078回線制御装置、通信チャネル割当て方法および無線通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】回線制御装置、通信チャネル割当て方法および無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20221102BHJP
   H04W 84/08 20090101ALI20221102BHJP
【FI】
H04W72/04 132
H04W84/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018058957
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019176200
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】縄田 光雄
【審査官】久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-102062(JP,A)
【文献】特開2017-184222(JP,A)
【文献】特開2001-128229(JP,A)
【文献】特開平7-245777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局を介して通信チャネルを移動局に割当てる回線制御装置であって、
前記移動局の位置情報を取得し、
前記位置情報に基づいて、前記移動局が存在する領域を判定し、
前記移動局が存在する領域と、前記移動局に割当てている通信チャネルに基づいて、領域毎に割当てが可能な通信チャネルを判断し、
発信要求を送信した移動局へ通信チャネルを割当てる場合、どの前記移動局にも割当てていない空チャネルがあるかどうかを判定し、
前記空チャネルがあるとき、当該空チャネルを当該移動局へ割当て、前記空チャネルがないとき、当該移動局が存在する領域に割当てが可能な通信チャネルを当該移動局へ割当てる、
回線制御装置。
【請求項2】
移動局の位置情報を取得し、
前記位置情報に基づいて、前記移動局が存在する領域を判定し、
前記移動局が存在する領域と、前記移動局に割当てられている通信チャネルに基づいて、領域毎に割当てが可能な通信チャネルを判断し、
どの前記移動局にも割当てられていない空チャネルがあるかどうかを判定し、
前記空チャネルがある場合、当該空チャネルを、発信要求を送信した移動局へ割当て、
前記空チャネルがない場合、当該移動局が存在する領域に割当てが可能な通信チャネルを当該移動局へ割当てる、
通信チャネル割当て方法。
【請求項3】
移動局と、基地局と、前記基地局を介して通信チャネルを移動局に割当てる回線制御装置と、をそなえた無線通信システムであって、
前記回線制御装置は、
前記移動局の位置情報を取得し、
前記位置情報に基づいて、前記移動局が存在する領域を判定し、
前記移動局が存在する領域と、前記移動局に割当てている通信チャネルに基づいて、領域毎に割当てが可能な通信チャネルを判断し、
前記回線制御装置は、
発信要求を送信した移動局へ通信チャネルを割当てる場合、どの前記移動局にも割当てていない空チャネルがあるかどうかを判定し、
前記空チャネルがあるとき、当該空チャネルを当該移動局へ割当て、前記空チャネルがないとき、当該移動局が存在する領域に割当てが可能な通信チャネルを当該移動局へ割当てる、
無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に、回線制御装置、通信チャネルの割当て方法および回線制御装置を備えた無線通信システムに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムとして、国、地方自治体等の公共分野(防災、消防、救急)、電力、ガス、鉄道等の公益分野が使用する無線通信システムがある。この種の無線通信システムは、MCA(Multi Channel Access)方式を採用し、回線制御装置や制御卓(統制台)などで構成される制御局、一つ或いは複数の基地局、及び、複数の端末局で構成される。端末局は、携帯無線機や車載無線機等の移動可能な無線端末(移動局)や固定的に設置された無線端末である。端末局と基地局との間は、共通アクセスチャネルである「制御チャネル」で接続情報をやり取りし、回線制御装置から指定された「通信チャネル」で音声または非音声通信を行う。
【0003】
MCA(Multi Channel Access)方式の無線通信システムでは、1つの基地局が1つの周波数の通信チャネルを利用すると、回線制御装置は、同一波干渉を防ぐため、他の基地局によるその周波数の通信チャネルの使用を禁止とする制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-175798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある基地局で使用された通信チャネルは、他の基地局で使用することが出来ない。よって、同一波干渉領域に存在しない移動局も、その通信チャネルで通信することができない、という課題がある。
【0006】
本開示の課題は、移動局が存在する位置(座標)により、同時に使用できる通信数を多くすることが可能な回線制御装置を提供することにある。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0009】
すなわち、基地局を介して通信チャネルを移動局に割当てる回線制御装置は、移動局の位置情報を取得し、位置情報に基づいて、移動局が存在する領域を判定し、移動局が存在する領域と、移動局に割当てている通信チャネルに基づいて、領域毎に割当てが可能な通信チャネルを判断し、移動局へ通信チャネルを割当てる場合、当該移動局が存在する領域に割当て可能な通信チャネルを当該移動局へ割当てる。
【発明の効果】
【0010】
上記回線制御装置によれば、移動局が存在する位置(座標)により、同時に使用できる通信数を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図2図1の無線通信システムにおける制御チャネルおよび通信チャネルで利用する周波数の関係を示す図である。
図3】実施例に係る通信方式を説明する図である。
図4】実施例に係る複数の基地局の通信エリアの構成を例示的に示す図である。
図5】実施例に係る基地局伝搬領域テーブルの構成例を示す図である。
図6】実施例に係る基地局受信可能エリアテーブルの構成例を示す図である。
図7】実施例に係る移動局情報テーブルの構成例を示す図である。
図8】実施例に係る通信状態テーブルの構成例を示す図である。
図9】実施例に係る通信候補チャネルテーブルの構成例を示す図である。
図10】実施例に係る各領域と各移動局の位置関係を例示的に示す図である。
図11A】実施例に係る通信チャネルの割当て方法を説明するための制御フローを示す図である。
図11B】実施例に係る通信チャネルの割当て方法を説明するための制御フローを示す図である。
図12】実施例に係る通信チャネルの割当て方法の具体例を説明する図である。
図13】実施例に係る通信チャネルの割当て方法の具体例を説明する図である。
図14】実施例に係る通信チャネルの割当て方法の具体例を説明する図である。
図15】実施例に係る通信チャネルの割当て方法の具体例を説明する図である。
図16】実施例に係る通信チャネルの割当て方法の具体例を説明する図である。
図17】実施例に係る通信チャネルの割当て方法の具体例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例、および、比較例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【実施例
【0013】
(無線通信システムの構成)
図1は実施例に係る無線通信システムの構成例を示す図である。無線通信システム1は、国、地方自治体等の公共分野(防災、消防、救急)、電力、ガス、鉄道等の公益分野が使用する自営無線通信システムとして構成される。無線通信システム1は、MCA(Multi Channel Access)方式を採用し、統制台10や回線制御装置11を含む制御局と、複数の基地局BS1、BS2、BS3と、端末局としての複数の移動局MS1、MS2、MS3と、で構成される。移動局MS1、MS2、MS3は、携帯無線機や車載無線機等の移動可能な無線端末である。なお、端末局は、固定的に設置された無線端末とされても良い。
【0014】
複数の移動局(MS1、MS2、MS3)と基地局(BS1、BS2、BS3)との間は、共通アクセスチャネルである「制御チャネル(C)」で接続情報をやり取りし、回線制御装置から指定された「通信チャネル(S1、S2、または、S3)」で音声または非音声通信を行う。
【0015】
基地局(BS1、BS2、BS3)のおのおのは、特に制限されないが、1つの制御チャネルCと、3つの通信チャネルS1、S2、S3を用いて、移動局(MS1、MS2、MS3)と通信を行う。各基地局(BS1、BS2、BS3)は、時間をずらして間欠に制御チャネルCによる通信を行うことで、制御チャネルCの干渉を防いでいる。
【0016】
図2は、図1の無線通信システムにおける制御チャネルおよび通信チャネルで利用する周波数の関係を示す図である。制御チャネルCは、上りでは、周波数F1を使用し、下りでは、周波数F1と異なる周波数f1を利用する。ここで、「上り」とは移動局から基地局への通信を意味し、「下り」とは基地局から移動局への通信を意味している。通信チャネルS1は、上りでは、周波数F2を使用し、下りでは、周波数F2と異なる周波数f2を利用する。同様に、通信チャネルS2は、上りでは、周波数F3を使用し、下りでは、周波数F3と異なる周波数f3を利用する。また、通信チャネルS3は、上りでは、周波数F4を使用し、下りでは、周波数F4と異なる周波数f4を利用する。なお、各周波数(F1-F4、f1-f4)は互いに異なる周波数である。図2に示される制御チャネルおよび通信チャネルで利用する周波数は、複数の基地局と複数の移動局とで共有されている。
【0017】
図3は、実施例に係る通信方式を説明する図である。図3には、移動局MS1から移動局MS2へ通話を行う際の回線制御装置11の制御例が示される。
【0018】
まず、移動局MS1が、制御チャネルCの上り周波数F1を利用して、移動局MS2への発信要求を基地局BS1へ送信する(S31)。基地局BS1は、回線制御装置11へ移動局BS1の発信要求を送信する(S32)。回線制御装置11は、基地局BS1からの発信要求の受信に基づいて、利用されていない通信チャネルの検索を行う。例えば、通信チャネルS1が利用可能である場合、回線制御装置11は、通信チャネルS1の上り周波数F2が指定された発信応答を、基地局BS1へ送信する(S33)。基地局BS1は、回線制御装置11からの発信応答に基づいて、発信応答(F2)を移動局MS1へ送信する(S34)。この送信は、制御チャネルCの下り周波数f1を利用して行われる。その後、移動局MS1は、利用する周波数を、制御チャネル(F1)から通信チャネル(F2)へ変更して、通話中の状態になる。
【0019】
一方、回線制御装置11は、発信元の移動局MS1へ通話チャネルS1(F2)を指定した後、着信先の移動局MS2へ通話チャネルS1(F2)を指定するため、通信チャネルS1の上り周波数F2が指定された着信要求を、基地局BS1へ送信する(S35)。基地局BS1は、回線制御装置11からの着信要求に基づいて、着信要求(F2)を移動局MS2へ送信する(S36)。この送信は、周波数f1を利用して行われる。着信要求(F2)を受信した移動局MS2は、着新応答を、制御チャネルCの上り周波数F1を利用して、基地局BS1へ送信する(S37)。その後、利用する周波数を、制御チャネル(F1)から通信チャネル(F2)へ変更して、通話中の状態になる。
【0020】
移動局MS2からの着信応答を受信した基地局BS1は、回線制御装置11へ移動局MS2の着信応答を送信する(S38)。これにより、移動局MS1と移動局MS2との通話(S39、S40)が、基地局BS1の通信チャネルS1を利用して行われる。
【0021】
この時、比較例において、回線制御装置11は、基地局BS1の通信チャネルS1が利用されたことに基づいて、基地局BS2、BS3の通信チャネルS1の利用を禁止する制御を行う。これは、各基地局(BS1,BS2,BS3)の通信チャネルS1が同一の周波数を利用するので、同一周波数の利用による干渉を防止するために行われる。同様に、各基地局(BS1,BS2,BS3)の通信チャネルS2も、同一の周波数を利用する。各基地局(BS1,BS2,BS3)の通信チャネルS3も、同一の周波数を利用する。
【0022】
図4は、複数の基地局の通信エリアの構成を例示的に示す図である。図4には、3つの基地局BS1、BS2、BS3の各通信エリアの構成が例示的に示されている。例えば、基地局BS1は通信エリアBS1ARで示される様な円形の通信エリアとし、基地局BS2は通信エリアBS2ARで示される様な円形の通信エリアとし、基地局BS3は通信エリアBS3ARで示される様な円形の通信エリアとする。
【0023】
図4において、領域(エリア)A000は、3つの通信エリアBS1AR、BS2AR、BS2ARの領域外の領域であり、通信不可能な領域を示している。領域A100は、基地局BS1の通信エリアBS1ARであり、かつ、基地局BS1のみが利用可能な領域である。領域A010は、基地局BS2の通信エリアBS2ARであり、かつ、基地局BS2のみが利用可能な領域である。領域A010は、基地局BS3の通信エリアBS3ARであり、かつ、基地局BS3のみが利用可能な領域である。
【0024】
領域A110は、通信エリアBS1ARと通信エリアBS2ARとが重なった領域であり、基地局BS1、BS2が利用可能である。同様に、領域A101は、通信エリアBS1ARと通信エリアBS3ARとが重なった領域であり、基地局BS1、BS3が利用可能である。領域A011は、通信エリアBS2ARと通信エリアBS3ARとが重なった領域であり、基地局BS2、BS3が利用可能である。
【0025】
領域A111は、通信エリアBS1AR、通信エリアBS2ARおよび通信エリアBS3ARが重なった領域であり、基地局BS1、BS2、BS3が利用可能である。
【0026】
つまり、図3の通信方式による通信チャネルの割り当て方法のみでは、次のような課題がある。
【0027】
例えば、領域A100に、移動局MS1と移動局MS2とが存在し、移動局MS1から移動局MS2への通話を通信チャネルS1で行うと、同一の周波数の干渉領域でない領域A010、A001における通信で、通信チャネルS1を行うことが出来ないので、同時に利用可能な回線数が多くできないという、課題がある。
【0028】
つまり、比較例の通信方式において、最大で、通信チャネルS1、S2、S3の3回線が同時に利用できるが、それ以上の回線数を用いた通信が利用できない。したがって、基地局の無線リソースの利用効率が低くなってしまう。
【0029】
また、基地局BS1,BS2,BS3の電波伝搬領域は、計算や事前の測定により、ある程度予測可能であるが、局所的な電波の状況や環境変化(新たに建物が立った場合等)による状況までは把握しがたい。
【0030】
以下、図面を用いて実施例に係る無線通信システム1の回線制御装置11および通信チャネルの割当て方法を説明する。
【0031】
実施例においては、無線通信システム1の回線制御装置11は、移動局のGPS装置から移動局の位置情報(緯度、経度情報)を定期的または通信開始時に取得し、取得した移動局の位置情報に基づいて、移動局がどの通信エリアのどの領域に位置しているかを特定する。そして、回線制御装置は、特定された領域における通信状況から割り当て可能な空き通信チャネルの有無を判断し、割り当て可能な空き通信チャネルがあれば、移動局にその空き通信チャネルを割り当て、割り当てた通信チャネルでの通信を移動局に対して許可する。これにより、同時に利用可能な回線数を増加させることが可能になり、基地局の無線リソースの利用効率を高くすることが出来る。
【0032】
また、移動局に、GPS装置から位置情報と、移動局自身の受信電波状況(受信電界強度やビットエラーレート)を付加して送信させることで、回線制御装置にある基地局の電波伝搬領域の情報が自動的に更新可能である。これにより、基地局の電波伝搬状況が測定されかつ情報が収集されるため、無線リソースの割り当てが正確になる。また、無線品質が悪い箇所も自動的に判明するため、サービスエリアの改善計画が立てやすくなる。
【0033】
まず、図5図10を用いて、回線制御装置11により利用される各種のテーブル、および、領域と移動局(MS1-MS10)の位置関係について、詳細に説明する。図5は、実施例に係る基地局伝搬領域テーブルの構成例を示す図である。図6は、実施例に係る基地局受信可能エリアテーブルの構成例を示す図である。図7は、実施例に係る移動局情報テーブルの構成例を示す図である。図8は、実施例に係る通信状態テーブルの構成例を示す図である。図9は、実施例に係る通信候補チャネルテーブルの構成例を示す図である。図10は、実施例に係る各領域と各移動局(MS1-MS10)の位置関係を例示的に示す図である。図10は、図5の基地局伝搬領域テーブルTB1の情報と、図6の基地局受信可能エリアテーブルTB2の情報と、図7の移動局情報テーブルTB3の情報と、統合して表した図である。
【0034】
図5に示される基地局伝搬領域テーブルTB1は、回線制御装置11に格納されるテーブルであり、図4または図10に示された各領域(A000-A111)と受信可能な基地局(BS1-BS3)との関係を示している。図5において、エリア名称の欄に各領域(A000-A111)が記載されている。また、図5において、丸(〇)は受信可能な状態を示し、バツ(×)は受信不可能な状態を示す。
【0035】
基地局伝搬領域テーブルTB1は、移動局に、GPS装置から位置情報と、移動局自身の受信電波状況(受信電界強度やビットエラーレート)を付加して送信させることで、回線制御装置11により、自動的に更新することが可能である。これにより、基地局(BS1-BS3)の電波伝搬状況が測定されかつ情報が収集されるため、無線リソースの割り当てが正確になる。
【0036】
領域A000では、基地局BS1、BS2、BS3は受信不可能である。領域A100では、基地局BS1は受信可能であり、基地局BS2、BS3は受信不可能である。領域A010では、基地局BS2は受信可能であり、基地局BS1、BS3は受信不可能である。領域A001では、基地局BS3は受信可能であり、基地局BS1、BS2は受信不可能である。領域A110では、基地局BS1、BS2は受信可能であり、基地局BS3は受信不可能である。領域A011では、基地局BS2、BS3は受信可能であり、基地局BS1は受信不可能である。領域A101では、基地局BS1、BS3は受信可能であり、基地局BS2は受信不可能である。領域A111では、基地局BS1、BS2、BS3は受信可能である。
【0037】
同一の周波数の干渉領域でない領域A100、A010、A001の内では、次の様な通信が可能である。領域A100において、基地局BS1は最大で3回線(通信チャネルS1、S2、S3)を利用可能である。領域A010において、基地局BS2は最大で3回線(通信チャネルS1、S2、S3)を利用可能である。また、領域A001において、基地局BS3は最大で3回線(通信チャネルS1、S2、S3)を利用可能である。つまり、領域A100、A010,A001では、同時に、最大で、9回線の通信が可能であることを意味している。
【0038】
一方、領域A111では、最大で、3回線(通信チャネルS1、S2、S3)の通信を利用できるが、それ以上は不可能である。
【0039】
例えば、以下の様にすれば、同時に、最大で、6回線の通信を行うことも可能である。
1.領域A100において、基地局BS1で通信チャネルS1を利用、
2.領域A101において、基地局BS2で通信チャネルS2を利用、
3.領域A110において、基地局BS2で通信チャネルS3を利用、
4.領域A011において、基地局BS2で通信チャネルS1を利用、
5.領域A001において、基地局BS3で通信チャネルS3を利用、
6.領域A010において、基地局BS3で通信チャネルS2を利用。
【0040】
図6に示される基地局受信可能エリアテーブルTB2は、回線制御装置11にあらかじめ格納されるテーブルであり、図4に示された各領域(A000-A111)の経度および緯度との関係を示している。図6におけるエリアは、各領域(A000-A111)を示すものである。計測地点名に記載されるポイント(point1-point11)は、図10に示される。計測地点が多いほど、領域(A000-A111)の地図(領域の範囲)が正確となる。基地局受信可能エリアテーブルTB2は、事前に計測した情報や各移動局から取得した位置情報とその位置における基地局波の電界強度の情報等に基づいて、どの位置でどの基地局の信号を受信できるかを示すエリアマップという事もできる。なお、基地局受信可能エリアテーブルTB2は、再計測等により変更ないし更新して、回線制御装置11へ格納する様にしても良い。これにより、回線制御装置11は、どの位置でどの基地局(BS1,BS2,BS3)が干渉する可能性があるか、つまり、エリア毎に干渉しない通信チャネルは何か、を判断することができる。
【0041】
各ポイントは、例えば、以下の様に定義することが出来るが、これに限定されるわけではない。
【0042】
ポイントpoint1は、領域A100の一番左側(西側)に位置する点を示している。ポイントpoint1は、例えば、東経139度45分00秒、北緯35度49分00秒である。ポイントpoint2は、領域A100の一番上側(北側)に位置する点を示している。ポイントpoint2は、例えば、東経139度49分00秒、北緯35度53分00秒である。ポイントpoint3は、領域A110の一番上側(北側)に位置する点を示している。ポイントpoint3は、例えば、東経139度52分00秒、北緯35度51分30秒である。ポイントpoint4は、領域A111の一番右側(東側)に位置する点を示している。ポイントpoint4は、例えば、東経139度53分00秒、北緯35度49分00秒である。ポイントpoint5は、領域A111の一番下側(南側)に位置する点を示している。ポイントpoint5は、例えば、東経139度52分00秒、北緯35度46分30秒である。ポイントpoint6は、領域A101の一番左側(西側)に位置する点を示している。ポイントpoint6は、例えば、東経139度48分00秒、北緯35度45分00秒である。ポイントpoint7は、領域A010の一番上側(北側)に位置する点を示している。ポイントpoint7は、例えば、東経139度55分00秒、北緯35度53分00秒である。ポイントpoint8は、領域A010の一番右側(東側)に位置する点を示している。ポイントpoint8は、例えば、東経139度59分00秒、北緯35度49分00秒である。ポイントpoint9は、領域A011の一番右側(東側)に位置する点を示している。ポイントpoint9は、例えば、東経139度56分00秒、北緯35度45分00秒である。ポイントpoint10は、領域A111の一番左側(西側)に位置する点を示している。ポイントpoint10は、例えば、東経139度51分00秒、北緯35度49分00秒である。ポイントpoint11は、領域A001の一番下側(南側)に位置する点を示している。ポイントpoint11は、例えば、東経139度52分00秒、北緯35度41分00秒である。
【0043】
つまり、図10を参照し、回線制御装置11は、領域A111を、ほぼ、ポイントpoint4、point5、point10の3点で囲まれた領域と判断することが出来る。回線制御装置11は、領域A110を、ほぼ、ポイントpoint3、point4、point10の3点で囲まれた領域と判断することが出来る。回線制御装置11は、領域A101を、ほぼ、ポイントpoint6、point10、point5の3点で囲まれた領域と判断することが出来る。回線制御装置11は、領域A011を、ほぼ、ポイントpoint9、point5、point4の3点で囲まれた領域と判断することが出来る。
【0044】
また、同様に、領域A100は、ほぼ、ポイントpoint1、point2、point3、point10、point6の5点で囲まれた領域と判断することが出来る。領域A010は、ほぼ、ポイントpoint3、point7、point8、point9、point4の5点で囲まれた領域と判断することが出来る。領域A001は、ほぼ、ポイントpoint6、point5、point9、point11の4点で囲まれた領域と判断することが出来る。
【0045】
図7に示される移動局情報テーブルTB3は、移動局から受信した移動局の位置情報が基地局受信可能エリアテーブルTB2に定義された領域(エリア)のどの領域に存在するかを示したテーブルである。回線制御装置11は、後述される位置情報受信フローにおいて、移動局からその移動局の位置情報(経度および緯度)を取得し、受信した移動局の位置情報に基づいて基地局受信可能エリアテーブルTB2を参照し、移動局情報テーブルTB3を生成する。したがって、移動局情報テーブルTB3は、移動局の位置情報の受信のたびに、回線制御装置11により変更ないし更新される。図7には、例示的に、移動局として10個の移動局(MS1-MS10)の位置情報と、移動局が存在するエリアを示している。図10には、図7に示される移動局情報テーブルTB3が図示されている。
【0046】
例えば、移動局MS1の位置情報が東経139度49分00秒、北緯35度49分00秒であった場合、回線制御装置11は基地局受信可能エリアテーブルTB2を参照して、移動局MS1が領域A100に存在すると判定し、移動局情報テーブルTB3の移動局MS1に対するエリア欄に、領域A100を記入ないし更新する。同様に、回線制御装置11は、移動局MS2-MS10の位置情報が図7に示される緯度および経度の場合、基地局受信可能エリアテーブルTB2を参照して、移動局情報テーブルTB3の移動局MS2-MS10に対するエリア欄の情報を、各移動局の存在する領域の情報へ、記入ないし更新する。
【0047】
図8に示される通信状態テーブルTB4は、各基地局(BS1、BS2、BS3)の各通信チャネル(S1、S2、S3)の状態を示したテーブルである。回線制御装置11は、各基地局(BS1、BS2、BS3)の各通信チャネル(S1、S2、S3)の状態を判定ないし監視し、通信状況に応じて、通信状態テーブルTB4を変更ないし更新する。
【0048】
各通信チャネル(S1、S2、S3)の状態は、例えば、未使用、使用中、使用禁止の3つの状態とすることが出来る。なお、各通信チャネル(S1、S2、S3)の状態はこれに限定されない。各通信チャネル(S1、S2、S3)の状態として、例えば、使用禁止の重複状態、使用中と使用禁止との混在状態などの状態を追加しても良い。
【0049】
この例では、基地局BS1の通信チャネルS1、基地局BS2の通信チャネルS1、S2、および、基地局BS3の通信チャネルS1、S2は、未使用状態を示している。基地局BS1の通信チャネルS2、基地局BS2の通信チャネルS3、基地局BS3の通信チャネルS3は、使用状態を示している。また、基地局BS1の通信チャネルS3は、使用禁止状態を示している。
【0050】
図9に示される通信候補チャネルテーブルTB5は、各移動局(MS1-MS10)が現時点で使用できる通信チャネルを示したものである。通信候補チャネルテーブルTB5は、移動局(MS1-MS10)の位置や移動局(MS1-MS10)の通話状況により変化する。回線制御装置11は、移動局(MS1-MS10)の位置や移動局(MS1-MS10)の通話状況を監視し、通信候補チャネルテーブルTB5を変更ないし更新する。通信候補チャネルテーブルTB5において、黒丸(●)は使用中の状態を示し、白丸(○)は使用可能の状態を示し、バツ(×)は使用禁止の状態を示している。図9は、どの移動局も通話していない場合に、各移動局が使用できる通信チャネルを示している。このとき、回線制御装置11は、各移動局が存在する領域(移動局情報テーブルTB3)と、各領域で受信可能な基地局(伝搬領域テーブルTB1)と、によって、各移動局が使用できる通信チャネルを判断し、通信候補チャネルテーブルTB5を変更ないし更新する。
【0051】
例えば、移動局MS1は、領域A100に位置しており、現時点において、基地局BS1の3つの通信チャネルS1、S2、S3を使用可能であるが、基地局BS2、BS3の各通信チャネルS1、S2、S3は使用禁止である。移動局MS2は、領域A110に位置しており、現時点において、基地局BS1、BS2の各通信チャネルS1、S2、S3を使用可能であるが、基地局BS3の3つ通信チャネルS1、S2、S3は使用禁止である。移動局MS3は、領域A010に位置しており、現時点において、基地局BS2の3つの通信チャネルS1、S2、S3を使用可能であるが、基地局BS1、BS3の各通信チャネルS1、S2、S3は使用禁止である。移動局MS4は、領域A111に位置しており、現時点において、基地局BS1、BS2,BS3の各3つの通信チャネルS1、S2、S3を使用可能である。移動局MS5は、領域A101に位置しており、現時点において、基地局BS1、BS3の各3つの通信チャネルS1、S2、S3を使用可能であるが、基地局BS2の各通信チャネルS1、S2、S3は使用禁止である。移動局MS6は、領域A100に位置しており、現時点において、基地局BS2、BS3の各3つの通信チャネルS1、S2、S3を使用可能であるが、基地局BS1の各通信チャネルS1、S2、S3は使用禁止である。移動局MS7は、領域A001に位置しており、現時点において、基地局BS3の3つの通信チャネルS1、S2、S3を使用可能であるが、基地局BS1、BS2の各通信チャネルS1、S2、S3は使用禁止である。移動局MS8は、領域A011に位置しており、現時点において、基地局BS1、BS2の各通信チャネルS1、S2、S3を使用可能であるが、基地局BS3の3つ通信チャネルS1、S2、S3は使用禁止である。移動局MS9は、領域A001に位置しており、現時点において、基地局BS3の3つの通信チャネルS1、S2、S3を使用可能であるが、基地局BS1、BS2の各通信チャネルS1、S2、S3は使用禁止である。移動局MS10は、領域A111に位置しており、現時点において、基地局BS1、BS2,BS3の各3つの通信チャネルS1、S2、S3を使用可能である。
【0052】
次に、図面を用いて、回線制御装置11による通信チャネルの割当て方法を説明する。
【0053】
図11Aは、実施例に係る通信チャネルの割当て方法を説明するための制御フローを示す図である。なお、ステップS110およびステップS111は、図3で説明されたチャネル割り当て方法に対応している。
【0054】
回線制御装置11が、移動局へ通信チャネルを割当てる場合、移動局に割当てていない空チャネルの有無を判断する(ステップS110)。ステップS110において、空チャネルがある場合(Y)、空チャネルを移動局へ割当てる(ステップS111)。ステップS110において、空チャネルがない場合(N)、ステップS112へ移行する。
【0055】
ステップS112では、発信元の移動局と着信先の移動局の位置情報テーブルTB3(図7)と、基地局伝搬領域テーブルTB1(図5)、通信状態テーブルTB4(図8)、および通信候補チャネルテーブルTB5(図9)とに基づいて、割当て可能なチャネルがあるかどうかを判断する。ステップS112において、割当て可能な通信チャネルがある場合(Y)、その通信チャネルを割当てる(ステップS113)。
【0056】
一方、ステップS112において、割当て可能な通信チャネルがない場合(N)、回線制御装置11は、移動局からの発信要求を拒否する(ステップS114)。
【0057】
次に、ステップS112およびステップS113について、図11Bを用いて、詳細に説明する。
【0058】
図11Bは、実施例に係る通信チャネルの割当て方法を説明するための制御フローを示す図である。図11Bに示される制御フローCFは位置情報受信フローAと、発信フローBと、着信フローCと、通信終了フローDと、を含む。回線制御装置11は、制御フローCFが開始されると、通信状況に応じて、位置情報受信フローA、発信フローB、着信フローC、または、通信終了フローDを実施する。
【0059】
位置情報受信フローAを説明する。
ステップA1:対象移動局から経度・緯度情報を受信すると、回線制御装置11は、対象移動局の経度・緯度情報と「基地局受信可能エリアテーブルTB2」を参照し、対象移動局がどのエリアに属しているか判定する。
ステップA2:回線制御装置11は、対象移動局の経度・緯度とステップA1で判定した領域(エリア)を「移動局情報テーブルTB3」に反映し、「移動局情報テーブルTB3」を更新する。
ステップA3:回線制御装置11は、ステップA2の情報と「基地局伝搬領域テーブルTB1」と「通信状態テーブルTB4」を参照して、「通信候補チャネルテーブルTB5」の対象移動局の使用可能な通信チャネルを判定して反映し、「通信候補チャネルテーブルTB5」を更新する。
【0060】
発信フローBを説明する。
ステップB1:回線制御装置11は、通信対象移動局から通信要求(発信要求)を受信する。
ステップB2:発信要求を受信すると、回線制御装置11は、「通信候補チャネルテーブルTB5」を参照し、通信対象移動局の使用可能通信チャネルを割り当てる。
ステップB3:回線制御装置11は、「通信状態テーブルTB4」の対象通信チャネルを「使用中」とし、「通信状態テーブルTB4」を更新する。
【0061】
ステップB4:回線制御装置11は、以下を実施する。
ステップB41:「通信候補チャネルテーブルTB5」の通信対象移動局の通信チャネルを使用中(●)とする。
ステップB42:「通信候補チャネルテーブルTB5」の通信対象移動局の通信チャネル以外を使用禁止(×)とする。
ステップB43:「通信候補チャネルテーブルTB5」の通信対象移動局以外の対象通信チャネルを使用禁止(×)とする。
ステップB44:「移動局情報テーブルTB3」から通信対象移動局のエリアを参照し、「基地局伝搬領域テーブルTB1」からそのエリアの受信可能基地局を取得する。
ステップB45:「通信状態テーブルTB4」において、ステップB44で取得した受信可能基地局で通信中以外の基地局の同一通信チャネルを使用禁止とする。
ステップB46:「通信候補チャネルテーブルTB5」において、ステップB45で使用禁止とした通信チャネルを使用禁止(×)とする。
【0062】
着信フローCを説明する。
ステップC1:回線制御装置11は、通信対象移動局への通信要求(発信要求)を受信する。
ステップC2:発信要求を受信すると、回線制御装置11は、「通信候補チャネルテーブルTB5」から通信対象移動局の使用可能通信チャネルを割り当てる。
ステップC3:回線制御装置11は、「通信状態テーブルTB4」の対象通信チャネルを使用中とし、「通信状態テーブルTB4」を更新する。
【0063】
ステップC4:回線制御装置11は、以下を実施する。
ステップC41:「通信候補チャネルテーブルTB5」の通信対象移動局の通信チャネルを使用中(●)とする。
ステップC42:「通信候補チャネルテーブルTB5」の通信対象移動局の通信チャネル以外を使用禁止(×)とする。
ステップC43:「通信候補チャネルテーブルTB5」の通信対象移動局以外の対象通信チャネルを使用禁止(×)とする。
ステップC44:「移動局情報テーブルTB3」から通信対象移動局のエリアを参照し、「基地局伝搬領域テーブルTB4」からそのエリアの受信可能基地局を取得する。
ステップC45:「通信状態テーブルTB4」において、ステップC44で取得した受信可能基地局で通信中以外の基地局の同一通信チャネルを使用禁止とする。
ステップC46:「通信候補チャネルテーブルTB5」において、ステップC45で使用禁止とした通信チャネルを使用禁止(×)とする。
【0064】
通信終了フローDを説明する。
ステップD1:回線制御装置11は、通信終了を検出する。
ステップD2:「通信状態テーブルTB4」の通信終了対象の通信チャネルを未使用とする。
【0065】
ステップD3:回線制御装置11は、以下を実施する。
ステップD31:「移動局情報テーブルTB3」から通信終了対象移動局のエリアを参照し、「基地局伝搬領域テーブルTB1」からそのエリアの受信可能基地局を取得する。
ステップD32:「通信状態テーブルTB4」において、ステップD31で取得した受信可能基地局で通信終了対象基地以外の同一通信チャネルを未使用とする。
ステップD33:更新された「通信状態テーブルTB4」をもとに「通信候補チャネルテーブルTB5」の対象移動局の使用可能な通信チャネルを判定して反映する。
【0066】
なお、回線制御装置11が通信チャネルを割当てる際に、以下の処理を追加しても良い。
【0067】
すなわち、回線制御装置11は、図5の基地局伝搬領域テーブルTB1と、図8の通信状態テーブルTB4と、を参照し、発信を要求する移動局が受信可能な基地局のチャネルの使用状態を確認し、使用されていない(使用中や使用禁止の状態ではない)チャネルのみ割当てる。この処理を追加することで、図8の通信状態テーブルTB4において、使用禁止の状態が重複したり、使用中と使用禁止の状態が混在したりすることを回避することができる。
【0068】
次に、具体的な例を用いて、通信チャネルの割当て方法を説明する。
【0069】
図12図17は、移動局MS1の発信、移動局MS4の着信、移動局MS7の発信、移動局MS6の発信、および、移動局MS1の通信終了、における通信状態テーブルと通信候補チャネルテーブルの変化を時系列に示している。図12図17において、(A)は通信状態テーブルTB4の状態を示し、(B)は通信候補チャネルテーブルTB5の状態を示している。なお、以下の説明において、図5の基地局伝搬領域テーブルTB1、図7の移動局情報テーブルTB3、および図10の各領域と各移動局(MS1-MS10)の位置関係が参照される。
【0070】
(移動局MS1の発信)
図12は、移動局MS1が発信する前の状態を示す図である。
【0071】
移動局MS1が移動局MS4へ発信する場合の回線制御装置11の処理を以下に示す。
【0072】
本実施例では、図12(B)に示されるように、移動局MS1から発信要求を受信した回線制御装置11が、通信候補チャネルテーブルTB5の通信候補チャネルから、例えば、基地局BS1の通信チャネルS1を割当てる場合の処理を説明する。
【0073】
図13(A)に示されるように、回線制御装置11は、通信状態テーブルTB4において、基地局BS1の通信チャネルS1を「使用中(MS1)」に更新する。回線制御装置11は、また、図13(B)に示されるように、通信候補チャネルテーブルTB5の通信候補チャネルにおいて、移動局MS1の基地局BS1の通信チャネルS1を使用中(●)に更新する。この時、通信候補チャネルテーブルTB5において、移動局MS1の他候補チャネル(基地局BS1の通信チャネルS2、S3)は全て使用禁止(×)に更新する。さらに、他移動局(MS2、MS4、MS5、MS8、MS10)の基地局BS1の通信チャネルS1を使用禁止(×)に更新する。次に、図7の移動局情報テーブルTB3の移動局MS1のエリア情報(A100)から、図5の基地局伝搬領域テーブルTB1の受信可能基地(BS1)を参照する。移動局MS1が受信可能な他の基地の通信チャネルS1を使用禁止とする。今回の場合、移動局MS1が受信可能な基地局は、基地局BS1のみであるため、他の基地(BS2、BS3)の通信チャネルS1は、使用禁止としない。
【0074】
(移動局MS4へ着信)
次に、回線制御装置11が、例えば、図13(B)に示されるように、通信候補チャネルより、基地局BS2の通信チャネルS2を着信先の移動局MS4へ割当てる場合の処理を説明する。
【0075】
まず、図14(A)に示されるように、通信状態テーブルTB4において、基地局BS2の通信チャネルS2を「使用中(MS4)」に更新する。そして、図14(B)に示されるように、通信候補チャネルテーブルTB5の通信候補チャネルにおいて、移動局MS4の基地局BS2の通信チャネルS2を使用中(●)に更新する。この時、通信候補チャネルテーブルTB5において、移動局MS4の他候補チャネル(基地局BS1の通信チャネルS2、S3、基地局BS2の通信チャネルS1、S3、および、基地局BS3の通信チャネルS1-S3)は全て使用禁止(×)に更新する。また、他移動局(MS2、MS3,MS6、MS8、MS10)の基地局BS2の通信チャネルS2を使用禁止(×)に更新する。次に、図7の移動局情報テーブルTB3の移動局MS4のエリア情報(A111)から、図5の基地局伝搬領域テーブルTB1の受信可能基地(BS1、BS2、BS3)を参照する。そして、図14(B)に示されるように、通信候補チャネルテーブルTB5において、移動局MS4が受信可能な他の基地(BS1、BS3)の通信チャネルS2(移動局MS2、MS5,MS8、MS10の基地局BS1の通信チャネルS2、および、移動局MS5、MS6、MS7、MS8、MS10の基地局BS3の通信チャネルS2)を使用禁止(×)に更新する(BS1、BS3)。また、図14(A)に示されるように、通信状態テーブルTB4において、基地局BS1、BS3の通信チャネルS2を、使用禁止(×)に更新する。
【0076】
(移動局MS7の発信)
次に、図14(A)、(B)の状態から、移動局MS7が発信し、回線制御装置11が、例えば、図14(B)に示されるように、通信候補チャネルより、基地局BS3の通信チャネルS3を移動局MS7へ割当てる場合の処理を説明する。
【0077】
図15(A)に示されるように、通信状態テーブルTB4において、基地局BS3の通信チャネルS3を「使用中(MS7)」に更新する。そして、図15(B)に示されるように、通信候補チャネルテーブルTB5の通信候補チャネルにおいて、移動局MS7の基地局BS3の通信チャネルS3を使用中(●)に更新する。この時、通信候補チャネルテーブルTB5において、移動局MS7の他候補チャネル(基地局BS3の通信チャネルS1)は全て使用禁止(×)に更新する。また、他移動局(移動局MS5、MS6、MS9、MS10)の基地局BS3の通信チャネルS3を使用禁止(×)に更新する。次に、図7の移動局情報テーブルTB3の移動局MS7のエリア情報(A001)から、図5の基地局伝搬領域テーブルTB1の受信可能基地(BS3)を参照する。移動局MS7が受信可能な基地(BS3)の通信チャネルS3を使用禁止とする(BS3)。
【0078】
(移動局MS6の発信)
次に、図15(A)、(B)の状態から、移動局MS6が発信し、回線制御装置11が、例えば、図15(B)に示されるように、通信候補チャネルより、基地局BS2の通信チャネルS1を移動局MS6へ割当てる場合の処理を説明する。
【0079】
図16(A)に示されるように、通信状態テーブルTB4において、基地局BS2の通信チャネルS1を「使用中(MS6)」に更新する。そして、図16(B)に示されるように、通信候補チャネルテーブルTB5の通信候補チャネルにおいて、移動局MS6の基地局BS2の通信チャネルS1を使用中(●)に更新する。この時、通信候補チャネルテーブルTB5において、移動局MS6の他候補チャネル(基地局BS2の通信チャネルS3、基地局BS3の通信チャネルS1)は全て使用禁止(×)に更新する。また、他移動局(移動局MS2、MS3、MS8、MS10)の基地局BS2の通信チャネルS1を使用禁止(×)に更新する。次に、図7の移動局情報テーブルTB3の移動局MS6のエリア情報(A011)から、図5の基地局伝搬領域テーブルTB1の受信可能基地(BS2、BS3)を参照する。そして、図16(B)に示されるように、通信候補チャネルテーブルTB5において、移動局MS6が受信可能な基地(BS2、BS3)の通信チャネルS1(移動局MS5、MS6,MS9、MS10の基地局BS3の通信チャネルS1)を使用禁止(×)に更新する。また、図16(A)に示されるように、通信状態テーブルTB4において、基地局BS3の通信チャネルS1を、使用禁止(×)に更新する。
【0080】
以上の処理により、回線制御装置11は、図16(A)、(B)に示されるように、通信チャネルS1を複数の移動局(MS1、MS6)へ割当てることができる。通信チャネルS1が割当てられた移動局(MS1、MS6)が存在する領域(A100、A011)は、図4で示されるように、互いに基地局波が干渉しない領域である。よって、同じ通信チャネルを割当てても干渉が発生しない。
【0081】
(移動局MS1の通信終了)
次に、図16(A)、(B)の状態から、移動局MS1が通信を終了した場合の処理を説明する。回線制御装置11は、図17(A)に示されるように、通信状態テーブルTB4において、基地局BS1の通信チャネルS1を「未使用」に更新する。そして、図17(B)に示されるように、通信候補チャネルテーブルTB5の通信候補チャネルにおいて、移動局MS1の基地局BS1の通信チャネルS1を使用可(〇)に更新する。次に、図7の移動局情報テーブルTB3の移動局MS1のエリア情報(A100)から、図5の基地局伝搬領域テーブルTB1の受信可能基地(BS1)を参照する。受信可能基地の通信状態テーブルを未使用とする(この場合、BS1のみであり、変更に該当する他の基地局はない)。受信可能基地(BS1)と通信状態テーブルTB1から、図16(B)に示されるように、通信候補チャネルテーブルTB5において、移動局MS1の他候補チャネル(通信チャネルS3)の状態を使用可(〇)に更新する。そして、エリア情報から他移動局(MS2,MS4,MS5,MS8,MS10)の基地局BS1の通信チャネルS1を使用可(〇)に更新する。
【0082】
実施例によれば、以下の効果が得られる。
【0083】
1)同時に利用可能な回線数を増加させることが可能になり、基地局の無線リソースの利用効率を高くすることが出来る。
【0084】
2)基地局の電波伝搬状況が測定されかつ情報が収集されるため、無線リソースの割り当てが正確になる。
【0085】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1:無線通信システム
11:回線制御装置
BS1,BS2,BS3:基地局
MS1、MS2,MS3:移動局
TB1:基地局伝搬領域テーブル
TB2:基地局受信可能エリアテーブル
TB3:移動局情報テーブル
TB4:通信情報テーブル
TB5:通信候補チャネルテーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17