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特許7169086エレベータシステムのベルトのためのテンション部材
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  • 特許-エレベータシステムのベルトのためのテンション部材 図1
  • 特許-エレベータシステムのベルトのためのテンション部材 図2
  • 特許-エレベータシステムのベルトのためのテンション部材 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】エレベータシステムのベルトのためのテンション部材
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
B66B7/06 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018081035
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2018177533
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】62/487,794
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
【住所又は居所原語表記】One Carrier Place,Farmington,Connecticut,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】チェン チァン ジャオ
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-500303(JP,A)
【文献】特開2015-074871(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0259677(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104696439(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシステムのためのベルトであって、
ベルトの幅に沿って配置され、前記ベルトの長さに沿って長手方向に延びる、複数のテンション部材であって、各テンション部材が、複数の荷重保持繊維を含み、前記複数の荷重保持繊維が、複数の芳香族ポリエステルベースのファイバを含んでいる、前記複数のテンション部材と、
少なくとも部分的に前記複数のテンション部材を包含しているジャケット材料と、を備え
前記複数の荷重保持繊維が、少なくとも50%の芳香族ポリエステルファイバを含み、
前記複数の荷重保持繊維が、カーボンファイバ、グラスファイバ、超高分子量ポリエチレンファイバ、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾールファイバ、またはナイロンファイバの1つまたは複数をさらに含んだ、ベルト。
【請求項2】
前記芳香族ポリエステルファイバが、液晶ポリマ材料から形成されている、請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記ジャケット材料が、ポリウレタン、ポリエステル、エチレン・プロピレン・ジエン・エラストマ、クロロプレン、クロロスルホニルポリエチレン、エチレン・ビニル・アセテート、ポリアミド、ポリプロピレン、ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエン・ゴム、スチレン・ブタジエン・ゴム、アクリルエラストマ、フルオロエラストマ、シリコンエラストマ、ポリオレフィンエラストマ、スチレンブロック、及びジエンエラストマ、天然ゴム、ならびに、少なくとも2つの混合物の任意の組合せを含むグループから選択される、請求項1に記載のベルト。
【請求項4】
前記複数の荷重保持繊維を、マトリクス材料内にも分布することができる、請求項1に記載のベルト。
【請求項5】
前記マトリクス材料が、ポリウレタン、ビニルエステル、またはエポキシ材料である、請求項に記載のベルト。
【請求項6】
エレベータの通路と、
前記エレベータの通路内に配置され、このエレベータの通路内を移動可能であるエレベータの箱と、
前記エレベータの箱を前記エレベータの通路に沿って吊下げ及び/または駆動するように、前記エレベータの箱に操作可能に接続されたベルトであって、
ベルトの幅に沿って配置され、前記ベルトの長さに沿って長手方向に延びる、複数のテンション部材であって、各テンション部材が、複数の荷重保持繊維を含み、前記複数の荷重保持繊維が、複数の芳香族ポリエステルベースのファイバを含んでいる、前記複数のテンション部材と、
少なくとも部分的に前記複数のテンション部材を包含しているジャケット材料と、
を含む、前記ベルトと、
を備え
前記複数の荷重保持繊維が、少なくとも50%の芳香族ポリエステルファイバを含み、
前記複数の荷重保持繊維が、カーボンファイバ、グラスファイバ、超高分子量ポリエチレンファイバ、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾールファイバ、またはナイロンファイバの1つまたは複数をさらに含んだ、エレベータシステム。
【請求項7】
前記芳香族ポリエステルファイバが、液晶ポリマ材料で形成されている、請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記複数の荷重保持繊維が、マトリクス材料内に分布されている、請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項9】
前記マトリクス材料が、ポリウレタン、ビニルエステル、またはエポキシ材料である、請求項に記載のエレベータシステム。
【請求項10】
複数の荷重保持繊維を含み、前記複数の荷重保持繊維が、複数の芳香族ポリエステルベースのファイバを含んでおり、
前記複数の荷重保持繊維が、少なくとも50%の芳香族ポリエステルファイバを含み、
前記複数の荷重保持繊維が、カーボンファイバ、グラスファイバ、超高分子量ポリエチレンファイバ、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾールファイバ、またはナイロンファイバの1つまたは複数をさらに含んだ、エレベータシステムのためのテンション部材。
【請求項11】
前記芳香族ポリエステルファイバが、液晶ポリマ材料で形成されている、請求項10に記載のテンション部材。
【請求項12】
前記荷重保持繊維が、マトリクス材料内に分布されている、請求項10に記載のテンション部材。
【請求項13】
前記マトリクス材料が、ポリウレタン、ビニルエステル、またはエポキシ材料である、請求項12に記載のテンション部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の実施形態は、エレベータシステムに関し、より詳細には、エレベータシステムのエレベータの箱の吊下げ及び/または駆動のための荷重支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムは、建物内の様々な階層間で、乗客、積荷、またはそれら両方を搬送するために有用である。いくつかのエレベータは、トラクションベースであるとともに、エレベータの箱を支持し、エレベータの箱の所望の移動及び配置を達成するための、ベルトなどの荷重支持部材を利用する。
【0003】
ベルトが荷重支持部材として使用される場合、複数のテンション部材、またはコードが、共通のジャケット内に埋め込まれている。ジャケットは、コードを所望の位置に保持し、摩擦負荷経路を提供する。例示的なトラクション・エレベータシステムでは、マシンが駆動綱車を駆動する。駆動綱車により、ベルトが、エレベータの通路に沿ってエレベータの箱を駆動させるように相互作用する。ベルトは通常、スチール要素から形成されたテンション部材を利用するが、代替的には、合成繊維または、カーボンファイバ複合材料などの他の材料から形成されたテンション部材を利用する場合がある。
【0004】
カーボンファイバ複合材料のテンション部材では、部材が、重量に対する強度の、良好な特性を有しているが、カーボンファイバのテンション部材の柔軟性が限られていることに起因して、直径が大である綱車を通常は必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、エレベータシステムのためのベルトは、ベルトの幅に沿って配置され、ベルトの長さに沿って長手方向に延びる、複数のテンション部材であって、各テンション部材が、複数の荷重保持繊維を含み、複数の荷重保持繊維が、複数の芳香族ポリエステルベースのファイバを含んでいる、複数のテンション部材を含んでいる。ジャケット材料は、少なくとも部分的に複数のテンション部材を包含している。
【0006】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、芳香族ポリエステルファイバは、液晶ポリマ材料から形成されている。
【0007】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、複数の荷重保持繊維は、少なくとも50%の芳香族ポリエステルファイバを含んでいる。
【0008】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、複数の荷重保持繊維は、カーボンファイバ、グラスファイバ、超高分子量ポリエチレンファイバ、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾールファイバ、またはナイロンファイバの1つまたは複数をさらに含んでいる。
【0009】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、ジャケット材料は、ポリウレタン、ポリエステル、エチレン・プロピレン・ジエン・エラストマ、クロロプレン、クロロスルホニルポリエチレン、エチレン・ビニル・アセテート、ポリアミド、ポリプロピレン、ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエン・ゴム、スチレン・ブタジエン・ゴム、アクリルエラストマ、フルオロエラストマ、シリコンエラストマ、ポリオレフィンエラストマ、スチレンブロック、及びジエンエラストマ、天然ゴム、ならびに、少なくとも2つの混合物の任意の組合せを含むグループから選択される。
【0010】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、複数の荷重保持繊維を、マトリクス材料内にも配置することができる。
【0011】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、マトリクス材料は、ポリウレタン、ビニルエステル、またはエポキシ材料である。
【0012】
別の実施形態では、エレベータシステムは、エレベータの通路と、エレベータの通路内に配置され、このエレベータの通路内を移動可能であるエレベータの箱と、エレベータの箱をエレベータの通路に沿って吊下げ及び/または駆動するように、エレベータの箱に操作可能に接続されたベルトと、を含んでいる。ベルトは、ベルトの幅に沿って配置され、ベルトの長さに沿って長手方向に延びる、複数のテンション部材であって、各テンション部材が、複数の荷重保持繊維を含む、複数のテンション部材を含んでいる。複数の荷重保持繊維は、複数の芳香族ポリエステルベースのファイバを含んでいる。ジャケット材料は、少なくとも部分的に複数のテンション部材を包含している。
【0013】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、芳香族ポリエステルファイバは、液晶ポリマ材料で形成されている。
【0014】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、複数の荷重保持繊維は、少なくとも50%の芳香族ポリエステルファイバを含んでいる。
【0015】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、複数の荷重保持繊維は、カーボンファイバ、グラスファイバ、超高分子量ポリエチレンファイバ、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾールファイバ、またはナイロンファイバの1つまたは複数をさらに含んでいる。
【0016】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、複数の荷重保持繊維は、マトリクス材料内に配置されている。
【0017】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、マトリクス材料は、ポリウレタン、ビニルエステル、またはエポキシ材料である。
【0018】
さらに別の実施形態では、エレベータシステムのためのテンション部材は、複数の荷重保持繊維を含んでいる。複数の荷重保持繊維は、複数の芳香族ポリエステルベースのファイバを含んでいる。
【0019】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、芳香族ポリエステルファイバは、液晶ポリマ材料から形成されている。
【0020】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、複数の荷重保持繊維は、少なくとも50%の芳香族ポリエステルファイバを含んでいる。
【0021】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、複数の荷重保持繊維は、カーボンファイバ、グラスファイバ、超高分子量ポリエチレンファイバ、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾールファイバ、またはナイロンファイバの1つまたは複数をさらに含んでいる。
【0022】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、荷重保持繊維は、マトリクス材料内に配置されている。
【0023】
追加的または代替的に、本実施形態または他の実施形態では、マトリクス材料は、ポリウレタン、ビニルエステル、またはエポキシ材料である。
【0024】
以下の詳細な説明は、いずれの方法でも限定するものとは解されないものとする。添付図面を参照すると、同様の要素には同様の符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】エレベータシステムの実施形態の概略図である。
図2】エレベータシステムのベルトの実施形態の概略断面図である。
図3】エレベータシステムのベルトのテンション部材の実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
開示の装置及び方法の1つまたは複数の実施形態の詳細な説明は、図面を参照して、例として、限定的ではなく、本明細書に提供される。
【0027】
図1に示されているのは、例示的なトラクション・エレベータシステム10の概略図である。本発明を理解するためには必要とされない、エレベータシステム10の特徴(ガイドレール、セーフティなど)は、本明細書では論じない。エレベータシステム10は、1つまたは複数のベルト16で、エレベータの通路14内で操作可能に吊り下げられるか支持されるエレベータの箱12を含んでいる。1つまたは複数のベルト16は、エレベータシステム10の様々な構成要素周りで経路が定められるように、1つまたは複数の綱車18と相互作用する。1つまたは複数のベルト16は、カウンターウェイト22にも接続することができる。カウンターウェイト22は、エレベータシステム10のバランスを取り、作動中の駆動綱車の両側のベルトのテンションの差異を低減する補助をするために使用される。
【0028】
各綱車18は、エレベータシステム10の他の綱車18の直径と同じであるか、異なっている場合がある、直径20を有している。綱車の少なくとも1つは、駆動綱車52とすることができる。駆動綱車52は、マシン50によって駆動される。マシン50による駆動綱車の動作により、駆動綱車52の周りに経路が定められた、1つまたは複数のベルト16を、(トラクションを通して)駆動、移動、及び/または推進させる。綱車18の少なくとも1つは、ダイバータ、デフレクタ、またはアイドラ綱車とすることができる。ダイバータ、デフレクタ、またはアイドラ綱車は、マシン50によっては駆動されないが、エレベータシステム10の様々な構成要素の周りに1つまたは複数のベルト16をガイドする助けになる。
【0029】
いくつかの実施形態では、エレベータシステム10は、エレベータの箱12の吊下げ及び/または駆動のために、2つ以上のベルト16を使用することができる。さらに、エレベータシステム10は、様々な構成を有することができ、それにより、1つまたは複数のベルト16の両側が、1つまたは複数の綱車18と係合するか、1つまたは複数のベルト16の一方側のみが、1つまたは複数の綱車18と係合するようになっている。図1の実施形態は、1つまたは複数のベルト16が箱12とカウンターウェイト22とで終端している、1:1のロープ構成を示しているが、他の実施形態は、他のロープ構成を利用する場合がある。
【0030】
ベルト16は、エレベータの箱12の吊下げ及び/または駆動のための強度の必要条件を満たすことが可能であるように十分な強度を有しつつ、曲げ応力を低くし、ベルトの寿命の必要条件を満たし、かつ、スムーズに動作するように、1つまたは複数の綱車18を超えて延びる場合に、十分な柔軟性を有するように構成されている。
【0031】
図2は、例示的なベルト16の構成または設計の断面概略図である。ベルト16は、ベルト16に沿って長手方向に延びるとともに、ベルトの幅26に渡って配置された、複数のテンション部材24を含んでいる。テンション部材24は、ベルト16内におけるテンション部材24の移動を抑制し、テンション部材24を保護するために、少なくとも部分的にジャケット材料28に包含されている。ジャケット材料28は、駆動綱車52の対応する表面と相互作用するように構成された、トラクションサイド30を規定する。ジャケット材料28の例示的材料には、たとえば、熱可塑性ポリウレタンのエラストマ、ポリアミド、熱可塑性ポリエステルのエラストマ、及びゴムが含まれる。他の材料がベルト16の要求された機能を満たすのに十分である場合は、それら材料が、ジャケット材料28を形成するために使用され得る。たとえば、ジャケット材料28の主要な機能は、ベルト16と駆動綱車52との間の十分な摩擦係数を提供して、ベルト16と駆動綱車52との間に所望の量のトラクションを生成することである。ジャケット材料28は、トラクション荷重をテンション部材24に伝達することも行うものとする。さらに、ジャケット材料28は、耐摩耗性であり、テンション部材24を、衝撃によるダメージ、たとえば化学物質などの、環境要因に対する露出から保護するものとする。
【0032】
ベルト16は、ベルトの幅26とベルトの厚さ32とを有しており、ベルトの厚さ32に対するベルトの幅26のアスペクト比は、1より大である。ベルト16は、トラクションサイド30とは反対側のバックサイド34、及び、トラクションサイド30とバックサイド34との間に延びるベルトエッジ36をさらに含んでいる。8つのテンション部材24が図2の実施形態に示されているが、他の実施形態には、他の数のテンション部材24、たとえば、6、10、または12のテンション部材24が含まれる場合がある。さらに、図2の実施形態のテンション部材24は、実質的に同一であるが、他の実施形態では、テンション部材24は、互いに異なっている場合がある。
【0033】
ここで図3を参照すると、いくつかの実施形態では、各テンション部材24は、複数の荷重保持繊維42を含んでいる。荷重保持繊維42には、液晶ポリマ、及び/またはカーボンファイバ、及び/またはグラスファイバ、及び/または超高分子量ポリエチレンファイバ、及び/または超高分子量ポリプロピレン、及び/またはポリベンゾオキサゾールファイバ、及び/またはナイロンが含まれる。液晶ポリマは、4-ヒドロキシ安息香酸と、6-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸との縮重合によって生成された芳香族ポリエステルである。いくつかの実施形態では、液晶ポリマは、Vectran(商標)材料である。液晶ポリマは、通常のカーボンファイバよりも低い密度であり、約1.4g/cm3である。さらに、液晶ポリマの引張強度は、通常のカーボンファイバのプロファイルの引張強度より高く、約3000メガパスカルから3200メガパスカルである。いくつかの実施形態では、テンション部材24は、液晶ポリマと、カーボンファイバ、グラスファイバ、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリプロピレン、ポリベンゾオキサゾールファイバ、またはナイロンの1つまたは複数とを含んでいる。さらに、いくつかの実施形態では、テンション部材24内のファイバの少なくとも50%が、液晶ポリマなどの、芳香族ポリエステルベースのファイバである。
【0034】
いくつかの実施形態では、荷重保持繊維42は、マトリクス材料44内に分布している。マトリクス材料44は、たとえば、ポリウレタン、ビニルエステル、及び、たとえばエポキシ樹脂から形成される場合がある。マトリクス材料44は、荷重保持繊維42と組み合わせて、テンション部材24の所望の剛性及び強度を達成するように選択される。図3の実施形態では、マトリクス材料44が示されているが、いくつかの実施形態では、マトリクス材料44は省略され、テンション部材24は、いわゆる「ドライファイバ(乾燥繊維)」構成として形成される。
【0035】
テンション部材24は、いくつかの実施形態では引抜き整形プロセスにより、薄い層として形成される場合がある。標準的な引抜き整形プロセスでは、第1の荷重保持繊維42は、マトリクス材料44で含浸され、加熱されたダイ、及び、さらなる硬化用ヒータを通して引き出される。ここでは、マトリクス材料44が架橋される。当業者には、引き出された荷重保持繊維42の制御された動きとサポートとが、コア部材40の所望の線形または湾曲のプロファイルを形成するために使用され得ることを理解されたい。例示的実施形態では、テンション部材24は、約0.5ミリメートルから約4ミリメートルの断面厚さを有している。別の実施形態では、テンション部材24は、1ミリメートルの断面厚さを有している。さらに、図3に示すようないくつかの実施形態では、テンション部材24は、円形断面を有しているが、他の実施形態では、テンション部材24は、矩形、長円形、または楕円形などの、他の断面形状を有する場合がある。
【0036】
テンション部材24における、液晶ポリマなどの、芳香族ポリエステルベースのファイバの使用により、カーボンファイバ複合材料のテンション部材24に比べ、テンション部材24の重量が低減され、一方、テンション部材24の柔軟性の向上もされ、直径がより小である綱車18をエレベータシステム10に利用することを可能にしている。
【0037】
「about(約)」との用語は、本出願の出願時に利用可能である設備に基づく、特定の量の測定に関連するある程度の誤差を含むことが意図されている。たとえば、「約」は、所与の値の±8%、または±5%、または±2%の範囲を含み得る。
【0038】
本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的として使用されるものであり、本開示を限定することは意図されていない。本明細書に使用される場合、単数の形態「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別様に明確に示していない限り、複数の形態も含むことが意図されている。「comprises(含む)」及び/または「comprising(含んでいる)」との用語は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素構成要素、及び/またはそれらのグループの存在または追加を除外しないことを、さらに理解されたい。
【0039】
本開示が例示的実施形態または複数の実施形態を参照して記載されてきたが、当業者には、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な変更が行われ得、均等のものが、その要素に関して代替し得ることを理解されたい。さらに、多くの変更が、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料に適合させるために、本開示の教示に対して行われ得る。したがって、本開示は、この本開示を実施するために意図されているベストモードとして開示された特定の実施形態には限定されないが、本開示は、特許請求の範囲の範囲内にあるすべての実施形態を含むことになることが意図されている。
図1
図2
図3