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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】車両用排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20221102BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20221102BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20221102BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20221102BHJP
   F01N 11/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F01N3/18 C
F01N3/023 K
F01N3/035 A
F01N11/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018135722
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2020012424
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】萩野谷 哲史
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-269147(JP,A)
【文献】特開平4-50417(JP,A)
【文献】特開2007-247550(JP,A)
【文献】国際公開第2014/090497(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
F01N 3/18
F01N 3/023
F01N 3/035
F01N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の枠体と、
該筒状枠体内に設けられ、隔壁で隔てられた複数のセルが車両の排ガスの流れ方向に伸長し、各セルは前記伸長方向の一方の端部又は他方の端部の何れか一方が閉塞され且つ各セルを隔てる前記隔壁は前記排ガスの通過可能な多孔質隔壁として構成されたハニカム構造部と、
を備えたハニカム構造体を有し、
排気管内に設置された前記ハニカム構造体の前記多孔質隔壁を前記排ガスが通過する際に該排ガス中の少なくとも粒子状物質が除去されて該排ガスの浄化が行われる車両用排ガス浄化装置において、
前記排気管内の前記ハニカム構造体の前記排ガスの流れ方向直上流位置又はその近傍に配設され、前記ハニカム構造体における前記排ガスの入口開口面積を少なくとも減少方向に変更可能な絞り機構と、
前記ハニカム構造体の前記排ガス流れ方向上下流間の前記排ガスの圧力変化を検出する差圧センサと、
前記差圧センサで検出された前記排ガスの圧力変化に基づいて前記ハニカム構造体の異常を検出する異常検出部と、を備え、
前記異常検出部は、前記絞り機構によって前記ハニカム構造体の排ガス入口開口面積を予め定めた開口面積設定値に減少させたときの前記ハニカム構造体の排ガス流れ方向上下流間の前記排ガスの圧力変化が予め定めた圧力変化設定値以下である場合に、前記ハニカム構造体の全欠損であると判定することを特徴とする車両用排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記ハニカム構造部が、前記排ガス中の特定のガス成分を除去する触媒でコーティングされてなることを特徴とする請求項に記載の車両用排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用排ガス浄化装置、特に、GPF(Gasoline Particulate Filter)に好適な車両用排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用排ガス浄化装置の1つであるGPFは、近年の排ガス規制に適応するために、ガソリンで走行する車両の排ガス中のPM(Particulate Matter:粒子状物質)をPN(Particulate Number:PMの粒子数)規制値まで低減するフィルタである。このようなGPFでは、隔壁で隔てられた複数のセルが排ガスの流れ方向に伸長するハニカム構造部を筒状枠体の内部に配設し、各セルの一方の端部又は他方の端部の何れか一方を閉塞(目封止ともいう)すると共に、各セルを隔てる隔壁が排ガスの通過可能な多孔質隔壁で構成されたハニカム構造体が用いられる。
【0003】
このGPF排ガス浄化装置では、排ガスが流入する側が開口し、流出側が閉塞しているセルと、それに隣接して設けられ、排ガスが流入する側が閉塞し、流出側が開口しているセルとが組合された構造が用いられている。排ガスは流入側の開口したセルから流入し、隣のセルとの間を隔てる隔壁の気孔を通って隣のセルに流入し、そのセルの流出側から流出する。上記隔壁通過時に排ガスからPMが除去(捕捉)される。
【0004】
このような排ガス浄化装置としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この排ガス浄化装置は、特にディーゼルエンジンの排ガス浄化に好適なものであり、ハニカム構造体の排ガス流れ方向上下流側における排ガスの圧力変化、所謂前後差圧を検出し、この前後差圧に基づいてハニカム構造体の異常検出を行うものである。具体的には、ハニカム構造体の破損を判定する際、ハニカム構造体の再生(捕捉粒子状物質の燃焼)回数を検出し、その再生回数が所定回数以上である場合とそうでない場合とで閾値を変更し、ハニカム構造体の前後差圧が夫々の閾値未満である場合に、ハニカム構造体が破損していると判定する。
【0005】
ハニカム構造体の前後差圧は、排ガス流量が大きいときは勿論、ハニカム構造体に捕捉される粒子状物質の量が多いほど、大きくなる。ハニカム構造体による粒子状物質の捕捉量は、ハニカム構造体の新品からの時間経過と共に多くなると記載されている。従って、破損判定に用いる前後差圧は、再生回数が所定回数に満たない場合には排ガス流量が比較的大きい第1の所定流量以上のときに取得された前後差圧を用い、再生回数が所定回数以上である場合には排ガス流量が第1の所定流量より小さい第2の所定流量以上のときに取得された前後差圧を用いる。
【0006】
また、破損判定に用いる前後差圧の閾値は、再生回数が所定回数に満たない場合には排ガス流量が上記第1の所定流量以上のときに取得された前後差圧の平均値を用い、再生回数が所定回数以上である場合には排ガス流量が上記第2の所定流量以上のときに取得された前後差圧の平均値を用いる。
【0007】
なお、GPF排ガス浄化装置では、例えば省スペース化を目的として、粒子状物質と同時に、規制対象となる特定のガス成分を排ガスから除去することも望まれている。つまり、特定のガス成分を排ガスから除去するためだけに併設される排ガス浄化装置を車両から省略化する。この目的のために、上記多孔質隔壁を含むハニカム構造部に、特定のガス成分を除去する触媒をコーティングし、これにより粒子状物質と同時に特定のガス成分を除去可能なGPF排ガス浄化装置も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-35244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、GPF排ガス浄化装置の搭載が義務化されている車両では、GPF排ガス浄化装置の全欠損、即ちGPF排ガス浄化装置が装着されていないことを判定する(全欠損診断)規定がある。このGPF排ガス浄化装置の全欠損、具体的にはハニカム構造体の全欠損は、ハニカム構造部が粒子状物質を殆ど捕捉しておらず、その結果、ハニカム構造体の前後差圧が小さいときにも行わなければならない。しかしながら、ディーゼルエンジンの粒子状物質を除去するDPF(Diesel Particular Filter)と異なり、GPF排ガス浄化装置では、ハニカム構造部で捕捉される粒子状物質が少ないので、ハニカム構造体の前後差圧の経時的変化も小さい。従って、ハニカム構造部(ハニカム構造体)が新品又は新品に近く且つエンジンからの排ガス流量が小さい場合には、特にハニカム構造体の前後差圧が小さく、この小さな前後差圧からハニカム構造体の全欠損を検出することは極めて困難である。これに対し、ハニカム構造体の前後差圧を大きくするには、排ガス流量を大きくすればよいが、それには、例えばエンジン回転数を大きくしたり、エンジン負荷を大きくしたりする必要が生じ、その結果、燃費が低下してしまうというトレードオフが発生する。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハニカム構造体の前後差圧から全欠損を含むハニカム構造体の異常を確実に検出することが可能な車両用排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため請求項1に記載の車両用排ガス浄化装置は、
筒状の枠体と、該筒状枠体内に設けられ、隔壁で隔てられた複数のセルが車両の排ガスの流れ方向に伸長し、各セルは前記伸長方向の一方の端部又は他方の端部の何れか一方が閉塞され且つ各セルを隔てる前記隔壁は前記排ガスの通過可能な多孔質隔壁として構成されたハニカム構造部と、を備えたハニカム構造体を有し、排気管内に設置された前記ハニカム構造体の前記多孔質隔壁を前記排ガスが通過する際に該排ガス中の少なくとも粒子状物質が除去されて該排ガスの浄化が行われる車両用排ガス浄化装置において、前記排気管内の前記ハニカム構造体の前記排ガスの流れ方向直上流位置又はその近傍に配設され、前記ハニカム構造体における前記排ガスの入口開口面積を少なくとも減少方向に変更可能な絞り機構と、前記ハニカム構造体の前記排ガス流れ方向上下流間の前記排ガスの圧力変化を検出する差圧センサと、前記差圧センサで検出された前記排ガスの圧力変化に基づいて前記ハニカム構造体の異常を検出する異常検出部と、を備え、前記異常検出部は、前記絞り機構によって前記ハニカム構造体の排ガス入口開口面積を予め定めた開口面積設定値に減少させたときの前記ハニカム構造体の排ガス流れ方向上下流間の前記排ガスの圧力変化が予め定めた圧力変化設定値以下である場合に、前記ハニカム構造体の全欠損であると判定することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、絞り機構によってハニカム構造体における排ガスの入口開口面積を減少することにより、ハニカム構造部を通過する排ガスの流速が増大する。ハニカム構造部を通過する排ガスの流速が増大すると、その排ガスが物体を通過するときのエネルギー損失が大きくなる。従って、ハニカム構造体の排ガス流れ方向上下流側における排ガスの圧力変化、即ち差圧(ハニカム構造体の前後差圧)が大きくなる。従って、ハニカム構造体が新品又は新品に近く且つエンジンからの排ガス流量が小さい場合であっても、排ガス流量を意図的に増大することなく、ハニカム構造体の前後差圧から全欠損を含むハニカム構造体の異常を確実に検出することが可能となる。
【0014】
また、排ガスが排気管をそのまま通過している状態から、絞り機構によってハニカム構造体の排ガス入口開口面積を予め定めた設定値に減少したときに、ハニカム構造体の排ガス流れ方向上下流間の排ガスの圧力変化、即ちハニカム構造体の前後差圧が 差圧センサによって検出される。従って、ハニカム構造体が新品又は新品に近く且つエン ジンからの排ガス流量が小さい場合であっても、絞り機構によるハニカム構造体の排ガス 入口開口面積の設定値を適正に設定することで、絞り機構によってハニカム構造体の排ガ ス入口開口面積を設定値に減少したときのハニカム構造体の前後差圧を、差圧センサで確 実に検出可能な大きさとすることができる。従って、この排ガスの圧力変化、即ちハニカ ム構造体の前後差圧が予め定められた圧力変化設定値より大きければハニカム構造体が装 着されていると判定することができ、逆にハニカム構造体の前後差圧が設定値以下であれ ば、ハニカム構造体が装着されていない、つまりハニカム構造体の全欠損であると確実に判定することができる。
【0015】
請求項に記載の車両用排ガス浄化装置は、請求項1記載の車両用排ガス浄化装置において、前記ハニカム構造部が、前記排ガス中の特定のガス成分を除去する触媒でコーティングされてなることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、上記確実な全欠損判定が可能な車両用排ガス浄化装置によって排ガス中の特定のガス成分を除去することが可能になることから、排ガス中の特定の成分だけを除去する排ガス浄化装置を省略することが可能となり、更に車両の省スペース化が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、ハニカム構造部を通過する排ガスの流速を増大させることができ、これによりハニカム構造体の前後差圧が大きくなるので、ハニカム構造体が新品又は新品に近く且つエンジンからの排ガス流量が小さい場合であっても、ハニカム構造体の前後差圧から全欠損を含むハニカム構造体の異常を確実に検出することができると共に、排ガス流量を意図的に増大する必要がないことから燃費を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の車両用排ガス浄化装置の一実施の形態における主要構造部を示す斜視図である。
図2図1の車両用排ガス浄化装置に内装されたハニカム構造体の斜視図である。
図3図1の絞り機構の正面図である。
図4図3の絞り機構によるハニカム構造体の排ガス入口開口径調整の説明図である。
図5図1の車両用排ガス浄化装置におけるハニカム構造体の前後差圧の説明図である。
図6図1の車両用排ガス浄化装置に設けられたハニカム構造体異常検出システムの概略構成図である。
図7図6の異常検出部で実行される演算処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の車両用排ガス浄化装置の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態の排ガス浄化装置10の斜視図、図2は、図1の排ガス浄化装置10に内装されたハニカム構造体12の斜視図である。この実施の形態のハニカム構造体12は、主として、前述したGPF用の排ガス浄化装置10として使用されることを目的とするが、後述するように、排ガス中の特定のガス成分を除去する触媒もコーティングされる。このハニカム構造体12は、図示しないエンジンに接続されている排気管の一部に設けられた収納部22内に収納されている。この実施の形態のハニカム構造体12は、全体としての外形が円柱形状であるから、これを収納する収納部22は、この円柱形状のハニカム構造体12を緊密に収納する円筒形状に形成されている。
【0020】
このハニカム構造体12は、図2に明示するように、円筒形状の筒状枠体20の内部に、図の左側から右側に向けて排ガスを流して浄化するハニカム構造部14を有して構成される。このハニカム構造部14は、円筒形状の筒状枠体20の内側を隔壁16で区画することによって形成された複数のセル(室)18からなり、各セル18は、筒状枠体20の軸線方向の図示左側の入口側端面14aから図示右側の出口側端面14bまで伸長している。この実施の形態では、方形断面形状のセル18を形成しているが、このセル18の断面形状は、これ以外のものであってもよい。
【0021】
この実施の形態では、例えば多孔質のセラミックス材料を用いて筒状枠体20と隔壁16を同時に成形している。従って、隔壁16は多数の気孔(連続気孔)を有する多孔質隔壁である。なお、この実施の形態では、多孔質セラミックスなどの多孔質材料を用いて筒状枠体20と隔壁16を押出成形で同時に形成しているが、両者を個別に形成するようにしてもよい。また、筒状枠体20の更に外周にセラミックス素材などを塗布してもよい。また、筒状枠体20の形状は、円筒形状に限定されない。
【0022】
ハニカム構造部14を排ガス浄化装置10の1つであるGPFとする場合、複数のセル18のうち、予め設定されたセル18を一方の端面側、例えば入口側端面14a側で閉塞(目封止)し、その残りを他方の端面側、例えば出口側端面14b側で閉塞したハニカム構造体12を用いる。この例では、図示左側の入口側端面14a側で1列又は1行毎に互い違いのセル18を千鳥状に閉塞し、図示左側の出口側端面14b側では、入口側端面14a側で開口しているセル18を閉塞する。つまり出口側端面14b側では、入口側端面14a側で開口している互い違いのセル18がやはり千鳥状に閉塞される。この実施の形態のGPF排ガス浄化装置10は、例えば焼成されたハニカム構造体12に触媒をコーティングして作成される。触媒のコーティング方法には、例えば周知のウォッシュコート法などが用いられる。この触媒には、例えば除去すべき排ガス中の特定の成分が炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物である場合、白金、パラジウム、ロジウムが用いられる。
【0023】
このように隣り合うセル18の一方が入口側端面14a側で閉塞され、他方が出口側端面14b側で閉塞されたハニカム構造体12からなる排ガス浄化装置10に対し、例えば入口側端面14aから排ガスを送給すると、開口しているセル18に流入した排ガスは閉塞された出口側端面14bで行き場を失い、隔壁16の気孔を通って隣のセル18に流入し、そのセル18の出口側端部14bの開口部から流出する。従って、排ガス中のPMは、この気孔通過時に除去される。また、コーティングされている触媒と接触することによって、排ガス中の規制対象となる特定の成分が除去される。排ガスを隔壁16の気孔に通す技術は、ウォールフローとも呼ばれる。
【0024】
この実施の形態の排ガス浄化装置10では、このハニカム構造体12の排ガス流れ方向直上流、つまり排ガスの入口に、ハニカム構造体12への排ガスの入口開口面積、具体的には入口開口径を減少する(絞る)絞り機構24を配設している。この絞り機構24は、排気管の内部、具体的にはハニカム構造体12を収納する収納部22の内部で、ハニカム構造部14の入口側端面14aに隣接して設けられている。図3には、この絞り機構24の概略構成を示す。この絞り機構24は、例えばカメラの絞りと同様に、薄い羽根状板部材52を組合せて構成される。この実施の形態では、6枚の薄い羽根状板部材52を、例えば互いに一部が重なるようにしてハニカム構造体12の円形の排ガス入口26の周縁部に均等に配設する。夫々の羽根状板部材52は、円形の排ガス入口26の径方向外側に配設された固定ピン54の周りに回転可能であり、この固定ピン54より径方向内側部分に長穴56が形成されている。この長穴56には、円形の排ガス入口26と同心の図示しないリング部材の周方向に等間隔に設けられた係合ピン58が挿入されている。
【0025】
従って、例えば図3の状態からリング部材と共に係合ピン58を円形の排ガス入口26の周方向に沿って例えば図示時計回り方向に回転すると、係合ピン58の長穴56内のスライドに伴って各羽根状板部材52が固定ピン54の周りに回転して円形の排ガス入口26の径方向内側に突出する。この回転を継続すると、図4(A)~図4(C)の順に、各羽根状板部材52が同期して円形の排ガス入口26内に次第に突出し、全ての羽根状板部材52で覆われていない部分だけが略円形(正確には略六角形)の排ガス入口26として残存する。リング部材と共に係合ピン58を逆方向に回転すれば、排ガス入口26は逆の順に拡がる。この実施の形態では、この絞り機構24で規定される略円形の排ガス入口26の開口径を排ガス入口開口径(排ガス入口面積)と規定する。これにより、ハニカム構造体12における排ガス入口開口径を連続的に減少することが可能となる。なお、図1に示す符号28は、例えば前述のリング部材を回転することで各羽根状板部材52を径方向に開閉する電動モータなどの絞りアクチュエータである。また、絞り機構24は、この例に限定されるものではなく、ハニカム構造体12の排ガス入口面積を少なくとも減少方向に変更可能なものであれば如何様なものであってもよい。
【0026】
図5は、この絞り機構24によって排ガス入口開口径を絞った状態の排ガス浄化装置10の概略構成を示している。この排ガス浄化装置10において、ハニカム構造体12、正確にはハニカム構造部14の排ガス流れ方向長さをL、絞り機構24による排ガス入口開口径をd、ハニカム構造部14における排ガスの流動抵抗(摩擦係数)をλ、排ガスの流体密度をρ、ハニカム構造部14における排ガスの流速をuとしたとき、ハニカム構造体12(ハニカム構造部14)の排ガスの前後差圧ΔPは、
ΔP=λ・L・ρ・u2/2d
で表される。これは、一定の流動抵抗の流路を流体が通過するときのエネルギー損失を表しており、式からも明らかなように、排ガスの流速uが大きいほど、前後差圧ΔPも大きくなることが分かる。この実施の形態では、絞り機構24によってハニカム構造体12の排ガス入口開口径(開口面積)を減少することにより、ハニカム構造部14を通過する排ガスの流速uを大きくすることができるから、例えばハニカム構造部14が新品又は新品に近く、更に、エンジンからの排ガス流量が小さい場合であっても、絞り機構24によってハニカム構造体12の排ガス入口開口径を或る値まで減少することで検出可能な程度の大きさの前後差圧ΔPとすることができる。従って、この絞り機構24によるハニカム構造体12の排ガス入口開口径の或る値を、予め定められた規定値(開口面積設定値)とする。
【0027】
図6は、図1の排ガス浄化装置10に設けられたハニカム構造体12の異常検出システムの概略構成図である。この異常検出システムでハニカム構造体12の異常を検出する異常検出部30は、例えばエンジンの運転状態を制御する図示しないエンジンコントロールユニットなどに設けられている。また、この実施の形態のハニカム構造体12の異常検出システムには、ハニカム構造体12の排ガス流れ方向上下流側の圧力変化、即ち前後差圧を検出する差圧センサ32が設けられている。異常検出部30は、後述する図7の演算処理に従って、絞りアクチュエータ28を作動して絞り機構24によりハニカム構造体12の排ガス入口開口径を絞り、その状態で、ハニカム構造体12の前後差圧を差圧センサ32で検出し、検出されたハニカム構造体12の前後差圧に基づいて、例えばハニカム構造体12の全欠損判定を行う。
【0028】
この異常検出部30は、何れも図示していないが、近年の車両に搭載される各種の電子制御装置と同様に、例えばマイクロコンピュータなどのコンピュータシステムで構築され、高度な演算処理機能(演算処理装置)を有する。また、演算処理を記憶する記憶装置や、差圧センサ32の検出信号を読込んだり、絞りアクチュエータ28に作動信号を出力したりする入出力装置も併載する。なお、後述する演算処理と同等の機能を、例えば電気回路によって構築することも可能であるが、プログラムをコンピュータシステムで実行する方が一般的である。
【0029】
図7の演算処理は、例えば所定サンプリング周期の割込処理によって実行される。この演算処理では、まずステップS1で、図示しない個別の演算処理に従って、ハニカム構造体12(図ではGPFと記載)の異常判定条件が成立しているか否かを判定し、異常判定条件が成立している場合にはステップS2に移行し、そうでない場合には上位プログラムに復帰する。ハニカム構造体12の異常判定条件は、例えば新車から又はハニカム構造体交換からの車両の走行距離が、予め設定された比較的小さな所定値(例えば4~5000km)であることや、ハニカム構造体12の再生回数及び再生完了回数の少なくとも何れか一方が規定値以下であることが挙げられる。また、例えば、エンジンからの排ガス流量が小さい条件を規定するために、アクセル開度が規定値以下であることや、エンジン回転数が規定値以下であることを含めてもよい。
【0030】
ステップS2では、絞りアクチュエータ28に対して絞り閉作動信号を出力して、絞り機構24によるハニカム構造体12の排ガス入口開口径(=排ガス入口開口面積)を上記規定値(開口面積設定値)に減少する。
【0031】
次にステップS3に移行して、差圧センサ32で検出されたハニカム構造体12の前後差圧を読込む。
【0032】
次にステップS4に移行して、図示しない個別の演算処理に従って、ハニカム構造体12の異常判定を行う。この異常判定は、例えば、ステップS3で読込まれたハニカム構造体12の前後差圧が予め設定された比較的小さな規定値(圧力変化設定値)以下である場合に、ハニカム構造体12が装着されていない、即ちハニカム構造体12の全欠損であると判定する。また、ステップS3で読込まれたハニカム構造体12の前後差圧が予め設定された比較的大きな規定値以上である場合に、ハニカム構造体12が目詰まり状態であると判定するようにしてもよい。前述のように、排ガス出口側が閉塞されたハニカム構造部14のセル18では、僅かずつではあるが、エンジンから排出される灰分が蓄積され、この蓄積された灰分で隔壁が覆われると、その覆われた部分の気孔が閉塞されて所謂目詰まりが生じ、圧力損失が大きくなる。
【0033】
次にステップS5に移行して、絞りアクチュエータ28に対して絞り開作動信号を出力して、絞り機構24によるハニカム構造体12の排ガス入口開口径(=排ガス入口開口面積)を初期値に復帰してから上位プログラムに復帰する。
【0034】
この演算処理によれば、絞り機構24によってハニカム構造体12の排ガス入口開口径(排ガス入口開口面積)を規定値(開口面積設定値)まで減少している状態で、ハニカム構造体12の前後差圧が読込まれる。このようにハニカム構造体12の排ガス入口開口径が減少されている状態では、前述のように、ハニカム構造部14を通過する排ガスの流速が大きくなっているので、通過で生じる排ガスのエネルギー損失、即ち圧力損失が大きくなり、結果として、前後差圧が大きくなる。従って、前述のように、エンジンからの排ガス流量が小さい場合であっても、検出可能な大きさの前後差圧を取得することができる。そして、このハニカム構造体12の前後差圧を予め設定された比較的小さな規定値と比較して、ハニカム構造体12の全欠損を確実に判定することが可能となる。
【0035】
このように、この実施の形態の排ガス浄化装置10では、絞り機構24によってハニカム構造体12の排ガス入口開口径(面積)を減少することにより、ハニカム構造部14を通過する排ガスの流速が増大するので、ハニカム構造体12の前後差圧が大きくなり、ハニカム構造体12が新品又は新品に近く且つエンジンからの排ガス流量が小さい場合であっても、排ガス流量を意図的に増大することなく、ハニカム構造体12の前後差圧から全欠損を含むハニカム構造体12の異常を確実に検出することが可能となる。
【0036】
また、ハニカム構造体12の排ガス流れ方向上下流側で排ガスの圧力変化、つまり前後差圧を差圧センサ32で検出し、その検出された前後差圧に基づいてハニカム構造体12の異常を検出するにあたり、絞り機構24によってハニカム構造体12の排ガス入口開口面積を規定値に減少したときの前後差圧が規定値以下である場合に、ハニカム構造体12の全欠損であると判定する。差圧センサ32で検出されるハニカム構造体12の前後差圧は、ハニカム構造体12が新品又は新品に近く且つエンジンからの排ガス流量が小さい場合であっても、絞り機構24によって排ガスの流速を大きくすることにより異常判定可能な程度の大きさとすることができる。従って、検出されたハニカム構造体12の前後差圧が規定値より大きければハニカム構造体12が装着されていると判定することができ、逆にハニカム構造体12の前後差圧が規定値以下であれば、ハニカム構造体12が装着されていない、つまりハニカム構造体の全欠損であると確実に判定することができる。
【0037】
また、排ガス中の特定のガス成分を除去する触媒でハニカム構造部14をコーティングすることにより、上述のように、確実な全欠損判定が可能なGPF用排ガス浄化装置10によって、排ガス中の粒子状物質だけでなく、特定のガス成分も除去することが可能となることから、排ガス中の特定の成分だけを除去する排ガス浄化装置を省略することが可能となり、車両の省スペース化が可能となる。
【0038】
なお、絞り機構24は、ハニカム構造体12の排ガス入口開口径を減少する(絞る)だけでなく、その排ガス入口開口径を大きくする(拡げる)機能を有してもよい。しかしながら、前述のように、この絞り機構24は、ハニカム構造部14内における排ガスの流速を大きくしてハニカム構造体12の前後差圧を大きくするものであるから、排ガス入口開口径を減少する機能は必須である。
【0039】
本発明が上記していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当とされる特許請求の範囲に記載された発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0040】
10 排ガス浄化装置
12 ハニカム構造体
14 ハニカム構造部
16 隔壁
18 セル
20 筒状枠体
24 絞り機構
26 排ガス入口
28 絞りアクチュエータ
30 異常検出部
32 差圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7