(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】空気供給システム
(51)【国際特許分類】
F02B 39/12 20060101AFI20221102BHJP
F01N 3/22 20060101ALI20221102BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20221102BHJP
F02B 39/04 20060101ALI20221102BHJP
F02B 39/10 20060101ALI20221102BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20221102BHJP
F02D 23/00 20060101ALI20221102BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
F02B39/12
F01N3/22 321F
F01N3/22 301B
F01N3/20 D
F02B39/04
F02B39/10
F02M35/10 311D
F02D23/00 N
F02D45/00
(21)【出願番号】P 2018145837
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 健文
(72)【発明者】
【氏名】浜野 重規
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-077706(JP,A)
【文献】特開平02-075726(JP,A)
【文献】特開2001-323818(JP,A)
【文献】実公昭49-015442(JP,Y1)
【文献】特開2013-181392(JP,A)
【文献】特開2008-223509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0090373(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/12
F01N 3/22
F01N 3/20
F02B 39/04
F02B 39/10
F02M 35/10
F02D 23/00
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力軸に対して第1クラッチを介して接続され、モータの出力軸に対して第2クラッチを介して接続されるスーパチャージャと、
前記スーパチャージャに接続され、前記エンジンの排気通路のうち、排気ガスを浄化する触媒よりも上流に連通する第1通路と、
前記スーパチャージャに接続され、前記エンジンの吸気通路に連通する第2通路と、
前記スーパチャージャで圧縮された空気の吐出先を、前記第1通路と前記第2通路とで切り換える切換機構と、
前記触媒の温度が第1温度以上の場合、前記吐出先を前記第2通路とするように前記切換機構を制御し、前記触媒の温度が前記第1温度よりも低い第2温度未満の場合、前記吐出先を前記第1通路とするように前記切換機構を制御する切換制御部と、
前記触媒の温度が前記第1温度未満で前記第2温度以上の場合、前記第1クラッチおよび前記第2クラッチを切断して前記スーパチャージャの駆動を停止させるクラッチ制御部と、
を備える空気供給システム。
【請求項2】
前記触媒の温度が前記第1温度未満で前記第2温度以上の場合、前記触媒の温度が前記第1温度以上の場合と比べて、前記エンジンにおける燃料の噴射量を増量させる燃料制御部、および、前記触媒の温度が前記第1温度未満で前記第2温度以上の場合、前記触媒の温度が前記第1温度以上の場合と比べて、前記エンジンにおける点火タイミングを遅角させる点火制御部の少なくとも一方をさらに備える請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項3】
前記クラッチ制御部は、前記モータに電力を供給するバッテリの残容量または前記エンジンの熱効率の少なくともいずれかに基づいて前記第1クラッチおよび前記第2クラッチを制御す
る請求項1
または2に記載の空気供給システム。
【請求項4】
前記クラッチ制御部は、前記バッテリの残容量が所定の閾値以下である場合、前記第1クラッチを接続して前記第2クラッチを切断し、前記バッテリの残容量が前記所定の閾値よりも大きい場合、前記エンジンの熱効率に基づいて前記第1クラッチおよび前記第2クラッチを接続または切断させる請求項
3に記載の空気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載のように、エンジンの排気通路のうち、触媒の上流に圧縮空気を供給し、排気ガス中の未燃の燃料の燃焼によって触媒を暖機する処理が行われている。特許文献1では、圧縮空気を供給するのにモータアシスト付きのターボチェージャーを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気通路に空気を供給するためにターボチャージャなどを用いる場合、排気ガスのエネルギを消費するため、触媒暖機の効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、触媒暖機をより効率的に行うことが可能な空気供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の空気供給システムは、エンジンの出力軸に対して第1クラッチを介して接続され、モータの出力軸に対して第2クラッチを介して接続されるスーパチャージャと、スーパチャージャに接続され、エンジンの排気通路のうち、排気ガスを浄化する触媒よりも上流に連通する第1通路と、スーパチャージャに接続され、エンジンの吸気通路に連通する第2通路と、スーパチャージャで圧縮された空気の吐出先を、第1通路と第2通路とで切り換える切換機構と、触媒の温度が第1温度以上の場合、吐出先を第2通路とするように切換機構を制御し、触媒の温度が第1温度よりも低い第2温度未満の場合、吐出先を第1通路とするように切換機構を制御する切換制御部と、触媒の温度が第1温度未満で第2温度以上の場合、第1クラッチおよび第2クラッチを切断してスーパチャージャの駆動を停止させるクラッチ制御部と、を備える。
触媒の温度が第1温度未満で第2温度以上の場合、触媒の温度が第1温度以上の場合と比べて、エンジンにおける燃料の噴射量を増量させる燃料制御部、および、触媒の温度が第1温度未満で第2温度以上の場合、触媒の温度が第1温度以上の場合と比べて、エンジンにおける点火タイミングを遅角させる点火制御部の少なくとも一方をさらに備えてもよい。
【0007】
クラッチ制御部は、モータに電力を供給するバッテリの残容量またはエンジンの熱効率の少なくともいずれかに基づいて第1クラッチおよび第2クラッチを制御してもよい。
【0008】
クラッチ制御部は、バッテリの残容量が所定の閾値以下である場合、第1クラッチを接続して第2クラッチを切断し、バッテリの残容量が所定の閾値よりも大きい場合、エンジンの熱効率に基づいて第1クラッチおよび第2クラッチを接続または切断させてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、触媒暖機をより効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】空気供給システムの概略的な構成を説明するための図である。
【
図2】空気供給システムの制御系を説明するための図である。
【
図7】空気供給処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、空気供給システム1の概略的な構成を説明するための図である。空気供給システム1は、例えば、車両に搭載される。
図1に示すように、空気供給システム1は、エンジン2を有する。エンジン2には、インマニ3(インテークマニホールド)を含む吸気通路4が接続されている。エンジン2には、吸気通路4を介して吸気が流入する。
【0016】
また、エンジン2には、エキゾーストマニホールドを含む排気通路5が接続されている。エンジン2から排出された排気は、排気通路5に排出される。排気通路5には、EGR通路6の一端が接続される。EGR通路6の他端は、インマニ3に接続される。排気通路5に排出された排気の一部は、EGR通路6を通ってインマニ3に還流する。
【0017】
排気通路5のうち、EGR通路6との接続部よりも下流には、触媒7が設けられる。触媒7は、例えば、三元触媒などで構成され、活性温度まで暖機されると排気を浄化する。
【0018】
また、空気供給システム1には、スーパチャージャ8、モータ9、バッテリ10が設けられる。スーパチャージャ8のシャフト8aは、エンジン2の出力軸2aと、第1クラッチ11を介して接続される。スーパチャージャ8のシャフト8bは、モータ9の出力軸9aと、第2クラッチ12を介して接続される。
【0019】
第1クラッチ11は、スーパチャージャ8のシャフト8aと、エンジン2の出力軸2aとを接続、または、切断させる。第2クラッチ12は、スーパチャージャ8のシャフト8bと、モータ9の出力軸9aとを、接続、または、切断させる。
【0020】
第1クラッチ11がスーパチャージャ8のシャフト8aと、エンジン2の出力軸2aとを接続させ、第2クラッチ12がスーパチャージャ8のシャフト8bと、モータ9の出力軸9aとを切断させた状態では、スーパチャージャ8は、エンジン2の動力を受けて駆動する(以下、エンジン駆動状態という)。
【0021】
第2クラッチ12がスーパチャージャ8のシャフト8bと、モータ9の出力軸9aとを接続させ、第1クラッチ11がスーパチャージャ8のシャフト8aと、エンジン2の出力軸2aとを切断させた状態では、スーパチャージャ8は、バッテリ10からの電力によって駆動したモータ9の動力を受けて駆動する(以下、モータ駆動状態という)。
【0022】
副吸気通路13は、スーパチャージャ8の吸気口に接続される。副吸気通路13は、上流で吸気通路4に連通してもよいし、吸気通路4とは独立して設けられてもよい。スーパチャージャ8が駆動すると、副吸気通路13からスーパチャージャ8に吸気が取り込まれる。
【0023】
スーパチャージャ8の吐出口には、バルブ14(切換機構)が設けられる。バルブ14には、第1通路15の一端、および、第2通路16の一端が接続される。すなわち、第1通路15、第2通路16は、バルブ14を介してスーパチャージャ8に接続される。第1通路15の他端は、排気通路5のうち、触媒7よりも上流であって、EGR通路6の一端よりも下流に接続される。第2通路16の他端は、インマニ3に接続される。
【0024】
バルブ14は、例えば、電磁制御により開閉する三方弁である。バルブ14は、第1連通状態、第2連通状態、切断状態に切換可能である。第1連通状態は、スーパチャージャ8の吐出口と第1通路15を連通させ、スーパチャージャ8の吐出口と第2通路16を切断させた状態である。第2連通状態は、スーパチャージャ8の吐出口と第1通路15を切断させ、スーパチャージャ8の吐出口と第2通路16を連通させた状態である。すなわち、バルブ14は、スーパチャージャ8で圧縮された空気の吐出先を、第1通路15と第2通路16とで切り換える。また、切断状態は、スーパチャージャ8の吐出口と第1通路15を切断させ、スーパチャージャ8の吐出口と第2通路16を切断させた状態である。
【0025】
図2は、空気供給システム1の制御系を説明するための図である。
図2に示すように、空気供給システム1は、温度センサSa、バッテリセンサSb、回転数センサSc、トルクセンサSd、ECU20、インジェクタ17、点火プラグ18、バルブ14、第1クラッチ11、第2クラッチ12、モータ9を有する。
【0026】
温度センサSaは、例えば、触媒7または触媒7近傍の温度を検出して、検出した温度を示す信号をECU20に出力する。バッテリセンサSbは、バッテリ10の残容量(SOC:State Of Charge)を検出し、検出した残容量を示す信号をECU20に出力する。回転数センサScは、エンジン回転数として、例えば、出力軸2aの回転数を検出して、回転数を示す信号をECU20に出力する。トルクセンサSdは、例えば、出力軸2aに作用する軸トルクを検出し、検出した軸トルクを示す信号をECU20に出力する。
【0027】
ECU20は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成され、エンジン2を統括制御する。また、ECU20は、プログラムを実行することで、燃料制御部21、点火制御部22、切換制御部23、クラッチ制御部24、モータ制御部25として機能する。
【0028】
燃料制御部21は、エンジン2のインジェクタ17を制御し、エンジン2の燃焼室に燃料を噴射させる。燃料制御部21は、インジェクタ17の燃料噴射タイミングおよび噴射量を制御する。点火制御部22は、エンジン2の点火プラグ18を制御し、点火プラグ18に燃焼室内で火花を生成させる。点火制御部22は、点火プラグ18の点火タイミングを制御する。
【0029】
切換制御部23は、触媒7の温度に基づいてバルブ14を制御し、バルブ14を第1連通状態または第2連通状態とする。クラッチ制御部24は、第1クラッチ11、第2クラッチ12を制御し、スーパチャージャ8を、エンジン駆動状態、モータ駆動状態、および、第1クラッチ11、第2クラッチ12の双方が切断された状態とする。モータ制御部25は、モータ駆動状態のとき、バッテリ10からモータ9に電力を供給してモータ9を駆動させる。
【0030】
空気供給システム1では、切換制御部23、クラッチ制御部24の制御により、通常モード、モード0、モード1、モード2の4つのモードに遷移可能である。以下、各モードについて説明する。
【0031】
図3は、通常モードを説明するための図である。
図3に示すように、通常モードでは、副吸気通路13からスーパチャージャ8に取り込まれた吸気は、圧縮されて第2通路16に吐出されてインマニ3に流入する。
【0032】
切換制御部23は、触媒7の温度が第1温度以上となっていると、触媒7の暖機が不要であると判断し、通常モードを選択する。切換制御部23は、バルブ14を制御し、第2連通状態とする。これにより、エンジン2の気筒に吸気が過給され、出力増加やリーン燃焼が行われる。切換制御部23は、温度センサSaからの信号により、触媒7の温度が第1温度以上であるか否かを判断する。第1温度は、例えば、触媒7の暖機の要否を判断する基準となる温度である。
【0033】
また、クラッチ制御部24は、バッテリセンサSbからの信号に基づいて、バッテリ10の残容量がバッテリ閾値(所定の閾値)以下であるか否かを判断する。バッテリ閾値は、バッテリ10の使用可否を判断する基準となる閾値である。バッテリ10の残容量がバッテリ閾値以下であれば、クラッチ制御部24は、エンジン駆動状態を選択し、第1クラッチ11を接続し第2クラッチ12を切断する。これにより、バッテリ10の残容量が少ない場合に、バッテリ10を消耗してしまう事態が回避される。
【0034】
バッテリ10の残容量がバッテリ閾値より大きい場合、クラッチ制御部24は、エンジン2の熱効率に基づいて、エンジン駆動状態およびモータ駆動状態の一方を選択する。エンジン2の熱効率は、エンジン回転数および軸トルクの効率マップとして予め設定されている。クラッチ制御部24は、回転数センサScからの信号、および、トルクセンサSdからの信号に基づいて、効率マップを参照して、エンジン2の熱効率を導出する。そして、クラッチ制御部24は、導出した熱効率が効率閾値以下であるか否かを判断する。
【0035】
エンジン2の熱効率が効率閾値以下であれば、クラッチ制御部24は、モータ駆動状態を選択し、第1クラッチ11を切断し第2クラッチ12を接続する。エンジン2の熱効率が効率閾値より大きければ、クラッチ制御部24は、エンジン駆動状態を選択し、第1クラッチ11を接続し第2クラッチ12を切断する。これにより、エンジン2の熱効率が低い運転条件では、モータ9が用い、エンジン2の熱効率が高い場合には、エンジン2を用いることが可能となる。
【0036】
図4は、モード0を説明するための図である。
図4に示すように、モード0では、第1クラッチ11、第2クラッチ12の双方が切断される。したがって、スーパチャージャ8は駆動しない。また、切換制御部23は、バルブ14を切断状態とする。例えば、燃料制御部21は、インジェクタ17の燃料の噴射量を、触媒7の暖機を行っていないときよりも増量させる。点火制御部22は、点火プラグ18の点火タイミングを、触媒7の暖機を行っていないときよりも遅角させる(リタード制御)。リタード制御では、例えば、アイドル中に最大遅角となり、エンジン2の要求トルクに応じて遅角量が小さくなる。
【0037】
モード0では、触媒7の暖機に必要なエネルギに対しスーパチャージャ8の駆動に必要なエネルギが大きくなる場合、スーパチャージャ8の駆動を停止させることで触媒7の暖機を効率よく行うことができる。
【0038】
クラッチ制御部24は、触媒7の温度が第1温度未満で第2温度以上である場合、第1クラッチ11および第2クラッチ12を切断してモード0とする。第2温度は、第1温度よりも低い値である。
【0039】
また、触媒7の温度が第2温度未満であっても、スーパチャージャ8が作動できない場合、モード0が選択される。スーパチャージャ8が作動できない場合とは、例えば、スーパチャージャ8の故障、外気温が低すぎる場合(潤滑油の固着)などである。
【0040】
図5は、モード1を説明するための図である。
図5に示すように、モード1では、副吸気通路13からスーパチャージャ8に取り込まれた吸気は、圧縮されて第1通路15に吐出されて排気通路5に流入する。燃料制御部21は、インジェクタ17の燃料の噴射量を、触媒7の暖機を行っていないときよりも増量させる。点火制御部22は、点火プラグ18の点火タイミングを、触媒7の暖機を行っていないときよりも遅角させる。
【0041】
切換制御部23は、触媒7の温度が第2温度未満であり、スーパチャージャ8が作動できる場合、バルブ14を制御し、第1連通状態とする。クラッチ制御部24は、触媒7の温度が第2温度未満であり、スーパチャージャ8が作動できる場合、バッテリセンサSbからの信号に基づいて、バッテリ10の残容量が十分であるか否かを判断する。バッテリ10の残容量が十分であるとは、バッテリ10の残容量がバッテリ閾値(閾値)より大きいことである。
【0042】
クラッチ制御部24は、バッテリ10の残容量が十分でなければ、第1クラッチ11を接続し、第2クラッチ12を切断してエンジン駆動状態とする。こうして、空気供給システム1がモード1となる。
【0043】
図6は、モード2を説明するための図である。モード1ではエンジン駆動状態であるのに対し、
図6に示すように、モード2では、モータ駆動状態である点のみが異なる。クラッチ制御部24は、触媒7の温度が第2温度未満であり、スーパチャージャ8が作動できる場合、バッテリセンサSbからの信号に基づいて、バッテリ10の残容量が十分であるか否かを判断する。クラッチ制御部24は、バッテリ10の残容量が十分であれば、第1クラッチ11を切断し、第2クラッチ12を接続してモータ駆動状態とする。こうして、空気供給システム1がモード2となる。
【0044】
モード1、2では、圧縮空気が触媒7に供給されることから、より多くの燃料を触媒7近傍で燃焼させることが可能となる。そのため、触媒7の暖機を迅速に完了し、リタード制御の長期化を抑制することで燃費悪化を抑制することができる。さらにモード2では、第1クラッチ11を切断することでエンジン2の駆動負荷が低減されるため、エンジン2の燃焼エネルギを効率的に触媒7の暖機に用いることができる。
【0045】
図7は、空気供給処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示す処理は、所定周期で繰り返し実行される。
図7に示すように、クラッチ制御部24は、触媒7の温度が第1温度以上であるかを判断する(S100)。触媒7の温度が第1温度以上である場合(S100におけるYES)、クラッチ制御部24は、バルブ14を第2連通状態とする。スーパチャージャ8の吐出先が第2通路16となる通常モードとなり(S102)、当該空気供給処理が終了する。なお、クラッチ制御部24は、バッテリ10の残容量やエンジン2の熱効率に基づいて、エンジン駆動状態またはモータ駆動状態を選択する。
【0046】
触媒7の温度が第1温度未満である場合(S100におけるNO)、クラッチ制御部24は、触媒7の温度が第2温度以上であるか否かを判断する(S104)。触媒7の温度が第2温度以上である場合(S104におけるYES)、クラッチ制御部24は、第1クラッチ11、第2クラッチ12の双方が切断されるモード0とし(S108)、当該空気供給処理が終了する。また、切換制御部23は、バルブ14を切断状態とする。
【0047】
なお、第2クラッチ12を切断する代わりに、モータ制御部25によってバッテリ10からモータ9への電力の供給を断ち、モータ9の駆動を停止させることによりスーパチャージャ8の作動を停止させてもよい。
【0048】
触媒7の温度が第2温度未満である場合(S104におけるNO)、クラッチ制御部24は、スーパチャージャ8が作動可能であるか否かを判断する(S106)。スーパチャージャ8が作動可能でない場合(S106におけるNO)、上記のS108に処理を移してモード0が選択され、当該空気供給処理が終了する。
【0049】
スーパチャージャ8が作動可能である場合(S106におけるYES)、クラッチ制御部24は、バッテリ10の残容量が十分であるか否かを判断する(S110)。バッテリ10の残容量が十分でない場合(S110におけるNO)、クラッチ制御部24は、第1クラッチ11を接続し、第2クラッチ12を切断してエンジン駆動状態とする(S112)。その後、S116に処理を移し、モード1となる。
【0050】
バッテリ10の残容量が十分である場合(S110におけるYES)、クラッチ制御部24は、第1クラッチ11を切断し、第2クラッチ12を接続してバッテリ駆動状態とする(S114)。その後、S116に処理を移し、モード2となる。
【0051】
切換制御部23は、バルブ14を第1連通状態とする(S116)。副吸気通路13からスーパチャージャ8に取り込まれた吸気は圧縮される。圧縮された空気は、第1通路15に吐出されて排気通路5に流入する。以上により、当該空気供給処理が終了する。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
例えば、上述した実施形態では、温度センサSaが設けられる場合について説明した。しかし、温度センサSaは必須の構成ではない。温度センサSaを設けず、外気温やエンジン2の運転条件から、触媒7の温度を推定してもよい。また、排気通路5のうち、触媒7の上流および下流に設けられた空燃比(A/F:Air-Fuel Ratio)センサによって、触媒7による浄化作用から逆算して、触媒7が暖機されているかを判断してもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、バルブ14は、第1連通状態または第2連通状態に切換可能である場合について説明した。しかし、バルブ14は、例えば、スーパチャージャ8から吐出された圧縮空気を、第1通路15と第2通路16の双方に分配してもよい。バルブ14は、その分配比率を調整可能であってもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、バッテリ10の残容量、および、エンジン2の熱効率の双方に基づいて、第1クラッチ11および第2クラッチ12を制御する場合について説明した。しかし、バッテリ10の残容量またはエンジン2の熱効率の少なくともいずれかに基づいて、第1クラッチ11および第2クラッチ12を制御すればよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、モード0が設けられる場合について説明した。ただし、モード0は必須の制御ではない。ただし、モード0が設けられる場合、暖機にそれほど大きな熱量が不要であるにもかかわらず、触媒7に圧縮空気を供給し、多量の燃料増量が行われて燃料を浪費してしまう事態を回避することが可能となる。
【0057】
また、スーパチャージャ8による圧縮空気の吐出量は、可変制御されてもよい。例えば、スーパチャージャ8は、第1クラッチ11、第2クラッチ12、モータ9などにより、回転数が制御されてもよいし、スーパチャージャ8自体に、吐出量を可変させる機構が設けられてもよい。これにより、触媒7への圧縮空気の供給量の最適化が図られ、触媒7の暖機が迅速化する。具体的には、外気温に対して空気量が設定された暖機マップが設けられる。外気温および暖機マップから、供給する空気量が特定され、空気量に対応して燃料の噴射量が増加される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、空気供給システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 空気供給システム
2 エンジン
2a 出力軸
4 吸気通路
5 排気通路
7 触媒
8 スーパチャージャ
9 モータ
9a 出力軸
10 バッテリ
11 第1クラッチ
12 第2クラッチ
14 バルブ(切換機構)
15 第1通路
16 第2通路
23 切換制御部
24 クラッチ制御部