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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20221102BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20221102BHJP
   F24F 13/30 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B60H1/00 102A
B60H1/00 102P
B60H1/22 611C
F24F13/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018159700
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020032817
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 祐治
(72)【発明者】
【氏名】竹野下 太輔
(72)【発明者】
【氏名】西田 孝則
(72)【発明者】
【氏名】嘉本 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】野本 翼
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02308437(GB,A)
【文献】特開2018-131151(JP,A)
【文献】特開2007-015650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/22
F24F 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用熱交換器と、
前記冷却用熱交換器の空気流れ方向下流側に配設される加熱用熱交換器と、
通電によって発熱する発熱素子と、該発熱素子の熱が伝達する放熱フィンとを備え、前記加熱用熱交換器の空気流れ方向下流側に配設される補助暖房器と、
前記冷却用熱交換器を通過した空気のうち、前記加熱用熱交換器を通過する空気量を設定するエアミックスダンパと、
前記冷却用熱交換器、前記加熱用熱交換器、前記補助暖房器及び前記エアミックスダンパを収容する空調ケーシングとを備え、
前記空調ケーシングに形成された空気導入口から導入された空調用空気を、前記冷却用熱交換器、前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器により温度調節可能に構成された車両用空調装置において、
前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器は、前記空調ケーシング内の上下方向中間部に配置され、
前記空調ケーシングの前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器の上方には、前記冷却用熱交換器を通過した冷風が流通する上側通路が形成され、
前記空調ケーシングの前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器の下方には、前記冷却用熱交換器を通過した冷風が流通する下側通路が形成され、
前記空調ケーシングの上側には、乗員の上半身に空調風を供給するためのベント通路が前記上側通路の下流側及び前記下側通路の下流側に連通するように形成され、
前記補助暖房器の前記放熱フィンには、前記下側通路から前記ベント通路へ向けて流れる冷風が前記加熱用熱交換器側へ流れるのを抑制する冷風遮断部が設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項に記載の車両用空調装置において、
前記冷風遮断部は、前記放熱フィンに設けられた板状部で構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項に記載の車両用空調装置において、
前記冷風遮断部は、水平方向に延びていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項に記載の車両用空調装置において、
前記冷風遮断部は、前記補助暖房器の空気通過方向と交差する方向に延びていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項からのいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記冷風遮断部は、前記放熱フィンを構成する板材から切り起こされて構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記冷却用熱交換器は、前記加熱用熱交換器よりも車両前方に配置され、
前記下側通路は、前記冷却用熱交換器の車両後側から前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器よりも後側へ向けて延びており、
前記ベント通路は、前記加熱用熱交換器の上方において前記補助暖房器よりも車両前側に形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
請求項に記載の車両用空調装置において、
前記補助暖房器は、空気通過面が上下方向に延びる姿勢とされ、
前記冷風遮断部は、前記補助暖房器の上側に設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
請求項からのいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記冷風遮断部は、前記加熱用熱交換器を通過した空気の流れ方向に沿うように延びていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項9】
冷却用熱交換器と、
前記冷却用熱交換器の空気流れ方向下流側に配設される加熱用熱交換器と、
通電によって発熱する発熱素子と、該発熱素子の熱が伝達する複数の放熱フィンとを備え、前記加熱用熱交換器の空気流れ方向下流側に配設される補助暖房器と、
前記冷却用熱交換器を通過した空気のうち、前記加熱用熱交換器を通過する空気量を設定するエアミックスダンパと、
前記冷却用熱交換器、前記加熱用熱交換器、前記補助暖房器及び前記エアミックスダンパを収容する空調ケーシングとを備え、
前記空調ケーシングに形成された空気導入口から導入された空調用空気を、前記冷却用熱交換器、前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器により温度調節可能に構成された車両用空調装置において、
前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器は、前記空調ケーシング内の上下方向中間部に配置され、
前記空調ケーシングの前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器の上方には、前記冷却用熱交換器を通過した冷風が流通する上側通路が形成され、
前記空調ケーシングの前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器の下方には、前記冷却用熱交換器を通過した冷風が流通する下側通路が形成され、
前記空調ケーシングの上側には、乗員の上半身に空調風を供給するためのベント通路が前記上側通路の下流側及び前記下側通路の下流側に連通するように形成され、
前記補助暖房器には、前記下側通路から前記ベント通路へ向けて流れる冷風が前記加熱用熱交換器側へ流れるのを抑制する冷風遮断部が設けられ、
前記加熱用熱交換器側へ流れる冷風の主流に対応する部分における前記放熱フィンの間隔は、主流から外れた部分における前記放熱フィンの間隔よりも狭く設定されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
前記冷風遮断部は、上下方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に搭載される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用空調装置においては、空調用空気を冷却する冷却用熱交換器と、空調用空気を加熱する加熱用熱交換器と、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を通過する空調用空気の量を変更するエアミックスダンパとが空調ケーシング内に収容されており、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を通過した冷風及び温風を混合させて所望温度の調和空気が生成されるように構成されている。そして、空調ケーシング内で生成された調和空気は、デフロスタ通路、ベント通路、ヒート通路等から車室の各部に供給されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている車両用空調装置では、空調ケーシング内の上下方向中間部に、加熱用熱交換器と共に補助暖房器が配設されている。従って、加熱用熱交換器及び補助暖房器の上方及び下方にそれぞれ空気通路が形成されることになる。
【0004】
最大冷房時には、空調用空気が加熱用熱交換器へ流れないように、加熱用熱交換器へ向かう空気通路をエアミックスダンパが遮断し、空調用空気の全量が冷却用熱交換器を通過して冷風となる。冷却用熱交換器を通過して生成された冷風は、加熱用熱交換器及び補助暖房器の上方及び下方の空気通路をそれぞれ流れて主にベント通路から乗員へ供給される。
【0005】
また、特許文献1~3に開示されているように、補助暖房器はPTCヒータで構成されており、空気が通過する放熱フィンを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-114778号公報
【文献】特開2018-95074号公報
【文献】特開2018-95075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のように、加熱用熱交換器及び補助暖房器の上方及び下方にそれぞれ空気通路を形成することで、最大冷房時における通路断面積を広くして低通気抵抗化を図ることができる。
【0008】
ところが、最大冷房時には、乗員の上半身に向けて空調風を供給するのが一般的であるため、ベント通路は空調ケーシングの上側に設けられる場合が多く、このようなレイアウトの場合、冷却用熱交換器を通過して生成された冷風のうち、加熱用熱交換器及び補助暖房器の下方の空気通路を通った冷風は上側へ向けて流れた後、ベント通路から乗員の上半身に向けて供給されることになる。冷風が下方の空気通路から上側へ向けて流れる途中には、加熱用熱交換器が配設されている空気通路が位置しているので、下方の空気通路から上側へ向けて流れた冷風の一部が、加熱用熱交換器が配設されている空気通路付近で滞留し、加熱用熱交換器から放射される熱を受けて温度上昇することがある。こうなると吹出空気温度の上昇を招き、ひいては、冷房性能が低下してしまう。
【0009】
このことを防止するためには、冷風が通る空気通路と加熱用熱交換器とを離して配置する方法や、最大冷房に冷風が加熱用熱交換器へ向けて流れないようにするための遮蔽ダンパを設ける方法等がある。しかしながら、冷風が通る空気通路と加熱用熱交換器とを離すと、空調ケーシングが大型化してしまうという問題があり、また、遮蔽ダンパを設ける場合も、遮蔽ダンパを配設するスペースが必要になるため、空調ケーシングが大型化してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空調ケーシングの大型化を回避しながら内部の低通気抵抗化を図り、しかも、最大冷房時に冷風が加熱用熱交換器によって加熱されにくくして冷房性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、補助暖房器を加熱用熱交換器よりも空気流れ方向下流側に設け、この補助暖房器に、冷風が加熱用熱交換器側へ流れるのを抑制する冷風遮断部を設けるようにした。
【0012】
第1の発明は、冷却用熱交換器と、前記冷却用熱交換器の空気流れ方向下流側に配設される加熱用熱交換器と、通電によって発熱する発熱素子と、該発熱素子の熱が伝達する放熱フィンとを備え、前記加熱用熱交換器の空気流れ方向下流側に配設される補助暖房器と、前記冷却用熱交換器を通過した空気のうち、前記加熱用熱交換器を通過する空気量を設定するエアミックスダンパと、前記冷却用熱交換器、前記加熱用熱交換器、前記補助暖房器及び前記エアミックスダンパを収容する空調ケーシングとを備え、前記空調ケーシングに形成された空気導入口から導入された空調用空気を、前記冷却用熱交換器、前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器により温度調節可能に構成された車両用空調装置において、前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器は、前記空調ケーシング内の上下方向中間部に配置され、前記空調ケーシングの前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器の上方には、前記冷却用熱交換器を通過した冷風が流通する上側通路が形成され、前記空調ケーシングの前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器の下方には、前記冷却用熱交換器を通過した冷風が流通する下側通路が形成され、前記空調ケーシングの上側には、乗員の上半身に空調風を供給するためのベント通路が前記上側通路の下流側及び前記下側通路の下流側に連通するように形成され、前記補助暖房器の前記放熱フィンには、前記下側通路から前記ベント通路へ向けて流れる冷風が前記加熱用熱交換器側へ流れるのを抑制する冷風遮断部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、空調ケーシングの空気導入口から導入された空調用空気が、冷却用熱交換器により冷却される。その後、エアミックスダンパによって加熱用熱交換器を通過する空気量が設定され、設定された量の冷風が加熱用熱交換器を通過して加熱される。また、必要に応じて補助暖房器によって冷風が加熱される。以上のようにして所望温度の空調風が生成される。
【0014】
最大冷房時には、冷却用熱交換器により生成された冷風が加熱用熱交換器に向けて流れないように、エアミックスダンパが作動する。これにより、冷却用熱交換器により生成された冷風が、上側通路及び下側通路を流れてベント通路に流入するので、通路の断面積がトータルで大きくなり、通気抵抗が低くなる。
【0015】
また、下側通路を流れた冷風は、ベント通路が空調ケーシングの上側に形成されているので、空調ケーシング内を上側へ向けて流れていくことなる。このとき、途中に加熱用熱交換器が配設されているので、冷風の一部が、加熱用熱交換器が配設されている通路付近で滞留する場合が考えられる。本発明では、加熱用熱交換器よりも空気流れ方向下流側に位置する補助暖房器に冷風遮断部が設けられているので、空調ケーシング内を上側へ向けて流れる冷風が加熱用熱交換器側へ向けて流れ難くなる。よって、冷風の加熱用熱交換器による加熱が抑制されて冷房性能が向上する。
【0016】
さらに、冷風遮断部は、補助暖房器に設けられているので、遮断ダンパを別途配設する必要が無くなるとともに、下側通路と加熱用熱交換器とを大きく離さなくても冷風の加熱を抑制することが可能になり、空調ケーシングの大型化が回避される。
【0017】
また、補助暖房器を例えばPTCヒータのような補助暖房器で構成することができる。そして、フィンに冷風遮断部を設けることで、冷風の遮断効果が向上する。
【0018】
の発明は、前記冷風遮断部は、前記放熱フィンに設けられた板状部で構成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、冷風遮断部を簡単に設けることが可能になる。
【0020】
の発明は、前記冷風遮断部は、水平方向に延びていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、冷風遮断部が水平方向の所定範囲において冷風を遮断することになるので、遮断効果がより一層高まる。
【0022】
の発明は、前記冷風遮断部は、前記補助暖房器の空気通過方向と交差する方向に延びていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、冷風が補助暖房器から加熱用熱交換器側へ流れ難くなるので、遮断効果がより一層高まる。
【0024】
の発明は、前記冷風遮断部は、前記放熱フィンを構成する板材から切り起こされて構成されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、冷風遮断部が、フィンを構成する板材に一体成形されるので、部品点数が少なくて済む。
【0026】
の発明は、前記冷却用熱交換器は、前記加熱用熱交換器よりも車両前方に配置され、前記下側通路は、前記冷却用熱交換器の車両後側から前記加熱用熱交換器及び前記補助暖房器よりも後側へ向けて延びており、前記ベント通路は、前記加熱用熱交換器の上方において前記補助暖房器よりも車両前側に形成されていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、冷却用熱交換器により生成された冷風が下側通路を車両後側へ向けて補助暖房器よりも後側まで流れた後、その流れが上側へ向くとともに、補助暖房器よりも車両前側へ向くようになる。つまり、下側通路を流れた冷風が、上側へ流れると同時に加熱用熱交換器側へ向けて流れようとするが、補助暖房器に遮断部が設けられていることで、加熱用熱交換器側へ向けて流れる冷風が抑制される。
【0028】
の発明は、前記補助暖房器は、空気通過面が上下方向に延びる姿勢とされ、前記冷風遮断部は、前記補助暖房器の上側に設けられていることを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、冷風遮断部を補助暖房器の上側に設けることで、加熱用熱交換器側へ向けて流れる冷風が効果的に抑制される。
【0030】
の発明は、前記冷風遮断部は、前記加熱用熱交換器を通過した空気の流れ方向に沿うように延びていることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、加熱用熱交換器を通過して補助暖房器に流入した空気の流れを冷風遮断部が阻害し難くなる。
【0032】
の発明は、前記補助暖房器は、通電によって発熱する発熱素子と、該発熱素子の熱が伝達する複数の放熱フィンとを備えており、前記加熱用熱交換器側へ流れる冷風の主流に対応する部分における前記放熱フィンの間隔は、主流から外れた部分における前記放熱フィンの間隔よりも狭く設定されていることを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、放熱フィンの間隔を狭めることにより、加熱用熱交換器側へ流れようとする冷風を抑制することが可能になる。
【0034】
第1の発明は、前記冷風遮断部は、上下方向に間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする。
【0035】
この構成によれば、補助暖房器の複数箇所に冷風遮断部が設けられるので、補助暖房器の複数箇所において冷風を遮断することが可能になる。
【発明の効果】
【0036】
第1の発明によれば、加熱用熱交換器及び補助暖房器の上方及び下方にそれぞれ通路を設けて低通気抵抗化する場合に、加熱用熱交換器よりも空気流れ方向下流側に補助暖房器を配置し、この補助暖房器に、冷風が加熱用熱交換器側へ流れるのを抑制する冷風遮断部を設けたので、空調ケーシングの大型化を回避しながら最大冷房時の冷房性能を向上させることができる。
【0037】
また、補助暖房器が有するフィンに冷風遮断部を設けることで、冷風の遮断効果を向上させることができる。
【0038】
の発明によれば、フィンに設けられた板状部によって冷風遮断部を構成するようにしたので、冷風遮断部を簡単に構成することができる。
【0039】
の発明によれば、冷風遮断部が水平方向に延びているので、冷風の遮断効果をより一層高めることができる。
【0040】
の発明によれば、冷風遮断部が補助暖房器の空気通過方向と交差する方向に延びているので、冷風の遮断効果をより一層高めることができる。
【0041】
の発明によれば、冷風遮断部をフィンに一体成形することができるので、部品点数及び組立工数を低減できる。
【0042】
の発明によれば、下側通路を流れた冷風が加熱用熱交換器側へ向けて流れるような構造とされている場合に、冷風遮断部による冷風の遮断効果がより一層顕著なものとなる。
【0043】
の発明によれば、冷風遮断部の冷風の遮断効果を更に高めることができる。
【0044】
の発明によれば、冷風遮断部が温風の流れを阻害し難くなるので、高い暖房性能を確保できる。
【0045】
の発明によれば、放熱フィンの間隔を狭めることで、加熱用熱交換器側へ流れようとする冷風を抑制することができる。
【0046】
第1の発明によれば、複数の冷風遮断部を設けることで、冷風の遮断効果をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の正面図である。
図2】車両用空調装置の背面図である。
図3】車両用空調装置の左側面図である。
図4】車両用空調装置の右側面図である。
図5図2におけるV-V線断面図である。
図6】補助暖房器を空気流れ方向下流側から見た斜視図である。
図7】補助暖房器の右上部の拡大図である。
図8】補助暖房器を空気流れ方向下流側から見た図である。
図9図8のA部拡大図である。
図10】補助暖房器の平面図である。
図11図8のXI-XI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0049】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1を車両前側から見た図であり、図2は、車両用空調装置1を車両後側から見た図であり、図3は、車両用空調装置1を車両左側から見た図であり、図4は、車両用空調装置1を車両右側から見た図である。
【0050】
車両用空調装置1は、例えば自動車等の車両に搭載されて車室の空調を行うものであり、図5に示すように、空調ケーシング2と、冷却用熱交換器3と、加熱用熱交換器4と、補助暖房器5と、上側エアミックスダンパ6と、下側エアミックスダンパ7と、デフロスタダンパ8と、前席用ベントダンパ9と、ヒートダンパ10とを備えている。
【0051】
また、図示しないが、車両用空調装置1は送風ユニットを備えている。送風ユニットは、送風ケーシングと、送風機とを有しており、車室の助手席側に配設されている。送風機は、シロッコファン及び該シロッコファンを回転駆動するためのモータで構成されている。送風ケーシングは、車室内の空気と車室外の空気のいずれかを選択して空調用空気として導入することができるように構成されており、送風ケーシングに導入された空調用空気は送風機によって空調ケーシング2に送られるようになっている。空調用空気の送風量は、モータに印加される電圧によって変更可能になっている。
【0052】
空調ケーシング2と送風ケーシングとは車幅方向(車両左右方向)に並ぶように配置されて車室の前端部に設けられているインストルメントパネル(図示せず)の内部に収容されている。空調ケーシング2と送風ケーシングとは一体に構成されていてもよいし、別体に構成されていてもよい。空調ケーシング2と送風ケーシングとが車幅方向に並ぶことなく、車幅方向中央部に配置されるように構成されていてもよい。また、空調ケーシング2と送風ケーシングとは接続されている。また、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0053】
尚、図示しないが、車両の車室よりも前にはエンジンが搭載されるエンジンルームが設けられている。エンジンルームには、冷凍サイクルを構成する圧縮機や凝縮器等が配設されている。また、エンジンの代わりに車両走行用のモータが搭載されていてもよい。
【0054】
(車両用空調装置の構成)
空調ケーシング2は、例えば複数の樹脂製部材を組み合わせて構成されており、冷却用熱交換器3と、加熱用熱交換器4と、補助暖房器5と、上側エアミックスダンパ6と、下側エアミックスダンパ7と、デフロスタダンパ8と、前席用ベントダンパ9と、ヒートダンパ10とを収容する部材である。空調ケーシング2の分割構造は、特に限定されるものではないが、例えば、前後方向や上下方向とすることができる。この実施形態では、図1図4に示すように、空調ケーシング2が、前側ケーシング部材2Aと後側ケーシング部材2Bとに分割されるとともに、前側ケーシング部材2Aが上下方向に、後側ケーシング部材2Bが左右方向にそれぞれ分割されている。従って、4つの部材を組み合わせることによって空調ケーシング2が構成されている。
【0055】
図4に示すように、空調ケーシング2の前部の右側壁部には、送風ユニットから送られてきた空調用空気を空調ケーシング2の内部に導入するための空気導入口2aが形成されている。車両用空調装置1は、空気導入口2aから導入された空調用空気を、冷却用熱交換器3、加熱用熱交換器4及び補助暖房器5により温度調節可能に構成されている。詳細は後述するが、冷却用熱交換器3を通過した空気のうち、加熱用熱交換器4及び補助暖房器5を通過する空気量が、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7によって設定される。
【0056】
空調ケーシング2における空気導入口2aの周縁部には、中間ダクト部2Cが一体成形されている。図2に示すように、中間ダクト2Cは、右側へ突出するように形成されている。この中間ダクト2Cの右端部に送風ケーシングが接続されており、送風ケーシングから送風された空調用空気が中間ダクト2Cを介して空気導入口2aに流入するようになっている。尚、空気導入口2aは、送風ケーシングが配設されている側に形成されているが、空調ケーシング2の前部の左側壁部及び右側壁部のいずれに形成されていてもよい。
【0057】
図5に示すように、空調ケーシング2の上壁部の前側には、車両のフロントガラスの内面に向けて空調風を供給するためのデフロスタ吹出口2bが形成されている。このデフロスタ吹出口2bは左右方向に長い形状とされている。デフロスタ吹出口2bには図示しないデフロスタダクトが接続されている。デフロスタダクトの下流端部は、インストルメントパネルの前端部に形成されたデフロスタ口(図示せず)に接続されている。
【0058】
空調ケーシング2の上壁部におけるデフロスタ吹出口2bよりも後側には、前席に着座している乗員(前席乗員)の上半身に向けて空調風を供給するための前席用ベント吹出口2cが形成されている。前席用ベント吹出口2cには図示しないベントダクトが接続されている。ベントダクトの下流端部は、インストルメントパネルの車幅方向略中央部に形成されたセンタベント口(図示せず)及びインストルメントパネルの車幅方向両側にそれぞれ形成されたサイドベント口(図示せず)に接続されている。デフロスタ吹出口2bと前席用ベント吹出口2cとは前後方向に並ぶように配置されている。
【0059】
空調ケーシング2の後壁部の下側には、乗員の足下近傍に向けて空調風を供給するためのヒート吹出口2dが形成されている。ヒート吹出口2dには図示しないヒートダクトが接続されている。ヒートダクトは、前席乗員の足下近傍まで延びるフロントヒートダクトと、後席乗員の足下近傍まで延びるリヤヒートダクトとからなり、前席乗員及び後席乗員の足下近傍に空調風を供給することができるようになっている。尚、ヒートダクトはフロントヒートダクトのみで構成されていてもよい。また、ヒート吹出口2dは複数設けることができる。
【0060】
空調ケーシング2の内部には、空気導入通路R1と、上側温風生成通路R2aと、下側温風生成通路R2bと、デフロスタ通路R3と、前席用ベント通路R4と、ヒート通路R5と、上側通路R6aと、下側通路R6bとが形成されている。空気導入通路R1は、空調ケーシング2の内部において前側部分に形成されている。空気導入通路R1の上流端部は空気導入口2aに接続されている。空気導入通路R1は空気導入口2aから後側へ延びている。空気導入通路R1の下流端部に冷却用熱交換器3が配設されている。
【0061】
冷却用熱交換器3は、空気導入通路R1を流通する空調用空気を冷却するためのものである。冷却用熱交換器3は、空調ケーシング2の内部において前側に位置しており、その空気通過面が上下方向に延びる姿勢とされている。冷却用熱交換器3の上部及び下部が空調ケーシング2によって保持されている。
【0062】
この実施形態では冷却用熱交換器3が、ヘッダタンク、チューブ及びフィン(図示せず)を有するエバポレータ(冷媒蒸発器)で構成されている。エバポレータは、従来から周知の冷凍サイクル装置の構成要素である。冷却用熱交換器3の内部を流通する低温の冷媒と冷却用熱交換器3の外部を通過する空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が冷却される。このときに冷却用熱交換器3の表面に発生した凝縮水は、図1図4に示すドレン管部2fから空調ケーシング2の外部に排出されるようになっている。空気導入通路R1は、冷風を生成する冷風生成通路でもある。
【0063】
加熱用熱交換器4は、冷却用熱交換器3の空気流れ方向下流側(後側)において空調ケーシング2の上下方向中間部に配置されている。従って、冷却用熱交換器3は、加熱用熱交換器4よりも前方に配置されることになる。加熱用熱交換器4は冷却用熱交換器3から後側に離れて配置されており、加熱用熱交換器4と冷却用熱交換器3との間には空間が設けられている。加熱用熱交換器4は、その空気通過面が上下方向に延びる姿勢とされている。
【0064】
加熱用熱交換器4と冷却用熱交換器3との間には、隔壁部21が上下方向に延びるように設けられている。隔壁部21よりも後側に、上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bが形成されている。上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bは、空調ケーシング2の内部において前後方向の中間部、かつ、上下方向の中間部に形成されることになり、上側温風生成通路R2aの下に下側温風生成通路R2bが位置することになる。上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bは、隔壁部21から後側へ延びるように形成される。図示しないが、上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bの間に前後方向に延びる区画板を配設するようにしてもよい。
【0065】
上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bには、加熱用熱交換器4が配設されている。加熱用熱交換器4の略上半部が上側温風生成通路R2aに配置され、加熱用熱交換器4の略下半部が下側温風生成通路R2bに配置される。加熱用熱交換器4は、ヘッダタンク、チューブ及びフィン(図示せず)を有するヒータコアで構成されている。加熱用熱交換器4には、車両に搭載されているエンジン(図示せず)を循環するエンジン冷却水が供給パイプ4a(図1及び図3に示す)を介して供給されるようになっている。加熱用熱交換器4に供給されたエンジン冷却水と、加熱用熱交換器4の外部を通過する空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が加熱される。加熱用熱交換器4に供給されたエンジン冷却水は、排出パイプ4b(図1及び図3に示す)によってエンジンに戻されるようになっている。供給パイプ4a及び排出パイプ4bの前側は、空調ケーシング2の前部に設けられたブラケット2g(図1及び図3に示す)によって保持されている。加熱用熱交換器4の上部及び下部は、空調ケーシング2に保持されている。また、加熱用熱交換器4の前後方向の寸法(外部空気の通過方向の寸法)は、冷却用熱交換器3の前後方向の寸法よりも短く設定されている。尚、加熱用熱交換器4は冷凍サイクルの凝縮器で構成されていてもよい。
【0066】
また、補助暖房器5は、加熱用熱交換器4の空気流れ方向下流側(後側)において空調ケーシング2の上下方向中間部に配置されている。補助暖房器5は、加熱用熱交換器4のから後側に離れて配置されており、加熱用熱交換器4と補助暖房器5との間には僅かな空間が形成されている。加熱用熱交換器4と補助暖房器5との間は、加熱用熱交換器4と冷却用熱交換器3との間よりも狭く設定されている。
【0067】
補助暖房器5は上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bに位置している。補助暖房器5は、その空気通過面が上下方向に延びる姿勢とされている。補助暖房器5の略上半部が上側温風生成通路R2aに配置され、補助暖房器5の略下半部が下側温風生成通路R2bに配置される。補助暖房器5の上部は、加熱用熱交換器4の上部よりも下に位置している。また、補助暖房器5の前後方向の寸法(外部空気の通過方向の寸法)は、加熱用熱交換器4の前後方向の寸法よりも短く設定されている。補助暖房器5の詳細については後述する。
【0068】
加熱用熱交換器4及び補助暖房器5の上下方向の寸法は冷却用熱交換器3の上下方向の寸法よりも短く設定されており、空調ケーシング2の内部には、加熱用熱交換器4及び補助暖房器5の上方に空間が形成されるとともに、加熱用熱交換器4及び補助暖房器5の下方にも空間が形成される。これら空間は通路となるものであり、具体的には、空調ケーシング2の加熱用熱交換器4及び補助暖房器5の上方には、冷却用熱交換器3を通過した冷風が流通する上側通路R6aが形成されており、また、空調ケーシング2の加熱用熱交換器4及び補助暖房器5の下方には、冷却用熱交換器3を通過した冷風が流通する下側通路R6bが形成されている。
【0069】
上側通路R6aの上流端部は、冷却用熱交換器3における空気流れ方向下流側の面の上側と対向するように配置され、空気導入通路R1の下流端部の上側部分に連通している。上側通路R6aは、加熱用熱交換器4及び補助暖房器5の上部よりも上方へ向けて延びている。また、上側通路R6aの中途部は、上側温風生成通路R2aの上流端部に連通可能となっている。上側通路R6aの中途部と、上側温風生成通路R2aの上流端部との間に、上側エアミックスダンパ6が配設されている。
【0070】
上側エアミックスダンパ6は、上側温風生成通路R2aの上流端部の開度を変更することによって上側温風生成通路R2aを流通する空気量を調整するためのものである。上側エアミックスダンパ6は、左右方向に延びる回動軸6aと、回動軸6aから径方向に延出する閉塞板部6bとを備えている。回動軸6aの左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。回動軸6aは、加熱用熱交換器3の上部近傍に配置されている。閉塞板部6bは、上側温風生成通路R2aの上流端部を全閉にした状態(図5に示す)から上方へ回動して上側温風生成通路R2aの上流端部を全開にした状態(図示せず)に切り替えられるとともに、全閉状態と全開状態との間の任意の位置に停止させることができるようになっている。上側エアミックスダンパ6が上側温風生成通路R2aの上流端部を全開にすると、上側通路R6aの下流側が閉塞板部6bによって遮断されて上側通路R6aの冷風が上側温風生成通路R2aに流入することになる。これがフルホット状態である。また、上側エアミックスダンパ6が上側温風生成通路R2aの上流端部を全閉にすると、上側通路R6aの下流側が閉塞板部6bによって全開にされて上側通路R6aの冷風が上側温風生成通路R2aに流入しなくなる。これはフルコールド状態である。
【0071】
また、下側通路R6bの上流端部は、冷却用熱交換器3における空気流れ方向下流側の面の下側と対向するように配置され、空気導入通路R1の下流端部の下側部分に連通している。従って、空気導入通路R1から流出した冷風は、上側通路R6a及び下側通路R6bの両方に流入することになる。下側通路R6bは、冷却用熱交換器3の後側から加熱用熱交換器4及び補助暖房器5の下方を通って加熱用熱交換器4及び補助暖房器5よりも後側へ向けて延びており、空調ケーシング2の下部後側に達している。下側通路R6bは、空調ケーシング2の下部後側から上方へ湾曲しながら延び、空調ケーシング2の後壁部に沿って該空調ケーシング2の上部に達するまで延びている。
【0072】
下側通路R6bの中途部は、下側温風生成通路R2bの上流端部に連通可能となっている。下側通路R6bの中途部と、下側温風生成通路R2bの上流端部との間に、下側エアミックスダンパ7が配設されている。
【0073】
下側エアミックスダンパ7は、下側温風生成通路R2bの上流端部の開度を変更することによって下側温風生成通路R2bを流通する空気量を調整するためのものである。下側エアミックスダンパ7は、左右方向に延びる回動軸7aと、回動軸7aから径方向に延出する閉塞板部7bとを備えている。回動軸7aの左右両端部が、上側エアミックスダンパ6の回動軸6aから下方に離れており、空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。回動軸7aは、加熱用熱交換器3の下部近傍に配置されている。閉塞板部7bは、下側温風生成通路R2bの上流端部を全閉にした状態(図5に示す)から下方へ回動して下側温風生成通路R2bの上流端部を全開にした状態(図示せず)に切り替えられるとともに、全閉状態と全開状態との間の任意の位置に停止させることができるようになっている。下側エアミックスダンパ7が下側温風生成通路R2bの上流端部を全開にすると、下側通路R6bが閉塞板部7bによって遮断されて下側通路R6bの冷風が下側温風生成通路R2bに流入することになる。これがフルホット状態である。また、下側エアミックスダンパ7が下側温風生成通路R2bの上流端部を全閉にすると、下側通路R6bが閉塞板部7bによって全開にされて下側通路R6bの冷風が下側温風生成通路R2bに流入しなくなる。これがフルコールド状態である。
【0074】
上側エアミックスダンパ6と下側エアミックスダンパ7とは、周知のリンク機構を使用することで連動させることができ、例えばエアミックスアクチュエータ等によって駆動される。エアミックスアクチュエータは、図示しないが空調制御装置に接続されている。空調制御装置は、乗員による設定温度や車室外温度、車室内温度等に基づいて上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7の開度を演算し、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7がその開度となるように、エアミックスアクチュエータを制御する。
【0075】
エアミックスアクチュエータによって上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bの開度が大きくされると、上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bへ流入する冷風量が増えるので、温風の生成量が増えることになり、調和空気の温度が上昇する。一方、エアミックスアクチュエータによって上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bの開度が小さくされると、上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bへ流入する冷風量が減るので、温風の生成量が減ることになり、調和空気の温度が低下していく。上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7を回動させることによって調和空気の温度を狙いの温度とすることができるように構成されている。
【0076】
上述のようにして生成された調和空気によって空調ケーシング2の内部に空調風が形成される。空調風は、フルホット時には加熱用熱交換器4及び補助暖房器5で生成された温風のみとなり、また、フルコールド時には冷却用熱交換器3で生成された冷風のみとなり、また、フルホットとフルコールドの間の時には温風と冷風が混合したものになる。
【0077】
デフロスタ通路R3は、空調ケーシング2の内部において上側に形成されており、内部には空調風が流通するようになっている。デフロスタ通路R3の下流端部は、デフロスタ吹出口2bに接続されている。デフロスタ通路R3は、デフロスタ吹出口2bを介して車室に連通している。
【0078】
デフロスタダンパ8は、デフロスタ通路R3を開閉するためのものであり、左右方向に延びる回動軸8aと、回動軸8aから径方向に延出する閉塞板部8b、8bとを備えている。回動軸8aの左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。回動軸8aは、デフロスタ通路R3の前後方向中間部に配置されている。デフロスタダンパ8が回動軸8a回りに回動することにより、閉塞板部8b、8bによってデフロスタ通路R3が全閉状態(図5に示す)から全開状態(図示せず)、及びその反対にも切り替えられるとともに、その中間開度にも切り替えられるようになっている。
【0079】
空調ケーシング2の上側には、乗員の上半身に空調風を供給するための前席用ベント通路R4が上側通路R6aの下流側及び下側通路R6bの下流側に連通するように形成されている。すなわち、前席用ベント通路R4は、空調ケーシング2の内部の上側においてデフロスタ通路R3よりも後側に形成されており、内部には空調風が流通するようになっている。また、前席用ベント通路R4は、加熱用熱交換器4の上方において補助暖房器5よりも前側に形成されている。前席用ベント通路R4の下流端部は、前席用ベント吹出口2cに接続されている。前席用ベント通路R4は、前席用ベント吹出口2cを介して車室に連通している。
【0080】
前席用ベントダンパ9は、前席用ベント通路R4を開閉するためのものであり、左右方向に延びる回動軸9aと、回動軸9aと一体化された閉塞板部9bとを備えている。回動軸9aの左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。回動軸9aは、前側寄りに配置されている。前席用ベントダンパ9が回動軸9a回りに回動することにより、閉塞板部9bによって前席用ベント通路R4が全開状態(図5に示す)から全閉状態(図示せず)、及びその反対にも切り替えられるようになっている。
【0081】
ヒート通路R5は、空調ケーシング2の内部において前席用ベント通路R4よりも下側に形成されており、内部には空調風が流通するようになっている。ヒート通路R5の下流端部は、ヒート吹出口2dに接続されている。ヒート通路R5は、ヒート吹出口2dを介して車室に連通している。
【0082】
ヒートダンパ10は、ヒート通路R5を開閉するためのものであり、左右方向に延びる回動軸10aと、回動軸10aから径方向に延出する閉塞板部10b、10bとを備えている。回動軸10aの左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。回動軸10aは、ヒート通路R5の上流端部の上部近傍に配置されている。ヒートダンパ10が回動軸10a回りに回動することにより、回動軸10aよりも下に位置する閉塞板部10bによってヒート通路R5が全閉状態(図5に示す)になる。この全閉状態から閉塞板部10b、10bが前後方向に延びる姿勢となるまでヒートダンパ10を回動させると、全開状態(図示せず)に切り替えられる。ヒートダンパ10を反対方向に回動させることで全開状態から全閉状態にすることができる。図5に示すように、ヒートダンパ10が全閉状態にあるときには、閉塞板部10bは上下方向に延びることになる。一方、ヒートダンパ10が全開状態にあるときには、閉塞板部10bが前後方向に延びる姿勢となる。これにより、ヒートダンパ10よりも下側の空調用空気がヒートダンパ10の上方へ流れなくなる。
【0083】
また、デフロスタダンパ8、前席用ベントダンパ9及びヒートダンパ10は、周知のリンク機構を使用することで連動させることができ、例えば吹出方向切替用アクチュエータ等によって駆動される。吹出方向切替用アクチュエータは、図示しないが空調制御装置に接続されている。空調制御装置は、乗員による設定温度や車室外温度、車室内温度等に基づいてデフロスタダンパ8、前席用ベントダンパ9及びヒートダンパ10の開度を演算し、デフロスタダンパ8、前席用ベントダンパ9及びヒートダンパ10がその開度となるように、吹出方向切替用アクチュエータを制御する。これにより、例えば、ベントモード、デフロスタモード、ヒートモード、バイレベルモード、デフヒートモード等に切り替えることができる。
【0084】
(補助暖房器5の構成)
図6に示す補助暖房器5は電気式ヒータである。すなわち、補助暖房器5は、通電によって発熱する発熱素子50(図11に示す)と、該発熱素子50を収容する収容部材51と、発熱素子50の熱が伝達する複数の放熱フィン52と、左側固定部材53と、右側固定部材54とを備えている。発熱素子50は、PTC素子で構成されている。収容部材51は、左右方向に延びる金属製の筒状部材で構成することができ、この例では3つの収容部材51が上下方向に互いに間隔をあけて設けられている。1つの収容部材51の内部に複数の発熱素子50が配設されている。図示しないが、各発熱素子50には、電力を供給するための導線が接続されている。車両のバッテリ等から導線を介して各発熱素子50に電力が供給される。電力の供給量や、電力供給のON、OFFの切替は空調制御装置によって行われる。尚、各図に示す白抜きの矢印は、上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2b内における空気の主流の流れ方向を示している。
【0085】
収容部材51の左端部は、左側固定部材53に固定されている。また、収容部材51の右端部は、右側固定部材54に固定されている。左側固定部材53及び右側固定部材54が収容部材51によって連結された状態で一体化されている。右側固定部材54は、空調ケーシング2の右側壁部に対して固定される。また、左側固定部材53は、空調ケーシング2の左側壁部に対して固定される。
【0086】
各放熱フィン52は、上下方向に延びる金属製板材(例えばアルミニウム合金製板材)からなるものであり、この実施形態では全ての放熱フィン52が同じ部材で構成されている。放熱フィン52は、例えばプレス成形品とすることができる。図7図8に示すように、複数の放熱フィン52が左右方向に所定の間隔をあけて並んでいる。加熱用熱交換器4を通過した空気は、補助暖房器5の左右方向に隣合う放熱フィン52、52の間を前側から後側へ通過し、この間に放熱フィン52、52の熱が空気に伝達されて空気の温度が上昇する。隣合う放熱フィン52、52の間隔は、通気抵抗と伝熱効率とを考慮して任意の間隔に設定することができる。
【0087】
補助暖房器5の放熱フィン52には、下側通路R6bからベント通路R4へ向けて流れる冷風が加熱用熱交換器4側へ流れるのを抑制するための冷風遮断部が設けられている。図8に示すように、冷風遮断部は、上端板状部52aと、複数の中間板状部52bと、下端板状部52dとを含んでいる。上端板状部52a、複数の中間板状部52b及び下端板状部52dは、放熱フィン52の本体部分から右側へ向けて突出するように形成されており、上下方向に互いに間隔をあけて設けられている。放熱フィン52に上端板状部52a、中間板状部52b及び下端板状部52dを形成することで放熱面積を増やすことができる。
【0088】
図7及び図9に示すように、上端板状部52aは、放熱フィン52の上端部に一体成形されたものであり、放熱フィン52を構成する板材を右方向に屈曲させることで形成されている。図8に示すように、下端板状部52dは、放熱フィン52の下端部に一体成形されたものであり、放熱フィン52を構成する板材を右方向に屈曲させることで形成されている。また、図7及び図9に示すように、中間板状部52bは、放熱フィン52の上下方向中間部に設けられており、放熱フィン52を構成する板材から切り起こされて構成されている。中間板状部52bを切り起こしによって形成しているので、図7に示すように、放熱フィン52を構成する板材には、中間板状部52bの形状に対応した開口部52cが形成されることになる。中間板状部52bは、収容部材51の上と下の両方に設けられている。
【0089】
上端板状部52a、中間板状部52b及び下端板状部52dは水平方向に延びるとともに、補助暖房器5の空気通過方向(前後方向)と交差する方向(左右方向)に延びている。また、加熱用熱交換器4を通過した空気の流れ方向は前から後に向かう方向であり、上端板状部52a、中間板状部52b及び下端板状部52dは、加熱用熱交換器4を通過した空気の流れ方向に沿うように延びている。
【0090】
上端板状部52a、中間板状部52b及び下端板状部52dの各右端部と、当該右端部に対向する放熱フィン52との間には隙間ができるように、隣合う放熱フィン52、52の間隔が設定されている。上端板状部52a、中間板状部52b及び下端板状部52dのうち、任意の1つを省略してもよい。上端板状部52aのみ設けてもよいし、中間板状部52bのみ設けてもよい。また、上端板状部52a、中間板状部52b及び下端板状部52dは、放熱フィン52から左側へ突出するように形成してもよい。
【0091】
上端板状部52a、中間板状部52b及び下端板状部52dが前後方向、かつ、左右方向に延びているので、下側通路R6bから上方へ流れる空気が加熱用熱交換器4側へ流れようとした際に、その空気が上端板状部52a、中間板状部52b及び下端板状部52dに当たることになり、加熱用熱交換器4側へ向けて流れ難くなる。
【0092】
(車両用空調装置1の動作)
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の動作について説明する。まず、図5に示すベントモードについて説明すると、このベントモードは、デフロスタ通路R3とヒート通路R5とを閉じて、前席用ベント通路R4を開くモードである。図5では、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを全閉状態にしているので、冷却用熱交換器3を通過した冷風が上側通路R6a及び下側通路R6bを流通する。このように、上側通路R6a及び下側通路R6bを設けていることで、通路断面積を増やすことができ、通気抵抗が低減される。
【0093】
前席用ベント通路R4が開いているので、冷風は前席用ベント通路R4に流入して前席用ベント吹出口2cから車室の各部に供給される。
【0094】
仮に、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを半開状態にしていれば、上側温風生成通路R2aと下側温風生成通路R2bとで温風が生成され、この温風と冷風とが混合して調和空気となり、車室の各部に供給される。
【0095】
次に、ヒートモードについて説明する。このヒートモードは、前席用ベント通路R4を閉じて、デフロスタ通路R3とヒート通路R5とを開くモードである。上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを全開状態にすると、冷却用熱交換器3を通過した冷風が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを流通する間に加熱用熱交換器4によって加熱される。上側温風生成通路R2aを流通した温風は、主に上方へ向かって流れてデフロスタ通路R3に流入してデフロスタ吹出口2bから車室に供給される。下側温風生成通路R2bを流通した温風は、主にヒート通路R5へ向かって流れてヒート吹出口2dからから車室に供給される。
【0096】
次に、デフロスタモードについて説明すると、このデフロスタモードは、デフロスタ通路R3を開き、前席用ベント通路R4及びヒート通路R5を閉じるモードである。上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを全開状態にすると、冷却用熱交換器3を通過した冷風が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを流通する間に加熱用熱交換器4によって加熱される。上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを流通した温風は、主に上方へ向かって流れてデフロスタ通路R3に流入してデフロスタ吹出口2bから車室に供給される。
【0097】
(実施形態の作用効果)
この実施形態に係る車両用空調装置1によれば、最大冷房時には、冷却用熱交換器3により生成された冷風が加熱用熱交換器4に向けて流れないように、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7を作動させることができる。これにより、冷却用熱交換器3により生成された冷風が、上側通路R6a及び下側通路R6bを流れてベント通路R4に流入するので、通路の断面積がトータルで大きくなり、通気抵抗が低くなる。
【0098】
また、下側通路R6bを流れた冷風は、ベント通路R4が空調ケーシング2の上側に形成されているので、空調ケーシング2内を上側へ向けて流れていくことなる。このとき、途中に加熱用熱交換器4が配設されているので、冷風の一部が、加熱用熱交換器4が配設されている通路付近で滞留する場合が考えられる。この実施形態では、加熱用熱交換器4よりも空気流れ方向下流側に位置する補助暖房器5に、上端板状部52a、中間板状部52b及び下端板状部52dが設けられているので、空調ケーシング2内を上側へ向けて流れる冷風が加熱用熱交換器4側へ向けて流れ難くなる。よって、冷風の加熱用熱交換器4による加熱が抑制されて冷房性能が向上する。
【0099】
さらに、上端板状部52a、中間板状部52b及び下端板状部52dは、補助暖房器5に設けられているので、遮断ダンパを別途配設する必要が無くなるとともに、下側通路R6bと加熱用熱交換器4とを離さなくても冷風の加熱を抑制することが可能になり、空調ケーシング2の大型化が回避される。
【0100】
また、補助暖房器5の複数箇所に冷風遮断部が設けられるので、補助暖房器5の複数箇所において冷風を遮断することができる。
【0101】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0102】
例えば下側通路R6bから加熱用熱交換器4側へ流れる冷風の主流に対応する部分における放熱フィン52の間隔は、主流から外れた部分における放熱フィン52の間隔よりも狭く設定されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、本発明に係る車両用空調装置は、例えば自動車等に搭載される空調装置として利用できる。
【符号の説明】
【0104】
1 車両用空調装置
2 空調ケーシング
2a 空気導入口
3 冷却用熱交換器
4 加熱用熱交換器
5 補助暖房器
6 上側エアミックスダンパ
7 下側エアミックスダンパ
50 発熱素子
52 放熱フィン
52a 上端板状部(冷風遮断部)
52b 中間板状部(冷風遮断部)
52d 下端板状部(冷風遮断部)
R4 ベント通路
R6a 上側通路
R6b 下側通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11