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  • 特許-塗布型有機電界発光素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】塗布型有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20221102BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20221102BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20221102BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20221102BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20221102BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H05B33/22 A
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
H05B33/22 B
H01L27/32
H05B33/10
H05B33/26 Z
G09F9/30 365
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018161272
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2020035897
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一貴
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晴美
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/044342(WO,A1)
【文献】特開2007-084458(JP,A)
【文献】特開2006-241053(JP,A)
【文献】特開2006-016363(JP,A)
【文献】特開2018-073591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/14
H01L 27/32
H05B 33/10
H05B 33/26
G09F 9/30
H05B 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極とを有し、発光層、及び前記第1電極と第2電極のいずれか一方と同一であってもよい電子注入層を有する電界発光素子であって、少なくとも前記発光層、前記電子注入層、及び前記第1電極と第2電極の少なくとも一方が、塗布成膜可能であり、電子注入層が、アルカリ金属又は第2族元素の単体が溶解した非プロトン性有機溶媒を含有する組成物から形成されており、第2電極と電子注入層とが混合層として形成されている、電界発光素子。
【請求項2】
第1電極と第2電極とを有し、発光層、及び前記第1電極と第2電極のいずれか一方と同一であってもよい電子注入層を有する電界発光素子であって、少なくとも前記発光層、前記電子注入層、及び前記第1電極と第2電極の少なくとも一方が、塗布成膜可能であり、前記電子注入層が、金属ナトリウムが溶解した、N,N’-ジメチルエチレン尿素、N,N-ジメチルアセトアミド、及び、N,N’-ジメチルプロピレン尿素のいずれかを含有する組成物から形成されており、第2電極と電子注入層とが混合層として形成されている、電界発光素子。
【請求項3】
前記発光層の発光材料が、無機ハロゲン化物を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電界発光素子。
【請求項4】
前記発光層と前記電子注入層との間に、その他の層をさらに含む、請求項1からの何れか一項に記載の電界発光素子。
【請求項5】
前記発光層と陽極との間に、その他の層をさらに含む、請求項に記載の電界発光素子。
【請求項6】
前記組成物がさらにAgペーストを含む、請求項2に記載の電界発光素子。
【請求項7】
第1電極と第2電極とを有し、発光層、及び前記第1電極と第2電極のいずれか一方と同一であってもよい電子注入層を有する電界発光素子であって、少なくとも前記発光層、前記電子注入層、及び前記第1電極と第2電極の少なくとも一方が、塗布成膜可能であり、前記電子注入層が、金属ナトリウムが溶解した、N,N’-ジメチルエチレン尿素、N,N-ジメチルアセトアミド、及び、N,N’-ジメチルプロピレン尿素のいずれかを含有する組成物から形成されており、
前記組成物がさらにAgペーストを含む、電界発光素子。
【請求項8】
前記組成物及び前記Agペーストが同じ体積比である、請求項6又は7に記載の電界発光素子。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載の電界発光素子を含む、表示装置。
【請求項10】
請求項1から8の何れか一項に記載の電界発光素子を含む、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布型有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(OLED)を用いた表示装置は、薄型軽量、低消費電力、高コントラスト、高応答速度であるという利点を有する次世代の表示装置であり、その製造技術は急速に進歩している。一般的に、有機電界発光素子は、第1電極と第2電極及びその間に位置する層を含み、これらの層は、例えば正孔注入層(Hole Injection Layer、HIL)と、正孔輸送層(Hole Transport Layer、HTL)と、発光層(Emissive Layer、EML)と、電子輸送層(Electron Transport Layer、ETL)と、電子注入層(Electron Injection Layer、EIL)とを含んでおり、真空蒸着法を元にした製造方法により製造される。
【0003】
一方、製造コストを低減させるために、塗布型有機電界発光素子が提案されている。塗布型有機電界発光素子の製造では、一般的に、蒸着法により第1電極が形成され、塗布法により正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層までの電極間層が形成され、その後に蒸着法により電子注入層及び第2電極が形成されている(非特許文献1)。なお、本発明における電子注入層とは、電子の注入障壁を低減する機能を有した層を指し、陰極と同一であっても良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-279007
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hua Zheng, Yina Zheng, Nanliu Liu, Na Ai, Qing Wang, Sha Wu, Junhong Zhou, Diangang Hu, Shufu Yu, Shaohu Han, Wei Xu, Chan Luo, Yanhong Meng, Zhixiong Jiang, Yawen Chen, Dongyun Li, Fei Huang, Jian Wang, Junbiao Peng and Yong Cao, Nature Communications,4, Article number: 1971 (2013).
【文献】Takayuki Chiba, Yong―Jin Pu and Junji Kido, Journal of Materials Chemistry C, 3(44),11567―11576(2015).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような塗布型有機電界発光素子の製造方法では、真空での成膜工程と常圧での成膜工程を交互に行う必要があり、生産性が優れないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電極間層と、第1電極と第2電極の少なくとも一方の層とを常圧一貫製造することができる有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に関するものである。
[1]第1電極と第2電極とを有し、発光層、及び前記第1電極と第2電極のいずれか一方と同一であっても良い電子注入層を有する有機電界発光素子であって、少なくとも前記発光層、前記電子注入層、及び前記第1電極と第2電極の少なくとも一方が、塗布成膜可能である、有機電界発光素子。
[2]前記電子注入層が、非プロトン性有機溶媒を含有し、アルカリ金属又は第2族元素の単体が溶解した組成物からなる、[1]に記載の有機電界発光素子。
[3]前記電子注入層が、N,N’-ジメチルエチレン尿素、N,N-ジメチルアセトアミド、及び、N,N’-ジメチルプロピレン尿素のいずれかを含有し、金属ナトリウムを溶解した組成物からなる、[1]又は[2]に記載の有機電界発光素子。
[4]第2電極と電子注入層とが混合層として形成されている、[1]から[3]の何れかに記載の有機電界発光素子。
[5]前記発光層の発光材料が、無機ハロゲン化物からなることを特徴とする、[1]から[4]の何れかに記載の有機電界発光素子。
[6]前記発光層と前記電子注入層との間に、その他の層をさらに含む、[1]から[5]の何れかに記載の有機電界発光素子。
[7]前記発光層と陽極との間に、その他の層をさらに含む、[6]に記載の有機電界発光素子。
[8][1]から[7]の何れかに記載の有機電界発光素子を含む、表示装置。
[9][1]から[7]の何れかに記載の有機電界発光素子を含む、照明装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極間層と、第1電極と第2電極の少なくとも一方の層とを常圧一貫製造することができる有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一般的な有機電界発光素子の一様体を示す図である。
図2】有機電界発光素子に電圧を印加し、流れる電流を測定した結果を示す図である。
図3】本発明の表示装置の一様体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
〔有機電界発光素子〕
本発明の有機電界発光素子は、第1電極と第2電極とを有し、発光層及び前記第1電極と第2電極のいずれか一方と同一であっても良い電子注入層を有する有機電界発光素子であって、少なくとも前記発光層、前記電子注入層及び前記第1電極と第2電極の少なくとも一方が、塗布成膜可能であることを特徴とする。また、各層は、その境界が明瞭である必要はなく、複数の層、例えば第2電極と電子注入層とを混合層として形成することも可能である。
【0013】
本発明の一実施形態において、電極間層の各層の厚みは特に限定される物ではないが、その下限は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましい。またその上限は、100nm以下であることが好ましく、90nm以下がより好ましく、80nm以下が更に好ましい。また、第1電極と第2電極を含めた総厚は、下限は、100nm以上であることが好ましく、200nm以上がより好ましく、300nm以上が更に好ましい。またその上限は、2000nm以下であることが好ましく、1000nm以下がより好ましく、500nm以下が更に好ましい。
【0014】
[第1電極および第2電極]
第1電極は、アノード物質又はカソード物質で形成される。例えば、前記第1電極がアノード物質で形成される場合には、金属、金属酸化物、または導電性ポリマーで形成される。導電性ポリマーは、ドーパントを含んでいても良い。第1電極を構成する物質の例としては、炭素、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、モリブデン、銀、イリジウム、金、チタン、パラジウム、その他の金属、およびこれらの合金と、亜鉛酸化物、インジウム酸化物、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、およびその他のこれと類似した金属酸化物、などがある。
【0015】
第2電極は、アノード物質又はカソード物質で形成される。例えば、前記第2電極がカソード物質で形成される場合に、第2電極は、電子注入が容易になされるように仕事関数が小さい物質が好ましい。前記第2電極はこれにのみ限定されるものではないが、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、および鉛のような金属、またはこれらの合金からなる層や積層体、Ca/IZOのような金属/金属酸化物積層体、LiF/AlまたはLiO/Alのような金属塩/金属積層体などで形成される。
第1電極及び第2電極は、上述したように、すべて同じ物質または相違した物質で備えることができる。また、幾何的な位置や製造の順序で区別されない。第1電極及び第2電極は、一方が陰極として機能する場合には、もう一方は陽極として機能する必要がある。
第1電極及び第2電極は、反射率の高い物質を用いた場合には反射層を兼ねることができ、光の取出し方向は、一般に反射層と反対側に設計されるが、陰極側と陽極側のいずれでもよい。透明有機発光ダイオード(透明OLED)を作成する際には、第1電極及び第2電極の両方が少なくとも部分的に透明であることが望ましく、Mg-Ag膜、薄いAg膜などが用いられる。Ag膜の下に、ITOなどがあってもよく、Ag膜を上下からITO膜で挟み込んだ積層膜などであってもよい。
また、第1電極及び第2電極の製造法は特に制限されず、真空蒸着法やスパッタ法などを用いて良く、また各種の塗布法を用いても良いが、少なくとも一方は常圧で製造されることが好ましい。常圧で製造できる方法の例としては各種の塗布法が挙げられ、具体的には、スピンコート法、インクジェット法、静電塗布法、超音波霧化を用いる方法、スリットコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。塗布法を用いる場合には一般的に、原料にはインクが用いられ、インクの例としては、電極材料を微細化した粒子を分散させたインクや、電極材料を溶解したインク、塗布後の反応により電極材料が生成されるように設計されたインクなどが挙げられる。
【0016】
[層構成]
本発明の有機電界発光素子は、少なくとも塗布により成形可能な発光層及び電子注入層を含む。例えば、次の実施形態を挙げることができる。
(層構成の実施形態1)
第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極の順に成膜され、第1電極は蒸着法で、正孔注入層から第2電極は塗布法で製造される有機電界発光素子。
(層構成の実施形態2)
第1電極/電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層の順に成膜され、第1電極は蒸着法で、電子注入層から第2電極は塗布法で製造される有機電界発光素子。
(層構成の実施形態3)
第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層の順に成膜され、電子注入層は第2電極を兼ねており、第1電極は蒸着法で、正孔注入層から電子注入層は塗布法で製造される有機電界発光素子。
(層構成の実施形態4)
第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極の順に成膜され、第1電極から第2電極の全てが塗布法で製造される有機電界発光素子。
また、本発明の発光素子は発光層を複数有していてもよく、発光層と別な発光層の間に電荷発生層(Charge Generation Layer、CGL)を有していても良い。発光層を複数有する場合の各々の発光層を構成する発光材料は、同一であっても良いが、異なっていても良く、一部が同一であっても良い。また、一つの発光層が複数の発光材料を含んでいても良い。単一の発光素子から複数の発光色が得られる発光素子を用いる場合には、カラーフィルター等との組み合わせにより、色情報を再現できる表示装置を構成することができる。
【0017】
(発光層)
本発明の有機電界発光素子は、塗布により形成可能な発光層が含まれる。発光層では、第1電極及び第2電極から注入される電子及び正孔が互いに結合して励起子を形成し、励起子が基底状態に遷移することにより発光が起こる。本発明の一実施形態において、発光層は、リン光物質又は蛍光物質を含む有機物質で形成でき、所定の光を発光することができる。次に発光層材料の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化1】
ポリ(2,5-ジ(3,7-ジメチルオクチルオキシ)シアノテレフタリリデン)
【化2】
ポリ(2,5-ピリジン)
【化3】
ポリ[9,9-ジ(2′-エチルヘキシル)フルオレン-2,7-イレンエチニレン]
【化4】
ポリ(2,5-ジシクロヘキシルフェニレン-1,4-エチニレン)
【化5】
PFN-DOF
【化6】
ポリ((9,9-ジヘキシル-9H-フルオレン-2,7-ビニレン) - コ - (1-メトキシ-4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2,5-フェニレンビニレン))
【化7】
MEH-PPV
【化8】
ポリ(3-シクロヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)
【化9】
ポリ{[2,5-ビス(2-(N,N-dジエチルアミノ)エトキシ)-1,4-フェニレン]-alt-1,4-フェニレン}
【化10】
PPV
【化11】
MEH-PPV
【化12】
PPP
【化13】
RO-PPP
【化14】
PAT
【化15】
PCHMT
【化16】
PDCHT
【化17】
POPT
【化18】
PDAF
【化19】
PFBT
【化20】
PVK
【化21】
トリス(8-キノリノラト)アルミニウム
【化22】
Ir(ppy)3
【化23】
PtOEP
【化24】
上記の化合物以外にも、例えば特開2014-205643号公報、特表2013-528232号公報、特開2014-111764号公報に記載される化合物を用いることができる。
【0018】
本発明の他の実施形態において、発光層の発光材料は、無機ハロゲン化物からなることを特徴とする。
【0019】
本実施形態の発光層が有する発光材料である無機ハロゲン化物は、結晶性の金属ハロゲン化物であることが好ましい。
【0020】
また、本実施形態の発光層が有する発光材料である無機ハロゲン化物は、式Aで表される金属ハロゲン化物であることが好ましい。
(式中、AはCs、Rb、K、Na,Li、からなる群から選択される陽イオンであり、BはPb2+、Sn2+、Ge2+からなる群から選択される陽イオンであり、XはCl、Br、Iからなる群から選択される陰イオンである。m、n、pはそれぞれ独立に正の整数を示す(mおよびnは正の整数、pは3以上の整数である)。)なお、m、n、pは分数または少数で記すことも可能であるが、整数で表示した形式に読み替えるものとする。また、一般に金属ハロゲン化物の元素組成は組成のばらつきなどにより厳密に整数にならない場合があるが、本発明の金属ハロゲン化物はこれらのばらつきや誤差を許容する。
【0021】
さらに、本実施形態の発光層が有する発光材料である無機ハロゲン化物は、式Aまたは式Aで表される金属ハロゲン化物であることがより好ましい。
【0022】
また上記の通り、本実施形態の発光材料は、発光材料の前駆体物質を撹拌により有機溶媒に溶解し、常温下で減圧乾燥を行うことで製造できる。
【0023】
(電子注入層)
本発明の有機電界発光素子には、塗布により形成可能な電子注入層が含まれる。電子注入層は、電極から電子を注入する層であり、電子を輸送する能力も有し、陰極からの電子注入効果を有している。また、薄膜形成能に優れた化合物が好ましい。次に電子注入層材料の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
・アルカリ金属含有化合物
【化25】
アルカリ金属又は第2族元素の塩単酸セシウム、水酸化バリウム、セシウムステアレート

・表面改質中間層
【化26】
8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム(Liq)
【化27】
Benmin-Cl
【化28】
BA-CH3
【化29】
BA-OCH3
【化30】
エタノールアミン

・イオン化合物
【化31】
テトラオクチルアンモニウム臭化物
【化32】
硫酸ポリスチレンイオノマー
【化33】
PSS-Na
【化34】
PF-NR (Br,I)
【化35】
PFON(CHI-PBD

・双性イオン電解質
【化36】
-Blm(n=1, 6, 12, 16)
【化37】
F(NSO
【化38】
PFNSO
【化39】
PF6NO25Py
【化40】
S2
【化41】
S3

・非イオン性中性ポリマー結合剤
【化42】
【化43】
PVPy
【化44】
PVPhPy

・非イオン性非共役ポリマー
【化45】
PEI
【化46】
PEIE
【0024】
上記物質は、水、アルコール、水-アルコール混合溶媒などのプロトン性溶媒に溶解することで、塗布成膜に用いることが可能となる。一方、上記物質をプロトン性溶媒に溶解させたものを電子注入層として用いた場合、プロトン性溶媒が有機電界発光素子の寿命を低下させるおそれがあることが明らかとなった。
したがって、有機電界発光素子の寿命の観点から、本発明の別の実施形態における電子注入層は、非プロトン性有機溶媒を含有し、アルカリ金属又は第2族元素の単体が溶解した組成物から作製されることが好ましく、非プロトン性溶媒を含有し、金属ナトリウムが溶解した組成物から作製されることがより好ましい。金属ナトリウムを溶解させ得る非プロトン性溶媒の例としては、N,N’-ジメチルエチレン尿素、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N’-ジメチルプロピレン尿素が挙げられる。
ここで、「金属の単体が溶解した」とは、溶媒中に金属イオンではなく、金属単体として存在することを意味し、金属塩が溶媒に溶解した状態は含まれない。また、アルカリ金属又は第2族元素の単体が溶解した組成物は、金属塩が溶解した組成物ではないことから、伝導度が高く、抵抗値が低いので、電子注入層と第2電極を混合して形成することができる。
【0025】
(正孔輸送層)
本発明の一実施形態において、有機電界発光素子は、塗布により形成可能な正孔輸送層を含む。本実施形態における正孔輸送層は、塗布により形成可能であり、第1電極(アノード)から注入された正孔を発光層に円滑に伝達する役目を果たすものであれば特に限定されないが、正孔移動度が大きい物質が好ましい。次に正孔輸送層材料の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化47】
ポリ(N-エチル-2-ビニルカルバゾール)
【化48】
ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン]
【化49】
ポリ(2-ビニルカルバゾール)
【化50】
ポリ(9-ビニルカルバゾール)
【化51】
ポリ(1-ビニルナフタレン)
【化52】
ポリ(2-ビニルナフタレン)
【化53】
ポリ(銅フタロシアニン)

Nickel(II) 酸化物ナノ粒子

Tin(II) 酸化物ナノ粒子

Silver(I) 酸化物ナノ粒子

Cupper(I) 酸化物ナノ粒子

Chromium(III) 酸化物ナノ粒子

上記の化合物以外にも、例えば特表2013-528232号公報、特開2014-111764号公報に記載される化合物、発光層の発光材料として例示した、無機ハロゲン化物、等を用いることができる。
【0026】
(電子輸送層)
本発明の一実施形態において、有機電界発光素子は、塗布により形成可能な電子輸送層を含む。電子輸送層の材料としては、陰極から電子の注入を適切に受けて発光層に適切に輸送できるものであれば特に限定されないが、電子移動度が大きい物質が好ましい。次に電子輸送層材料の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化54】
3TPYMB
【化55】
B3PYMPM
【化56】
B3PyPB
【化57】
BPy-TP2
【化58】
Liq
【化59】
PFN-DOF
【化60】
TBPe

Tin(IV) 酸化物ナノ粒子

Titanium(IV) 酸化物ナノ粒子

Zinc(II) 酸化物ナノ粒子

Indium(III) 酸化物ナノ粒子
【化61】
TmPyPB
【化62】
TPBi
【化63】
TSPO1
【化64】
3,5-ジフェニル-4-(1-ナフチル)-1H-1,2,4-トリアゾール
【化65】
トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム
【化66】
バソクプロイン
【化67】
バトフェナントロリン
【化68】
2,5-ビス(1-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール
【化69】
ビス(8-ヒドロキシ-2-メチルキノリン)-(4-フェニルフェノキシ)アルミニウム
【化70】
3,5-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾール
【化71】
2-(4-ビフェニリル)-5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール
【化72】
3-(ビフェニル-4-イル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾール
【化73】
2-(4-tert-ブチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,3,4-オキサジアゾール
上記の化合物以外にも、例えば特表2013-528232号公報、特開2014-111764号公報に記載される化合物、発光層の発光材料として例示した、無機ハロゲン化物、等を用いることができる。
【0027】
(正孔注入層)
本発明の一実施形態において、有機電界発光素子は、塗布により形成可能な正孔注入層(Hole Injection Layer、HIL)を含む。正孔注入層とは、電極から正孔を注入する層で、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し、陽極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。次に正孔注入層材料の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【化74】
ポリアニリン(エメラルジン塩)
【化75】
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、テトラメタクリラート末端キャップ 溶液
【化76】
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン), ビス-ポリ(エチレングリコール)、ラウリル末端、 p-トルエンスルホン酸含有
【化77】
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン), ビス-ポリ(エチレングリコール)、ラウリル 末端、過塩素酸含有

ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-block-ポリ(エチレングリコール)溶液

ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホナート)
【化78】
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホナート)
【化79】
ポリ(チオフェン-3-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]-2,5-ジイル)、スルホン化溶液
上記の化合物以外にも、例えば特表2013-528232号公報、特開2014-111764号公報に記載される化合物、発光層の発光材料として例示した、無機ハロゲン化物、等を用いることができる。
【0028】
〔有機電界発光素子の製造方法〕
本発明の一実施形態における有機電界発光素子の製造方法は、
第1電極を準備する工程、
前記第1電極上に、発光層及び電子注入層を塗布する工程、
前記積層体上に、第2電極の材料を塗布する工程
を含む。
【0029】
本発明の他の実施形態における有機電界発光素子の製造方法は、
第1電極を準備する工程、
前記第1電極上に、発光層を塗布する工程、
前記積層体上に、電子注入層の材料と第2電極の材料を混合して塗布する工程
を含む。
また、本実施形態における有機電界発光素子の製造方法では、2以上の有機電界発光素子に対して、共通の電極として電子注入層と第2電極との混合層を形成することもできる。
【0030】
各層の材料を塗布する方法としては、スピンコート法、インクジェット法、静電塗布法、超音波霧化を用いる方法、スリットコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0031】
〔表示装置〕
本発明の一実施形態における表示装置を図3に示す。図3に示す実施形態においては、有機電界発光素子は、画素役割を果たしている。なお、図3では対向電極の記載は省略している。本発明の表示装置は、本発明の有機電界発光素子を含む。本実施形態の表示装置において、有機電界発光素子は、画素またはバックライトの役割を果たすことができる。その他、表示装置の構成は、当技術分野において公知のものなどが適用され得る。
【0032】
〔照明装置〕
本発明の一実施形態における照明装置は、本発明の有機電界発光素子を含む。本実施形態の照明装置において、有機電界発光素子は、発光部の役割を果たす。その他、照明装置に必要な構成は、当技術分野において公知のものなどが適用され得る。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であればこれから様々な変形及び均等な実施の形態が可能である。
【0034】
よって、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義される本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形や改良形態も本発明に含まれる。
【実施例
【0035】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0036】
〔有機電界発光素子の製造実施例〕
[第1工程]第1電極としてITO付基板を準備し、UVによる洗浄を行った。
[第2工程]第1電極上に、正孔注入層材料(PEDOT:PSS)をスピンコーティング法により塗布した。
[第3工程]正孔注入層上に、発光層材料(Livilux(登録商標)SPG-01T(シグマアルドリッチ社製))をスピンコーティング法により塗布した。
[第4工程]電子注入層材料としてN,N’-ジメチルエチレン尿素を含有し、金属ナトリウム単体が溶解したNa溶液(神鋼環境ソリューション社)と、第2電極材料としてAgペースト(ドータイト、藤倉化成社製)とを混合(1:1体積%)し、スピンコーティング法により第2電極を兼ねる電子注入層を形成した。
〔測定〕
得られた有機電界発光素子に一定の電圧を印加し、流れる電流を測定した。結果を図2に示す。
【0037】
〔比較例〕
第1工程から第3工程までを実施例と同様に行い、第4工程として、Agペーストをスピンコーティング法により塗布し、電極を形成した。実施例と同様に、得られた有機電界発光素子に一定の電圧を印加し、流れる電流を測定した。結果を図2に示す。
【0038】
図2に示す通り、実施例の有機電界発光層では、比較例の有機電界発光素子に比べて、立ち上がり電圧の低電圧化及び電流値の増加が確認された。本発明の電子注入層により、電子注入障壁が低減しているためと考えられる。
【0039】
以上より、本発明の有機電界発光素子は、電極間層と、第1電極と第2電極の少なくとも一方の層とを常圧一貫製造することができるだけでなく、高効率化された有機電界発光素子であることが明らかとなった。
図1
図2
図3