(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ラベル基材及び筒状ラベル
(51)【国際特許分類】
G09F 3/02 20060101AFI20221102BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20221102BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
G09F3/02 F
G09F3/02 C
B32B27/20 A
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2018173047
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増岡 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】永島 崇平
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-215512(JP,A)
【文献】特開2006-039013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/02
B32B 27/20
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、
前記シートの表面側に印刷され、且つ白色顔料を含む第1着色印刷層と、
前記第1着色印刷層の表面に印刷された中間印刷層と、
前記中間印刷層の表面に印刷され、且つ前記第1着色印刷層とは異なる色彩を有する第2着色印刷層と、を有し、
前記第1着色印刷層と第2着色印刷層が、ウレタン系樹脂を主成分とするバインダー樹脂を含み、
前記中間印刷層が、ウレタン系樹脂以外の樹脂を主成分とするバインダー樹脂を含
み、
前記第1着色印刷層、第2着色印刷層及び中間印刷層が、それぞれインキ固化層から構成されている、ラベル基材。
【請求項2】
前記中間印刷層のバインダー樹脂が、ウレタン系樹脂を実質的に含まない、請求項1に記載のラベル基材。
【請求項3】
前記中間印刷層のバインダー樹脂が、アクリル系樹脂を主成分とする、請求項1または2に記載のラベル基材。
【請求項4】
前記中間印刷層が、無色透明な印刷層である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のラベル基材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のラベル基材の表面側を外側にして筒状に形成されている、筒状ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色印刷層が綺麗に印刷されているラベル基材及び筒状ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
ラベルを形成するラベル基材は、一般に、着色印刷層が印刷されたシートからなる。着色印刷層は、色彩を呈するインキから形成される。
着色印刷層は、様々な目的で形成されるが、代表的には、1色又は2色以上の色彩からなるデザイン印刷層や、白色印刷層のような無模様一色の印刷層などが挙げられる。
前記着色印刷層は、傷つき防止の観点から、通常、ラベルの視認面とは反対側の面に印刷される。この場合、ラベルの視認面側からデザイン印刷層のデザインが見えるようにするため、シートの裏面(ラベルとした際の視認面とは反対側の面)にデザイン印刷層を印刷し、その裏面に白色印刷層のような無模様一色の印刷層が印刷される。
【0003】
また、前記着色層が、ラベルの視認面に印刷される場合もある。
例えば、特許文献1には、透明フィルムの表面(ラベルとした際の視認面)に、順に、アルミニウム微粉末などの遮蔽性物質を含むインキからなる遮蔽層と、酸化チタンなどの無機系白色顔料を含むインキからなる反射層と、カラーインキからなる絵柄層と、を有する遮光性印刷ラベルが開示されている。
かかる遮光性印刷ラベルは、透明フィルムの表面に、遮蔽性物質を含むインキをグラビア印刷することによって遮蔽層を形成し、その遮蔽層の表面に、酸化チタンなどの無機系白色顔料を含むインキをグラビア印刷することによって反射層を形成し、その反射層の表面に、カラーインキをグラビア印刷することによって絵柄層を形成することによって得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、シートの裏面にデザイン印刷層及び無模様一色の印刷層を順に印刷したラベルは、デザインを綺麗に視認できるが、シートの表面に白色顔料を含む印刷層(反射層)及びデザイン印刷層を順に印刷したラベルは、印刷不良を生じることがある。具体的には、前記白色顔料を含む印刷層(反射層)の表面に、カラーインキを重ね印刷すると、その印刷層の所々にインキ抜けが生じることがある。特に、カラーインキからなる絵柄層の背景となる白色顔料を含む印刷層に、前記インキ抜けが生じると、ラベル全体の見栄えが悪くなる。
さらに、トラッピング不良により、絵柄層も不鮮明となるおそれがある。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、シートの表面側に、白色顔料を含む第1着色印刷層が印刷され、その表面側に別の色彩の第2着色印刷層が印刷されているラベル基材及び筒状ラベルにおいて、白色顔料を含む第1着色印刷層のインキ抜けを防止して、シートの裏面に印刷層を設けた場合と同様に、第1着色印刷層が綺麗に形成されたラベル基材及び筒状ラベルを提供することである。
本発明の第2の目的は、前記ラベル基材及び筒状ラベルにおいて、シートの裏面に印刷層を設けた場合と同様に、第2着色印刷層が綺麗に形成されたラベル基材及び筒状ラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のラベル基材は、シートと、前記シートの表面側に印刷され、且つ白色顔料を含む第1着色印刷層と、前記第1着色印刷層の表面に印刷された中間印刷層と、前記中間印刷層の表面に印刷され、且つ前記第1着色印刷層とは異なる色彩を有する第2着色印刷層と、を有し、前記第1着色印刷層と第2着色印刷層が、ウレタン系樹脂を主成分とするバインダー樹脂を含み、前記中間印刷層が、ウレタン系樹脂以外の樹脂を主成分とするバインダー樹脂を含み、前記第1着色印刷層、第2着色印刷層及び中間印刷層が、それぞれインキ固化層から構成されている。
【0008】
本発明の好ましいラベル基材は、前記中間印刷層のバインダー樹脂が、ウレタン系樹脂を実質的に含まない。
本発明の好ましいラベル基材は、前記中間印刷層のバインダー樹脂が、アクリル系樹脂を主成分とする。
本発明の好ましいラベル基材は、前記中間印刷層が、無色透明な印刷層である。
【0009】
本発明の別の局面によれば、筒状ラベルを提供する。
本発明の筒状ラベルは、上記いずれかのラベル基材の表面側を外側にして筒状に形成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のラベル基材及び筒状ラベルは、シートの表面側に、第1着色印刷層及び第2着色印刷層が順に印刷されているものでありながら、シートの裏面に印刷層を設けた場合と同様に、インキ抜けを実質的に有さない綺麗な第1着色印刷層が形成される。
好ましいラベル基材及び筒状ラベルによれば、第2着色印刷層もより綺麗に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】長尺帯状のラベル基材を表面側から見た平面図。
【
図3】各印刷層の形成パターンの第1変更例を示す縦断面図。
【
図4】各印刷層の形成パターンの第2変更例を示す縦断面図。
【
図5】枚葉状のラベル基材を表面側から見た平面図。
【
図9】(a)は、参考例のラベル基材の縦断面図、(b)は、実施例1のラベル基材の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本明細書において、ラベル基材の「表面」は、ラベル基材から形成される各種ラベルを被着体に装着した際に、外側となる面(被着体とは反対側の面)を指し、「裏面」は、その反対側の面(被着体側の面)を指す。「平面視」は、シートの表面に対して鉛直方向から見ることをいう。
「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
なお、各図において、厚みや寸法などは、実際のものと異なっていることに留意されたい。
【0013】
図1及び
図2は、本発明のラベル基材10を示している。
図3及び
図4は、第1着色印刷層1、中間印刷層3及び第2着色印刷層2の形成パターンの変更例を示している。
図示例では、筒状ラベルを形成するためのラベル基材10を例示している。
ラベル基材10は、シート4と、いくつかの印刷層と、を有する。
ここで、本明細書において、印刷層は、従来公知の印刷法によってインキを印刷し、そのインキが固化したインキ固化層をいう。
印刷層は、前記シート4の表面側に設けられた白色顔料を含む第1着色印刷層1と、前記第1着色印刷層1とは異なる色彩を有する第2着色印刷層2と、前記第1着色印刷層1と第2着色印刷層2の間に介在された中間印刷層3と、を有する。
本発明のラベル基材10は、その一部分又は全体に、シート4/第1着色印刷層1/中間印刷層3/第2着色印刷層2という層構成を有する。
第1着色印刷層1と第2着色印刷層2は、ウレタン系樹脂を主成分とするバインダー樹脂を含み、前記中間印刷層3が、ウレタン系樹脂以外の樹脂を主成分とするバインダー樹脂を含んでいる。
本明細書において、バインダー樹脂の主成分とは、印刷層に含まれるバインダー樹脂の中で最も多い樹脂成分(重量比)をいう。
【0014】
<シート>
シート4は、ラベルとしての柔軟性、剛性及び印刷適性を有するウェブであれば特に限定されない。前記シート4としては、合成樹脂フィルム、紙、合成紙、不織布及び発泡樹脂フィルム、並びにこれらの積層フィルムが挙げられる。なお、シートとは、一般に、フィルムと呼ばれるものも含まれる。好ましくは、シート4は、合成樹脂フィルム又はこれを含む積層フィルムであり、より好ましくは、合成樹脂フィルムである。合成樹脂フィルムを含む積層フィルムは、合成樹脂フィルムに、他の層が積層されたものである。前記他の層としては、紙、合成紙、不織布、発泡樹脂フィルム及びバリア層(金属蒸着層などのバリア層)などが挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上選択して合成樹脂フィルムに積層されていてもよい。
シート4は、合成樹脂フィルムがシートの少なくとも表面を構成するものが好ましく、さらに、ポリエステル系フィルムがシートの少なくとも表面を構成するものがより好ましい。従って、積層フィルムの場合には、合成樹脂フィルム/他の層、或いは、合成樹脂フィルム/他の層/合成樹脂フィルムなどが好ましい例である。
【0015】
シート4として、合成樹脂フィルム又はそれを含む積層フィルムを用いる場合、合成樹脂フィルムそのものは、単層構造でもよく、複層構造でもよい。複層構造の合成樹脂フィルムは、表面樹脂層/中間樹脂層/裏面樹脂層からなる。この場合、中間樹脂層は、1層でもよく、2層以上でもよい。
また、前記合成樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸などのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンや環状オレフィン樹脂などのオレフィン系樹脂、ポリスチレンやスチレンーブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
第1着色印刷層1を綺麗に形成できることから、少なくとも表面樹脂層がポリエステル系樹脂を主成分として含む合成樹脂フィルムが好ましい。具体的には、単層構造の合成樹脂フィルムについては、ポリエステル系樹脂を主成分とするフィルムが好ましく、複層構造の合成樹脂フィルムについては、表面樹脂層がポリエステル系樹脂を主成分とするものが好ましく、特に、表面樹脂層及び裏面樹脂層がいずれもポリエステル系樹脂を主成分とするものが好ましい。
シート4の厚みは、特に限定されず、例えば、8μm~500μmであり、好ましくは、10μm~200μmである。例えば、合成樹脂フィルム、合成紙及びこれらを含む積層フィルムなどからなるシート4の厚みは、8μm~200μmであり、好ましくは、10μm~120μmである。
【0016】
シート4は、透光性の観点では、透明(透明は、有色透明又は無色透明を意味する)又は不透明のいずれでもよい。合成樹脂フィルムは、通常、無色透明であるが、着色された合成樹脂フィルムも知られており、着色された合成樹脂フィルムを用いてもよい。着色された合成樹脂フィルムとしては、代表的には、乳白フィルムなどが挙げられる。
なお、金属蒸着層などの不透明層と合成樹脂フィルムを有する積層フィルムは、不透明である。
【0017】
シート4は、収縮挙動の観点では、熱収縮性及び/又は自己伸縮性を有するものでもよく、或いは、実質的に熱収縮性及び自己伸縮性を有さないものでもよい。
本実施形態のように、筒状ラベルを形成するためのラベル基材10にあっては、熱収縮性及び/又は自己伸縮性を有するシート4を用いることが好ましい。
前記熱収縮性は、所望温度(例えば、70℃~100℃)に加熱されることによって収縮する性質をいう。自己伸縮性は、引っ張り力を加えることによって伸張し、その後、引っ張り力を解除することによってほぼ元の状態に復元する性質をいう。なお、実質的に熱収縮性を有さないシート4としては、例えば、第1方向及び第2方向のそれぞれの熱収縮率が5%以下のシート、好ましくは同熱収縮率が3%以下のシートが挙げられる。
【0018】
前記熱収縮性を有するシート4としては、少なくとも第1方向に主として熱収縮する基材が用いられ、第2方向に若干熱収縮又は熱伸長する基材を用いてもよい。前記第1方向は、シート4の面内における1つの方向を意味し、第2方向は、前記面内において前記第1方向と直交する方向である。前記熱収縮性を有する基材の第1方向(主たる熱収縮方向)における熱収縮率は、特に限定されないが、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。なお、前記第1方向における熱収縮率は、大きいほど好ましいが、それにも自ずと限界があるため、前記第1方向における熱収縮率は、理論上、100%未満である。前記基材が第2方向に熱変化する基材である場合、その第2方向における熱収縮率は、例えば、-3~15%であり、好ましくは0~10%である。前記熱収縮率のマイナスは、熱伸長を意味する。
ただし、本明細書において、熱収縮率は、加熱前(標準状態(23℃、1気圧、50%RH)雰囲気下で24時間保存)のシート4の長さ(元の長さ)と、90℃温水中に10秒間浸漬して取り出した後のシート4の長さ(浸漬後の長さ)と、をそれぞれ標準状態下で計測し、下記式に代入して求められる。なお、各シート4の長さは、標準状態下で計測する。
前記熱収縮率(%)=[{(第1方向(又は第2方向)の元の長さ)-(第1方向(又は第2方向)の浸漬後の長さ)}/(第1方向(又は第2方向)の元の長さ)]×100。
【0019】
図1を参照して、前記シート4(ラベル基材10)は、平面視で長尺帯状である。長尺帯状は、長手方向の長さが幅方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。長尺帯状としては、例えば、幅方向の長さが20mm~4000mmで、長手方向の長さが5m以上であり、好ましくは、長手方向の長さが10m以上である。なお、幅方向は、長手方向と直交する方向である。
長尺帯状のラベル基材10は、通常、ロール状に巻き取って保管・運搬される。
【0020】
<第1着色印刷層>
第1着色印刷層1は、長尺帯状のシート4の表面側の所望領域に設けられている。本実施形態のように、筒状ラベルを形成するために好適なラベル基材10にあっては、シート4の第1側端部41の表面を除くシート4の表面の領域(以下、特定領域という)に、第1着色印刷層1が設けられている。
第1着色印刷層1は、前記特定領域の全体に亘って設けられていてもよく、或いは、前記特定領域の一部分に設けられていてもよい。
図2に示す例では、第1着色印刷層1は、特定領域の略全体に亘って設けられている。
図3及び
図4に示す例では、第1着色印刷層1は、特定領域の一部分に設けられている。特定領域の一部分に設けられる場合、
図4に示すように、第1着色印刷層1が1つの範囲に設けられていてもよく、或いは、
図3に示すように、2つ以上の範囲に分かれて設けられていてもよい。
第1着色印刷層1は、シート4の表面に直接的に設けられていてもよく、或いは、シート4の表面に任意の層が設けられ、その層の表面に設けられていてもよい。
【0021】
第1着色印刷層1は、第1着色印刷層1を形成するインキ(以下、第1インキという)をシート4の表面に印刷し、これを固化させることによって形成できる。
第1着色印刷層1は、ベタ状に設けられている。
本明細書において、印刷層がベタ状に設けられているとは、その印刷層が設けられている範囲において、インキ固化物が面方向に延在して1つの連続した層を成していることをいう。ただし、グラビア印刷法などの有版印刷法にて形成される印刷層は、ドット状に付着したインキ固化物の集合から構成される。このため、このような印刷層は、巨視的に見ると、そのインキ固化物が面方向に延在して1つの連続した層を成しているが、微視的に見ると、その面内に無数の微細な隙間が存在する場合があることに留意されたい。このように微視的に見ると、微細な隙間を有する場合でも、巨視的に1つの連続した層を成している場合には、ベタ状の範疇に含まれるものとする。
第1着色印刷層1の厚みは、特に限定されず、例えば、1μm~10μmであり、好ましくは2μm~7μmである。
【0022】
第1着色印刷層1は、構成成分の観点では、白色顔料及びバインダー樹脂を含み、必要に応じて、白色顔料以外の着色剤、各種の添加剤を含んでいてもよい。
第1着色印刷層1の白色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、鉛白、シリカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。中でも、酸化チタンを含む白色顔料が好ましい。
白色顔料以外の着色剤としては、カーボンブラックなどの黒色顔料、アルミニウム粉末などの銀色顔料などが挙げられる。
第1着色印刷層1のバインダー樹脂(以下、第1バインダー樹脂という場合がある)は、ウレタン系樹脂を主成分とするものであれば特に限定されない。例えば、第1バインダー樹脂は、ウレタン系樹脂のみからなる、或いは、主成分樹脂であるウレタン系樹脂とウレタン系樹脂以外の樹脂からなるものでもよい。以下、ウレタン系樹脂以外の樹脂を「他の樹脂」という場合がある。
【0023】
前記ウレタン系樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる樹脂(すなわち、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物の共重合体)が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族及び脂環族の公知のジイソシアネート類の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。前記ジイソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。また、必要に応じて、3官能以上のポリイソシアネート類又はポリイソシアネートアダクト体をジイソシアネート類と混合して用いることもできる。
前記ポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、ブタンジオール(1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールなど)、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの低分子量グリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール-ポリカプロラクトン共重合体などのポリエーテルジオール;プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール類とアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸などの2塩基酸類とから得られるポリエステルジオール;ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール、ラクトンブロック共重合ジオールなどのラクトンジオールなどのジオール類;などを使用できる。また、必要に応じて、ジオール類と、3官能以上のポリオール化合物(ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等)とを混合して用いることもできる。
【0024】
第1バインダー樹脂が他の樹脂を含む場合、その他の樹脂としては、アクリル系樹脂、ニトロセルロースやセルロース・アセテート・ブチレートなどのセルロース系樹脂、アミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
また、前記添加剤としては、硬化剤、滑剤、可塑剤、沈降防止剤、分散剤、安定剤、架橋剤、消泡剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、色別れ防止剤、スリップ剤などが挙げられる。
【0025】
第1バインダー樹脂は、第1着色印刷層中の樹脂成分全体を100重量%としたとき、ウレタン系樹脂を50重量%以上含み、好ましくはウレタン系樹脂を60重量%以上含み、より好ましくはウレタン系樹脂を70重量%以上含み、さらに好ましくはウレタン系樹脂を85重量%以上含む。
第1着色印刷層1の白色顔料の含有量としては、特に限定されないが、第1着色印刷層1の全体を100重量%としたとき、例えば、50重量%~90重量%であり、好ましくは65重量%~85重量%である。白色顔料の含有量が比較的多い第1着色印刷層1に、中間印刷層3を積層することにより、第1着色印刷層1のインキ抜けを効果的に防止できる。
第1着色印刷層1のバインダー樹脂の含有量としては、特に限定されないが、第1着色印刷層1の全体を100重量%としたとき、例えば、10重量%~40重量%であり、好ましくは15重量%~35重量%である。
【0026】
第1インキは、固化性能の観点では、溶剤揮発型や水系溶媒蒸発型などの乾燥型などが挙げられる。好ましくは、乾燥型の第1インキが用いられ、より好ましくは、溶剤揮発型の第1インキが用いられる。
溶剤揮発型の第1インキは、前記白色顔料及びバインダー樹脂(必要に応じて、白色顔料以外の着色剤、各種の添加剤)を含み、さらに、各種の溶剤を含む。
溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;トルエンなどの炭化水素類;これらの混合溶媒;これらと水の混合溶媒;などが挙げられる。
水系溶媒蒸発型の第1インキは、前記溶剤に代えて、水系溶媒が含まれる。水系溶媒としては、水;水とアルコール類の混合溶媒;などが挙げられる。
【0027】
第1着色印刷層1は、色彩の観点では、無模様一色の印刷層であり、好ましくは無模様白色の印刷層である。
なお、白色顔料以外の着色剤を含む第1着色印刷層1は、白色顔料とその着色剤が混ざった無模様一色の印刷層となる。例えば、黒色顔料及び/又は銀色顔料を含む第1着色印刷層1は、黒色顔料及び/又は銀色顔料と白色顔料により、無模様灰色を呈する印刷層となる。
【0028】
<中間印刷層>
中間印刷層3は、前記第1着色印刷層1の表面に直接的に設けられている。中間印刷層3は、第1着色印刷層1の表面に設けられていればよく、例えば、第1着色印刷層1の表面とシート4の表面に跨がるように設けられていてもよい。また、中間印刷層3は、平面視で第1着色印刷層1と同形同大に設けられていてもよく、或いは、第1着色印刷層1よりも小面積又は大面積で設けられていてもよい。
図2及び
図4に示す例では、中間印刷層3は、第1着色印刷層1の表面のみに設けられている。また、
図2では、中間印刷層3は、平面視において、第1着色印刷層1と同形同大に設けられている。
図4では、中間印刷層3は、第1着色印刷層1よりも小面積である。
図3に示す例では、中間印刷層3は、第1着色印刷層1の表面とシート4の表面に跨がるように設けられている部分を有する。
【0029】
中間印刷層3は、中間印刷層3を形成するインキ(以下、中間インキという)を第1着色印刷層1の表面などに印刷し、これを固化させることによって形成できる。
中間印刷層3は、ベタ状に設けられている。
中間印刷層3の厚みは、特に限定されないが、余りに小さいと中間印刷層3を設けた意義が低下するので、例えば、0.5μm以上が好ましく、さらに、1μm以上がより好ましい。なお、中間印刷層3の厚みの好ましい上限は特にないが、費用対効果の観点では、例えば、5μm以下である。
【0030】
中間印刷層3は、構成成分の観点では、バインダー樹脂を含み、必要に応じて、各種の添加剤を含んでいてもよい。また、中間印刷層3は、着色剤を含まない。着色剤を含まない中間印刷層3は、無色透明な印刷層である。
中間印刷層3のバインダー樹脂(以下、中間バインダー樹脂という場合がある)は、ウレタン系樹脂以外の樹脂を主成分とするものであれば特に限定されない。中間バインダー樹脂は、例えば、ウレタン系樹脂以外の樹脂のみからなる、或いは、ウレタン系樹脂以外の樹脂(主成分樹脂)とウレタン系樹脂からなるものでもよい。
綺麗な第2着色印刷層2を形成できることから、中間印刷層3(中間バインダー樹脂)は、ウレタン系樹脂を実質的に含まないことが好ましい。
本明細書において、「実質的に含まない」とは、不可避的に含まれる程度の微量のその他の成分の混入は許容され、有意な量の混入は除外されるという意味である。
【0031】
中間バインダー樹脂の前記ウレタン系樹脂以外の樹脂としては、アクリル系樹脂、ニトロセルロースやセルロース・アセテート・ブチレートなどのセルロース系樹脂、アミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
より綺麗な第2着色印刷層2を形成できることから、中間バインダー樹脂は、ウレタン系樹脂を実質的に含まず且つアクリル系樹脂又はセルロース系樹脂を主成分とするものが好ましく、さらに、ウレタン系樹脂を実質的に含まず且つアクリル系樹脂を主成分とするものがより好ましくい。
中間バインダー樹脂は、中間印刷層中の樹脂成分全体を100重量%としたとき、前記ウレタン系樹脂以外の樹脂を70重量%以上含み、より好ましくは80重量%以上含み、さらに好ましくは90重量%以上含む。
なお、中間印刷層3の添加剤としては、上記第1着色印刷層1に例示の添加剤が挙げられる。
【0032】
中間インキは、固化性能の観点では、溶剤揮発型や水系溶媒蒸発型などの乾燥型などが挙げられる。好ましくは、乾燥型の中間インキが用いられ、より好ましくは、溶剤揮発型の中間インキが用いられる。
溶剤揮発型の中間インキは、着色剤を含まず、バインダー樹脂(必要に応じて各種の添加剤)を含み、さらに、各種の溶剤を含む。
中間インキの溶剤としては、上記第1インキに例示の溶剤が挙げられる。
【0033】
<第2着色印刷層>
第2着色印刷層2は、中間印刷層3の表面に直接的に設けられている。
第2着色印刷層2は、第1着色印刷層1の表面に接しないように設けられていればよい。換言すると、第1着色印刷層1が設けられている範囲に重ねて設けられる第2着色印刷層2は、その第1着色印刷層1との間に中間印刷層3が介在される。なお、印刷法によって形成される印刷層は、精密機器のように厳密な精度で形成されるわけではないので、僅かな部分(例えば、第2着色印刷層2の縁部など)において、第1着色印刷層1の表面に第2着色印刷層2が接することがあることに留意されたい。
【0034】
第2着色印刷層2は、中間印刷層3の表面のみに設けられていてもよく、或いは、中間印刷層3の表面とシート4の表面に跨がるように設けられていてもよい。
図2及び
図4に示す例では、第2着色印刷層2は、中間印刷層3の表面のみに直接的に接するように設けられている。
図3に示す例では、第2着色印刷層2は、中間印刷層3の表面とシート4の表面に跨がるように設けられている部分を有する。
【0035】
第2着色印刷層2は、第2着色印刷層2を形成するインキ(以下、第2インキという)を中間印刷層3の表面に印刷し、これを固化させることによって形成できる。
第2着色印刷層2は、1つの範囲にベタ状に設けられていてもよく、或いは、2つ以上の範囲に分かれて設けられていてもよい。
第2着色印刷層2が2つ以上の範囲に分かれて設けられている場合、その2つ以上の第2着色印刷層2の全てが中間印刷層3の表面上に設けられていてもよく、或いは、1つ又は2つ以上の第2着色印刷層2が中間印刷層3の表面上に設けられ且つ1つ又は2つ以上の第2着色印刷層2がシート4の表面上に設けられていてもよい。
図4は、第2着色印刷層2が2つ以上の範囲に分かれて設けられている場合であって、中間印刷層3を海とし且つ第2着色印刷層2を複数の島とする平面視海島状に設けられた場合を例示している。
第2着色印刷層2の厚みは、特に限定されず、例えば、0.3μm~10μmであり、好ましくは0.5μm~7μmである。
【0036】
第2着色印刷層2は、構成成分の観点では、着色剤及びバインダー樹脂を含み、必要に応じて、各種の添加剤を含んでいてもよい。
第2着色印刷層2は、第1着色印刷層1とは異なる色彩を呈する印刷層である。例えば、第1着色印刷層1が白色印刷層である場合には、第2着色印刷層2は、白色以外の色彩を有する印刷層である。なお、第2着色印刷層2は、1色でもよく、或いは、2色以上であってもよい。
第2着色印刷層2の着色剤としては、従来公知のカラーインキに用いられている顔料、染料又は混合顔料若しくは混合染料が挙げられる。
第2着色印刷層2のバインダー樹脂(以下、第2バインダー樹脂という場合がある)は、ウレタン系樹脂を主成分とするものであれば特に限定されない。第2バインダー樹脂は、例えば、ウレタン系樹脂のみからなる、或いは、主成分樹脂であるウレタン系樹脂とウレタン系樹脂以外の樹脂からなるものでもよい。
【0037】
第2バインダー樹脂のウレタン系樹脂は、特に限定されず、例えば、上記第1バインダー樹脂で例示したようなウレタン系樹脂が挙げられる。
なお、第2バインダー樹脂に含まれるウレタン系樹脂は、第1バインダー樹脂に含まれるウレタン系樹脂と同一構造のものでもよく、或いは、異なる構造のものでもよい。
また、第2バインダー樹脂が他の樹脂を含む場合、その他の樹脂としては、上記第1バインダー樹脂で例示したような樹脂が挙げられる。第2着色印刷層2の添加剤としては、上記第1着色印刷層1に例示の添加剤が挙げられる。
【0038】
第2バインダー樹脂は、第2着色印刷層中の樹脂成分全体を100重量%としたとき、ウレタン系樹脂を50重量%以上含み、好ましくはウレタン系樹脂を60重量%以上含み、より好ましくはウレタン系樹脂を70重量%以上含み、さらに好ましくはウレタン系樹脂を85重量%以上含む。
第2着色印刷層2のバインダー樹脂の含有量としては、特に限定されないが、第2着色印刷層2の全体を100重量%としたとき、例えば、50重量%~99重量%であり、好ましくは75重量%~95重量%である。
【0039】
第2インキは、固化性能の観点では、溶剤揮発型や水系溶媒蒸発型などの乾燥型などが挙げられる。好ましくは、乾燥型の第2インキが用いられ、より好ましくは、溶剤揮発型の第2インキが用いられる。
溶剤揮発型の第2インキは、前記着色剤及びバインダー樹脂(必要に応じて、各種の添加剤)を含み、さらに、各種の溶剤を含む。
第2インキの溶剤としては、上記第1インキに例示の溶剤が挙げられる。
【0040】
第2着色印刷層2は、色彩の観点では、上述のように、第1着色印刷層1とは異なる色彩を有する印刷層である。
例えば、第2着色印刷層2は、文字、絵柄などのデザインを表した印刷層である。このような第2着色印刷層2は、1色又は2色以上の色彩を用いてデザインが表されている。特に、第1着色印刷層1が白色印刷層である場合、第2着色印刷層2のうち、第1着色印刷層1に重なった範囲では、第1着色印刷層1の白色が第2着色印刷層2のデザインの背景色となる。
第2着色印刷層2は、通常、纏まりのある1つのデザインを繰り返しパターンとして長尺帯状のシート4の長手方向に繰り返して設けられる。
【0041】
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、シート4の表面側又は/及び裏面側に、第1着色印刷層1、中間印刷層3及び第2着色印刷層2以外の他の印刷層(図示せず)が設けられていてもよい。
このような他の印刷層としては、シート4の裏面側に設けられる滑り層(滑剤などの滑り成分を含む印刷層)、第2着色印刷層2の表面側を保護する保護層(無色透明な印刷層)などが挙げられる。
【0042】
<ラベル基材の製造方法>
上記ラベル基材10は、シート4の表面に、第1インキを印刷して第1着色印刷層1を形成し、その第1着色印刷層1の表面を含んで中間印刷層3を印刷して中間印刷層3を形成し、その中間印刷層3の表面を含んで第2インキを印刷して第2着色印刷層2を形成することによって得られる。
第1インキ、中間インキ及び第2インキの印刷法は、特に限定されず、それぞれ独立して、グラビア印刷などの凹版印刷法、凸版輪転印刷などの凸版印刷法のような有版印刷法が用いられ、好ましくは、いずれもグラビア印刷のような凹版印刷法が用いられる。
第1インキ、中間インキ及び第2インキは、それぞれ独立して、1度刷りでもよく、多刷りでもよい。特に、2色以上の色彩でデザインを表す第2着色印刷層2を形成する場合には、第2インキは2度以上の多刷り印刷される。
【0043】
<筒状ラベル>
上記ラベル基材10は、任意の適切なラベルに加工して使用される。
本実施形態のように、シート4の第1側端部41の表面に印刷層が設けられていないラベル基材10は、筒状ラベルに加工することが好適である。
例えば、上記長尺帯状のラベル基材10を、第2着色印刷層2の纏まりのある1つのデザインを含んで切断することにより(切断箇所を
図1の白抜き矢印で示す)、
図5に示すような枚葉状(例えば、平面視略長方形状)のラベル基材10Aが得られる。
【0044】
この枚葉状のラベル基材10Aの表面側が外側となるように、ラベル基材10Aを筒状に丸め、
図6に示すように、その第2側端部42の裏面を第1側端部41の表面に重ね合わせて溶剤又は接着剤にて接着することにより、筒状ラベル91が得られる。特に、第1側端部41の表面に印刷層が設けられていないので、溶剤を用いた場合であっても、シートの第1側端部41の表面と第2側端部42の裏面を強固に接着できる。
かかる筒状ラベル91は、
図7に示すように、容器などの被着体8に外嵌し、加熱することにより、被着体8に装着できる。
【0045】
なお、
図6に示す筒状ラベル91は、被着体に外嵌する前から筒状に形成されているものであるが、被着体に外嵌すると同時に筒状に形成される筒状ラベルでもよい。
被着体に外嵌すると同時に筒状に形成される筒状ラベルは、
図8に示すように、容器などの被着体8に、ラベル基材10Aの第1側端部41の裏面を、接着剤などを介して貼り付けた後、そのラベル基材10Aを被着体8の周囲に巻き付け、ラベル基材10Aの第2側端部42の裏面を第1側端部41の表面に重ね合わせて接着することにより得られる。
【0046】
本発明のラベル基材10,10Aは、シート4の表面に、ウレタン系樹脂を主成分とする第1着色印刷層1が設けられ、その第1着色印刷層1の表面側に、他の樹脂を主成分とする中間印刷層3を介在させてウレタン系樹脂を主成分とする第2着色印刷層2が設けられている。かかる層構成によれば、第1着色印刷層1のインキ抜けを防止でき、さらに、第1着色印刷層1のトラッピング不良も防止できる。
本発明のラベル基材10,10Aは、白色顔料を含む第1着色印刷層1が綺麗に形成されており、さらに、第2着色印刷層2も綺麗に形成されている。
かかるラベル基材10Aから形成されたラベルは、良好な外観を有する。
【0047】
上記実施形態では、ラベル基材10Aを用いて筒状ラベルを作製する場合を例示したが、本発明のラベル基材10,10Aは、筒状ラベルの形成用に限られない。本発明のラベル基材を用いて、例えば、タックラベル、POPラベル、インモールドラベルなどの公知のラベルを形成してもよい。
なお、上記実施形態では、筒状ラベルを形成するためのラベル基材10Aを例示したため、第1側端部41を除く領域(特定領域)に各印刷層が形成されているが、筒状ラベル以外のラベルを形成するためのラベル基材にあっては、第1側端部41を含んで各印刷層が形成されていてもよい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例及び比較例を示し、本発明をさらに詳述する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるわけではない。
【0049】
[使用材料]
・シート(A):ポリエチレンテレフタレート製の単層フィルム。厚み40μm。三菱ケミカル(株)製の商品名「LX-18S」。
・シート(B):ポリエチレンテレフタレート製の表面樹脂層/ポリスチレン製の中間樹脂層/ポリエチレンテレフタレート製の裏面樹脂層からなる2種3層フィルム。厚み40μm。グンゼ(株)製の商品名「HST」。
・第1インキ:酸化チタンを含む溶剤揮発型の白色インキ。バインダー樹脂は、ウレタン系樹脂。大日精化工業株式会社製の商品名「NTハイラミック 701 R白」。
・第2インキ:青色顔料を含む溶剤揮発型の青色インキ。バインダー樹脂は、ウレタン系樹脂。大日精化工業株式会社製の商品名「NTハイラミック 739藍」。
・中間インキ(C):溶剤揮発型の無色透明インキ。バインダー樹脂は、アクリル樹脂。大日精化工業株式会社製の商品名「SP-V プライマー(NT)」。
・中間インキ(D):溶剤揮発型の無色透明インキ。バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂(主成分樹脂)とセルロース系樹脂。DICグラフィックス株式会社製の商品名「アルティマNTメジューム」。
・中間インキ(E):溶剤揮発型の無色透明インキ。バインダー樹脂は、ニトロセルロース樹脂(主成分樹脂)とウレタン系樹脂。東洋インキ株式会社製の商品名「CCSTメジウム」。
・中間インキ(F):溶剤揮発型の無色透明インキ。バインダー樹脂は、ウレタン系樹脂。大日精化工業株式会社製の商品名「NTハイラミックR メヂウム」。
【0050】
[参考例]
シート(A)の裏面に、第2インキをベタ状にグラビア印刷した後、溶剤を揮発させて乾燥することにより、厚み約0.5μmの青色の第2着色印刷層を形成した。この第2着色印刷層の表面に、白色インキ(サカタインクス(株)製の商品名「XGS-013N白130NTSL」)をベタ状にグラビア印刷した後、溶剤を揮発させて乾燥することにより、厚み約1.0μmの白色の第1着色印刷層を形成した。
このようにして、裏面側から順に、ベタ状の白色の第1着色印刷層/ベタ状の青色の第2着色印刷層/シート(A)、とされたラベル基材を作製した(
図9(a)参照)。
【0051】
[実施例1]
シート(A)の表面に、第1インキをベタ状にグラビア印刷した後、溶剤を揮発させて乾燥することにより、厚み約1.0μmの白色の第1着色印刷層を形成した。この第1着色印刷層の表面に、中間インキ(C)をベタ状にグラビア印刷した後、溶剤を揮発させて乾燥することにより、厚み約0.5μmの無色透明な中間印刷層を形成した。この中間印刷層の表面に、第2インキをベタ状にグラビア印刷した後、溶剤を揮発させて乾燥することにより、厚み約0.5μmの青色の第2着色印刷層を形成した。
このようにして、裏面側から順に、シート(A)/ベタ状の白色の第1着色印刷層/ベタ状の無色透明な中間印刷層/ベタ状の青色の第2着色印刷層、とされたラベル基材を作製した(
図9(b)参照)。
【0052】
[実施例2]
中間インキ(C)に代えて、中間インキ(D)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ラベル基材を作製した。
【0053】
[実施例3]
中間インキ(C)に代えて、中間インキ(E)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ラベル基材を作製した。
【0054】
[実施例4]
シート(A)に代えて、シート(B)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ラベル基材を作製した。
【0055】
[比較例1]
シート(A)の表面に、第1インキをベタ状にグラビア印刷した後、溶剤を揮発させて乾燥することにより、厚み約1.0μmの白色の第1着色印刷層を形成した。この第1着色印刷層の表面に、第2インキをベタ状にグラビア印刷した後、溶剤を揮発させて乾燥することにより、厚み約0.5μmの青色の第2着色印刷層を形成した。
このようにして、裏面側から順に、シート(A)/ベタ状の白色の第1着色印刷層/ベタ状の青色の第2着色印刷層、とされたラベル基材を作製した。
【0056】
[比較例2]
中間インキ(C)に代えて、中間インキ(F)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ラベル基材を作製した。
【0057】
[第1着色印刷層の観察]
参考例、各実施例及び各比較例のラベル基材について、その裏面側を蛍光灯の方へ向け、その表面側から第1着色印刷層(白色印刷層)の状態を透かし見た。その結果を表1及び表2に示す。
○:インキ抜けが全く確認されなかった。
×:明らかなインキ抜けが確認された。
【0058】
【0059】
【0060】
[第2着色印刷層の観察]
参考例、各実施例及び各比較例のラベル基材について、裏面側から光を当て、その表面側から拡大して観察した。拡大観察は、第2着色印刷層を構成する無数のインキ固化物(青色の第2インキ固化物)に着目し、その無数のインキ固化物のドットが概ね同様な形状か否かを目視判断した。その結果を表1及び表2に示す。
○:各インキ固化物のドットの形状が同様であった。
×:多数のインキ固化物のドットの形状が不均一であった。
【0061】
[第2着色印刷層のインキ付着面積率]
参考例、各実施例及び各比較例のラベル基材について、その表面側から見たときの第2着色印刷層のインキ付着面積率を計測した。
【0062】
インキ付着面積率(%)=(インキ付着面積/印刷面積)×100、で求められる。計測は、標準状態下で、網点面積測定器(TECHKON社製、商品名「SPECTRO PLATE」)を用いた。前記インキ付着面積は、測定器の計測面積内(単位面積)のインキ固化物の総面積に相当し、前記印刷面積は、測定器の計測面積に相当する。
その結果を表1及び表2に示す。
参考例は、予定通り、約100%のインキ付着面積率で第2着色印刷層が印刷されていた。実施例1、2及び4についても、参考例と同様に約100%のインキ付着面積率で第2着色印刷層が印刷されていた。
【0063】
[第2着色印刷層の色差及び明度差]
各実施例及び各比較例のラベル基材について、その表面側から見たときの色差及び明度差を測定した。その結果を表1及び表2に示す。
ΔEは、L*a*b*表色系であって、その数値が小さいほど色目が類似していると評価される。ΔLは、標準サンプルに対して明度がどの程度の差を有するかを示しており、白濁している場合には、その数値の絶対値が大きくなる。
色差及び明度差の測定は、標準状態下で、分光濃度計(エックスライト(株)製の商品名「X-Rite Spectrodensitometer 939」)を用いて行った。
色差及び明度差の測定においては、参考例のラベル基材を標準サンプルとした。参考例を標準サンプルとしたのは、シートの裏面に青色印刷層(デザイン印刷層に相当)を印刷し、その裏面に白色印刷層を印刷したラベル基材は、印刷適性に優れたものとして従前より広く認知されているからであり、参考例も実際上非常に綺麗に印刷されていたからである。
【0064】
第1着色印刷層と第2着色印刷層の間にウレタン系樹脂以外の樹脂を主成分とするバインダー樹脂を含む中間層が介在された各実施例のラベル基材は、実質的にインキ抜けを有さない綺麗な第1着色印刷層が形成されていた。各実施例の第1着色印刷層は、外見上、参考例と遜色のない程度に綺麗であった。一方、中間層を有さない各比較例のラベル基材は、第1着色印刷層のインキ抜けが目立ち、印刷不良と判断できるものであった。
また、ウレタン系樹脂を実質的に含まない中間印刷層を有する実施例1、2及び4のラベル基材は、整った均一なドットを有し且つ設計通りのインキ付着面積率を有する第2着色印刷層が形成されていた。
さらに、アクリル系樹脂を主成分とする中間印刷層を設けることにより、参考例と略同程度の色目及び明度を有する第2着色印刷層を綺麗に形成できた。
なお、実施例1及び4は、シートの印刷面(印刷層の形成される面)の材質がポリエチレンテレフタレートであり、印刷面をポリエステル系樹脂製とすれば、シート自体は、単層構造でもよく、複層構造でもよいことが判った。
【符号の説明】
【0065】
10,10A ラベル基材
1 第1着色印刷層
2 第2着色印刷層
3 中間印刷層
4 シート