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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】コイル部品及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20221102BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20221102BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20221102BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/00 C
H01F41/04 B
H01F27/28 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018182903
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020053608
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】野木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】林出 吉生
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0371755(US,A1)
【文献】国際公開第2017/130720(WO,A1)
【文献】特開2000-106312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/00
H01F 41/04
H01F 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体が周回する周回部を有するコイルと、
金属磁性粒子を含んで形成され、前記コイルを内蔵し、前記コイルのコイル軸に略平行な第1表面と前記第1表面に略垂直に交わり、前記コイル軸に略垂直な1対の第2表面及び第3表面とを有する略直方体形状をした基体部と、
前記基体部の少なくとも前記第1表面から前記第2表面に延在して設けられ、前記コイルに前記第2表面で接続する第1外部電極と、
前記基体部の少なくとも前記第1表面から前記第3表面に延在して設けられ、前記コイルに前記第3表面で接続する第2外部電極と、を備え、
前記基体部は、前記第1外部電極の前記第2表面から最も離れた部分を通り前記第2表面に平行な仮想面と前記第2表面とで挟まれた第1領域、前記第2外部電極の前記第3表面から最も離れた部分を通り前記第3表面に平行な仮想面と前記第3表面とで挟まれた第2領域、及び前記第1領域と前記第2領域の間の第3領域を有し、
前記周回部は、前記第3領域に設けられるとともに、前記第1領域で1ターン以上周回して設けられ、前記第1領域に位置する一端から前記第2領域または前記第3領域に位置する他端にかけて略同じ外径で周回し、
前記周回部における前記導体は前記基体部に直接接して設けられ、
前記周回部は、前記基体部の前記第2表面側を始点とするターン数がnターン以上且つ(n+1)ターン未満の間を第(n+1)周回部分(nは0以上の整数)とする複数の周回部分を有し、
前記複数の周回部分のうちの隣接する周回部分の前記コイル軸に平行な方向の間隔をD、前記複数の周回部分のうちの第X周回部分(Xは1以上の整数)と前記第1外部電極の前記コイル軸に略平行な部分との最短距離をM とした場合に、M >X×Dの関係を満たす、コイル部品。
【請求項2】
前記複数の周回部分において前記第1外部電極の前記コイル軸に略平行な部分との距離が最も短い部分を最短距離部とした場合に、前記複数の周回部分のうちの第1周回部分から前記最短距離部が前記第1領域内に位置する最後の周回部分までの前記最短距離部と前記第1外部電極との最短距離は略一定になっている、請求項記載のコイル部品。
【請求項3】
導体が周回する周回部を有するコイルと、
金属磁性粒子を含んで形成され、前記コイルを内蔵し、前記コイルのコイル軸に略平行な第1表面と前記第1表面に略垂直に交わり、前記コイル軸に略垂直な1対の第2表面及び第3表面とを有する略直方体形状をした基体部と、
前記基体部の少なくとも前記第1表面から前記第2表面に延在して設けられ、前記コイルに前記第2表面で接続する第1外部電極と、
前記基体部の少なくとも前記第1表面から前記第3表面に延在して設けられ、前記コイルに前記第3表面で接続する第2外部電極と、を備え、
前記基体部は、前記第1外部電極の前記第2表面から最も離れた部分を通り前記第2表面に平行な仮想面と前記第2表面とで挟まれた第1領域、前記第2外部電極の前記第3表面から最も離れた部分を通り前記第3表面に平行な仮想面と前記第3表面とで挟まれた第2領域、及び前記第1領域と前記第2領域の間の第3領域を有し、
前記周回部は、前記第3領域に設けられるとともに、前記第1領域で1ターン以上周回して設けられ、
前記周回部は、前記基体部の前記第2表面側を始点とするターン数がnターン以上且つ(n+1)ターン未満の間を第(n+1)周回部分(nは0以上の整数)とする複数の周回部分を有し、
前記複数の周回部分のうちの隣接する周回部分の前記コイル軸に平行な方向の間隔をD、前記複数の周回部分のうちの第X周回部分(Xは1以上の整数)と前記第1外部電極の前記コイル軸に略平行な部分との最短距離をM とした場合に、M >X×Dの関係を満たし、
前記複数の周回部分において前記第1外部電極の前記コイル軸に略平行な部分との距離が最も短い部分を最短距離部とした場合に、前記複数の周回部分のうちの第1周回部分から前記最短距離部が前記第1領域内に位置する最後の周回部分までの前記最短距離部と前記第1外部電極との最短距離は、前記第1周回部分から前記最後の周回部分にかけて順次大きくなっている、コイル部品。
【請求項4】
前記複数の周回部分のうちの前記第3領域内に位置する複数の周回部分と前記基体部の表面との最短距離は、前記最後の周回部分の前記最短距離部と前記第1外部電極との最短距離で略一定になっている、請求項記載のコイル部品。
【請求項5】
前記複数の周回部分のうちの前記第3領域内に位置する複数の周回部分と前記基体部の表面との最短距離は、前記第1領域側に位置する周回部分から中央に位置する周回部分に向かって、前記最後の周回部分の前記最短距離部と前記第1外部電極との最短距離以上の大きさになった後に小さくなってその後に略一定になっている、請求項記載のコイル部品。
【請求項6】
前記コイル軸は、前記基体部の長手方向に略平行となっている、請求項1からのいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項7】
前記コイルは、表面に前記導体が露出して形成されている、請求項1からのいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項記載のコイル部品と、
前記コイル部品が実装された回路基板と、を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
基体部にコイルが内蔵され、基体部の表面にコイルと電気的に接続された外部電極が設けられたコイル部品が知られている。例えば、基体部の表面のうちのコイル軸に交差する表面に略垂直に交わる1対の表面に設けられ、この1対の表面でコイルに接続する外部電極を備えるコイル部品が知られている(例えば、特許文献1)。例えば、基体部の表面のうちのコイル軸に交差する1対の表面に設けられ、この1対の表面でコイルに接続する外部電極を備えるコイル部品が知られている(例えば、特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-199729号公報
【文献】特開2004-342814号公報
【文献】国際公開第2017/130720号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイル部品の大電流化に伴い、基体部に用いられる磁性体がフェライト粒子から金属磁性粒子に代わってきている。金属磁性粒子はフェライト粒子に比べて絶縁性が低いため、基体部に金属磁性粒子が用いられる場合では、基体部内のコイルの周回部と基体部表面の外部電極との間で基体部に絶縁破壊が起こり易くなる。特に、コイル部品が大電流及び高電圧で用いられる場合に、コイルの周回部と外部電極との間で基体部に絶縁破壊が起こり易くなる。
【0005】
特許文献1の構造では、コイルの周回部は一方の外部電極に接続された引出部から他方の外部電極に近づくように周回するため、コイルの周回部と外部電極の間で大きな電位差が発生し易い。このため、コイルの周回部と外部電極との間で基体部に絶縁破壊が起こり易い。一方、特許文献2、3の構造では、コイルの周回部は一方の外部電極に接続された引出部から周回をしても、他方の外部電極にすぐには近づかないため、コイルの周回部と外部電極の間で大きな電位差が発生し難い。よって、コイルの周回部と外部電極との間で基体部に絶縁破壊は起こり難い。
【0006】
しかしながら、近年のコイル部品の小型化に伴い、設計上で取得できる最大インダクタンス(L値)が小さくなってしまう傾向にあり、特許文献2、3の構造では、コイルの周回部と外部電極との間の基体部の絶縁破壊は抑制できても、設計上で取得できる最大インダクタンスを大きくする点で改善の余地が残されている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、コイルの周回部と外部電極との間の基体部の絶縁破壊を抑制しつつ、インダクタンスを増大させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、導体が周回する周回部を有するコイルと、金属磁性粒子を含んで形成され、前記コイルを内蔵し、前記コイルのコイル軸に略平行な第1表面と前記第1表面に略垂直に交わり、前記コイル軸に略垂直な1対の第2表面及び第3表面とを有する略直方体形状をした基体部と、前記基体部の少なくとも前記第1表面から前記第2表面に延在して設けられ、前記コイルに前記第2表面で接続する第1外部電極と、前記基体部の少なくとも前記第1表面から前記第3表面に延在して設けられ、前記コイルに前記第3表面で接続する第2外部電極と、を備え、前記基体部は、前記第1外部電極の前記第2表面から最も離れた部分を通り前記第2表面に平行な仮想面と前記第2表面とで挟まれた第1領域、前記第2外部電極の前記第3表面から最も離れた部分を通り前記第3表面に平行な仮想面と前記第3表面とで挟まれた第2領域、及び前記第1領域と前記第2領域の間の第3領域を有し、前記周回部は、前記第3領域に設けられるとともに、前記第1領域で1ターン以上周回して設けられ、前記第1領域に位置する一端から前記第2領域または前記第3領域に位置する他端にかけて略同じ外径で周回し、前記周回部における前記導体は前記基体部に直接接して設けられ、前記周回部は、前記基体部の前記第2表面側を始点とするターン数がnターン以上且つ(n+1)ターン未満の間を第(n+1)周回部分(nは0以上の整数)とする複数の周回部分を有し、前記複数の周回部分のうちの隣接する周回部分の前記コイル軸に平行な方向の間隔をD、前記複数の周回部分のうちの第X周回部分(Xは1以上の整数)と前記第1外部電極の前記コイル軸に略平行な部分との最短距離をM とした場合に、M >X×Dの関係を満たす、コイル部品である。
【0010】
上記構成において、前記複数の周回部分において前記第1外部電極の前記コイル軸に略平行な部分との距離が最も短い部分を最短距離部とした場合に、前記複数の周回部分のうちの第1周回部分から前記最短距離部が前記第1領域内に位置する最後の周回部分までの前記最短距離部と前記第1外部電極との最短距離は略一定になっている構成とすることができる。
【0012】
本発明は、導体が周回する周回部を有するコイルと、金属磁性粒子を含んで形成され、前記コイルを内蔵し、前記コイルのコイル軸に略平行な第1表面と前記第1表面に略垂直に交わり、前記コイル軸に略垂直な1対の第2表面及び第3表面とを有する略直方体形状をした基体部と、前記基体部の少なくとも前記第1表面から前記第2表面に延在して設けられ、前記コイルに前記第2表面で接続する第1外部電極と、前記基体部の少なくとも前記第1表面から前記第3表面に延在して設けられ、前記コイルに前記第3表面で接続する第2外部電極と、を備え、前記基体部は、前記第1外部電極の前記第2表面から最も離れた部分を通り前記第2表面に平行な仮想面と前記第2表面とで挟まれた第1領域、前記第2外部電極の前記第3表面から最も離れた部分を通り前記第3表面に平行な仮想面と前記第3表面とで挟まれた第2領域、及び前記第1領域と前記第2領域の間の第3領域を有し、前記周回部は、前記第3領域に設けられるとともに、前記第1領域で1ターン以上周回して設けられ、前記周回部は、前記基体部の前記第2表面側を始点とするターン数がnターン以上且つ(n+1)ターン未満の間を第(n+1)周回部分(nは0以上の整数)とする複数の周回部分を有し、前記複数の周回部分のうちの隣接する周回部分の前記コイル軸に平行な方向の間隔をD、前記複数の周回部分のうちの第X周回部分(Xは1以上の整数)と前記第1外部電極の前記コイル軸に略平行な部分との最短距離をM とした場合に、M >X×Dの関係を満たし、前記複数の周回部分において前記第1外部電極の前記コイル軸に略平行な部分との距離が最も短い部分を最短距離部とした場合に、前記複数の周回部分のうちの第1周回部分から前記最短距離部が前記第1領域内に位置する最後の周回部分までの前記最短距離部と前記第1外部電極との最短距離は、前記第1周回部分から前記最後の周回部分にかけて順次大きくなっている、コイル部品である
【0013】
上記構成において、前記複数の周回部分のうちの前記第3領域内に位置する複数の周回部分と前記基体部の表面との最短距離は、前記最後の周回部分の前記最短距離部と前記第1外部電極との最短距離で略一定になっている構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記複数の周回部分のうちの前記第3領域内に位置する複数の周回部分と前記基体部の表面との最短距離は、前記第1領域側に位置する周回部分から中央に位置する周回部分に向かって、前記最後の周回部分の前記最短距離部と前記第1外部電極との最短距離以上の大きさになった後に小さくなってその後に略一定になっている構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記コイル軸は、前記基体部の長手方向に略平行となっている構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記コイルは、表面に前記導体が露出して形成されている構成とすることができる。
【0017】
本発明は、上記記載のコイル部品と、前記コイル部品が実装された回路基板と、を備える電子機器である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コイルの周回部と外部電極との間の基体部の絶縁破壊を抑制しつつ、インダクタンスを増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(a)は、実施例1に係るコイル部品の斜視図、図1(b)は、透視側面図である。
図2図2は、比較例1に係るコイル部品の透視側面図である。
図3図3は、比較例2に係るコイル部品の透視側面図である。
図4図4は、実施例1におけるコイルの周回部を説明するための図である。
図5図5(a)は、実施例2に係るコイル部品の透視側面図、図5(b)は、実施例2におけるコイルの周回部を説明するための図である。
図6図6(a)は、実施例3に係るコイル部品の透視側面図、図6(b)は、実施例3におけるコイルの周回部を説明するための図である。
図7図7は、実施例4に係るコイル部品の透視上面図である。
図8図8は、実施例4の変形例1に係るコイル部品の透視上面図である。
図9図9は、実施例5に係る電子機器の透視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
図1(a)は、実施例1に係るコイル部品の斜視図、図1(b)は、透視側面図である。図1(a)及び図1(b)のように、実施例1のコイル部品100は、基体部10と、コイル30と、外部電極50a及び50bと、を備える。
【0022】
コイル30は、基体部10に埋め込まれている。コイル30は、導体が螺旋状に周回する周回部32と、この導体が周回部32の両端から引き出される引出部34a及び34bと、を有する。導体は、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、白金、又はパラジウムなどの金属材料、或いは、これらを含む合金材料で形成されている。導体は、その周りを絶縁被膜で覆われてなく、基体部10に直接接している。すなわち、コイル30は、表面に導体が露出して形成されている。コイル30を構成する導体の表面に絶縁被膜がないことで、導体の断面積を大きくすることができ、抵抗値を下げることができる。コイル30は、周回部32が所定の周回数で周回し、1周回を単位とする周回部分を有する。周回数によっては1周回に満たない部分を有することもあるが、この端数となった部分は1周回に満たなくても1周回部分として扱う。周回数の数え方と周回部分との関係については後述する。
【0023】
基体部10は、略直方体形状をしていて、下面12と、上面14と、1対の端面16a及び16bと、1対の側面18a及び18bと、を有する。下面12、上面14、並びに側面18a及び18bは、コイル軸に略平行な面である。端面16a及び16bは、コイル軸に略垂直な面である。端面16a及び16b並びに側面18a及び18bは、下面12及び上面14に略垂直に交わる。なお、略平行及び略垂直とは、完全に平行及び垂直の場合に限らず、製造誤差程度に平行及び垂直から傾いている場合を含むものである。また、略直方体形状とは、完全な直方体形状の場合に限らず、例えば各頂点が丸みを帯びている場合、各稜(各面の境界部)が丸みを帯びている場合、又は各面が曲面を有している場合なども含むものである。
【0024】
基体部10は、金属磁性粒子を含んで形成されている。例えば、基体部10は、金属磁性粒子を含有する樹脂で形成されている。金属磁性粒子として、例えばFe-Si-Cr系、Fe-Si-Al系、又はFe-Si-Cr-Al系などの軟磁性合金材料、Fe又はNiなどの磁性金属材料、アモルファス磁性金属材料、或いはナノ結晶磁性金属材料などからなる磁性粒子が挙げられる。樹脂として、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、又はフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、或いは、ポリアミド樹脂又はフッ素樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂には、コイル部品100の耐熱温度より高い耐熱性を有する樹脂が選択される。また、金属磁性粒子の表面に絶縁処理が施されていてもよい。金属磁性粒子の表面に絶縁処理が施されている場合、基体部10は、樹脂を含まずに、金属磁性粒子の表面に形成された絶縁膜が互いに結合することで形成されていてもよい。
【0025】
コイル30の引出部34aは、周回部32の一端から基体部10の端面16aに引き出される。コイル30の引出部34bは、周回部32の他端から基体部10の端面16bに引き出される。引出部34a及び34bが端面16a及び16bに引き出されることで、周回部32のターン数を多くすることができるため、インダクタンスを大きくすることができる。引出部34a及び34bは、好適には、周回部32から端面16a及び16bに直線状で引き出される。直線状に引き出されることで、引出部34a及び34bの引出距離を短くでき、コイル30の抵抗値を下げることができる。なお、引出部34a及び34bが設けられずに、基体部10の端面16a及び16bから周回部32が始まる場合でもよい。コイル30が基体部10の端面16a及び16bで外部電極70a及び70bに接続する場合であれば、インダクタンスを増大させることができる。
【0026】
外部電極50a及び50bは、基体部10の表面に設けられた表面実装用の外部端子である。外部電極50aは、基体部10の下面12から端面16aを経由して上面14に延在し且つ側面18a及び18bの一部を覆っている。外部電極50bは、基体部10の下面12から端面16bを経由して上面14に延在し且つ側面18a及び18bの一部を覆っている。すなわち、外部電極50a及び50bは、基体部10の5面を覆う5面電極である。なお、外部電極50aは、少なくとも基体部10の下面12から端面16aまで延在していればよく、例えば、基体部10の下面12から端面16aを経由して上面14に延在する3面電極、又は、下面12から端面16aに延在する2面電極でもよい。外部電極50bについても同様に、少なくとも基体部10の下面12から端面16bまで延在していれば、3面電極又は2面電極の場合でもよい。
【0027】
外部電極50aは、周回部32の一端から基体部10の端面16aに引き出される引出部34aに端面16aで接続している。外部電極50bは、周回部32の他端から基体部10の端面16bに引き出される引出部34bに端面16bで接続している。
【0028】
外部電極50a及び50bは、例えば複数の金属層から形成されている。例えば、外部電極50a及び50bは、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、白金、又はパラジウムなどの金属材料或いはこれらを含む合金材料で形成された下層、銀又は銀を含む導電性樹脂で形成された中層、ニッケル及び/又は錫のめっき層である上層の積層構造をしている。各層の間に中間層がある場合又は上層の上に最上層がある場合など、外部電極50a及び50bの層構成は例示された層に限定されるものではない。
【0029】
基体部10は、コイル軸に略平行な方向において、3つの領域に区分けされる。1つ目の領域は、外部電極50aのうちの端面16aから最も離れた部分を通り端面16aに平行な仮想面60と端面16aとで挟まれた領域20である。2つ目の領域は、外部電極50bのうちの端面16bから最も離れた部分を通り端面16bに平行な仮想面62と端面16bとで挟まれた領域22である。3つ目の領域は、領域20と領域22の間の領域24である。
【0030】
コイル30の周回部32は、領域20から領域24を経由して領域22にかけて延びていて、領域20及び領域22で1ターン以上の周回をしている。なお、周回部32は、領域20及び領域22の両方で1ターン以上の周回をしている場合に限られず、領域20及び領域22のうちの少なくとも一方で1ターン以上の周回をしている場合でもよい。
【0031】
ここで、実施例1のコイル部品100の製造方法の一例を説明する。まず、周回部32と引出部34a及び34bとを有するコイル30を準備する。コイル30を金型内に配置するとともに、金属磁性粒子を含有する樹脂をディスペンサなどによって金型内に注入する。そして、金型内に注入した樹脂を硬化させて、コイル30が内蔵された基体部10を形成する。次いで、基体部10の表面に外部電極50a及び50bを形成する。外部電極50a及び50bは、ペースト印刷、めっき、及びスパッタリングなどの薄膜プロセルで用いられる方法によって形成される。以上の方法により、実施例1のコイル部品100が形成される。
【0032】
次に、比較例に係るコイル部品について説明する。図2は、比較例1に係るコイル部品の透視側面図である。実施例1のコイル部品100では、図1(b)のように、コイル30の周回部32は、基体部10の端面16aと端面16bの間を周回しながら延在しているが、比較例1のコイル部品600では、図2のように、コイル30の周回部32は、基体部10の下面12と上面14の間を周回しながら延在している。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0033】
比較例1によれば、コイル30の周回部32は、外部電極50aに接続する引出部34aから外部電極50bに近づくように周回し、外部電極50bに接続する引出部34bから外部電極50aに近づくように周回している。このため、例えば外部電極50aと外部電極50bの間に高電圧が印加されると、周回部32と外部電極50a及び50bとの間で電位差が大きくなる部分90が発生する。基体部10は、金属磁性粒子を含んで形成されている。金属磁性粒子は従来から用いられていたフェライト粒子に比べて絶縁性が低いため、金属磁性粒子を含む基体部10は、従来から用いられていたフェライト粒子を含む基体部に比べて、絶縁耐力が小さくなる。このため、周回部32と外部電極50a及び50bとの間の電位差が大きい部分90で基体部10に絶縁破壊が生じて、周回部32と外部電極50a及び50bとが短絡してしまうことがある。特に、近年のコイル部品の小型化に伴い、周回部32と外部電極50a及び50bとの間隔が小さくなる傾向にあるため、周回部32と外部電極50a及び50bとの間の基体部10に絶縁破壊が起こり易くなっている。また、コイル部品が大電流及び高電圧で用いられるようになっているため、この点においても、周回部32と外部電極50a及び50bとの間の基体部10に絶縁破壊が起こり易くなっている。
【0034】
周回部32と外部電極50a及び50bとの間の基体部10に絶縁破壊が起こり難くなるよう、周回部32の外径を小さくして、周回部32と外部電極50a及び50bとの間隔を広げることが考えられる。しかしながらこの場合、コイル30の周回部32のコア面積が小さくなり、インダクタンス(L値)が小さくなってしまう。
【0035】
図3は、比較例2に係るコイル部品の透視側面図である。図3のように、比較例2のコイル部品700は、実施例1のコイル部品100と同じく、コイル30の周回部32は、基体部10の端面16aと端面16bの間を周回しながら延在しているが、基体部10の領域20及び領域22には設けられていない。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0036】
比較例2によれば、コイル30の周回部32は、外部電極50aに接続する引出部34aから周回しても外部電極50bにはすぐに近づかず、外部電極50bに接続する引出部34bから周回しても外部電極50aにはすぐに近づかない。このため、例えば外部電極50aと外部電極50bの間に高電圧が印加された場合でも、周回部32と外部電極50a及び50bとの間で電位差が大きくなる部分が生じ難い。したがって、周回部32と外部電極50a及び50bとの間の基体部10に絶縁破壊は起こり難い。
【0037】
しかしながら、比較例2では、基体部10の領域20及び22に周回部32が設けられていない。このため、インダクタンスが小さくなり、所望のインダクタンスを得ることが難しい場合がある。例えば、近年のコイル部品の小型化に伴い、設計上で取得できる最大インダクタンスが小さくなる傾向にあるため、比較例2ではインダクタンスが更に小さくなり、所望のインダクタンスを得ることが難しい場合がある。
【0038】
実施例1によれば、図1(b)のように、コイル30の周回部32は、基体部10の領域24に設けられるとともに、領域20及び22で1ターン以上周回している。これにより、周回部32と外部電極50a及び50bとの間の基体部10に絶縁破壊が生じることを抑制しつつ、インダクタンスを増大させて所望のインダクタンスを得ることができる。また、周回部32と外部電極50a及び50bとの間の基体部10の絶縁破壊が抑制されるため、周回部32の外径を大きくすることが可能となる。このため、この点においてもインダクタンスを増大させることができる。なお、実施例1では、周回部32は基体部10の領域20及び22の両方で1ターン以上周回している場合を例に示したが、領域20及び22のうちの少なくとも領域20で1ターン以上周回していればよい。また、周回部32の領域20及び22でのターン数は、インダクタンスの増大の点から、2ターン以上周回していてもよいし、3ターン以上周回していてもよい。
【0039】
また、実施例1によれば、引出部34a及び34bは、周回部32の両端から基体部10のコイル軸に略垂直な面である端面16a及び16bに引き出されている。これにより、引出部34a及び34bが基体部10のコイル軸に略平行な面(例えば下面12)に引き出される場合に比べて、周回部32のターン数を多くすることができるため、インダクタンスを増大させることができる。なお、引出部34a及び34bが設けられずに、基体部10の端面16a及び16bから周回部32が始まる場合でもよい。コイル30が基体部10の端面16a及び16bで外部電極70a及び70bに接続する場合であれば、インダクタンスを増大させることができる。
【0040】
ここで、基体部10の領域20に周回部32が設けられることで、周回部32が外部電極50aのコイル軸に略平行な部分、すなわち外部電極50aの下面12、上面14、並びに側面18a及び18bに設けられた部分に近づき過ぎた場合に、周回部32と外部電極50aとの間で基体部10に絶縁破壊が生じることが懸念される。基体部10の領域22に周回部32が設けられている場合も同様である。そこで、周回部32と外部電極50a及び50bとの間の基体部10の絶縁破壊を抑制することが可能な、周回部32と外部電極50a及び50bのコイル軸に略平行な部分との間隔について説明する。
【0041】
図4は、実施例1におけるコイルの周回部を説明するための図である。なお、図4を用いて、コイルの周回部の周回数の数え方及び周回数と周回部分との関係についても説明する。図4のように、周回部32は、基体部10の端面16a側の引出部34aとの接続部分を始点として、周回数(ターン数)を数えることができる。周回部32と引出部34aとの接続部分を始点とするターン数がnターン以上且つ(n+1)ターン未満の間を第(n+1)周回部分と呼び、周回部分36n+1(nは0以上の整数)と表す。周回部32は、複数の周回部分36(周回部分36~36n+1)を有する。すなわち、周回部32のうちのターン数が0ターン以上且つ1ターン未満の間は第1周回部分(周回部分36)となり、ターン数が1ターン以上且つ2ターン未満の間は第2周回部分(周回部分36)となる。ターン数がnターン以上且つ(n+1)ターン未満の間は第(n+1)周回部分(周回部分36n+1)となる。周回部分は1ターンずつの区切りとなるが、例外的に1ターンに満たない場合もある。
【0042】
図4では、周回部32の始点を引出部34aとの接続部分としているが、周回部32の始点を引出部34bとの接続部分とすることもできる。周回部32の始点を引出部34aとの接続部分とするか又は引出部34bとの接続部分とするかで、ターン数の数え方が異なり、周回部分の数え方が異なることになる。外部電極50aのコイル軸に略平行な部分とコイル30の周回部32との間隔を規定する場合には、周回部32の始点を引出部34aとの接続部分として、ターン数及び周回部分を数える。また、外部電極50bのコイル軸に略平行な部分とコイル30の周回部32との間隔を規定する場合には、周回部32の始点を引出部34bとの接続部分として、ターン数及び周回部分を数える。
【0043】
また、引出部34a及び34bが設けられずに、基体部10の端面16a及び16bから周回部32が始まる場合でもよい。この場合、周回部32の始点を基体部10の端面16a又は16bとの接続部分とすることができる。
【0044】
なお、以下の説明では、外部電極50aのコイル軸に略平行な部分とコイル30の周回部32との間隔を例に説明するが、外部電極50bのコイル軸に略平行な部分とコイル30の周回部32との間隔についても同様のことが成り立つ。
【0045】
複数の周回部分36は、基体部10のコイル軸に略平行な面である下面12、上面14、並びに側面18a及び18bに近接する複数の近接部38を有する。すなわち、複数の周回部分36は、基体部10の下面12、上面14、並びに側面18a及び18bとの間隔が近接部38で最も短くなっている。
【0046】
ここで、複数の周回部分36のうちの隣接する周回部分同士のコイル軸に平行な方向の間隔をDとする。また、複数の周回部分36において、外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との距離が最も短い部位を最短距離部40とすると、最短距離部40は複数の近接部38のうちの少なくとも1つが該当することになる。図4では、基体部10の上面14に近接する近接部38が、外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との距離が最も短い最短距離部40であるとする。複数の周回部分36のうちの第X周回部分(周回部分36(Xは1以上の整数))の最短距離部40と外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との間の最短距離をMとする。この場合、好適には、M>X×Dの関係を満たす。
【0047】
すなわち、第1周回部分(周回部分36)では、最短距離部40と外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との間の最短距離Mは、M>1×Dの関係を満たす。第2周回部分(周回部分36)では、最短距離部40と外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との間の最短距離Mは、M>2×Dの関係を満たす。
【0048】
このように、好適には、複数の周回部分36のうちの第X周回部分(周回部分36)と外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との最短距離Mは、M>X×Dの関係を満たす。これにより、周回部32と外部電極50aとの間の基体部10に絶縁破壊が生じることを抑制できる。これは、以下の理由によるものである。すなわち、隣接する周回部分同士の間隔Dは、隣接する周回部分同士で基体部10に絶縁破壊が生じないように決定されている。また、引出部34aの長さは、第1周回部分(周回部分36)と外部電極50aの基体部10の端面16aに位置する部分との間で基体部10に絶縁破壊が生じないように決定されている。このことから、M>X×Dの関係を満たすことで、周回部32と外部電極50aとの間のコイル軸に略垂直な方向で基体部10に絶縁破壊が生じることが抑制され、結果として、周回部32と外部電極50aとの間の基体部10に絶縁破壊が生じることが抑制される。
【0049】
また、複数の周回部分36のうちの最短距離部40が領域20内に位置する最後の周回部分を第Z周回部分(周回部分36(Zは1以上の整数))とする。この場合、第Z周回部分は、最短距離部40と外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との間の最短距離MがM>Z×Dを満たすことで、外部電極50aとの間の基体部10に絶縁破壊が生じることが抑制される。なお、図4では、第Z周回部分は第2周回部分(周回部分36)である。この場合に、第1周回部分から第Z周回部分までの最短距離部40と外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との間の最短距離M~Mは、第Z周回部分の最短距離MがM>Z×Dを満たしつつ、略一定である場合が好ましい。これにより、周回部32と外部電極50aとの間の基体部10に絶縁破壊が生じることを抑制しつつ、第1周回部分から第Z周回部分までの周回部32の外径を略同じにできる。このため、コイル30の製造容易性を向上させることができる。さらに好適には、周回部32は、一端から他端にかけて略同じ外径で周回している。これにより、コイル30の製造容易性を更に向上させることができる。なお、略一定及び略同じとは、完全に一定及び同じ場合に限らず、製造誤差程度に異なる場合も含むものである(以下においても同じである)。
【0050】
図1(a)及び図1(b)のように、好適には、コイル軸は、基体部10の長手方向に略平行となっている。これにより、周回部32のターン数を多くすることができ、インダクタンスを大きくすることができる。
【0051】
コイル30が絶縁被膜で覆われていない導体で形成されている場合、すなわちコイル30が表面に導体が露出して形成されている場合に、実施例1の構造を適用することが好ましい。この場合、周回部32と外部電極50a及び50bとの間の基体部10に絶縁破壊が起こり易いためである。コイル30が表面に絶縁被膜のない導体で形成されている場合、絶縁被膜の分だけ導体の断面積を大きくでき抵抗値を下げることができる。
【実施例2】
【0052】
図5(a)は、実施例2に係るコイル部品の透視側面図、図5(b)は、実施例2におけるコイルの周回部を説明するための図である。なお、図5(b)では、外部電極50aのコイル軸に略平行な部分とコイル30の周回部32との間隔を例に説明するが、外部電極50bのコイル軸に略平行な部分とコイル30の周回部32との間隔についても同様のことが成り立つ。図5(a)及び図5(b)のように、実施例2のコイル部品200においても、実施例1と同様に、複数の周回部分36のうちの最短距離部40が領域20内に位置する最後の周回部分を第Z周回部分とする。なお、図5(b)では、第Z周回部分は第3周回部分(周回部分36)である。この場合に、領域20内に位置する最初の周回部分である第1周回部分(周回部分36)と外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との最短距離を最短距離Mとする。領域20内に位置する2番目の周回部分である第2周回部分(周回部分36)と外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との最短距離を最短距離Mとする。領域20内に位置する最後の周回部分である第Z周回部分(周回部分36)と外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との最短距離を最短距離Mとする。この場合、コイル30の周回部32の各周回部分と外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との最短距離は、M、M、…Mの順に大きくなっている。すなわち、領域20内に位置する各周回部分と外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との最短距離は、周回部分の番号が大きいほど大きくなっている。これは、領域20内に位置し、端面16aよりも遠い周回部分であるほど、外部電極50aのコイル軸に略平行な部分との最短距離が大きくなっていると言い換えることもできる。
【0053】
複数の周回部分36のうちの領域24内に位置する複数の周回部分の基体部10の表面との最短距離Lは、第Z周回部分での最短距離Mで略一定になっている。図5(b)では、第Z周回部分は第3周回部分(周回部分36)であるため、最短距離Lは最短距離Mで略一定になっている。例えば、複数の周回部分36のうち、外部電極50aとの距離が最も短い最短距離部40が領域20内に位置している周回部分及び外部電極50bとの距離が最も短い最短距離部40が領域22内に位置している周回部分以外の、全ての周回部分の基体部10の表面との最短距離Lは、第Z周回部分での最短距離Mで略一定になっている。これは、コイル30の周回部32の周回部分36と外部電極50bのコイル軸に略平行な部分との最短距離についても同様の関係になっているからである。つまり、領域24内に位置する複数の周回部分36の基体部10の表面との最短距離Lは、領域20内又は領域22内に位置する周回部分のうちの端面16a又は16bから最も離れた周回部分での最短距離となっている。
【0054】
したがって、実施例2では、周回部32の外径は、領域20及び22では引出部34a及び34bから領域24側に向かって徐々に小さくなり、領域24では略一定になっている。
【0055】
実施例2のように、第1周回部分から最短距離部40が領域20内に位置する最後の周回部分である第Z周回部分にかけて最短距離M~Mを順次大きくすることで、周回部32と外部電極50aとの間の基体部10に絶縁破壊が生じることを抑制しつつ、実施例1に比べてインダクタンスを増大させることができる。
【0056】
また、複数の周回部分36のうちの領域24内に位置する複数の周回部分の基体部10の表面との最短距離Lは、最短距離部40が領域20内に位置する最後の周回部分である第Z周回部分での最短距離Mで略一定になっていることで、コイル30の製造容易性を向上させることができる。
【0057】
なお、実施例2では、複数の周回部分36のうちの領域24内に位置する周回部分は、基体部10の上面14との最短距離Lが略同じである場合を例に示したが、この場合に限られるわけではない。領域24内に位置する周回部分は、領域20側に位置する周回部分からコイル30の中央に位置する周回部分に向かって、基体部10の上面14との最短距離Lが順次大きくなっていてもよい。また、コイル30の中央に位置する周回部分から領域22側に位置する周回部分に向かって、基体部10の上面14との最短距離Lが順次小さくなっていてもよい。
【実施例3】
【0058】
図6(a)は、実施例3に係るコイル部品の透視側面図、図6(b)は、実施例3におけるコイルの周回部を説明するための図である。図6(a)及び図6(b)のように、実施例3のコイル部品300では、実施例2と同様に、第1周回部分から最短距離部40が領域20内に位置する最後の周回部分である第Z周回部分までの最短距離部40と外部電極50aとの間の最短距離M~Mはこの順に大きくなっている。なお、図6(b)では、実施例2の図5(b)と同じく、第Z周回部分は第3周回部分(周回部分36)である。
【0059】
複数の周回部分36のうちの領域24内に位置する複数の周回部分の基体部10の表面との最短距離Lは、領域24内に位置する複数の周回部分のうちの最も領域20側に位置する周回部分からコイル30の中央側に位置する周回部分に向かって、第Z周回部分での最短距離M以上の大きさになった後に小さくなりその後略一定になっている。例えば、図6(b)では、Z=3の場合、Z+1=4になるから、領域24内に位置する複数の周回部分のうち領域20側から順に並んだ第4周回部分(周回部分36)から第8周回部分(周回部分36)の基体部10の表面との最短距離をL、L、L、L、Lとする。この場合、L≧M、L=M、L=M、L=M、L=Mとなっている。LとMの関係は、領域20と領域24の境界面からの第3周回部分と第4周回部分との距離が等しい場合、L=Mとなる。なお、基体部10の表面と周回部分との最短距離Lが略一定になるときの最短距離は、Mの場合に限らず、Mよりも大きい場合でもよいし、小さい場合でもよい。
【0060】
実施例3のように、複数の周回部分36のうちの領域24内に位置する複数の周回部分の基体部10の表面との最短距離Lは、領域20側に位置する周回部分からコイル30の中央に位置する周回部分に向かって、最短距離部40が領域20内に位置する最後の周回部分である第Z周回部分での最短距離M以上の大きさになった後に小さくなってその後に略一定になってもよい。これにより、周回部32と外部電極50aとの間の基体部10に絶縁破壊が生じることを抑制しつつ、領域24に位置する周回部32のコア面積を大きくできることからインダクタンスを増大させることができる。
【0061】
領域24に位置する周回部32のコア面積を大きくするために、基体部10の表面との最短距離Lが略一定になった後の周回部分の基体部10の表面との最短距離Lは、第1周回部分36での最短距離Mよりも小さい場合が好ましい。
【実施例4】
【0062】
図7は、実施例4に係るコイル部品の透視上面図である。図8は、実施例4の変形例1に係るコイル部品の透視上面図である。図7のように、実施例4のコイル部品400は、積層インダクタであり、導体パターン42とスルーホールパターン44が形成されたシート及びスルーホールパターン44が形成されたシートが端面16a及び16b間の方向に複数積層されて形成される。複数のシートの導体パターン42とスルーホールパターン44が繋がることでコイル30の周回部32が形成される。図8のように、実施例4の変形例1のコイル部品410は、積層インダクタであり、導体パターン42とスルーホールパターン44が形成されたシート及びスルーホールパターン44が形成されたシートが端面16a及び16b間の方向とは垂直方向に複数積層されて形成される。複数のシートの導体パターン42とスルーホールパターン44が繋がることでコイル30の周回部32が形成される。
【0063】
実施例1から実施例3では、巻き線型のコイル部品の場合を例に説明したが、実施例4及び実施例4の変形例1のように、積層型のコイル部品であってもよい。
【実施例5】
【0064】
図9は、実施例5に係る電子機器の透視側面図である。なお、図9では、図の明瞭化のためにハッチングを付している。図9のように、実施例5の電子機器500は、回路基板80と回路基板80に実装された実施例1のコイル部品100と、を備える。コイル部品100は、外部電極50a及び50bが半田84によって回路基板80の電極82に接合されることで、回路基板80に実装されている。
【0065】
実施例5の電子機器500によれば、回路基板80に実施例1のコイル部品100が実装されている。これにより、コイル30の周回部32と外部電極50a及び50bとの間の基体部10に絶縁破壊が起こり難いコイル部品100を有する電子機器500を得ることができる。なお、実施例5では、回路基板80に実施例1のコイル部品100が実装されている場合を例に示したが、実施例2から実施例4の変形例1のコイル部品が実装される場合でもよい。
【0066】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 基体部
12 下面
14 上面
16a、16b 端面
18a、18b 側面
20、22、24 領域
30 コイル
32 周回部
34a、34b 引出部
36 周回部分
38 近接部
40 最短距離部
42 導体パターン
44 スルーホールパターン
50a、50b 外部電極
60、62 仮想面
80 回路基板
82 電極
84 半田
90 部分
100、200、300、400、410、600、700 コイル部品
500 電子機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9