(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】超音波診断装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2018196860
(22)【出願日】2018-10-18
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 英司
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063807(JP,A)
【文献】特開2014-124269(JP,A)
【文献】特開2015-171476(JP,A)
【文献】特開2017-104248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0228280(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内三次元空間において電子走査される超音波ビームを形成する3Dプローブと、
時間軸上において間欠的に実行される複数の基本走査とそれらの合間に間欠的に実行される複数の補助走査とを含む複合走査シーケンスに従って、前記超音波ビームの電子走査を制御する制御部と、
前記複数の基本走査により前記三次元空間内の観察断面から順次取得される複数の断面データに基づいて、リアルタイム断層画像を形成する画像形成部と、
前記複数の補助走査により前記三次元空間の全部又は一部分から取得される参照データであって前記観察断面以外から取得されるデータを含む参照データに基づいて、前記リアルタイム断層画像と共にユーザーに提供される支援情報を生成する支援情報生成部と、
を含
み、
前記支援情報生成部は、
前記参照データとしての第1の参照データに基づいて前記三次元空間内の対象組織の向きを判定し、前記支援情報の1つとして、前記対象組織の向きを表す観察支援像を生成する手段と、
前記参照データとしての第2の参照データに基づいて前記観察断面のずれを演算し、前記支援情報の1つとして、前記観察断面のずれに基づいて前記観察断面の位置及び姿勢の変更を支援する操作支援像を生成する手段と、
前記参照データとしての第3の参照データに基づいて前記観察断面と直交関係を有する直交画像を生成し、前記支援情報の1つとして、前記直交画像と超音波ビーム走査範囲を表した範囲マーカーとを含む設定支援像を生成する手段と、
前記観察支援像、前記操作支援像及び前記設定支援像を選択的に表示する手段と、
を含む、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記各基本走査では高ビーム密度で複数の超音波ビームが形成され、
前記各補助走査では前記高ビーム密度よりも低い低ビーム密度で複数の超音波ビームが形成される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項
1記載の超音波診断装置において、
前記
操作支援像を生成する手段は
、前記観察断面のずれとして複数のずれ成分を解析し
、前記操作支援像として前記複数のずれ成分に対応した複数の成分別操作支援像を生成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
超音波診断装置において実行されるプログラムであって、
時間軸上において間欠的に実行される複数の基本走査とそれらの合間に間欠的に実行される複数の補助走査とを含む複合走査シーケンスに従って、三次元空間内における超音波ビームの電子走査を制御する機能と、
前記複数の基本走査により前記三次元空間内の観察断面から順次取得される複数の断面データに基づいて、リアルタイム断層画像を形成する機能と、
前記複数の補助走査により前記三次元空間内の全体又は一部分から取得される参照データであって前記観察断面以外から取得されるデータを含む参照データに基づいて、前記リアルタイム断層画像と共にユーザーに提供される支援情報を生成する機能と、
を含
み、
前記支援情報を生成する機能は、
前記参照データとしての第1の参照データに基づいて前記三次元空間内の対象組織の向きを判定し、前記支援情報の1つとして、前記対象組織の向きを表す観察支援像を生成する機能と、
前記参照データとしての第2の参照データに基づいて前記観察断面のずれを演算し、前記支援情報の1つとして、前記観察断面のずれに基づいて前記観察断面の位置及び姿勢の変更を支援する操作支援像を生成する機能と、
前記参照データとしての第3の参照データに基づいて前記観察断面と直交関係を有する直交画像を生成し、前記支援情報の1つとして、前記直交画像と超音波ビーム走査範囲を表した範囲マーカーとを含む設定支援像を生成する機能と、
前記観察支援像、前記操作支援像及び前記設定支援像を選択的に表示する機能と、
を含む、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置及びプログラムに関し、特に、電子走査の制御及び電子走査により得られるデータの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断の分野において、二次元振動素子アレイを備えた超音波プローブ(以下、3Dプローブという。)が利用されている。3Dプローブは、超音波ビームの二次元電子走査により、生体内の三次元空間からボリュームデータを取得する場合に用いられる。また、三次元空間内の観察断面から断面データを取得する場合にも用いられる。
【0003】
例えば、産科における胎児の超音波検査においては、3Dプローブを用いて、胎児の腹部、頭部等に対して計測が実行される。その際、胎児における対象断面(計測対象断面)に3Dプローブの観察断面(走査面)が合わせられる。その上で、表示された断層画像上において距離、面積等を求める計測が実行される。
【0004】
特許文献1には、生体内の三次元空間から取得されたボリュームデータに基づいて、胎児の向きを特定することが可能な超音波診断装置が開示されている。具体的には、その超音波診断装置において、ユーザーからのガイド表示要求があった場合、その時点での二次元超音波画像が表示され続けられ、それと並行して、ボリュームデータが取得されてそのボリュームデータに基づいて胎児の向きが特定されている。その後、特定された胎児の向きを表すガイドが表示されている。
【0005】
なお、特許文献2には、胎児に対する複数の計測結果に基づいて胎児の向きを判定し得る超音波診断装置が開示されている。特許文献3には、探索用ボリュームデータの中から対象断面を探索し得る超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-124269号公報
【文献】特開2015-171476号公報
【文献】特開2017-104248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3Dプローブを用いて動画像としてのリアルタイム断層画像を表示し続けることを前提として、ユーザーによる組織の観察を支援し、ユーザーの3Dプローブ操作を支援し、あるいは、ユーザーによる走査条件の設定を支援することが望まれる。例えば、産科において、胎児に対する計測を行う場合、胎児における複数の対象断面が円滑に順次表示されるように、ユーザーを支援することが望まれる。なお、特許文献1~3のいずれにもリアルタイム断層画像の継続的表示を前提とした二次元電子走査制御については記載されていない。
【0008】
本発明の目的は、3Dプローブを用いてリアルタイム断層画像を表示する場合において、3Dプローブが有する機能を活用してユーザーを支援することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る超音波診断装置は、生体内三次元空間において電子走査される超音波ビームを形成する3Dプローブと、時間軸上において間欠的に実行される複数の基本走査とそれらの合間に間欠的に実行される複数の補助走査とを含む複合走査シーケンスに従って、前記超音波ビームの電子走査を制御する制御部と、前記複数の基本走査により前記三次元空間内の観察断面から順次取得される複数の断面データに基づいて、リアルタイム断層画像を形成する画像形成部と、前記複数の補助走査により前記三次元空間の全部又は一部分から取得される参照データであって前記観察断面以外から取得されるデータを含む参照データに基づいて、前記リアルタイム断層画像と共にユーザーに提供される支援情報を生成する支援情報生成部と、を含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係るプログラムは、超音波診断装置において実行されるものであり、当該プログラムは、時間軸上において間欠的に実行される複数の基本走査とそれらの合間に間欠的に実行される複数の補助走査とを含む複合走査シーケンスに従って、三次元空間内における超音波ビームの電子走査を制御する機能と、前記複数の基本走査により前記三次元空間内の観察断面から順次取得される複数の断面データに基づいて、リアルタイム断層画像を形成する機能と、前記複数の補助走査により前記三次元空間内の全体又は一部分から取得される参照データであって前記観察断面以外から取得されるデータを含む参照データに基づいて、前記リアルタイム断層画像と共にユーザーに提供される支援情報を生成する機能と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、3Dプローブを用いてリアルタイム断層画像を表示する場合において、ユーザーに対して支援情報を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示した超音波診断装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】観察支援像生成部の第1構成例を示す図である。
【
図9】観察支援像生成部の第2構成例を示す図である。
【
図10】操作支援像生成部の構成例を示す図である。
【
図11】複合走査の第3例その1~その3を示す図である。
【
図12】操作支援像その1~その3を示す図である。
【
図16】設定支援像の第1例についての変形例を示す図である。
【
図18】設定支援像の第2例についての変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、3Dプローブ、制御部、画像形成部、及び、支援情報生成部を含む。3Dプローブは、生体内の三次元空間において電子走査される超音波ビームを形成する超音波プローブである。制御部は、時間軸上において間欠的に実行される複数の基本走査とそれらの合間に間欠的に実行される複数の補助走査とを含む複合走査シーケンスに従って、超音波ビームの電子走査を制御する。画像形成部は、複数の基本走査により三次元空間内の観察断面から順次取得される複数の断面データに基づいて、リアルタイム断層画像を形成する。支援情報生成部は、複数の補助走査により三次元空間の全部又は一部分から取得される参照データであって前記観察断面以外から取得されるデータを含む参照データに基づいて、リアルタイム断層画像と共にユーザーに提供される支援情報を生成する。
【0015】
上記構成によれば、複合走査シーケンスに基づく電子走査制御により、リアルタイム断層画像を表示しながら、支援情報をユーザーに提供することが可能となる。一般に、3Dプローブを利用してリアルタイム断層画像を形成及び表示する場合、観察断面以外からのデータを取得する必要はない。これに対し、上記構成は、観察断面以外からのデータを含む参照データを時分割で取得し、その参照データをユーザー支援に役立てるものである。
【0016】
参照データは、例えば、ボリュームデータ、マルチフレームデータ、等である。参照データの一部に観察断面から取得されたデータが含まれてもよい。支援情報は望ましくは画像情報である。もっとも、音や光等により支援情報を構成してもよい。リアルタイム断層画像は、生体内の断面の様子や構造をリアルタイムで表した動画像である。もちろん、そのような動画像が保存され、保存された動画像が再生されてもよい。その再生時においても支援情報が提供されるのが望ましい。なお、計測を行う場合には、通常、動画像を構成する複数の表示フレームの中から選択された表示フレームが静止画像として表示される。
【0017】
実施形態において、各基本走査では高ビーム密度で複数の超音波ビームが形成され、各補助走査では高ビーム密度よりも低い低ビーム密度で複数の超音波ビームが形成される。複数の補助走査においてボリュームデータが取得される場合、第1走査方向及び第2走査方向のそれぞれについて低ビーム密度が設定される。
【0018】
リアルタイム断層画像の画質を確保するためには、複数の基本走査において高ビーム密度を実現することが望まれ、また、ある程度のフレームレートを確保することが望まれる。一方、複数の補助走査は、補助的な支援情報を生成するためのものであるので、支援情報の目的を達成できる限りにおいて、複数の補助走査において、ビーム密度を低減でき、また、ボリュームレート又はフレームレートを引き下げることが可能である。上記構成は、そのような観点から、複数の基本走査と複数の補助走査とで別々の走査条件を設定するものである。
【0019】
実施形態において、支援情報生成部は、参照データに基づいて三次元空間内の対象組織の向きを判定する向き判定器と、支援情報として対象組織の向きを表す観察支援像を生成する観察支援像生成器と、を含む。通常、断層画像から、そこに現れている対象組織の向きを判断するのは困難である。例えば、複数の計測を段階的に行う場合において、断層画像から、3Dプローブを動かすべき方向を判断することは困難である。3Dプローブを試行的に動かしてみることも可能であるが、例えば、胎児に対する超音波診断においては、胎児それ自体の向きが区々であり、また、胎児における対象組織は非常に小さい。3Dプローブを無造作に動かすと、対象組織を見失ってしまうこともある。上記構成によれば、観察支援像の観察を通じて、対象組織の向きを認識できるから、ユーザーに対して、3Dプローブを動かす方向の目安を提供することが可能となる。観察支援像は、直接的には超音波画像の観察を支援するものであるが、間接的には3Dプローブの操作を支援するものである。
【0020】
実施形態において、支援情報生成部は、参照データに基づいて対象断面に対する観察断面のずれを演算する演算器と、観察断面のずれに基づいて支援情報として観察断面の位置及び姿勢の変更を支援する操作支援像を生成する操作支援像生成器と、を含む。この構成によれば操作支援像の観察によって3Dプローブの操作上の負担が軽減される。すなわち、3Dプローブを動かすべき方向を容易に判断することが可能となる。操作支援像の生成と共に、他の操作支援情報が提供されてもよい。
【0021】
実施形態において、演算器は観察断面のずれとして複数のずれ成分を解析し、操作支援像生成器は操作支援像として複数のずれ成分に対応した複数の成分別操作支援像を生成する。複数の成分別操作支援像が段階的に表示されてもよく、複数の成分別操作支援像が同時に表示されてもよい。
【0022】
実施形態において、操作支援像生成部は、参照データに基づいて観察断面と直交関係を有する直交画像を生成する直交画像生成器と、支援情報として直交画像と超音波ビーム走査範囲を表した範囲マーカーとを含む設定支援像を生成する設定支援像生成器と、を含む。この構成によれば、リアルタイム断層画像に現れない情報を背景とする範囲マーカーの参照を通じて走査範囲を確認できる。
【0023】
実施形態において、支援情報生成部は、参照データとしての第1の参照データに基づいて三次元空間内の対象組織の向きを判定し、支援情報の1つとして、対象組織の向きを表す観察支援像を生成する手段と、参照データとしての第2の参照データに基づいて観察断面のずれを演算し、支援情報の1つとして、観察断面のずれに基づいて観察断面の位置及び姿勢の変更を支援する操作支援像を生成する手段と、参照データとしての第3の参照データに基づいて観察断面と直交関係を有する直交画像を生成し、支援情報の1つとして、直交画像と超音波ビーム走査範囲を表した範囲マーカーとを含む設定支援像を生成する手段と、観察支援像、走査支援像及び設定支援像を選択的に表示する手段と、を含む。
【0024】
実施形態に係る超音波診断装置の動作方法は、時間軸上において間欠的に実行される複数の基本走査とそれらの合間に間欠的に実行される複数の補助走査とを含む複合走査シーケンスに従って、三次元空間内における超音波ビームの電子走査を制御する工程と、複数の基本走査により三次元空間内の観察断面から順次取得される複数の断面データに基づいて、リアルタイム断層画像を形成する工程と、複数の補助走査により三次元空間内の全体又は一部分から取得される参照データであって観察断面以外から取得されるデータを含む参照データに基づいて、リアルタイム断層画像と共にユーザーに提供される支援情報を生成する工程と、を含む。
【0025】
上記の動作方法は、ハードウエアの機能として又はソフトウエアの機能として実現され得る。後者の場合、上記動作方法を実行するためのプログラムが、可搬型記憶媒体を介して、又は、ネットワークを介して、超音波診断装置にイストールされる。
【0026】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る超音波診断装置が示されている。超音波診断装置は、病院等の医療機関に設置され、生体に対する超音波の送受波により得られたデータに基づいて超音波画像を形成する医療用の装置である。実施形態に係る超音波診断装置は、産科において、胎児の超音波診断を行うための装置である。もっとも、他の組織(例えば肝臓)の超音波診断において図示された超音波診断装置が用いられてもよい。
【0027】
図1において、3Dプローブ10は、図示の例において、生体表面に当接した状態において超音波を送受波する超音波プローブである。3Dプローブ10は、二次元振動素子アレイを備えている。二次元振動素子アレイは、第1方向及び第2方向に整列した数百、数千、数万又はそれ以上の振動素子からなるものである。第1方向及び第2方向は、それぞれ、プローブ中心軸に直交する方向であり、第1方向及び第2方向は互いに直交している。第1方向及び第2方向の一方又は両方が湾曲していてもよい。
【0028】
二次元振動素子アレイによって超音波ビームが形成される。超音波ビームは、送信ビーム及び受信ビームを総合した送受総合ビームとして観念される。実際には、送信過程において送信ビームが形成され、それに続く受信過程において受信ビームが形成される。もっとも、受信ビームは、実際には、複数の受信信号の整相加算(遅延加算)により電子的に形成されるものである。受信ビームの形成に際しては受信ダイナミックフォーカスが適用される。また、必要に応じて、1つの送信ビーム当たり複数の受信ビームを形成するパラレル受信が適用される。
【0029】
実施形態においては、電子リニア走査方式、電子セクタ走査方式等によって、超音波ビームが電子走査される。ボリュームデータを取得する場合、超音波ビームが二次元走査される。これにより生体内に三次元空間(三次元データ取込領域)12が形成される。図示の例において、第1の電子走査方向がθ方向であり、第2の電子走査方向がφ方向である。深さ方向がd方向である。三次元空間12は、図示の例において、φ方向に並ぶ複数のフレームF1,F2,F3,・・・,Fnの集合体である。個々のフレームF1,F2,F3,・・・,Fnはそれぞれ走査面に対応する。複数のフレームF1,F2,F3,・・・,Fnから複数のフレームデータが取得される。それらのフレームデータによってボリュームデータが構成される。なお、個々のフレームデータはθ方向に並ぶ複数のビームデータにより構成され、個々のビームデータはd方向に並ぶ複数のエコーデータにより構成される。
【0030】
断層画像(リアルタイム断層画像)を表示する場合、固定された位置において走査面14が繰り返し形成される。走査面14は二次元データ取込領域としての観測断面に相当する。通常、走査面14が形成される位置はφ方向の中間点(原点)であり、つまり、走査面14はセンター走査面である。もっとも、他の位置に走査面14が形成されてもよい。
【0031】
実施形態に係る超音波診断装置は、リアルタイム断層画像の表示に際してユーザーに支援情報を提供するために、3つの支援モードを備えている。すなわち、観察支援モード、操作支援モード、及び、設定支援モードを備えている。3つの支援モードを実現するため、3種類又はそれ以上の複合走査シーケンスが用意されている。選択されたモードに応じて、複数の複合走査シーケンスの中から実際に利用する複合走査シーケンスが選択され、それに従って超音波ビームの電子走査が制御される。各複合走査シーケンスは、時間軸上において間欠的に実行される複数の基本走査と、それらの合間に間欠的に実行される複数の補助走査と、を含むものである。すなわち、各複合走査シーケンスは、時間軸上において所定のパターンをもって時分割で実行される複数の走査単位からなる。複数の基本走査は、リアルタイム断層画像を形成するためのものであり、それによって観察断面から複数の断面データが順次取得される。複数の補助走査は、支援情報としての支援像を形成するためのものであり、それによって三次元空間12から参照データが取得される。
【0032】
後述するように、基本走査と補助走査とでは走査条件が異なり、具体的には、ビーム密度が相違する。基本走査では高品位の断層画像を形成するために高ビーム密度で複数の超音波ビームが形成される。補助走査では支援像を生成できる限りにおいて低ビーム密度で複数の超音波ビームが形成される。目的や状況に応じて、個々の複合走査シーケンスの構成又は時間配分が変更され得る。なお、二次元振動素子アレイとして、C-MUT(Capacitive Micro-machined Ultrasound Transducer)が用いられてもよい。
【0033】
送信部16は、送信時において、二次元振動素子アレイに対して複数の送信信号を並列的に供給する送信ビームフォーマーであり、それは電子回路として構成される。受信部18は、受信時において、二次元振動素子アレイから並列的に出力される複数の受信信号を整相加算(遅延加算)する受信ビームフォーマーであり、それは電子回路として構成される。受信部18は、複数のA/D変換器、検波回路等を備えている。受信部18での複数の受信信号の整相加算によりビームデータが生成される。パラレル受信が適用される場合、1回の送受信当たり、例えば、二次元的に広がる16個の受信ビームが同時に形成され、つまり、16個のビームデータが同時に得られる。受信部18の後段にあるビームデータ処理部については図示省略されている。
【0034】
断層画像形成部20は、3つの支援モードのいずれにおいても機能するものであり、それは、複数の基本走査によって順次得られる複数のフレームデータを処理するものである。実施形態において、断層画像形成部20は、デジタルスキャンコンバータ(DSC)を備えている。DSCは、座標変換機能、画素補間機能、フレームレート変換機能等を有する。より詳しくは、断層画像形成部20は、基本走査の繰り返しにより観察断面から順次取得される複数のフレームデータ(複数の断面データ)に基づいて、複数の表示フレームからなる動画像としての断層画像(リアルタイム断層画像)を形成する。断層画像のデータが表示処理部24へ送られている。
【0035】
シネメモリ22には、必要に応じて、時系列順で取得される複数のフレームデータが格納される。シネメモリ22は例えばリングバッファとして構成される。データ再生時には、シネメモリ22から順次読み出された複数のフレームデータが断層画像形成部20に入力される。シネメモリを断層画像形成部20の後段に設けるようにしてもよい。あるいは、表示処理部24にシネメモリ相当の画像記憶部を接続してもよい。
【0036】
3Dメモリ26は、ボリュームデータを格納するためのメモリである。実施形態において、観察支援モード及び設定支援モードにおいて、複数の補助走査の実行により、三次元空間12から参照データとしてのボリュームデータが取得され、それが3Dメモリ26に格納される。三次元空間の全体からボリュームデータが取得されてもよいし、三次元空間の一部分からボリュームデータが取得されてもよい。そのようなボリュームデータの1つとして後述する直交データを挙げることができる。3Dメモリ26へのデータ書き込み時に座標変換が実行される。あるいは、3Dメモリ26からのデータの読み出し時に座標変換が実行される。その座標変換は、例えば、dθφ座標系からxyz座標系への変換である。
【0037】
観察支援像生成部30は、観察支援モードにおいて機能する。観察支援像生成部30は、3Dメモリから読み出されるボリュームデータに基づいて、観察支援像を生成する。観察支援像は、胎児の向き(例えば頭部が存在する側)を表す補助的又は付加的な像である。観察支援像については後に詳述する。観察支援像のデータが表示処理部24へ送られている。
【0038】
メモリ28は、操作支援モードにおいて機能するものであり、実施形態において、メモリ28には、三次元空間12内の断面セットから得られたフレームデータセット(マルチフレームデータ)が格納される。断面セットは、観察断面と、それに対して所定の空間的関係を有する複数の断面と、により構成される。実施形態において、断面セットは、後述するように、平行関係又は交差関係にある3つの断面により構成される。メモリ28を設けることなく、3Dメモリ26にフレームデータセットが格納されてもよい。フレームデータセットも、上記ボリュームデータと同様、支援情報を生成するための参照データの一態様である。
【0039】
操作支援像生成部34は、操作支援モードにおいて、メモリ28から読み出されたフレームデータセットに基づいて対象断面からの観察断面のずれ(又はずれの方向)を演算し、そのずれに基づいて3Dプローブの操作を支援する操作支援像を生成する。操作支援像については後に詳述する。操作支援像のデータが表示処理部24へ送られている。
【0040】
設定支援像生成部36は、設定支援モードにおいて、3Dメモリ26から読み出されたボリュームデータ及びユーザー指定された走査範囲設定値に基づいて設定支援像を生成する。設定支援像は、実施形態において、φ方向の走査範囲の設定、又は、θ方向φ方向の両走査範囲の設定を支援するための画像である。設定支援像については後に詳述する。設定支援像のデータが表示処理部24へ送られている。
【0041】
なお、支援情報(具体的には、観察支援像、操作支援像及び設定支援像)の生成に際して取得される参照データは、三次元空間内において少なくとも観察断面以外から取得されたデータを含んでいる。参照データの一部に観察断面から得られたデータが含まれてもよい。
【0042】
3Dメモリ26と表示処理部24との間に、レンダリング部、及び、MPR(Multi-Planar Reconstruction)画像形成部が設けられてもよい。レンダリング部は、3Dメモリ26内のボリュームデータに基づいて三次元超音波画像を形成するモジュールである。レンダリング法として、ボリュームレンダリング法、サーフェイスレンダリング法、等が知られている。MPR画像形成部は、3Dメモリ26内のボリュームデータに基づいてMPR画像を形成するモジュールである。
【0043】
表示処理部24は、表示画像生成機能、画像合成機能、カラー処理機能、グラフィック画像生成機能、等を備えている。表示処理部24において生成された表示画像が表示部38に表示される。表示部38は、LCD、有機EL表示デバイス等によって構成される。
【0044】
以上説明した断層画像形成部20、観察支援像生成部30、操作支援像生成部34、設定支援像生成部36、及び、表示処理部24は、例えば、それぞれプロセッサで構成される。それらの機能が単一のプロセッサで実現されてもよい。それらの機能が以下に説明するCPUにより実現されてもよい。
【0045】
制御部40は、CPU及び動作プログラムによって構成される。制御部40は、
図1に示されている各構成の動作を制御する。制御部40は送受信制御(電子走査制御)機能を備えており、それが
図1において送受信制御部42として表現されている。送受信制御部42は、リアルタイム断層画像及び支援像を同時に表示するための特殊な送受信制御を実行する。具体的には、以下に説明するように、送受信制御部42は、ユーザー選択された支援モードに対応する複合走査シーケンスに従って、超音波ビームの電子走査を制御する。制御部40に接続された操作パネル44は、入力デバイスであり、それは複数のスイッチ、複数のボタン、トラックボール、キーボード等を有する。
【0046】
図2には、
図1に示した超音波診断装置の大まかな動作がフローチャートとして示されている。その内容は上記制御部の制御を示すものでもある。個々の工程の具体的内容については後に詳述する。
【0047】
図2において、支援モードの実行が指示されると、S10において、支援モードの種別が選択される。具体的には、観察支援モード、操作支援モード、及び、設定支援モードの中から、いずれかの支援モードがユーザーにより選択される。状況に応じて支援モードが自動的に選択されてもよい。
【0048】
S10において、観察支援モードが選択された場合、S12において、第1複合走査シーケンスに従う送受信制御が開始される。S14では、リアルタイム断層画像が表示され、それと共に、観察支援像が表示される。その場合、複数の基本走査によって観察断面から得られた複数のフレームデータに基づいてリアルタイム断層画像が形成され、また、複数の補助走査によって得られたボリュームデータに基づいて観察支援像が形成される。S16では、観察支援モードを終了させるか否かが判断され、観察支援モードの継続が判断された場合にはS14の工程が繰り返し実行される。S16において、観察支援モードの終了が判断された場合、S18において支援モードを切り換えるか否かが判断され、切り換える場合にはS10からの工程が実行される。
【0049】
S10において、操作支援モードが選択された場合、S20において、第2複合走査シーケンスに従う送受信制御が開始される。S22では、リアルタイム断層画像が表示され、それと共に、操作支援像が表示される。その場合、複数の基本走査によって観察断面から得られた複数のフレームデータに基づいてリアルタイム断層画像が形成され、また、複数の補助走査によって得られたフレームデータセットに基づいて操作支援像が形成される。S24では、操作支援モードを終了させるか否かが判断され、操作支援モードの継続が判断された場合には、S22の工程が繰り返し実行される。
【0050】
S10において、設定支援モードが選択された場合、S26において、第3複合走査シーケンスに従う送受信制御が開始される。S28では、リアルタイム断層画像が表示され、それと共に、設定支援像が表示される。その場合、複数の基本走査によって観察断面から得られた複数のフレームデータに基づいてリアルタイム断層画像が形成され、また、複数の補助走査によって得られたボリュームデータ(実際には部分的ボリュームデータ)及び走査範囲の設定値に基づいて設定支援像が形成される。S30では、設定支援モードを終了させるか否かが判断され、設定支援モードの継続が判断された場合にはS28の工程が繰り返し実行される。
【0051】
上記動作例によれば、状況に応じて、任意の支援モードを実行させることができ、あるいは、複数の支援モードを段階的に実行させることができる。なお、計測を行う場合、一般に、フリーズ操作(送受信停止操作)後に、シネメモリに記憶されたフレームデータ列(時系列順に並んだ複数の断面データ)が再生され、計測に適する断層画像が選択される。そして、選択された断層画像を利用して計測が実行される。あるいは、フリーズ操作後に表示されている静止画像としての断層画像を利用して計測が実行される。
【0052】
実施形態においては、複数の基本走査によって得られた複数の断面データと、複数の補助走査によって得られた参照データ(1又は複数の参照データ)とが相互に対応付けられつつ格納される。これにより、複数の断面データの再生時においてそれらに対応付けられた参照データを再利用することが可能となる。動画像としてのリアルタイム断層画像と動画像としての支援像とが相互に対応付けられつつ格納されてもよい。そのような構成によればリアルタイム断層画像の再生時に支援像を再生することが可能となる。
【0053】
次に、
図3~
図9を用いて、観察支援モードについて具体的に説明する。以下においては、パラレル受信の下での受信ビームについて着目する。
【0054】
図3には、観察支援モードにおいて実行される第1複合走査の第1例が模式的に示されている。
図3においては、三次元空間12Aが平面図又は投影図として表現されている。三次元空間12A内の個々の受信ビームはθ方向座標及びφ方向座標によって特定される。図示の例では、1回の基本走査によって1つの走査面14Aが構成される。基本走査の実体は、送信ビーム及び受信ビームの一次元電子走査である。走査面14Aは、部分拡大
図14Bに示すように、θ方向に並ぶ複数の受信ビーム52により構成される。受信ビーム間のピッチがΔθ1で示されている。走査面14Aの形成に際してパラレル受信が適用されてもよい。
【0055】
時間軸上において、複数の基本走査が所定のフレームレートをもって間欠的に順次実行される。時間軸上において隣接する2つの基本走査の間には時間的な隙間が存在し、個々の隙間においてそれぞれ補助走査が実行される。すなわち、時間軸上において、複数の基本走査の合間に複数の補助走査が間欠的に実行される。
【0056】
実施形態においては、複数の補助走査によって、ボリュームデータが取得される。符号50はボリュームデータの構成単位をなす1つのビームデータアレイを示している。1つのビームデータアレイは、1回の送受信に対応しており、それは具体的には16個のビームデータで構成される。実施形態においては、1回の補助走査によって2つのビームデータアレイが取得される。3D1から3Dnまでのn個のビームデータアレイによって1つのボリュームデータが構成される。それを前提とした場合、2/n回の補助走査によって1つのボリュームデータが得られることになる。但し、1回の補助走査によって取得されるデータについては任意に定め得る。例えば、1回の補助走査当たり、1つのビームデータアレイが取得されてもよいし、3つ以上のビームデータアレイが取得されてもよい。
【0057】
部分拡大
図50Aに示されているように、1回のパラレル受信当たり、θ方向及びφ方向に整列した16個の受信ビーム54が形成される。すなわち、1回の送受信で16個のビームデータが取得され、それらによって1つのビームデータアレイ50が構成される。換言すれば、16個の受信ビーム54によって受信ビームアレイが構成される。受信ビームアレイのθ方向のピッチがΔθ2で示されており、受信ビームアレイのφ方向のピッチがΔφ2で示されている。Δθ2はΔθ1よりも大きく、例えば、Δθ1の数倍、10倍又は20倍である。Δφ2もΔθ1よりも大きく、例えば、Δθ1の数倍、10倍、20倍又は30倍である。符号56で示されるように、受信ビームアレイが三次元空間12Aの全体にわたってラスタースキャンされる。そして、それが繰り返される。時間軸上における複数のボリュームデータの取得間隔としてボリュームレートが定義される。ボリュームレートは上記フレームレートよりも大きく、例えば数十倍、数百倍又はそれ以上である。なお、本願明細書において記載した各数値はいずれも例示であり、具体的な状況によって各数値は変わり得る。
【0058】
図4には、観察支援モードにおいて実行される第1複合走査の第2例が模式的に示されている。上記同様、複数の基本走査の間欠的な実行より、走査面14Aが繰り返し形成される。複数の基本走査の実行の合間に、複数の補助走査が間欠的に実行される。
【0059】
図示の例では、θ方向への受信ビームアレイの一次元走査によって、4フレームが同時に形成されており、つまり4つのフレームデータが同時に取得されている。4つのフレームデータによりフレームデータセット(例えば3D1)が構成される。フレームデータセットの構成単位はビームデータアレイ50である。
【0060】
ボリュームデータは、図示の例において、φ方向に並ぶn個のフレームデータセット3D1~3Dnにより構成される。ちなみに、1回の補助走査当たり、2つのフレームデータセットが得られている。もちろん、1回の補助走査当たり、1つのフレームデータセットが得られてもよく、3つ以上のフレームデータセットが得られてもよい。ビーム密度条件は、
図3に示したものと同様である。この第2例でも、フレームレートはボリュームレートよりもかなり高速である。
【0061】
図5には、観察支援モードで実行される第1複合走査シーケンス58が模式的に示されている。
図5の上段における横軸は時間軸である。符号60が1回の基本走査を示しており、符号62が1回の補助走査を示している。実施形態においては、1回の基本走査60で1回のBモードスキャンが実行され、これにより1つのフレームデータが得られている。1回の補助走査62で2つのデータ(例えば3D1,3D2)が得られている。個々のデータは、上記のように、例えば、ビームデータアレイ、又は、フレームデータセットである。第1複合走査シーケンス58の構成を変更することにより、フレームレート及びボリュームレートが変動する。
【0062】
複数の基本走査の実行により得られた複数のフレームデータにより時間軸上において並ぶフレームデータ列64が構成される。フレームデータ列64に基づいてリアルタイム断層画像が形成される。複数の(具体的にはn/2回の)補助走査の実行によりボリュームデータ66が構成される。そのボリュームデータ66に基づいて観察支援像が生成される。
図5においては、座標変換後のxyz座標系が示されているが、それは便宜上のものに過ぎない。
【0063】
図6には、
図1に示した観察支援像生成部30の第1構成例が示されている。観察支援像生成部30は、演算器68、メモリ70及び観察支援像生成器72を有している。演算器68は、断面認識器76及び向き判定器78として機能する。メモリ70には複数のテンプレート80,82,84が格納されている。断面認識器76は、入力されるボリュームデータ66の中で、例えば、特定の2つのテンプレート80,82に一致する2つの断面を探索する。その際にはパターンマッチング法等が利用される。例えば、
図6の右下に示されるように、ボリュームデータ66の中で、テンプレート80に一致する断面(例えば腹部断面)80Aと、テンプレート82に一致する断面(例えば頭部断面)82Aと、が特定される。向き判定器78は、2つの断面80A,82Aの位置関係から組織の向き、実施形態においては、胎児の体軸の向き86を特定する。それは観察断面74から見た頭部の向き(観察断面74から見て頭部が存在する側又は方位)を表すものである。観察支援像生成器72は、胎児の頭の向きが反映された観察支援像を生成する。
【0064】
テンプレート84は、例えば、胎児の矢状面(縦断面)に相当するものである。そのようなテンプレート84を利用すれば、他のテンプレートを利用することなく、それ単独で、頭部の向きを判定することが可能となる。例えば、テンプレート80,82として、計測断面に相当するものを用意しておいてもよい。断面認識器76として、機械学習型の断面推定器を利用してもよい。
【0065】
図7には、観察支援モードの実行時に表示される観察支援像の第1例が示されている。表示画像88には、リアルタイム断層画像90と観察支援像94とが含まれる。マーク92は、基本走査における電子走査方向又は電子走査開始端を示すものである。リアルタイム断層画像90においては、例えば、胎児の腹部、頭部等の断面が現れている。観察支援像94は、付加的又は補助的に表示される比較的小さな画像であり、具体的には、観察支援像94は、プローブマーク96、走査面マーク98、及び、矢印100、Headの文字102により構成されている。走査面マーク98は、観察断面を示すものであり、観察断面から見た頭部の位置、方向又は側が、図形としての矢印100及び文字102により表現されている。矢印100の位置及び向き、並びに、文字102の位置は、向き判定器の判定結果に基づいて決定される。なお、観察支援像94には、電子走査方向又は電子走査開始端を示すマーク104も含まれる。
【0066】
観察支援像94によれば、観察断面を頭部側に動かしたい場合に、3Dプローブをどの方向へ動かせばよいのかの情報を得られる。よって、計測を効率的に遂行させることができる。あるいは、対象組織を見失ってしまう可能性を低減できる。矢印100以外の図形を採用してもよい。文字102については必要に応じて表示すればよい。プローブマーク96及び走査面マーク98として、立体的に表現されたマークを用いるのが望ましい。例えば、超音波診断装置から情報処理装置へ、断層画像データ及び観察支援像データが転送されてもよい。観察支援像94は、断層画像の再生時においても役立ち得るものである。
【0067】
図8には、観察支援像の第2例が示されている。なお、
図7に示した要素と同一の要素には同一符号を付しその説明を省略する。このことは
図8以降の各図においても同様である。
【0068】
この第2例において、観察支援像106は、プローブマーク96及び走査面マーク98に加えて、立体的な抽象的な図形としての胎児モデル(オブジェクト)108を有している。胎児モデル108は、頭部を模擬したヘッド108a及び体幹部を模擬したボディ108bとからなる。図示の例においては、走査面マーク98をボディ108bが横切っており、立体的な表現が採用されている。このように矢印に変えてモデルを利用すれば胎児の向きをより直感的に認識し易くなる。
【0069】
図9には、観察支援像生成部の第2構成例が示されている。観察支援像生成部110は、積算器112、向き判定器114、メモリ116及び観察支援像生成器118を有している。積算器112は、入力されたボリュームデータ66に対して、例えばx方向の積算処理を適用し、これにより積算像120を生成する。また、積算器112は、ボリュームデータ66に対して、例えばy方向の積算処理を適用し、これにより積算像122を生成する。
【0070】
メモリ116に格納されたテンプレート群124は、積算像120と比較される複数のテンプレートにより構成されるものである。メモリ116に格納されたテンプレート群126は、積算像122と比較される複数のテンプレートにより構成されるものである。個々のテンプレートには胎児における頭部の向きを特定する情報が付加されている。符号128はテンプレート群124の中のテンプレートの一例を示しており、例えば、符号130は向きを特定する情報を抽象的に表現している。同様に、符号132はテンプレート群126の中のテンプレートの一例を示しており、例えば、符号134は向きを特定する情報を抽象的に表現している。
【0071】
向き判定器114は、テンプレート群124の中から積算像120に対して類似度が最も高いテンプレートを特定し、同時に、テンプレート群126の中から積算像122に対して類似度が最も高いテンプレートを特定する。続いて、向き判定器114は、特定された2つのテンプレートに基づいて、又は、類似度がより高いテンプレートに基づいて、観察断面を基準としたところでの頭部の向きを特定する。観察支援像生成器118は、特定された向きに基づいて、
図7又は
図8に示した観察支援像を生成する。向き判定器114として、機械学習型の推定器を利用してもよい。
【0072】
次に、
図10~
図12を用いて、操作支援モードについて具体的に説明する。
図10には、
図1に示した操作支援像生成部34の構成例が示されている。
【0073】
操作支援像生成部34は、3つの操作支援像を生成する機能を備えている。3つの操作支援像を生成するために、後に
図11に示すように、3つの断面セットに対応する3つの断面データセットが順番に取得されている。それらは3つの類似度演算器136,138,140に入力される。個々の類似度演算器136,138,140は、それぞれ、3つの断面データと教師データとを比較し、3つの類似度(類似度セット)を演算するモジュールである。類似度演算器136,138,140ごとに(且つ対象断面ごとに)異なる教師データが用意されている。それらはメモリ142に格納されている。
【0074】
類似度演算器136は、平行移動方向を判定するための類似度セットを演算するものであり、その類似度セットが平行移動方向判定器144に入力されている。平行移動方向判定器144は、観察断面を対象断面に一致させるための3Dプローブ平行移動方向を判定する。類似度演算器138は、傾斜方向を判定するための類似度セットを演算するものであり、その類似度セットが傾斜方向判定器146に入力されている。傾斜方向判定器146は、観察断面を対象断面に一致させるための3Dプローブ傾斜方向を判定する。類似度演算器140は、回転方向を判定するための類似度セットを演算するものであり、その類似度セットが回転方向判定器148に入力されている。傾斜方向判定器146は、観察断面を対象断面に一致させるための3Dプローブ回転方向を判定する。
【0075】
1つの類似度演算器で3つの類似度セットを演算するようにしてもよい。同様に、1つの判定器で平行移動方向、傾斜方向及び回転方向を判定するようにしてもよい。操作支援像生成器150は、判定された平行移動方向、傾斜方向及び回転方向に基づいて、3つの操作支援像を生成する。
【0076】
図11には、三次元空間内での第2複合走査その1~その3が示されている。操作支援モードにおいて実行される第2複合走査シーケンスは複数の基本走査と複数の補助走査とで構成され、個々の基本走査では、リアルタイム断層画像の形成のために、観察断面から断面データが順次取得される。個々の補助走査においては、三次元空間内に、例えば3つの断面からなる断面セットが設定される。
図11には、3種類の断面セットが示されている。
【0077】
3Dプローブの平行移動方向を示す操作支援像その1を生成する場合、三次元空間12B内に断面セット152が設定される。断面セット152は、観察断面に相当する断面154と、断面154の一方側に存在する断面156と、観察断面154の他方側に存在する断面158と、からなる。3つの断面154,156,158は、平行な関係をもって平行移動方向に並んでおり、あるいは、φ方向に並んでいる。断面間の距離は例えば5mmである。3つの断面154,156,158から断面データセットつまりフレームデータセットが取得される。3つの断面154,156,158においては低ビーム密度が設定される。
【0078】
3Dプローブの傾斜方向(煽り方向)を示す操作支援像その2を生成する場合、三次元空間12B内に断面セット160が設定される。断面セット160は、観察断面に相当する断面162と、断面162を水平軸168の周りにおいて一方側に所定角度回転させることにより定義される断面164と、断面162を水平軸168の周りにおいて他方側に所定角度回転させることにより定義される断面166と、からなる。3つの断面162,164,166は、水平軸168周りにおいて並んでおり、すなわち、傾斜方向に並んでいる。それらの角度間隔は例えば5度である。3つの断面162,164,166から断面データセットつまりフレームデータセットが取得される。3つの断面162,164,166においては低ビーム密度が設定される。
【0079】
3Dプローブの回転方向を示す操作支援像その3を生成する場合、三次元空間12B内に断面セット170が設定される。断面セット170は、観察断面に相当する断面172と、断面172を垂直軸(中心軸)178の周りにおいて一方側に所定角度回転させることにより定義される断面174と、断面172を垂直軸178の周りにおいて他方側に所定角度回転させることにより定義される断面176と、からなる。3つの断面172,174,176は、垂直軸178周りにおいて並んでおり、すなわち、回転方向に並んでいる。それらの角度間隔は例えば5度である。3つの断面172,174,176から断面データセットつまりフレームデータセットが取得される。3つの断面172,174,176においては低ビーム密度が設定される。なお、観察断面から得られたフレームデータを解像度変換することによって、断面154,162,172に対応するフレームデータを生成してもよい。
【0080】
上記のように取得されたフレームデータセットごとに、それを構成する個々のフレームデータを、対象断面を表す教師データ(教師画像)と比較することによって、3つの類似度が演算される。例えば、3つの断面A1,A2,A3がその順で並んでいる場合において、3つの類似度をα1,α2,α3と表現する。ここで、α1<α2<α3の条件が満たされるならば、観察断面が断面A3へ近付くように3Dプローブを動かすべきことが判定される。逆に、α1>α2>α3の条件が満たされるならば、観察断面が断面A1へ近付くように3Dプローブを動かすべきことが判定される。類似度α2が最も高ければ、観察断面が対象断面に一致していること、すなわち3Dプローブの姿勢を維持すべきことが判定される。実施形態においては、3種類のずれ(3種類のずれ成分)についての方向性が判断されているが、1つ又は2つのずれについての方向性が判断されてもよい。判断する順序も任意に設定することが可能である。断面セットを5つの断面で構成してもよく、それ以上の個数の断面で構成してもよい。
【0081】
図12には、操作支援像その1~その3(180,184,188)が示されている。図示の例では、まず、操作支援像その1(180)が表示され、ユーザーによる平行移動操作がなされる。その完了後、操作支援像その2(184)が表示され、ユーザーによる傾斜操作がなされる。その完了後、操作支援像その3(188)が表示され、ユーザーによる回転操作がなされる。
【0082】
具体的には、操作支援像その1(180)は、プローブマーク96、走査面マーク98、胎児モデル108を含み、更に、操作方向マーク182を有している。操作方向マーク182は、3Dプローブの平行移動方向を示す直線的な矢印により構成されている。更に、操作支援像その1(180)には、計測名(AC計測)も含まれている。操作支援像その2(184)は、操作方向マーク186を有している。操作方向マーク186は、3Dプローブの傾斜方向(煽り運動方向)を示す円弧状の矢印により構成されている。操作支援像その3(188)は、操作方向マーク190を有している。操作方向マーク190は、3Dプローブの回転方向を示す環状の矢印により構成されている。各操作方向マーク182,186,190はいずれも例示であり、他の形態をもったマークを採用し得る。音声等の他の操作支援情報が提供されてもよい。
【0083】
特定の計測を実行する際において、観察断面がおよそ計測断面に近くなった時点で、操作支援モードを選択すると、
図12に示した操作支援像その1~その3(180,184,188)が順番に表示される。それらの参照及び3Dプローブ操作により、3Dプローブの位置及び姿勢が徐々に最適化される。つまり、観察断面が対象断面にフィッティングされる。そのような操作の過程においてもリアルタイム断層画像を随時観察することができる。実際には、リアルタイム断層画像の観察により、観察断面を対象断面に一致する過程において、操作支援像を観察することにより、3Dプローブの位置及び姿勢を調整するための補助的な情報を得ることが可能となる。なお、操作支援像その1~その3(180,184,188)には、上記のように、胎児モデル108が含まれている。観察支援モードの同時実行により胎児モデル108が自動的に生成されてもよい。他の方法により胎児モデル108が生成されてもよい。
【0084】
次に、
図13~
図18を用いて、設定支援モードについて具体的に説明する。
図13には、三次元空間内における第3複合走査の一例が示されている。設定支援モードにおいて実行される第3複合走査シーケンスは、複数の基本走査と複数の補助走査とで構成され、個々の基本走査では、リアルタイム断層画像の形成のために、観察断面から断面データが取得される。複数の補助走査により、三次元空間12C内における部分空間191から部分的ボリュームデータが取得される。図示された部分空間191は、観察断面14Cに対して直交する関係を有し、θ方向の中間点を中心としてθ方向に一定範囲にわたって広がる空間である。部分空間191は、θ方向に並ぶ複数のフレームF1~Fnにより構成される。各フレームF1からFnは走査面に相当するものである。部分的ボリュームデータは、複数のフレームF1~Fnから取得された複数のフレームデータにより構成される。
【0085】
それらのフレームデータの集合体は、d方向及びφ方向に広がっており、観察断面14Cを基準として見て、直交データを構成する。θ方向及びφ方向に広がる直交データが取得されてもよい。直交データをその厚み方向に積算することによって積算画像が構成される。
【0086】
図14には、第3複合走査シーケンスが示されている。それは間欠的に実行される複数の基本走査194とそれらの合間に間欠的に実行される複数の補助走査196とからなる。複数の基本走査によって一定のフレームレートで複数の断面データが順次取得され、それらに基づいてリアルタイム断層画像が形成される。複数の補助走査196によって一定のボリュームレートで部分的ボリュームデータが順次取得される。個々の部分的ボリュームデータ及びθ方向の走査範囲の指定に基づいて、以下に詳述する設定支援像が生成される。
【0087】
図15には、設定支援像その1が示されている。表示画像198にはリアルタイム断層画像200及び設定支援像202が含まれる。設定支援像202には、積算画像204と、走査範囲マーカー208と、観察断面マーカー206と、が含まれる。積算画像204は、部分的ボリュームデータをθ方向(厚み方向)に積算することによって生成される。走査範囲マーカー208は、現在設定されているθ方向走査範囲を示すものである。例えば、3D画像形成、計測、その他の理由から三次元関心領域(3D-ROI)を設定する場合において、三次元関心領域のθ方向の範囲(走査範囲)が走査範囲マーカー208を参照しながらユーザーにより調整される。積算画像204に基づいてθ方向の範囲が自動的に演算されてもよい。なお、三次元関心領域のφ方向の範囲(走査範囲)を示すマーカーをリアルタイム断層画像200上に表示してもよい。そのような表示によれば、φ方向の範囲も的確に決定することが可能となる。三次元関心領域の設定後、必要に応じて、走査範囲が実際に変更される。他の目的で走査範囲マーカー208が利用されてもよい。
図17に示した設定支援像216にはθ方向の走査範囲が数値としても表示されている(符号216を参照)。
【0088】
図16には、設定支援像その1についての変形例が示されている。設定支援像213には深さ方向に限定された三次元関心領域を示すボックス状のマーカー214が含まれる。そのマーカー214は、三次元関心領域のθ方向の範囲及び深さ方向の範囲を示すものである。
【0089】
図17には、設定支援像その2が示されている。設定支援像216には、積算画像218、走査範囲マーカー220、及び、観察断面マーカー222が含まれる。積算画像218は、θ方向及びφ方向に広がる部分的ボリュームデータをd方向(厚み方向)に積算することによって生成される。マーカー220は、三次元関心領域のθ方向の範囲及びφ方向の範囲を示す矩形の形状を有している。マーカー224はθ方向の電子走査の基準端又は開始端を示すものである。θ方向の範囲が数値216として表示されている。マーカー220が他の目的で利用されてもよい。
【0090】
図18には、設定支援像その2についての変形例が示されている。設定支援像226には三次元関心領域を示すボックス状のマーカー228が含まれる。そのマーカー228は三次元関心領域におけるθ方向の範囲及びφ方向の範囲を示すものである。
【0091】
上記実施形態によれば、複合走査シーケンスに基づく電子走査制御により、リアルタイム断層画像を表示しながら、支援情報をユーザーに提供できる。具体的には、観察断面以外からのデータを含む参照データを時分割で取得し、その参照データを用いてユーザーを支援できる。上記実施形態において、複数の支援モードが同時に実行されてもよい。個々の支援モードはそれぞれ単独でも価値を有し、つまりそれぞれ単独でも採用され得るものである。
【符号の説明】
【0092】
10 3Dプローブ、12 三次元空間、14 走査面(観察断面)、20 断層画像形成部、24 表示処理部、30 観察支援像生成部、34 操作支援像生成部、36 設定支援像生成部。